JP3309860B2 - 耐食性に優れた深絞り用冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

耐食性に優れた深絞り用冷延鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は、耐食性に優れた深絞り
用冷延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用鋼板等に使用される冷延鋼板の
分野においては、深絞り性に優れていることが要求され
ることが多くなっている。深絞り用冷延鋼板は、従来よ
り低炭素アルミキルド鋼板、極低炭素鋼をベースにTi
を添加したもの、これらにSi、Mn、P、Crを添加
して強度を上げた高張力鋼板については多くの提案があ
る。
【0003】例えば、特公昭57−57945号におい
て極低炭素Ti添加鋼にPを添加した冷延鋼板が、ま
た、特公昭58−29129号において極低炭素Ti添
加鋼に多量のMnを添加した冷延鋼板が、これらは、自
動車用冷延鋼板の特に深絞り性と強度を同時に付与する
ための技術であって、この結果、自動車用冷延鋼板の薄
肉化すなわち軽量化を達成しょうとするものである。
【0004】しかし、強度面からは鋼板の板厚を薄くす
ることは可能であるが、板厚を薄くする腐食により鋼板
の孔あき腐食が問題となってくる。このため耐食性の良
好な鋼板が求められている。
【0005】
【発明が解決しょうとする課題】本発明は、上述の事情
に鑑み、母材の耐食性を改良し、耐食性、深絞り性とも
満足しうる冷延鋼板の製造方法を提供することを目的と
する。
【0006】
【問題を解決するための手段】本発明者らは、深絞り性
および耐食性がともに優れた冷延鋼板の製造方法につい
て種々の検討を行ったところ、極低炭素鋼に微量のT
含有させ深絞り性を付与し、耐食性を向上するCu、
Pを加え、さらに、高強度化と耐食性向上のためにS
i、MnおよびNi、Mo、Cr、等を添加することに
より、耐食性に優れた深絞り用冷延鋼板を得るに至っ
た。
【0007】[発明の構成] すなわち、本発明は重量%でC:0.005以下、S
i:1.5以下、Mn:0.05〜0.78、P:0.
03〜0.20、S:0.02以下、Cu:0.05〜
0.31、solAl:0.005〜0.100、N:
0.005以下、Ti:0.005〜0.15を含み、
かつ、Ti>48/14・N+48/32・Sとなる関
係を満たし、残部は鉄および不可避的不純物よりなる鋼
のスラブを熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延を行い、その
後、連続焼鈍ラインで700〜950℃の焼鈍を行うこ
とからなる耐食性に優れた深絞り用冷延鋼板の製造方法
を提供する。
【0008】本発明はまた、重量%でC:0.005以
下、Si:1.5以下、Mn:0.05〜0.78、
P:0.03〜0.20、S:0.02以下、Cu:
0.05〜0.31、solAl:0.005〜0.1
00、N:0.005以下、Ti:0.005〜0.1
5、さらに1%までのNi、3%までのMoと7%まで
のCrの一種もしくは二種以上を含み、かつ、Ti>4
8/14・N+48/32・Sとなる関係を満たし、
部は鉄および不可避的不純物よりなる鋼のスラブを熱間
圧延し、酸洗後、冷間圧延を行い、その後、連続焼鈍ラ
インで700〜950℃の焼鈍を行うことからなる耐食
性に優れた深絞り用冷延鋼板の製造方法を提供する。
【0009】本発明はまた鋼がBを0.0003〜0.
003%含有することを含む前記いずれかの項に記載の
製造方法を提供する。
【0010】まず、本発明に係る鋼板の製造方法の各種
成分の作用および上記の範囲に限定した理由について説
明する。Cは延性を劣化させるので少ないほど好ましい
が、0.005%までは許容できる。このため、Cは
0.005%以下とした。
【0011】Siは加工性を損なわず鋼の強度を向上さ
せるに好ましい元素であるが、Siが1.5%を超える
と硬質となり延性が劣化するので、上限を1.5%とし
た。
【0012】MnはSによる熱間脆性の防止に有効であ
り、そのためには、最低0.05%以上必要である。一
方、強度を向上させるに好ましい元素であるが、0.7
%を超えると延性および深絞り性が低下するので、下
限を0.05%、上限を0.78%とした。
【0013】PおよびCuは本発明における特徴的な成
分であり、これらの元素の複合添加によって耐食性が著
しく改良される。耐食性の改善のためにはPは0.03
%以上、Cuは0.05%以上必要である。一方、Pは
0.20%を、Cuは0.31%を超えると改善効果が
飽和すると共に、延性が劣化する。このため、Pは下限
を0.03%、上限を0.20%とした。Cuは下限を
0.05%、上限を0.31%とした。
【0014】Sは鋼にとって本質的に有害な元素であ
り、少ないほど望ましいが、0.02%までは許容でき
るので0.02%以下とした。
【0015】Alは脱酸剤としての役割を果たすために
は、0.005%以上必要であるが、0.10%を超え
るとAl23などの介在物が増加し、加工性および表面
品質を劣化させるので、下限を0.005%、上限を
0.10%とした。
【0016】Nは鋼にとって本質的に有害な元素であ
り、少ないほど望ましいが、0.005%までは許容で
きるので0.005%以下とした。
【0017】TiはC、S、NをTiC、TiS、Ti
N等の析出物として固定する作用があり、優れた加工性
を確保するために必要な元素である。このような効果を
得るにはTiは0.005%以上の含有が必要であり、
かつ、Ti>48/14・N+48/32・Sとなる関
係を満たすことが必要である。一方、本発明のCの限定
において0.15%を超えて添加してもその効果は飽和
する。このため、下限を0.005%および48/14
・N+48/32・S%のいずれか低い方とし、上限を
0.15%とした。
【0018】また、本発明においては、鋼板の強度上昇
と耐食性の改善のために1%までのNi、3%までのM
oと7%までのCrの一種もしくは二種以上含有させる
ことができる。
【0019】NiはCuによる熱間脆性の防止と耐孔あ
き腐食性の改良に有効に作用するが、1%を超えると、
その効果は飽和するとともに、製造コストが高価とな
る。このため、上限を1%とした。
【0020】Moは鋼板の強度上昇と耐孔あき腐食性の
改良に有効に作用するが3%を超えると、その効果は飽
和するとともに、製造コストが高価となるので、上限を
3%とした。
【0021】Crは耐孔あき腐食性の改良に有効に作用
するが7%を超えると、非常に製造コスト高となるの
で、上限を7%とした。
【0022】Bは二次加工脆化性の改良に有効であり、
そのためには、0.0005%以上の添加が必要であ
る。一方、0.003%を超えて添加してもその効果は
飽和する。このため、Bは0.003〜0.003%と
した。
【0023】本発明においては、このような組成を有す
る鋼を熱延工程、冷延工程をへて冷延鋼板とするもので
あって、この場合、熱延工程における仕上げ温度はAr
3変態点以下では深絞り性が劣る。巻取り温度が500
℃未満では深絞り性が劣るとともに板形状が悪くなる。
750℃を超えると酸洗性が劣るとともに巻取り後にコ
イルの変形が生じる。このため仕上げ温度はAr3変態
点以上、巻取り温度は500℃〜750℃の範囲が望ま
しい。
【0024】冷延工程では、深絞り性を確保するために
は50〜95%の冷延率が必要である。冷延率が50%
未満では深絞り性に劣り、冷延率が95%を超えると冷
間圧延機の負荷が大きくなり生産性が劣る。
【0025】連続焼鈍ラインにおける焼鈍温度の下限を
700℃以上としたのは再結晶温度以上でしかも加工性
を良好にするためで有り、上限を950℃以下としたの
はこれ以上の温度では加工性の向上が飽和すると共に連
続焼鈍ラインにおいて表面疵が発生し易くなるためであ
る。
【発明の具体的開示】
【0026】実施例1 表1に示す組成よりなる鋼を用いて表2に示す条件下の
熱間圧延で板厚4mmの熱延鋼板とし、冷間圧延で板厚
1.0mmの冷延鋼板とした。得られた冷延鋼板を連続
焼鈍ラインで焼鈍し、その後伸び率:0.8%のスキン
パス圧延を行い、得られた鋼板の特性について調査し
た。
【0027】その結果を表2に示す。なお、機械的特性
はJIS Z2201の5号試験片を用いた。耐食性試
験は70×150mmの試験片を切り出し、複合腐食試
験を行った。複合腐食試験はJIS Z2371の塩水
噴霧試験に準じ、塩水濃度が5%の塩水噴霧試験を2時
間→60℃の熱風乾燥を4時間→JIS C1234の
湿潤試験を2時間の計8時間を1サイクルとして腐食に
よる最大侵食深さを測定した。
【0028】表2の結果に見られるように、本発明で規
定するよりPとCuが低い(本発明の範囲に満たない)
比較鋼を用いて製造した冷延鋼板において、No.1の
比較鋼では引張強さ(TS)が低いにもかかわらず伸び
(E1)および塑性歪比(r)に劣り、また、耐食性が
劣る。Cが低いNo.2の比較鋼では、伸び(E1)お
よび塑性歪比(r)とも良好であるが、耐食性が劣る。
【0029】これに対して、本発明で規定する範囲の成
分組成を有するNo.5〜7,9〜10鋼を用いて製造
した冷延鋼板は、引張特性が良好であると共に、引張強
さ(TS)が高いにもかかわらず、塑性歪(r)も高
く、良好であり、耐食性に優れている。
【0030】実施例2 表3に示す組成よりなる鋼を用いて表4に示す条件下で
熱間圧延、さらに、冷間圧延し、板厚1.0mmの冷延
鋼板とした。得られた冷延鋼板を連続焼鈍ラインで焼鈍
し、その後伸び率:0.8%のスキンパス圧延を行い、
得られた鋼板の特性について調査した。
【0031】その結果を表4に示す。特性の評価は実施
例1と同じ方法で行った。表4の結果に見られるよう
に、本発明で規定する範囲外であるNo.11の比較鋼
は、引張特性および塑性歪(r)ともに良好であるが、
Cuが低く(無添加)、Cr、Mo、等も無添加である
ため、耐食性に劣る。
【0032】これに対して、本発明で規定する範囲の成
分組成を有するNo.12,13鋼を用いて製造した冷
延鋼板は、引張強さ(TS)が高い割に伸び(E1)、
塑性歪(r)も高く、さらに、耐食性に優れている。
【0033】
【発明の効果】以上のように、本発明は延性および深絞
り性といった加工性を維持しながら、強度、耐食性に優
れた冷延鋼板の製造方法を明らかにしたものである。本
発明により、自動車の車体軽量化に大きく寄与するもの
であり、その産業上の意義、利益は極めて大きい。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
フロントページの続き (72)発明者 宗下 美紀夫 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株 式会社 鉄・鋼研究所 プロセス・鋼材 研究部内 (72)発明者 山田 利郎 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株 式会社 鉄鋼研究所 プロセス・鋼材研 究部内 (56)参考文献 特開 平5−140654(JP,A) 特開 平4−246128(JP,A) 特開 平4−141554(JP,A) 特開 平2−197545(JP,A) 特開 平3−107426(JP,A) 特開 平2−190443(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 - 9/48 C21D 8/00 - 8/04 C22C 38/00 - 38/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%でC:0.005以下、Si:
    1.5以下、Mn:0.05〜0.78、P:0.03
    〜0.20、S:0.02以下、Cu:0.05〜0.
    31、solAl:0.005〜0.100、N:0.
    005以下、Ti:0.005〜0.15を含み、
    つ、Ti>48/14・N+48/32・Sとなる関係
    を満たし、残部は鉄および不可避的不純物よりなる鋼の
    スラブを熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延を行い、その
    後、連続焼鈍ラインで700〜950℃の焼鈍を行うこ
    とからなる耐食性に優れた深絞り用冷延鋼板の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 重量%でC:0.005以下、Si:
    1.5以下、Mn:0.05〜0.78、P:0.03
    〜0.20、S:0.02以下、Cu:0.05〜0.
    31、solAl:0.005〜0.100、N:0.
    005以下、Ti:0.005〜0.15、さらに1%
    までのNi、3%までのMoと7%までのCrの一種も
    しくは二種以上を含み、かつ、Ti>48/14・N+
    48/32・Sとなる関係を満たし、残部は鉄および不
    可避的不純物よりなる鋼のスラブを熱間圧延し、酸洗
    後、冷間熱圧延を行い、その後、連続焼鈍ラインで70
    0〜950℃の焼鈍を行うことからなる耐食性に優れた
    深絞り用冷延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 鋼がBを0.0003〜0.003%含
    有することを含む請求項1または請求項2記載の製造方
    法。
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CN112522590A (zh) * 2019-09-19 2021-03-19 宝山钢铁股份有限公司 一种高强高耐蚀钢及其制造方法

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