JP3326010B2 - 被膜形成方法および感光体の作製方法 - Google Patents

被膜形成方法および感光体の作製方法

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JP3326010B2 JP13265294A JP13265294A JP3326010B2 JP 3326010 B2 JP3326010 B2 JP 3326010B2 JP 13265294 A JP13265294 A JP 13265294A JP 13265294 A JP13265294 A JP 13265294A JP 3326010 B2 JP3326010 B2 JP 3326010B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真プロセスに利
用される感光体の製造方法並びに製造装置およびそれら
を利用して形成した感光体に関するものである。
【0002】
【従来技術】電子写真方式のイメージ形成に利用される
感光体は各種知られている。近年その特性上の有利さか
ら有機感光体(OPC)とアモルファスシリコン感光体
が注目されている。アモルファスシリコン感光体はシラ
ン等のガスをグロー放電により分解して堆積させるプラ
ズマCVD法を用いて製作される。材料の物性として、
硬度が比較的高く(ビッカース硬度で1200kg/m
2 )、耐磨耗性に優れている反面、誘電率が高いため
帯電性に劣る。また、十分な帯電電位を得るに必要な膜
厚(20μm以上)の被膜をプラズマCVDにより作成
するため、コストが高く生産性が悪い。一方、OPCは
必要な材料を有機溶媒に溶かして基体上にディッピング
により塗布する事が可能であるため、製造コストを低く
する事ができる。また、電荷発生と電荷輸送の機能を分
離して各々電荷発生層と電荷輸送層にその機能を負わせ
ることができるため、感光体設計が容易であるという利
点がある。その反面、有機物であるがゆえに、材料の強
度が弱く、耐磨耗性が乏しい。
【0003】そこで、本発明人らによる炭素を主成分と
したOPC保護膜の発明(例えば特願昭63−2865
05)を利用すれば、感光体特性を低下させることなく
耐磨耗性を飛躍的に向上させることができる。該発明
は、プラズマCVDを用いて炭素を主成分とする被膜を
OPC上に成膜するものである。量産性を考慮して、多
数本同時に処理ができる陽光柱プラズマを用いる方式で
ある。また、成膜速度の向上のために原料ガスとしてエ
チレン、水素および3フッ化窒素を用いるものである。
これにより、OPCの利点を残したままアモルファスシ
リコン感光体に匹敵する寿命を獲得する事が可能であ
る。
【0004】ところが、複写機内部での長時間の使用に
より、感光体表面の微小な領域(1mm以下)に本来保
持されるべき電荷が保持されず、電位が発生しない現象
(ネガポジの場合黒ポチ)が発生するという問題が発生
する。また、長期間の使用により保護膜の密着性が低下
する現象が発生する。さらに、炭素を主成分としたOP
C保護膜は比較的導電率が低いため、OPCの電荷移動
層に比べて電荷が移動しにくく、電位の蓄積を発生しや
すい。このため、保護膜の膜厚分布が表面電位の変動に
影響しやすく、よって、画像への影響も大きい。このた
め、保護膜の膜厚均一性の改善要求が強かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上記の
問題点の対策、すなわち、本来保持されるべき電荷が保
持されず、電位が発生しない現象(ネガポジの場合黒ポ
チ。以後黒ポチという。ポジポジの場合白ポチになるこ
とはいうまでもない。)および密着性の低下を防止する
ことにある。また、本発明の目的は保護膜の膜厚均一性
を向上し、良好な画質を得ることのできる感光体を提供
することにある。さらに、本発明の目的は、前記対策を
施して性能を向上した感光体を低価格で製造する方法
と、それを実現した装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】黒ポチの原因を解析する
ために本発明人らは実験と観察を行い、以下の知見を得
た。すなわち、黒ポチ現象は、OPCの劣化による局部
的な帯電不良であり、該不良は保護膜の欠陥を通してボ
ケ物質がOPCに到達し、OPCを劣化させているもの
である。ボケ物質は帯電、転写等に用いられる帯電器の
コロナ放電部で発生する窒素酸化物であることは一般に
知られており、影響が軽微な場合には感光体表面の抵抗
を低下させて画像流れを発生させる原因となるものであ
る。ボケ物質はコロナ放電によって発生する窒素酸化物
気体ないし窒素酸化物気体と水の合成物である硝酸もし
くは亜硝酸類である。
【0007】一般に感光体表面は機械的摩擦に曝されて
おり、徐々に表面を削りながら使用されるものである。
よって、帯電器より発生したボケ物質が感光体表面に付
着しても最表層と一緒に削られて廃トナーと共に排出さ
れるため、あまり影響が顕在化しない。ところが、保護
膜を用いた感光体の場合表層を削ることを抑制している
ためにボケ物質も排出されず、その影響が大きい。特
に、保護膜に欠陥が存在し、該欠陥部にボケ物質が入り
込むとこれが蓄積され、OPCの劣化を加速することと
なる。特に電荷輸送物質(CTM)がトリフェニルアミ
ン系の物質の場合、フェニル基に一部がニトロ化して、
表面からの電子の注入が容易となり負帯電での電位発生
が不可能となる。さらに、欠陥は少なくとも3種類存在
する。まず、最も大きな欠陥としてプラズマCVD反応
空間に接する治具、たとえば、コンテナ、電極等から反
応生成物が剥離、浮遊して基体表面に付着するものが上
げられる。形状は不定形であり、欠陥の大きさは1〜1
0μm程度である。図1に代表的な欠陥のSEM写真を
示す。一般的にゴミとして認識されているもので、反応
室の清浄度保持により対策できる。一般には反応生成物
が剥離するまえにプラズマドライクリーニング等により
反応室を清浄化し、これを管理することにより対処でき
る。
【0008】本発明の炭素を主成分とする被膜をプラズ
マドライクリーニングする際には酸素プラズマを用いる
のがよく、さらに被クリーニング面を200℃以上好ま
しくは250℃以上に加熱するとよい。これは被クリー
ニング面の加熱により酸素との反応速度を向上してエッ
チング速度を増加させることである。2つ目の欠陥のS
EM写真を図2に示す。図2は保護膜の断面を撮影した
ものである。図2を見て明らかなとうり、該欠陥はOP
C表面を核として成長している。該欠陥と膜の間には明
確な界面が形成されており、この界面部をボケ物質が浸
透してくると推定できる。該欠陥(以下その形状に由来
してコーン状欠陥という)の発生原因はOPC表面にあ
ることは確かであるが、それがOPCの汚染か、ゴミの
付着であるかの確証はない。但し、次に説明するように
OPC表面の汚染である可能性が高い。
【0009】コーン状欠陥の発生を抑制する目的でOP
C表面の洗浄をエチルアルコールで行った。清浄なビー
カー内のアルコールに感光体ドラムを浸し、超音波洗浄
を10分間実施した。その結果図3に示すようにアルコ
ール洗浄により格段にコーン状欠陥の発生を抑制する事
が可能となった。図3(A)はメチルアルコール洗浄を
しない場合、図3(B)はメチルアルコール洗浄をした
場合を示す。ここではエチルアルコールを用いたがOP
Cを溶解しないアルコール類であれば何でも良い。
【0010】3つ目の欠陥はさらに小さな塊であり、製
膜中に反応空間内でクラスター同士の会合により形成さ
れたものと推定できる。会合したクラスターが結合して
50nm〜300nmの粒子に成長する。(以後巨大ク
ラスターという。)図4に保護膜表面のSEM写真を示
す。SEM写真では表面の凹凸として観測できる。該巨
大クラスター間の界面を通ってボケ物質が浸透すると推
定できる。プラズマCVDの反応圧力は10mTorr
から10Torr程度の圧力で行われ、電極間隔の大小
により放電可能な圧力が決まる。陽光柱方式の場合は電
極間隔が20cm〜200cm程度であるため、放電圧
力は低く、10mTorr〜100mTorrの範囲内
となる。この時、反応空間内の粒子の平均自由行程は1
mm〜0.1mmとなり、反応空間中心部領域で発生し
た活性種(ラジカル)がプラズマ容器壁に到達するまで
の平均衝突回数は1000回程度となる。通常の平行平
板方式でも圧力が高くなるぶん電極間隔が狭くなるの
で、活性種の衝突回数は同程度のオーダーとなる。分子
の大きさを1Å程度と仮定し、会合時の付着確率を1程
度と仮定すると巨大クラスターの大きさはほぼ理解可能
である。
【0011】よって、巨大クラスターによる欠陥を抑制
するには、プラズマ反応中のラジカルの付着確率を低下
させることが効果がある。ラジカルの付着確率低下する
には適当な反応ガスを選択する方法と放電を生成する電
源をパルス駆動とすることが効果がある。原料ガスの選
択としては、従来用いていた3フッ化窒素を使用しない
方法がある。例えばアンモニア、トリメチルアミン、ト
リエチルアミン等の窒素化合物を用いる。本発明の炭素
を主成分とする被膜には導電性制御物質として窒素が必
要であるから、窒素化合物は添加しなければならない。
3フッ化窒素を従来用いていた理由は反応速度の向上を
目的にしていたためで、付着確率の低下と高速成膜はト
レードオフの関係となる。更に原料ガスの選択としてヘ
リウム、アルゴン、窒素ガス等の希釈ガスを用いる方法
がある。希釈ガスの効果は付着確率の低下より、反応ガ
スの分圧を下げることによる会合の確率を下げる効果の
ほうが大きい。また、特にヘリウムは比較的高いエネル
ギー準位に準安定状態を有するためにプラズマ空間全体
が高いポテンシャルを持つこととなるため、均一な反応
の促進、膜厚均一性の向上にたいして有効である。
【0012】ラジカルの付着確率低下させるもう一つの
方法であるパルス駆動は以下のように作用する。この場
合のパルス駆動はRF周波数(代表的には13.56M
Hz)の電力をある時間ゲートをかけて停止する方法で
ある。代表的なパルス周期は10Hz〜500Hzであ
り、デューティーは10%〜80%である。
【0013】RF電力が印加している時間は連続放電と
同じで、あらゆるラジカルが生成している。ゲートがか
かり、RF電力が停止している時間は反応空間はアフタ
ーグローの状態であり、比較的寿命の長いラジカルが残
ることとなる。すなわち、付着係数の大きなラジカルは
短時間のうちに何処かに衝突して反応消滅し、付着係数
の小さなラジカルは衝突しても反応する確率が低いがゆ
えに寿命が長くなる。よって、アフターグローの期間が
長い(すなわちデューティーが小さい)方が長寿命のラ
ジカルを選択的に生成することとなる。
【0014】図5にアンモニアを添加ガスとした場合の
表面SEM写真を、図6にパルス駆動放電をした場合の
表面SEM写真を示す。何方も巨大クラスターが減少し
て表面の平坦性が良く、その凹凸は30nm以下である
ことが分かる。巨大クラスターに対するこれらの対策は
すべてラジカルの反応性を抑制すものであるため、成膜
速度の低下を招く。よって、本発明者らは、さらに製膜
速度の向上を実現する方法とその装置を検討した。 本
発明人は、一般に、プラズマCVDで選択される圧力領
域(10mTorrから1Torr)よりかなり高い圧
力領域(1Torrから760Torr)での、プラズ
マの物性を観察した。このような一般に考えられるもの
より高い圧力範囲に着目したのは、通常のプラズマCV
Dの成膜速度を桁違いに向上させたいと考えたからであ
る。プラズマCVDでの成膜素過程(ラジカルの発生、
基板表面への輸送、表面での反応)を考慮すれば、 (1)成膜の前駆体となるラジカル密度の向上 (2)ラジカルの基体表面への輸送効率の向上 の2点を改善できれば成膜速度が向上することが理解で
きる。プラズマCVDの場合はラジカルはプラズマ空間
全体で発生しており、ラジカルの輸送よりは発生の方が
成膜速度への影響は大きいと推察できる。ラジカル密度
の増加は反応圧力の上昇で可能と期待できる。つまり、
高い圧力領域での成膜は高速成膜になることが期待でき
る。
【0015】成膜素過程にはさらに、 (3)膜表面での反応(表面脱離の抑制) も考えられるが、プラズマCVDのような低温プロセス
の場合は表面反応律速になることはなく、成膜速度への
膜表面での反応過程は寄与しない。ただし、硬質炭素膜
を製膜する場合は表面でのイオンの作用が膜質におおき
く影響する。すなわち、硬質炭素膜では成膜中にイオン
のボンバードメントを積極的に作用させ、膜中の強い結
合を残し、弱い結合を切断しつつ成膜するものだからで
ある。よって、一般にはカソード側に基板を設置し、セ
ルフバイアスを用いて成膜する。ラジカル密度の増加を
成膜時の圧力増加で実現するとしても、ラジカル発生の
前提となるプラズマが、圧力上昇によりその物性を大き
く変化させては意味がない。そこで、本発明人は先に述
べた通り、高い圧力領域(1Torrから760Tor
r)でのプラズマを観察した。
【0016】まず、高い圧力領域(1Torrから76
0Torr)でプラズマを発生させるための要件であ
る。従来、低圧グロー放電が、10mTorrから1T
orrの圧力領域で生成されていたのは、該圧力領域で
最も放電が生成しやすい(すなわち、放電が安定であ
る)からである。ある電極間隔d(通常の低圧グローの
場合d=数十mm)の平行平板電極の間に存在する粒子
が、電子と衝突する回数(電子は電極間の電界で加速さ
れ、一方の電極からもう一方の電極の方向に飛翔してい
ると仮定する)は、その雰囲気の圧力に比例する(平均
自由行程に逆比例する)。すなわち、圧力が低く、衝突
回数が少ないと、電子は十分なエネルギーを持つため、
衝突すれば粒子の電離はおこるものの、低圧力のため粒
子自体が少なく、プラズマに成りえない。一方、圧力が
高いと、電子の衝突回数が増加し、次の衝突までに電子
は十分なエネルギーを持ちえず、衝突しても粒子をイオ
ン化することができない。これは、パッシェンの法則と
して知られているもので、放電開始電圧Vが、圧力pと
電極間隔dの積(pd積)の関数になり、あるpd積の
値で最低放電開始電圧Vminが存在するというもので
ある。すなわち、高い圧力領域でプラズマを生成するに
は、短い自由行程間で粒子を電離するに十分な電界を電
子に与える必要がある。これは電極間隔dを小さくする
ことと、電極間に印加する電圧を上げることで対処でき
る。ただし、電極間に印加する電圧を上げることによる
効果には限界がある。すなわち、グロー放電の場合、プ
ラズマ内での電界分布は一様ではなく、電界は電極近傍
に形成されるシース部に最も大きくかかる。次に、シー
ス部に続く陽光柱部にかかる。シース部の長さはプラズ
マに特有のデバイ長さ程度であり、空間的に大部分を占
める陽光柱にはあまり電界はかからない。よって、電極
間に、多大な電圧を印加したとしても、空間的に大部分
を占める陽光柱部での実質的な電界増加はあまり見込め
ない。もっとも、電極間電圧の増加分はシース部にかか
るため、該領域での電離は促進される。シース部にかか
る電界が限度を越えると、加速された電子が電極表面に
衝突し、電極を加熱する事による電極からの熱電子放出
が発生してくる。グロー放電の場合の電極からの電子放
出機構は電界放出および二次電子放出であるが、熱電子
放出が発生すると、電極からの電子放出に費やされる電
界がほとんどなくなり、その分の電界はシース部にかか
るようになる。そうなると、シース部の電子はさらに加
速されて電極を加熱し、電極電位が維持される限り熱暴
走を起こしてしまう。このような状態は負性抵抗であ
り、全路にわたって電流が流れるとアーク放電に移行す
る。
【0017】よって、高い圧力領域でのプラズマ生成に
は電極間隔の小さくすることが効果がある。ただし、電
極間隔の下限値も存在する。プラズマを存在させるに
は、電極間隔はデバイ距離の数倍は少なくとも必要であ
る。デバイ距離λは以下の式で表される。 λ=(ε0 ・κ・Te/q2 ・Ne)1/2 ただし、ε0 は真空の誘電率 κはボルツマン定数 qは電荷素量 Teは電子温度 Neは電荷密度 である。
【0018】本発明のプラズマは電子密度が1015/m
3 、電子温度が2eV程度であることよりデバイ距離は
約0.3mmとなる。よって、電極間隔は1mm以上あ
ることが望ましい。上記の通り、1Torrから760
Torrまでの圧力での放電は可能であるが、プラズマ
の物性は大きく変化する。100Torr程度から76
0Torrの圧力領域では、通常の電極構造では先に示
したアーク放電への移行メカニズムにも示したように、
放電が不安定になりやすい。そこで、本発明人の他の発
明である大気圧放電の発生方法を利用することができ
る。
【0019】放電が負性抵抗を示しても系全体で負性抵
抗を示さないように電極表面に耐熱性の誘電体を挿入す
る。該誘電体が正抵抗を持つため、系全体では正抵抗と
なる。この場合、誘電体が等価回路的には直列に入るた
め、電極間に印加する電界は交流とする必要がある。さ
らに、該領域では、圧力が高く、空間中でのイオンおよ
び電子の衝突・再結合の確率が大きくなり、プラズマが
消滅しやすくなる。よって、イオンおよび電子の拡散
(特にイオンの拡散)を促進してプラズマを広げる必要
がある。そのために、準安定状態を有する希ガス特にヘ
リウムもしくはアルゴンの添加が効果がある。希ガスは
全ガスの50%以上とするのが好ましい。また、磁場を
作用させてプラズマを構成する粒子を拡散させることも
効果がある。磁場の分布は電極の中心部より外部の方向
に磁束を発散させるようにすると良い。こうすると、発
散する磁束に沿って電子がドリフトし、該電子のつくる
電場を打ち消すように陽イオンが引き寄せられる。結果
としてプラズマが拡散する事となる。
【0020】前記のように、100Torr程度から7
60Torrの圧力領域では、電極表面の誘電体と希ガ
スの添加が必要であるが、100Torr程度以下の圧
力領域では、誘電体と希ガスは必ずしも必要ではない。
しかし、100Torr程度以下の圧力領域での誘電体
と希ガスの存在は放電を安定させる効果があり有効であ
る。ただし、コストの上昇と成膜速度の低下を招く要素
となる。
【0021】本発明人は、前記の手段をもちいて、1T
orrから760Torrでのプラズマの物性を観察し
た。実験に用いたガスはアルゴンで、電極はプラズマ安
定化のため誘電体を挿入したものを用いた。誘電体は
0.5mm厚さの焼結アルミナを用いた。高周波の周波
数は13.56MHzである。プラズマの代表的な物性
値として電子温度(Te)と電子密度(Ne)とプラズ
マを維持するに必要な最低の電圧(Sustainin
g Voltage)を測定した。電子温度(Te)と
電子密度(Ne)はラングミュアプローブ法(シングル
プローブ法)を用いて、プラズマを維持するに必要な最
低の電圧(Sustaining Voltage)は
電源の端子電圧を測定した。結果を図7及び図8に示
す。
【0022】図8に電子温度(Te)と電子密度(N
e)を同時に示す。電子密度(Ne)は、プローブ電圧
を正電圧方向にかけていくと観察することのできる電子
飽和電流領域が、観測できない圧力領域(60Torr
以上)が存在するため、計算ができず、よって、60T
orr以上は図示していない。40Torr以下での電
子密度(Ne)は、圧力の上昇とともに1×1014/m
3 から1.7×1014/m3 に徐々に上昇し、40To
rrから60Torrの領域では急激に8×1014/m
3 まで上昇している。これは約40Torrを境にし
て、局部的にアーク放電が発生していることを示してお
り、該領域(40Torrから60Torr)のプラズ
マが不安定に成りつつあることを示している。しかし、
これを利用すると、非常に高密度なプラズマを得ること
ができる。
【0023】図7は電子温度(Te)とプラズマを維持
するに必要な最低の電圧(Sustaining Vo
ltage)を同時に示す。プラズマを維持するに必要
な最低の電圧(Sustaining Voltag
e)は、その物理的意味はともかく、装置としてのプラ
ズマの取り扱い易さを示す物であり。出来るだけ低いこ
とが好ましい。この観点からすると、10Torrから
100Torrの間で極小を示しており、該領域で使用
することが好ましい。一方、電子温度(Te)のグラフ
は、60Torrを極小とし、U字型の形状となってい
る。15Torrから100Torrの中圧力領域で
は、これより低い圧力領域および高い圧力領域より、電
子温度(Te)が低く、3eV以下となっている。
【0024】上記の結果はあくまで代表的な結果であ
り、全てを表しているわけではない。例えばガスをヘリ
ウム、ネオン等に変えたり、炭化水素ガスを加えたり、
ガス流量を変化させたりすると、結果は異なる。たとえ
ば、電子温度(Te)が極小となる圧力は60Torr
から100Torrの範囲で変化し、電子密度(Ne)
が急激に増加する圧力は40Torrから80Torr
の範囲で変化し、プラズマを維持するに必要な最低の電
圧(Sustaining Voltage)が極小と
なる圧力は20Torrから100Torrの範囲で変
化する。しかしながら、定性的にはほぼ同様の結果を得
る。
【0025】以上のべたことより、中圧力領域(15T
orrから100Torrの範囲)では、プラズマを維
持するに必要な最低の電圧(Sustaining V
oltage)が低くなることは装置の使い勝手、電源
の軽量化および低コスト化の点から好ましく、電子密度
(Ne)の増加はラジカル密度を増加させる効果の点で
好ましい。更に、中圧力領域(15Torrから100
Torrの範囲)では、電子温度が低くなるため、ラジ
カルの生成に対しては不利ではあるが、プラズマの電位
が接地電位であるアノードに対して上昇するため、アノ
ードへのイオンのボンバードメントが発生する。これ
は、硬質炭素膜をアノード側に設置した場合に大変都合
がよい。理由を以下に説明する。
【0026】プラズマ内の電子とイオンはその質量の差
より、同じ電界強度の下で、電子の方が容易に運動す
る。よっで、電子の方がより容器に到達する確率が高く
なる。容器が絶縁体であれば、容器が負に帯電すること
となる。容器が導電体であれば、プラズマに接する容器
がプラズマと同電位であると仮定すると、容器を介して
プラズマの方向に電流が流れる。電流が流れては電荷中
性の条件に反するので、電流のながれをキャンセルする
ようにプラズマの電位は容器に対して正の方向に動く。
すなわち、容器が導電体であろうと絶縁体であろうと、
電子とイオンの移動度の相違により、プラズマは容器に
対して正に帯電する。これは、接地電極側にもイオンシ
ースが存在することを示す。もちろん、カソード(給電
電極側)にもイオンシースが存在する。しかし、通常
は、自然に発生するイオンシースはセルフバイアスによ
り発生するシースよりも十分小さいために無視されてい
る。イオンシースにより発生する電界は、イオンシース
を電気二重層によるコンデンサと等価として見積もるこ
とが可能である。
【0027】電子の速度がボルツマン分布していると仮
定すると、イオンシース内の電子密度は指数関数的に減
少し、イオンシース内の空間電荷はエクスポネンシャル
カーブとなる。イオンシースとプラズマとの境界は、プ
ラズマのバルク電位に対して、 Vt=−κ・Te/2q 程度の電位になる位置と定義するのが妥当である。これ
は、プラズマバルク内の電子がκ・Te/2程度のエネ
ルギーで運動していることによる。電子温度(Te)が
大きくなると電子がイオンシース内に侵入するためイオ
ンシースの厚さdは減少し、電気二重層の容量Cは増加
する。逆に、電子温度(Te)が小さくなると、電気二
重層の容量Cは減少する。イオンシースに蓄積される電
荷量は電子密度(Ne)すまわちイオン密度(Ni)に
比例するため、電気二重層の両端にかかる電圧Vは、 V = Q/C = (Ne)2/3 ・d/ε0 ・S ただし、 dはイオンシースの厚さ Sは電極面積 となる。すなわち、電子温度(Te)が小さいほどイオ
ンシース内の電界は強くなり、アノードへのイオンのボ
ンバードメントは大きくなる。
【0028】従来、アノード側では硬質炭素膜が生成で
きなかったが、本発明の装置では、圧力を中圧力(15
Torrから100Torr)とし、結果として電子温
度を低下させ、もって、アノードにもイオンのボンバー
ドメントを発生させることにより、アノード側でも硬質
炭素膜が成膜できるようになった。円筒形状の感光体を
形成する場合は同軸円筒とする事が好ましい。また、感
光体側を接地して、外側円筒にRF電力を給電してプラ
ズマを生成する場合は外側円筒電極の内周に接してアル
ミナ等の誘電率の高い誘電体を設置するとプラズマの安
定化に効果がある。本発明では高密度のプラズマを生成
するため、ガス温度が上昇しやすく、よって、基体を冷
却しつつ成膜する方法も効果が大きい。幕厚分布改善に
はガス流れが重要であり、外側電極に細孔を開けて、シ
ャワー状にガスを基板に吹きつけてもよい。
【0029】
【発明の効果】本発明により感光体保護膜の欠陥をなく
し、よって、黒ポチの発生を抑制する事ができる。ま
た、本発明によって、より緻密な感光体の保護膜を形成
することができ、感光体の寿命を飛躍的に向上させるこ
とが出来る。さらに、本発明により保護膜の高速成膜が
可能となり、よって、生産性向上と、コスト競争力に寄
与することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 代表的な欠陥を有する薄膜を示す顕微鏡写
真。
【図2】 コーン状欠陥を有する薄膜を示す顕微鏡写
真。
【図3】 メチルアルコール洗浄したもの(B)としな
いもの(A)の薄膜を示す顕微鏡写真。
【図4】 従来条件で作製した炭素薄膜を示す顕微鏡写
真。
【図5】 原料ガスをアンモニア系とした場合の薄膜を
示す顕微鏡写真。
【図6】 パルス放電した場合の薄膜を示す顕微鏡写
真。
【図7】 電子温度(Te)と放電維持電圧(Sust
aining Voltage)の圧力依存性
【図8】 電子温度(Te)と電子密度(Ne)の圧力
依存性
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−190563(JP,A) 特開 平4−211115(JP,A) 特開 平5−156453(JP,A) 特開 平2−30755(JP,A) 特開 昭63−210010(JP,A) 特開 平1−305896(JP,A) 特開 平2−267272(JP,A) 実開 平5−20065(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 16/00 - 16/56

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高周波電界が印加される第1の電極と、接
    地された第2の電極を対向して配置し、前記高周波電界
    の印加を制御してプラズマの発生と停止を繰り返し、当
    該発生させたプラズマ中に導入した原料ガスを活性化せ
    しめて被膜を形成する被膜形成方法であって、 前記第1の電極と前記第2の電極の間隔は10mm以下
    であり、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極の間の
    圧力は40Torrから60Torrの間であることを
    特徴とする被膜形成方法。
  2. 【請求項2】高周波電界が印加される第1の電極と、接
    地された第2の電極を同心円筒状に対向して配置し、前
    記高周波電界の印加を制御してプラズマの発生と停止を
    繰り返し、当該発生させたプラズマ中に導入した原料ガ
    スを活性化せしめて被膜を形成する被膜形成方法であっ
    て、 前記第1の電極と前記第2の電極の間隔は10mm以下
    であり、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極の間の
    圧力は40Torrから60Torrの間であることを
    特徴とする被膜形成方法。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2において、 前記原料ガスは、エチレンと水素とアンモニアもしくは
    エチレンと水素とアンモニアとヘリウムないし希ガスで
    あることを特徴とする被膜形成方法。
  4. 【請求項4】導電性を有する基体と、前記基体上に形成
    された感光層と、前記感光層上に形成された炭素を主成
    分とする保護膜とを有する感光体の作製方法であって、 高周波電界が印加される第1の電極と、接地された第2
    の電極を対向して配置し、 前記第1の電極と前記第2の電極の間隔は10mm以下
    であり、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極の間の
    圧力は40Torrから60Torrの間であり、 前記高周波電界の印加を制御してプラズマの発生と停止
    を繰り返し、当該発生させたプラズマ中に導入した原料
    ガスを活性化せしめて、前記感光層上に前記保護膜を形
    成することを特徴とする感光体の作製方法。
  5. 【請求項5】導電性を有する基体と、前記基体上に形成
    された感光層と、前記感光層上に形成された炭素を主成
    分とする保護膜とを有する感光体の作製方法であって、 高周波電界が印加される第1の電極と、接地された第2
    の電極を同心円筒状に対向して配置し、 前記第1の電極と前記第2の電極の間隔は10mm以下
    であり、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極の間の
    圧力は40Torrから60Torrの間であり、 前記高周波電界の印加を制御してプラズマの発生と停止
    を繰り返し、当該発生させたプラズマ中に導入した原料
    ガスを活性化せしめて、前記感光層上に前記保護膜を形
    成することを特徴とする感光体の作製方法。
  6. 【請求項6】請求項または請求項において、 前記原料ガスは、エチレンと水素とアンモニアもしくは
    エチレンと水素とアンモニアとヘリウムないし希ガスで
    あることを特徴とする感光体の作製方法。
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