JP3301942B2 - リン酸塩処理用アルミニウム材およびその表面処理方法 - Google Patents

リン酸塩処理用アルミニウム材およびその表面処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車のボディ
や家電製品の筐体等として塗装が施されて使用される用
途のリン酸塩処理用アルミニウム材に関するものであ
る。なお、本明細書で、アルミニウムとは、純アルミニ
ウム及びアルミニウム合金の両方を含む。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車のボディには鋼材が使用さ
れるのが通常であった。この種の自動車ボディ用鋼材と
しては、普通鋼材、高張力鋼材のほか、亜鉛メッキ鋼材
や合金化亜鉛メッキ鋼材などの表面処理鋼材が使用され
ている。これらのうち、亜鉛メッキ鋼材や合金化亜鉛メ
ッキ鋼材などの表面処理鋼材は、耐食性が優れているこ
とから、特に耐食性が要求される部位あるいは車種など
に推奨される。
【0003】ところでこのような鋼材を用いた自動車の
ボディの組立て製造ラインにおいては、ボディ用鋼材を
プレス加工等により所定の形状に成形して各ボディパー
ツとした後、各ボディパーツを組立てるとともにスポッ
ト溶接し、その後、組立てられたボディに対して脱脂処
理を施してから、鋼材と塗膜との密着性向上および耐食
性向上を目的として、化成処理の一種であるリン酸塩処
理を施し、その後電着塗装および通常のスプレー塗装を
行なうのが一般的である。
【0004】一方、最近では自動車の燃費向上のための
車体軽量化を主目的として、アルミニウム材を自動車の
ボディに使用することが多くなっている。この場合、自
動車のボディ全体をアルミニウム化することはいまだ稀
であり、一般には鋼材とアルミニウム材とを併用するの
が通常である。このような鋼材とアルミニウム材とを併
用して自動車ボディの組立て製造を行なうためには、前
述の鋼材のみの場合と同じラインを用いることが要望さ
れている。すなわち、成形した鋼材からなるボディパー
ツと成形したアルミニウム材からなるボディパーツを組
立てて、ボディを作成した後、そのボディ全体に対して
脱脂処理を施してからリン酸塩処理を施し、その後電着
塗装やスプレー塗装が行なわれる。このようにすれば、
鋼材とアルミニウム材とを併用する場合でも新たに別の
組立て製造ラインを新設しなくて済み、しかも工程の連
続性も保たれるから、製造コスト面で有利となる。しか
しながらこの場合はアルミニウム材に対しても鋼材と同
時にリン酸塩処理が施されることになるため、次のよう
な問題が生じる。
【0005】すなわち、アルミニウム材にリン酸塩処理
を施した場合、アルミニウム材上に均一かつ緻密にリン
酸塩処理皮膜が生成されず、その結果塗装後の耐食性に
劣る問題がある。さらに、リン酸塩処理中にアルミニウ
ム材表面が溶解して、処理浴中にAlイオンが溶出して
しまい、そのため、前述のように自動車用ボディとして
一体化した鋼材とアルミニウム材に同時にリン酸塩処理
する際には、アルミニウム材から溶出したAlイオンに
よって鋼材表面にアルミの不働態膜が形成され、鋼材表
面へのリン酸塩処理皮膜の生成も阻害されてしまい、そ
の結果鋼材の部分についても充分な耐食性および塗膜の
充分な密着性が得られなくなってしまう問題がある。
【0006】このような問題に対する一つの対策として
は、リン酸塩処理浴中にフッ素化合物を添加して、アル
ミニウム材表面の酸化膜を除去し、リン酸塩処理皮膜を
均一に形成する方法が、米国特許第3,619,300
号において提案されている。この方法では、処理浴中に
溶解したAlイオンをエルパソライト(K2NaAl
6)として沈澱除去できるため、前述のような問題を
解決することができる。しかしながらこの提案の方法の
場合、リン酸塩処理浴の濃度管理、廃液処理、設備の腐
食対策等の点で問題がある。
【0007】また別の対策としては、特開昭61−15
7693号等において、リン酸塩処理前に予め亜鉛系の
メッキを施しておく方法が提案されている。この提案の
方法は、予めアルミニウムの表面にZnメッキ層やZn
合金メッキ層を1g/m2以上の付着量で形成しておく
ものであり、このように亜鉛系のメッキ皮膜を予め形成
しておくことによって、後のリン酸塩処理時にアルミニ
ウム材からAlイオンが浴中へ溶出せず、そのためアル
ミニウム材と鋼材とを併用したボディに対してリン酸塩
処理を施す場合でも鋼材に充分にリン酸塩処理皮膜を生
成することができ、しかもアルミニウム材自体の表面に
もリン酸塩処理皮膜を生成することができるとされてい
る。
【0008】さらに、特開平8−99256号において
は、Cuを含むAl−Mg合金で研削部のリン酸亜鉛皮
膜生成量が少なくなるのを防ぐ方法が提案されている。
すなわち、アルミニウムより貴な金属及びそれらの金属
の酸化物のうちの1種又は2種以上の存在下で研削する
方法である。こうすることによって、酸洗処理で表面に
Cuが濃化した材料の非研削部とそうでない研削部との
電気化学的な差を生じにくくして、リン酸亜鉛皮膜生成
量の不均一を防ぐというもので、具体的には銅、酸化
銅、酸化亜鉛を用いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】一般に塗装アルミニウ
ム材は、塗膜に傷やピンホールなどの欠陥が存在しなけ
れば耐食性は著しく優れているが、自動車の走行中に飛
石などで塗膜に傷が生じれば、その傷部分から素地のア
ルミニウムの腐食が進行して塗膜がふくれ、外観不良と
なる。この塗膜ふくれによる外観不良は、素地のアルミ
ニウム材料自体の耐食性のみならず、塗装下地のリン酸
塩処理皮膜の均一性、緻密性によって影響を受ける。特
に前述の特開昭61−157693号の提案のように亜
鉛系メッキ層を媒介としてリン酸塩皮膜を形成させる場
合には、ピンホールのない均一かつ緻密な亜鉛系メッキ
層を形成する必要があるが、前記提案の場合には、アル
ミニウム素地に対する亜鉛系メッキ層の密着性が低く、
ピンホールのない均一かつ緻密な亜鉛系メッキ層を確実
に形成することは困難であった。また、メッキすること
によって当然コストが上昇する。さらに、亜鉛系メッキ
層がリン酸塩皮膜形成後も残っているとアルミとの電位
差があるので耐食性を悪化させるという問題点もあっ
た。また、特開平8−99256号においては、非研削
部と研削部とのリン酸塩皮膜生成量の不均一を防ぐもの
であるが、材料全体のリン酸塩皮膜生成量や被覆率を増
やすものではない。
【0010】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、アルミニウム材表面に緻密で微細なリン酸塩
処理皮膜を形成するための前処理を工夫したリン酸塩処
理用アルミニウム材を提供することを目的とするもので
ある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋼材に比
べアルミニウム材のリン酸塩処理性が劣る理由を、通常
のリン酸塩処理の前の「表面調整」に用いるリン酸塩皮膜
生成の核の働きをするといわれるチタンコロイドが、鋼
材に比べアルミニウム材では付着しにくいことによるも
のと考えた。そして、アルミニウム材のリン酸塩処理性
向上のためには予めアルミニウム材表面にリン酸塩皮膜
生成の核となる物質、あるいはチタンコロイドの付着を
促進する物質を付着させておくことが必要なことを見い
だし本発明に至った。
【0012】具体的には、請求項1に記載の発明は、ア
ルミニウム材表面に、9<pH≦14のアルカリに難溶
性を示す金属微粒子が、個々単独で析出し、一部埋め込
まれた状態で、最大粒径0.0010〜5μmの粒子と
して、任意の100μm2で測定して被覆率20〜80
%で存在することを特徴とする、リン酸塩処理用アルミ
ニウム材であり、
【0013】請求項2に記載の発明は、成形−アルカリ
脱脂−リン酸塩処理 と続く後工程の前に、アルミニウ
ム材表面に、9<pH≦14のアルカリに難溶性を示す
金属の、5≦pH≦9の水に易溶性を示す無機化合物を
0.1〜50wt.%含有する1.0≦pH≦4.5で室
温〜80℃の水溶液を、3秒以上接触させて、金属微粒
子を個々単独で析出させた後、擦りつけることによっ
て、金属微粒子を最大粒径0.0010〜5μmで一部
埋め込まれた状態とし、被覆率を20〜80%としたこ
とを特徴とする、リン酸塩処理用アルミニウム材の表面
処理方法である。
【0014】また、請求項3には請求項1に用いる金属
微粒子として、鉄、銅、マグネシウム、マンガン、亜
鉛、ニッケル、タングステンから選ばれた1種または2
種以上を用いることを規定する。
【0015】また、請求項4には、請求項2に用いる金
属の無機化合物として、硫酸第一鉄、硫酸銅、硫酸マグ
ネシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸ニッケル、硝
酸第一、第二鉄、硝酸銅、硝酸マグネシウム、硝酸亜
鉛、硝酸ニッケル、塩化第一、第二鉄、塩化銅、塩化マ
グネシウム、塩化マンガン、塩化ニッケル、酢酸亜鉛、
酢酸ニッケル、リン酸マンガン、リンタングステン酸ナ
トリウムから選ばれた1種または2種以上を用いること
を規定する。
【0016】
【発明の実施の形態】この用途のアルミニウム材は、通
常、アルミニウム材製造メーカーからユーザーに納入
後、成形−アルカリ脱脂−リン酸塩処理という後工程を
採る。表面に付着した金属の微粒子がアルカリ脱脂処理
で溶解してしまってはリン酸塩皮膜生成の核として作用
せず、また表面調整のチタンコロイドの付着促進の作用
としての働きをしない。そこで、本発明で使用する金属
の微粒子は、9<pH≦14のアルカリに難溶性を示す
必要がある。
【0017】このような特性を示す金属としては、鉄、
銅、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ニッケル、タング
ステン等が挙げられ、本発明ではこれらのなかから選ば
れた1種で用いても、また2種以上を混ぜ合わせて用い
てもかまわない。
【0018】また、金属の無機化合物が5≦pH≦9の
水に溶けてイオン化しないと、金属の微粒子としてアル
ミニウム表面に析出せず、その後強制的に擦りつけるよ
うな処理をしても、リン酸塩皮膜生成の核、あるいはチ
タンコロイドの付着促進の働きをしない。そこで、本発
明で使用する金属の無機化合物は、5≦pH≦9の水に
易溶性を示す必要がある。
【0019】このような特性を示す金属の無機化合物と
しては、硫酸化合物、硝酸化合物、塩素化合物等が挙げ
られる。具体的には、硫酸第一鉄、硫酸銅、硫酸マグネ
シウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸ニッケル、硝酸
第一、第二鉄、硝酸銅、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、
硝酸ニッケル、塩化第一、第二鉄、塩化銅、塩化マグネ
シウム、塩化マンガン塩化ニッケル、酢酸亜鉛、酢酸ニ
ッケル、リン酸マンガン、リンタングステン酸ナトリウ
ム等が挙げられ、本発明ではこれらの中から選ばれた1
種で用いても、また2種以上を混ぜ合わせて用いてもか
まわない。
【0020】また、用いる金属の微粒子の粒径分布は広
い範囲にまたがっていても良いが、粒径0.0010〜
5μmの粒子が上記作用を発現すると考えられるので、
少なくともアルミニウム材の表面に、金属微粒子が、析
出させ擦りつけた後において、個々単独で独立して、一
部埋め込まれた状態で、最大粒径0.0010〜5μm
の粒子として存在する必要がある。粒径が0.0010
μm未満だと、リン酸塩皮膜生成の核、あるいはチタン
コロイドの付着促進の働きをしない。粒径が5μmを超
える粒子がアルミニウム材の表面に一部埋め込まれた状
態で存在すると、リン酸塩処理時に金属が消費されずリ
ン酸塩皮膜の下に金属が存在して、リン酸塩皮膜の密着
性を悪くすると共に塗装後の密着性及び塗装後の耐食性
を悪くする。
【0021】金属微粒子の被覆率は任意の100μm2
で測定して20〜80%とする。20%未満では、リン
酸塩皮膜生成の核、あるいはチタンコロイドの付着促進
の働きが少なく充分な効果を発揮しない。一方、金属微
粒子の被覆率が80%を超えると、粒子が部分的に連続
してしまい、リン酸塩処理時に金属が消費されずリン酸
塩皮膜の下に金属として残存するため塗装後の密着性、
耐食性を低下させてしまう。
【0022】金属の微粒子を、アルミニウム材の表面
に、個々単独で存在し一部埋め込まれた状態で任意の1
00μm2で測定して被覆率20〜80%で存在させる
方法は下記の通りである。まず、室温以上80℃以下で
3秒以上、これら金属の無機化合物の水溶液をアルミニ
ウム材に接触させ、金属を析出させる。それには、水溶
液をアルミニウム材にスプレイするか、アルミニウム材
を水溶液中に浸漬する。また、無機化合物の水溶液にて
陰極電解処理を行っても良い。アルミニウム表面に金属
を析出させた後、強制的に擦りつけることにより、析出
金属を微細化すると共に、金属微粒子を一部埋め込まれ
た状態で均一に板表面に付着させることができる。
【0023】なおこの明細書において、「擦りつける」
とは、機械的にこすって、粒子をアルミニウム材表面に
埋め込む操作をいう。具体的には、ブラシロールを用い
てのブラッシング、ゴムロールやスポンジを用いての軽
圧下、研磨布を用いてのバフ研磨等が挙げられる。しか
し、アルミニウム板表面に深い傷を付けると成型時の破
断原因となるので、こすった際に残る痕跡深さは10μ
m未満が好ましい。
【0024】この「析出−擦りつけ処理」は、アルミニウ
ム材製造時の最終材厚(冷間圧延)後のどの工程におい
てでも良く、金属の微粒子を一部埋め込ませれた状態で
被覆した後に歪み矯正(レベラー)、湯洗、熱処理、切
断等の工程を通っても良い。しかし、後に酸洗処理及び
強エッチングのアルカリ脱脂工程を通るとアルミニウム
地が溶解して一部埋め込まれた金属の微粒子が脱落して
しまいリン酸塩皮膜生成核としての作用または、表面調
整のチタンコロイドの付着促進の作用が働かなくなる。
そのため、酸洗及び強エッチングのアルカリ脱脂処理が
有る場合には、その後で「析出−擦りつけ処理」した方が
好ましい。
【0025】用いる水溶液には金属の無機化合物を0.
1%〜50%の濃度で含有させる。無機化合物の濃度が
0.1%未満では析出する金属微粒子の被覆率が低くリ
ン酸塩皮膜生成核としての作用または、チタンコロイド
の付着促進の効果がない。濃度50%超ではコスト高と
なるだけでなく析出する金属微粒子の被覆率が高くなり
すぎて耐食性を低下させる。そこで、0.1%〜50%
の濃度とするが、同じ理由で3%〜30%であることが
より好ましい。用いる金属の無機化合物の水溶液のpH
は1.0〜4.5の範囲とする。無機化合物の水溶液の
pHが1.0未満ではアルミニウム表面への金属の析出
が速すぎて微細な粒子として析出せず、部分的に連続し
て析出しリン酸塩処理時に金属が消費されずにリン酸塩
皮膜結晶の下に金属として残存して塗装後の耐糸錆性を
低下させる。pHが4.5超では金属の析出が少なすぎ
てリン酸塩皮膜生成核としての作用または、チタンコロ
イドの付着促進の効果が小さい。そこで、1.0≦pH
≦4.5の範囲とする。
【0026】金属の無機化合物の水溶液の浴温は、室温
以上80℃以下の範囲とする。無機化合物質の温度が室
温以下では液温を下げる冷却設備等が必要となり、コス
ト高となる。無機化合物の水溶液の浴温が80℃超で
は、アルミニウム表面への金属析出が速すぎ微粒子状に
ならず、部分的に連続して析出するためリン酸塩処理時
に金属が消費されずリン酸塩皮膜結晶下に金属が残存し
て塗装後の耐糸錆性を低下させる。
【0027】本発明の処理を施したアルミニウム板に
は、通常、成形−アルカリ脱脂の工程の後、常法にした
がって例えばリン酸亜鉛処理等のリン酸塩処理を施せば
良い。なおリン酸塩皮膜の付着量としては0.5〜3g
/m2 が好ましい。この場合、通常のリン酸塩処理に先
立って行うチタンコロイドによる「表面調整」は不要であ
るが、行っても差し支えない。「表面調整」を行った、あ
るいは行わなかったいずれの場合でも、本発明の処理を
したアルミニウム材は、チタンコロイドの付着を促進す
ることを介して、または直接リン酸塩の核発生点が多く
なるため、リン酸塩皮膜結晶サイズが8μm以下で均一
な皮膜が生成され、その後塗装して実用に供した場合の
塗膜密着性に優れる。なお、リン酸塩処理を施すまでに
長時間が経過しそうな場合には、本発明の処理後、速や
かに40℃での粘性が1〜4C.S.T.の防錆油を0.1〜
2g/m2塗布することによって、アルミニウム板の表
面変質を防止できる。
【0028】なおこの発明のリン酸塩処理用アルミニウ
ム材の素地となるアルミニウム材料の成分組成は、リン
酸塩処理が施されて塗装の用途に使用されるものであれ
ば特に限定されず、純アルミニウムのほか、各種のアル
ミニウム合金を用いることができる。特にこの発明で主
な対象としている自動車ボディの用途の場合、Al−M
g系合金(JIS 5000番系合金)、Al−Mg−
Si系合金(JIS6000番系合金)が最適である。
また素地のアルミニウム材自体は特に限定されず、鋳
物、鍛造材、押出材、圧延板のいずれでも良く、またそ
れらの製造時の鋳造条件、熱間加工条件、冷間加工条
件、熱処理条件なども特に限定されない。
【0029】
【実施例】本発明に使用したアルミニウム合金の化学組
成を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】自動車のボディ用として良く用いられる5
000系合金と6000系合金の代表として、それぞれ
5182と6101のアルミニウム圧延板材を用いた。
両合金とも、Cu量は規格範囲内で特に少ないものを用
いた。これは、Cu量が多いとリン酸塩処理性が全体に
向上し、リン酸塩処理性の差がでにくいからである。表
1の組成を有する材厚1.0mmのアルミニウム板の表面
に、表2に示す金属の無機化合物の室温〜80℃の水溶
液を浸漬あるいはスプレ−し一定時間接触させた後、ナ
イロンブラシで上記成分組成のアルミニウム合金表面に
擦りつけた後、水洗、乾燥して試験片とした。無機化合
物質の水溶液のpHは、pHが高い場合は硫酸、硝酸、
塩酸等の酸を加え、pHが低い場合には水酸化ナトリウ
ムを加えて1.0≦pH≦4.5の範囲となるよう調整
した。この試験片に、後処理として アルカリ脱脂(F
C−L4460:日本パ−カライジング製 43℃×2
min pH=10.5)→水洗→表面調整(PL−40
40:日本パ−カライジング製 室温×30sec)→
リン酸亜鉛処理(PB−L3020:日本パ−カライジ
ング製 43゜C×120sec)→水洗→乾燥の工程
でリン酸塩処理を行った。なお、比較例として金属の微
粒子を析出させ埋め込み状態にする処理を行わない従来
法と標記した試験片も用意した。金属微粒子の最大粒子
径及び被覆率の測定は、主にEPMAを用い、これで測
定できない0.1μm未満の粒子についてはSIMSを
用いた。
【0032】この試験片について、まず、リン酸塩皮膜
被覆率とリン酸塩皮膜結晶サイズとを、また、リン酸塩
処理後、カチオン電着塗装(塗膜厚さ20μm)→中塗
り(45μm)→上塗り(35μm)を施した試験片に
ついては塗膜密着性と耐糸錆性を調査した。 リン酸塩皮膜被覆率 皮膜被覆率が高い程電着塗装後の塗膜表面の柚子肌の発
生が無く塗膜仕上がりが良い。本願発明においては、S
EM(×300)観察で皮膜被覆率を目視判定評価し
た。 被覆率90%以上であれば塗装後の塗膜表面の性能は申し分無い。 ◎ 被覆率80〜89%であれば塗装後の塗膜表面の性能は実用上充分である。○ 被覆率60〜79%であれば塗装後の塗膜表面の性能は使用可能である。 △ 被覆率59%以下では塗装後の塗膜表面の性能は使用不可能である。 × リン酸塩皮膜結晶サイズ 皮膜結晶サイズが小さいほど皮膜被覆率が高く塗装性お
よび耐食性は良好で、皮膜結晶サイズが大きくなるに従
い被覆率が低くなり塗装性および耐食性を低下させる。
本願発明においては、SEM(×1500)観察で平均
粒径を測定した。 6μm以下 であれば申し分無い。 ◎ 7〜8μm であれば実用上充分である。 ○ 9〜12μm であれば使用可能である。 △ 13μm以上 であれば使用不可能である。 × 塗膜密着性 本願発明においては、40℃の純水中に240時間浸漬
後碁盤目テープ剥離で塗膜残存数を測定して評価した。 100(剥離無し) であれば申し分無い。 ◎ 98〜99 であれば実用上充分である。 ○ 95〜97 であれば使用可能である。 △ 94以下 であれば使用不可能である。 × 耐食性試験 カッタ−ナイフにてアルミニウム表面に達するクロスカ
ット疵を入れ、塩水噴霧(24h)→恒温恒湿(40℃
80%RH240h)を1サイクルとして4サイクル実
施し、最大糸錆長さで評価した。 最大糸錆長さ 1mm以下であれば申し分無い ◎ 最大糸錆長さ 2mm以下であれば実用上充分 ○ 最大糸錆長さ 2〜3mm以下であれば使用可能 △ 最大糸錆長さ 3mm超であれば使用不可能 ×
【0033】
【表2】
【0034】結果を表2に示す。本願発明の範囲内の発
明例は、リン酸塩皮膜被覆率、リン酸塩皮膜結晶サイ
ズ、塗膜密着性及び耐糸錆性のいずれも「申し分無い」か
「実用上充分」の評価である。しかし、発明例の中でもマ
グネシウム、亜鉛、タングステンの金属微粒子は、鉄、
銅、マンガン、ニッケルの金属微粒子に比べ、耐糸錆性
の性能が特に優れている。 一方、硫酸銅水溶液のpH
が5.0の比較例では金属微粒子の析出が少なく、リン
酸亜鉛皮膜の結晶サイズが大きくリン酸亜鉛皮膜の被覆
率が低くなり、塗膜の密着性、耐糸錆性が向上しない。
水溶液中の塩化亜鉛の濃度が60%と高い比較例では、
大きな金属粒子が部分的に連続して析出して、塗膜密着
性、耐糸錆性を低下させる。水溶液中の硝酸第一鉄の濃
度が0.05%と低く、pHが0.8と低い比較例で
は、金属粒子が部分的に連続して大きな粒子径で析出す
るため被覆率が低すぎ、その結果、リン酸亜鉛皮膜の結
晶サイズが大きくリン酸亜鉛皮膜の被覆率が低く、塗膜
密着性・耐糸錆性を低下させる。また金属微粒子を析出
させ擦りつけて埋め込み状態にする処理を行わない従来
方法の比較例では、塗膜の密着性が悪くリン酸塩皮膜の
被覆率と皮膜結晶サイズも悪く、塗膜密着性及び耐糸錆
性も劣る。なお、表には示さなかったが、成形後の研削
を通常の方法で行った研削部でも本願発明の処理を行っ
た場合には高いレベルのリン酸塩皮膜被覆率を示した。
上記は全て事前の酸洗処理がない場合の結果であるが、
このように本発明に従えば事前の酸洗処理がなくても良
好なリン酸塩皮膜が得られ、その結果良好な塗膜性状と
塗膜密着性が得られる。
【0035】
【発明の効果】この発明のリン酸塩処理用アルミニウム
材においては、リン酸塩処理皮膜の下地として、アルミ
ニウム材表面に、9<pH≦14のアルカリに難溶性を
示す金属の5≦pH≦9の水に易溶性を示す無機化合物
の1.0≦pH≦4.5の水溶液を用いて最大粒径0.
001〜5μmの金属微粒子を、少なくとも一部埋め込
まれた状態で存在させているので、この金属微粒子が、
表面調整のチタンコロイドの付着促進作用を介して、ま
たは直接、リン酸塩皮膜生成核としての作用によってリ
ン酸塩処理性を向上させる。リン酸塩処理性の向上は、
ひいては塗装性を向上させ良好な塗膜が得られ、塗装後
の塗膜密着性を向上させる。従って、優れた塗装後耐食
性を得ることも可能となった。また、本発明の処理とリ
ン酸塩処理との間に、アルカリ脱脂を行ってもアルミニ
ウム地が溶解するほどの厳しい条件でない限りこの効果
は維持される。したがってこの発明のリン酸塩処理用ア
ルミニウム材は、自動車ボディ等の塗装が施される用途
に最適である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム材表面に、9<pH≦14
    のアルカリに難溶性を示す金属微粒子が、個々単独で析
    出し、一部埋め込まれた状態で、最大粒径0.0010
    〜5μmの粒子として、任意の100μm2で測定して
    被覆率20〜80%で存在することを特徴とする、リン
    酸塩処理用アルミニウム材。
  2. 【請求項2】 成形−アルカリ脱脂−リン酸塩処理 と
    続く後工程の前に、アルミニウム材表面に、9<pH≦
    14のアルカリに難溶性を示す金属の、5≦pH≦9の
    水に易溶性を示す無機化合物を0.1〜50wt.%含有
    する1.0≦pH≦4.5で室温〜80℃の水溶液を、
    3秒以上接触させて、金属微粒子を個々単独で析出させ
    た後、擦りつけることによって、金属微粒子を最大粒径
    0.0010〜5μmで一部埋め込まれた状態とし、被
    覆率を20〜80%としたことを特徴とする、リン酸塩
    処理用アルミニウム材の表面処理方法。
  3. 【請求項3】 金属微粒子が、鉄、銅、マグネシウム、
    マンガン、亜鉛、ニッケル、タングステンから選ばれた
    1種または2種以上であることを特徴とする請求項1の
    リン酸塩処理用アルミニウム材。
  4. 【請求項4】 金属の無機化合物が、硫酸第一鉄、硫酸
    銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸
    ニッケル、硝酸第一、第二鉄、硝酸銅、硝酸マグネシウ
    ム、硝酸亜鉛、硝酸ニッケル、塩化第一、第二鉄、塩化
    銅、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化ニッケル、
    酢酸亜鉛、酢酸ニッケル、リン酸マンガン、リンタング
    ステン酸ナトリウムから選ばれた1種または2種以上で
    あることを特徴とする請求項2のリン酸塩処理用アルミ
    ニウム材の表面処理方法。
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