JP3324630B2 - 耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピストンおよびその製造方法 - Google Patents
耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピストンおよびその製造方法Info
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- JP3324630B2 JP3324630B2 JP08112195A JP8112195A JP3324630B2 JP 3324630 B2 JP3324630 B2 JP 3324630B2 JP 08112195 A JP08112195 A JP 08112195A JP 8112195 A JP8112195 A JP 8112195A JP 3324630 B2 JP3324630 B2 JP 3324630B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、油圧ショベルの油圧ブ
レーカ内部に組み込まれるピストンなど、各種の土木建
設機械に使用される強靭ピストンに関する。
レーカ内部に組み込まれるピストンなど、各種の土木建
設機械に使用される強靭ピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】油圧ショベルの油圧ブレーカ内部に組み
込まれる図2に示すようなピストンを始めとして、土木
建設機械に使用される各種のピストン類はチゼルなどと
激しく衝突するため、強度(硬度)と靭性が共に必要と
される。すなわちピストン1は、チゼルなどの極めて硬
い部品と衝突することにより先端である衝突部3に所謂
「へたり」を生じ、それによる「かえり」4のため滑ら
かな動きを妨げられることとなるので、上記の「へた
り」による「かえり」4を防止するための硬度を要求さ
れる。しかしながら硬いばかりであると靭性が低くなる
ため、衝突時の激しい衝撃に耐えきれず本体部2や衝突
部3に割れ5が起こるという問題が生じるので、靭性が
同時に要求されることとなる。
込まれる図2に示すようなピストンを始めとして、土木
建設機械に使用される各種のピストン類はチゼルなどと
激しく衝突するため、強度(硬度)と靭性が共に必要と
される。すなわちピストン1は、チゼルなどの極めて硬
い部品と衝突することにより先端である衝突部3に所謂
「へたり」を生じ、それによる「かえり」4のため滑ら
かな動きを妨げられることとなるので、上記の「へた
り」による「かえり」4を防止するための硬度を要求さ
れる。しかしながら硬いばかりであると靭性が低くなる
ため、衝突時の激しい衝撃に耐えきれず本体部2や衝突
部3に割れ5が起こるという問題が生じるので、靭性が
同時に要求されることとなる。
【0003】そこで従来、前記ピストン類には強度(硬
度)と靭性の両方を具備させるために、この両者に優れ
るSNC631鋼(JIS G 4102(1979))やSNCM42
0鋼(JIS G 4103(1979))などをベースに成分改良を行
ったNi添加系の鋼が用いられてきた。
度)と靭性の両方を具備させるために、この両者に優れ
るSNC631鋼(JIS G 4102(1979))やSNCM42
0鋼(JIS G 4103(1979))などをベースに成分改良を行
ったNi添加系の鋼が用いられてきた。
【0004】ところが、最近、土木建設機械の使用され
る環境がますます過酷なものとなってきたため前記した
Ni添加系の高価な従来鋼を用いても、靭性を持たせ
た場合には強度(硬度)不足でピストンの衝突部3に
「へたり」を生じ、それによる大きな「かえり」4のた
めピストンの滑らかな動きが妨げられる。「へたり」
を生じないように強度(硬度)を高くした場合には激し
い衝撃によってピストンの本体部2や衝突部3に微細な
亀裂が発生し、この微細亀裂を起点としてピストンに割
れ5が生じてしまう、という問題が起ってきた。
る環境がますます過酷なものとなってきたため前記した
Ni添加系の高価な従来鋼を用いても、靭性を持たせ
た場合には強度(硬度)不足でピストンの衝突部3に
「へたり」を生じ、それによる大きな「かえり」4のた
めピストンの滑らかな動きが妨げられる。「へたり」
を生じないように強度(硬度)を高くした場合には激し
い衝撃によってピストンの本体部2や衝突部3に微細な
亀裂が発生し、この微細亀裂を起点としてピストンに割
れ5が生じてしまう、という問題が起ってきた。
【0005】そのため産業界からは、耐へたり性に優れ
た土木建設機械用の各種強靭ピストンの開発が待望され
ていた。
た土木建設機械用の各種強靭ピストンの開発が待望され
ていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、油圧
ショベルの油圧ブレーカ内部に組み込まれるピストンな
ど、各種の耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピス
トンとその製造方法を提供することにある。
ショベルの油圧ブレーカ内部に組み込まれるピストンな
ど、各種の耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピス
トンとその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の課題を
達成するため、落錘型試験機を用いた落下試験と実機に
組み込んだフィールドでの予備テストを行って検討を重
ねた結果、先ず、下記(a)〜(f)の知見を得た。こ
こで、落錘型試験機を用いた落下試験は、治具に固定し
た状態の試験片(直径:130mmφ、長さ:400m
m、先端部R:300mm)を高さ2mの位置からバウ
ンド防止装置を付けたSKD11鋼(JIS G 4404(198
3))製の定盤の上に連続して1000回自然落下させ、
「へたり」と割れを調査した。なお1000回の落下テ
スト後、試験片の先端部温度は約300℃に上昇してい
た。
達成するため、落錘型試験機を用いた落下試験と実機に
組み込んだフィールドでの予備テストを行って検討を重
ねた結果、先ず、下記(a)〜(f)の知見を得た。こ
こで、落錘型試験機を用いた落下試験は、治具に固定し
た状態の試験片(直径:130mmφ、長さ:400m
m、先端部R:300mm)を高さ2mの位置からバウ
ンド防止装置を付けたSKD11鋼(JIS G 4404(198
3))製の定盤の上に連続して1000回自然落下させ、
「へたり」と割れを調査した。なお1000回の落下テ
スト後、試験片の先端部温度は約300℃に上昇してい
た。
【0008】(a)落錘型試験機を用いた落下試験で試
験片に割れを生じないためには試験片中心部の靭性とし
てJIS3号試験片での常温における衝撃値が15J/
cm2以上あれば良いこと。
験片に割れを生じないためには試験片中心部の靭性とし
てJIS3号試験片での常温における衝撃値が15J/
cm2以上あれば良いこと。
【0009】(b)窒化処理後、中心部から採取したJ
IS3号試験片での常温における衝撃値を15J/cm
2 以上となして通常の方法で作製したピストン1は、フ
ィールドテスト中の衝撃に充分耐えて本体部2で割れを
生じないこと。
IS3号試験片での常温における衝撃値を15J/cm
2 以上となして通常の方法で作製したピストン1は、フ
ィールドテスト中の衝撃に充分耐えて本体部2で割れを
生じないこと。
【0010】(c)落下試験に用いた試験片の表面(先
端)から10mmの位置および中心部での硬度がそれぞ
れHR Cで55以上と53以上であれば、試験片の先端
部における「へたり」の量は2mm未満と僅かでありま
た「かえり」も極めて小さいこと。
端)から10mmの位置および中心部での硬度がそれぞ
れHR Cで55以上と53以上であれば、試験片の先端
部における「へたり」の量は2mm未満と僅かでありま
た「かえり」も極めて小さいこと。
【0011】(d)窒化処理後、表面(先端)から10
mmの位置および中心部での硬度をそれぞれHR Cで5
5以上と53以上となして通常の方法で作製したピスト
ン1は、50時間のフィールドテストを行ってチゼルな
どの極めて硬い部品と衝突させた場合でも、ピストンの
衝突部3における「へたり」の量は僅かであり、また
「かえり」4も極めて小さいため、滑らかなピストンの
動きが達成できること。
mmの位置および中心部での硬度をそれぞれHR Cで5
5以上と53以上となして通常の方法で作製したピスト
ン1は、50時間のフィールドテストを行ってチゼルな
どの極めて硬い部品と衝突させた場合でも、ピストンの
衝突部3における「へたり」の量は僅かであり、また
「かえり」4も極めて小さいため、滑らかなピストンの
動きが達成できること。
【0012】(e)上記(a)〜(d)から、過酷な環
境で使用される土木建設機械用のピストンに強度(硬
度)と靭性の両方を具備させるためには、図1に示すよ
うにピストン1の構造を本体部2と先端の衝突部3とに
分け、本体部2と衝突部3にはそれぞれ高い靭性を有す
る鋼材と硬い鋼材とを使い分ければ良いこと。
境で使用される土木建設機械用のピストンに強度(硬
度)と靭性の両方を具備させるためには、図1に示すよ
うにピストン1の構造を本体部2と先端の衝突部3とに
分け、本体部2と衝突部3にはそれぞれ高い靭性を有す
る鋼材と硬い鋼材とを使い分ければ良いこと。
【0013】(f)本体部2と衝突部3の組み合わせ方
法は冷し嵌めが最適で、この方法によれば実機で使用中
に先端部3が本体部2から抜け出ることはないこと。ま
た使用時の熱膨張差による本体部2と衝突部3の長さ変
化を吸収するために、本体部2と衝突部3との間には空
隙8を設けておけば良いこと。
法は冷し嵌めが最適で、この方法によれば実機で使用中
に先端部3が本体部2から抜け出ることはないこと。ま
た使用時の熱膨張差による本体部2と衝突部3の長さ変
化を吸収するために、本体部2と衝突部3との間には空
隙8を設けておけば良いこと。
【0014】しかしながら、後の「実施例1」の項で詳
述するように、表1に示すSNC631鋼(JIS G 4102
(1979))、SCM440鋼(JIS G 4105(1979))、SK
D11鋼(JIS G 4404(1983))およびSKD12鋼(JI
S G 4404(1983))を用いて、落錘型試験機用の前記した
落下試験片を、図3の従来タイプの一体物と図4の
ように本体部6と先端の衝突部7に異なった鋼種を使用
し、冷し嵌めして組み合わせた物、との2種類作製し落
錘型試験機を用いた落下試験を行ったところ、下記の事
実が判明した。
述するように、表1に示すSNC631鋼(JIS G 4102
(1979))、SCM440鋼(JIS G 4105(1979))、SK
D11鋼(JIS G 4404(1983))およびSKD12鋼(JI
S G 4404(1983))を用いて、落錘型試験機用の前記した
落下試験片を、図3の従来タイプの一体物と図4の
ように本体部6と先端の衝突部7に異なった鋼種を使用
し、冷し嵌めして組み合わせた物、との2種類作製し落
錘型試験機を用いた落下試験を行ったところ、下記の事
実が判明した。
【0015】すなわち、表2に示すように、SNC63
1鋼とSCM440鋼を素材とした一体物試験片には割
れの発生は認められなかったが大きな「へたり」が生じ
た。
1鋼とSCM440鋼を素材とした一体物試験片には割
れの発生は認められなかったが大きな「へたり」が生じ
た。
【0016】またSKD11鋼とSKD12鋼を素材と
した一体物試験片に生じた「へたり」はいずれも1.2
mmと小さかったが本体部と先端の衝突部に割れ(クラ
ック)が発生した。一方、SNC631鋼やSCM44
0鋼を本体部6に使用しSKD11鋼やSKD12鋼を
先端の衝突部7に用いた組み合わせタイプの試験片にお
いては、「へたり」量は1.2〜1.3mmと小さくま
た本体部6に割れは発生しなかった。しかしながら先端
の衝突部7には割れが認められた。
した一体物試験片に生じた「へたり」はいずれも1.2
mmと小さかったが本体部と先端の衝突部に割れ(クラ
ック)が発生した。一方、SNC631鋼やSCM44
0鋼を本体部6に使用しSKD11鋼やSKD12鋼を
先端の衝突部7に用いた組み合わせタイプの試験片にお
いては、「へたり」量は1.2〜1.3mmと小さくま
た本体部6に割れは発生しなかった。しかしながら先端
の衝突部7には割れが認められた。
【0017】従って、本体部に高い靭性を有する鋼材を
使用しても、先端の衝突部に硬い鋼素材を用いるだけで
は、ピストンとして実機に組み込んだ場合、短時間の使
用には充分耐えられるが、長時間の使用には耐えきれな
いことも考えられる。
使用しても、先端の衝突部に硬い鋼素材を用いるだけで
は、ピストンとして実機に組み込んだ場合、短時間の使
用には充分耐えられるが、長時間の使用には耐えきれな
いことも考えられる。
【0018】そこで次に本発明者は、本体部にSCM4
40鋼を使用して先端の衝突部に適した鋼材について種
々検討を重ねた結果、下記(g)〜(k)の知見を得る
に至った。
40鋼を使用して先端の衝突部に適した鋼材について種
々検討を重ねた結果、下記(g)〜(k)の知見を得る
に至った。
【0019】(g)落錘型試験機を用いた落下試験で組
み合わせタイプの試験片の衝突部7に割れを生じないた
めには、衝突部7の表面(先端)から40mmの位置で
の靭性としてJIS3号試験片での常温における衝撃値
が15J/cm2以上あれば良いこと。
み合わせタイプの試験片の衝突部7に割れを生じないた
めには、衝突部7の表面(先端)から40mmの位置で
の靭性としてJIS3号試験片での常温における衝撃値
が15J/cm2以上あれば良いこと。
【0020】(h)窒化処理後、衝突部3の表面(先
端)から40mmの位置から採取したJIS3号試験片
での常温における衝撃値を15J/cm2 以上となして
作製した図1の組み合わせタイプのピストンは、フィー
ルドテスト中の衝撃に充分耐えて衝突部3に割れを生じ
ないこと。
端)から40mmの位置から採取したJIS3号試験片
での常温における衝撃値を15J/cm2 以上となして
作製した図1の組み合わせタイプのピストンは、フィー
ルドテスト中の衝撃に充分耐えて衝突部3に割れを生じ
ないこと。
【0021】(i)鋼材の化学成分のうちC量を0.9
0質量%以下に制御すれば衝撃特性が著しく向上するこ
と。
0質量%以下に制御すれば衝撃特性が著しく向上するこ
と。
【0022】(j)適正量のCr、MoおよびVを複合
添加することにより、高温での軟化抵抗が向上し、これ
によって耐へたり性が大きく向上すること。
添加することにより、高温での軟化抵抗が向上し、これ
によって耐へたり性が大きく向上すること。
【0023】(k)適正な成分系の場合には、耐へたり
性と耐衝撃特性に関して下記のfn1式で整理でき、こ
の値が4.0%以上の場合には、先端に用いた衝突部3
の鋼材には割れが生じず、また「へたり」量も小さいこ
と。
性と耐衝撃特性に関して下記のfn1式で整理でき、こ
の値が4.0%以上の場合には、先端に用いた衝突部3
の鋼材には割れが生じず、また「へたり」量も小さいこ
と。
【0024】 fn1=(1/3) [%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V] 但し、[%Cr ]はCr含有量の質量%を意味し、[%Mo
]および[%V]についても同様である。
]および[%V]についても同様である。
【0025】上記知見に基づく本発明は下記(1)〜
(4)に示す耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピ
ストンを要旨とする。
(4)に示す耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピ
ストンを要旨とする。
【0026】(1)異なった鋼材質の高靭性本体部と高
硬度衝突部との鋼からなり、その衝突部が質量%で、
C:0.70〜0.90%、Si:0.05〜1.50
%、Mn:0.35〜2.00%、Cr:5.0〜1
0.0%、Mo:1.00〜3.00%、V:0.30
〜0.70%、Ni:0〜1.00%、B:0〜0.0
100%、N:0.02%以下であり、残部はFeおよ
び不可避不純物からなり、かつ、下記fn1の値が4.
00〜7.00%であって、窒化処理が施されている耐
へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピストン。
硬度衝突部との鋼からなり、その衝突部が質量%で、
C:0.70〜0.90%、Si:0.05〜1.50
%、Mn:0.35〜2.00%、Cr:5.0〜1
0.0%、Mo:1.00〜3.00%、V:0.30
〜0.70%、Ni:0〜1.00%、B:0〜0.0
100%、N:0.02%以下であり、残部はFeおよ
び不可避不純物からなり、かつ、下記fn1の値が4.
00〜7.00%であって、窒化処理が施されている耐
へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピストン。
【0027】 fn1=(1/3) [%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V] 但し、[%X]は元素Xの質量%である。
【0028】(2)異なった鋼材質の高靭性本体部と高
硬度衝突部との鋼からなり、その衝突部が上記(1)に
記載の成分に加えて更に、質量%で、0.005〜0.
050%のNb、0.01〜0.10%のTiおよび
0.010〜0.100%のAlのうちの1種以上を含
有し、かつ、下記fn1の値が4.00〜7.00%で
あって、窒化処理が施されている耐へたり性に優れた土
木建設機械用強靭ピストン。
硬度衝突部との鋼からなり、その衝突部が上記(1)に
記載の成分に加えて更に、質量%で、0.005〜0.
050%のNb、0.01〜0.10%のTiおよび
0.010〜0.100%のAlのうちの1種以上を含
有し、かつ、下記fn1の値が4.00〜7.00%で
あって、窒化処理が施されている耐へたり性に優れた土
木建設機械用強靭ピストン。
【0029】 fn1=(1/3) [%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V] 但し、[%X]は元素Xの質量%である。
【0030】(3)異なった鋼材質の高靭性本体部と高
硬度衝突部との鋼からなり、その衝突部が上記(1)に
記載の成分に加えて更に、質量%で、0.005〜0.
100%のS、0.01〜0.30%のPb、0.00
5〜0.100%のTe、0.01〜0.30%のBi
および0.0005〜0.0100%のCaのうちの1
種以上を含有し、かつ、下記fn1の値が4.00〜
7.00%であって、窒化処理が施されている耐へたり
性に優れた土木建設機械用強靭ピストン。
硬度衝突部との鋼からなり、その衝突部が上記(1)に
記載の成分に加えて更に、質量%で、0.005〜0.
100%のS、0.01〜0.30%のPb、0.00
5〜0.100%のTe、0.01〜0.30%のBi
および0.0005〜0.0100%のCaのうちの1
種以上を含有し、かつ、下記fn1の値が4.00〜
7.00%であって、窒化処理が施されている耐へたり
性に優れた土木建設機械用強靭ピストン。
【0031】 fn1=(1/3) [%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V] 但し、[%X]は元素Xの質量%である。
【0032】(4)異なった鋼材質の高靭性本体部と高
硬度衝突部との鋼からなり、その衝突部が上記(1)に
記載の成分に加えて更に、質量%で、0.005〜0.
050%のNb、0.01〜0.10%のTiおよび
0.010〜0.100%のAlのうちの1種以上、並
びに0.005〜0.100%のS、0.01〜0.3
0%のPb、0.005〜0.100%のTe、0.0
1〜0.30%のBiおよび0.0005〜0.010
0%のCaのうちの1種以上を含有し、かつ、下記fn
1の値が4.00〜7.00%であって、窒化処理が施
されている耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピス
トン。
硬度衝突部との鋼からなり、その衝突部が上記(1)に
記載の成分に加えて更に、質量%で、0.005〜0.
050%のNb、0.01〜0.10%のTiおよび
0.010〜0.100%のAlのうちの1種以上、並
びに0.005〜0.100%のS、0.01〜0.3
0%のPb、0.005〜0.100%のTe、0.0
1〜0.30%のBiおよび0.0005〜0.010
0%のCaのうちの1種以上を含有し、かつ、下記fn
1の値が4.00〜7.00%であって、窒化処理が施
されている耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピス
トン。
【0033】 fn1=(1/3) [%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V] 但し、[%X]は元素Xの質量%である。
【0034】上記の本体部とは、図1に例示するような
ピストン1にあっては、符号2で示す部分、衝突部とは
同じく符号3で示す部分である。
ピストン1にあっては、符号2で示す部分、衝突部とは
同じく符号3で示す部分である。
【0035】上記の本体部と衝突部は、冷し嵌めによっ
て組み立てるのが望ましい。
て組み立てるのが望ましい。
【0036】
【作用】以下、本発明についてその作用効果とともに詳
細に説明する。
細に説明する。
【0037】[ピストンの構成] ピストンが過酷な環境での使用に耐えて本体部2に割れ
を生じず、また先端の衝突部3に「へたり」を生じない
ためには、本体部2には高い靭性を持たせ、先端の衝突
部3には高い硬度を持たせることが必要である。これを
達成するには本体部2と衝突部3に異なった鋼材質を用
いたピストンの構成とすれば良い。
を生じず、また先端の衝突部3に「へたり」を生じない
ためには、本体部2には高い靭性を持たせ、先端の衝突
部3には高い硬度を持たせることが必要である。これを
達成するには本体部2と衝突部3に異なった鋼材質を用
いたピストンの構成とすれば良い。
【0038】ところで、一般にピストンは所望の形状に
機械加工され調質処理された後、耐摩耗性付与のために
通常の方法で窒化処理される。従って、本体部2として
は窒化処理後の中心部から採取したJIS3号試験片で
の常温における衝撃値が15J/cm2 以上ある鋼材を
使用し、また、衝突部3としては窒化処理後の表面(先
端)から10mmの位置および中心部での硬度がそれぞ
れHR Cで55以上と53以上の鋼材を用いれば良い。
なお本体部2の靭性としては高ければ高いほど良いが、
一般に焼入れ・焼戻しした調質処理材では靭性が高くな
ると強度が低くなる。過酷環境での実機使用時に本体部
2に損傷を生じないためには、本体部2の中心部の硬度
(強度)はHR Cで53以上であれば良い。また長時間
の使用に耐えるためには衝突部3の靭性は前記したよう
に窒化処理後の表面(先端)から40mmの位置から採
取したJIS3号試験片での常温における衝撃値が15
J/cm2 以上であれば良い。ところで、使用時の熱膨
張差による本体部2と衝突部3の長さ変化を吸収するた
めには、本体部2と衝突部3との間には空隙8を設けて
おけば良い。
機械加工され調質処理された後、耐摩耗性付与のために
通常の方法で窒化処理される。従って、本体部2として
は窒化処理後の中心部から採取したJIS3号試験片で
の常温における衝撃値が15J/cm2 以上ある鋼材を
使用し、また、衝突部3としては窒化処理後の表面(先
端)から10mmの位置および中心部での硬度がそれぞ
れHR Cで55以上と53以上の鋼材を用いれば良い。
なお本体部2の靭性としては高ければ高いほど良いが、
一般に焼入れ・焼戻しした調質処理材では靭性が高くな
ると強度が低くなる。過酷環境での実機使用時に本体部
2に損傷を生じないためには、本体部2の中心部の硬度
(強度)はHR Cで53以上であれば良い。また長時間
の使用に耐えるためには衝突部3の靭性は前記したよう
に窒化処理後の表面(先端)から40mmの位置から採
取したJIS3号試験片での常温における衝撃値が15
J/cm2 以上であれば良い。ところで、使用時の熱膨
張差による本体部2と衝突部3の長さ変化を吸収するた
めには、本体部2と衝突部3との間には空隙8を設けて
おけば良い。
【0039】[衝突部素材鋼の化学組成] 衝突部3に窒化処理後の表面(先端)から10mmの位
置および中心部での硬度がそれぞれHR Cで55以上と
53以上の鋼材を用いれば、ピストンの使用時における
「へたり」の量は僅かでありまた「かえり」も極めて小
さいため、滑らかなピストンの動きを達成することがで
きる。しかし、前記したように衝突部3に硬い鋼素材を
用いるだけでは割れが生じてしまう。従って、実機に組
み込んで長時間使用することは難しいと推測される。そ
のため、長時間使用に対しては衝突部3の素材鋼に耐へ
たり性と耐衝撃性(耐割れ性)とを、換言すれば硬度と
靭性とを兼備させるように化学組成を限定することが好
ましい。
置および中心部での硬度がそれぞれHR Cで55以上と
53以上の鋼材を用いれば、ピストンの使用時における
「へたり」の量は僅かでありまた「かえり」も極めて小
さいため、滑らかなピストンの動きを達成することがで
きる。しかし、前記したように衝突部3に硬い鋼素材を
用いるだけでは割れが生じてしまう。従って、実機に組
み込んで長時間使用することは難しいと推測される。そ
のため、長時間使用に対しては衝突部3の素材鋼に耐へ
たり性と耐衝撃性(耐割れ性)とを、換言すれば硬度と
靭性とを兼備させるように化学組成を限定することが好
ましい。
【0040】以下に、ピストンの衝突部3に用いる鋼の
望ましい化学組成の限定理由を説明する。なお、「%」
は「質量%」を意味する。
望ましい化学組成の限定理由を説明する。なお、「%」
は「質量%」を意味する。
【0041】C: Cは所望の強度(硬度)を確保するのに有効な元素であ
るが、反面靭性を低下させる元素でもある。ピストン衝
突部おける硬度を確保して「へたり」による「かえり」
を抑制することでピストンの滑らかな動きを達成し、か
つ靭性の確保により激しい衝撃を吸収して耐割れ性を向
上させるためには、硬度と靭性のバランスが必要で、通
常の窒化処理後に最低限の硬度(表面(先端)から10
mmの位置および中心部での硬度がそれぞれHR Cで5
5以上と53以上)を得るためには、Cを0.70%以
上含有させることが必要である。一方、0.90%を超
えて含有させると靭性が著しく低下し、衝突部靭性とし
て窒化処理後の表面(先端)から40mmの位置から採
取したJIS3号試験片での常温における衝撃値が15
J/cm2 以上を得ることができない。従って、長時間
使用の場合には、Cの含有量は0.70〜0.90%と
する。
るが、反面靭性を低下させる元素でもある。ピストン衝
突部おける硬度を確保して「へたり」による「かえり」
を抑制することでピストンの滑らかな動きを達成し、か
つ靭性の確保により激しい衝撃を吸収して耐割れ性を向
上させるためには、硬度と靭性のバランスが必要で、通
常の窒化処理後に最低限の硬度(表面(先端)から10
mmの位置および中心部での硬度がそれぞれHR Cで5
5以上と53以上)を得るためには、Cを0.70%以
上含有させることが必要である。一方、0.90%を超
えて含有させると靭性が著しく低下し、衝突部靭性とし
て窒化処理後の表面(先端)から40mmの位置から採
取したJIS3号試験片での常温における衝撃値が15
J/cm2 以上を得ることができない。従って、長時間
使用の場合には、Cの含有量は0.70〜0.90%と
する。
【0042】Si: Siは鋼の脱酸に必要であるとともに、所定の強度(硬
度)を付与するのに必要な元素である。しかし、その含
有量が0.05%未満では所望の効果が得られず、1.
50%を超えると靭性が著しく劣化するようになり所定
の靭性を確保できない。従って、長時間使用のために
は、Siの含有量を0.05〜1.50%とする。
度)を付与するのに必要な元素である。しかし、その含
有量が0.05%未満では所望の効果が得られず、1.
50%を超えると靭性が著しく劣化するようになり所定
の靭性を確保できない。従って、長時間使用のために
は、Siの含有量を0.05〜1.50%とする。
【0043】Mn: Mnは脱酸に必要であるとともに、焼入れ性を高めて硬
さと靭性を向上させる作用がある。しかし、その含有量
が0.35%未満では所望の効果が得られず、2.00
%を超えるとかえって靭性が劣化し、所望の靭性が得ら
れない。このため、長時間使用の場合には、Mnの含有
量は0.35〜2.00%とする。
さと靭性を向上させる作用がある。しかし、その含有量
が0.35%未満では所望の効果が得られず、2.00
%を超えるとかえって靭性が劣化し、所望の靭性が得ら
れない。このため、長時間使用の場合には、Mnの含有
量は0.35〜2.00%とする。
【0044】Cr: Crは焼入れ性を高めて硬さと靭性を向上させる作用を
有している。また窒化特性を向上させ、更に、高温での
軟化抵抗を著しく向上させる作用をも有する。
有している。また窒化特性を向上させ、更に、高温での
軟化抵抗を著しく向上させる作用をも有する。
【0045】これらの作用は特に、MoおよびVとの複
合添加で大きく発揮される。しかし、その含有量が5.
0%未満では所望の効果が得られず、10.0%を超え
て含有してもその効果は飽和し経済性を損なうことにな
る。従って、長時間使用のためには、Crの含有量を
5.0〜10.0%とする。
合添加で大きく発揮される。しかし、その含有量が5.
0%未満では所望の効果が得られず、10.0%を超え
て含有してもその効果は飽和し経済性を損なうことにな
る。従って、長時間使用のためには、Crの含有量を
5.0〜10.0%とする。
【0046】Mo: Moは焼入れ性を高めて硬さと靭性を向上させる。更
に、窒化特性の向上や高温での軟化抵抗を著しく向上さ
せるのに有効な元素である。特に、CrおよびVとの複
合添加でその効果が著しく大きくなる。しかし、その含
有量が1.00%未満では所望の効果が得られず、一
方、3.00%を超えて含有してもその効果は飽和し、
コストのみが上昇することになる。このため長時間使用
の場合には、Moの含有量は1.00〜3.00%とす
る。
に、窒化特性の向上や高温での軟化抵抗を著しく向上さ
せるのに有効な元素である。特に、CrおよびVとの複
合添加でその効果が著しく大きくなる。しかし、その含
有量が1.00%未満では所望の効果が得られず、一
方、3.00%を超えて含有してもその効果は飽和し、
コストのみが上昇することになる。このため長時間使用
の場合には、Moの含有量は1.00〜3.00%とす
る。
【0047】V: Vは強度と窒化特性を向上させる作用に加えて、特に、
CrおよびMoとの複合添加で高温での軟化抵抗と靭性
を著しく向上させ、鋼に強靭性を付与する作用を有す
る。しかし、その含有量が0.30%未満では所望の効
果が得られず、一方0.70%を超えて含有してもその
効果は飽和し経済性を損なうことになる。
CrおよびMoとの複合添加で高温での軟化抵抗と靭性
を著しく向上させ、鋼に強靭性を付与する作用を有す
る。しかし、その含有量が0.30%未満では所望の効
果が得られず、一方0.70%を超えて含有してもその
効果は飽和し経済性を損なうことになる。
【0048】従って、長時間使用のためには、Vの含有
量を0.30〜0.70%とする。
量を0.30〜0.70%とする。
【0049】Ni: 長時間使用に際して、Niは添加しなくても良い。添加
すれば強度と靭性を向上させる効果がある。この効果を
確実に得るには、Niは0.1%以上の含有量とするこ
とが好ましい。しかし、その含有量が1.00%を超え
ると被削性が劣化することとなる。従って、Niの含有
量は1.00%以下とする必要がある。
すれば強度と靭性を向上させる効果がある。この効果を
確実に得るには、Niは0.1%以上の含有量とするこ
とが好ましい。しかし、その含有量が1.00%を超え
ると被削性が劣化することとなる。従って、Niの含有
量は1.00%以下とする必要がある。
【0050】B: 長時間使用に際して、Bも添加しなくても良い。添加す
れば焼入れ性が向上する効果がある。この効果を確実に
得るには、Bは0.0005%以上の含有量とすること
が望ましい。しかし、その含有量が0.0100%を超
えると、熱間加工性が低下する。従って、B含有量の上
限を0.0100%とする。
れば焼入れ性が向上する効果がある。この効果を確実に
得るには、Bは0.0005%以上の含有量とすること
が望ましい。しかし、その含有量が0.0100%を超
えると、熱間加工性が低下する。従って、B含有量の上
限を0.0100%とする。
【0051】N: 長時間使用の場合でも、Nは含有させなくとも良い。し
かし、製鋼段階で完全に脱N処理を行うことは不可能で
あるし、また逆に、含有させれば窒化物を形成して結晶
粒を微細にし靭性を向上させる効果を有する。この靭性
向上に対する効果を確実に得るには、Nは0.0030
%以上の含有量とすることが望ましい。
かし、製鋼段階で完全に脱N処理を行うことは不可能で
あるし、また逆に、含有させれば窒化物を形成して結晶
粒を微細にし靭性を向上させる効果を有する。この靭性
向上に対する効果を確実に得るには、Nは0.0030
%以上の含有量とすることが望ましい。
【0052】しかし、その含有量が0.02%を超える
と窒化物が凝集し、結晶粒が逆に粗大化して靭性を劣化
させることとなるので、N含有量の上限を0.02%と
する。
と窒化物が凝集し、結晶粒が逆に粗大化して靭性を劣化
させることとなるので、N含有量の上限を0.02%と
する。
【0053】fn1: 適正量のCr、MoおよびVを複合添加することによ
り、強度(硬度)と靭性および高温での軟化抵抗が著し
く向上する。既に述べたように[%X]を元素Xの含有量
とした時、耐へたり性と耐衝撃特性は、fn1=(1/3)
[%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V]の値で整理でき、前記
fn1の値が4.0%未満の場合には良好な耐へたり性
と耐衝撃特性(強度と靭性)とを兼備することができな
い。すなわち、ピストン衝突部の表面(先端)から10
mmの位置および中心部での硬度がそれぞれHR Cで5
5以上と53以上、かつ表面(先端)から40mmの位
置から採取したJIS3号試験片での常温における衝撃
値が15J/cm2 以上という所望の硬度と靭性を兼備
できない。一方、この値が7.0%を超えると強靭性兼
備の効果は飽和し、経済性が損なわれるようになる。従
って、長時間使用の場合には、fn1の値は4.0〜
7.0%とする。
り、強度(硬度)と靭性および高温での軟化抵抗が著し
く向上する。既に述べたように[%X]を元素Xの含有量
とした時、耐へたり性と耐衝撃特性は、fn1=(1/3)
[%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V]の値で整理でき、前記
fn1の値が4.0%未満の場合には良好な耐へたり性
と耐衝撃特性(強度と靭性)とを兼備することができな
い。すなわち、ピストン衝突部の表面(先端)から10
mmの位置および中心部での硬度がそれぞれHR Cで5
5以上と53以上、かつ表面(先端)から40mmの位
置から採取したJIS3号試験片での常温における衝撃
値が15J/cm2 以上という所望の硬度と靭性を兼備
できない。一方、この値が7.0%を超えると強靭性兼
備の効果は飽和し、経済性が損なわれるようになる。従
って、長時間使用の場合には、fn1の値は4.0〜
7.0%とする。
【0054】本発明の耐へたり性に優れた土木建設機械
用強靭ピストンの衝突部に用いる鋼には、長時間使用の
場合には、上記の成分に加えて、更にNb、Ti、Al
のうちの1種以上および/またはS、Pb、Te、B
i、Caのうちの1種以上を含んでいても良い。これら
の合金元素の作用効果と望ましい含有量は下記の通りで
ある。
用強靭ピストンの衝突部に用いる鋼には、長時間使用の
場合には、上記の成分に加えて、更にNb、Ti、Al
のうちの1種以上および/またはS、Pb、Te、B
i、Caのうちの1種以上を含んでいても良い。これら
の合金元素の作用効果と望ましい含有量は下記の通りで
ある。
【0055】Nb、TiおよびAl: Nb、TiおよびAlは結晶粒を微細化し、靭性を向上
させる効果を有する。
させる効果を有する。
【0056】従って、Nb、TiおよびAlは必要に応
じて添加しても良い。しかし、Nbの場合には、0.0
05%未満の含有量では所望の効果が得られず、0.0
50%を超えて含有すると靭性の低下をきたして耐割れ
性の劣化を招く。一方、Tiの場合には、0.01%未
満の含有量では所望の効果が得られず、0.10%を超
えて含有するとかえって結晶粒が粗大化し靭性の低下を
きたして耐割れ性の劣化を招く。更に、Alの場合に
も、0.010%未満の含有量では所望の効果が得られ
ず、0.100%を超えて含有するとかえって結晶粒が
粗大化し靭性の低下をきたして耐割れ性の劣化を招く。
従って、長時間使用に際して、上記の合金元素を1種以
上添加する場合には、Nb:0.005〜0.050
%、Ti:0.01〜0.10%、Al:0.010〜
0.100%の含有量とするのが良い。
じて添加しても良い。しかし、Nbの場合には、0.0
05%未満の含有量では所望の効果が得られず、0.0
50%を超えて含有すると靭性の低下をきたして耐割れ
性の劣化を招く。一方、Tiの場合には、0.01%未
満の含有量では所望の効果が得られず、0.10%を超
えて含有するとかえって結晶粒が粗大化し靭性の低下を
きたして耐割れ性の劣化を招く。更に、Alの場合に
も、0.010%未満の含有量では所望の効果が得られ
ず、0.100%を超えて含有するとかえって結晶粒が
粗大化し靭性の低下をきたして耐割れ性の劣化を招く。
従って、長時間使用に際して、上記の合金元素を1種以
上添加する場合には、Nb:0.005〜0.050
%、Ti:0.01〜0.10%、Al:0.010〜
0.100%の含有量とするのが良い。
【0057】S、Pb、Te、BiおよびCa: S、Pb、Te、BiおよびCaには被削性を向上する
作用がある。従って、特に接合部の機械加工を容易にす
る目的でS、Pb、Te、BiおよびCaは必要に応じ
て添加しても良い。但し、Sの場合には0.005%未
満の含有量では所望の効果が得られず、0.100%を
超えて含有すると靭性の著しい低下をきたす。また、P
bの場合には、0.01%未満の含有量では所望の効果
が得られず、0.30%を超えて含有すると靭性の低下
をきたす。Teの場合には0.005%未満の含有量で
は所望の効果が得られず、0.100%を超えて含有す
ると熱間加工性が劣化する。一方、Biの場合は、0.
01%未満の含有量では所望の効果が得られず、0.3
0%を超えて含有すると靭性が劣化する。更に、Caの
場合にも、0.0005%未満の含有量では所望の効果
が得られず、0.0100%を超えて含有すると靭性の
低下をきたす。従って、長時間使用の場合に、これらの
合金元素を1種以上添加する場合は、S:0.005〜
0.100%、Pb:0.01〜0.30%、Te:
0.005〜0.100%、Bi:0.01〜0.30
%およびCa:0.0005〜0.0100%の含有量
とするのが良い。
作用がある。従って、特に接合部の機械加工を容易にす
る目的でS、Pb、Te、BiおよびCaは必要に応じ
て添加しても良い。但し、Sの場合には0.005%未
満の含有量では所望の効果が得られず、0.100%を
超えて含有すると靭性の著しい低下をきたす。また、P
bの場合には、0.01%未満の含有量では所望の効果
が得られず、0.30%を超えて含有すると靭性の低下
をきたす。Teの場合には0.005%未満の含有量で
は所望の効果が得られず、0.100%を超えて含有す
ると熱間加工性が劣化する。一方、Biの場合は、0.
01%未満の含有量では所望の効果が得られず、0.3
0%を超えて含有すると靭性が劣化する。更に、Caの
場合にも、0.0005%未満の含有量では所望の効果
が得られず、0.0100%を超えて含有すると靭性の
低下をきたす。従って、長時間使用の場合に、これらの
合金元素を1種以上添加する場合は、S:0.005〜
0.100%、Pb:0.01〜0.30%、Te:
0.005〜0.100%、Bi:0.01〜0.30
%およびCa:0.0005〜0.0100%の含有量
とするのが良い。
【0058】[本体部と衝突部の組み合わせ方法] 本体部と衝突部の組み合わせ(接合)には、冷し嵌めや
焼き嵌めを行ったり、接着剤を用いたりして適当な方法
を採用することができる。これらの方法のうち冷し嵌め
が最適で、この方法によれば実機で使用中に先端部が本
体部から抜け出ることはない。従って、より完全な組み
合わせを達成するためには前記の冷し嵌めを採用するこ
とが好ましい。この冷し嵌めは、例えば衝突部を0〜−
50℃に冷却して収縮させた状態で本体部に設けた穴に
挿入すれば良い。なお本体部および/または衝突部には
挿入時の空気抜きのために、溝などを切り込んでおけば
良い。
焼き嵌めを行ったり、接着剤を用いたりして適当な方法
を採用することができる。これらの方法のうち冷し嵌め
が最適で、この方法によれば実機で使用中に先端部が本
体部から抜け出ることはない。従って、より完全な組み
合わせを達成するためには前記の冷し嵌めを採用するこ
とが好ましい。この冷し嵌めは、例えば衝突部を0〜−
50℃に冷却して収縮させた状態で本体部に設けた穴に
挿入すれば良い。なお本体部および/または衝突部には
挿入時の空気抜きのために、溝などを切り込んでおけば
良い。
【0059】[ピストンの製造方法] A:本体部 JIS G 4102(1979)やJIS G 4105(1979)に規定されるよう
な通常の機械構造用合金鋼を通常の方法で溶製した後、
例えば、熱間で圧延または鍛造し、その後必要に応じて
焼準し、しかる後に通常の方法で所望の形状に機械加工
し、調質処理を行う。この後、一般には、耐摩耗性付与
のために通常の方法で窒化処理を施す。
な通常の機械構造用合金鋼を通常の方法で溶製した後、
例えば、熱間で圧延または鍛造し、その後必要に応じて
焼準し、しかる後に通常の方法で所望の形状に機械加工
し、調質処理を行う。この後、一般には、耐摩耗性付与
のために通常の方法で窒化処理を施す。
【0060】なお、調質処理において焼入れは850〜
940℃程度の温度に加熱後水や油で冷却すれば良く、
焼戻しはAc1変態点以下の温度で、窒化処理などの最終
の熱処理を受けた後で所望のピストン本体部の靭性と硬
度の得られるような温度範囲、例えば530〜600℃
程度の温度で行えば良い。焼戻し後の冷却は加速冷却や
放冷など適当な方法を選択すれば良い。更に、窒化処理
は525〜535℃程度の温度で行えば良い。
940℃程度の温度に加熱後水や油で冷却すれば良く、
焼戻しはAc1変態点以下の温度で、窒化処理などの最終
の熱処理を受けた後で所望のピストン本体部の靭性と硬
度の得られるような温度範囲、例えば530〜600℃
程度の温度で行えば良い。焼戻し後の冷却は加速冷却や
放冷など適当な方法を選択すれば良い。更に、窒化処理
は525〜535℃程度の温度で行えば良い。
【0061】B:衝突部 JIS G 4404(1983)に規定されるような通常の合金工具鋼
鋼材を通常の方法で溶製した後、例えば、熱間で圧延ま
たは鍛造し、その後焼鈍し、しかる後に通常の方法で所
望の形状に機械加工し、調質処理を行う。この後、耐摩
耗性付与のために通常の方法で窒化処理を施す。
鋼材を通常の方法で溶製した後、例えば、熱間で圧延ま
たは鍛造し、その後焼鈍し、しかる後に通常の方法で所
望の形状に機械加工し、調質処理を行う。この後、耐摩
耗性付与のために通常の方法で窒化処理を施す。
【0062】ところで上記した通常の合金工具鋼鋼材を
ピストン衝突部の素材とした場合には、既に述べたよう
に、実機に組み込んで長時間使用することは難しいと考
えられる。そのため、長時間使用に対しては前記の[衝
突部素材鋼の化学組成]の項で述べたところの、化学組
成を限定した鋼を用いることが好ましい。これらの鋼は
通常の方法で溶製された後、例えば、熱間で圧延または
鍛造され、その後必要に応じて焼鈍され、しかる後に通
常の方法で所望の形状に機械加工され、調質処理され
る。この後、耐摩耗性付与のために通常の方法で窒化処
理を施される。なお、調質処理において焼入れは100
0〜1050℃程度の温度に加熱後油や空気で冷却すれ
ば良く、焼戻しはAc1変態点以下の温度で、窒化処理な
どの最終の熱処理を受けた後で所望のピストン衝突部の
硬さと靭性が得られるような温度範囲、例えば、530
〜600℃程度の温度で行えば良い。焼戻し後の冷却は
加速冷却や放冷など適当な方法を選択すれば良い。な
お、組織の安定化や残留応力除去の目的で、焼戻し処理
は2回以上実施することが好ましい。更に、窒化処理は
525〜535℃程度の温度で行えば良い。
ピストン衝突部の素材とした場合には、既に述べたよう
に、実機に組み込んで長時間使用することは難しいと考
えられる。そのため、長時間使用に対しては前記の[衝
突部素材鋼の化学組成]の項で述べたところの、化学組
成を限定した鋼を用いることが好ましい。これらの鋼は
通常の方法で溶製された後、例えば、熱間で圧延または
鍛造され、その後必要に応じて焼鈍され、しかる後に通
常の方法で所望の形状に機械加工され、調質処理され
る。この後、耐摩耗性付与のために通常の方法で窒化処
理を施される。なお、調質処理において焼入れは100
0〜1050℃程度の温度に加熱後油や空気で冷却すれ
ば良く、焼戻しはAc1変態点以下の温度で、窒化処理な
どの最終の熱処理を受けた後で所望のピストン衝突部の
硬さと靭性が得られるような温度範囲、例えば、530
〜600℃程度の温度で行えば良い。焼戻し後の冷却は
加速冷却や放冷など適当な方法を選択すれば良い。な
お、組織の安定化や残留応力除去の目的で、焼戻し処理
は2回以上実施することが好ましい。更に、窒化処理は
525〜535℃程度の温度で行えば良い。
【0063】
【実施例】「実施例1」 表1に示すSNC631鋼、SCM440鋼、SKD1
1鋼およびSKD12鋼を通常の方法により500kg
試験炉を用いて溶製した。次いで、これらの鋼を通常の
方法によって150mmφに鍛造した後、SNC631
鋼とSCM440鋼は850℃で焼準し、またSKD1
1鋼とSKD12鋼は850℃で焼鈍して、その後通常
の機械加工によって図3あるいは図5に示す形状に加工
した。
1鋼およびSKD12鋼を通常の方法により500kg
試験炉を用いて溶製した。次いで、これらの鋼を通常の
方法によって150mmφに鍛造した後、SNC631
鋼とSCM440鋼は850℃で焼準し、またSKD1
1鋼とSKD12鋼は850℃で焼鈍して、その後通常
の機械加工によって図3あるいは図5に示す形状に加工
した。
【0064】SNC631鋼とSCM440鋼は、図3
の一体物または図5の本体部6の寸法形状に機械加工し
た後、930℃で2時間加熱して水焼入れを行い、次い
で530℃で5時間の焼戻しを行って空冷する調質処理
を施した。この後、通常の方法により530℃で60時
間の窒化処理を行って空冷処理し、更に、表面部の化合
物層を研削加工して除去した。
の一体物または図5の本体部6の寸法形状に機械加工し
た後、930℃で2時間加熱して水焼入れを行い、次い
で530℃で5時間の焼戻しを行って空冷する調質処理
を施した。この後、通常の方法により530℃で60時
間の窒化処理を行って空冷処理し、更に、表面部の化合
物層を研削加工して除去した。
【0065】SKD11鋼とSKD12鋼は、図3の一
体物または図5の衝突部7の寸法形状に機械加工した後
1030℃で30分加熱して空冷し、次いで530℃で
5時間の焼戻しを2回行った。なお焼戻し後の冷却は2
回とも空冷とした。この後、通常の方法によって530
℃で60時間の窒化処理を行い、その後空冷処理し、更
に、表面部の化合物層を研削加工して除去した。
体物または図5の衝突部7の寸法形状に機械加工した後
1030℃で30分加熱して空冷し、次いで530℃で
5時間の焼戻しを2回行った。なお焼戻し後の冷却は2
回とも空冷とした。この後、通常の方法によって530
℃で60時間の窒化処理を行い、その後空冷処理し、更
に、表面部の化合物層を研削加工して除去した。
【0066】図4の組み合わせタイプの試験片について
は、SKD11鋼とSKD12鋼の先端の衝突部7を−
50℃に冷却し収縮させた状態で、上記のSNC631
鋼とSCM440鋼の本体部6の穴に挿入して冷し嵌め
し、図4のように組み合わせた。
は、SKD11鋼とSKD12鋼の先端の衝突部7を−
50℃に冷却し収縮させた状態で、上記のSNC631
鋼とSCM440鋼の本体部6の穴に挿入して冷し嵌め
し、図4のように組み合わせた。
【0067】このようにして作製した試験片を治具に固
定し、落錘型試験機を用いて高さ2mの位置からバウン
ド防止装置を付けたSKD11鋼製の定盤の上に連続し
て1000回自然落下させ、「へたり」量と割れを調査
した。「へたり」量は試験片長さの減少量を測定し、ま
た、割れについては目視で観察した後、割れ部を切断し
て割れ(クラック)の長さを測定した。その結果を表2
に示す。なお、表2には窒化処理後の本体部の中心部か
ら採取したJIS3号試験片での常温における衝撃値お
よび窒化処理後の衝突部の表面(先端)から10mmの
位置および中心部での硬度も併せて示した。
定し、落錘型試験機を用いて高さ2mの位置からバウン
ド防止装置を付けたSKD11鋼製の定盤の上に連続し
て1000回自然落下させ、「へたり」量と割れを調査
した。「へたり」量は試験片長さの減少量を測定し、ま
た、割れについては目視で観察した後、割れ部を切断し
て割れ(クラック)の長さを測定した。その結果を表2
に示す。なお、表2には窒化処理後の本体部の中心部か
ら採取したJIS3号試験片での常温における衝撃値お
よび窒化処理後の衝突部の表面(先端)から10mmの
位置および中心部での硬度も併せて示した。
【0068】SNC631鋼とSCM440鋼を素材と
した一体物試験片(試験符号A、D)には割れの発生は
認められなかったが大きな「へたり」が生じた。またS
KD11鋼とSKD12鋼を素材とした一体物試験片
(試験番号G、H)に生じた「へたり」はいずれも1.
2mmと小さかったが本体部と先端の衝突部に割れ(ク
ラック)が発生した。一方、SNC631鋼やSCM4
40鋼を本体部6に使用しSKD11鋼やSKD12鋼
を先端の衝突部7に用いた組み合わせタイプの試験片
(試験番号B、C、EおよびF)においては、「へた
り」量は1.2〜1.3mmと小さくまた本体部6に割
れは発生しなかった。しかしながら先端の衝突部7には
割れが認められた。
した一体物試験片(試験符号A、D)には割れの発生は
認められなかったが大きな「へたり」が生じた。またS
KD11鋼とSKD12鋼を素材とした一体物試験片
(試験番号G、H)に生じた「へたり」はいずれも1.
2mmと小さかったが本体部と先端の衝突部に割れ(ク
ラック)が発生した。一方、SNC631鋼やSCM4
40鋼を本体部6に使用しSKD11鋼やSKD12鋼
を先端の衝突部7に用いた組み合わせタイプの試験片
(試験番号B、C、EおよびF)においては、「へた
り」量は1.2〜1.3mmと小さくまた本体部6に割
れは発生しなかった。しかしながら先端の衝突部7には
割れが認められた。
【0069】この結果から、図2に示すようにピストン
1の構造を本体部2と先端の衝突部3とに分け、本体部
2と衝突部3にはそれぞれ高い靭性を有する鋼材と硬い
鋼材とを使い分ければ良いことが示唆される。
1の構造を本体部2と先端の衝突部3とに分け、本体部
2と衝突部3にはそれぞれ高い靭性を有する鋼材と硬い
鋼材とを使い分ければ良いことが示唆される。
【0070】「実施例2」 表3、4に示す化学組成を有する鋼を通常の方法により
3トン試験炉を用いて溶製した。表3における鋼1〜1
3は本発明の第2発明から第5発明の耐へたり性に優れ
た土木建設機械用強靭ピストンに関する鋼(以下、本発
明鋼という)であり、表4における鋼14〜26は成分
のいずれかが本発明の第2発明から第5発明で規定する
含有量の範囲から外れた鋼(以下、比較鋼という)であ
る。
3トン試験炉を用いて溶製した。表3における鋼1〜1
3は本発明の第2発明から第5発明の耐へたり性に優れ
た土木建設機械用強靭ピストンに関する鋼(以下、本発
明鋼という)であり、表4における鋼14〜26は成分
のいずれかが本発明の第2発明から第5発明で規定する
含有量の範囲から外れた鋼(以下、比較鋼という)であ
る。
【0071】次いで、これらの本発明鋼および比較鋼を
通常の方法によって150mmφに鍛造した後、850
℃で焼鈍して、その後通常の機械加工によって図5の衝
突部7の形状に加工した。その後これらの供試鋼材を、
1030℃で30分加熱して空冷し、次いで530℃で
5時間の焼戻しを2回行った。なお焼戻し後の冷却は2
回とも空冷とした。この後、530℃で60時間の窒化
処理を行って空冷処理し、更に、表面部の化合物層を研
削加工して除去した。
通常の方法によって150mmφに鍛造した後、850
℃で焼鈍して、その後通常の機械加工によって図5の衝
突部7の形状に加工した。その後これらの供試鋼材を、
1030℃で30分加熱して空冷し、次いで530℃で
5時間の焼戻しを2回行った。なお焼戻し後の冷却は2
回とも空冷とした。この後、530℃で60時間の窒化
処理を行って空冷処理し、更に、表面部の化合物層を研
削加工して除去した。
【0072】一方、表5に示す化学組成を有するSCM
440鋼を転炉溶製した後、「実施例1」で述べたのと
全く同じ方法で図5の本体部6を作製した。
440鋼を転炉溶製した後、「実施例1」で述べたのと
全く同じ方法で図5の本体部6を作製した。
【0073】上記のようにして得られた窒化処理後の衝
突部7を−50℃に冷却し収縮させた状態で、SCM4
40鋼の本体部6の穴に挿入して冷し嵌めし、図4のよ
うに組み合わせた。
突部7を−50℃に冷却し収縮させた状態で、SCM4
40鋼の本体部6の穴に挿入して冷し嵌めし、図4のよ
うに組み合わせた。
【0074】このようにして作製した試験片を治具に固
定し、落錘型試験機を用いて高さ2mの位置からバウン
ド防止装置を付けたSKD11鋼製の定盤の上に連続し
て1000回自然落下させ、「へたり」量と割れを調査
した。「へたり」量は試験片長さの減少量を測定し、ま
た、割れについては目視で観察した後、割れ部を切断し
割れ(クラック)の長さを測定した。その結果を表6、
7に示す。なお、表6、7には窒化処理後の衝突部の表
面(先端)から10mmの位置および中心部での硬度と
表面(先端)から40mmの位置から採取したJIS3
号試験片での常温における衝撃値も併せて示した。
定し、落錘型試験機を用いて高さ2mの位置からバウン
ド防止装置を付けたSKD11鋼製の定盤の上に連続し
て1000回自然落下させ、「へたり」量と割れを調査
した。「へたり」量は試験片長さの減少量を測定し、ま
た、割れについては目視で観察した後、割れ部を切断し
割れ(クラック)の長さを測定した。その結果を表6、
7に示す。なお、表6、7には窒化処理後の衝突部の表
面(先端)から10mmの位置および中心部での硬度と
表面(先端)から40mmの位置から採取したJIS3
号試験片での常温における衝撃値も併せて示した。
【0075】本発明鋼である鋼1〜13の衝突部におい
ては「へたり」量はいずれも1.2〜1.6mmと小さ
く、また割れや「欠け」は生じておらず良好な状態にあ
った(表6参照)。
ては「へたり」量はいずれも1.2〜1.6mmと小さ
く、また割れや「欠け」は生じておらず良好な状態にあ
った(表6参照)。
【0076】これに対して、比較鋼である鋼14〜26
では、「へたり」量が2mmを超えるか、割れまたは割
れと「欠け」が生じていた(表7参照)。
では、「へたり」量が2mmを超えるか、割れまたは割
れと「欠け」が生じていた(表7参照)。
【0077】「実施例3」 前記の表3および表4に記載した鋼1(本発明鋼)、鋼
15および26(比較鋼)を衝突部の素材として、また
表5に記載したSCM440鋼を本体部の素材として、
「実施例2」に記載したのと同様の方法で、油圧ショベ
ルの油圧ブレーカ用の図1のタイプのピストンを各々5
個ずつ製作し、実機に組み込んで100時間のフィール
ドテストを行った。
15および26(比較鋼)を衝突部の素材として、また
表5に記載したSCM440鋼を本体部の素材として、
「実施例2」に記載したのと同様の方法で、油圧ショベ
ルの油圧ブレーカ用の図1のタイプのピストンを各々5
個ずつ製作し、実機に組み込んで100時間のフィール
ドテストを行った。
【0078】実機によるフィールドテストの結果、本発
明鋼である鋼1を衝突部に用いたピストンはいずれも耐
へたり性、耐割れ性とも問題はなく、100時間の実機
使用後も健全な状態であった。他方、比較鋼である鋼1
5および26を衝突部に用いたピストンは耐へたり性と
耐割れ性のいずれかまたは両方に問題があり、全て10
0時間に達する前に「へたり」による「かえり」や割れ
が生じ、製品寿命は短いものであった。
明鋼である鋼1を衝突部に用いたピストンはいずれも耐
へたり性、耐割れ性とも問題はなく、100時間の実機
使用後も健全な状態であった。他方、比較鋼である鋼1
5および26を衝突部に用いたピストンは耐へたり性と
耐割れ性のいずれかまたは両方に問題があり、全て10
0時間に達する前に「へたり」による「かえり」や割れ
が生じ、製品寿命は短いものであった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【発明の効果】本発明によれば、油圧ショベルの油圧ブ
レーカ内部に組み込まれるピストンなど、耐へたり性に
優れた土木建設機械用強靭ピストンを容易に得ることが
可能で、産業上の効果は極めて大きい。
レーカ内部に組み込まれるピストンなど、耐へたり性に
優れた土木建設機械用強靭ピストンを容易に得ることが
可能で、産業上の効果は極めて大きい。
【図1】本発明の組み合わせタイプのピストンを説明す
る断面図である。
る断面図である。
【図2】油圧ショベルの油圧ブレーカ内部に組み込まれ
たピストンに生じる「へたり」による「かえり」および
割れの状態を示す説明図である。
たピストンに生じる「へたり」による「かえり」および
割れの状態を示す説明図である。
【図3】落錘型試験機を用いた落下試験に供した一体物
試験片の説明図である。
試験片の説明図である。
【図4】落錘型試験機を用いた落下試験に供した組み合
わせタイプ試験片を説明する断面図である。
わせタイプ試験片を説明する断面図である。
【図5】落錘型試験機を用いた落下試験に供した組み合
わせタイプ試験片の、本体部と衝突部の説明図である。
わせタイプ試験片の、本体部と衝突部の説明図である。
1:ピストン、2:(ピストンの)本体部、3:(ピス
トン先端の)衝突部、4:「へたり」による「かえ
り」、5:割れ、8:空隙、6:(組み合わせタイプ試
験片の)本体部、7:(組み合わせタイプ試験片の)衝
突部、
トン先端の)衝突部、4:「へたり」による「かえ
り」、5:割れ、8:空隙、6:(組み合わせタイプ試
験片の)本体部、7:(組み合わせタイプ試験片の)衝
突部、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中里 福和 福岡県北九州市小倉北区許斐町1番地住 友金属工業株式会社小倉製鉄所内 (72)発明者 坂本 雅紀 福岡県北九州市小倉北区許斐町1番地住 友金属工業株式会社小倉製鉄所内 (72)発明者 鎌田 芳彦 福岡県北九州市小倉北区許斐町1番地住 友金属工業株式会社小倉製鉄所内 (56)参考文献 特開 昭59−179762(JP,A) 特開 平3−115545(JP,A) 実開 昭64−49653(JP,U) 実公 昭39−6975(JP,Y1)
Claims (4)
- 【請求項1】異なった鋼材質の高靭性本体部と高硬度衝
突部との鋼からなり、その衝突部が質量%で、C:0.
70〜0.90%、Si:0.05〜1.50%、M
n:0.35〜2.00%、Cr:5.0〜10.0
%、Mo:1.00〜3.00%、V:0.30〜0.
70%、Ni:0〜1.00%、B:0〜0.0100
%、N:0.02%以下であり、残部はFeおよび不可
避不純物からなり、かつ、下記fn1の値が4.00〜
7.00%であって、窒化処理が施されている耐へたり
性に優れた土木建設機械用強靭ピストン。 fn1=(1/3) [%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V] 但し、[%X]は元素Xの質量%である。 - 【請求項2】異なった鋼材質の高靭性本体部と高硬度衝
突部との鋼からなり、その衝突部が質量%で、C:0.
70〜0.90%、Si:0.05〜1.50%、M
n:0.35〜2.00%、Cr:5.0〜10.0
%、Mo:1.00〜3.00%、V:0.30〜0.
70%、Ni:0〜1.00%、B:0〜0.0100
%、N:0.02%以下であり、ならびに0.005〜
0.050%のNb、0.01〜0.10%のTiおよ
び0.010〜0.100%のAlのうちの1種以上を
含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、か
つ、下記fn1の値が4.00〜7.00%であって、
窒化処理が施されている耐へたり性に優れた土木建設機
械用強靭ピストン。 fn1=(1/3) [%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V] 但し、[%X]は元素Xの質量%である。 - 【請求項3】異なった鋼材質の高靭性本体部と高硬度衝
突部との鋼からなり、その衝突部が質量%で、C:0.
70〜0.90%、Si:0.05〜1.50%、M
n:0.35〜2.00%、Cr:5.0〜10.0
%、Mo:1.00〜3.00%、V:0.30〜0.
70%、Ni:0〜1.00%、B:0〜0.0100
%、N:0.02%以下であり、ならびに0.005〜
0.100%のS、0.01〜0.30%のPb、0.
005〜0.100%のTe、0.01〜0.30%の
Biおよび0.0005〜0.0100%のCaのうち
の1種以上を含有し、残部はFeおよび不可避不純物か
らなり、かつ、下記fn1の値が4.00〜7.00%
であって、窒化処理が施されている耐へたり性に優れた
土木建設機械用強靭ピストン。 fn1=(1/3) [%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V] 但し、[%X]は元素Xの質量%である。 - 【請求項4】異なった鋼材質の高靭性本体部と高硬度衝
突部との鋼からなり、その衝突部が質量%で、C:0.
70〜0.90%、Si:0.05〜1.50%、M
n:0.35〜2.00%、Cr:5.0〜10.0
%、Mo:1.00〜3.00%、V:0.30〜0.
70%、Ni:0〜1.00%、B:0〜0.0100
%、N:0.02%以下であり、ならびに0.005〜
0.050%のNb、0.01〜0.10%のTiおよ
び0.010〜0.100%のAlのうちの1種以上、
さらに0.005〜0.100%のS、0.01〜0.
30%のPb、0.005〜0.100%のTe、0.
01〜0.30%のBiおよび0.0005〜0.01
00%のCaのうちの1種以上を含有し、残部はFeお
よび不可避不純物からなり、かつ、下記fn1の値が
4.00〜7.00%であって、窒化処理が施されてい
る耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピストン。 fn1=(1/3) [%Cr ]+(2/3)[%Mo ]+2[%V] 但し、[%X]は元素Xの質量%である。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08112195A JP3324630B2 (ja) | 1995-04-06 | 1995-04-06 | 耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピストンおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08112195A JP3324630B2 (ja) | 1995-04-06 | 1995-04-06 | 耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピストンおよびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08277444A JPH08277444A (ja) | 1996-10-22 |
JP3324630B2 true JP3324630B2 (ja) | 2002-09-17 |
Family
ID=13737561
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP08112195A Expired - Fee Related JP3324630B2 (ja) | 1995-04-06 | 1995-04-06 | 耐へたり性に優れた土木建設機械用強靭ピストンおよびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3324630B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN1097642C (zh) * | 1999-07-30 | 2003-01-01 | 日立金属株式会社 | 焊接性、切削性和热处理性好的工具钢及其制成的金属模 |
CN110029285A (zh) * | 2018-06-08 | 2019-07-19 | 中南大学 | 一种Si固溶增强铸铁及其制造与热处理方法 |
-
1995
- 1995-04-06 JP JP08112195A patent/JP3324630B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08277444A (ja) | 1996-10-22 |
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