JP3294055B2 - 排煙処理システム - Google Patents

排煙処理システム

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JP3294055B2 JP13199195A JP13199195A JP3294055B2 JP 3294055 B2 JP3294055 B2 JP 3294055B2 JP 13199195 A JP13199195 A JP 13199195A JP 13199195 A JP13199195 A JP 13199195A JP 3294055 B2 JP3294055 B2 JP 3294055B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は排煙の処理システム、特
に排煙中のセレン(Se)の除去及び無害化が容易に行
うことができる排煙処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、火力発電所等に設置される排煙処
理システムとしては、排煙からフライアッシュ等の粉塵
を除去する集塵装置(通常、電気集塵機)と、吸収塔内
で吸収剤スラリ(例えばカルシウム化合物含有スラリな
ど)と接触させることにより排煙中の亜硫酸ガスを吸収
除去する湿式排煙脱硫装置などの排煙脱硫装置とを備え
た排煙処理システムが普及している。ところが、近年排
煙中に含まれる硫黄酸化物以外の有害な不純物の扱いが
問題となってきており、特に、石炭焚きボイラ用の排煙
処理システムにおいては、石炭中に最大10mg/kg
程度の含有量で含まれるセレン(Se)の有害性が問題
となっており、無害化して処理することが望まれてい
る。
【0003】なお、Seは、処理剤による不溶化処理が
容易な4価のSe(主形態:亜セレン酸SeO3 2-
と、不溶化処理が困難な6価のSe(主形態:セレン酸
SeO 4 2- )として存在し、特に6価のSeは溶解度が
高く(20℃での溶解度95%)溶出しやすい。また、
このSeは、ヒ素化合物に類似した毒性を持ち、海外で
障害の事例や排出規制があるため、我が国でも新た規制
項目に加わり、環境基準(0.01mg/l)、排水基
準(0.1mg/1)、埋立処分に関する溶出基準
(0.3mg/1)が制定されている。
【0004】図3は、この種の排煙処理システムの従来
例(石炭焚きボイラ用の排煙処理システムの例)し示し
ている。図3において、石炭焚きボイラ1から出る排煙
Aは、この場合ボイラ1の後流に設けられた脱硝装置2
で窒素酸化物(NOX )を除去され、エアヒータ3及び
ガスガスヒータ(GGH)の熱回収部4を通過した後、
電気集塵機5(EP)に導入されてフライアッシュ等の
粉塵が取除かれる。次いで排煙は、ファン6により湿式
排煙脱硫装置7に導かれ、この脱硫装置7において亜硫
酸ガスを除かれた後にガスガスヒータ(GGH)の再加
熱部8を通過した後、ファン9により煙突10に導かれ
てこの煙突10から大気中に放出されるように構成され
ている。そして、電気集塵機5で取除かれたフライアッ
シュ等の粉塵は、電気集塵機5に形成された複数のホッ
パ5a(粉塵回収部)から排出され、コンベア11によ
り一括して搬送されて回収される構成となっている。な
お、このように回収された粉塵Bは、例えばセメント原
料等として再利用されるか、あるいは灰捨て場に捨てら
れる。
【0005】なおここで、脱硫装置7は、例えば、排煙
が導入される吸収塔を備え、この吸収塔において、排煙
と吸収剤スラリ(通常、カルシウム化合物含有スラリ)
とを接触させることにより、排煙中の亜硫酸ガスを吸収
する湿式のもので、通常吸収塔内のスラリから副生物と
して石膏を分離生成するものである。また、ガスガスヒ
ータ(GGH)の熱回収部4は、図4に示すように脱硫
装置7の直前に配置される場合もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
排煙処理システムでは、石炭中のSe(排煙中のSe)
のほとんどが、エアヒータ3等の後流側(すなわち、電
気集塵機5に導入される前の位置)で凝縮し、排煙中の
粉塵に含まれた状態で電気集塵機5により取除かれ、そ
のまま廃捨て場の廃棄物中又はセメント原料等の中に混
在することになる。このため、前記溶出基準等を遵守し
てSeの無害化を図るためには、この電気集塵機5で取
除かれた灰を例えば多量の水で希釈するといった面倒で
コストのかかる後処理が必要となるという問題があっ
た。本発明者らはこのような問題点を解決する方法とし
て、排煙を350℃以下に冷却する冷却手段と、排煙中
の粉塵を分離する集塵手段と、この集塵手段により分離
された粉塵に水及びSeの不溶化処理剤を加えて粉塵中
のSeを不溶化するSe処理手段とを備えた排煙処理シ
ステムを提案した(特願平7−72779号)。このシ
ステムによれば排煙中のSeを容易に無害化することが
できるが、分離回収した粉塵に水を加えてスラリ化し、
不溶化処理剤を添加混合してSeを不溶化したのち固液
分離するため、排水処理設備や固液分離装置等の設備、
機器が必要であった。
【0007】本発明は上記従来技術に鑑み、排煙中に含
まれるSeの無害化がさらに容易に達成できる排煙処理
システムを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は次の(1)〜
(4)の構成を有する排煙処理システムである。 (1)排煙中の有害物を除去する排煙処理システムであ
って、排煙を350℃以下に冷却する冷却手段と、排煙
中の粉塵を分離する集塵手段と、この集塵手段により分
離された粉塵にSe溶出防止剤と加湿液又はSe溶出防
止剤の溶液を添加して混合する混合手段とを備えてな
り、前記集塵手段が、粉塵を分離回収する回収部が排煙
の入口側から出口側に向って複数の回収部が設けられ、
排煙の入口側の回収部から回収される粉塵と出口側から
回収されるとを別個に分離回収し、出口側で分離回収さ
れた粉塵のみを、前記混合手段に導入するように構成さ
れた集塵装置であることを特徴とする排煙処理システ
(2)排煙中の有害物を除去する排煙処理システムであ
って、排煙を350℃以下に冷却する冷却手段と、排煙
中の粉塵を分離する集塵手段と、この集塵手段により分
離された粉塵にSe溶出防止剤と加湿液又はSe溶出防
止剤の溶液を添加して混合する混合手段とを備えてな
り、前記集塵手段により分離された粉塵を、大粒径なも
のと小粒径なものに分級する分級手段を設け、この分級
手段により分級された小粒径な粉塵のみを、前記混合手
段に導入する構成としたことを特徴とする排煙処理シス
テム
【0009】(3)排煙中の有害物を除去する排煙処理
システムであって、排煙を350℃以下に冷却する冷却
手段と、排煙中の粉塵を分離する集塵手段と、この集塵
手段により分離された粉塵にSe溶出防止剤と加湿液又
はSe溶出防止剤の溶液を添加して混合する混合手段
と、この混合手段でSe溶出防止剤と加湿液又はSe溶
出防止剤の溶液と混合された粉塵を塊状化する塊状化手
段とを備えてなり、前記集塵手段が、粉塵を分離回収す
る回収部が排煙の入口側から出口側に向って複数の回収
部が設けられ、排煙の入口側の回収部から回収される粉
塵と出口側から回収されるとを別個に分離回収し、出口
側で分離回収された粉塵のみを、前記混合手段に導入す
るように構成された集塵装置であることを特徴とする排
煙処理システム。
【0010】(4)排煙中の有害物を除去する排煙処理
システムであって、排煙を350℃以下に冷却する冷却
手段と、排煙中の粉塵を分離する集塵手段と、この集塵
手段により分離された粉塵にSe溶出防止剤と加湿液又
はSe溶出防止剤の溶液を添加して混合する混合手段
と、この混合手段でSe溶出防止剤と加湿液又はSe溶
出防止剤の溶液と混合された粉塵を塊状化する塊状化手
段とを備えてなり、前記集塵手段により分離された粉塵
を、大粒径なものと小粒径なものに分級する分級手段を
設け、この分級手段により分級された小粒径な粉塵のみ
を、前記混合手段に導入する構成としたことを特徴とす
る排煙処理システム。
【0011】
【作用】本発明の排煙処理システムでは、排煙中のSe
のほとんどが、冷却手段により冷却されて凝縮し、粉塵
に含まれた状態で集塵手段により除去される。そして、
この集塵手段により分離された粉塵には、混合手段によ
りSe溶出防止剤と加湿液又はSe溶出防止剤の溶液が
加えられてその粉塵中のSeの存在形態が不溶性の化合
物に変換される。このため、粉塵を従来と同様に廃棄処
理しても、Seの溶出基準等がクリアされ、面倒な後処
理を行わなくてもSeの無害化が容易に可能となる。し
かも、加湿液とSe溶出防止剤又はSe溶出防止剤の溶
液を加えて粉塵とSe溶出防止剤とを混合するか、さら
にその混合物を塊状化する構成であるため、粉塵をスラ
リ化してSe不溶化剤を混合しその後固液分離して廃棄
する場合に比し、排水(ろ液)処理設備や固液分離機等
の大掛かりな設備又は機器を設ける必要がなくなるとと
もに、粉塵の廃棄処理等における取扱いがさらに容易に
なる。
【0012】また、集塵手段における排煙の出口側の特
定の回収部から分離回収された粉塵のみを混合手段に導
入して不溶化処理するようにすることで、Se溶出防止
剤の必要量や混合手段及び塊状化手段の容量等が低減で
き、Seの無害化をより容易かつ安価に行うことができ
る。すなわち、発明者らの研究によれば、出口側の特定
の回収部から分離回収されるより粒径の小さい粉塵
(灰)にSeがより多量に含有されて(付着して)いる
ことが判明しており、この粒径の小さい粉塵に対しての
み不容化処理を施すだけでも、全体としてはSeの無害
化が可能となる。
【0013】さらに同じ理由により、分級手段により分
級された小粒径な粉塵のみをSe不溶化処理するように
することで、Se溶出防止剤の必要量や混合手段及び塊
状化手段の容量等が低減でき、Seの無害化がより容易
かつ経済的となる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。第1実施例 図1はこの第1実施例の排煙処理システムの要部構成を
示した図である。この排煙処理システムは図1に示すよ
うに、石炭焚きボイラ20から出る排煙Aを冷却する冷
却装置21(冷却手段)と、この冷却装置21の後流に
配されて、排煙A中のフライアッシュ等の粉塵を集塵し
て排煙から分離する電気集塵機22(集塵手段、分級手
段)と、電気集塵機22から排出された排煙(粉塵が除
去されたもの)を後工程に供給するファン23とを備え
ている。そして、電気集塵機22の粉塵排出側には、粉
塵にSe溶出防止剤Cと加湿液Dを添加して混合するミ
キサ25(混合手段)と、ミキサ25から導出された粉
塵を塊状に成形するプリケッティングマシン26(塊状
化手段)と、プリケッティングマシン26により塊状に
成形された粉塵(以下、塊状粉塵という)を取扱いに適
した大きさに砕くグラニュレータ27(解砕手段)と、
このグラニュレータ27により砕かれた塊状粉塵のうち
適正な大きさのもののみをふるい分けするスクリーン2
8(分級手段)とが順に設けられている。
【0015】なお、ファン23により送られた排煙から
亜硫酸ガスを除去する脱硫装置を、例えば図3,4に示
した従来例のように設けてもよい。また、従来のエアヒ
ータやガスガスヒータを上記冷却装置21として機能さ
せることもできることはいうまでもない。また、スクリ
ーン28で分級された塊状粉塵のうち、適正な大きさの
塊状粉塵Eは、そのまま廃棄又は再利用され、小さすぎ
る塊状粉塵Fは、ミキサ25に戻され、大きすぎる塊状
粉塵Gは再度グラニュレータ27に送られる構成となっ
ている。
【0016】冷却装置21は、例えば出口ガス温度を1
50〜400℃の範囲で設定できるもので、排煙中のS
eが十分に凝縮する温度まで排煙が冷却されるように温
度設定されていればよい。具体的には,排煙を350℃
以下、好ましくは310℃以下に冷却するように温度設
定しておく。
【0017】電気集塵機22は、粉塵を分離回収する複
数のホッパ31〜34(回収部)を有しており、これら
ホッパ31〜34が排煙の入口側(上流側)から出口側
(後流側)に向って順次形成されたもので、このような
構成により、入口側のホッパからより大粒径な粉塵が回
収され、出口側のホッパからより小粒径な粉塵が回収る
ようになっている。そしてこの場合、電気集塵機22に
おける複数のホッパ31〜34のうち、排煙の出口側の
特定のホッパ33,34から分離回収された粉塵B3,
B4のみをミキサ25に導入してSe不溶化処理し、残
りの粉塵B1,B2を廃棄処理等する構成としている。
【0018】ミキサ25は、この場合投入された粉塵、
Se溶出防止剤C及び加湿液Dを混合して排出する機能
を有するもので、例えば投入物を攪拌しつつ排出側に送
り出す攪拌羽根を内部に有するものである。ここで、S
e溶出防止剤Cとしては、Seと反応して不溶化する薬
剤が必要で、除去しようとするSeとして少なくとも4
価のSe(主形態:亜セレン酸SeO3 2- )がある場合
には、例えばFeCl3 又はFe2 (SO4 3 を用い
ることができる。
【0019】なお、排煙中に6価のSe(主形態:セレ
ン酸SeO4 2- )が存在し溶出基準等をクリアするため
にこれも不溶化する必要がある場合には、処理剤とし
て、この6価のSeを4価のSeにする還元剤を上記薬
剤と共に投入すればよい。還元剤としては、例えばSO
2 を水に吹き込んで得られる亜硫酸水などが好適に使用
できる。なお、湿式脱硫装置が併設されている場合、脱
硫装置でSO2 を吸収し、未反応の亜硫酸を含むスラリ
あるいは循環水を抜き出して使用するのが好都合であ
る。
【0020】また、Se溶出防止剤Cの投入量は、後述
する反応(反応式(1),(2)又は(3),(4))
により粉塵中のSeを全量不溶化するための化学量論的
当量よりも若干多めに設定すればよい。
【0021】加湿液Dとしては、通常の工業水のほか例
えば脱硫装置のスラリあるいは循環水を利用することが
できるが、その投入量は、粉塵の取扱を容易とするか、
さらに圧密化して塊状に成形するための必要最低限の量
でよい。例えば、粉塵の量が15t/hの場合、FeC
3 を150kg/h程度投入し、加湿水を0.79t
/h程度投入すればよい。なお、ここで加湿液として脱
硫装置でSO2 を吸収し、未反応の亜硫酸を含むスラリ
あるいは循環水を使用し、溶解している亜硫酸を6価の
Seを4価のSeに還元する還元剤として作用させるこ
ともできる。
【0022】また、Se溶出防止剤Cは、加湿液Dとと
もに投入して添加するのではなく、予め溶液化したもの
を添加してもよい。この場合、その溶液濃度は0.05
〜5重量%程度とするのが好ましく、またその添加量は
粉塵に対して0.5〜10重量%程度とすればよい。こ
のようにすれば、Seの大部分を不溶化し、しかもろ液
を排出することなく粉塵の取扱が容易となり、さらに塊
状化する場合には円滑に圧密化して塊状に成形すること
ができる。また、混合を円滑に行うために、ミキサ内に
おいてSe溶出防止剤Cの溶液等を粉塵に噴霧して添加
するようにしてもよい。
【0023】以上のように構成された排煙処理システム
においては、以下のようにして、粉塵除去処理及びこの
粉塵中に多量に含まれるSeの無害化処理が行われる。
すなわち、ボイラ20を出た排煙Aは、まず冷却装置2
1により350℃以下に冷却されるため、少なくともこ
の冷却装置21の後流側においては、排煙中のSeが凝
縮してその大部分が排煙中の粉塵を構成する灰に付着す
る。そしてこの粉塵は、電気集塵機22で分離回収さ
れ、排煙の入口側の特定のホッパ31,32から分離回
収された粉塵B1,B2が廃棄処理等される一方、排煙
の出口側の特定のホッパ33,34から分離回収された
粉塵B3,B4のみがミキサ25に導入される。
【0024】ミキサ25又はその後のプリケッティング
マシン26では、導入された粉塵中に含まれる4価のS
e(主形態:亜セレン酸SeO3 2- )が、Se溶出防止
剤C(FeCl3 又はFe2 (SO4 3 )と以下の反
応式(1),(2)又は(3),(4)で示される反応
を起こして亜セレン酸鉄(Fe2 (SeO3 3 )とな
り不溶化する。なお、6価のSe(主形態:セレン酸S
eO4 2- )が存在している場合には、前述したように還
元剤が投入されているから、この6価のSeは、還元剤
と反応して4価のSeとなった後、やはり以下の反応式
(1),(2)又は(3),(4)で示される反応を起
こして不溶化する。
【化1】 FeCl3 →Fe3+ + 3Cl- (1) 2Fe3+ + 3SeO3 2- →Fe2 (SeO3 3 ↓ (2) 又は Fe2 (SO4 3 →2Fe3+ + 3SO4 2- (3) 2Fe3+ + 3SeO3 2- →Fe2 (SeO3 3 ↓ (4)
【0025】このため、ほとんどのSeは、亜セレン酸
鉄として塊状粉塵E中に不溶化されて混入されることに
なる。したがって、塊状粉塵Eをそのまま灰捨て場に廃
棄しても溶出基準等を満足できる。なお、電気集塵機2
2の特定のホッパ31,32から分離回収された粉塵B
1,B2は、Se濃度が低いので、やはりそのまま灰捨
て場に廃棄しても溶出基準等を満足できる。
【0026】以上説明したように、この第1実施例の排
煙処理システムによると、従来のような面倒な後処理を
行わなくても、排煙中のSeを、粉塵とともに除去し、
最終的にはそのほとんどを上記塊状粉塵E中に不溶化さ
せて存在させそのまま廃棄等することができる。しか
も、加湿液を加えて粉塵とSe溶出防止剤とを混合し、
その後塊状化する構成であるため、粉塵をスラリ化して
不溶化剤を混合しその後固液分離して廃棄する場合に比
し、排水(ろ液)処理設備や固液分離機等の大掛かりな
設備又は機器を設ける必要がなくなるととにも、粉塵の
廃棄処理等における取扱いがさらに容易になる。なお、
廃棄処理等に際し特に必要ない場合には塊状化の工程を
省略することができるのでさらに簡便なシステムとな
る。
【0027】また、この場合には、排煙の出口側の特定
のホッパ33,34から分離回収された粉塵B3,B4
のみがSe不溶化処理されることで、Se溶出防止剤C
の必要量やミキサ25(混合手段)及びプリケッティン
グマシン26(塊状化手段)等の容量等が低減でき、S
eの無害化がより容易かつ安価に可能となる効果があ
る。すなわち、前記のように、出口側の特定の回収部か
ら分離回収されるより粒径の小さい粉塵(灰)にSeが
より多量に含有されて(付着して)いるので、この粒径
の小さい粉塵に対してのみ不溶化処理を施すだけでも、
全体としてはSeの無害化が可能となり、設備コスト及
び運転コスト低減等に貢献できる効果がある。
【0028】次に、図1のシステムの構造の電気集塵機
により集塵実験を行った結果を説明する。実験は、3m
g/kgのSeを含む石炭を25kg/hで燃焼炉に供
給し、燃焼炉から排出される200m3 N/hの排煙を
150℃まで冷却して電気集塵機に導入して行った。こ
の場合、電気集塵機により99%以上の粉塵が捕集され
(Seの捕集率約99.4%)、各ホッパから回収され
た粉塵の総量は3.4kg/hであった。そして、ホッ
パ31,32又はホッパ33,34で回収される粉塵
(回収灰)の搬出量、平均粒径及び溶出Se濃度は、そ
れぞれ表1に示すとおりであった。なお、ここでいう溶
出Se濃度は、粉塵中のSe濃度を環境庁告示13号に
準拠した溶出試験及び原子吸光法により分析したもの
で、粉塵中に含まれ前記溶出試験により溶出するSeの
量を示す。
【0029】
【表1】
【0030】すなわち、排煙の出口側のホッパ33,3
4から分離回収された粉塵B3,B4は、搬出量が1.
14kg/hと少ないが、溶出Se濃度は0.49mg
/リットルと埋立処分に関する溶出基準(0.3mg/
リットル)を大きく上回っていた。しかし、排煙の入口
側のホッパ31,32から分離回収された粉塵B1,B
2は、搬出量が2.27kg/hと多いが、溶出Se濃
度は0.20mg/リットルと低く基準を下回ってい
た。このため、排煙の入口側のホッパ31,32から分
離回収された粉塵B1,B2は、そのまま廃棄処理等で
きることが分る。つまり、搬出量が約2倍多い排煙の入
口側の粉塵のSe不溶化処理が不要となるから、Se溶
出防止剤Cの必要量やミキサ25等の容量等が格段に節
約できることが明らかである。
【0031】なお、ことのような溶出Se濃度の違い
は、粉塵(灰)の粒径に起因しているものと考えられ
る。すなわち、ガス状のSe(SeO2 )が凝縮して粉
塵を構成する灰の表面に付着する際、小さい粒径の灰は
単位重量当たりの比表面積が大きいから、より多くのS
eが付着することになる。一方、上述したような電気集
塵機等の除塵装置においては、排煙の入口側で粗粒灰が
捕集され易く、排煙の出口側で微粒灰が捕集され易いの
であって、いわゆる分級機能を有するので、排煙の出口
側で捕集された粉塵中の溶出Se濃度が高くなると考え
られるのである。
【0032】第2実施例 次に、本発明の他の実施例である第2実施例について説
明する。なお、第1実施例と同様の構成要素について
は、同符号を使用してその説明を省略する。図2は、こ
の第2実施例の排煙処理システムの要部構成を示した図
である。この実施例の排煙処理システムは、電気集塵機
22により捕集され一括して搬送された粉塵B1〜B4
を、大粒径なもの(以下、粗粒灰という)B5と小粒径
なもの(以下、微粒灰という)B6とに分級する分級装
置51(分級手段)を設け、この分級装置51により分
級された微粒灰B6のみを微粉捕集装置52で捕集しミ
キサ25に導入してSe不溶化処理する構成としてい
る。なお、この場合一括して搬送された粉塵B1〜B4
は、空気Hで搬送されて分級装置51に導入される構成
となっている。また、分級装置51は、例えばサイクロ
ンにより構成でき、分級程度が調節できる形式のもので
あれば便利である。さらに、微粉捕集装置52として
は、この場合バグフィルターを使用している。
【0033】この場合には、微粒灰B6のみがSe不溶
化処理されることで、第1実施例と同様に、Se溶出防
止剤Cの必要量やミキサ25等の容量等が低減でき、S
eの無害化がより容易かつ安価に可能となる効果があ
る。また、この排煙処理システムであれば、図3,4に
示した従来の排煙処理システムに対して、ミキサ25等
や分級装置51等のみを追加すれば、電気集塵機22に
より捕集された粉塵を搬送するコンベア等の構成はその
ままでシステムが構成できて、排煙中のSeの無害化が
可能になり、既存の排煙処理システムの改造が容易であ
るとともに、新規にこのシステムを設置する場合でも従
来の設計又は設備がそのまま使用できるという効果もあ
る。
【0034】次に、図2のシステムの構造の電気集塵機
により集塵実験を行った結果を説明する。実験は、3m
g/kgのSeを含む石炭を25kg/hで燃焼炉に供
給し、燃焼炉から排出される200m3 N/hの排煙を
150℃まで冷却して電気集塵機に導入して行った。こ
の場合、電気集塵機により99%以上の粉塵が捕集さ
れ、各ホッパから回収される粉塵の総量は3.4kg/
hであった。そして、粗粒灰B5と微粒灰B6の捕集
量、平均粒径及び溶出Se濃度は、それぞれ表2に示す
とおりであった。
【0035】
【表2】
【0036】すなわち、微粒灰B6は、平均粒径ガ5.
4μmであり、捕集量が1.30kg/hと少ないが、
溶出Se濃度は0.36mg/リットルと前記基準を上
回っていた。しかし、粗粒灰B5は、平均粒径が13μ
mであり、捕集量が2.05kg/hと多いが、溶出S
e濃度は0.26mg/リットルと低く基準を下回って
いた。このため、粗粒灰B5は、そのまま廃棄処理等で
きることが分る。つまり、搬出量が格段に多い粗粒灰B
5のSe不溶化処理が不要となるから、Se溶出防止剤
Cの必要量やミキサ25等の容量等が格段に節約できる
ことが明らかである。
【0037】なお、本発明は以上説明した実施例に限ら
れず各種の態様が有り得る。例えば、Se溶出防止剤と
しては、FeCl3 又はFe2 (SO4 3 の他に、キ
レート剤(例えば、ミヨシ樹脂エポラス MX−7)
や、高分子重金属捕集剤(例えば、ミヨシ樹脂エポフロ
ック L−1)等を使用することができる。また、本発
明の集塵手段あるいは分級手段は、上記のような電気集
塵機又はこれに接続された単一のサイクロンに限られ
ず、例えばマルチサイクロンにより本発明の集塵手段及
び分級手段を構成することもできる。また、本発明の排
煙処理システムは従来の脱硫装置を備えた排煙処理シス
テムの一部に組み込んだ構成とすることができる。例え
ば、上記第1実施例において、ファン23により送られ
た排煙から亜硫酸ガスを除去する脱硫装置を、例えば図
3,4に示した従来例のように、設けてもよい。また、
従来のエアヒータやガスガスヒータを本発明の冷却手段
として機能させることもできる。さらに、電気集塵機2
2で分離回収された全ての粉塵を、ミキサ25(混合手
段)に導入して処理する構成としてもよいことはいうま
でもない。
【0038】
【発明の効果】本発明の排煙処理システムによれば、排
煙中のSeのほとんどが冷却手段により冷却されて凝縮
し、粉塵に含まれた状態で集塵手段により除去される。
そして、この集塵手段により分離された粉塵には、混合
手段によりSe溶出防止剤と加湿液若しくはSe溶出防
止剤の溶液が加えられてその粉塵中のSeの存在形態が
不溶性の化合物に変換される。このため、粉塵を従来と
同様に廃棄処理しても、Seの溶出基準等がクリアさ
れ、面倒な後処理を行わなくてもSeの無害化が容易に
可能となる。しかも、加湿液とSe溶出防止剤を添加し
又はSe溶出防止剤溶液を噴霧して粉塵と混合するか、
さらにその混合物を塊状化する構成であるため、粉塵を
スラリ化してSe不溶化剤を混合しその後固液分離して
廃棄する場合に比し、排水(ろ液)処理設備や固液分離
機等の大掛かりな設備又は機器を設ける必要がなくなる
とともに、粉塵の廃棄処理等における取扱いがさらに容
易になる。
【0039】また、集塵手段における排煙の出口側の特
定の回収部から分離回収された粉塵のみあるいは分級手
段により分級された小粒径の粉塵のみを混合手段に導入
して不溶化処理するようにすれば、Se溶出防止剤の必
要量や混合手段及び塊状化手段の容量等が低減でき、S
eの無害化をより容易かつ経済的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の排煙処理システムの要部
構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施例の排煙処理システムの要部
構成を示す図である。
【図3】従来の排煙処理システムの1例を示す図であ
る。
【図4】従来の排煙処理システムの他の例を示す図であ
る。
【符号の説明】
20 ボイラ 21 冷却装置 22 電気集塵機(集塵手段,分級手段) 25 ミキサ(混合手段) 26 プリケッティングマシン(塊状化手段) 31〜34 ホッパ(回収部) 51 分級装置(分級手段) 52 微粉捕集装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 拓 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三菱重工業株式会社 本社内 (72)発明者 越智 英次 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三菱重工業株式会社 本社内 (72)発明者 鵜川 直彦 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22 号 三菱重工業株式会社 広島研究所内 (72)発明者 日野 正夫 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22 号 三菱重工業株式会社 広島研究所内 (72)発明者 沖野 進 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22 号 三菱重工業株式会社 広島研究所内 (72)発明者 春木 隆 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22 号 三菱重工業株式会社 広島研究所内 (72)発明者 高品 徹 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22 号 三菱重工業株式会社 広島研究所内 (56)参考文献 特開 平4−61907(JP,A) 特開 平6−277646(JP,A) 特開 平6−154723(JP,A) 特開 平6−79254(JP,A) 特開 昭51−135174(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/34 B09B 3/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 排煙中の有害物を除去する排煙処理シス
    テムであって、排煙を350℃以下に冷却する冷却手段
    と、排煙中の粉塵を分離する集塵手段と、この集塵手段
    により分離された粉塵にSe溶出防止剤と加湿液又はS
    e溶出防止剤の溶液を添加して混合する混合手段とを備
    えてなり、前記集塵手段が、粉塵を分離回収する回収部
    が排煙の入口側から出口側に向って複数の回収部が設け
    られ、排煙の入口側の回収部から回収される粉塵と出口
    側から回収されるとを別個に分離回収し、出口側で分離
    回収された粉塵のみを、前記混合手段に導入するように
    構成された集塵装置であることを特徴とする排煙処理シ
    ステム。
  2. 【請求項2】 排煙中の有害物を除去する排煙処理シス
    テムであって、排煙を350℃以下に冷却する冷却手段
    と、排煙中の粉塵を分離する集塵手段と、この集塵手段
    により分離された粉塵にSe溶出防止剤と加湿液又はS
    e溶出防止剤の溶液を添加して混合する混合手段とを備
    えてなり、前記集塵手段により分離された粉塵を、大粒
    径なものと小粒径なものに分級する分級手段を設け、こ
    の分級手段により分級された小粒径な粉塵のみを、前記
    混合手段に導入する構成としたことを特徴とする排煙処
    理システム。
  3. 【請求項3】 排煙中の有害物を除去する排煙処理シス
    テムであって、排煙を350℃以下に冷却する冷却手段
    と、排煙中の粉塵を分離する集塵手段と、この集塵手段
    により分離された粉塵にSe溶出防止剤と加湿液又はS
    e溶出防止剤の溶液を添加して混合する混合手段と、こ
    の混合手段でSe溶出防止剤と加湿液又はSe溶出防止
    剤の溶液と混合された粉塵を塊状化する塊状化手段とを
    備えてなり、前記集塵手段が、粉塵を分離回収する回収
    部が排煙の入口側から出口側に向って複数の回収部が設
    けられ、排煙の入口側の回収部から回収される粉塵と出
    口側から回収されるとを別個に分離回収し、出口側で分
    離回収された粉塵のみを、前記混合手段に導入するよう
    に構成された集塵装置であることを特徴とする排煙処理
    システム。
  4. 【請求項4】 排煙中の有害物を除去する排煙処理シス
    テムであって、排煙を350℃以下に冷却する冷却手段
    と、排煙中の粉塵を分離する集塵手段と、この集塵手段
    により分離された粉塵にSe溶出防止剤と加湿液又はS
    e溶出防 止剤の溶液を添加して混合する混合手段と、こ
    の混合手段でSe溶出防止剤と加湿液又はSe溶出防止
    剤の溶液と混合された粉塵を塊状化する塊状化手段とを
    備えてなり、前記集塵手段により分離された粉塵を、大
    粒径なものと小粒径なものに分級する分級手段を設け、
    この分級手段により分級された小粒径な粉塵のみを、前
    記混合手段に導入する構成としたことを特徴とする排
    処理システム。
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