JP3323675B2 - アルミニウム系材の抵抗溶接方法 - Google Patents

アルミニウム系材の抵抗溶接方法

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JP3323675B2 JP29683494A JP29683494A JP3323675B2 JP 3323675 B2 JP3323675 B2 JP 3323675B2 JP 29683494 A JP29683494 A JP 29683494A JP 29683494 A JP29683494 A JP 29683494A JP 3323675 B2 JP3323675 B2 JP 3323675B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウムまたはア
ルミニウム合金からなるアルミニウム系材料の重ね抵抗
溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルミニウムまたはアルミニウム合金か
らなるアルミニウム系材料(以下、単にアルミニウム系
材という)の重ね抵抗溶接とは、アルミニウム系材から
なる板状の被溶接材を2枚以上重ね合わせ1対の電極で
狭持し、被溶接材を電極により加圧しつつ通電すること
によってアルミニウム系材からなる被溶接材を抵抗発熱
させて溶融接合する方法である。重ね抵抗溶接(以下、
単に抵抗溶接という)としては、抵抗スポット溶接が各
種製造業において一般に広く利用されている。
【0003】ところが、アルミニウム系材は炭素鋼また
はステンレス鋼などの鋼系材料(以下、鋼系材という)
に比して電気伝導率が高いとともに、熱伝導率も高いの
で、抵抗が小さく発熱しにくいと同時に熱が逃げやすい
ため、従来、大電流を短時間通電することによりアルミ
ニウム系材を抵抗溶接している。
【0004】そのため容量の小さな鋼用の溶接機では大
電流を得られず、アルミニウム系材を抵抗溶接するため
には、既存の鋼用溶接機を転用できない上、高価な大容
量の溶接機を導入する必要がある。また、溶接機が大型
になり可搬性が無くなる。
【0005】一方、アルミニウム系材は熱伝導率が高い
ために板厚方向の温度勾配が小さく溶接部における断面
溶け込み形状は板厚方向への溶け込みが大きいものとな
り、溶融部(ナゲット)は被溶接材の表面近傍にまで広
がる。このため、連続打点溶接するなど電極の先端が損
耗すると溶融領域が被溶接材の表面に達してしまった
り、溶接部の表面に割れが発生するなど溶接部の外観が
非常に悪くなると同時に電極汚損の原因にもなる。
【0006】さらにアルミニウム系材の表面には抵抗の
大きな酸化膜が存在し、被溶接材料と電極との間の接触
抵抗が大きいとともに板厚方向の温度勾配が小さいた
め、アルミニウム系材の表面温度が極めて高くなり、容
易に銅合金製電極と圧着してしまうのでアルミニウム系
材を連続打点溶接する場合には電極表面を頻繁に研磨す
る必要がある。
【0007】このように、従来のアルミニウム系材の抵
抗溶接においては、所要電流が高いことによる溶接機
の問題点、被溶接材の表面にまで溶融領域が達してし
まったり、溶接部の表面に割れが発生するなど溶接品質
上の問題点、電極の連続打点寿命が短く頻繁に研磨し
なければならず生産性が低下するという問題があった。
【0008】これらの問題点を解決しアルミニウム系材
の抵抗溶接性を向上させるための様々な工夫がなされて
きた。先ず、第一に被溶接材のアルミニウム系材よりも
抵抗の高い物質を介在させるなどして被溶接材の接合界
面の抵抗を高くすることにより溶接電流の低電流化を図
る技術がある。例えば、特開平4-123879号公報や特開平
5-69155 号公報や特開平6-122080号公報などにこの技術
が開示してある。
【0009】しかし、これらの被溶接材の接合界面の抵
抗を高くすることにより溶接電流の低電流化を図る技術
の問題点は接合界面のみの抵抗を高くすることが非常に
難しい。被溶接材であるアルミニウム系材の表面処理に
より接合界面の抵抗を高くする場合、片面のみを表面処
理することが難しいばかりか、表面処理した面が接合界
面になるよう組み立てねばならず、構造物の設計に制約
をうけ、組立工程上も問題がある。
【0010】また、接合界面に高抵抗物質をインサート
する方法も溶接部(ナゲット内)のみに介在させること
は不可能であり、高抵抗物質として例えばFe粉末を用い
た場合、溶接部近傍にFe粉末が必ず残り、これが被溶接
材のアルミニウム系材と接触して電食を起こすため防食
処理をしなければならないなどの問題点がある。
【0011】アルミニウム系材の抵抗溶接における低電
流化を図る第二の技術として被溶接材と溶接電極との間
にアルミニウム系材よりも固有抵抗の高い金属を介在さ
せることにより低電流化を図る技術がある。例えば、特
開昭57-56175号公報や特開平6-71455 号公報などにこの
技術が開示してある。
【0012】しかし、これらの被溶接材と溶接電極との
間にアルミニウム系材よりも固有抵抗の高い金属を介在
させることにより低電流化を図る技術は、被溶接材の表
面側(電極側)の方の発熱が接合界面よりも大きくな
り、被溶接材の溶接部の表面まで溶融してしまう。した
がって、溶接後にこれらの介在させた固有抵抗の高い金
属を取り除いた場合、溶接部の外観などの点で問題があ
る。一方、溶接後もこれらの金属を取り除かなかった場
合は、アルミニウム系材よりも固有抵抗の高い金属材料
として鋼系材料などの異種金属を用いると、前述と同様
に電食の問題があるので防食処理をしなければならない
などの問題がある。
【0013】さらにアルミニウム系材の抵抗溶接におけ
る電極寿命の延命化技術においても様々な開発がなされ
ている。例えば、特開平4-358094号公報などに表面処理
により被溶接材と電極との間の接触抵抗を低減し電極寿
命の延命化を図る方法や、特開平4-322886号公報などに
被溶接材と電極との間に金属材料を介して通電し、被溶
接材と電極とが直接接しないようにして電極寿命の延命
化を図る方法、あるいはアルミニウム系材の抵抗スポッ
ト溶接における電極寿命延命化のための種々の電極材料
開発や溶接装置開発がなされている。
【0014】また、接着剤による接合法と抵抗スポット
溶接法を併用するウエルドボンド工法がある。このウエ
ルドボンド工法によれば、接着部が継手強度に寄与する
ため1点当たりの継手強度が高強度になり、所要の継手
強度を得るための溶接点数が抵抗スポット溶接法のみの
場合に比べ少なくてすみ、結果的に生産性が向上すると
言われている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかし、例えば表面処
理により被溶接材と電極との間の接触抵抗を低減する技
術は、前述同様に片面のみを表面処理することが難し
く、表面処理した面が電極側になるように組み立てねば
ならず、構造物の設計に制約を受け、組立工程上も問題
があるなど上記の様々な電極寿命の延命化技術あるいは
生産性向上技術はいずれも溶接品質や接合コストなどの
点をも考慮すると実用までに至っていない。
【0016】本発明は、上記のアルミニウム系材の抵抗
溶接における種々の問題点、すなわち鋼系材の抵抗溶接
に比べ、所要電流が高いことに起因する問題点、板
厚方向の溶け込みが深いことに起因する問題点、連続
打点性が短いことに起因する問題点を解決するため、比
較的低い電流で高い継手強度が得られるアルミニウム系
材の抵抗溶接方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は、アルミニウム
系材からなる被溶接材を重ね抵抗溶接により接合するに
際し、その溶接継手部の両側もしくは片側にアルミニウ
ム系材からなる当て板を1枚以上添えて、被溶接材と当
て板とを同時に溶接するアルミニウム系材の抵抗溶接方
法である。さらに、上記当て板の板厚は、最も薄い被溶
接材の板厚の1/10以上、 4mm以下で、当て板の大きさ
は、中心からの最低長さが 5mm以上である。被溶接材の
板厚が、 0.4mm以上、 2.0mm以下で、同厚または異厚で
あるアルミニウム系材の抵抗溶接方法である。
【0018】
【作用】アルミニウム系材からなる被溶接材を抵抗溶接
する場合、図1に示すように、従来の当て板を添えずに
溶接し、図5に示すように引張りせん断試験を行うと図
6のように溶接部で変形し破断する。これは重ね合わせ
継手であるため荷重のかかる方向に段差が生じるので溶
接部にモーメントが発生し変形するからである。被溶接
材の板厚が増すなど剛性が大きくなると変形が少なくて
も破断に至るが、板厚が薄くなるなど被溶接材の剛性が
小さいと低い荷重でも溶接部で変形し破断してしまう。
【0019】そこで図2および図3に示すように、溶接
継手部の少なくとも片側にアルミニウム系材からなる当
て板を添えて、被溶接材と当て板とを同時に溶接する
と、この当て板の剛性により、図7のように高い引張り
せん断荷重がかかっても溶接継手部が変形しにくくな
り、結果として高い継手強度が得られる。また、場合に
よっては溶接部だけで破断せず、図8のように母材をも
破断に至るほどの高強度の継手が得られる。
【0020】一方、アルミニウム系材からなる被溶接材
を重ね抵抗溶接する場合、被溶接材の板厚が厚くなるほ
ど所要の継手強度を得るために必要な溶接電流は大きく
なると言われているが、当て板を添えることにより被溶
接材と被溶接材の界面が増え、その結果、電極間の抵抗
が増えるため当て板を添えない従来の溶接よりも比較的
低い電流で大きな発熱が得られ、低電流でも溶接可能で
あることがわかった。
【0021】したがって、溶接継手部の片側に当て板を
添えても溶接継手の高強度化、溶接電流の低電流化の効
果が認められるが、溶接継手の両側に当て板を添えると
その効果はさらに大きくなる。
【0022】また、当て板の板厚が厚ければ厚いほど溶
接継手の高強度化の効果が期待できるものの、最も厚い
被溶接材の板厚の2倍よりも厚くなると溶接電流の低電
流化の効果がなくなる。逆に、最も薄い被溶接材の板厚
の1/10よりも薄いと溶接継手の高強度化の効果が少なく
なる。最も好ましい当て板の板厚は、最も薄い被溶接材
の板厚と同等以上で、かつ最も厚い被溶接材の板厚の2
倍以下である。
【0023】さらに本発明の抵抗溶接方法によれば、従
来の当て板を添えない溶接方法よりも1溶接点あたりの
継手効率が非常に高いため、所要の溶接構造物を造り上
げるための溶接点数は従来法による場合よりも少なくて
すむ。また、従来法よりも低い溶接電流で所要の継手強
度が得られることと、当て板を添えるため溶接部の板厚
が厚くなり、被溶接材の電極側表面近傍にまで溶け込み
が深くならないことから、従来法に比べ被溶接材の電極
側表面の温度が上昇しない。その結果、銅合金製の溶接
電極を損耗させなくてすみ、溶接電極の長寿命化につな
がる。
【0024】また、当て板の大きさについては、当て板
が小さくなると当て板自身の熱容量が小さくなり抵抗発
熱し易いため、低電流化の効果が期待できるものの、当
て板中心からの最低長さが 5mm未満になると溶接継手の
高強度化の効果は少なくなる。当て板が大きくなると継
手強度が高くなるが、好ましい当て板の最低長さは10mm
以上である。当て板形状については特に限定しないが、
多角形または円形など必要に応じて決定する。
【0025】一方、被溶接材の板厚が厚くなると被溶接
材自身の剛性が高くなるため引張せん断荷重がかかって
も溶接部が変形しにくくなり、本発明法による溶接継手
の高強度化の効果はあまり期待できなくなる。逆に、被
溶接材の板厚が薄いと比較的低い溶接電流でも所要の継
手強度が得られ、当て板を添えることにより母材で破断
しても板厚が薄いためあまり高強度が得られないことな
どから被溶接材の板厚が薄すぎても、本発明法による効
果はあまり期待できなくなる。したがって、被溶接材の
板厚は 0.4mm以上、 2.0mm以下で同厚または異厚でもよ
い。
【0026】なお、本発明における当て板が構造物の一
部となり得たとしても、何ら差し支えないし。本発明の
効果が失われるものではない。また、被溶接材の溶接部
のみを二重、三重に折り返し、本発明における当て板の
代用とすることもできる。
【0027】
【実施例】以下に、本発明の実施例について説明する。 実施例1 被溶接材としてA5182 板厚1.0mm をJIS Z 3136 スポッ
ト溶接継手の引張せん断方法に準拠して、30mm幅×100m
m 長さに切断した試験片を準備した。一方、当て板も同
じA5182 板厚1.0mm を30mm幅×30mm長さに切断したもの
を用い、図1〜4に示すように当て板なしの場合(比
較例)、当て板を溶接継手部の片側に添えた場合、
当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合、当
て板を溶接継手部の両側に2枚ずつ添えた場合について
重ね抵抗溶接し、引張せん断試験を実施し、引張せん断
荷重および溶接部の破断径を比較検討した。その結果を
表1に示す。
【0028】溶接条件を以下に示す。 溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機 電極 :16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合
金) 加圧力:3000N 一段一定加圧 通電時間:140ms 溶接電流:16kA、24kA、32kA
【0029】
【表1】
【0030】表1に示すように、溶接条件を固定し、
当て板なしの場合(比較例)、当て板を溶接継手部の
片側に添えた場合、当て板を溶接継手部の両側に1枚
ずつ添えた場合、当て板を溶接継手部の両側に2枚ず
つ添えた場合を比較した結果、当て板なしの場合(比
較例)に比べて、当て板を溶接継手部の片側に1枚添
えただけでも、引張せん断荷重が 110%以上上昇し、
当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合は、 1
70%以上、さらに当て板を溶接継手部の両側に1枚ず
つ添えた場合は、 190%以上上昇した。
【0031】溶接部の破断径を比較すると、同じ溶接条
件でも当て板を添えた方が破断部の径が大きくなり、当
て板の枚数が増えるにしたがい破断径が大きくなり引張
せん断荷重も上昇する。また、当て板を溶接継手部の両
側に1枚以上ずつ添えた場合、24kA以上の電流で溶接す
ると被溶接材が破断する母材破断となり約5000N 以上も
の非常に高い引張せん断荷重が得られた。一方、16kAと
いう低い電流で溶接すると、当て板なしの場合(比較
例)は、引張せん断荷重は高々1400N しか得られない
が、当て板を溶接継手部の片側に1枚添えただけでも約
150%上昇し、当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添
えた場合は約 200%上昇し、さらに当て板を溶接継手部
の両側に2枚ずつ添えた場合は約 300%上昇した。すな
わち、16kAという比較的低い電流でも、当て板を溶接継
手部の片側に1枚添えたことにより約2000N 、当て板を
溶接継手部の両側に1枚ずつ添えることにより2700N 、
当て板を溶接継手部の両側に2枚ずつ添えることにより
4000N 以上の高い引張せん断荷重が得られている。
【0032】実施例2 本例では、実施例1と同様に被溶接材としてA5182 板厚
1.0mm をJIS Z 3136スポット溶接継手の引張せん断方法
に準拠して、30mm幅×100mm 長さに切断した試験片を準
備した。一方、当て板は 0.2mmから4.0mm までの5000系
(Al-Mg系) のアルミニウム材を30mm幅×30mm長さに切断
したものを用いて重ね抵抗溶接し、当て板の厚さと引張
せん断荷重との関係について調査した。当て板は溶接継
手部の両側に1枚ずつ添え、下記のように溶接条件を固
定し、当て板の厚さを変化させて溶接し、引張せん断試
験を実施した。その結果を図9および図10にしめす。
【0033】溶接条件を以下に示す。 溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機 電極 :16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合
金) 加圧力:3000N 一段一定加圧 通電時間:140ms 溶接電流:20kA、24kA
【0034】図9のように、溶接電流が20kAの場合、当
て板を添えない比較例の場合は、高々1800N/点の引張せ
ん断荷重しか得られないが、0.2mm の薄い板でも当て板
として溶接部の両側に1枚ずつ添えて溶接することによ
り1点当たり3000N 以上の引張せん断荷重が得られる。
この当て板の板厚を厚くしていくと溶接継手部の剛性が
大きくなるため、1点当たりの引張せん断荷重は大きく
なっていき、当て板の板厚が1.2mm 以上では約5000N/点
以上の引張せん断荷重が得られた。当て板の板厚が2mm
以上になると引張せん断荷重が低下していくが、これは
当て板の板厚が厚くなりすぎ継手部の熱容量が増え、当
て板の板厚が1.2mm や1.6mm の場合と同じ大きさのナゲ
ットを得るためには、より大きな入熱すなわち溶接電流
が必要になるからである。
【0035】本例の場合、当て板の板厚が2mm の場合の
破断径は2個の平均で5.55mmであった。これに対して、
当て板の板厚が1.2mm の場合は、破断径は2個の平均で
6.40mm 、当て板の板厚が1.6mm の場合は、破断径は2
個の平均で6.24mmであった。このように、当て板の板厚
が厚くなりすぎるとナゲットが大きくならず、引張せん
断荷重が低下する。当て板の板厚が1.2mm の場合と1.6m
m の場合を比較すると、1.2mm の場合の破断径は6.40m
m、1.6mm の場合の破断径は6.24mmであり、1.6mm の場
合の方が若干破断径が小さいにもかかわらず1.2mm の場
合よりも高強度が得られている。これは、1.6mm の方が
剛性が大きいため当て板の効果が発揮されたものと思わ
れる。さらに、当て板の板厚を厚くしていくと、1.2mm
や1.6mm の場合よりも引張せん断荷重は低下するもの
の、4.0mm の当て板を用いても3000N/点以上の引張せん
断荷重が得られ、当て板を添えない比較例の約2倍の高
強度となっている。
【0036】一方、溶接電流を24kAに上げると、図10の
ように引張せん断荷重が全体的に高くなり、破断形態が
当て板の板厚が薄い場合は、図6のようなボタン破断と
なるが、当て板が1.0mm 以上に厚くなると図8のような
母材破断となり非常に高い継手強度が得られる。したが
って、0.2mm の薄い当て板や4.0mm という厚い当て板で
も同じ溶接条件(4.0mmの場合は溶接電流が20kAの場合)
で溶接した場合、比較例の当て板の無い場合よりも高い
継手強度が得られる。特に被溶接材が1.0mm の場合は、
1.0mm〜2.0mm (被溶接材の板厚と同厚から2倍)の当
て板を添えて溶接すると破断形態が母材破断となる非常
に高い継手強度が得られている。
【0037】しかし、本実施例においては、 1.0mmから
2.0mm の当て板を添えた場合、最も高い継手強度が得ら
れたが、この結果は被溶接材の板厚が異なれば最も良好
な板厚範囲は異なると推定される。被溶接材料の板厚が
2.0mm 以下の場合、0.2mm の薄い板でも当て板として溶
接継手の両側に1枚ずつ添えると当て板を添えない比較
例よりも溶融部(ナゲット)の径が大きくなり引張せん
断荷重が高くなる。逆に、0.4mm という薄いアルミニウ
ム材を被溶接材として、2.0mm という厚い当て板を添え
ても同じ溶接条件 (溶接電流:20kA)で溶接すると、当て
板を添えない比較例に比べ約3倍の引張せん断荷重が得
られる。
【0038】したがって、本発明では、当て板の板厚限
定範囲は薄い方は、被溶接材の板厚の1/10以上とし、厚
い方は、あまり厚すぎても溶接部の外観 (美観) や当て
板を添えることによる溶接構造物の重量増の問題点から
本実施例でその効果を確認した4mm 以下とし、本実施例
において母材破断となった最も薄い被溶接材の板厚の1
倍以上2mm 以下を最も良好な当て板の板厚範囲として限
定している。
【0039】実施例3 被溶接材は実施例1と同様にA5182 板厚1.0mm をJIS Z
3136 スポット溶接継手の引張せん断方法に準拠して、
30mm幅×100mm 長さに切断した試験片を準備した。一
方、当て板も実施例1と同様にA5182 板厚1.0mm を用
い、一辺の長さが10mmから50mmまでの正方形と、幅30mm
で長さが10mmから100mm までの長方形の当て板を用意
し、図11および12に示すように、溶接継手部の両側に1
枚ずつ添えて重ね抵抗溶接し、引張せん断試験を実施し
することにより、当て板の大きさ(一辺の長さ)および
当て板の長さが溶接継手強度に与える影響について調査
した。溶接条件を下記のように固定して、当て板の大き
さ(一辺の長さ)および当て板の長さを変化させ調査し
た結果を図13および図14に示す。
【0040】溶接条件を以下に示す。 溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機 電極 :16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合
金) 加圧力:3000N 一段一定加圧 通電時間:140ms 溶接電流:20kA
【0041】図13のように、一辺の長さが10mmという小
さな正方形のアルミニウム板を当て板として使用しても
当て板を添えない比較例の場合に比べ約2倍の引張せん
断荷重が得られた。当て板の一辺の長さが長くなり当て
板の大きさが大きくなると継手強度が高くなっていく
が、30mm以上に大きくしても、継手強度はあまり高くな
らない。一方、当て板の長さの影響についても、図14の
ように当て板の長さが10mm以上あれば、当て板を添えな
い比較例の場合に比べ約2倍の引張せん断荷重が得ら
れ、当て板を添える効果が認められる。
【0042】本例は、一辺の長さが10mm以上の正方形ま
たは長方形からなる当て板について調査したが、当て板
の形状は正方形または長方形でなくとも本発明の効果が
失われるものではない。例えば、図15に示すような、多
角形や円形、楕円形などの場合の方が溶接構造物によっ
ては溶接部の美観性の点から優れている場合もある。
【0043】実施例4 本例では、当て板をA5182 1.2mm 板厚×30mm幅×30mm長
さに固定し、被溶接材の板厚を変化させて本発明法の被
溶接材板厚に対する効果を調査した。被溶接材としてA5
182 板厚0.4mm 、0.8mm 、1.0mm 、1.2mm 、2.0mm の5
種類の板厚の異なるアルミニウム材を実施例1と同様に
30mm幅×100mm 長さに切断し試験片を準備した。溶接条
件を下記のように固定して、当て板なしの場合 (比較
例) と当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場
合について重ね抵抗溶接し、引張せん断試験を実施し
て、引張せん断荷重および溶接部の破断径を比較検討し
た。その結果を表2に示す。
【0044】溶接条件を以下に示す。 溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機 電極 :16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合
金) 加圧力:3000N 一段一定加圧 通電時間:140ms 溶接電流:20kA
【0045】表2に示すように、溶接条件を固定し、
当て板なしの場合 (比較例) と当て板を溶接継手部の
両側に1枚ずつ添えた場合を比較すると、被溶接材の板
厚が0.4mm の場合は、1.2mm の当て板を溶接継手部の両
側に1枚ずつ添えることにより同じ溶接条件にもかかわ
らず、当て板なしの場合 (比較例) に比べ 200%以上
引張せん断荷重が上昇している。この上昇率は被溶接材
の板厚が0.8mm 、1.0mm 、1.2mm と増すに従い大きくな
り、1.0mm 、1.2mm の場合は 300%以上にも上昇してい
る。被溶接材の板厚が2.0mm と厚くなると、被溶接材自
身の剛性が高くなるため引張せん断荷重の上昇率は低く
なるものの当て板なしの場合 (比較例) に比べ 150%
引張せん断荷重が上昇している。
【0046】
【表2】
【0047】実施例5 本例では、試験片ではなく実際の構造物におけるアルミ
ニウム板の接合に本発明を適用した場合を想定し、A518
2 板厚1.0mm を400mm 幅×100mm 長さに切断したアルミ
ニウム板2枚を重ね抵抗溶接する場合において、本発明
を適用した場合と当て板を添えない比較例とを比較し
た。
【0048】溶接方法はA5182 1.0mm 板厚×400mm 幅×
100mm 長さの板を図16のように、30mm重ね合わせ、35mm
ピッチで11打点溶接した。また、本発明例は、当て板と
してはA5182 1.0mm 板厚×30mm幅×400mm 長さの当て板
を図17のように溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合
と、A5182 1.0mm 板厚×30mm幅×30mm長さの当て板を図
18のように溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合の二
通りである。溶接条件を下記のように固定した。
【0049】溶接条件を以下に示す。 溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機 電極 :16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合
金) 加圧力:3000N 一段一定加圧 通電時間:140ms 溶接電流:24kA
【0050】溶接後、各溶接点ごとに幅30mmの試験片を
切り出し、引張せん断試験を実施した。その結果を図19
に示す。溶接条件が同じであるにもかかわらず、当て板
を添えない比較例の場合は、引張せん断荷重が1点当た
り 2000N〜3000N であるのに対し、本発明例では約5000
N と比較例に比べ約2倍の引張せん断荷重が得られてい
る。
【0051】以上のように、本発明法の実施例を示して
きたが、溶接機や溶接条件、電極形状などが変わったと
しても本発明の効果が失われるものではない。また、本
発明法の効果を溶接点1点当たりの引張せん断荷重によ
り評価してきたが、十字引張試験においても同様に本発
明法により比較的低電流で高強度が得られることは実施
例から容易に推定できる。また、本発明法によれば溶接
部が当て板により補強されているため、当て板を添えな
い比較例に対し、溶接継手の疲労強度や衝撃性能などが
格段に向上することは明らかである。さらに、例えば油
が付着するなど被溶接材の表面状態が悪く溶接性(連続
打点性)の劣るアルミニウム材であっても、本発明法の
当て板材の表面状態のみ良好にしておけば溶接電極を汚
損することなく溶接可能となることなども容易に推定で
きる。
【0052】
【発明の効果】以上述べたところから明らかなように、
本発明によれば従来の抵抗溶接方法よりも比較的低い溶
接電流で非常に高い継手強度が得られ、容量の小さい溶
接機であっても溶接可能となり、所要の継手強度を得る
ための溶接点数が少なくてすみ溶接構造物の生産性が向
上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の抵抗溶接法を説明する図である。
【図2】本発明の抵抗溶接法を説明する図である。
【図3】本発明の抵抗溶接法を説明する図である。
【図4】本発明の抵抗溶接法を説明する図である。
【図5】従来の抵抗溶接法による継手の引張せん断試験
を説明する図である。
【図6】従来の抵抗溶接法による継手の引張せん断試験
後の破断形態を説明する図である。
【図7】本発明の抵抗溶接法による継手の引張せん断試
験を説明する図である。
【図8】本発明の抵抗溶接法による継手の引張せん断試
験後の破断形態を説明する図である。
【図9】溶接電流が20kAの場合の当て板板厚と引張せん
断荷重との関係を示す図である。
【図10】溶接電流が24kAの場合の当て板板厚と引張せん
断荷重との関係を示す図である。
【図11】実施例3の試験片形状を示す模式図である。
【図12】実施例3の試験片形状を示す模式図である。
【図13】当て板の一辺の長さと引張せん断荷重との関係
を示す図である。
【図14】当て板の長さと引張せん断荷重との関係を示す
図である。
【図15】当て板の形状と大きさを示す模式図である。
【図16】実施例5の試験片形状を示す模式図である。
【図17】実施例5の試験片形状を示す模式図である。
【図18】実施例5の試験片形状を示す模式図である。
【図19】実施例5の試験結果を示す図である。
【符号の説明】
1…被溶接材、2…電極、3…当て板、M…当て板中心
からの最低長さ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 11/11 B23K 11/18 B23K 103:10

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウムまたはアルミニウム合金か
    らなる被溶接材料を重ね抵抗溶接により接合するに際
    し、その溶接継手部の両側にアルミニウムまたはアルミ
    ニウム合金からなる当て板を1枚以上添えて、被溶接材
    であるアルミニウムまたはアルミニウム合金と、前記当
    て板とを同時に溶接することを特徴とするアルミニウム
    系材の抵抗溶接方法。
  2. 【請求項2】 アルミニウムまたはアルミニウム合金か
    らなる被溶接材料を重ね抵抗溶接により接合するに際
    し、その溶接継手部の片側のみにアルミニウムまたはア
    ルミニウム合金からなる当て板を1枚以上添えて、被溶
    接材であるアルミニウムまたはアルミニウム合金と、前
    記当て板とを同時に溶接することを特徴とするアルミニ
    ウム系材の抵抗溶接方法。
  3. 【請求項3】 前記当て板の厚さが、最も薄い被溶接材
    料の板厚の 1/10 以上であり、4mm 以下であることを特
    徴とする請求項1または請求項2記載のアルミニウム系
    材の抵抗溶接方法。
  4. 【請求項4】 前記当て板の厚さが、最も薄い被溶接材
    料の板厚以上であり、2mm 以下であることを特徴とする
    請求項1または2記載のアルミニウム系材の抵抗溶接方
    法。
  5. 【請求項5】 前記当て板の形状が、中心からの最低長
    さが 5mm以上である多角形または円形ないし楕円形など
    であることを特徴とする請求項1または2または3また
    は4記載のアルミニウム系材の抵抗溶接方法。
  6. 【請求項6】 前記被溶接材の厚さが、0.4mm 以上、2.
    0mm 以下で、同厚または異厚であることを特徴とする請
    求項1または2または3または4または5記載のアルミ
    ニウム系材の抵抗溶接方法。
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