JP3325579B2 - 新規遺伝子組換え体 - Google Patents

新規遺伝子組換え体

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JP3325579B2 JP52748096A JP52748096A JP3325579B2 JP 3325579 B2 JP3325579 B2 JP 3325579B2 JP 52748096 A JP52748096 A JP 52748096A JP 52748096 A JP52748096 A JP 52748096A JP 3325579 B2 JP3325579 B2 JP 3325579B2
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隆 島田
勝彦 秋山
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    • C12N2740/16051Methods of production or purification of viral material
    • C12N2740/16052Methods of production or purification of viral material relating to complementing cells and packaging systems for producing virus or viral particles

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、組換えヒト免疫不全ウイルスベクターとそ
の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明はCD4陽
性細胞が原因となる疾患に対する遺伝子治療に有用な新
規の組換えヒト免疫不全ウイルスベクターとその製造方
法に関する。
背景技術 後天性免疫不全症候群(AIDS)はヒト免疫不全ウイル
ス(HIV)感染によって引き起こされ、細胞性免疫が著
しい障害を受ける結果、種々の日和見感染、リンパ腫、
神経障害等を発症する疾患である。現在用いられている
HIV治療薬はヌクレオチド系逆転写酵素阻害薬といわれ
る薬剤であり、アジドチミジン(AZT)、シダノシン(d
dI)、ザルシタビン(ddC)、等が単独あるいは併用で
使用されている。しかし、これらの薬剤には既に感染し
た細胞を除去する作用はなく、また、強い骨髄抑制、消
火器症状等の重篤な副作用や薬剤耐性ウイルスが出現す
る等の大きな問題があり、より有効性が高く、副作用、
耐性化の少ない新しいタイプの薬剤の開発が強く望まれ
ている。
遺伝子治療とは、薬剤として作用する外来遺伝子を体
内に導入し発現させることで疾患の治療を行おうとする
全く新しい治療方法である。遺伝子治療によって治療効
果が期待できる疾患は先天性、後天性を問わず遺伝子の
異常が原因で発症する疾患すべてが含まれるが、特に、
致死的であり、かつ治療法が確立されていない癌やAIDS
に対しては非常に有用性の高い治療方法であると考えら
れている。米国においては既にアデノシンデアミナーゼ
(ADA)欠損症、低密度リポ蛋白質(LDL)受容体欠損
症、あるいは嚢胞性肺線維症等の遺伝病、脳腫瘍や悪性
黒色腫等の癌に対する遺伝子治療が開始されている。ま
た最近では、AIDSをはじめとしたウイルス感染症に対す
る遺伝子治療の基礎的検討も数多くなされている。
AIDSに対する遺伝子治療において薬物遺伝子の候補と
なるものには、TARデコイ、RREデコイなどのRNAデコイ
によってHIV複製を強力に促進するといわれるTatやRev
の作用を抑制する方法(Sullenger B.A.,et al.,Cell
63 601 1990)、アンチセンスオリゴヌクレオチド
でHIVのmRNAやDNAとハイブリダイズさせる方法(Chatte
rjee S.,et al.,Science 258 1485 1992)、リボ
ザイムによってHIVのRNAを切断する方法(Steve1o K.
M.,et al.,Virology 190 176 1992)、あるいは、
トランスドミナントミュータントによりHIVの複製に必
須の蛋白の機能を抑制する方法(Hope T.J.,et al.,
J.Virol.66 1849 1992)、等が現在考えられている。
これらはHIVの複製メカニズムをうまく利用した治療シ
ステムであるが、HIVの複製能力を上回る薬物遺伝子の
発現性が求められ、今後効率良い遺伝子発現のためのプ
ロモーターの開発が必要になってくるものと思われる。
また最近では、毒性を有さないプロドラッグを毒性型
に変換する酵素遺伝子を導入する方法も検討されてい
る。グアノシンアナログであるガンシクロビル〔9−
(1,3−dihydroxy−2−propoxymethyl)guanine 以下
GCVと略記する〕は、細胞内で酵素的なリン酸基付加反
応を受けトリリン酸化体へと修飾されると、通常の核塩
基と同様にDNAに取り込まれる。細胞のDNA伸長反応はこ
の時点で停止し細胞死が起こる。このトリリン酸化体が
生成されるリン酸化反応には2種類の酵素が必要であ
る。まず、GCVのモノリン酸化反応はウイルス感染細胞
にのみに見い出されるウイルス由来チミジンキナーゼに
よって触媒される。したがって、ウイルス感染を受けて
いない正常細胞ではこのようなリン酸化反応は起こらな
い。GCVのモノリン酸化体はさらに細胞由来のホスホリ
ラーゼによって2個のリン酸基が付加され、GCVトリリ
ン酸化体が生成する。これらの作用メカニズムを利用し
てGCVは抗ウイルス薬として用いられているが、近年、
遺伝子治療の分野においてもこれらのシステムが応用さ
れるようになってきた。すなわち、癌細胞を生体から除
去するための手段として、ウイルス由来チミジンキナー
ゼをコードする遺伝子を癌細胞に導入した後、GCVを作
用させ細胞死を誘導して癌の治療を行おうとするもので
ある(Shu−Hsia Chen,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA,91,3054,1994)。
この治療システムをAIDSの遺伝子治療に応用しようと
する試みもなされている。Venkateshらは、HIV LTRの
下流にチミジンキナーゼ遺伝子を連結しこれらの遺伝子
をアデノウイルスのゲノム構造内に挿入した組換えアデ
ノウイルスベクターを構築している(Venkatesh L.K.,
et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87 8746 1990)。
一方、治療成績を向上させるために上述の薬物遺伝子
の開発とともに重要な因子となるものが、標的細胞への
薬物遺伝子の導入効率である。これまでにより高い効率
で遺伝子を導入するための種々の導入方法が試みられて
いる。1980年代初期にはマイクロインジェクションなど
物理的手法の応用が試みられたが、遺伝子の導入効率が
低く、安定に導入することができず、さらには当時の大
量細胞培養技術の限界等もあり実用化にはつながらなか
った。その後、外来遺伝子を効率良く標的細胞に導入す
るためのベクターとなる組換えウイルス(ウイルスベク
ター)が開発され、初めて遺伝子治療の臨床応用が可能
となった。
ウイルスベクターには以下に示すようにいくつかの種
類があるが、現在おこなわれている遺伝子治療におい
て、最も広く使用されているウイルスベクターは、マウ
ス白血病ウイルス(MoMLV:Moloney Murine Leukemia
Virus)由来のレトロウイルスベクターであり、本ウ
イルスの増殖様式の利点を利用して遺伝子を導入するも
のである。レトロウイルスは、エンベロープをもつRNA
ウイルスであり、そのエンベロープ蛋白と宿主細胞側の
レセプターが結合することにより細胞内に侵入する。侵
入後、単一鎖ウイルスRNAが逆転写酵素により二重鎖DNA
に変換され、感染細胞ゲノムDNAに、無作為であるが安
定的に組み込まれる。ただし組み込まれるためには、細
胞が分裂増殖していなければならない(Miller D.G.,e
t al.,Molecular and Cellular Biology,10 8 4
239 1990)。組み込まれたレトロウイルス遺伝子はプ
ロウイルスと呼ばれる。そのプロウイルスからRNAが転
写され、ウイルス蛋白が合成される。それらの蛋白とウ
イルスRNAにより、新しいウイルス粒子がつくられる。
この場合のレトロウイルス遺伝子を外来遺伝子に組換え
たものがレトロウイルスベクターである(Miller A.
D.,Current Topics in Microbiology and Immunol
ogy,158,1,1992)。このMoMLVベクターは宿主域が非常
に広いことから種々の細胞に対しての遺伝子導入が可能
である。また、安全性についてもこれまでに多くの研究
がなされてきたが、現在まで大きな問題は発生していな
い(Kenneth C.,Br.J.Hematol.,80,421,1992)。
また、遺伝子導入に用いる他のウイスルベクターとし
てアデノウイスルベクターがある。アデノウイルスベク
ターは非分裂細胞へも遺伝子が導入できること、またベ
クターを容易に10の10乗程度まで濃縮できるため最近最
も注目を集めている。最近の研究によりこのアデノウイ
ルスベクターで、気道上皮細胞、肝細胞、筋細胞などへ
in vivoで高率に遺伝子導入できることが示されてい
る。その一方で、本ベクターには外来遺伝子が標的細胞
ゲノムDNAに組み込まれないという本質的な性質があ
り、ベクターを標的細胞に作用させても数週間、長くて
も数カ月で遺伝子導入の効果はなくなってしまう。その
ため遺伝子導入を頻回に繰り返す必要があり、患者への
肉体的、精神的な負担の増加、抗アデノウイルス抗体の
出現による遺伝子導入効率の低下等が問題となってい
る。
一方、AAV(Adeno−associated virus)ベクター
は、外来遺伝子が標的細胞ゲノムDNA内に組み込まれる
こと、ならびに病原性、細胞毒性がないこと(Kotin
R.M.,Hum.Gene Ther.,5,793−901,1994;Nienhuis A.
W.et al.,Viruses and Bone Marrow,Dekker Inc.,
353−414,1993)などを特徴としている。さらに、ウイ
ルス粒子へのパッケージングやゲノムDNAへの遺伝子組
み込みに必要なITR(Inverted Terminal Repeat)は
遺伝子発現のためのプロモーション活性がないことか
ら、自由に内部プロモーターを設定することにより、遺
伝子発現のオン/オフや組織特異的プロモーターの使用
が可能となると同時に、宿主範囲が広く様々な標的細胞
/疾患に対応できるため、MoMLVベクターに代わる新し
いウイルスベクターとして期待されている。また、野生
型のAAVは第19染色体の特定の位置に組み込まれること
も発見され(Samulski R.J.et al.,EMBO J.,10,3941
−3980,1991)、遺伝子組み込み位置をターゲティング
できるベクターとして注目されている。
以上に述べたMoMLVベクター、アデノウイルスベクタ
ー、およびAAVベクターには宿主特異性がないという共
通した性質がある。この性質は生体中の多くの細胞をこ
れらのウイルスベクターで治療しうることを示してお
り、これらのウイルスベクターを用いれば様々な疾患に
対応することが可能である。
しかしながら、これらのウイルスベクターの宿主特異
性がないという本質的な性質は反面において生体への投
与を困難にしている。実際にこれらのウイルスベクター
を治療に用いる場合には投与方法に工夫が必要であり、
特に血球系の細胞に対しては治療の対象となる細胞を生
体の外に取り出し、遺伝子導入を行った後に再び生体に
戻す方法(ex vivo 遺伝子導入)や、臓器、組織に定
着している細胞の場合には治療の対象となる臓器、組織
に対して局所的に投与する方法がとられており、前者の
場合には特殊な設備を必要とし、治療を行うことができ
る施設が限られてしまうという問題、後者の場合には、
局所的な投与を行うための手術を必要とする場合がある
こと等の問題がある。また、特に、細胞死を誘導するこ
とにより疾患の治療を行う場合には、安全性の面から標
的細胞のみに遺伝子導入がなされることが必須であり、
前述のウイルスベクターではこの条件を満たすことは不
可能である。
AIDSにおいては、CD4陽性Tリンパ球が遺伝子治療に
おける標的細胞である。近年、AIDSの遺伝子治療を目的
とした薬物遺伝子が数多く開発され、このような遺伝子
をCD4陽性Tリンパ球に効率良く且つ特異的に送達する
システムの開発が強く望まれている。特に、細胞死を誘
導する遺伝子を導入することでAIDSの治療を行おうとす
る場合、安全性の面からCD4陽性Tリンパ球のみに遺伝
子導入がなされなければならない。ところが、これまで
臨床で用いられてきたMoMLVベクター、アデノウイルス
ベクター、およびAAVベクターなどのウイルスベクター
は、上述したように、組織特異性がないためにこの条件
を満たすことができない。
発明の開示 本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたもので
あり、直接的あるいは間接的に細胞を障害するための遺
伝子をCD4陽性Tリンパ球に効率良く且つ特異的に導入
するシステムを提供することを目的としている。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意研究
した結果、ヒト免疫不全ウイルスベクターにより細胞障
害遺伝子がCD4陽性細胞に対して効率良く且つ特異的に
導入でき、さらに、導入された遺伝子がHIV感染細胞の
みで発現することを見いだして本発明を完成した。
すなわち、本発明は細胞毒であるチミジンキナーゼを
コードするDNA配列を保持する組換えヒト免疫不全ウイ
ルスベクターであって、チミジンキナーゼをコードする
DNA配列の上流に内部プロモーターが存在せず、HIV LT
Rによってのみ該遺伝子がドライブされることを特徴と
する組換えヒト免疫不全ウイルスベクターを提供する。
図面の簡単な説明 図1は、組換えプラスミドHXTKNの構造を示す模式図
である。
図2は、ヘルパープラスミドCGPE(−)の構造を示す
模式図である。
図3は、ベクタープラスミドHXNの構造を示す模式図
である。
図4は、組換えウイルスによる遺伝子導入で得られた
G418耐性コロニーを示す図(生物の形態を示す写真)で
ある。
図5は、Xho IでゲノムDNAを処理後に行ったサザン
ブロッティングの結果を示す図(電気泳動の写真)であ
る。
図6は、Sca IでゲノムDNAを処理後に行ったサザン
ブロッティングの結果を示す図(電気泳動の写真)であ
る。
図7は、TatをコードするプラスミドBTAT/LHの構造を
示す模式図である。
図8は、Tat依存的なRNA発現を示すノーザンブロッテ
ィングの結果を示す図(電気泳動の写真)である。
発明を実施するための最良の形態 本発明において使用するウイルスベクターはヒト免疫
不全ウイルスベクターである。ヒト免疫不全ウイルス
(HIV)はヒトのCD4陽性Tリンパ球に特異的に感染する
ことが知られている。これは、感染の際にHIVのエンベ
ロープ蛋白gp120がCD4陽性Tリンパ球表面に存在するCD
4蛋白に特異的に結合するためである。本発明のウイル
スベクターはHIVベクターのこれらの特異的感染システ
ムを応用するものである(Shimada T.,et al.,J.Cli
n.Invest.88 1043 1991)。
本発明においてはHIVベクターに、細胞毒であるチミ
ジンキナーゼをコードするDNA配列を組み込むことによ
って調製される。細胞毒とは細胞内で細胞障害性遺伝子
として作用しうる物質を意味し、毒性のないプロドラッ
グを細胞障害性のある物質に変換する酵素遺伝子、例え
ばGCVのモノリン酸化を触媒して細胞死を起こさせるチ
ミジンキナーゼ、ならびに細胞を直接殺傷するジフテリ
アトキシン、破傷風トキシン、コレラトキシンなどの各
種トキシンの遺伝子がある。細胞毒として使用する酵素
遺伝子であるチミジンキナーゼの中、ヒト単純ヘルペス
ウイルス由来のチミジンキナーゼが特に好ましい。ま
た、トキシンとしてはジフテリアトキシンが好ましい。
本発明の細胞毒は分子生物学の分野で公知の遺伝子組
換え法を用いてHIVベクターに組み込むことができる。
本発明のヒト免疫不全ウイルスベクターの好ましい態
様においては、細胞毒をコードするDNA配列の上流に内
部プロモーターが存在せず、HIV LTRによってのみ該遺
伝子がドライブされるように構築することができる。こ
の結果、遺伝子はHIV由来のTat蛋白の存在下でのみ発現
するので、たとえHIVに感染していないCD4陽性Tリンパ
球に遺伝子導入がされても該遺伝子は発現せず、細胞死
は誘導されない。この態様では、HIVに感染した細胞の
みを選択的に殺傷することができ、極めて特異性の高い
治療を期待できる。
例えば、本発明の好ましい特異的遺伝子導入ウイルス
ベクターは以下のように調製される。
本発明のウイルスベクターは、図2に示されるヘルパ
ープラスミド、すなわち、5'末端から3'末端方向に順
次、サイトメガロウイルスのプロモーター、HIVのgag、
pol及びenvをコードしパッケージングシグナルを欠失し
た遺伝子、ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼのプ
ロモーター、及びネオマイシン耐性遺伝子を含み、これ
らをアンピシリン耐性遺伝子及びSV40の複製開始点を含
むプラスミドベクターに挿入したプラスミド、及び図1
に示されるベクタープラスミド、すなわち、5'末端と3'
末端にHIVの長い末端反復(Long Terminal Repeat:LT
R)があり、その間に5'側から3'方向に順に細胞に障害
を与えるための遺伝子、ヘルペスウイルス由来チミジン
キナーゼのプロモーター、及びネオマイシン耐性遺伝子
を挿入し、これらをアンピシリン耐性遺伝子及びSV40の
複製開始点を含むプラスミドベクターに組み込んだプラ
スミド、をCOS細胞にコトランスフェクションすること
により得られる。
このようにして得られた本発明のHIVベクターはヒト
のCD4陽性Tリンパ球に対して特異的に遺伝子導入がで
きるだけでなく、HIVに感染した細胞のみを選択的に殺
傷することができる。本発明における細胞障害性遺伝子
はHIV LTRによりドライブされるために、遺伝子はHIV
由来のTat蛋白の存在下でのみ発現し、たとえHIVに感染
していないCD4陽性Tリンパ球に遺伝子導入がなされて
も細胞死が誘導されることはない。また、該HIVベクタ
ーによる遺伝子導入法によれば外来遺伝子がゲノムDNA
内に安定的に組み込まれ、細胞分裂後の娘細胞にも導入
遺伝子が受け継がれるために感染の予防にも有用性が高
い。よって、本発明のHIVベクターは従来のMoMLVベクタ
ー、アデノウイルスベクター、AAVベクターなどがもっ
ていた種々の欠点を克服する極めて広い応用範囲が期待
できる遺伝子治療用ベクターである。
実施例 以下、実施例を示してこの発明をさらに詳しく説明す
るが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
実施例1:プラスミドの構築 全てのプラスミドの構築に関する操作は一般的な遺伝
子操作法を用いて行った。組換えプラスミドHXTKNは、
図1に示すように5'から3'方向に順次、HIV LTR、ヒト
単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ遺伝子(t
k)、ヒト単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ
遺伝子のプロモーター(TK)、ネオマイシン耐性遺伝子
(neo)、およびHIV LTRを有し、これらをSV40の複製
開始点を含むプラスミドベクター(Shimada T.,et a
l.,J.Clin.Invest.88 1043 1991)に挿入することに
より構築した。
実施例2:組換えウイルスの調製 実施例1によって得たHXTKN 10μgと、HIVゲノム配
列中のgag、pol、env遺伝子を含みパッケージングシグ
ナルを欠損している遺伝子群の上流にサイトメガロウイ
ルスのプロモーターを配置した遺伝子構築物をアンピシ
リン耐性遺伝子とSV40の複製開始点を含む発現ベクター
に挿入したヘルパープラスミドCGPE(−)(図2)10μ
gとを混合し、滅菌精製水および塩化カルシウム水溶液
を添加して全量を0.5mlにした。この混合液を0.5mlのHB
SP緩衝液中に振盪しながら滴下し、30分間室温で放置し
てプラスミドーリン酸カルシウム共沈物を得た。9cmの
培養皿で約70%コンフレントの状態に培養されたCOS細
胞の培養液中に共沈物を添加してCO2インキュベーター
内で4時間インキュベーション後、新鮮な培養液に置換
してさらに2日間インキュベーションし、得られた培養
上清液をウイルス液とした。陰性対照群としてCGPE
(−)10μgのみをトランスフェクションした群、およ
び陽性対照群としてベクタープラスミドHXN(図3)(S
himada T.,et al.,J.Clin.Invest.88 1043 1991)1
0μgとCGPE(−)10μgをコトランスフェクションし
た群も同様にウイルス液を調製した。
実施例3:組換えウイルスによる細胞のトランスダクショ
ンおよび薬剤耐性株のクローニング 60mmの培養皿当り2×105個のCD4陽性HeLa細胞を播種
して一晩培養した。実施例2で得られたウイルス液を3m
l、30μgのポリブレンと共に添加し(トランスダクシ
ョン)CO2インキュベーター内に2日間放置後、トリプ
シン−EDTA混液により細胞を培養皿から剥がし、90mmの
培養皿に再播種した。6時間CO2インキュベーター内で
インキュベーション後、培養液中にG−418が750μg/ml
となるように添加した。さらに10日間インキュベーショ
ンし、培養液中にネオマイシン類縁物質であるG−418
を最終濃度1000μg/mlとなるように添加した。さらに10
日間インキュベーションし、G−418耐性を獲得したコ
ロニーを得た。コロニーはクリスタルバイオレットによ
り染色した。結果を図4に示す。陰性対照群では組換え
ウイルスベクターが生成しないためにすべての細胞が死
滅した。一方、CGPE(−)とHXNをコトランスフェクシ
ョンした群およびCGPE(−)とHXTKNをコトランスフェ
クションした群では、薬剤耐性を示すコロニーが多数見
られた。両群でのコロニーの数はほぼ同等であった。こ
れは、tk遺伝子を組換えHIVベクターのゲノムDNA内に挿
入しても組換えHIVベクターの力価が低下することはな
いこと、およびtk遺伝子を細胞に導入しても細胞毒性が
ないおことを示す。また、一部のコロニーは以降の解析
に用いるためにトリプシン−EDTA混液で培養皿から剥が
し、それぞれ別の培養皿に再播種した。
実施例4:トランスダクションを受けたCD4陽性HeLa細胞
からのゲノムDNA抽出およびサザンブロッティングによ
る遺伝子導入の確認 90mmの培養皿中でコンフレントになった細胞をトリプ
シン−EDTA混液で処理することにより培養皿から剥が
し、界面活性剤を添加して細胞を溶解した。プロテイナ
ーゼKを最終濃度200μg/mlとなるように加え、37℃で
3時間インキュベートした。フェノール/クロロホルム
抽出により除タンパクを行った後、トリス/EDTA緩衝液
に対して一晩透析した。塩化ナトリウム(最終濃度0.2
M)、RNase A(最終濃度100μg/ml)、及びプロテイ
ナーゼK(最終濃度100μg/ml)を添加し、37℃で3時
間インキュベーションを行い、フェノール/クロロホル
ム抽出後、再度トリス/EDTA緩衝液に対して透析した。
2日後、透析を完了しゲノムDNAを得た。
サザンブロティングは常法に従い行った。10μgのゲ
ノムDNAを制限酵素Xho IまたはSca Iにより処理し
た。陰性対照群として組換えウイルスを作用させていな
いCD4陽性HeLa細胞についても同様の操作を行った。プ
ローブは32Pで放射標識したneo遺伝子(600bp)を用い
た。図5及び図6に結果を示す。クローンはG−418耐
性を獲得した単一の細胞株、バルクは50個のクローンを
混合したものである。Xho Iにより処理した群では3.6
kbに放射活性が認められたことから、本組換えウイルス
ベクターにより組換え遺伝子がレアレンジメントを起こ
すことなくゲノムDNAに挿入されていることが確認され
た。
実施例5:Tat依存的なRNA発現の確認 実施例3で得られた細胞株(クローン)に対して図7
に示すTatをコードするプラスミドBTAT/LH 10μgをリ
ン酸カルシウム法によりトランスフェクションした。ま
た、陰性対照群として、組換えウイルスを作用させてい
ないCD4H細胞に対しても同様にトランスフェクションを
行った。CO2インキュベーター内で2日間放置した後細
胞を培養皿から剥がし、グアニジンイソチオシアネート
を含む細胞溶解液で処理した。塩化セシウム密度勾配遠
心法によりタンパク、DNAを除去してRNAのみを単離し
た。電気泳動後、常法にしたがってノーザンブロティン
グを行った。プローブは32Pで放射標識したtk遺伝子(6
00bp)を用いた。図8に示すように、陰性対照群および
BTAT/LHをトランスフェクションしていないクローンで
はtk遺伝子の発現が見られないのに対して、BTAT/LHを
トランスフェクションしたクローンではTat依存的にRNA
が発現されていることが確認された。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Proc.Natl.Acad.Sc i.USA,1994年,Vol.91,N o.1,p.365−369 J.Virol.,1995年 1月,V ol.69,No.1,p.110−121 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/85 - 15/869 A61K 31/711 A61K 48/00 A61P 31/18 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS) MEDLINE(STN) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】細胞毒であるチミジンキナーゼをコードす
    るDNA配列を保持する組換えヒト免疫不全ウイルスベク
    ターであって、チミジンキナーゼをコードするDNA配列
    の上流に内部プロモーターが存在せず、HIV LTRによっ
    てのみ該遺伝子がドライブされることを特徴とする組換
    えヒト免疫不全ウイルスベクター。
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J.Virol.,1995年 1月,Vol.69,No.1,p.110−121
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