JP3309366B2 - 異常電流検出装置及び電源供給装置 - Google Patents

異常電流検出装置及び電源供給装置

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JP3309366B2
JP3309366B2 JP21860596A JP21860596A JP3309366B2 JP 3309366 B2 JP3309366 B2 JP 3309366B2 JP 21860596 A JP21860596 A JP 21860596A JP 21860596 A JP21860596 A JP 21860596A JP 3309366 B2 JP3309366 B2 JP 3309366B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は異常電流検出装置及
び電源供給装置に関し、例えば車載の電源部から車両の
各部に設けられている負荷に電源を供給する車両用電源
供給装置に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】従来の車両用電源供給装置では、一般に
図9に示すように、車体のエンジンルーム内に設けられ
たバッテリ1から出る電力は、バッテリ1の近傍に設け
られた図示しないヒューズボックスに収容されたヒュー
ジブルリンク2、及びエンジンルーム内に配索されたバ
ッテリ電源線L1を介して運転席のイグニッションキー
スイッチ3に至り、このイグニッションキースイッチ3
の各ポジションに応じて運転席のカウルサイド内側に配
された図示しないヒューズボックス内のヒューズ4a〜
4c及び電源線L1a〜L1cを介して車両内の各部に
設けられている各負荷に供給されると共に、バッテリ1
の近傍に設けられた図示しないヒューズボックスに収容
されたヒューズ5及びバッテリ電源線L2を介して常時
電源供給を必要とする例えば時計6などの負荷にも供給
されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した車
両用電源供給装置において、エンジンルーム内に配索し
たバッテリ電源線L1及びL2は車両の走行中に絶え間
ない振動を受け、これらが車体の角部等に接触している
と、その絶縁被覆が損傷してその部分と車体との間にシ
ョート、断続ショート、リークなどの電源線異常が生じ
るようになる。
【0004】このような、ショート、断続ショート、リ
ークが生じた場合、ヒューズ5は比較的溶断しやすい構
成になっているので問題ないが、ヒュージブルリンク2
はこのような僅かな電流の増加では発熱が少ないので、
異常であってもヒュージブルリンク2の溶断によって回
路遮断できない。このため、例えば図中×で示す箇所に
おいて電源線に絶縁被覆の損傷があると、この箇所で電
線と車体との接触によるスパークが発生し、最終的には
絶縁被覆が発煙するまで至る可能性がある。
【0005】かかる課題を解決するため従来、バッテリ
直後の電線電流を検出すると共に電装品に流れている電
流の総和を検出し、バッテリ直後の電線電流が電装品電
流の総和よりも一定値以上大きかった場合に異常電流が
流れていると判断してバッテリ直後の電線中に設けた遮
断器を作動させることにより、ワイヤハーネスの噛込
み、干渉等による異常電流によって生じる火災を未然に
防ぐ火災予防装置が提案されている(特開昭60−20
3551号公報参照)。
【0006】しかしながらこの火災予防装置では、バッ
テリ直後の電線電流と電装品電流の総和とを比較して異
常電流が流れているか否かを判断しているため、異常電
流の検出のための構成が複雑化する問題があった。
【0007】本発明は以上の点を考慮してなされたもの
で、簡易な構成により電線の異常を確実に検知して当該
電線の発煙を確実に防止し得る異常電流検出装置及び電
源供給装置を提案しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明により成された請求項1記載の異常電流検出装置
は、図1の基本構成図に示すように、電源部と負荷とを
接続する電線の断続的な短絡等によって当該電線を流れ
る異常電流を検出する異常電流検出装置において、前記
電線を流れる電流値を検出する電流検出手段と、当該検
出電流値を微分する微分演算手段と、前記電線を流れる
小刻みに変動する電流を起因として、当該微分波形が正
及び負に小刻みに、前記電源線上に設けられたリレーに
よるチャタリング期間を超えて連続して変動したとき、
前記電線に異常電流が流れていると判断する異常電流判
定手段とを具えるようにする。
【0009】以上の構成において、電線に断続ショート
等に基づく異常電流が流れると、微分演算手段21A−
1により正及び負に小刻みに連続して変動する微分波形
が得られ、このとき異常電流判定手段21A−2により
電線に異常電流が流れていると判断される。特に、異常
電流判定手段21A−2により微分波形が正及び負に連
続して変動している期間がチャタリング期間よりも長い
か否かを調べることにより、異常電流とチャタリング電
流とを区別できる。この結果、当該異常電流を容易かつ
確実に検出することができる。
【0010】また上記課題を解決するため本発明により
成された請求項2記載の異常電流検出装置は、図1の基
本構成図に示すように、請求項1記載の異常電流検出装
置において、前記異常電流判定手段は、前記微分波形が
正及び負に連続して変動している期間の開始時点の電流
値と終了時点の電流値がほぼ等しい場合に前記電線に前
記異常電流が流れていると判断するようにする。以上の
構成において、微分波形が正及び負に連続して変動して
いる期間の開始時点の電流値と終了時点の電流値が等し
いか否かを調べることにより異常電流とチャタリング電
流とを区別できる。この結果、当該異常電流を更に容易
かつ確実に検出することができる。
【0011】また上記課題を解決するため本発明により
成された請求項3記載の異常電流検出装置は、請求項1
記載の異常電流検出装置において、前記負荷は複数種の
車載機器であり、前記電線は前記複数種の車載機器それ
ぞれと前記電源部とを接続すべく複数本設けられ、前記
リレーは前記複数本の電線上にそれぞれ設けられてお
り、前記複数のリレーのうちの1つのみを順次開放状態
とし、どのリレーを開放状態にしたときに、前記異常電
流が検出されなくなったかを確認することにより異常箇
所を特定する異常箇所特定手段を更に具えるようにす
る。
【0012】以上の構成において、複数のリレーのうち
の1つのみを順次開放状態とし、どのリレーを開放状態
にしたときに、異常電流が検出されなくなったかを確認
することにより異常箇所を特定する。この結果、異常箇
所を容易に特定できる。
【0013】また上記課題を解決するため本発明により
成された請求項4記載の異常電流検出装置は、請求項3
記載の異常電流検出装置において、前記異常箇所特定手
段は、前記複数のリレーのうちで、走行や安全性に関わ
る車載機器に繋がるリレーを、快適性に関わる車載機器
に繋がるリレーよりも優先して開放状態とする。
【0014】以上の構成において、走行や安全性に関わ
る車載機器に繋がるリレーを、快適性に関わる車載機器
に繋がるリレーよりも優先して開放状態とする。したが
って、走行や安全性に関わる車載機器が作動不能になる
前にその異常をいち早く検出できる。この結果、走行や
安全性に関して信頼性の高い電源供給装置を実現でき
る。また上記課題を解決するため本発明により成された
請求項5記載の異常電流検出装置は、電源部と負荷とを
接続する電線の断続的な短絡等によって当該電線を流れ
る異常電流を検出する異常電流検出装置において、前記
電線を流れる電流値を検出する電流検出手段と、当該検
出電流値を微分する微分演算手段と、前記電線を流れる
小刻みに変動する電流を起因として、正及び負に小刻み
に連続して変動している当該微分波形における変動期間
の開始時点の電流値と終了時点の電流値がほぼ等しい場
合に前記電線に前記異常電流が流れていると判断する異
常電流判定手段とを具えるようにする。以上の構成にお
いて、電線上に設けられたスイッチがオンオフされる
と、電線に異常電流と同様に微分波形が正及び負に連続
して変動するチャタリング電流が発生するため、単に微
分波形の正及び負への変動を検出するだけではこれを異
常電流と断定することはできない。そこで請求項5の構
成では微分波形が正及び負に連続して変動している期間
の開始時点の電流値と終了時点の電流値が等しいか否か
を調べることにより異常電流とチャタリング電流とを区
別できる。
【0015】また上記課題を解決するため本発明により
成された請求項6記載の電源供給装置は、図1の基本構
成図に示すように、電源部と負荷とを接続する電源線
と、当該電源線上に設けられ当該電源線を通じての前記
負荷への前記電源の供給をオンオフする電源線開閉手段
とを有する電源供給装置において、前記電源線を流れる
電流値を検出する電流検出手段と、当該検出電流値を微
分する微分演算手段と、前記電線を流れる小刻みに変動
する電流を起因として、当該微分波形が正及び負に小刻
みに、前記電源線開閉手段によるチャタリング期間を超
えて連続して変動したとき、前記電源線開閉手段に制御
信号を出力して前記電源線開閉手段をオフ制御する開閉
制御手段とを具えるようにする。
【0016】以上の構成において、電線に断続ショート
等に基づく異常電流が流れると、微分演算手段21A−
1により正及び負に小刻みに連続して変動する微分波形
が得られ、このとき開閉制御手段21A−3により電線
に異常電流が流れていると判断され、開閉制御手段21
A−3は電源線開閉手段R1をオフ制御する。特に、開
閉制御手段21A−3は、異常電流とチャタリング電流
とを区別できるため、異常電流発生時にのみ電線に流れ
る電流を遮断することができるようになる。この結果、
異常電流を容易かつ確実に検出して異常電流発生時に電
線に流れる電流を速やかに遮断することができることに
より、電線の発煙を確実に防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。 (1)全体構成 図2は本発明による電源供給装置の一実施形態を車両用
電源供給装置を例にとって示したものである。この車両
用電源供給装置は車両の離れた部位に設けられた3つの
ジャンクションボックス10、11及び12を有する。
ジャンクションボックス10はエンジンルーム内のバッ
テリ1近傍に配されており、ジャンクションボックス1
1及び12は例えば運転席近傍のカウルサイド等に配さ
れている。
【0018】ここでジャンクションボックス10と、ジ
ャンクションボックス11及び12とは電源線13、1
4、15によって接続されており、電源部としてのバッ
テリ16や発電機17で発生された電源が電源線13、
14、15を通じてジャンクションボックス11及び1
2に供給される。
【0019】ジャンクションボックス10内には、電源
線開閉手段としての複数のリレー18、R1〜Rnが設け
られている。リレー18の入力側には小電流用のヒュー
ズ19が接続されていると共にリレーR1〜Rnの入力側
には大電流用のヒューズであるヒュージブルリンクFL
1〜FLnが接続されている。すなわちリレー18の出力
側には小電流で作動する負荷(図示せず)が接続され、
リレーR1〜Rnの出力側には例えばアンチロックブレー
キシステム(ABS)、エアコン(A/C)、デフォッ
ガ(DEF)、エアサスペンションシステム(A/
S)、ラジエタ(RAD)等の大電流で稼働する負荷が
接続されている。
【0020】かかる構成に加えて、電源部16、17と
各ヒュージブルリンクFL1〜FLn及びリレーR1〜Rn
とを繋ぐ共通電源線上には電流検出手段としての電流セ
ンサ20が設けられている。この電流センサ20として
は、共通電源線に電流が流れることによって発生する電
流値に応じた大きさの磁束を検知することによって、そ
の共通電源線に流れる電流の大きさに応じた電圧の検知
信号を出力するように、例えばリングコアの磁路中にホ
ール素子のような磁気感応素子を設けた構成のものが使
用されている。
【0021】電流センサ20により得られた電流検出信
号S1は、各リレーR1〜Rn、18を制御するために設
けられているジャンクションボックス制御ユニット21
の演算制御部21Aに入力される。ジャンクションボッ
クス制御ユニット21は、例えばRAMやROMなどの
記憶部と予め定められたプログラムに従って動作する中
央処理ユニット(CPU)とからなるマイクロコンピュ
ータ構成の演算制御部21Aと、他のジャンクションボ
ックス11及び12の送受信部23B、26Bとの間で
多重通信ラインとしての信号伝送線100を介して信
号、データの授受を行う送受信部21Bとを有する。
【0022】具体的には、演算制御部21A内のRAM
には、監視機能によって自身のボックスについて得られ
たデータと、送受信部21Bを通じて得られた他のボッ
クスについてのデータとを格納する所定エリアが形成さ
れ、この所定エリアに格納されたデータが演算制御部2
1Aでの各種の処理に供される。なお信号伝送線100
を伝送されるデータは、予め定めたフォーマットに従っ
て各ジャンクションボックス10〜12やカーコンピュ
ータの送受信部30B〜33Bによって時分割方式によ
り形成された時分割多重データである。
【0023】演算制御部21Aは電流検出信号S1に基
づいて共通電源線に異常電流が流れているか否か判断
し、異常電流が流れていると判断した場合には各リレー
R1〜Rnのコイルへの電圧の印加を停止することにより
当該リレーR1〜Rnを開放状態とし、異常電流に起因す
る各リレーR1〜Rnと負荷とを接続する電源線の発煙を
未然に回避するようになされている。ここで異常電流と
は、各リレーR1〜Rnと負荷とを接続する電源線に断続
ショート等が生じた場合に発生するヒュージブルリンク
FL1〜FLnを溶断することなくかつ電源線を発煙させ
るような電流をいう。
【0024】ジャンクションボックス10とジャンクシ
ョンボックス11を接続する電源線13は、そのままジ
ャンクションボックス11内のスイッチ群(複数のリレ
ーでなる)24のうちの所定のリレーに接続されている
と共にイグニッションスイッチ22を介して所定のリレ
ー及びジャンクションボックス制御ユニット23に接続
されている。
【0025】また電源線14はイグニッションスイッチ
22を介してスイッチ群のうちの所定のリレー及びジャ
ンクションボックス制御ユニット23に接続されてい
る。演算制御部23Aはイグニッションスイッチ22が
どのスイッチングポジションにあるかに応じてスイッチ
群24の中のリレーのオンオフを切り換え、当該スイッ
チ群に接続されている複数の負荷(図示せず)のうちス
イッチングポジションに応じた負荷に選択的に電源を供
給する。
【0026】また演算制御部23Aは当該イグニッショ
ンスイッチ22のポジション情報を信号伝送線100を
介して他の演算制御部21A、26Aにも伝送し、演算
制御部21A、26Aもイグニッションスイッチ22の
ポジションに応じて各負荷に選択的に電源を供給する。
【0027】ジャンクションボックス10とジャンクシ
ョンボックス12を接続する電源線15はジャンクショ
ンボックス11内のスイッチ群(複数のリレーでなる)
25及びジャンクションボックス制御ユニット26に接
続されており、演算制御部26Aによってスイッチ群2
5の中のリレーのオンオフが切り換えられることによ
り、当該スイッチ群に接続されている複数の負荷(図示
せず)に選択的に電源が供給される。
【0028】ここで信号伝送線100は、各ジャンクシ
ョンボックス10、11、12の制御ユニット21、2
3、26の他に、カーコンピュータを構成する複数の制
御部30〜33にも接続されている。なお図では多数の
制御部のうちの一部のみを示している。各制御部30〜
33はそれぞれ信号伝送線100とのデータの送受信を
行う送受信部30B〜33BとCPU30A〜33Aと
を有し、対応する負荷への電源の供給又は遮断を指令す
るための指令信号を信号伝送線100を介してジャンク
ションボックス10、11、12の制御ユニット21、
23、26に送信したり、対応する負荷に繋がる電源線
に異常電流が流れたことなどを信号伝送線100を介し
て制御ユニット21、23、26から受信する。
【0029】例えばアンチロックブレーキシステム用の
制御部30は車速情報を入力し、CPU30Aによって
当該車速情報に基づいて車体の減速度とタイヤの回転を
検知し両方の減速度を比較して、タイヤの減速度が大き
くなるとホイルシリンダにかかる油圧を減らすことを指
令する制御信号をホイルシリンダ駆動部に送出すること
によりタイヤのロックを防ぐ。
【0030】メータ制御部31は車速及び燃料情報等を
入力し、これらの情報に基づいてスピードメータやフュ
ーエルゲージ等の各種メータを駆動するためのメータ駆
動指令信号を形成しこれをメータ駆動部に送出する。エ
アサスペンション制御部32はホイルシリンダから油圧
情報を入力し、当該情報に基づいてコンプレッサ制御信
号を形成しこれをコンプレッサに送出する。エアコン制
御部33は操作パネルからの温度設定情報等の操作信号
を入力すると共に室内温度情報を入力し、室内温度を設
定温度に近づかせるようなエアコン制御信号を形成す
る。
【0031】そして制御部30〜33で形成された制御
信号は各制御対象に直接送出されると共に信号伝送線1
00を介して制御ユニット21、23、26にも送出さ
れ、各ジャンクションボックス10、11、12内のス
イッチが当該制御信号に応じてオンオフされることによ
り制御対象への電源の供給が制御される。
【0032】ここでこの実施形態の電源供給装置におい
ては、上述したように、ヒュージブルリンクFL1〜F
Ln及びリレーR1〜Rnを介して各負荷に接続される電
源線の発煙は、これらの共通電源線を流れる電流を監視
し、断続ショート等に基づいて発生する、ヒュージブル
リンクFL1〜FLnは溶断しないが電源線は発煙してし
まうような異常電流を検知した場合にリレーR1〜Rnを
開放することにより電源線の発煙を防止する。
【0033】これに加えて、この電源供給装置では、図
中点線を付して示す電源線を、導体部を補強部材により
被覆して構成する(以下、このように補強部材で導体部
を補強した電源線をよろい電線と呼ぶ)ことにより、当
該電源線が車体との接触等によって傷つき、その結果当
該電線がショートや断続ショートしひいては発煙に至る
ことを未然に防止するようになされている。
【0034】このよろい電線はスタータモータ34とジ
ャンクションボックス10を接続する電源線、発電機1
7とジャンクションボックス10を接続する電源線、ジ
ャンクションボックス10とジャンクションボックス1
1を接続する電源線13、14、ジャンクションボック
ス10とジャンクションボックス12とを接続する電源
線15などに用いられている。換言すれば、大電流が流
れかつリレーが接続されていない電源線を、よろい電線
とするようにしている。
【0035】よろい電線は、図3に示すように構成され
ている。すなわち、よろい電線200は複数の銅線20
0Aが塩化ビニル等でなる絶縁部材200Bにより被覆
されてなる導体部が、補強部材としてのスチールテープ
200Cにより被覆され、さらにスチールテープ200
Cが塩化ビニル等でなる絶縁部材200Dにより被覆さ
れて構成されている。これによりよろい電線200は外
力が作用しても、導体部が補強部材としてのスチールテ
ープ200Cによって守られので、ショートや断続ショ
ートは発生しない。
【0036】このようにこの実施形態の電源供給装置に
おいては、大電流が流れる電源線のうち、リレーが接続
されている電源線は電源線に異常電流が流れたときにリ
レーを開放することにより発煙を防止するようにし、リ
レーが接続されていない電源線は予め発煙防止処理が施
された電源線を用いることでショートや断続ショートが
起こらない構成としておくことで発煙を防止するように
している。
【0037】(2)異常電流の検出 次に、演算制御部21Aによる異常電流の検出処理につ
いて説明する。演算制御部21Aは、電流センサ20に
より検出された電流値を微分し、その微分波形に基づい
て異常電流を検出することにより、異常電流が生じてい
ることを正確かつ容易に検出することができるようにな
されている。
【0038】すなわち演算制御部21AのCPU(図示
せず)は、図4に示すように、SP0で異常電流検出処
理手順に入ると、ステップSP1において電流検出信号
S1に基づいて電流値I1を読み込む。次にステップS
P2において電流値を時間微分し、ステップSP3で微
分波形が正及び負に変動している期間がチャタリング期
間を超えているか否か判断し、超えている場合にはステ
ップSP4に移り異常電流が流れていると判断し、超え
ていない場合にはステップSP1に戻る。
【0039】ここでステップSP2において電流値を時
間微分するのは、電流値I1は種々の要因(例えば周囲
温度等)により定常電流値自体が上下にシフトする場合
が多く、ショートに起因する異常電流のように大きく電
流値が変動するものであればこれを検出できるが、特に
今回検出対象となっている断続ショートに起因する異常
電流のように比較的変動幅の小さいものは電流値I1の
様子からでは検出が困難なためである。これに対して微
分波形では、図5に示すように、たとえ電流値I1の定
常値が上下にシフトした場合でも、小刻みに変動する電
流(すなわち断続ショートに起因する異常電流)が零を
基準として正及び負に連続的に変動する微分波形として
現れるため、このような微分波形を検出することで異常
電流を正確かつ容易に検出することができる。
【0040】またステップSP3において微分波形が正
及び負に変動している期間がチャタリング期間を超えて
いるか否かを判断するのは、図5に示すように、リレー
R1〜Rnの閉成時及び開放時に電流波形に異常電流発生
時と同じような変動が現れ、この結果微分波形にも異常
電流発生時と同じように零を基準として正及び負に連続
的に変動する波形が現れるため、このチャタリングに起
因する微分波形を異常電流に起因する微分波形と識別す
る必要があるためである。ここでチャタリング期間t0
はリレーR1〜Rnのスイッチングの前後の短い時間に限
られるので、ステップSP3のような判断処理を行うこ
とによって容易にチャタリングと異常電流とを区別でき
る。
【0041】またリレーR1〜Rnのスイッチングの前後
では、図5(A)の電流波形からも明らかなように、ス
イッチオン時にはその電流値は増加し、スイッチオフ時
にはその電流値は減少し、一方異常電流時の電流値はほ
とんど変化しないので、この電流値を監視することでチ
ャタリングと異常電流とを区別するようにしてもよい。
【0042】次に演算制御部21AはステップSP5に
おいて異常箇所の特定処理を行う。すなわちこの実施形
態では、バッテリ16と各ヒュージブルリンクFL1〜
FLn及びリレーR1〜Rnとを繋ぐ共通電源線上の電流
値を検出し、当該電流値が異常電流であるか否かを検知
するようになされているため、異常電流がリレーR1〜
Rnと各負荷とを接続するn個の電源線のうちのどの電
源線が断続ショートしていることにより生じているのか
を知ることができない。
【0043】そこでこのステップSP5において次の項
で詳述する異常箇所の特定処理を行うことにより、リレ
ーR1〜Rnと各負荷とを接続するn個の電源線のうちの
どの電源線で断続ショートが起こっているかを特定し、
続くステップSP6において、異常箇所であると特定さ
れた電源線に対応するリレーR1、R2、……又はRnを
開放状態とすることにより、当該電源線への電流を遮断
する。この結果、断続ショート等に起因する異常電流が
発生した電源線の発煙を未然に回避することができる。
【0044】(3)異常箇所の特定 次に上述した異常箇所の特定処理について説明する。こ
の特定処理は、演算制御部21AによってリレーR1〜
Rnのうちの1つのみを順次開放状態とし、どのリレー
R1〜Rnを開放状態としたときに異常電流が検出されな
くなったかを確認することにより行う。
【0045】またこのとき、順次開放制御するリレーR
1〜Rnの優先順位を、アンチロックブレーキシステム
(ABS)やエアーサスペンション駆動部(A/S)等
の走行や安全性に関わる負荷に対応するリレーR1〜Rn
の開放が先に、エアコン(A/C)やデフォッガ(DE
F)等の快適性に関する負荷に対応するリレーR1〜Rn
の開放が後になるようにする。
【0046】このようにこの実施形態の電源供給装置に
おいては、異常箇所を検出する優先順位として、走行や
安全性に関わる負荷に繋がる電源線の異常検出を、快適
性に関する負荷に繋がる電源線の異常検出よりも先とし
たことにより、走行や安全性に関わる負荷が作動不能と
なる前にその異常をいち早く検出できる。この結果、走
行や安全性に関して信頼性の高い電源供給装置を実現で
きる。
【0047】実際上、演算制御部21Aは、図6に示す
ような異常箇所特定処理ルーチンを実行することにより
電源線の異常箇所を特定する。すなわち先ず演算制御部
21AのCPUは、ステップSP5−1において、図示
しないメモリから図7に示すような優先順位情報を取り
込む。
【0048】次にCPUはステップSP5−2において
内部カウンタのカウント値Nをリセットし、続くステッ
プSP5−3においてカウント値Nをインクリメント
し、続くステップSP5−4において当該カウント値N
がn(すなわち検査箇所の総数)に等しいか否か判断す
る。ここでカウント値Nがnに等しいということは検査
対象となる全ての電源線についての検査が終了したこと
を意味するのでステップSP5−8に移って当該異常箇
所特定処理ルーチンを終了する。
【0049】これに対してステップSP5−4において
否定結果が得られるとステップSP5−5に移り、カウ
ント値Nに応じた優先順位の負荷に対応するリレーR1
〜Rnのみを開放状態とする。具体的には、カウント値
Nが「1」の場合にはアンチロックブレーキシステム
(ABS)が検査対象なので(図7参照)、アンチロッ
クブレーキシステムに対応するリレーR1〜Rnのみを開
放状態とし、カウント値Nが「2」の場合にはエアーサ
スペンション駆動部(A/S)が検査対象なので(図7
参照)、エアーサスペンション駆動部に対応するリレー
R1〜Rnのみを開放状態とする。
【0050】ステップSP5−6では異常電流が流れて
いるか否か判断し、異常電流が流れていない場合にはス
テップSP5−3に戻り次の優先順位の負荷に対応する
電源線について同様の処理を行う。これに対してステッ
プSP5−6において肯定結果が得られると、このこと
は異常箇所が現在の検査対象の電源線であったことを意
味し(すなわち異常箇所がその電源線に特定され)、こ
のときステップSP5−7に移りその電源線に対応する
リレーR1〜Rnを開放状態にしたままにする。
【0051】ここでリレーR1〜Rnの開閉は演算制御部
21Aから各リレーR1〜Rnの開閉駆動コイルに印加す
る電圧を変えることにより行ってもよいし、または演算
制御部21Aからの開閉制御信号を信号伝送線100を
介し該当するカーコンピュータ30〜33、……に一旦
伝送し、当該カーコンピュータ30〜33、……から直
接信号ライン(図示せず)を介して各リレーR1〜Rnの
開閉駆動コイルに印加する電圧を変えることにより行っ
てもよい。
【0052】このように、バッテリ16と各ヒュージブ
ルリンクFL1〜FLn及びリレーR1〜Rnとを繋ぐ共通
電源線で異常電流が検出されたとき、その異常電流がリ
レーR1〜Rnと各負荷とを接続するn個の電源線のうち
のどの電源線が断続ショートしていることにより生じて
いるのかを容易かつ速やかに特定することができる。
【0053】(4)実施形態の動作 以上の構成において、この実施形態の車両用電源供給装
置では、電流センサ20により電源線を流れる電流値を
検出し、演算制御部21Aにより当該検出電流値を微分
すると共に当該微分波形が正及び負に連続して変動した
とき電源線に異常電流が流れていると判断する。この結
果、当該異常電流を容易かつ確実に検知することができ
る。
【0054】また演算制御部21Aは微分波形が正及び
負に連続して変動している期間がチャタリング期間より
も長い場合に電線に異常電流が流れていると判断するこ
とにより、異常電流とチャタリング電流とを区別する。
この結果、異常電流の誤検出を回避できる。
【0055】そして電源線に異常電流が流れていること
を検出すると、演算制御部21AはリレーR1〜Rnの制
御コイルへの電圧の印加を停止してリレーR1〜Rnを開
放することにより、異常箇所への電流を遮断する。この
結果電源線の発煙を確実に防止することができる。
【0056】(5)実施形態の効果 以上の構成によれば、電線を流れる電流値を検出し、当
該検出電流値を微分し、当該微分波形が正及び負に連続
して変動したとき電線に異常電流が流れていると判断
し、このとき当該電線への電流を遮断するするようにし
たことにより、簡易な構成により電線の異常を確実に検
知して当該電線の発煙を確実に防止し得る異常電流検出
装置及び電源供給装置を実現できる。
【0057】(6)他の実施形態 なお上述の実施形態においては、電流センサ20を、ヒ
ュージブルリンクFL1〜FLn及びリレーR1〜Rnを介
して電源部に接続されている複数の負荷の各ヒュージブ
ルリンクFL1〜FLn及びリレーR1〜Rnに対して電源
部側に配索された共通電源線上に設けることにより、複
数の電源線の異常を一括して検知するようにした場合に
ついて述べたが、本発明はこれに限らず、ヒュージブル
リンクFL1〜FLnに接続された各電源線に一つずつ電
流センサを設けて各電源線の異常の有無をそれぞれの電
流センサからの電流検出結果に基づいて検知するように
してもよい。このようにした場合、電流センサの数は増
えるものの、上述した異常箇所の特定処理を省略するこ
とができる。
【0058】また上述の実施形態においては、図7に示
すように、リレーR1〜Rnのうちの1つのみを順次開放
状態とし、どのリレーR1〜Rnを開放状態としたときに
異常電流が検出されなくなったかを確認することによ
り、異常が生じている電源線を特定した場合について述
べたが、本発明はこれに限らず、例えば図8に示すよう
に、リレーR1〜Rnのうちの1つのみを順次閉成状態と
し、どのリレーR1〜Rnを閉成状態としたときに異常電
流が検出されたかを確認することにより、異常が生じて
いる電源線を特定するようにしてもよい。
【0059】また上述の実施形態においては、電源線開
閉手段としてリレーR1〜Rnを用いた場合について述べ
たが、本発明はこれに限らず、例えば半導体スイッチ
や、インテリジェントパワースイッチなど種々のものを
用いることができる。
【0060】さらに上述の実施形態においては、本発明
による異常電流検出装置及び電源供給装置を、車両用電
源供給装置を例にとって説明したが、本発明による異常
電流検出装置及び電源供給装置は車両用電源供給装置に
限らず、種々の電子機器に適用し得る。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように請求項1に記載の発
明によれば、電源部と負荷とを接続する電線の断続的な
短絡等によって当該電線を流れる異常電流を検出する異
常電流検出装置において、電線を流れる電流値を検出す
る電流検出手段と、当該検出電流値を微分する微分演算
手段と、電線を流れる小刻みに変動する電流を起因とし
て、当該微分波形が正及び負に小刻みに、電源線上に設
けられたリレーによるチャタリング期間を超えて連続し
て変動したとき、電線に異常電流が流れていると判断す
る異常電流判定手段とを設けたことにより、当該異常電
流を容易かつ確実に検出することができる。
【0062】また請求項2に記載の発明によれば、電線
の異常を一段と確実に検知し得る異常電流検出装置を実
現できる。また請求項3に記載の発明によれば、負荷は
複数種の車載機器であり、電線は複数種の車載機器それ
ぞれと電源部とを接続すべく複数本設けられ、リレーは
複数本の電線上にそれぞれ設けられており、複数のリレ
ーのうちの1つのみを順次開放状態とし、どのリレーを
開放状態にしたときに、異常電流が検出されなくなった
かを確認することにより異常箇所を特定する異常箇所特
定手段を更に設けたことにより、異常箇所を容易に特定
できる。
【0063】また請求項4に記載の発明によれば、走行
や安全性に関わる車載機器に繋がるリレーを、快適性に
関わる車載機器に繋がるリレーよりも優先して開放状態
とすることにより、走行や安全性に関わる車載機器が作
動不能になる前にその異常をいち早く検出できる。この
結果、走行や安全性に関して信頼性の高い電源供給装置
を実現できる。また請求項5に記載の発明によれば、電
線の異常を一段と確実に検知し得る異常電流検出装置を
実現できる。
【0064】また請求項6に記載の発明によれば、電源
部と負荷とを接続する電源線と、当該電源線上に設けら
れ当該電源線を通じての負荷への電源の供給をオンオフ
する電源線開閉手段とを有する電源供給装置において、
電源線を流れる電流値を検出する電流検出手段と、当該
検出電流値を微分する微分演算手段と、電線を流れる小
刻みに変動する電流を起因として、当該微分波形が正及
び負に小刻みに、電源線開閉手段によるチャタリング期
間を超えて連続して変動したとき、電源線開閉手段に制
御信号を出力して電源線開閉手段をオフ制御する開閉制
御手段とを設けたことにより、異常電流を容易かつ確実
に検出して異常電流発生時に電線に流れる電流を速やか
に遮断することができることにより、電線の発煙を確実
に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による異常電流検出装置及び電源供給装
置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明による異常電流検出装置及び電源供給装
置の一実施形態を示す図である。
【図3】補強部材が用いられた電源線の構成を示す断面
図である。
【図4】異常電流検出の説明に供するフローチャートで
ある。
【図5】異常電流検出の説明に供する波形図である。
【図6】異常箇所特定処理の説明に供するフローチャー
トである。
【図7】異常箇所特定処理時の異常箇所検出の優先順位
を示す図表である。
【図8】他の実施形態による異常箇所検出の優先順位を
示す図表である。
【図9】従来の装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
16、17 電源部(バッテリ、発電
機) 20 電流検出手段(電流セン
サ) 21A−1 微分演算手段(演算制御
部) 21A−2 異常電流判定手段(演算
制御部) 21A−3 開閉制御手段(演算制御
部) R1〜Rn 電源線開閉手段(リレ
ー)
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02H 3/08 B60R 16/02 H02H 3/50 H02H 3/087

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電源部と負荷とを接続する電線の断続的
    な短絡等によって当該電線を流れる異常電流を検出する
    異常電流検出装置において、 前記電線を流れる電流値を検出する電流検出手段と、 当該検出電流値を微分する微分演算手段と、前記電線を流れる小刻みに変動する電流を起因として、
    当該微分波形が正及び負に小刻みに、前記電源線上に設
    けられたリレーによるチャタリング期間を超えて連続し
    て変動したとき、 前記電線に異常電流が流れていると判
    断する異常電流判定手段とを具えることを特徴とする異
    常電流検出装置。
  2. 【請求項2】 前記異常電流判定手段は、前記微分波形
    が正及び負に連続して変動している期間の開始時点の電
    流値と終了時点の電流値がほぼ等しい場合に前記電線に
    前記異常電流が流れていると判断することを特徴とする
    請求項1に記載の異常電流検出装置。
  3. 【請求項3】 前記負荷は複数種の車載機器であり、前
    記電線は前記複数種の車載機器それぞれと前記電源部と
    を接続すべく複数本設けられ、前記リレーは前記複数本
    の電線上にそれぞれ設けられており、 前記複数のリレーのうちの1つのみを順次開放状態と
    し、どのリレーを開放状態にしたときに、前記異常電流
    が検出されなくなったかを確認することにより異常箇所
    を特定する異常箇所特定手段 を更に具えることを特徴と
    する請求項1に記載の異常電流検出装置。
  4. 【請求項4】 前記異常箇所特定手段は、前記複数のリ
    レーのうちで、走行や安全性に関わる車載機器に繋がる
    リレーを、快適性に関わる車載機器に繋がるリレーより
    も優先して開放状態とする ことを特徴とする請求項3に
    記載の異常電流検出装置。
  5. 【請求項5】 電源部と負荷とを接続する電線の断続的
    な短絡等によって当該電線を流れる異常電流を検出する
    異常電流検出装置において、 前記電線を流れる電流値を検出する電流検出手段と、 当該検出電流値を微分する微分演算手段と、 前記電線を流れる小刻みに変動する電流を起因として、
    正及び負に小刻みに連続して変動している当該微分波形
    における変動期間の開始時点の電流値と終了時点の電流
    値がほぼ等しい場合に前記電線に前記異常電流が流れて
    いると判断する異常電流判定手段と を具えることを特徴
    とする異常電流検出装置。
  6. 【請求項6】 電源部と負荷とを接続する電源線と、当
    該電源線上に設けられ当該電源線を通じての前記負荷へ
    の前記電源の供給をオンオフする電源線開閉手段とを有
    する電源供給装置において、 前記電源線を流れる電流値を検出する電流検出手段と、 当該検出電流値を微分する微分演算手段と、前記電線を流れる小刻みに変動する電流を起因として、
    当該微分波形が正及び負に小刻みに、前記電源線開閉手
    段によるチャタリング期間を超えて連続して変動したと
    き、 前記電源線開閉手段に制御信号を出力して前記電源
    線開閉手段をオフ制御する開閉制御手段とを具えること
    を特徴とする電源供給装置。
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