JP3291841B2 - β−クロロエタンスルホン酸ソーダの精製方法 - Google Patents

β−クロロエタンスルホン酸ソーダの精製方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、β−クロロエタンスル
ホン酸ソーダ(以下CESと称す)の精製に関する。
【0002】CESは、β位に塩素を有し、このβ位の
塩素が非常に反応性に富み、各種のアルキルスルホン酸
化合物を合成する際の原料として有用な中間体であり、
その高純度品の安価大量入手が望まれている。このCE
Sから誘導される化合物の数例をあげると、例えば、C
ESをアンモニアと反応せしめて得られる、β位塩素が
アミノ基に置換された、β−アミノエタンスルホン酸
(NH3 +−C24SO3 -)は、“タウリン”と通称され
る医薬原体である。
【0003】β位の塩素がメチルアミノ基に置換された
β−メチルアミノエタンスルホン酸ソーダは、これを脂
肪酸もしくは脂肪酸クロライドと反応せしめると、N−
メチルアシルタウリドを合成することができ、このN−
メチルアシルタウリドは界面活性剤として有効な“Ig
epon−T”の名称で古くから知られた洗浄剤であ
る。
【0004】そのほか、β位の塩素をメカプト基に置換
した、メカプトエタンスルホン酸ソーダはMesNaと
称される医薬原体である。更に、CESを苛性ソーダ等
アルカリ水酸化物で脱塩酸して得られるビニルスルホン
酸ソーダは、アクリルニトリル繊維の染色改良剤として
用いられる。
【0005】
【従来の技術】CESは、式により1,2ジクロロエ
タン(以下EDCと称す)と亜硫酸ソーダ(以下亜硫曹
と称す)を原料とし、水もしくはアルコール性水溶液を
反応媒体として合成される(Ing.&Eng.Chem.,39 906〜
9(1947) Chem.Abstr.53 11.231g(1959) )。
【0006】 ClC24Cl+Na2SO3 → ClC24SO3Na+NaCl もしくは、式により、ビニルクロライド(以下、VC
Mと称す)と重亜硫酸ソーダ(以下、重亜硫曹と称す)
から合成される。(米国特許第2,600,287号) CHCl=CH2+NaHSO3 → ClC24SO4Na この際、重亜硫曹も加熱により、亜硫酸ガスを放出し、
一部亜硫曹を副生するので、いずれの方法によっても、
生成CESと亜硫曹との間に式に示す副反応を引き起
こし、その結果、このようにして得られたCES合成液
は副生物として、食塩のほか1,2エタンジスルホン酸
ソーダ(以下EDSと称す)を含んだ液として得られ
る。
【0007】ClC24SO3Na+Na2SO3 → NaO3SC24SO3Na+NaCl 上記合成反応は、このEDSの副生を抑制するため各種
の工夫がなされているが、それでもEDSの副生を皆無
にすることは不可能であり、通常空時収率を考慮し、合
成液はEDSをEDS/CES(wt/wt)=0.0
3〜0.17程度含むところとなる。
【0008】即ち、EDCと亜硫曹、もしくはVCMと
重亜硫曹の反応により得られる合成液は、未反応のED
Cと亜硫曹、もしくは未反応のVCMと重亜硫曹、反応
媒体、CES、食塩、EDSからなる液として得られ
る。
【0009】このうち、EDC、もしくは、VCMは蒸
留により系外に留去され、回収、循環使用され、亜硫曹
はその一部がCESと反応しEDSとなり、又一部は、
自然酸化されて芒硝となるので、CESの精製に用いら
れる液はCESと食塩のほか少量のEDSと芒硝を含む
水溶液組成となる( 以下、単にこれをCES合成水溶液
と称す)。
【0010】このようにして得られるCESにあって、
EDSのCESへの混入は好ましくなく、出来るだけ抑
制する必要がある。
【0011】本発明者らの経験によれば、CESから前
項に記した各種誘導体を製造する際、EDSが混入した
CESを用いた場合、その合成反応の工程ではEDSは
不活性であり、何ら支障ないが、その精製工程に於い
て、EDSが微結晶となり、その粘度を著しく高めると
いう厄介な現象を呈するので、この点からも好ましくな
い。
【0012】このような現象を踏まえ、CES精製の従
来の技術にあっては、副生食塩のみならず、このEDS
をも除去するためにエタノールに対するCESの溶解性
と、食塩、EDS、芒硝の難溶解性を利用するソックス
レー抽出方法(Ind.&.Eng.Chem.,906〜9(1947))がとられ
たものと考えられる。
【0013】同技術をもう少し詳細に説明すると、同法
はCES合成水溶液を蒸発皿に移し、一度これを蒸発乾
固して、モルタル状固形物とした後、この固形物を95
%エタノールを抽出溶媒とするソックスレー抽出法によ
り水と共沸濃度のHotエタノールでCESを抽出し、
このCESを含むエタノール性溶液を常温に冷却し、C
ESを晶析せしめ、ろ過によりこの晶出CES結晶を固
形物として取得するものであり、高純度のCES結晶を
取得するには、この抽出操作が繰り返される。
【0014】同法の第一の欠点はCESを含む液の蒸発
乾固操作にある。同操作は小規模な実験室的手法として
は、簡便であるが、大量生産を旨とする商業的手法とし
ては、その濃縮途上、晶出物によりスラリー状を呈し、
そのスラリー濃度が著しく高くなると、流動性を失うの
で、極めて困難な操作となる。
【0015】同法の第二の欠点は、高純度のエタノール
を抽出溶媒に用いる点にある。本発明者らの測定によれ
ば、CESは水に対しての溶解度が、約35wt%(2
0℃) 〜57wt%(70℃) と高い値を示すものの、
95%のエタノールに対しては、約0.5wt%(20
℃) 〜7.0wt%(70℃) と非常に低い溶解度であ
るので、CESを95wt%のエタノールで完全に抽出
するには、CES単位重量あたり、少なくとも、その1
3倍重量以上の95%エタノールを必要とし、これは必
然的に設備の大型化を招く結果となる。
【0016】又、前記の蒸発乾固により得られるモルタ
ル状固形物にあっては、CESの一部が95%エタノー
ル難溶性の食塩に包まれた状態になっているものもある
ため、その完全抽出には長大な時間を要し、更には、こ
のモルタル状固形物を完全無水の状態にまで乾燥するこ
とは至難であり、抽出溶媒であるエタノールは回収して
繰り返し使用すると、水分の増加により、その濃度低下
は避けられず、前記無機塩類、EDS等の不純物をも抽
出し、CES晶出結晶にこれら不純物が混入することに
なる。このため大量のエタノールの蒸留等による再精製
設備の併設が必要であるが、これは、工程の複雑化とエ
ネルギーの多消費を招き、経済的には望ましくないもの
である。
【0017】更に、そのエタノール抽出残さは、仮に、
CESを完全抽出したとしても、大量の食塩に少量のE
DSが含まれた形態であり、これをそのまま廃棄するこ
とは、環境保全上許されざるものであり、焼却法により
EDSを無くしてから廃棄するか、もしくは何らかの方
法により、EDSと食塩を分離する等の再処理工程を要
する。
【0018】このように、従来の技術は、少量のCES
結晶をただ1回だけ取得する実験室的サンプル製造方法
としてはともかく、大量生産を目的とする商業的製造方
法としては満足できるものではなかった。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、蒸発
乾固のような運転上の操作の困難さを避け、又高価なエ
タノールを用いることなく、従来の技術であるエタノー
ルによるソックスレー抽出法によるのと同じような高純
度CES結晶を水媒体から取得するCES精製方法の確
立にあり、更には設備のコンパクト化、工程の簡略化、
省エネルギー化をはかり、CESの商業的製造法とし
て、その経済性を高めんとするものであり、更には、狭
雑するEDSをも回収しやすくして、これを有効に利用
するとともに、副次的に得られる芒硝を含む食塩は環境
保全上無害化することを目的としたCESの精製方法の
確立にある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、水を媒
体とした溶解平衡関係を利用し、無機塩、EDS等の不
純物が高度に除かれたCES結晶を晶析、ろ過により取
得する方法にある。
【0021】本発明者らは、20℃と70℃のCES−
NaCl−H2O系溶解平衡の測定を繰り返し行った結
果、該溶解平衡にあって、水を蒸発により系外に排出
し、濃縮すると、約70℃の高温域では、食塩の一部が
選択的に晶出し、この晶出塩を保温下に、ろ過により系
外に排出したろ液を常温に冷却すると、低温域では、C
ESの一部が結晶水を一部含んだ形態で選択的に晶出さ
れ、高純度CES結晶がろ過により取得できることを見
出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0022】更に本発明者らは、上記系にあって、芒硝
は食塩と共に晶出できること、EDSはその溶解度がC
ES同様温度依存性を有するが、その含量がEDS/C
ES(wt/wt)≦0.131であれば、CES晶出
工程では晶出しないこと、並びに、CESがろ過により
系外に排出されEDS濃度が相対的に高められた水溶液
にあっては、食塩、芒硝又はこれらの混合無機塩(具体
的には先の工程で得られた芒硝を含む食塩の一部)を添
加し、無機塩濃度を高めると、これら無機塩とCESを
一部含むものの、今度はEDSの大部分が晶出され、こ
の晶出物をろ過により系外に排出して得られるろ液はE
DS含量がEDS/CES(wt/wt)≦0.131
にできるので、このろ液は元に戻すことができることを
見出したることにより、本発明の技術を完成したるもの
である。
【0023】従って本発明の技術は図1のブロック線図
に示される循環法となる。
【0024】以下、図1にそって、本発明の技術を更に
詳細に説明する。
【0025】本発明にあって、CES水溶液の水の蒸発
は減圧下、望ましくは150〜170mmHgの絶対圧
力下で、更に望ましくは、約160mmHgの絶対圧力
の下で、その沸点が約90℃を、望ましくは、75℃を
越えない温度となるように行うものである。
【0026】水の蒸発を常温下で行った場合、その沸点
は溶解物の沸点上昇作用も加わり、120℃以上に達す
る。このような高温域では、CESの一部が式に示す
加水分解反応を受ける。本発明者らの実験によれば、C
ES水溶液を1時間加熱した場合のCESの分解率は表
1のようになる。
【0027】
【0028】
【表1】
【0029】※供試液:8wt% CES aq.solm. このような分解を避ける目的で、その沸点を下げるため
に、本発明においては、減圧下に濃縮を行うものであ
る。更に減圧度を下げることも可能ではあるが、その場
合、その沸点があまりに低くなると、CESの溶解度も
又低下するため、1サイクル当りのCES取得量が低下
するので望ましくない。
【0030】このように水を蒸発していくにつれ、各溶
解物濃度は濃縮されていき、飽和溶解度に達すると、芒
硝を含んだ食塩が析出し、前記濃縮温度以上の保温下に
ろ過操作を行い、ケーキとして芒硝を含んだ食塩を系外
に排出し、ろ液として無機塩濃度の低められた水溶液を
取得する。ろ過温度が濃縮温度以下ではCESが晶出
し、無機塩に混入してロスとなるので避けなければなら
ない。
【0031】このろ液を常温まで冷却すると、CESを
選択的に晶析することができ、これを常温下ろ過により
系外に排出する。ここで冷却温度を常温とした理由は、
経済的な観点から何ら特別な冷媒を用いることなく、通
常の冷却水で到達できる範囲として選択したものであ
り、15℃〜35℃の範囲であれば良い。
【0032】15℃以下に冷却された場合は、CES析
出に際し、EDS含量にもよるが、EDSがCESに混
入し、高純度CESが取得できなくなることがあるので
避けなければならない。
【0033】又、35℃以上では、1サイクルあたりの
CESの取得量が少なくなるので好ましくない。
【0034】CESを除かれたろ液は、CES濃度が低
下し、相対的にEDS濃度が高められ、EDS/CES
(wt/wt)>>0.131にあるので、このろ液を
回収し、新しい液と混合しても、混合液のEDS含量
が、EDS/CES(wt/wt)>0.131となる
と、CESにEDSが混入し、高純度CESは得られな
い。
【0035】本発明の技術にあっては、このろ液に、そ
のろ液量の4.5wt%以上の食塩ないし、芒硝、又は
これらの混合塩を加えた後、50℃以上、70℃以下に
加熱し、無機塩を全量でなくても、一部溶解し、溶存無
機塩濃度を高めた後、20℃まで冷却して、EDSの一
部を析出せしめ、常温下にろ過して、EDSを含むケー
キを系外に排出し、その脱EDSろ液はEDS量がED
S/CES(wt/wt)≦0.131とすることがで
きるので、回収循環しても、次のサイクルでEDSはC
ESに混入することなく、高純度CES結晶を得ること
ができる。
【0036】此処で、CESを除かれたろ液に加えられ
る無機塩は、先の工程で得られた芒硝を含む食塩ケーキ
の一部を用いることができる。又、EDSを含むケーキ
には、食塩等の無機塩、及び、CESを一部含む形態と
して得られるが、ここで失われるCESはロス分として
問題視するほどの量ではない。
【0037】又、このEDSケーキを亜硫酸ソーダ水溶
液に溶解加熱すれば、混入CESはEDSに変換するこ
とができ、EDSと無機塩とからなる水溶液となるの
で、高純度EDSとして容易に回収できる。
【0038】更に補足すると、各工程でろ過により系外
に排出されるケーキは、ろ液を一部含んだ形態となるの
で、各々に見合った適当量の水で洗浄され、純化される
ものであり、ケーキを洗浄して得られる回収洗浄水は、
前記したEDSを除いたろ液と共に回収循環されること
は、論をまたない。
【0039】本発明によれば、CES合成水溶液はその
分解を防止すべく、減圧下に水を蒸発して濃縮され、含
有物のうち、食塩等無機塩類の一部を晶出する。この晶
出無機塩類はCESが混入しないよう保温下にろ過され
て除かれる。
【0040】そのろ液は始めにEDS/CES(wt/
wt)≦0.131の水溶液を用いたことにより、常温
に冷却すると、EDSを含むことなく、CESの一部を
晶出し、この晶出CES結晶は常温下のろ過により高純
度品として取得される。
【0041】さらにその脱CESろ液に食塩、芒硝等の
無機塩類を加え、加熱溶解し、溶存無機塩類濃度を高め
た液を常温に冷却することによりEDSの一部を晶出せ
しめ、晶出EDSは常温下のろ過により除去され、その
脱EDSろ液はEDS/CES(wt/wt)≦0.1
31とされ、循環使用される。
【0042】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明に
よれば (1)蒸発乾固操作を伴わないので、運転操作が容易に
なる。 (2)エタノール等特別な溶媒を用いなくともよく、労
働環境が安全かつ衛生的となる。 (3)設備がコンパクトになる。 (4)工程が簡略になる。 (5)消費エネルギーが節減できる。 (6)副生物であるEDSの回収ができる。 といった効果が得られる。
【0043】
【実施例】以下、本発明を実施例により、更に詳細に説
明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではな
い。
【0044】実施例1 EDCと亜硫曹の反応により得られた、CES合成水溶
液をイオンクロマトグラフィーにより分析したところ、
CES=15.35wt%、EDS=2.00wt%、
芒硝=1.30wt%、食塩=7.04wt%の組成を
有するものであった。
【0045】この水溶液1686.4gを2リットルの
硝子製セパラブルフラスコに入れ、撹拌下、オイルバス
に浸漬して加熱し、絶対圧200mmHgの減圧下、水
を蒸発して濃縮した。蒸発水は、コンデンサーを通して
冷却、凝縮して目盛付硝子シリンダに捕集した。蒸発水
が約440mlとなった時点で、水溶液の沸点が70.
5℃になったので減圧度を上げ、絶対圧を165mmH
gとして、さらに濃縮を続けた。蒸発水量が約885m
lになった時点で、水溶液は固形物を析出しその沸点は
72.5℃を示した。
【0046】この時点で濃縮を中止し、このスラリーを
約80℃の温水をジャケットに循環し、保温された卓上
型遠心ろ過機によりろ過をした。
【0047】ろ過ケーキは、15.6gの洗浄水で洗浄
し、計量したところ13.2gであった。このケーキを
かき出し、イオンクロマトグラフィーで分析したとこ
ろ、CES=0.31wt%、EDS=0.04wt
%、芒硝=91.97wt%、食塩=0.14wt%で
あった。
【0048】上記脱塩ろ液は時間の経過につれ、底部に
少量の固形物を沈澱し、液面にかなりの固形物が見られ
たので、撹拌下約75℃に再加熱したところ、透明液と
なったので、これをウォーターバスに浸漬して、20℃
まで冷却したところ、大量の固形物が晶析されたスラリ
ーとなった。このスラリーを室温で、卓上型遠心ろ過機
によりろ過をしたところ、ろ液は694.7gであり、
ろ過ケーキを37.6gの室温水で洗浄して、200.
3gの洗浄ケーキを得た。
【0049】この洗浄wetケーキの分析値は、CES
=82.84wt%、EDS=0.20wt%、芒硝<
0.05wt%、食塩=0.09wt%であり、このw
etケーキ183.1gを50℃に設定された真空乾燥
機に入れ乾燥したところ、154.2gになり、その分
析値はCES=97.98wt%、EDS=0.24w
t%、芒硝<0.05wt%、食塩=0.12wt%で
あった。
【0050】上記脱CESろ液に先の工程で得た無機塩
ケーキ6.1gと食塩26.9gを加え、撹拌下、70
℃まで加熱したが、添加無機塩は完全には溶解はしなか
った。この液を再び20℃まで冷却したところ、固形物
は増加した。このスラリー液を室温で卓上型遠心ろ過機
にかけ、ろ過したところ、ろ液676.1gと遠心ケー
キを得た。
【0051】この遠心ケーキを17.1gの室温水で洗
浄し、洗浄ケーキ38.1gを得た。洗浄ケーキの分析
値はCES=3.82wt%、EDS=52.69wt
%、芒硝17.41wt%、食塩=14.68wt%で
あり、ろ液はCES=10.57wt%、EDS=1.
06wt%、芒硝=1.02wt%、食塩=19.28
wt%であった。
【0052】又、この脱EDSろ液に、各ろ過工程で得
られた回収洗浄水を加えた液、726.5gの分析値
は、CES=11.04wt%、EDS=1.27wt
%、芒硝=1.01wt%、食塩=18.32wt%で
あった。
【0053】即ち、当実験では、EDS/CES(wt
/wt)=0.130の水溶液を減圧下に濃縮し、高温
域のろ過により、芒硝を除き、その脱塩ろ液を冷却する
ことにより得られたwetケーキを乾燥し、CES=9
7.98%その他不純物≦0.41%の高純度CES粉
末を取得し、この脱CESろ液に無機塩類を加えること
によりEDSを除き、全回収液として、EDS/CES
(wt/wt)=0.115の液を回収した。この回収
液はEDS/CES(wt/wt)<0.131である
ので循環使用できる性状である。
【0054】実施例2 実施例1で得られた回収液726.5gのうち、71
6.4gと、実施例1と同一組成の新しい液1171.
1g を混合し、実施例1の場合と同様に、CES含量を
258.9gとして、同様の実験を行った。
【0055】水の蒸発による濃縮は、絶対圧165mm
Hgの減圧下で、その沸点が72.5℃になるまで行っ
たところ、蒸発水は840mlであり、その濃縮スラリ
ーを保温下に遠心ろ過し、水洗して、洗浄無機塩ケーキ
111.4gを得た。洗浄無機塩ケーキのイオンクロマ
トグラフィーによる分析値は、CES=0.11wt
%、EDS=trace 、芒硝=10.47wt%、食塩=
77.14wt%であった。
【0056】上記脱塩ろ液を実施例1の場合と同様、7
5℃まで加温して、透明液とした後、再び20℃まで冷
却して、CESを晶析し、遠心ろ過し、水洗したとこ
ろ、洗浄CESケーキ199.0g、脱CESろ液68
5.6gを得た。
【0057】wetの洗浄CESケーキの分析値は、C
ES=82.55wt%、EDS=0.20wt%、芒硝<
0.05wt%、食塩=0.09wt%で、この洗浄w
etケーキ181.5gを減圧乾燥して、152.6g
を得た。この乾燥粉末の分析値は、CES=98.19
wt%、EDS=0.27wt%、芒硝=trace 、食塩
=0.14wt%、水分=1.30wt%であった。
【0058】脱CESろ液に、この実施例の先の工程で
得られた洗浄無機塩ケーキ32.6gを加え、70℃ま
で昇温後、再び20℃まで冷却して遠心ろ過したとこ
ろ、洗浄EDSケーキ=55.9gを得、ろ液=66
2.3gを得た。洗浄EDSケーキの分析値はCES=
8.41wt%、EDS=50.38wt%、芒硝=1
2.57wt%、食塩=8.28wt%であった。
【0059】この脱EDSろ液の分析値はCES=1
0.50wt%、EDS=1.05wt%、芒硝=1.
06wt%、食塩=19.28wt%であった。このろ
液に各ろ過工程でのケーキ洗浄回収水を加えた液は合計
すると779.4gとなり、その組成はCES=11.
04%、EDS=1.38%、芒硝=1.00%、食塩
=18.00%となった。
【0060】即ち、当実験は実施例-1の回収液を新しい
液と混合し、繰り返し精製実験を行ったものであるが、
EDS/CES(wt/wt)=0.126の水溶液を
減圧下に濃縮し、高温のろ過により、芒硝の混入した食
塩を除き、その脱塩ろ液を冷却して得たwetケーキを
乾燥し、CES=98.19%、水を除いたその他不純
分=0.51%の高純度CES粉末を取得し、脱塩工程
で得られた無機塩ケーキの一部を脱CESろ液に加え、
EDSを除き、回収液として、EDS/CES(wt/
wt)=0.126の水溶液を回収したことになり、こ
の回収液はEDS/CES(wt/wt)<0.131
であるので循環使用できる性状である。
【0061】比較例1 実施例1と同様の実験で、晶出CESをろ過により除い
たろ液650.0g(組成CES=10.56wt%、
EDS=4.43wt%、食塩=16.04wt%、芒
硝=1.24wt%)を実施例1に用いたものと同一組
成のCES合成水溶液1239.3gと混合し、EDS
/CES(wt/wt)=0.211の水溶液を実施例
-1の場合と同様に絶対圧165mmHgの減圧下、オイ
ルバスで加熱し、その沸点が72.5℃になるまで濃縮
した。蒸発水量は約805mlで、濃縮スラリー液10
80.3gを得た。
【0062】このスラリー液を保温下で遠心ろ過して、
ろ過ケーキを水23.2gで洗浄し、洗浄塩ケーキ8
1.0gを得た。この洗浄塩ケーキの分析値はCES=
0.11wt%、EDS=0.02wt%、芒硝=1
5.23wt%、食塩=70.47wt%であった。
【0063】上記ろ液を75℃に昇温したのち、20℃
まで冷却してCESを晶析した。
【0064】このスラリー液を室温で遠心ろ過して、ろ
過ケーキは37.6gの水で洗浄して、洗浄CES結晶
249.7gを得た。このwetのCESケーキの分析
値は、CES=74.28wt%、EDS=8.29w
t%、芒硝=trace 、食塩=0.9wt%であり、洗浄
wetケーキ195.1gを減圧乾燥して、乾燥粉末1
63.1gを得た。
【0065】この乾燥粉末の分析値はCES=88.8
5wt%、EDS=9.92wt%、芒硝=trace 、食
塩=0.11wt%であり、脱CESろ液の分析値は、
CES=10.99wt%、食塩=15.97wt%、
EDS=4.34wt%、芒硝=1.29wt%であっ
た。
【0066】即ち、本実験ではEDSが除去されずに蓄
積された回収濾液を循環し、EDS/CES(wt/w
t)>0.131の値である、0.211の水溶液を用
いたので、得られたCESには、芒硝、食塩こそ混入し
ていないものの多量のEDSが混入したものしか得られ
なかった。
【0067】さらに、脱CESろ液はEDS/CES
(wt/wt)=0.395であり、この液を循環使用
すると再び、CESにEDSが混入する性状の液であっ
た。
【0068】比較例2 実施例1で用いたものと同一組成の液250.0gを5
00mlのセパラブルフラスコにとり、これをオイルバ
スに浸漬し、絶対圧200mmHgから100mmHg
の減圧下、水を蒸発した。
【0069】水が約170ml蒸発した時点で、モルタ
ル状固形物となり、もはや水の蒸発は見られなかったの
で、同上操作を中止して、71.6gの蒸発乾固物を得
た。この固形物をスパチュラーで掻出し、ソックスレー
抽出ろ紙に移し、95wt%エタノール550.5gを
用いて、ソックスレー抽出を約6時間行ったところ、抽
出液が白濁したので、抽出操作は止めて、室温に冷却し
た。
【0070】計量の結果、抽出液は588.3gあり、
抽出残さは34.8gであった。抽出残さをソックスレ
ー抽出ろ紙から掻き出し、乾燥したところ29.0gと
なり、このもののイオンクロマトグラフィーによる分析
値は、CES=9.25wt%、EDS=15.55w
t%、芒硝=11.20wt%、食塩=59.13wt
%であった。
【0071】抽出液は常温に冷却するとCESを晶出し
て、スラリーとなったので、このスラリー液を室温で遠
心ろ過し、ろ液544.6g、CESケーキ40.7g
を得た。
【0072】ろ液の分析値はCES=0.59wt%、
EDS=Trace 、芒硝<0.05wt%食塩=0.04
wt%であり、ガスクロマトグラフィーによる分析では
エタノール=93.49wt%であった。
【0073】一方、wetケーキの分析値は CES=
87.17wt%EDS=1.19wt%芒硝<0.0
5wt%、食塩=1.10wt%であった。
【0074】このwetケーキ、34.1gを95%エ
タノール440gを用いて、ソックスレー抽出を繰り返
し行い、30.5gのCESのwetケーキを得た。
【0075】このwetケーキを乾燥し29.4gの粉
末を得た。その分析値はCES=98.11wt%、E
DS=0.17wt%、芒硝<0.05wt%、食塩=
0.12wt%であった。
【0076】即ち、当実験では従来知られたるエタノー
ルを抽出溶媒とするソックスレー抽出法を行った。その
結果1回の抽出では、芒硝は混入しないものの、ED
S、食塩がかなり混入したCESしか得られず、ソック
スレー抽出法を2回繰り返すことにより高純度CESが
得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の精製方法の工程を示したブロ
ック線図である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1,2ジクロロエタンと亜硫酸ソーダある
    いはビニルクロライドと重亜硫酸ソーダの反応により得
    られる不純物無機塩を含んだβ−クロロエタンスルホン
    酸ソーダ水溶液で、且つ、該β−クロロエタンスルホン
    酸ソーダ水溶液に含まれる1,2エタンジスルホン酸ソ
    ーダの含量がβ−クロロエタンスルホン酸ソーダの重量
    に対し、0.131以下の液を用い、高純度β−クロロ
    エタンスルホン酸ソーダ結晶を取得するにあたり、水を
    蒸発して濃縮し、不純物無機塩類を部分的に晶析し、ろ
    過により系外に取り出し、ろ液からβ−クロロエタンス
    ルホン酸ソーダを部分的に晶析し、ろ過により系外に取
    り出し、ろ液に無機塩をろ液重量に対し4.5重量%以
    上の割合で加えた後、70℃まで加熱し、該無機塩の全
    量ないし一部を溶解し、無機塩濃度を高めた後、常温ま
    で冷却することにより、1,2エタンジスルホン酸ソー
    ダの一部を晶出し、この晶出物を常温でのろ過により系
    外に取り出し、前述の各化合物を一部含んだろ液を回収
    して、循環使用することを特徴とするβ−クロロエタン
    スルホン酸ソーダスルホン酸ソーダの精製方法。
  2. 【請求項2】水の蒸発による濃縮工程で、その濃縮液の
    沸点が90℃を越えないよう、濃縮工程を減圧下に実施
    することを特徴とする請求項1に記載のβ−クロロエタ
    ンスルホン酸ソーダの精製方法。
  3. 【請求項3】食塩、芒硝、亜硫酸ソーダからなる無機塩
    の部分的晶出が濃縮工程と並行して実施され、晶出無機
    塩が濃縮温度以上の保温下でろ過により系外に取り出さ
    れることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか
    に記載のβ−クロロエタンスルホン酸ソーダの精製方
    法。
  4. 【請求項4】得られた脱塩ろ液から、β−クロロエタン
    スルホン酸ソーダを晶析するにあたり、脱塩ろ液を常温
    まで冷却することにより、β−クロロエタンスルホン酸
    ソーダの一部を晶出し、この晶出β−クロロエタンスル
    ホン酸ソーダを常温でのろ過により系外に取り出す、請
    求項1から請求項のいずれかに記載のβ−クロロエタ
    ンスルホン酸ソーダの精製方法。
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