JP3298096B2 - 減圧採血管 - Google Patents

減圧採血管

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JP3298096B2 JP32849095A JP32849095A JP3298096B2 JP 3298096 B2 JP3298096 B2 JP 3298096B2 JP 32849095 A JP32849095 A JP 32849095A JP 32849095 A JP32849095 A JP 32849095A JP 3298096 B2 JP3298096 B2 JP 3298096B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は減圧採血管に関する
ものである。減圧採血管は生化学検査・血清学検査・血
液学検査・血糖測定・血液凝固検査・血沈検査・細菌学
検査等に用いられ、開口部を有する有底管にゴム栓を付
けたものからなる。減圧採血管の使用前には上記有底管
の内部は減圧状態にされている。その減圧度合いは必要
なだけの血液量(2〜20ミリリットル)を採血できる
ように適当な減圧状態に保持されている。採血管内では
血液を凝固させ、分離した血清を検査に供する。
【0002】
【従来の技術】従来から上記有底管の素材はガラスであ
る。しかしガラスは取扱中ことに高速の遠心分離操作に
おいて破損しやいため、最近ではこれがポリエステ
ポリエチレンポリプロピレン等の合成樹脂に代替
されつつある。ポリエステルとしては、ポリエチレンテ
レフタレートが汎用され、ポリエチレンテレフタレート
の共重合物も用いられる。
【0003】しかしポリエチレンテレフタレートに代表
される合成樹脂製減圧採血管はガラス製減圧採血管より
も管内で血液を凝固させるとき時間がかかり、実用面で
劣っていた。これを解決するため血液凝固能のある無機
物を採血管内面に付着させる方法が実施されたが、この
場合凝固した血液が採血管の内面壁に付着し、全血から
の血清分離が難しかった。この解決策として、ガラス製
減圧採血管でも同じ目的に使用されているシリコーン系
の物質を合成樹脂製採血管内面にコーティングする方法
が採られている。
【0004】例えば特公昭59−6655号公報には、
合成樹脂製採血管の内面に血清成分を付着しにくい物質
(シリコーンオイル等)と血清凝固を促進する物質(シ
リカ等の無機物)との分散混合物を付着させた血清分離
用採血管が開示されている。
【0005】更に米国特許4,153,739号には、
通常の減圧採血管の中に存在させているシリコーンゲル
が、経時とともに採血管の内壁に存在させた無機物の表
面を覆い、その状態下で採血されると血液が採血管内面
の無機物と接触することを妨げられ、採血管内の無機物
の血液凝固活性が経時的に低下する現象を解明し、この
血液凝固活性低下を防止する方法として、ポリビニルピ
ロリドン(以下、PVPという。)のアルコール溶液中
に無機物を分散させたものを、採血管内面に付着・乾燥
させる方法が開示されている。この方法であれば血液が
採血管の内面壁に接すると、PVPが溶解し、無機物は
血液中に分散され、無機物と血液との接触が行われ、血
液が凝固する。
【0006】更に本発明者が提案した特願平7−373
57号には、合成樹脂製採血管の内面にPVPと水溶性
シリコーンオイルとの混合物でコーティングをなし、そ
のコーティング面上に珪藻土を粒状で付着させた積層状
の減圧採血管が開示されている。この方法であれば採血
時PVP血液に溶解させる時間短縮でき珪藻土が血
液と接すると速やかに分散、接触、凝固を開始し、少な
い凝固剤で速い凝固速度のものが実現できた。
【0007】このように従来技術では合成樹脂製減圧採
血管の血清分離性能を向上させるために血液凝固能を有
する無機物、血液付着防止のためのシリコーンオイル、
及びこのシリコーンオイルの無機物表面への付着に起因
する血液凝固性能の経時的低下を防止するためのPVP
の混合物を採血管内面に付着させる方法が採用されてい
る。
【0008】また採血管の中には血液成分の比重を利用
して遠心分離を行う場合に血清分離剤が用いられる。採
血、凝固後、遠心分離を行うとその遠心力によってこの
チキソトロピー性のゲル状分離剤は流動的となり、また
血清成分と血球成分との中間比重を有するものであるか
ら、管底から次第に浮上し、血清層と血球層とを分離す
ることができる。
【0009】しかし、特公昭59−6655号公報のよ
うな従来技術では分散混合物を付着させた血清分離剤用
採血管の場合、血清凝固を促進する物質(シリカ等の無
機物)が血液に溶解されたときシリコーン層が剥がされ
やすい状態となり、それが影響して遠心分離後血清表面
に分離剤由来の油分が発生していた。
【0010】また特願平7−37357号のような積層
状態で水溶性シリコーンと珪藻土を付着させた血清分離
剤用採血管の場合、分散混合物程ではないが、シリコー
ンが水溶性であるため、それが血液に溶解され油分が発
生していた。
【0011】このように血清表面に油分が発生し、その
程度が大きくなった場合、血清を注入するノズルを詰ま
らせる原因となり、この油分発生をなくす必要があっ
た。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
技術の欠点を解決し、血液凝固活性を示す無機物の凝固
活性が経時に対して長期間安定であること、無機物の凝
固活性を最大限に発揮させることを狙った合成樹脂製減
圧採血管を提供することである。更に血清分離剤用採血
管を使用した場合でも、遠心分離後血清表面に分離剤由
来の油分が発生しない合成樹脂製減圧採血管を提供する
ことである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、一端が閉塞し
かつ他端が開口した合成樹脂製有底管体と、該開口端を
密閉した穿刺可能な封止部材とを備え、両部材により形
成される空間を減圧状態に保ってなる減圧採血管におい
て、該合成樹脂製有底管体の内面を、ポリビニルピロリ
ドンと血餅剥離性を有し水に対して難溶又は不溶である
極性基を導入したシリコーンオイルとの混合物でコーテ
ィングをなし、そのコーティング面上に、珪藻土を粒状
で付着させことを特徴とする減圧採血管を要旨とす
る。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明において封止部材とは減圧
採血管に用いられるものを言う。例えば、脱着可能な弾
性を有するゴム栓やガスバリヤー部材とシール部材から
なる封止部材を言う。本発明において有底管体とは減圧
採血管として用いられるものである。例えば、管外径が
10〜16ミリメートルφ、管長が60〜170ミリメ
ートルのものである。
【0015】本発明において合成樹脂とはポリエステル
・ポリエチレン・ポリプロピレン等の熱可塑性プラスチ
ックである。この合成樹脂は、酸化防止剤・紫外線遮断
剤・押出成形用助剤・重合体改質用添加剤などを含有し
ていてもよい。採血管には高分子のなかでガスバリヤー
性の優れた合成樹脂が選ばれ、ポリエステル、すなわ
ち、エチレングリコールとテレフタル酸又はそのエステ
ル (特にジメチルテレフタレート) との反応によって得
られるポリエチレンテレフタレートの使用が推奨でき
る。上記ポリエステルの重合体の分子量は固有粘度
〔η〕にして0.6〜0.9であれば、成形の加工性に
おいて問題なく、品質も満足できる有底管体が得られ
る。この場合の固有粘度は、フエノール3重量部と1,
1,2,2−テトラクロロエタン2重量部との混合溶剤
に上記ポリエステルを約0.25g/100ml溶解
し、その溶液を25℃において測定した粘度から求めた
ものである。
【0016】本発明に用いる血餅剥離性を有し水に対し
て難溶又は不溶の親水性物質としては、例えば水酸基、
アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ポリエーテル
基等の極性基を導入したジメチルポリシロキサン、メチ
ルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェノルポリ
シロキサン等の脂肪族変性又は芳香族変性シリコーンオ
イル、前記極性基を導入したパラフィン、ワックス等を
挙げることができる。また、多価アルコール部分エステ
ル化物、ポリグリコール部分エステル化物等も使用でき
る。そして最適には極性基を導入したシリコーンオイル
である。前記の親水性物質は界面活性剤ではないが、容
器内壁面に存在されることにより、血餅が内壁面に付着
するのを防ぎ、付着しようとする血餅を内壁面から剥離
させる作用を有する。
【0017】本発明に用いるPVPは、被膜形成能に優
れ、化粧品等で使用されており、血液を付着させにくい
が、シリコーンオイル等に比べると、やや血液を付着さ
せうる性質を持っている。しかしPVPは珪藻土の血液
凝固性能そのものを損なうことはなく、血液付着防止に
用いられているシリコーンオイルとの共存下で珪藻土と
の接触表面を優先的に覆い、シリコーンオイルが珪藻土
表面へ付着することを排除する性質を有する。珪藻土の
血液凝固性能を最大に発揮させながら、採血管内面への
血液付着を完全に防止するためには、PVPに少量の血
餅剥離性を有し水に対して難溶又は不溶の親水性物質を
加え、その混合液を均一に採血管壁面にコーティングす
るのが好ましい。
【0018】本発明に用いる珪藻土は、不純物を含まな
いもので、かつ、1000〜1200℃の高温で焼成し
灼熱減量分が除去されたものがよい。そのためにはセラ
イト(セライト社の登録商標)が最も好ましい。更に血
液に接したときに、(PVP+血餅剥離性を有し水に対
して難溶又は不溶の親水性物質)の混合物層面が溶解
し、コーティング面上の珪藻土を血液中に分散せしめ速
やかに血液を凝固させるには、血餅剥離性を有し水に対
して難溶又は不溶の親水性物質が好適であり、該混合物
のコーティング層は薄いほどよい。珪藻土の血液凝固性
能を最大限利用するには採血管壁面上の珪藻土がPVP
やシリコーンオイルに覆われてない自然のままで存在す
るのが好ましい。しかし自然のまま壁面に付着すること
は不可能であり、水やアルコールのバインダーが必要と
なる。バインダーは珪藻土の凝固性能や採血管壁面の血
液付着防止能に影響しないものが好ましい。
【0019】珪藻土を自然に近い状態で存在させるとは
採血管内面の血液付着防止用混合物層上に珪藻土を載せ
る状態で存在させることであり、そのために(PVP+
血餅剥離性を有し水に対して難溶又は不溶の親水性物
質)の混合物層が珪藻土の粒子形状に比較して薄く、珪
藻土を該混合物層表面に強く吹きつけても珪藻土が該混
合物層内に埋没しないことが重要であり、珪藻土の平均
粒径は該混合物層厚さの10倍以上、好ましくは30倍
以上が必要である。しかも該混合物層上に珪藻土が付着
できるようなバインダーを珪藻土と共に吹きつけること
が重要である。本発明では採血管内面に少量の血餅剥離
性を有し水に対して難溶又は不溶の親水性物質を含んだ
PVPをコーティングしてあるので、水又はイソプロピ
ルアルコールに珪藻土を分散した分散物を採血管内面の
混合物層上に吹きつけると混合物層面のPVPとシリコ
ーンオイルがバインダーの性質も示し、珪藻土を採血管
内面に好適に付着させる。従って(PVP+血餅剥離性
を有し水に対して難溶又は不溶の親水性物質)の混合物
層の厚さは珪藻土吹きつけ時の水やアルコールによりバ
インダーになりうるだけの厚さが必要となるが、できる
だけ薄いことが重要である。
【0020】本発明の合成樹脂製減圧採血管は管内面に
血餅剥離性を有し水に対して難溶又は不溶の親水性物質
を少量だけ混合したPVPの薄い層を形成させ、珪藻土
をその平均粒径が該混合物層の厚さの少なくとも10倍
以上で該混合物層上に存在させたものであり、採血管内
面に該混合物層で覆われてない珪藻土が存在し、その結
果優れた血液凝固性能を示すものである。
【0021】このような構成であるので、本発明の採血
管は長期間貯蔵されてもその血液凝固性能が劣化するこ
とがなく、具体的には採血管製造後約8ヵ月乃至1年間
の貯蔵後、血液検査に供しても血液凝固時間が9分以内
となる。また本発明の構成が優れているため採血管内の
珪藻土の使用量が少なくてすむ。その結果、本発明によ
れば外観のよい採血管を提供できる。
【0022】PVPと血餅剥離性を有し水に対して難溶
又は不溶の親水性物質の混合比は血液付着性能及び凝固
時間と関係する。重量比でPVPを1に対して血餅剥離
性を有し水に対して難溶又は不溶の親水性物質を0.0
5未満にすると管壁に血液が付着して採血管外部から血
液の凝固状態を観察することが難しく、これが0.5を
超えると血餅剥離性を有し水に対して難溶又は不溶の親
水性物質が珪藻土表面に付着し、採血管貯蔵中に変化を
もたらし、血液凝固に時間がかかる採血管になってしま
う。従ってこの重量比は0.05〜0.5の範囲であ
り、好ましくは0.1〜0.3の範囲である。
【0023】次に重量比で珪藻土を1に対して、(PV
P+血餅剥離性を有し水に対して難溶又は不溶の親水性
物質)の混合物を0.2〜1.0とすることを実施例に
基づいて説明する。実施例では血餅剥離性を有し水に対
して難溶又は不溶の親水性物質として、アミノ基を有す
るジメチルポリシロキサンからなる脂肪族変性シリコー
ン(ダウコーニング社製のMDX4−4159)を取り
上げた。
【0024】有効血液接触面積が約39平方センチメー
トルであり10cc採血用であるポリエステル製採血管
の血液接触部にPVPとダウコーニング社製のMDX4
−4159(以下、Mと示す)の混合物をイソプロピ
ルアルコールに溶解してスプレーを用いて均一に散布
し、50℃の熱風で乾燥した。混合比、スプレー量を調
節して、PVPに対するMの量を4基準にした4種の
採血管を作成した。この採血管内面に血液凝固剤である
セライトSuper Floss(セライト社製焼成珪
藻土)をイソプロピルアルコールに分散させ、次いでこ
れをスプレーで均一に散布し、セライト量に差を付けて
8種類の採血管を表1の通り作成した。
【0025】
【表1】
【0026】表1の採血管を用いて、採血管貯蔵中の血
液凝固性能の変化状況を調べた。但し、この変化を加速
させて50℃で4週間までのシミュレーションを行い、
10人の健常人からの血液の凝固時間を平均して調べ
た。本発明は採血管を常温で8カ月貯蔵した後でも、そ
の血液凝固時間が9分以内であることを目標にしてい
る。常温で8カ月貯蔵は本発明のシミュレーションでは
50℃で4週間の貯蔵に相当すると考えられている。凝
固性判定の規準は凝固時間が9分以内を○、9〜9.5
分を△、10分以上を×で示した。また採血管内面にセ
ライト・シリコーンオイル・PVPの混合物を散布し、
セライトの表面がPVPで覆われたものをブランクとし
て対比した。セライトに対するPVP・MXの混合物層
の比と血液凝固性の関係を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】表2から明かなように珪藻土に対する(P
VP+MX)の混合物の比が1を超えると凝固時間が長
くなり、ブランクと変わらなくなる。この値が0.2よ
り小となると珪藻土の量が多くなり、採血管内壁に均一
な面が得られなくなり、減圧採血管の商品価値を損なう
ものとなる。このことより珪藻土に対する(PVP+M
X)の混合物の重量比は珪藻土の1に対して該混合物の
0.2〜1.0の範囲が適当である。
【0029】次に減圧採血管内面に形成する「(PVP
+MX)の混合物のコーティング厚さ」と「珪藻土の平
均粒径」との関係について説明する。珪藻土粒径とは、
珪藻土をコーティング層に付着させた状態で、コーティ
ング面に接した部分を底辺としたときの珪藻土最大頂点
と底辺との距離であり、平均粒径とは使用した珪藻土粒
子径の平均である。
【0030】イソプロパノールにPVPの1重量%とM
Xの0.2重量%を溶解した混合液を10cc採血用の
ポリエステル製減圧採血管の内面にスプレーを用いて種
々の度合いで均一に散布後、50℃の熱風で乾燥し平均
厚さ約0.03、0.05、0.1、0.2、0.4、
0.6、0.8、1.0μmの混合物層を形成させた。
イソプロピルアルコールに平均粒径約1、2、3、5、
6、8、10、12μmのセライトSuper Flo
ssをそれぞれ1重量%加え、ホモゲナイザーで十分に
混合した分散液をスプレーで、前記採血管内面の混合物
層上に散布し、50℃の熱風で乾燥し珪藻土付着量が約
0.015mg/平方センチメートルとなることを目標
にした。使用した10cc採血用採血管の有効血液接触
面積は、39平方センチメートルなので、血液凝固に関
与する珪藻土量はほぼ0.60mgとなる。
【0031】製作直後、採血管内面の珪藻土付着状況を
5000倍に拡大した顕微鏡で観察した。なお、珪藻土
の付着量については採血量1cc当り0.02〜0.1
0mgあれば十分であり、過剰な珪藻土は凝固時間を短
縮するが、溶血を起こすので、珪藻土の使用量決定には
過剰を避けることが重要である。コーティング層厚さと
珪藻土粒径とが珪藻土粒子付着状況に及ぼす効果の観察
結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】付着状況判定規準 I:珪藻土粒子表面をコーティング層が部分的に覆い、
凝固活性が不足 II:珪藻土粒子表面をコーティング層上に露出してお
り、凝固活性は良好 III:珪藻土粒子がコーティング層に保持されていない
ものが存在する。珪藻土粒子をコーティング層上に均一
分散不可能。
【0034】表3の結果より珪藻土粒子の平均径は、平
均コーティング層厚さの10倍以上、100倍以下で、
10μm以下が好適であり、コーティング層厚さは0.
05〜1.00μmの範囲が好ましい。以下、実施例に
より本発明の効果を更に具体的に説明する。
【0035】〔実施例1〕イソプロパノールにPVPの
1重量%、MXの0.1、0.2、0.3、0.4、
0.5重量%をそれぞれ溶解した混合液と比較例として
MXのないものとそれを0.6重量%溶解した混合液を
ポリエステル製の有底管体の減圧採血管(10cc採血
用)のそれぞれ内面に、スプレーを用いて均一に散布
後、50℃の熱風で乾燥し平均厚さ約0.1μmの混合
物層を形成させた。イソプロパノールに平均粒径約4μ
mのセライトSuperFlossを1重量%加え、ホ
モゲナイザーで徹底的に混合した分散液をスプレーを用
いて、前記採血管内面の混合物層上に散布し、50℃の
熱風で乾燥し、セライトSuper Floss付着量
が約0.015mg/平方センチメートルの採血管を得
た。10cc採血用採血管の有効血液接触面積は約39
平方センチメートルなので、血液凝固に関与するセライ
トSuper Floss量は0.60mgとなる。
【0036】上記採血管の製作直後及び、50℃の状態
で上記採血管を1、3、6週間貯蔵後の時点において各
採血管に常法により10cc採血し、血液凝固時間をそ
れぞれ測定した。同時に採血管壁の血液付着状態、採血
管内面のセライトSuperFloss付着状況を50
00倍に拡大した顕微鏡で観察した。表4にその結果を
示す。本実施例で50℃で6週間は常温下約1年間のシ
ミュレーションと考えた。珪藻土付着状況はPVPの皮
膜形成能のため、珪藻土有効面積がやや少なく、血液接
触後の管壁コーティング層の溶解に時間がかかる場合を
△で示し、この問題のないものを○で示した。
【0037】
【表4】
【0038】MXを含まない場合、採血後の血液凝固時
に採血管壁面に血液が付着し、凝固状況を確認するのに
障害となる。更にシリコーンオイルの量が増加し、それ
がPVP量の60%になると減圧採血管の貯蔵中に血液
凝固性能が低下する。このように採血管内面の混合物層
はMX/PVPの比が0.1〜0.5の重量比に於いて
好結果をもたらしている。総合判定ではシリコーンオイ
ルがない場合や0.6重量%の場合は不良であった。
【0039】〔実施例2〕イソプロパノールにPVPの
1重量%、MXの0.1重量%を溶解した混合液をポリ
エステル製の有底管体の減圧採血管(10cc採血用)
内面に、スプレーを用いて均一に散布後、50℃の熱風
で乾燥し平均厚さ約0.1μmの混合物層を形成させ
た。イソプロピルアルコールに平均粒径約4μm(最大
7μm)のセライトSuper Flossを1重量%
加え、ホモゲナイザーで十分に混合した分散液をスプレ
ーを用いて、前記採血管内面の混合物層上に散布し、5
0℃の熱風で乾燥し、セライトSuper Floss
付着量が約0.30mgの採血管を製作した。
【0040】該採血管の製作直後、採血管内面のセライ
トSuper Floss付着状況を5000倍に拡大
した顕微鏡で観察した。珪藻土は混合物上に存在し、混
合物層に接した面の反対側にあたる珪藻土の表面には混
合物層は認められなかった。経時変化を加速させる50
℃で4週間のシミュレーション試験で、血液の凝固時間
は9.0分であり、珪藻土量が少ないために採血管外観
も極めて良好であった。
【0041】〔実施例3〕実施例1と同様にイソプロパ
ノールにPVPの1重量%、MXの0.1、0.2、
0.3、0.4、0.5重量%をそれぞれ溶解した混合
液をポリエステル製の有底管体の減圧採血管(10cc
採血用)のそれぞれ内面にスプレーを用いて均一に散布
後、50℃の熱風で乾燥し平均厚さ約0.1μmの混合
物層を形成させた。イソプロパノールに平均粒径約4μ
mのセライトSuperFlossを1重量%加え、ホ
モゲナイザーで徹底的に混合した分散液をスプレーを用
いて、前記採血管内面の混合物層上に散布し、50℃の
熱風で乾燥し、セライトSuperFloss付着量が
約0.015mg/平方センチメートルの採血管を得
た。10cc採血用採血管の有効血液接触面積は約39
平方センチメートルなので、血液凝固に関与するセライ
トSuperFloss量は0.60mgとなる。その
後、血清分離剤1.4gを充填させ、血清分離剤用採血管を
作製した。
【0042】比較例1として分散混合物を付着させた血
清分離剤用採血管を次のように作製した。イソプロパノ
ールにPVPの1重量%、血餅剥離性を有し、水に難溶
又は不溶の親水性シリコーン0.1重量%、平均粒径約
4μmのセライトSuperFlossを1重量%加
え、ポリエステル製の有底管体の減圧採血管(10cc
採血用)にスプレーを用いて均一に散布後、50℃の熱
風で乾燥し、その後血清分離剤1.4gを充填させ、分
散状の血清分離剤用採血管を作製した。
【0043】比較例2として積層状態で水溶性シリコー
ンと珪藻土を付着させた血清分離剤用採血管を次のよう
に作製した。イソプロパノールにPVPの1重量%、水
溶性シリコーン0.1重量%をそれぞれ溶解した混合液
をポリエステル製の有底管体の減圧採血管(10cc採
血用)のそれぞれ内面にスプレーを用いて均一に散布
後、50℃の熱風で乾燥し平均厚さ約0.1μmの混合
物層を形成させた。イソプロパノールに平均粒径約4μ
mのセライトSuperFlossを1重量%加え、ホ
モゲナイザーで徹底的に混合した分散液をスプレーを用
いて、前記採血管内面の混合物層上に散布し、50℃の
熱風で乾燥し、セライトSuperFloss付着量が
約0.015mg/平方センチメートルの採血管を得
た。10cc採血用採血管の有効血液接触面積は約39
平方センチメートルなので、血液凝固に関与するセライ
トSuperFloss量は0.60mgとなる。その
後、血清分離剤1.4gを充填させ、積層状の血清分離剤用
採血管を作製した。
【0044】上記採血管の製作直後及び50℃の状態で
上記採血管を6週間貯蔵後の時点において各採血管に常
法により10cc採血し、血液凝固後、遠心分離(13
00Gで5分)を行い、血清表面の油分の有無をルーペ
で観察した。表5にその結果を示す。本実施例で50℃
で6週間の条件は常温下の約1年間に相当するシミュレ
ーションと考えた。
【0045】比較例1では分散混合物を付着させるた
め、無機物が血液に溶解された時シリコーン層が剥がれ
易い状態となり、また、比較例2においても水溶性のシ
リコーンを使用したため、それが血液に溶解され、油分
の発生が生じた。MXを使用した場合、シリコーンが血
餅剥離性を有し、水に対して難溶又は不溶の親水性物質
であり、シリコーン層が均一のまま保持される。そのた
め遠心分離後の油分発生が非常に少なくなった。
【0046】
【表5】
【0047】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、減圧
採血管内の血液凝固活性を示す珪藻土が血液と接すると
速やかに分散・接触・凝固を開始し、少ない凝固剤で速
い凝固速度を実現し、また、減圧採血管の貯蔵中におけ
る凝固活性低下を防止し、いつまでも良好な外観を保ち
うる減圧採血管が提供される。また、血清分離剤用採血
管として使用した場合、遠心分離後の油分が発生しない
採血管が提供される。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61B 5/15 G01N 33/48

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一端が閉塞しかつ他端が開口した合成樹
    脂製有底管体と、該開口端を密閉した穿刺可能な封止部
    材とを備え、両部材により形成される空間を減圧状態に
    保ってなる減圧採血管において、該合成樹脂製有底管体
    の内面を、ポリビニルピロリドンと血餅剥離性を有し水
    に対して難溶又は不溶である極性基を導入したシリコー
    ンオイルとの混合物でコーティングをなし、そのコーテ
    ィング面上に、珪藻土を粒状で付着させことを特徴と
    する減圧採血管。
  2. 【請求項2】 ポリビニルピロリドンと血餅剥離性を有
    し水に対して難溶又は不溶の親水性物質との混合物の重
    量比が、ポリビニルピロリドン1に対して血餅剥離性を
    有し水に対して難溶又は不溶の親水性物質を0.05〜
    0.5にしたことを特徴とする請求項1記載の減圧採血
    管。
  3. 【請求項3】 ポリビニルピロリドンと血餅剥離性を有
    し水に対して難溶又は不溶の親水性物質との混合物の厚
    さの平均が0.05〜1.0μmであることを特徴とす
    る請求項1記載の減圧採血管。
  4. 【請求項4】 珪藻土の平均粒径が、10μm以下で、
    かつ、ポリビニルピロリドンと血餅剥離性を有し水に対
    して難溶又は不溶の親水性物質との混合物のコーティン
    グ層の厚さの10〜100倍であることを特徴とする請
    求項1記載の減圧採血管。
  5. 【請求項5】 重量比で珪藻土を1に対して、ポリビニ
    ルピロリドンと血餅剥離性を有し水に対して難溶又は不
    溶の親水性物質との混合物を0.2〜1.0とすること
    を特徴とする請求項1記載の減圧採血管。
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