JP3303275B2 - 光学素子およびその素子を用いた光学装置 - Google Patents

光学素子およびその素子を用いた光学装置

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JP3303275B2 JP18222296A JP18222296A JP3303275B2 JP 3303275 B2 JP3303275 B2 JP 3303275B2 JP 18222296 A JP18222296 A JP 18222296A JP 18222296 A JP18222296 A JP 18222296A JP 3303275 B2 JP3303275 B2 JP 3303275B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印加電圧により光
学的性質、例えばレンズにおける焦点距離、プリズムに
おける偏向角、レンチキュラレンズにおける発散角等を
周期的かつ連続的に変化できる光学素子およびその素子
を用いた光学装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の光学装置は、受動的な光学装置が
ほとんどであり、その光学的性質を電圧等によって変化
できる能動的な光学装置の種類は限られていた。その中
で屈折率可変物質を用いた光学装置として、例えば昭和
59年度科学研究費補助金研究成果報告書No.598
50048に記載された液晶レンズがある。
【0003】図1は前記液晶レンズの構造を示すもの
で、高分子やガラス等で形成された平凹レンズ1と、そ
の表面に形成された透明電極2と、該透明電極2上に形
成されたポリイミド等による配向膜3と、液晶(誘電率
異方性が周波数の違いにより逆転しない通常のネマチッ
ク液晶)4と、これらに対向した対向基板5と、該対向
基板5上に形成された透明電極6と、この透明電極6上
に形成されたポリイミド等による配向膜7と、これらを
駆動するための駆動装置8とから構成される。ここで、
配向膜3及び7は液晶4がほぼ平行に整列するようにホ
モジニアス配向状態にしてある。
【0004】透明電極2と6との間に電圧を印加しない
状態においては、配向膜3,7の作用により液晶4は対
向基板5にほぼ平行に並ぶように配向する。この場合、
この配向方向に対して平行な偏光状態の入射光11にと
って、液晶4は平凹レンズ1と比較して大きな屈折率を
有しているように見えるため、光学装置全体としては平
凸レンズとして作用し、出射光12のように集束する。
【0005】一方、透明電極2と6との間に適度な電圧
を印加した状態においては、印加電圧の作用により、液
晶4は対向基板5や平凹レンズ1に対して垂直に配向す
る。この場合、入射光11にとって液晶4は平凹レンズ
1とほぼ同じ屈折率を有しているように見えるため、光
学装置全体としては単なるガラス板と同様な作用しか及
ぼさず、出射光13は入射光11とほぼ同様な方向に出
射する。
【0006】このように、従来の光学装置においても、
印加電圧によって平凸レンズの光学的性質、例えば焦点
距離を図2に示すように連続的に変化することは可能で
あった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
光学装置においては、電圧を印加しない場合の液晶4の
配向を配向膜3,7の配向規制力のみで行っていた。こ
のような光学装置においては液晶4の厚みが数100μ
m以上と厚くなるため、その駆動の際の回復時間が図3
に示すように数秒以上と極めて遅くなる欠点を有してい
た。しかも印加電圧を増加してもその回復時間にはほと
んど改善は見られず、短縮化への方策がないのが現状で
あった。
【0008】また、前述したように、配向膜3,7の配
向規制力のみで液晶4を配向させる場合、透明電極2の
近くにおいては、図4に示すように平凹レンズ1の曲面
に沿って液晶4の分子4aが配向する。このため、液晶
の配向が一部分傾いてしまい、入射光が感じる屈折率が
平凹レンズ1の屈折率に近づき、光学的性質の変化量が
小さくなる他、レンズの位置によって光学的性質の変化
量に分布ができてしまうという欠点を有していた。
【0009】また、平凹レンズ1等の表面上に透明電極
2を形成するため、電圧を印加した場合、透明電極2の
近くでは電界がその表面に垂直な形でかかり、図5に示
すように液晶4がその表面に垂直な形で配向する。この
ため、液晶の配向が一部分傾いてしまい、入射光が感じ
る屈折率が平凹レンズ1の屈折率とかなり異なる領域が
形成され、本来なら偏向をほとんど受けずに透過するべ
き入射光が部分的に偏向等を受けるという欠点を有して
いた。
【0010】また、平凹レンズ1の表面形状がさらに複
雑な形状、特に深い溝や鋭い突起を有するような場合に
は、透明電極の均一な形成が困難となる欠点を有してい
た。また、液晶4を配向させるための配向膜の配向処
理、例えばラビング処理等も困難となる欠点を有してい
た。さらに、透明電極間の距離は、図1から明かなよう
に位置によって異なり、これに同一の電圧を印加するた
め、狭い部分において絶縁性の劣化や短絡が起こり易い
という欠点を有していた。
【0011】このように、従来の屈折率可変物質を用い
た能動的な光学装置は、長い回復時間、不均一性、製作
上あるいは駆動上の問題点等、実用化上、多くの欠点を
抱えていた。
【0012】本発明の目的は、高速駆動が可能で均一性
が良く、製作が容易であり、しかも能動的に光学的性質
を連続的に周期的変化できる光学素子およびその素子を
用いた光学装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の請求項1では、面形状を有する透明物質
の層と、屈折率異方性及び誘電率異方性を有しかつ異な
る誘電率の差Δεが異なる駆動周波数f1及びf2で逆符
号となる2周波駆動液晶の層と、前記透明物質の層と
周波駆動液晶の層とを挟んで配置される少なくとも2つ
平行透明電極とを備え前記透明物質の層の表面形状
は、凸レンズまたは凹レンズまたはフレネルレンズまた
はプリズムアレイまたはレンズアレイまたはレンチキュ
ラレンズまたは回折格子あるいはこれらを任意に組み合
わせた形状であり、前記2周波駆動液晶の層は前記透明
物質の層の表面形状を有する側とこれに対向する平行透
明電極との間に配置される光学素子を提案する。
【0014】本素子によれば、2周波駆動液晶の層に印
加する電圧の周波数を変えることによってその屈折率を
変化させ、これにより表面形状を有する透明物質の層と
ともに構成する素子の光学的性質を変化させるため、従
来の電圧のオン・オフによってその屈折率を変化させる
物質を用いたものの如く電圧オフ時の屈折率の変化(回
復)に長い時間を要し、その分、高速駆動ができなかっ
素子と異なり、高速な駆動が可能であり、しかも常に
電界の及ぼす力を利用できるため、電界強度を大きくす
ることによりその速度をさらに高めることができる。
【0015】また、本素子によれば、電界の及ぼす力に
よって2周波駆動液晶の層の屈折率を変化させ、しかも
透明電極を透明物質の層の2周波駆動液晶の層側に設け
ないため、2周波駆動液晶の層がいずれの状態の場合で
も、従来の素子に比べて透明物質の層の表面形状の影響
を受け難く、光学的性質の変化量を均一化し易い。ま
た、本素子によれば、透明電極を透明物質の層の2周波
駆動液晶の層側に設けないため、複雑な形状の部分に膜
を形成する必要がなく、従来の素子に比べて製作が容易
となる。さらにまた、本素子によれば、透明電極を透明
物質の層の2周波 駆動液晶の層側に設けないため、透明
電極間の距離を概ね同じ距離とすることも容易であり、
しかも透明電極間には常に透明物質の層が存在するた
め、従来の素子と異なり、絶縁性の劣化や短絡等が起こ
り難い。
【0016】また、本発明の請求項2では、2周波駆動
液晶の層と接する側の平行透明電極の該2周波駆動液晶
の層と接する面上に、液晶を一方向に配向させる配向膜
を設けた請求項1記載の光学素子を提案する。
【0017】本素子によれば、液晶の配向が配向膜に平
行な方向となる駆動状態において広いドメイン領域にお
いて均一な配向状態とすることができ、液晶の屈折率変
化を入射光に効率良く伝えることが可能となり、かつ液
晶が種々の方向を向くことによって生ずる散乱やこれに
起因する白濁を防ぐことができる。
【0018】また、本発明の請求項3では、請求項1記
載の光学素子と、前記駆動周波数f 1 を周波数とする電
圧及び駆動周波数f 2 を周波数とする電圧を前記平行透
明電極間に前記液晶の粘性や結晶としての束縛力と均衡
する力を発生させ得る一定の印加時間及び一定の周期で
順次供給する駆動装置とを備えた光学装置を提案する。
【0019】本装置によれば、2周波駆動液晶の層の屈
折率が前記駆動周波数f 1 を周波数とする電圧V 1 及び駆
動周波数f 2 を周波数とする電圧の周波数に応じて周期
的に変化し、疑似的にそれらの中間的な値をとることが
可能となり、光学的性質を連続的に変化できる。
【0020】また、本発明の請求項4では、前記駆動装
置は、周波数f 1 、f 2 をそれぞれ周波数とする電圧
1 、V 2 を、一定の印加時間及び一定の周期で順次供給
する際、前記周期の所望の位相で供給を一時停止し、そ
の後、再開する請求項3記載の光学装置を提案する。
【0021】本装置によれば、2周波駆動液晶の層にお
ける状態の維持特性を利用して所望 の屈折率を電圧を停
止したまま維持でき、必ずしも周期的変化ではない高速
な屈折率変化をもたらすことができる。
【0022】また、本発明の請求項5では、請求項1記
載の光学素子と、前記駆動周波数f 1 を周波数とする電
圧及び駆動周波数f 2 を周波数とする電圧を重畳した電
圧を前記平行透明電極間に供給する駆動装置とを備えた
光学装置を提案する。
【0023】本装置によれば、2周波駆動液晶の層の屈
折率が前記駆動周波数f 1 を周波数とする電圧及び駆動
周波数f 2 を周波数とする電圧の電圧比によって連続的
に変化し、疑似的にそれらの中間的な値をとることが可
能となり、光学的性質を連続的に変化できる。
【0024】また、本発明の請求項6では、前記駆動装
置は、周波数f 1 、f 2 をそれぞれ周波数とする電圧
1 、V 2 を重畳した電圧を供給する際、所望の時刻で供
給を一時停止し、その後、再開する請求項5記載の光学
装置を提案する。
【0025】本装置によれば、2周波駆動液晶の層にお
ける状態の維持特性を利用して所望の屈折率を電圧を停
止したまま維持でき、必ずしも周期的変化ではない高速
な屈折率変化をもたらすことができる。
【0026】前記駆動装置が印加する電圧としては、正
弦波又は矩形波又は鋸歯状波からなる電圧波形を用いる
ことができる。
【0027】また、前記光学素子の2周波駆動液晶の層
側の面を光の入射側に向けて配置することにより、入射
光の偏光状態を前記配向方向と一致させ、2周波駆動液
晶の層の屈折率変化を入射光に効率良く伝えることが可
能となる。
【0028】また、平行透明電極のいずれか一方を入射
光の少なくとも一部を反射する電極と置き換えることに
より、光学特性が変化するアクティブなミラーやハーフ
ミラ ー、その他各種の光学装置を実現できる。
【0029】また、本発明の光学装置の光学素子とし
て、請求項1記載の光学素子に代えて請求項2記載の光
学素子を用いても良い。
【0030】また、前記請求項2記載の光学素子を用い
た本発明の光学装置を複数個、配向膜の配向方向が互い
に直交するように直列に並べることにより、入射光の偏
光状態によらず各種の機能を実現できる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の光学素子およびそ
の素子を用いた光学装置の実施の形態の例を示す。以下
に示す例では、主に透明物質の層の表面としてフレネル
レンズ構造を用いた場合について説明するが、凸レン
ズ、凹レンズ、プリズムアレイ、レンズアレイ、レンチ
キュラレンズ、回折格子、またはこれらの組み合わせた
曲面を含む場合であっても同様な効果が期待できること
は明らかである。
【0032】また、以下の例では、主に屈折率可変物質
として液晶を用いた例について説明するが、誘電率異方
性の周波数依存性を有する他の材料を用いても同様な効
果を期待できることは明らかである。
【0033】また、以下の例では、主に液晶が透明電極
に対して垂直に立った時に該液晶及び透明物質の屈折率
がほぼ等しくなる場合について説明するが、液晶が透明
電極に対して平行になった時にほぼ等しくなる場合、あ
るいは液晶が透明電極に対して一定の角度をなした時に
ほぼ等しくなる場合であっても同様な効果が期待できる
ことは明らかである。
【0034】さらに、以下の例では、主に液晶の屈折率
が透明物質の屈折率よりも概ね大きい場合について説明
するが、液晶の屈折率が透明物質の屈折率よりも概ね小
さい場合、あるいは液晶の屈折率の可変範囲内に透明物
質の屈折率の値が含まれる場合であっても同様な効果が
期待できることは明らかである。
【0035】
【第1の形態】図6は請求項1、3に対応する本発明の
光学素子およびその素子を用いた光学装置の実施の形態
の一例を示すもので、所望の曲面の表面形状を有する透
明な高分子やガラス等よりなる透明物質の層21と、液
晶を含む透明物質等よりなる屈折率可変物質22と、こ
れら透明物質の層21及び屈折率可変物質22を含む層
を挟んだITOやSnOxよりなる複数の透明電極2
3,24と、これらを駆動するための駆動装置25とか
ら構成されている。
【0036】ここでは能動的な光学装置の一つとして、
焦点距離が可変な平凸レンズ(焦点距離がプラス)の提
供を目的とし、例えば屈折率可変物質22の屈折率の方
が透明物質の層21の屈折率よりも概ね大きい場合に
は、屈折率可変物質22を凸レンズ形状とすれば良い。
従って、屈折率可変物質22側の透明物質の層21の表
面形状を、図示したような凹フレネルレンズ形状等とす
れば良い。むろん、屈折率可変物質22の屈折率の方が
透明物質の層21の屈折率よりも概ね小さい場合には、
屈折率可変物質22側の透明物質の層21の表面形状
を、例えば凸フレネルレンズ形状とすれば良いことは明
らかである。
【0037】本例においては、屈折率可変物質22は、
屈折率異方性及び誘電率異方性を有しており、その誘電
率異方性としては、周波数f11の時に誘電率異方性Δ
ε(=ε‖(分子の長軸に平行な誘電率)−ε⊥(分子
の長軸に垂直な誘電率))がプラスであり、周波数f1
2の時に誘電率異方性Δεがマイナスである例を用い
る。さらに屈折率異方性としてはno(正常屈折率)が
透明物質の層21の屈折率とほぼ等しく、ne(異常屈
折率)が透明物質の層21より概ね大きい例を用いる。
【0038】駆動装置25より周波数f11の電界が透
明電極23,24間に印加された場合には、Δε>0な
ので、屈折率可変物質22の分子は電界方向に平行な向
き、即ち透明電極23,24に対してほぼ垂直に立つ。
このため、前述した透明物質の層21と屈折率可変物質
22との屈折率の関係から、屈折率可変物質22の屈折
率は透明物質の層21の屈折率とほぼ同じとなる。従っ
て、本発明の光学装置に入射してきた光26はほとんど
変化を受けずに出射光27として透過する。
【0039】一方、駆動装置25より周波数f12の電
界が透明電極23,24間に印加された場合には、Δε
<0なので、屈折率可変物質22の分子は電界方向に垂
直な向き、即ち透明電極23,24にほぼ平行になる。
このため、前述した透明物質の層21と屈折率可変物質
22との屈折率の関係から、屈折率可変物質22の屈折
率は透明物質の層21の屈折率よりも大きくなる。ここ
で、屈折率可変物質22の部分は凸フレネルレンズ形状
となるため、本光学装置は、屈折率可変物質22の分子
の長軸と平行の偏光で入射してきた光26に対して凸フ
レネルレンズとして機能し、出射光28のように集束す
る。
【0040】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、光学装置の光学的性
質のうち、レンズの焦点距離を変化させることができ
る。
【0041】また、本例では、屈折率可変物質22の配
向状態を印加電圧の周波数の相違によって変化させ、図
1乃至5に示した従来例と異なり、主に電界の及ぼす力
を利用するため、電界強度を大きくすることにより、そ
の変化速度を極めて高速化できる。
【0042】また、電界の及ぼす力によって屈折率可変
物質22の配向を変化させ、かつ透明電極23を透明物
質の層21の屈折率可変物質22側に設けないため、屈
折率可変物質22がいずれの配向状態の場合でも、図1
乃至5に示した従来例に比べて透明物質の層21の表面
形状の影響を受け難く、焦点距離の変化量を均一化し易
い。
【0043】また、透明電極23を透明物質の層21の
屈折率可変物質22側に設けないため、複雑な形状の部
分に膜を形成する必要がなく、図1乃至5に示した従来
例に比べて製作が容易となる。
【0044】さらにまた、透明電極23を透明物質の層
21の屈折率可変物質22側に設けないため、透明電極
23,24間の距離を概ね同じ距離とすることも容易で
あり、しかも透明電極23,24間には常に透明物質の
層21が存在するため、図1乃至5に示した従来例と異
なり、絶縁性の劣化や短絡等が起こり難い。
【0045】前述したように、本例では、透明物質の層
の屈折率と、液晶等の屈折率可変物質の正常屈折率(あ
るいは異常屈折率)とをほぼ等しい値に設定したが、必
ずしもそうしなくても良い。即ち、前記屈折率をほぼ等
しい値に設定することはその焦点距離を無限大近くに設
定することに相当するが、前記屈折率をほぼ等しい値に
設定することが材料上困難である場合、あるいは前記屈
折率をほぼ等しい値に設定できる材料が他の物性値(誘
電率異方性、屈折率異方性、温度特性、溶媒との混合
性、毒性等)との関係から採用し難い場合であっても、
単に本装置の前後に他の固定焦点のレンズを配置して補
正すれば、その焦点距離を無限大近くに設定できるから
である。
【0046】このように、本例では、従来例に比べて駆
動の高速化を図れ、均一性、製作の容易化、駆動上の問
題点を解決できることが明らかである。
【0047】
【第2の形態】図7乃至図11は請求項3、4に対応す
る本発明の光学装置の実施の形態の一例を示すものであ
る。本発明に用いる屈折率可変物質のような、周波数に
よって異なる誘電率異方性を示す物質として、ネマチッ
ク液晶中の2周波駆動液晶がある。
【0048】図7は2周波駆動液晶の誘電率異方性Δε
(=ε‖−ε⊥)の駆動周波数依存性の具体例を示すも
のである。低周波ではΔε>0であるが、周波数が大き
くなると次第にΔεは小さくなり、高周波領域ではΔε
<0となる。ここで、Δε>0の場合には2周波駆動液
晶の分子の長軸が電界に沿って配向し、Δε<0の場合
には分子の長軸が電界に垂直に配向する。従って、周波
数を単純に変えるだけでは2周波駆動液晶の屈折率はほ
ぼ2値的(no及びne)に変化し、連続的に屈折率を変
化させることはできない(なお、配向規制力と電界の力
との釣合によって変化させることはできるが、これは従
来例で述べたように多くの欠点を有している。)。
【0049】図8は2周波駆動液晶の屈折率を連続的に
周期的変化できる駆動電圧波形の一例を示すものであ
る。例として、Δεの符号が異なる2つの周波数f21
(Δε>0)及びf22(Δε<0)を用いる場合を示
す。本例の駆動方法では、例えば周波数f21を主な周
波数とする電圧と、これと振幅の等しい、周波数f22
を主な周波数とする電圧とを一定のデューティ比及び一
定の周期で印加する。
【0050】このように駆動すると、2周波駆動液晶の
分子は、その長軸を電界に沿って配向させる力(周波数
f21印加時)と、その長軸を電界に垂直に配向させる
力(周波数f22印加時)とを周期的に交互に感じるこ
とになる。もし、他に拘束力がなければ、このような駆
動では、液晶は周波数f21と周波数f22とが切り替
わる点において急激にデジタル的に変化し、実用的にア
ナログ的動作を行わせることはできない。しかしなが
ら、実際には粘性や液晶の結晶としての束縛力があるた
め、この周期的に加わる交互の力と均衡し、広い領域に
亘ってほぼ均一で高速な液晶のアナログ的周期的配向運
動を可能とする。
【0051】但し、この駆動方法においては、周波数f
21と周波数f22の電界を周期的に一定の時間加える
ことが重要であり、例えば周波数f21と周波数f22
の電界をそれぞれ一回だけ印加しても、均一性が損なわ
れたり、散乱が大きくなったりして、可変焦点レンズと
しての実用性は乏しくなる。周波数f21と周波数f2
2の電界を周期的に一定の時間印加することにより、前
述した均衡がとれ、広い領域に亘って均一な動作が可能
となる。
【0052】図9は前述した液晶の連続的な周期的運動
の一例を示すもので、ここでは図6に示した装置におけ
る透明物質の層の表面形状としてプリズム形状を用いた
場合を示している。また、駆動周波数として、低周波f
21と高周波f22とを用いて図8中の矩形波の場合の
ように駆動し、液晶が透明電極に対して垂直に立った場
合に液晶の屈折率と透明物質の屈折率とがほぼ等しくな
り、透明電極に対してほぼ平行な場合に液晶の屈折率が
透明物質の屈折率より大きくなる場合について示す。横
軸は高周波f22の始まる時点からの時間(f22及び
f21の繰り返し周期で規格化)であり、縦軸はプリズ
ム構造と液晶の屈折率変化により生じる出射光の振れ角
(度)である。
【0053】同図から、位相が増加するにつれて出射光
の振れ角はほぼ正弦波に近い挙動を示し、アナログ的に
変化できることが明らかになった。また、この例におけ
る2周波(f22及びf21)の繰り返し周期はほぼ2
0msであり、このことから、本発明によれば、従来例
の回復速度の数秒に比べて著しく高速化できることが分
かる。
【0054】図10は前記例における出射光の形を示す
ものである(ある時点での瞬間像)。入射光として円形
のスポット光を入射した場合であり、出射光も同様なス
ポット状となっている。他の時点でも同様なスポット像
が得られていることから、液晶が広い領域においてほぼ
均一な配向運動を行っていることが明らかである。
【0055】図11は2周波駆動液晶の屈折率を連続的
に変化できる駆動電圧波形の他の例を示すものである。
ここでは、図8の場合と同様に、Δεの符号が異なる2
つの周波数f21(Δε<0)及びf22(Δε>0)
を用いる場合を示すが、図8では振幅の等しい周波数f
21及びf22の2つの電圧を一定のデューティ比及び
周期で印加する場合を示しているのに対し、ここではそ
の周期の途中の所望の位相で電圧の供給を一時停止し、
その後、供給を再開する場合を示す。
【0056】このように電圧の供給を一時停止すると、
2周波駆動液晶の分子は停止した位相に対応する傾きで
停止し、配向規制力や温度等によるゆらぎ等によって、
徐々にその配向が乱されるまでその状態を維持する。配
向規制力や温度等によるゆらぎ等によって配向が乱され
るまでの時間としては、通常、数秒以上かかる。従っ
て、この時間内に再び電圧供給を開始すれば、配向の乱
れを少なく保つことができ、しかもこの小さな配向の乱
れも一定時間の電圧供給の再開によりなくすことができ
る。このように駆動することにより、前述した乱れを直
すための一定のリフレッシュ時間は定期的に必要である
が、必ずしも周期的変化ではない高速な屈折率変化をも
たらすことができる。
【0057】図12は前述したような駆動方法を適用す
る装置の一例を示すもので、ここでは多くのセル31を
マトリックス状に配置した装置32を示す。駆動シーケ
ンスとしては、まず、(1)一定時間のリフレッシュ動作
(図8に示したような周期的動作)の後に、(2)各々の
セルにおいて必要とされる屈折率変化に対応した位相に
おいて各々のセルへの電圧供給を停止する。そして、各
セルにおいて一定時間後に再びリフレッシュ動作に入
る。このような駆動を繰り返すことにより、多くのセル
からなるマトリックス装置32を駆動できる。
【0058】ここで、駆動電圧の波形は正弦波である必
要はなく、これらの周波数を主な周波数として含む矩形
波や鋸歯状波等でも良いことはいうまでもない。また、
振幅に周期的変化を持たせても良いことは明らかであ
る。さらにまた、本例では2つの周波数を用いたが、よ
り多くの周波数を用いても良いことはいうまでもない。
【0059】本例の駆動方法による屈折率変化は電界が
主要因であるため、その振幅を大きくすることにより、
さらに高速化を図ることが可能となる。即ち、本駆動方
法による屈折率変化の周期は従来の数秒から数ms〜数
10ms程度以上まで高速化できる。この速度は図6に
示したような構造における透明電極間が数100μm程
度に厚くなる場合であり、このような構造でも十分な速
度が得られることを示している。
【0060】
【第3の形態】図13は請求項1、3に対応する本発明
光学素子およびその素子を用いた光学装置の実施の形
態の一例を示すもので、図中、図6の装置と同一構成部
分は同一符号をもって表す。即ち、22は屈折率可変物
質、23,24は透明電極、25は駆動装置、41は透
明物質の層である。
【0061】前述したように、屈折率可変物質22は屈
折率異方性及び誘電率異方性を有しており、その誘電率
異方性としては周波数f11の時にΔε>0であり、周
波数f12の時にΔε<0であるものとする。また、屈
折率異方性としてはno(正常屈折率)が透明物質の層
41の屈折率とほぼ等しく、ne(異常屈折率)が透明
物質の層41より概ね大きいものとする。
【0062】透明物質の層41の表面形状は凸レンズを
なしており、周波数f11が印加された場合、屈折率可
変物質22の分子は電界方向に平行な向き、即ち透明電
極23,24に対してほぼ垂直に立つ。このため、前述
した透明物質の層41と屈折率可変物質22との屈折率
の関係から、屈折率可変物質22の屈折率は透明物質の
層41の屈折率とほぼ同じとなる。従って、本例の装置
に入射してきた光42はほとんど変化を受けずに出射光
43として透過する。
【0063】一方、周波数f12が印加された場合、屈
折率可変物質22の分子は電界方向に垂直な向き、即ち
透明電極23,24にほぼ平行になる。このため、前述
した透明物質の層41と屈折率可変物質22との屈折率
の関係から、屈折率可変物質22の屈折率は透明物質の
層41の屈折率より大きくなる。ここで、屈折率可変物
質22の部分は凹レンズ形状となるため、本例の装置に
屈折率可変物質22の分子の長軸と平行の偏光で入射し
てきた光42に対しては凹レンズとして機能し、出射光
44のように発散する。
【0064】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、凹レンズの焦点距離
を変化させることができる。
【0065】
【第4の形態】図14は請求項1、3に対応する本発明
光学素子およびその素子を用いた光学装置の実施の形
態の他の例を示すもので、ここでは図13の例において
表面形状を凹レンズとした透明物質の層45を用いた例
を示す。
【0066】本装置に周波数f11が印加された場合、
図13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透
明物質の層45の屈折率とほぼ同じとなり、入射光42
はほとんど変化を受けずに出射光43として透過する。
【0067】一方、周波数f12が印加された場合、図
13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透明
物質の層45の屈折率より大きくなる。ここで、屈折率
可変物質22の部分は凸レンズ形状となるため、本例の
装置に屈折率可変物質22の分子の長軸と平行の偏光で
入射してきた光42に対しては凸レンズとして機能し、
出射光46のように集束する。
【0068】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、凸レンズの焦点距離
を変化させることができる。
【0069】
【第5の形態】図15は請求項1、3に対応する本発明
光学素子およびその素子を用いた光学装置の実施の形
態のさらに他の例を示すもので、ここでは図13の例に
おいて表面形状を凸フレネルレンズとした透明物質の層
47を用いた例を示す。
【0070】本装置に周波数f11が印加された場合、
図13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透
明物質の層47の屈折率とほぼ同じとなり、入射光42
はほとんど変化を受けずに出射光43として透過する。
【0071】一方、周波数f12が印加された場合、図
13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透明
物質の層47の屈折率より大きくなる。ここで、屈折率
可変物質22の部分は凹フレネルレンズ形状となるた
め、本例の装置に屈折率可変物質22の分子の長軸と平
行の偏光で入射してきた光42に対しては凹フレネルレ
ンズとして機能し、出射光48のように発散する。
【0072】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、凹フレネルレンズの
焦点距離を変化させることができる。
【0073】
【第6の形態】図16は請求項1、3に対応する本発明
光学素子およびその素子を用いた光学装置の実施の形
態のさらに他の例を示すもので、ここでは図13の例に
おいて表面形状をプリズムアレイとした透明物質の層4
9を用いた例を示す。
【0074】本装置に周波数f11が印加された場合、
図13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透
明物質の層49の屈折率とほぼ同じとなり、入射光42
はほとんど変化を受けずに出射光43として透過する。
【0075】一方、周波数f12が印加された場合、図
13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透明
物質の層49の屈折率より大きくなり、本例は、屈折率
可変物質22の分子の長軸と平行の偏光で入射してきた
光42に対しては、屈折率の差とプリズムの傾きに応じ
て光を偏向する偏向素子として機能し、出射光50のよ
うに偏向する。
【0076】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、偏向素子の偏向角を
変化させることができる。
【0077】
【第7の形態】図17は請求項1、3に対応する本発明
光学素子およびその素子を用いた光学装置の実施の形
態のさらに他の例を示すもので、ここでは図13の例に
おいて表面形状を凹レンチキュラレンズとした透明物質
の層51を用いた例を示す。
【0078】本装置に周波数f11が印加された場合、
図13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透
明物質の層51の屈折率とほぼ同じとなり、入射光42
はほとんど変化を受けずに出射光43として透過する。
【0079】一方、周波数f12が印加された場合、図
13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透明
物質の層51の屈折率より大きくなる。ここで、屈折率
可変物質22の部分は凸レンチキュラレンズ形状となる
ため、本例は、屈折率可変物質22の分子の長軸と平行
の偏光で入射してきた光42に対しては凸レンチキュラ
レンズとして機能し、出射光52のように発散する。
【0080】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、凸レンチキュラレン
ズの焦点距離や発散角度を変化させることができる。
【0081】
【第8の形態】図18は請求項1、3に対応する本発明
光学素子およびその素子を用いた光学装置の実施の形
態のさらに他の例を示すもので、ここでは図13の例に
おいて表面形状を回折格子とした透明物質の層53を用
いた例を示す。
【0082】本装置に周波数f11が印加された場合、
図13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透
明物質の層53の屈折率とほぼ同じとなり、入射光42
はほとんど変化を受けずに出射光43として透過する。
【0083】一方、周波数f12が印加された場合、図
13の例と同様に、屈折率可変物質22の屈折率は透明
物質の層53の屈折率より大きくなる。ここで、屈折率
可変物質22の部分は回折格子形状となるため、本例
は、屈折率可変物質22の分子の長軸と平行の偏光で入
射してきた光42に対しては回折格子として機能し、出
射光54のように回折する。
【0084】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、回折格子における屈
折率差を変化させることができ、回折光の強度を変化で
きる。
【0085】
【第9の形態】図19は請求項2、10に対応する本発
明の光学素子およびその素子を用いた光学装置の実施の
形態の一例を示すもので、図中、図6の装置と同一構成
部分は同一符号をもって表す。即ち、21は透明物質の
層、22は屈折率可変物質、23,24は透明電極、2
5は駆動装置、61は配向膜である。
【0086】配向膜61はポリイミド、PVA、PV
B、斜方蒸着SiO等からなり、屈折率可変物質22側
の透明電極24の表面上に形成されている。この配向膜
61はラビング法等による処理を加えることにより、そ
の上の屈折率可変物質、ここでは液晶22を一定の方向
に配向させることができる。
【0087】このような構成及び処理により、液晶22
が配向膜61に平行な配向となるような駆動状態におい
て、該液晶22を広いドメイン領域において均一な配向
状態とすることができる。これにより、液晶22の屈折
率変化を入射光に効率良く伝えることが可能となり、か
つ液晶22が種々の方向を向くことによって生ずる散乱
やこれに起因する白濁を防ぐことができる。
【0088】また、液晶22側の透明物質の層21の表
面上にポリイミド、PVA、PVB、斜方蒸着SiO等
からなる配向膜を塗布し、ラビング法等による配向処理
を加えることにより、液晶22の透明物質の層21側の
配向性を向上させることができる。また、透明物質の層
21をレプリカ法(金属やガラス、プラスチック等の型
のレプリカをとる方法)によって形成する場合は、その
剥す方向によって液晶を直接配向させることも可能であ
る。この場合は特殊な膜を塗布したり、表面に凹凸のあ
る面を配向処理する必要がないため、本装置の作製が容
易になる。
【0089】また、液晶22側の透明物質の層21の表
面上に垂直配向材を塗布することにより、液晶22の透
明物質の層21側を垂直配向とすることも可能である。
また、垂直配向材以外にも、例えば弗素等の基を有しか
つ液晶材料との濡れ性が悪い材料を透明物質の層21の
表面上に塗布することにより、液晶22の透明物質の層
21側を垂直配向に近い配向とすることも可能である。
これらの場合は膜を塗布するだけで良く、表面に凹凸の
ある面を配向処理する必要がないため、本装置の作製が
容易となる。
【0090】また、本発明の光学装置は、屈折率可変物
質として、例えば二周波駆動液晶を用い、かつ屈折率可
変物質側の透明電極上にポリイミド、PVA、PVB、
斜方蒸着SiO等からなる配向膜を含み、屈折率可変物
質側の透明物質の層上に前述したような特別な配向膜を
含まない構成もできる。
【0091】このような構成によれば、配向膜が配置さ
れた透明電極の近傍では、この配向膜にラビング法等に
よる配向処理を加えることにより、その付近の二周波駆
動液晶(屈折率可変物質)の分子を一定の方向に配向さ
せることができるが、透明物質の層の近傍では、特に配
向処理を加えないため、二周波駆動液晶が場所によって
異なった向きを向いた配向を示し、入射光に屈折率変化
を充分に伝えられず、可変焦点の効果が充分に発現しな
い可能性がある。
【0092】しかしながら、このような構成において
も、例えば入射光を液晶の配向がより均一な方向(例え
ば、配向膜が形成されている側)から入射させることに
より、この問題を解決できる。即ち、入射光の偏光状態
を前記配向方向と一致させることにより、屈折率可変物
質の屈折率変化を入射光に効率良く伝えることが可能と
なる。これは液晶の旋光性によるものであり、液晶分子
の配向方向が入射光の進行方向に、波長に比べてゆっく
りと変化する場合は、入射光の偏光方向はこの液晶分子
の配向方向の変化に追随して変化する(例えば、液晶の
配向方向が右回りに変化する場合は偏光方向も右回りに
変化する。)。このため、透明物質の層付近で液晶の配
向が場所により異なっても入射光は屈折率変化を充分に
感じることになる。
【0093】このような構成によれば、特殊な膜を塗布
したり、表面に凹凸のある面を配向処理する必要がない
ため、本装置の作製が容易となる。
【0094】
【第10の形態】図20は請求項11に対応する本発明
の光学装置の実施の形態の一例を示すものである。即
ち、71,72は図19で説明した配向膜を備えた光学
装置であり、配向膜の配向方向が互いに直交する如く直
列に並べることにより、入射光の偏光状態によらず各種
の機能を実現できる。
【0095】
【第11の形態】図21は請求項に対応する本発明の
光学装置の実施の形態の一例(但し、駆動装置以外の部
分は特許請求の範囲には含まれない。)を示すもので、
液晶を含む透明物質等よりなる屈折率可変物質81と、
該屈折率可変物質81を挟んだITOやSnOxよりな
る複数の透明電極82,83と、これらを駆動するため
の駆動装置84とから構成されている。ここで、本例で
は、能動的な光学装置の一つとして、例えば光の位相変
化装置の提供を目的とする場合を示す。
【0096】本例においては、屈折率可変物質81は、
屈折率異方性及び誘電率異方性を有しており、その誘電
率異方性としては、周波数f31の時に誘電率異方性Δ
ε(=ε‖(分子の長軸に平行な誘電率)−ε⊥(分子
の長軸に垂直な誘電率))がプラスであり、周波数f3
2の時に誘電率異方性Δεがマイナスである例を用い
る。さらに屈折率異方性としてはno(正常屈折率)が
e(異常屈折率)より概ね小さい例を用いる。
【0097】駆動装置84より周波数f31の電界が透
明電極82,83間に印加された場合には、Δε>0な
ので、屈折率可変物質81の分子は電界方向に平行な向
き、即ち透明電極82,83に対してほぼ垂直に立つ。
このため、屈折率可変物質81の屈折率はnoとなり、
この屈折率と層の厚さとの積に対応した位相ずれを入射
光85に対してもたらす。
【0098】一方、駆動装置84より周波数f32の電
界が透明電極82,83間に印加された場合には、Δε
<0なので、屈折率可変物質81の分子は電界方向に垂
直な向き、即ち透明電極82,83に対してほぼ平行に
なる。このため、屈折率可変物質81の屈折率はne
なり、屈折率が大きくなるため、入射光85にもたらさ
れる位相ずれは周波数f31の場合に比べて大きくな
る。
【0099】このように本例では、屈折率可変物質81
の屈折率を変化させることにより、光学装置の光学的性
質のうち、光の位相ずれを変化させることができる。
【0100】しかしながら、前述したようにΔε>0の
場合には分子の長軸が電界に沿って配向し、Δε<0の
場合には分子の長軸が電界に垂直に配向するため、周波
数を単純に変えるだけでは、光学装置の光学的性質にお
ける中間値、例えば屈折率noとneに対応する位相ずれ
の中間値に変化させることはできない(なお、配向規制
力と電界の力との釣合によって変化させることはできる
が、これは従来例で述べたように多くの欠点を有してい
る。)。
【0101】図22、23は前記光学的性質を連続的に
変化できる駆動電圧波形の一例を示すもので、図22は
正弦波の場合を、また、図23は矩形波の場合をそれぞ
れ示す。本例では、周波数f31を主な周波数とする電
圧Vs1(正弦波の場合)またはVr1(矩形波の場
合)と、周波数f32を主な周波数とする電圧Vs2
(正弦波の場合)またはVr2(矩形波の場合)とを、
ある電圧比で重畳した電圧Vss(正弦波の場合)また
はVrr(矩形波の場合)を印加する。
【0102】このように駆動すると、2周波駆動液晶の
分子は、その長軸を電界に沿って配向させる力(周波数
f31印加時)と、その長軸を電界に垂直に配向させる
力(周波数f32印加時)との相反する向きの力を前記
電圧比に応じて同時に感じることになる。このため、分
子は前記電圧比に応じて、この相反する向きの力が均衡
する角度で電界方向から傾くことになり、屈折率に高速
で連続的な変化をもたらすことができる。また、この作
用に液晶の結晶としての束縛力とが合わさり、広いドメ
イン領域に亘ってほぼ均一で高速な液晶の配向運動が可
能となる。
【0103】ここで、駆動電圧の波形は正弦波や矩形波
である必要はなく、これらの周波数を主な周波数として
含む鋸歯状波等でも良いことはいうまでもない。また、
振幅に時間的変化を持たせても良いことは明らかであ
る。さらにまた、本例では2つの周波数を用いたが、よ
り多くの周波数を用いても良いことはいうまでもない。
【0104】本例の駆動方法による屈折率変化は電界が
主要因であるため、その振幅を大きくすることにより、
さらに高速化を図ることが可能となる。即ち、透明電極
間が数100μm程度と厚い場合であっても、屈折率可
変物質としての2周波駆動液晶の屈折率変化の応答速度
として数10ms程度以下に高速化できる。
【0105】
【第12の形態】図24、25は請求項1、5に対応す
る本発明の光学素子およびその素子を用いた光学装置の
実施の形態の一例を示すもので、図中、図21の装置と
同一構成部分は同一符号をもって表す。即ち、81は屈
折率可変物質、82,83は透明電極、84は駆動装
置、86は透明物質の層である。
【0106】透明物質の層86は所望の曲面の表面形状
を有する透明な高分子やガラス等からなり、透明電極8
2,83間に配置されている。
【0107】ここでは能動的な光学装置の一つとして、
焦点距離が可変な平凸レンズ(焦点距離がプラス)の提
供を目的とし、例えば屈折率可変物質81の屈折率の方
が透明物質の層86の屈折率よりも概ね大きい場合に
は、屈折率可変物質81を凸レンズ形状とすれば良い。
従って、屈折率可変物質81側の透明物質の層86の表
面形状を、図示したような凹フレネルレンズ形状等とす
れば良い。むろん、屈折率可変物質81の屈折率の方が
透明物質の層86の屈折率よりも概ね小さい場合には、
屈折率可変物質81側の透明物質の層86の表面形状
を、例えば凸フレネルレンズ形状とすれば良いことは明
らかである。
【0108】本例においては、屈折率可変物質81は、
屈折率異方性及び誘電率異方性を有しており、その誘電
率異方性としては、周波数f31の時にΔε>0であ
り、周波数f32の時にΔε<0である例を用いる。さ
らに屈折率異方性としてはnoが透明物質の層86の屈
折率とほぼ等しく、neが透明物質の層86より概ね大
きい例を用いる。
【0109】駆動装置84より周波数f31の電界が透
明電極82,83間に印加された場合には、Δε>0な
ので、屈折率可変物質81の分子は電界方向に平行な向
き、即ち透明電極82,83に対してほぼ垂直に立つ。
このため、前述した透明物質の層86と屈折率可変物質
81との屈折率の関係から、屈折率可変物質81の屈折
率は透明物質の層86の屈折率とほぼ同じとなる。従っ
て、本発明の光学装置に入射してきた光85はほとんど
変化を受けずに出射光87として透過する。
【0110】一方、駆動装置84より周波数f32の電
界が透明電極82,83間に印加された場合には、Δε
<0なので、屈折率可変物質81の分子は電界方向に垂
直な向き、即ち透明電極82,83にほぼ平行になる。
このため、前述した透明物質の層86と屈折率可変物質
81との屈折率の関係から、屈折率可変物質81の屈折
率は透明物質の層86の屈折率よりも大きくなる。ここ
で、屈折率可変物質81の部分は凸フレネルレンズ形状
となるため、本光学装置は、屈折率可変物質81の分子
の長軸と平行の偏光で入射してきた光85に対しては凸
フレネルレンズとして機能し、出射光88のように集束
する。
【0111】このように本例では、屈折率可変物質81
の屈折率を変化させることにより、光学装置の光学的性
質のうち、レンズの焦点距離を変化させることができ
る。
【0112】しかしながら、前述したように、周波数を
単純に変えるだけでは屈折率可変物質の屈折率をno
eとの中間の値に変化させることができず、レンズの
焦点距離のような光学装置の光学的性質も中間的な値に
変化させることはできない。
【0113】この光学的性質の連続的な変化は、例えば
図22または23に示したような、周波数f31を主な
周波数とする電圧V31と、周波数f32を主な周波数と
する電圧V32とを、ある電圧比で重畳して印加すること
により可能となる。この時、2周波駆動液晶の分子は前
記電圧比に応じて、この相反する向きの力が均衡する角
度で電界方向から傾くことになる。これにより、屈折率
に高速で連続的な変化をもたらすことができる。また、
この作用に液晶の結晶としての束縛力とが合わさり、広
いドメイン領域に亘ってほぼ均一で高速な液晶の配向運
動が可能となり、均一な光学的性質の変化が達成でき
る。
【0114】図25は前記光学的性質の連続的な変化の
一例を示すものである。この例では、透明物質の層の表
面形状としてプリズム形状を用いている。横軸は周波数
f31を主な周波数とする電圧V31と、周波数f32を
主な周波数とする電圧V32における電圧比V32/(V31
+V32)であり、縦軸は屈折率変化に伴う出射光の偏向
角度である。同図から、電圧比V32/(V31+V32)が
増加するにつれて偏向角度がアナログ的に変化すること
が分かる。なお、本例における出射光の形も、図10に
示したものと同様であり、液晶が広い領域においてほぼ
均一な配向運動を行っていることは明らかである。
【0115】ここで、駆動電圧の波形は正弦波である必
要はなく、これらの周波数を主な周波数として含む矩形
波や鋸歯状波等でも良いことはいうまでもない。また、
振幅に時間的変化を持たせても良いことは明らかであ
る。さらにまた、本例では2つの周波数を用いたが、よ
り多くの周波数を用いても良いことはいうまでもない。
【0116】本例の駆動方法による屈折率変化は電界が
主要因であるため、その振幅を大きくすることにより、
さらに高速化を図ることが可能となる。即ち、透明電極
間が数100μm程度と厚い場合であっても、屈折率可
変物質としての2周波駆動液晶の屈折率変化の応答速度
として数10ms程度以下に高速化できる。
【0117】また、電界の及ぼす力によって屈折率可変
物質81の配向を変化させ、かつ透明電極82を透明物
質の層86の屈折率可変物質側に設けないため、屈折率
可変物質がいずれの配向状態の場合でも、図1乃至5に
示した従来例に比べて透明物質の層86の表面形状の影
響を受けにくい。
【0118】また、透明電極82を透明物質の層86の
屈折率可変物質側に設けないため、複雑な形状の部分に
膜を形成する必要がなく、図1乃至5に示した従来例に
比べて、製作が容易となる。
【0119】さらにまた、透明電極82を透明物質の層
86の屈折率可変物質側に設けないため、透明電極8
2,83間の距離を概ね同じ距離とすることも容易であ
り、しかも透明電極82,83間に常に透明物質の層8
6が存在するため、図1乃至5に示した従来例と異な
り、絶縁性の劣化や短絡等が起こり難い。
【0120】このように、本例では、従来例に比べて、
駆動の高速化を図れ、均一性、製作の容易化、駆動上の
問題点を解決できることが明らかである。
【0121】
【第13の形態】図26は請求項6に対応する本発明の
光学装置の実施の形態の一例を示すものである。例とし
て、Δεの符号が異なる2つの周波数f31(Δε>
0)、f32(Δε<0)を用い、屈折率可変物質とし
て2周波駆動液晶を用いる場合を示す。また、例として
正弦波を用いる場合と、矩形波を用いる場合とをそれぞ
れ示す。
【0122】本例の駆動方法では、周波数f31を主な
周波数とする電圧と、周波数f32を主な周波数とする
電圧とを、ある電圧比で重畳して印加し、さらにある瞬
間に電圧の供給を一時停止し、その後、供給を再開す
る。
【0123】このように電圧の供給を一旦停止すると、
2周波駆動液晶の分子は前記電圧比に対応する傾きで停
止し、配向規制力や温度等によるゆらぎ等によって、徐
々にその配向が乱されるまでその状態を維持する。配向
規制力や温度等によるゆらぎ等によって配向が乱される
までの時間としては、通常、数秒以上かかる。従って、
この時間内に再び電圧供給を開始すれば、配向の乱れを
少なく保つことができ、しかもこの小さな配向の乱れも
一定時間の電圧供給の再開によりなくすことができる。
このように駆動することにより、前述した乱れを直すた
めの一定のリフレッシュ時間は定期的に必要であるが、
常に電圧を印加する必要のない高速な屈折率変化をもた
らすことができる。
【0124】この駆動方法も、図12に示したような多
くのセルをマトリックス状に配置した装置に適用するこ
とができる。駆動シーケンスとしては、まず、(1)一定
時間のリフレッシュ動作(図22または23に示したよ
うな動作)の後に、(2)各々のセルにおいて必要とされ
る屈折率変化に対応した位相において各々のセルへの電
圧供給を停止する。そして、各セルにおいて一定時間後
に再びリフレッシュ動作に入る。このような駆動を繰り
返すことにより、多くのセルからなるマトリックス装置
を駆動できる。
【0125】ここで、駆動電圧の波形は正弦波である必
要はなく、これらの周波数を主な周波数として含む矩形
波や鋸歯状波等でも良いことはいうまでもない。また、
振幅に周期的変化を持たせても良いことは明らかであ
る。さらにまた、本例では2つの周波数を用いたが、よ
り多くの周波数を用いても良いことはいうまでもない。
【0126】本例の駆動方法による屈折率変化は電界が
主要因であるため、その振幅を大きくすることにより、
さらに高速化を図ることが可能となる。即ち、本駆動方
法による屈折率変化の周期は従来の数秒から数ms〜数
10ms程度以上まで高速化できる。この速度は図21
に示したような構造における透明電極間が数100μm
程度に厚くなる場合であり、このような構造でも十分な
速度が得られることを示している。
【0127】なお、前述した第4乃至第10の形態にお
いても、第11、第12の形態で説明した、周波数f3
1を主な周波数とする電圧と周波数f32を主な周波数
とする電圧とをある電圧比で重畳した電圧で駆動しても
良く、また、第13の形態で説明した、周波数f31を
主な周波数とする電圧と周波数f32を主な周波数とす
る電圧とをある電圧比で重畳して印加し、さらにある瞬
間に電圧の供給を一時停止し、その後、供給を再開する
方法で駆動しても良い。
【0128】
【第14の形態】これまでの説明では、屈折率可変物質
を駆動するための2つの電極を両方とも透明電極とした
が、このうちの一方を鏡面を形成する電極とすることも
用途によっては、例えば焦点距離や光偏向角等の光学特
性が変化するアクティブなミラーを必要とするような場
合等には有益となる。また、この電極をハーフミラーを
形成する電極とし、焦点距離や光偏向角等の光学特性が
変化するアクティブなハーフミラーとして用いることも
有益である。
【0129】図27は請求項に対応する本発明の光学
装置の実施の形態の一例を示すもので、図中、図6の装
置と同一構成部分は同一符号をもって表す。即ち、21
は透明物質の層、22は屈折率可変物質、23は透明電
極、91は電極である。
【0130】電極91は、図6の装置における透明電極
24の代わりに配置された鏡面を形成する電極であり、
例えばアルミ膜やクロム膜等からなる金属電極で構成さ
れる。
【0131】前記構成において、図示しない駆動装置か
ら周波数f11が印加されると、第1の形態の場合と同
様に透明物質の層21の屈折率と屈折率可変物質22の
屈折率とはほぼ同じであるから、透明電極23側から入
射した入射光92は、ほとんど変化を受けずに電極91
に達し、ここで反射されて透明電極23側から出射光9
3として出射される。
【0132】一方、周波数f12が印加されると、屈折
率可変物質22の屈折率の変化に応じた光学効果、例え
ばレンズ効果や偏向効果等を受けて電極91に達し、こ
こで反射されて再び同様な光学効果を受け、透明電極2
3側から出射光94として出射される。
【0133】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、焦点可変なミラーや
偏向角可変なミラーを実現できる。
【0134】
【第15の形態】図28は請求項に対応する本発明の
光学装置の実施の形態の他の例を示すもので、ここでは
図27の例において電極91の代わりにハーフミラーを
形成する電極95を用いた例を示す。即ち、電極95
は、ITO膜と金属の薄い膜との積層膜、金属の薄い膜
と絶縁膜との多層膜等からなり、入射光の一部を透過
し、残りを反射する。
【0135】前記構成において、図示しない駆動装置か
ら周波数f11が印加されると、第1の形態の場合と同
様に透明物質の層21の屈折率と屈折率可変物質22の
屈折率とはほぼ同じであるから、透明電極23側から入
射した入射光92は、ほとんど変化を受けずに電極95
に達する。電極95に達した光の一部は該電極95を透
過し、出射光96aとして出射され、残りの光は反射さ
れて透明電極23側から出射光96bとして出射され
る。
【0136】一方、周波数f12が印加されると、屈折
率可変物質22の屈折率の変化に応じた光学効果、例え
ばレンズ効果や偏向効果等を受けて電極95に達する
が、該達した光の一部は該電極95を透過し、出射光9
7aとして出射され、残りの光は反射されて再び同様な
光学効果を受け、透明電極23側から出射光97bとし
て出射される。
【0137】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、焦点可変なレンズ及
びミラー、偏向角可変な透過性光学素子及びミラー等を
同時に実現できる。また、電極95側から入射光を入射
すれば、焦点可変なレンズ及び単純なミラー、偏向角可
変な透過性光学素子及び単純なミラー等を同時に実現で
きる。
【0138】
【第16の形態】図29は請求項に対応する本発明の
光学装置の実施の形態のさらに他の例を示すもので、こ
こでは図27の例において透明電極23の代わりにハー
フミラーを形成する電極98を用いた例を示す。即ち、
電極98は、電極95と同様、ITO膜と金属の薄い膜
との積層膜、金属の薄い膜と絶縁膜との多層膜等からな
り、入射光の一部を透過し、残りを反射する。
【0139】前記構成において、電極98側から入射光
92を入射すると、その一部は該電極98で反射され、
残りは透明物質の層21及び屈折率可変物質22側に入
射する。
【0140】この際、図示しない駆動装置から周波数f
11が印加されると、第1の形態の場合と同様に透明物
質の層21の屈折率と屈折率可変物質22の屈折率とは
ほぼ同じであるから、入射した光はほとんど変化を受け
ずに電極91に達し、ここで反射される。該反射された
光は再び電極98に達し、再度、その一部が反射され、
残りが外部に出射し、以下、同様な工程を繰り返すが、
この場合は何ら光学効果を受けないので、出射光は入射
光92の単なる反射光となる。
【0141】一方、周波数f12が印加されると、電極
98を透過した光は屈折率可変物質22の屈折率の変化
に応じた光学効果、例えばレンズ効果や偏向効果等を受
けて電極91に達し、ここで反射される。該反射された
光は再び同様な光学効果を受けて電極98に達し、再
度、その一部が反射され、残りが外部に出射し、以下、
同様な工程を繰り返すが、この繰り返しの度に光学効果
を受けるため、繰り返す回数に応じて大きな光学効果が
加えられた出射光99として出射される。
【0142】このように本例では、屈折率可変物質22
の屈折率を変化させることにより、多数の焦点を同時に
有しかつその焦点を可変なレンズ、多数の偏向角を同時
に有しかつその偏向角を可変な光学素子等を実現でき
る。この際、同時に具備し得る焦点や偏向角の数は、電
極98の透過/反射の割合を調節することにより実質的
に決定できる。
【0143】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1
によれば、2周波駆動液晶の層に印加する電圧の周波数
を変えることによってその屈折率を変化させ、これによ
り表面形状を有する透明物質の層とともに構成する素子
の光学的性質を変化させるため、従来の電圧のオン・オ
フによってその屈折率を変化させる物質を用いたものの
如く電圧オフ時の屈折率の変化(回復)に長い時間を要
し、その分、高速駆動ができなかった素子と異なり、高
速な駆動が可能であり、しかも常に電界の及ぼす力を利
用できるため、電界強度を大きくすることによりその速
度をさらに高めることができる。また、電界の及ぼす力
によって2周波駆動液晶の層の屈折率を変化させ、しか
も透明電極を透明物質の層の2周波駆動液晶の層側に設
けないため、2周波駆動液晶の層がいずれの状態の場合
でも、従来の素子に比べて透明物質の層の表面形状の影
響を受け難く、光学的性質の変化量を均一化し易い。ま
た、透明電極を透明物質の層の2周波駆動液晶の層側に
設けないため、複雑な形状の部分に膜を形成する必要が
なく、従来の素子に比べて製作が容易となる。さらにま
た、透明電極を透明物質の層の2周波駆動液晶の層側に
設けないため、透明電極間の距離を概ね同じ距離とする
ことも容易であり、しかも透明電極間には常に透明物質
の層が存在するため、従来の素子と異なり、絶縁性の劣
化や短絡等が起こり難い。
【0144】また、本発明の請求項2によれば、液晶の
配向が配向膜に平行な方向となる駆動状態において広い
ドメイン領域において均一な配向状態とすることがで
き、液晶の屈折率変化を入射光に効率良く伝えることが
可能となり、かつ液晶が種々の方向を向くことによって
生ずる散乱やこれに起因する白濁を防ぐことができる。
【0145】また、本発明の請求項3によれば、2周波
駆動液晶の層の屈折率が前記駆動周波数f 1 を周波数と
する電圧V 1 及び駆動周波数f 2 を周波数とする電圧の周
波数に応じて周期的に変化し、疑似的にそれらの中間的
な値をとることが可能となり、光学的性質を連続的に変
化できる。
【0146】また、本発明の請求項4によれば、2周波
駆動液晶の層における状態の維持特性を利用して所望の
屈折率を電圧を停止したまま維持でき、必ずしも周期的
変化ではない高速な屈折率変化をもたらすことができ
る。
【0147】また、本発明の請求項5によれば、2周波
駆動液晶の層の屈折率が前記駆動周波数f 1 を周波数と
する電圧及び駆動周波数f 2 を周波数とする電圧の電圧
比によって連続的に変化し、疑似的にそれらの中間的な
値をとることが可能となり、光学的性質を連続的に変化
できる。
【0148】また、本発明の請求項6によれば、2周波
駆動液晶の層における状態の維持特性を利用して所望の
屈折率を電圧を停止したまま維持でき、必ずしも周期的
変化ではない高速な屈折率変化をもたらすことができ
る。
【0149】また、本発明の請求項8によれば、屈折率
可変物質の屈折率変化を入射光に効率良く伝えることが
可能となる。
【0150】また、本発明の請求項10によれば、光学
特性が変化するアクティブなミラー やハーフミラー、そ
の他各種の光学装置を実現できる。
【0151】また、本発明の請求項11によれば、入射
光の偏光状態によらず各種の機能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の液晶レンズの一例を示す構成図
【図2】図1の装置における焦点距離と印加電圧との関
係図
【図3】図1の装置における反応時間と印加電圧との関
係図
【図4】図1の装置における配向規制力による液晶分子
の配列の概念図
【図5】図1の装置における電圧印加時の液晶分子の配
列の概念図
【図6】本発明の光学装置の第1の実施の形態を示す構
成図
【図7】本発明の光学装置の第2の実施の形態を説明す
る液晶の誘電率と周波数との関係図
【図8】本発明の光学装置の第2の実施の形態を説明す
る駆動電圧波形図
【図9】本発明の光学装置の第2の実施の形態を説明す
る液晶の連続的な周期的運動の説明図
【図10】本発明の光学装置の第2の実施の形態を説明
する出射光の輝度の平面分布グラフ
【図11】本発明の光学装置の第2の実施の形態を説明
する他の駆動電圧波形図
【図12】本発明の光学装置の第2の実施の形態を説明
するマトリックス装置の構成図
【図13】本発明の光学装置の第3の実施の形態を示す
構成図
【図14】本発明の光学装置の第4の実施の形態を示す
構成図
【図15】本発明の光学装置の第5の実施の形態を示す
構成図
【図16】本発明の光学装置の第6の実施の形態を示す
構成図
【図17】本発明の光学装置の第7の実施の形態を示す
構成図
【図18】本発明の光学装置の第8の実施の形態を示す
構成図
【図19】本発明の光学装置の第9の実施の形態を示す
構成図
【図20】本発明の光学装置の第10の実施の形態を示
す構成図
【図21】本発明の光学装置の第11の実施の形態を示
す構成図
【図22】本発明の光学装置の第11の実施の形態を説
明する駆動電圧波形図
【図23】本発明の光学装置の第11の実施の形態を説
明する駆動電圧波形図
【図24】本発明の光学装置の第12の実施の形態を示
す構成図
【図25】本発明の光学装置の第12の実施の形態を説
明する光学的性質の連続的な変化の説明図
【図26】本発明の光学装置の第13の実施の形態を説
明する駆動電圧波形図
【図27】本発明の光学装置の第14の実施の形態を示
す構成図
【図28】本発明の光学装置の第15の実施の形態を示
す構成図
【図29】本発明の光学装置の第16の実施の形態を示
す構成図
【符号の説明】
21,41,45,47,49,51,53,86…透
明物質の層、22,81…屈折率可変物質、23,2
4,82,83…透明電極、25,84…駆動装置、6
1…配向膜、31…セル、71,72…光学装置、9
1,95,98…電極。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−110428(JP,A) 特開 昭57−205785(JP,A) 特開 昭60−143316(JP,A) 特開 昭61−156215(JP,A) 特開 昭60−162229(JP,A) 特開 昭62−170933(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/133 G02F 1/13 505 G09G 3/18 G09G 3/36

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 面形状を有する透明物質の層と、屈折
    率異方性及び誘電率異方性を有しかつ異なる誘電率の差
    Δεが異なる駆動周波数f1及びf2で逆符号となる2周
    波駆動液晶の層と、前記透明物質の層と2周波駆動液晶
    層とを挟んで配置される少なくとも2つの平行透明電
    極とを備え前記透明物質の層の表面形状は、凸レンズまたは凹レン
    ズまたはフレネルレンズまたはプリズムアレイまたはレ
    ンズアレイまたはレンチキュラレンズまたは回折格子あ
    るいはこれらを任意に組み合わせた形状であり、 前記2周波駆動液晶の層は前記透明物質の層の表面形状
    を有する側とこれに対向する平行透明電極との間に配置
    される ことを特徴とする光学素子
  2. 【請求項2】 2周波駆動液晶の層と接する側の平行透
    明電極の該2周波駆動液晶の層と接する面上に、液晶を
    一方向に配向させる配向膜を設けたことを特徴とする請
    求項1記載の光学素子
  3. 【請求項3】 請求項1記載の光学素子と、 前記駆動周波数f 1 を周波数とする電圧及び駆動周波数
    2 を周波数とする電圧を前記平行透明電極間に前記液
    晶の粘性や結晶としての束縛力と均衡する力を発生させ
    得る一定の印加時間及び一定の周期で順次供給する駆動
    装置とを備えた ことを特徴とする光学装置。
  4. 【請求項4】 前記駆動装置は、周波数f 1 、f 2 をそれ
    ぞれ周波数とする電圧V 1 、V 2 を、一定の印加時間及び
    一定の周期で順次供給する際、前記周期の所望の位相で
    供給を一時停止し、その後、再開することを特徴とする
    請求項3記載の光学装置。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の光学素子と、 前記駆動周波数f 1 を周波数とする電圧及び駆動周波数
    2 を周波数とする電圧を重畳した電圧を前記平行透明
    電極間に供給する駆動装置とを備えた ことを特徴とす
    学装置。
  6. 【請求項6】 前記駆動装置は、周波数 1 、f 2 をそれ
    れ周波数とする電圧 1 、V 2 を重畳した電圧を供給す
    る際、所望の時刻で供給を一時停止し、その後、再開す
    ることを特徴とする請求項5記載の光学装置。
  7. 【請求項7】 前記駆動装置が印加する電圧は、正弦波
    又は矩形波又は鋸歯状波からなる電圧波形であることを
    特徴とする請求項3乃至6いずれか記載の光学装置。
  8. 【請求項8】 前記光学素子の2周波駆動液晶の層側の
    面を光の入射側に向けて配置したことを特徴とする請求
    3乃至7いずれか記載の光学装置。
  9. 【請求項9】 平行透明電極のいずれか一方を入射光の
    少なくとも一部を反射する電極と置き換えたことを特徴
    とする請求項3乃至8いずれか記載の光学装置。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の光学素子に代えて請求
    項2記載の光学素子を用いたことを特徴とする請求項
    乃至9いずれか記載の光学装置。
  11. 【請求項11】 請求項10記載の光学装置を複数個、
    配向膜の配向方向が互いに直交するように直列に並べた
    ことを特徴とする光学装置。
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