JP3295719B2 - 無排水型湿式脱硫方法と装置 - Google Patents

無排水型湿式脱硫方法と装置

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、湿式排煙脱硫方式に係
り、特に排水を無くした新規な排煙脱硫方式に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】湿式排煙脱硫法は、水酸化ナトリウム、
水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなど
のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の
水溶液からなる吸収液と二酸化硫黄を含む排ガスを接触
させることで二酸化硫黄を吸収除去するものである。
【0003】図4に従来技術からなる脱硫装置の一例を
示した。ボイラ(図示せず)などの燃焼器出口の排ガス
は、集塵器1に入り、ダストを分離した後、排ガスライ
ン2を通って脱硫塔3へ入ることになる。図4では脱硫
方式として一塔式の石灰石石膏法を例にして示した。石
灰石は微粉砕された後、スラリタンク10に供給され、
その後スラリとして脱硫塔3に供給される。脱硫塔3内
では石灰石のスラリは排ガス中に噴霧される。この時排
ガス中に含まれる二酸化硫黄はスラリ液に吸収され、ス
ラリ中に含まれる炭酸カルシウムと反応し亜硫酸カルシ
ウムになる。この亜硫酸カルシウムは脱硫塔3のボトム
に吹き込まれる空気により酸化され石膏となる。脱硫塔
3のボトムの液は一部抜き出され、シックナまたは液体
サイクロンからなるスラリ濃縮器4に入り、約10%程
度のスラリ濃度であったのが、20〜30%程度まで濃
縮される。濃縮されたスラリ液は遠心分離器11に入れ
られ、石膏と水溶液に分離される。石膏は石膏排出ライ
ン12から取り出され、水溶液は再びスラリ濃縮器4へ
返される。またスラリ濃縮器4から上澄液の一部が排水
としてライン13から系外へ取り出される。この排水中
には可溶性の塩素、カリの化合物が入っており、この濃
度を抑えるためスラリ濃縮器4から上澄液の一部がライ
ン13から排出され、中和処理などを行った後、廃棄さ
れる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は排水の
中和処理などが必要であり、また処理後の排水を河川な
どへ排棄した場合に起こる二次公害が問題であった。全
く排水を出さない運転も可能であるが、この時塩素、フ
ッ素成分などの不純物は遠心分離器11から出る石膏の
付着物あるいはカルシウム化合物として取り出されるだ
けでバランス上、脱硫塔3内の塩素、フッ素などのイオ
ン濃度が高くなり腐食の原因となり、これを防ぐために
は耐食性の高級な金属材料を使用する必要があり、その
ため脱硫塔のコストが高くなる欠点を有していた。本発
明の目的は脱硫塔内の塩素、フッ素成分などの不純物濃
度が高くなることを防ぎながら、排水を出さない排煙脱
硫方法と装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は次の
構成によって構成される。すなわち、燃焼排ガスをスラ
リ脱硫剤とを脱硫塔内で接触させ排ガス中の硫黄酸化物
を除去する湿式脱硫方法において、脱硫塔から抜き出さ
れた固体の脱硫反応生成物を含むスラリを濃縮し、この
濃縮スラリに乾燥した固体の脱硫反応生成物を混合した
後、前記排ガスを含む熱風で乾燥し、脱硫反応生成物を
含む乾燥固体の一部を乾燥前のスラリの混合用として戻
すと共に、乾燥後の排ガスは脱硫塔の前段に設置された
集塵器の入口または出口に入れる無排水型湿式脱硫方
法、または、燃焼排ガスをスラリ脱硫剤とを脱硫塔内で
接触させ排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置
において、脱硫塔から抜き出された固体の脱硫反応生成
物を含むスラリを濃縮するスラリ濃縮器と、この濃縮ス
ラリに乾燥した脱硫反応生成物を混合した後、前記排ガ
スを含む熱風で乾燥する乾燥器と、脱硫反応生成物を含
む乾燥固体の一部を乾燥前のスラリの混合用として戻す
ための流路と、乾燥後の排ガスを脱硫塔の前段に設置さ
れた集塵器の入口または出口に入れるためのサイクロン
を備えた無排水型湿式脱硫装置、または、燃焼排ガスを
スラリ脱硫剤とを脱硫塔内で接触させ排ガス中の硫黄酸
化物を除去する湿式脱硫方法において、脱硫塔から抜き
出された固体の脱硫反応生成物を含むスラリを濃縮し、
この濃縮スラリを前記排ガスを含む熱風で乾燥し、脱硫
反応生成物を含む乾燥固体の全てを乾燥後の排ガスと共
脱硫塔の前段に設置された集塵器入口に供給し、集塵
器から排出される固形物の一部は乾燥前のスラリの混合
用として用いる無排水型湿式脱硫方法、または、燃焼排
ガスをスラリ脱硫剤とを脱硫塔内で接触させ排ガス中の
硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置において、脱硫塔か
ら抜き出された固体の脱硫反応生成物を含むスラリを濃
縮するスラリ濃縮器と、この濃縮スラリを前記排ガスを
含む熱風で乾燥する乾燥器と、脱硫反応生成物を含む乾
燥固体の全てを乾燥後の排ガスと共に脱硫塔の前段に設
置された集塵器入口に供給するための流路と、集塵器か
ら排出される固形物の一部を乾燥前のスラリに混合する
ための流路を備えた無排水型湿式脱硫装置である。
【0006】
【作用】スラリ中に含まれる塩素、フッ素、アルミニウ
ム、ケイ素等の不純物は120〜500℃程度の熱風で
低温乾燥することにより大部分乾燥された石膏の表面に
付着するかまたは未反応の脱硫剤成分のカルシウムと反
応し、固体として排出される。そのためスラリ中の不純
物で乾燥ガス中に同伴されるものはない。例えば塩素、
カリなどはCaCl2、CaK2となり反応して固定化さ
れ、アルミニウム、ケイ素などは乾燥することにより固
体となって石膏表面に付着した形で取り出される。こう
して、脱硫塔中の不純物濃度が高くなることを防ぎなが
ら、排水を出さない排煙脱硫が達成できる。
【0007】
【実施例】本発明の一実施例を図面と共に説明する。図
1は本発明の一実施例の排煙脱硫装置のフローを示す図
である。硫黄成分を含む重油、石炭などを燃焼した時に
出る排ガスは、まず、集塵器1でダストが分離され、排
ガスライン2を通って脱硫塔3に入る。脱硫塔3内では
微粉化された石灰石のスラリが噴霧されており、この噴
霧スラリと二酸化硫黄を含む排ガスが接触し、スラリ中
に吸収されることで排ガスは脱硫される。吸収された二
酸化硫黄はスラリ中の石灰石と反応し石膏として固定化
される。石灰石を十分に排ガスと反応させるため、スラ
リ液は脱硫塔3内を循環使用することになる。スラリ液
の一部は脱硫塔3のボトムから抜き出されたシックナま
たは液体サイクロンなどからなるスラリ濃縮器4に入
り、輸送可能な濃度である30〜40%まで濃縮され混
練器5に入る。混練器5では乾燥した石膏が分配器7か
ら供給されており、粉体として取り扱いが可能な水分
量、すなわち、10〜50%まで濃縮される。この状態
で粉体は噴流層、流動層、キルンなど乾燥器8に供給さ
れる。乾燥器8は噴流層、流動層、キルンなどの方式で
構成されている。
【0008】乾燥器8内では石膏の量が増加することで
みかけの水分量が減少しているため壁などに付着するこ
となく、また石膏の増加により伝熱面積が増えており、
そのため短時間で容易に乾燥することになる。乾燥器8
には集塵器1の出口のダストを含まない120〜150
℃のボイラからの排ガスを供給することになるが、場合
によっては熱風発生器9を用いるとさらに短時間で粉体
を乾燥させることができる。
【0009】乾燥器8での粉体の乾燥が流動層による流
動乾燥の場合、粒径が0.5〜5mmからなる砂などを
用い、この中に石膏を供給するとさらに乾燥時間が短縮
され、乾燥器8を小型な装置とすることができ、粉体を
容易に乾燥することができる。乾燥後の石膏は付着力が
なくなるため微細になり乾燥ガスとともに系外へ取り出
される。系外にはサイクロン6が取りつけられており、
乾燥ガスと石膏はこのサイクロン6で分離されることに
なる。分離された石膏は一部混練器5に送られるが、残
りは副製品として系外へ取り出される。スラリ中に含ま
れる塩素、カリ成分などの不純物は乾燥過程で石膏の表
面に付着するか未反応の石灰石と反応して、化合物を作
り、石膏中の不純物として取り出されることになるが、
その量は少なく石膏の純度を大巾に下げることはない。
また、排出された乾燥ガスは微量の石膏と多量の水分を
含んでおり、このガスは集塵器1の前流か、あるいは後
流に戻されることになる。図1の例では乾燥ガスは集塵
器1の後流に戻している。水分を多量に含む乾燥ガスを
排ガス流路に戻すため、排ガス中の水分濃度が高くな
り、脱硫塔3で消費される蒸発用の水分を低減させるこ
とが可能となる。このように、脱硫塔3中の不純物濃度
が高くなることを防ぎながら、排水を出さない排煙脱硫
が達成できる。
【0010】図2に本発明の他の実施例を示す。図2に
示す実施例は図1のそれと異なるところは石膏を石炭な
どの灰と共に廃棄するフローを採用していることであ
る。この方法は乾燥器8の出口の石膏の一部を回収し混
練器5へ送るが、残りの石膏は乾燥ガスとともに集塵器
1の入口に入れ灰とともに石膏を除去する。このときサ
イクロン6で分離された固形物は定量機14で定量しな
がら混練器5に送ることが望ましい。
【0011】また、図3に示す実施例は乾燥器8の出口
では全く石膏を回収せず、乾燥ガスとともに集塵器1の
入口に入れ、混練器5では集塵器1から取り出された灰
の一部を用いて石膏と混合し、乾燥器8に供給する方法
である。図2、図3に示すいずれの場合の方式において
も、図1に示す場合と同様に、脱硫塔3中の不純物濃度
が高くなることを防ぎながら、排水を出さない排煙脱硫
が達成できる。
【0012】
【発明の効果】本発明によれば、湿式脱硫塔からの排水
を全くなくすことができ、そのため排水処理設備が不要
となる。しかも石膏を乾燥した後の湿った乾燥ガスを脱
硫塔入口に返すことにより脱硫塔に必要な蒸発のための
水分量を5〜30%低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例の排煙脱硫装置のフローシ
ートを示す図である。
【図2】 本発明の一実施例の排煙脱硫装置のフローシ
ートを示す図である。
【図3】 本発明の一実施例の排煙脱硫装置のフローシ
ートを示す図である。
【図4】 従来の排煙脱硫装置のフローシートを示す図
である。
【符号の説明】
1…集塵器、3…脱硫塔、4…スラリ濃縮器、5…混練
器、6…サイクロン、7…分配器、8…乾燥器、9…熱
風乾燥器、10…スラリタンク、11…遠心分離器、1
4…定量機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−8411(JP,A) 特開 昭55−97225(JP,A) 実開 昭61−204633(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/34,53/50,53/77

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃焼排ガスをスラリ脱硫剤とを脱硫塔
    内で接触させ排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫
    方法において、脱硫塔から抜き出された固体の脱硫反応
    生成物を含むスラリを濃縮し、この濃縮スラリに乾燥し
    た固体の脱硫反応生成物を混合した後、前記排ガスを含
    熱風で乾燥し、脱硫反応生成物を含む乾燥固体の一部
    を乾燥前のスラリの混合用として戻すと共に、乾燥後の
    排ガスは脱硫塔の前段に設置された集塵器の入口または
    出口に入れることを特徴とする無排水型湿式脱硫方法。
  2. 【請求項2】 燃焼排ガスをスラリ脱硫剤とを脱硫塔内
    接触させ排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装
    置において、脱硫塔から抜き出された固体の脱硫反応生
    成物を含むスラリを濃縮するスラリ濃縮器と、この濃縮
    スラリに乾燥した脱硫反応生成物を混合した後、前記排
    ガスを含む熱風で乾燥する乾燥器と、脱硫反応生成物を
    含む乾燥固体の一部を乾燥前のスラリの混合用として戻
    すための流路と、乾燥後の排ガスを脱硫塔の前段に設置
    された集塵器の入口または出口に入れるためのサイクロ
    ンを備えたことを特徴とする無排水型湿式脱硫装置。
  3. 【請求項3】 燃焼排ガスをスラリ脱硫剤とを脱硫塔内
    接触させ排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫方
    法において、脱硫塔から抜き出された固体の脱硫反応生
    成物を含むスラリを濃縮し、この濃縮スラリを前記排ガ
    スを含む熱風で乾燥し、脱硫反応生成物を含む乾燥固体
    の全てを乾燥後の排ガスと共に脱硫塔の前段に設置され
    集塵器入口に供給し、集塵器から排出される固形物の
    一部は乾燥前のスラリの混合用として用いることを特徴
    とする無排水型湿式脱硫方法。
  4. 【請求項4】 燃焼排ガスをスラリ脱硫剤とを脱硫塔内
    接触させ排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装
    置において、脱硫塔から抜き出された固体の脱硫反応生
    成物を含むスラリを濃縮するスラリ濃縮器と、この濃縮
    スラリを前記排ガスを含む熱風で乾燥する乾燥器と、脱
    硫反応生成物を含む乾燥固体の全てを乾燥後の排ガスと
    共に脱硫塔の前段に設置された集塵器入口に供給するた
    めの流路と、集塵器から排出される固形物の一部を乾燥
    前のスラリに混合するための流路を備えたことを特徴と
    する無排水型湿式脱硫装置。
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