JP3316958B2 - 偏極電子線発生素子 - Google Patents

偏極電子線発生素子

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JP3316958B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スピン方向が偏在して
いる偏極電子線を発生する偏極電子線発生素子の改良に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】スピン方向が2種類のうちの一方に偏在
している電子群から成る偏極電子線は、たとえば、高エ
ネルギー素粒子実験分野においては原子核内部の磁気構
造を、物性物理実験分野においては物質表面の磁気構造
を調査する上で有効な手段として利用されている。かか
る偏極電子線は、価電子帯にバンドスプリッティングを
有する半導体光電層を備えた偏極電子線発生素子を用
い、その半導体光電層に励起光を入射させることによっ
て取り出すことが可能である。この偏極電子線発生素子
としては、例えばGaAsP半導体の上に、それよりも
バンドギャップが小さく且つ格子定数が僅かに異なるG
aAs半導体を半導体光電層として結晶成長させたスト
レインドGaAs半導体がある。これによれば、GaA
sP半導体に対して格子定数が異なるGaAs半導体が
ヘテロ結合させられることにより、そのGaAs半導体
には格子歪が付与されるため、その価電子帯にバンドス
プリッティングが発生してヘビーホールのサブバンドと
ライトホールのサブバンドにエネルギー準位差が生じる
一方、両サブバンドの励起によって取り出される電子の
スピン方向は互いに反対向きであるため、エネルギー準
位が高い方すなわち伝導帯とのエネルギーギャップが小
さい方のサブバンドのみを励起するような光エネルギー
をGaAs半導体に注入すれば、一方のスピン方向に偏
在した電子群が専ら励起されて放出され、高い偏極率を
備えた偏極電子線が得られるのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
偏極電子線発生素子においては必ずしも十分な量子効率
(QE)が得られず、発生電子線量が少ないという問題
があった。このため、例えば磁区の観察を行うために
は、十分な電子線量を得るために長時間励起光を照射す
る必要があり、リアルタイムで磁区の動きを観察するこ
とは困難であった。なお、半導体光電層を厚くすれば励
起光の吸収が増えて量子効率は向上するが、半導体光電
層に付与される歪が少なくなるとともに半導体内におけ
る散乱などでスピンが変化するため、偏極率が低下する
傾向となる。
【0004】本発明は以上の事情を背景として為された
もので、その目的とするところは、偏極率を損なうこと
なく高い量子効率が得られる偏極電子線発生素子を提供
することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本発明は、価電子帯にバンドスプリッティングを
有する半導体光電層を備え、その半導体光電層に円偏光
である励起光が入射されることにより半導体光電層の表
面からスピン方向が偏在している偏極電子線を発生する
偏極電子線発生素子において、前記半導体光電層を透過
した前記励起光を反射することによりその半導体光電層
の表面との間に励起光を共振させる光共振器を構成する
半導体多層膜反射層を、その半導体光電層の裏側に設け
るとともに、その半導体光電層を半導体薄膜を積層した
量子井戸から構成したことを特徴とする。
【0006】
【作用および発明の効果】このような偏極電子線発生素
子においては、半導体光電層を透過した前記励起光を反
射することによりその半導体光電層の表面との間に励起
光を共振させる光共振器を構成する半導体多層膜反射層
がその半導体光電層の裏側に設けられているため、半導
体光電層に入射させられた励起光は上記光共振器内で共
振させられる。また、上記半導体光電層は、バンドギャ
ップが異なる二種の半導体薄膜(例えばGaAsとAl
0.35Ga0.65As)が交互に積層された超格子、特に、
一方の半導体薄膜のバンドギャップが他方の半導体薄膜
のバンドギャップの間に入るようにされた所謂量子井戸
から構成されているため、共振波長において、井戸層と
して働く層(前記二種の半導体薄膜においてはGaA
s)にヘビーホールとライトホールの量子準位が相互に
異なる量子準位が形成される。更に、障壁層として働く
層(前記二種の半導体薄膜においてはAl0.35Ga0.65
As)が薄い場合には、トンネル効果により、障壁層を
越えて隣接する井戸層に透過する電子や正孔が互いに影
響を及ぼし合って、価電子帯や伝導帯にサブバンドが形
成される。したがって、このサブバンドを励起する波長
の励起光を与えることにより遷移確率が向上し、高い量
子効率が得られる。
【0007】なお、半導体光電層の励起光の吸収量はそ
の厚みの増加に伴って増加する特性があることから、半
導体光電層はできるだけ厚くすることが望まれるが、上
記のサブバンドは半導体光電層全体の厚さに無関係に生
じることから、厚みの増加に起因する偏極率の低下が生
じ難くなる。したがって、半導体光電層の厚みを充分な
励起光の吸収ができる厚さに設定できて、偏極率を損な
うことなく高い量子効率が得られる偏極電子線発生素子
が得られる。
【0008】好適には、前記半導体光電層の厚みaは、
定在波の波長をλS 、自然数をmとしたとき、次式(1)
により表される値、或いはその値から所定値小さい範囲
内に設定される。なお、上記所定値は、厚みaを増加さ
せることにより量子効率が向上する1/2λS よりも小
さい範囲内で適宜定められるものである。
【0009】
【数1】
【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。
【0011】図1は、偏極電子線発生素子10の要部構
成を示している。図において、偏極電子線発生素子10
は、基板12と、よく知られたMBE(分子線エピタキ
シー)装置によりその基板12の上に順次結晶成長させ
られたバッファ層14,半導体多層膜反射層16、バリ
ア層18、半導体光電層20およびパッシベーション膜
22を備えている。
【0012】上記基板12は400μm程度の厚みであ
って、Znが不純物としてドープされることによりキャ
リア濃度が5×1018(cm-3)程度とされたp−Ga
Asであり、表面は(100)面である。また、上記バ
ッファ層14は、50nm程度の厚みであって、Beが
不純物としてドープされることによりキャリア濃度がが
5×1018(cm-3)程度とされたp−GaAsであ
る。また、半導体多層膜反射層16は、厚さが60.6
nmのp−Al0.6 Ga0.4 Asと厚さが56.1nm
のp−Al0.2 Ga0.8 Asとを後者が基板12側にな
るように交互に30組積層したもので、円偏光である励
起レーザ光24の波長λに対して充分に広い帯域幅を備
えた反射特性を備えている。これら2種類の半導体は、
何れもBeが不純物としてドープされることによりキャ
リア濃度が5×1018(cm-3)程度とされている。
【0013】上記の半導体多層膜反射層16は、屈折率
の異なる2種類の半導体を1/4波長の光学的厚さで交
互に積み重ねて形成されることにより、光波干渉によっ
て上記励起レーザ光24を反射する所謂ブラッグ反射鏡
であって、その半導体多層膜反射層16を構成している
Al0.6 Ga0.4 AsおよびAl0.2 Ga0.8 Asの膜
厚は、それらの屈折率および励起光の波長に基づいて定
められている。すなわち、Alx Ga1-x Asの屈折率
n(x)は次式(2) に従って求められ、n(0.6)=
3.196,n(0.2)=3.45であるため、中心
波長λ=775nmとして次式(3) に従って、Al0.6
Ga0.4 Asの膜厚tB =60.6nm,Al0.2 Ga
0.8 Asの膜厚tB =56.1nmとされているのであ
る。なお、Al0.6 Ga0.4 AsよりもAlの混晶比x
が大きなAlx Ga1-x Asを用いれば、屈折率差が大
きくなって反射率が高くなり、かつ反射帯が拡がるが、
混晶比xが0.6より大きくなるとBeの活性化率が低
下すると共にAl0.2 Ga 0.8 AsとAlx Ga1-x
sとの界面のポテンシャル障壁が大きくなって、導電率
が低下して好ましくないのである。
【0014】
【数2】
【0015】また、前記バリア層18は、289nm程
度の厚みを備えたものであって、Beが不純物としてド
ープされることによりキャリア濃度が5×1018(cm
-3)程度とされたp−Al0.35Ga0.65Asである。ま
た、上記半導体光電層20は、厚さが1.98nmのp
−GaAsと厚さが3.11nmのp−Al0.35Ga
0.65Asとを後者がバリア層18側になるように交互に
例えば11組積層し、全体の厚みa=56nmとしたも
ので、何れもBeが不純物としてドープされることによ
りキャリア濃度が5×1018(cm-3)程度とされてい
る。これらの薄膜の厚みおよびAlの混晶比は、ヘビー
ホールとライトホールのバンド差の分離が熱雑音よりも
大きくなるように、また、励起された電子が障壁層をト
ンネル効果で通過できるように設定される。本実施例に
おいては、ヘビーホールとライトホールのバンド差の分
離は44eVである。なお、半導体光電層20は、励起
された光電子をその表面から取り出すまでに再結合或い
はスピンが反転する散乱を受けないように、最上層(パ
ッシベーション膜22の直下)に設けられている。ま
た、図1における各半導体の厚さは必ずしも正確な割合
で示したものではない。
【0016】上記半導体光電層20は、上記のように半
導体薄膜が積層されて構成された所謂量子井戸と呼ばれ
るものであり、各組を構成する両半導体はバンドギャッ
プの異なるものが用いられる。この量子井戸構造におい
ては、GaAsがド・ブロイ波長以下にされているた
め、GaAsが井戸層として働いてこの井戸層にヘビー
ホールとライトホールの量子準位が相互に異なる量子準
位が形成され、また、障壁層として働くAl0.35Ga
0.65Asも薄くされているため、トンネル効果により隣
接する井戸層に透過する電子や正孔が互いに影響を及ぼ
し合って、価電子帯および伝導帯に正孔および電子のサ
ブバンドが形成される。上記のそれぞれの量子準位にお
ける電子のスピン方向は互いに反対向きであるため、エ
ネルギー準位の高い方すなわちヘビーホールの量子準位
のみを励起する光エネルギーが半導体光電層20に入射
されると、一方のスピン方向に偏在した電子群が専ら励
起されて放出される。このとき、上記のようにサブバン
ドが形成されているため、比較的高い確率で励起が行わ
れるのである。
【0017】また、前記パッシベーション膜22は、2
μm程度の厚みのAsであって、半導体光電層20の障
壁層であるAl0.35Ga0.65As層のAlの酸化を防止
するために設けられているものである。障壁層のAlの
酸化が生じるとトンネル効果が得られなくなるため、パ
ッシベーション膜22を設けて保護している。また、パ
ッシベーション膜22は、井戸層であるGaAs層の酸
化が生じて電子が取り出しにくくなるのを防止する効果
もある。このパッシベーション膜22は、使用時に真空
中で高温処理することにより蒸発させて取り除かれるも
のであり、図2においてはパッシベーション膜22が除
去された状態を示している。
【0018】ここで、半導体光電層20の表面26と半
導体多層膜反射層16との間では、図2に示す定在波2
8のような共振モードで励起レーザ光24を共振させる
光共振器が構成され、半導体光電層20の表面26には
定在波28の腹が生じている。本実施例においては、図
2に示すように半導体光電層20の裏面32に定在波2
8の節が生じているため、mを自然数としたとき半導体
光電層20の膜厚aは前記(1) 式で示したように定在波
28の1/2波長の(2m−1)倍であり、図2におい
ては、1/2波長に等しい厚みにされている。半導体光
電層20の屈折率nSLは下記(4) 式で与えられ、前記
(2) 式からGaAsの屈折率nGaAs=3.59、Al
0.35Ga0.65Asの屈折率nAlGaAs=3.353である
から、nSL=3.445となる。したがって、半導体光
電層20における定在波28の波長λ S は、(5) 式から
112nmであり、半導体光電層20の厚みを1/2波
長にするには、厚みa=56nmとすれば良いことにな
る。そして、半導体光電層20の一組の半導体薄膜の厚
みは5.09nmであることから、本実施例においては
11組が積層されているのである。なお、前記励起光2
4の波長λは、上記のような半導体光電層20を用いた
場合に高い偏極率が得られる波長に定められている。
【0019】
【数3】
【0020】半導体多層膜反射層16の厚みは前述のよ
うに定められ、その表面30側に屈折率の小さい方の半
導体が配置されているため、図2に示すように、半導体
多層膜反射層16の表面30に定在波28の腹が生じて
いる。また、上記バリア層18の厚みは、半導体光電層
20の裏面32で定在波28の節が生じる厚みに決定さ
れている。バリア層18の屈折率は前記(2) 式から3.
353であり、したがって、バリア層18における定在
波28の波長は(5) 式と同様にして約116nmであ
る。上述のように半導体多層膜反射層26の表面30で
腹が生じていることから、mを自然数としたとき前記厚
みは定在波28の1/2波長の(2m−1)倍にされて
いる。図2においては、バリア層18の厚みbは、例え
ば1/2波長の5倍すなわち約289nmに決定されて
いる。
【0021】一般に、高い量子効率を得るためには、半
導体光電層20の膜厚を増して励起レーザ光の吸収率を
向上させることが必要であるが、一方高い偏極率を得る
ためには、価電子帯および伝導帯の正孔および電子の濃
度を高くすると共に、半導体光電層20に定在波28の
振幅の大きな部分すなわち腹が位置することが望まれ
る。従来の偏極電子線発生素子では、上記濃度を高くす
ることは行われず、また、一層の半導体から構成された
半導体光電層と、その裏面に位置する半導体多層膜反射
層やバッファ層等との格子定数の差に基づいて発生した
格子歪により、価電子帯に歪を与えてバンドスプリッテ
ィングを発生させていたため、膜厚が増すと価電子帯で
の歪が小さくなって偏極率が低下し、したがって、半導
体光電層の膜厚を自由に決定することができず、充分な
量子効率が得られなかった。それに対して本実施例にお
いては、半導体光電層20が半導体薄膜が積層された量
子井戸から構成されて、価電子帯および伝導帯に正孔お
よび電子のサブバンドが形成されているため、このサブ
バンドを励起する波長の励起光を与えることにより遷移
確率が向上し、偏極率を損なうことなく高い量子効率が
得られる偏極電子線発生素子10が得られる。
【0022】また、本実施例の偏極電子線発生素子10
によれば、バリア層18はその表面に形成される半導体
光電層20の最下層と同組成とされているが、その厚み
bが約289nmと大きいため、半導体光電層20で励
起された電子を基板12側へ流さないためのポテンシャ
ル障壁の役割を果たす。
【0023】また、バッファ層14が基板12上にMB
E法で結晶成長させられているため、バッファ層14表
面は原子スケールで平坦になり、その上に順次結晶成長
させられる半導体多層膜反射層16、バリア層18およ
び半導体光電層20の精度が向上している。これは、M
BE法では結晶表面の段差のあるところからその段差が
なくなるように結晶成長が進むためである。
【0024】なお、上述の実施例では、半導体多層膜反
射層16の表面30に定在波28の腹が生じていたが、
半導体多層膜反射層16の積層の順序を異なるものとし
て、p−Al0.2 Ga0.8 Asを半導体光電層20側
に、p−Al0.6 Ga0.4 Asを基板12側にすること
もできる。この場合には、屈折率の大きい方の半導体が
半導体多層膜反射層16の表面30側に配置されている
ため、図2に破線で示すように半導体多層膜反射層16
の表面34に定在波28の節が生じる。したがって、バ
リア層18の厚みを波長の自然数倍としたときに半導体
光電層20の裏面32に定在波28の節が生じる。例え
ば、図2においては、2波長すなわち前記の定在波28
のときには、約231nmとすれば良い。
【0025】また、バリア層18は必ずしも必要なもの
ではない。バリア層18を用いない偏極電子線発生素子
10において図2に対応する図3から明らかなように、
半導体多層膜反射層16の表面36に定在波28の腹が
生じる場合には、半導体光電層20の膜厚を定在波28
の波長の自然数倍に、反対に半導体多層膜反射層16の
表面38に定在波28の節が生じる場合には、半導体光
電層20の膜厚を(1)式に示すように定在波28の1/
2波長の(2m−1)倍にすることにより、前述の実施
例と同様に励起レーザ光24が共振させられる。
【0026】また、バリア層18は、上記の例とは反対
にきわめて厚くすることも可能である。例えば、厚さb
=3000nmとした場合には、共振波長の間隔Δλが
半導体多層膜反射層16の高反射帯域および高い偏極度
を与える励起光の波長域よりも短くなり、高反射帯域お
よび励起光の波長域内に複数の共振波長λR が存在し得
る。そのため、光共振器を構成する層(半導体多層膜反
射層16、バリア層18、半導体光電層20)の厚み
や、AlX Ga1-X As層のAlの混晶比xが高精度に
制御されず共振波長λR が変動した場合にも、少なくと
も一つの共振波長λR が高反射帯域および励起光の波長
域内に存在するため、このような場合にも高い量子効率
が得られる偏極電子線発生素子10が得られる。したが
って、設計および製造が容易となる。
【0027】上記、共振波長λR の間隔Δλは、バリア
層18の厚さをb、実効屈折率をn e とし、薄い半導体
光電層20を無視すれば、下記(6) 式で与えられる。し
たがって、バリア層18の厚さbが大きいときには共振
波長の間隔Δλが小さくなるのである。ここで、実効屈
折率とは屈折率の波長依存性を考慮した屈折率であり、
通常の屈折率より大きくなる。なお、(6) 式においては
半導体多層膜反射層16での位相の変化は無視してお
り、位相の変化を含めるにはバリア層18の厚さbを実
効的な厚さに置き換えれば良い。また、バリア層18の
厚さbは、製造上可能な厚みbや混晶比xの精度と、得
られる量子効率との兼ね合いによって定められるもので
ある。
【0028】
【数4】
【0029】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明したが、本発明は他の態様で実施することも
できる。
【0030】例えば、前述の実施例においては、バリア
層18の厚みを、半導体光電層20の裏面32に定在波
28の節が生じるように設定していたが、バリア層18
の厚みは、半導体光電層20の裏面32に定在波28の
腹が生じるように設定されていても差し支えない。その
場合には、前述の実施例においてバリア層18を有せず
半導体光電層20の裏面32に定在波28の腹が生じた
場合と同様に、半導体光電層20の厚みを設定すれば良
い。
【0031】 また、前述の実施例においては、半導体
光電層20の裏面に定在波28の節或いは腹が生じる場
合について説明したが、バリア層18を有する場合には
必ずしもこのように設定する必要はない。例えば、半導
体光電層20の裏面付近に定在波28の節が生じるよう
に設定されている場合には、半導体光電層20の厚さを
定在波28の1/2波長の(2m−1)倍よりも所定値
δ1 だけ小さくするのが効果的である。また、反対に半
導体光電層20の裏面付近に腹が生じるように設定され
ている場合には、半導体光電層20の厚さを定在波28
の波長の自然数倍よりも所定値δ2 だけ大きくすのが効
果的である。何れにしても、節の生じている部分では励
起光の吸収が少なくなり、効率が低下するので、節の生
じている部分の厚さの全体の半導体光電層20の厚さに
対する割合を小さくするのが効果的である。なお、これ
らの場合には、励起レーザ光24が共振されるように、
すなわち半導体光電層20の表面に定在波28の腹が位
置するように、バリア層18の厚みが前記所定値の増減
に対応する値だけ変更される必要がある。また、上記所
定値δ1 、δ2 は厚みを変更することにより十分な量子
効率が得られるように、1/2λ S よりも小さい範囲内
で適宜定められるものである。
【0032】また、前述の実施例では、半導体光電層2
0はGaAsおよびAl0.35Ga0. 65Asの薄膜が積層
された量子井戸から構成されていたが、それらの半導体
の組成(Alの混晶比)や種類は変更されてもよい。例
えばGaAsやInGaAs,InGaAsP等を用い
た超格子或いは歪超格子を用いることも可能である。要
するに、半導体光電層20は、一方の層のバンドギャッ
プが他方の層のバンドギャップの間に入るようにされた
量子井戸から構成されていれば良いのである。また、半
導体光電層20を構成する半導体薄膜のそれぞれの厚み
は、実施例で示した1.9nmと3.1nmに限定され
るものではなく、実施例で述べたように、ヘビーホール
とライトホールの分離が熱雑音よりも大きくなるよう
に、また、励起された電子が障壁層として働く層をトン
ネル効果で通過できるように適宜設定されるものであ
る。
【0033】また、パッシベーション膜22は、前述の
ように主に半導体光電層20のAl 0.35Ga0.65Asの
Alの酸化を防止するために設けられているものであっ
て、実施例で示した2μmよりも厚いもの或いは薄いも
のでも良い。また、パッシベーション膜22はGaAs
層の酸化防止も兼ねているが、GaAsの酸化は比較的
少なく、GaAs層が最上層に形成されている場合に
は、必ずしも設けられなくても良い。
【0034】前記実施例では基板12としてGaAsが
用いられていたが、AlGaAs等の他の化合物半導体
やSi基板等を用いることも可能である。
【0035】また、前記実施例の半導体多層膜反射層1
6は、そのAlの混晶比は適宜変更され得るし、多層膜
の境界では屈折率を階段状ではなく連続的に変化させる
ようにしても良い。
【0036】また、前記実施例ではMBE法を用いて各
層を形成したが、これは薄膜の膜厚制御が容易であるた
めであり、MOCVD(有機金属化学気相成長)法等の
他のエピタキシャル成長技術を用いることも可能であ
る。
【0037】その他一々例示はしないが、本発明は当業
者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実
施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である偏極電子線発生素子の
構成を説明する図である。
【図2】図1の偏極電子線発生素子の半導体光電層の表
面と半導体多層膜反射層との間に構成される光共振器に
おいて、定在波の節とバリア層および半導体光電層の厚
みとの関係を説明する図である。
【図3】図1の偏極電子線発生素子において、バリア層
が設けられない場合の図2に対応する図である。
【符号の説明】
10:偏極電子線発生素子 16:半導体多層膜反射層(反射層) 18:バリア層 20:半導体光電層 26:(半導体光電層の)表面 28:定在波 30:(半導体多層膜反射層の)表面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−329235(JP,A) 特開 平5−234501(JP,A) 特開 平5−74406(JP,A) 特開 平3−29259(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 1/34 - 1/35

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 価電子帯にバンドスプリッティングを有
    する半導体光電層を備え、該半導体光電層に円偏光であ
    励起光が入射されることにより該半導体光電層の表面
    からスピン方向が偏在している偏極電子線を発生する偏
    極電子線発生素子において、 前記半導体光電層を透過した前記励起光を反射すること
    により該半導体光電層の表面との間に該励起光を共振さ
    せる光共振器を構成する半導体多層膜反射層を、該半導
    体光電層の裏側に設けるとともに、該半導体光電層を半
    導体薄膜を積層した量子井戸から構成したことを特徴と
    する偏極電子線発生素子。
  2. 【請求項2】 前記半導体光電層の厚みaは、定在波の
    波長をλS 、自然数をmとしたとき、次式 a=λS ・(1/2)・(2m−1) により表される値、或いはその値から所定値小さい範囲
    内に設定され 該所定値は、厚みaを増加させることにより量子効率が
    向上する1/2λ s よりも小さい範囲内で定められるも
    のである ことを特徴とする請求項1に記載された偏極電子線発生
    素子。
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