JP3291050B2 - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents

自動変速機の変速制御装置

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JP3291050B2
JP3291050B2 JP35924092A JP35924092A JP3291050B2 JP 3291050 B2 JP3291050 B2 JP 3291050B2 JP 35924092 A JP35924092 A JP 35924092A JP 35924092 A JP35924092 A JP 35924092A JP 3291050 B2 JP3291050 B2 JP 3291050B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車に搭載される自動
変速機、特に所定の変速時に、正駆動状態と逆駆動状態
とで異なる摩擦要素が制御対象とされる自動変速機の変
速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に自動車に搭載される自動変速機
は、エンジン出力が入力されるトルクコンバータと、該
トルクコンバータの出力によって駆動される変速歯車機
構とを組み合わせ、この変速歯車機構の動力伝達経路を
複数の摩擦要素の選択的締結によって切り換えることに
より、運転状態に応じて自動的に変速段を切り換えるよ
うに構成されたものであるが、この種の自動変速機にお
いては、所定の変速時に、エンジン側から車輪側へ動力
が伝達される正駆動状態と、車輪側からエンジン側に動
力が伝達される逆駆動状態とで、異なる摩擦要素を対象
として変速制御を行うように構成されることがある。
【0003】つまり、例えば4速から3速へのシフトダ
ウン変速に際し、この変速がアクセルペダルの踏み込み
による所謂トルクディマンド変速である場合には、4速
で締結されていた第1の摩擦要素を解放させると同時
に、エンジン側からの動力によってワンウェイクラッチ
をロックさせることにより3速への変速を完了させ、ま
た、この4−3シフトダウン変速がシフトレバーの操作
によるエンジンブレーキのための所謂マニュアルダウン
変速である場合には、動力の伝達方向が上記トルクディ
マンド変速時とは逆方向であってワンウェイクラッチが
ロックしないから、上記第1の摩擦要素を解放すると同
時に、ワンウェイクラッチに並列に設けられた第2の摩
擦要素を締結させることにより3速への変速を完了させ
るように構成されるのである。
【0004】この場合、前者の正駆動状態での変速時に
は第1の摩擦要素が制御対象とされ、後者の逆駆動状態
での変速時には第2の摩擦要素が制御対象とされ、同一
の変速であるにも拘わらず、駆動状態によって異なる摩
擦要素が制御対象とされるのである。
【0005】また、上記のようなワンウェイクラッチが
関与する変速でない場合であっても、正駆動状態での変
速時と逆駆動状態での変速時とで例えば伝達トルクや最
適変速時間等が異なるため、トルク伝達容量の異なる2
つの摩擦要素を備え、正駆動状態か逆駆動状態かによっ
てこれらの摩擦要素を選択的に制御対象とする場合もあ
りうる。
【0006】なお、変速中における摩擦要素の締結状態
の制御に関する発明として、特開昭61−99753号
公報に開示されたものがある。これは、主変速機の出力
をさらに副変速機で変速するようにした自動変速機にお
いて、主変速機と副変速機とでギヤ比の変化方向が逆方
向となる変速動作が同時に行われる変速時に、主変速機
の変速動作中に副変速機の変速動作を開始させ、かつ完
了させるようにしたものであり、この種の変速を円滑に
行わせるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
に同一の変速であっても、正駆動状態で行われる場合と
逆駆動状態で行われる場合とで異なる摩擦要素を制御対
象とする場合、次のような問題の発生が考えられる。
【0008】つまり、この場合、変速時点の駆動状態が
正駆動状態であるか逆駆動状態であるかを正しく判定す
ることが重要となるが、この判定が不正確であると、例
えば逆駆動状態での変速時に正駆動状態であると誤判断
して変速制御を開始した場合、上記の例では、正駆動状
態での変速時に解放される第1の摩擦要素の制御だけが
行われて、逆駆動状態で締結される第2の摩擦要素の制
御が行われないことになる。この場合、ワンウェイクラ
ッチがロックしないから、変速機がニュートラル状態と
なり、当該自動車が空走するといった不具合が発生する
のである。
【0009】そして、特にこの駆動状態の判定に関して
は、変速動作に伴うエンジン回転数等の運転状態の変化
により、正駆動状態から逆駆動状態へ或はその逆へ駆動
状態が移行する可能性がある場合に、これをどのように
判定するかが困難な問題となるのである。
【0010】ここで、この問題をさらに詳しく説明す
る。
【0011】図15に示すように、今、エンジン回転数
NEがタービン回転数NTよりも高い状態、すなわち正
駆動状態での走行時に、エンジンブレーキを作動させる
ために、ますアクセルペダルを戻し、次いでシフトレバ
ーの操作により変速段を所謂マニュアルダウンさせたも
のとする。そして、アクセルペダルの戻しによりエンジ
ン回転数NEが低下しつつある状態で、時点Aでシフト
ダウンの変速指令が発せられたものとする。この場合、
コントローラは上記時点Aで駆動状態を判定することに
なるが、図示のように、この時点Aでエンジン回転数N
Eがいまだタービン回転数NTよりも高い場合は、該コ
ントローラは正駆動状態にあると判定することになる。
【0012】しかし、エンジン回転数の低下により上記
時点Aの直後には駆動状態は逆駆動状態に移行し、その
ため、実際の変速動作は逆駆動状態のもとで行われるこ
とになるが、上記のようにコントローラは正駆動状態に
あると判定しているから、前述の例の場合には第1の摩
擦要素の解放制御のみが行われることになり、その結
果、変速機がニュートラル状態となってエンジンブレー
キが作動しないことになる。つまり、単に変速開始時に
おける駆動状態をそのまま判断するだけでは誤った変速
動作を行ってしまうことになるのである。
【0013】また、このような問題は、逆駆動状態での
走行中において、加速すべくアクセルペダルを踏み込
み、これに伴って駆動状態が正駆動状態に移行すると同
時に、トルクディマンド変速によって変速段がシフトダ
ウンされる場合等においても同様に起こりうるものであ
る。
【0014】本発明は、自動変速機における上記のよう
な問題に対処するもので、所定の変速時に、正駆動状態
と逆駆動状態とで異なる摩擦要素が制御対象とされる場
合に、変速時点における駆動状態を適正に判別するよう
にして、この変速時の動作を常に良好に行わせることを
課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明に係る自動変速機の変速制御装置は次のよう
に構成したことを特徴とする。
【0016】まず、本願の請求項1に係る発明(以下、
第1発明という)は、エンジン側から車輪側へ動力が伝
達される正駆動状態での特定の変速段から別の変速段へ
変速時に制御対象となる第1の摩擦要素と、上記と
一の特定の変速段から上記と同一の別の変速段への変速
時であって車輪側からエンジン側へ動力が伝達される逆
駆動状態での変速時に制御対象となる第2の摩擦要素と
を有する自動変速機において、上記変速時に、駆動状態
が正駆動状態であるか逆駆動状態であるかを判定する判
定手段と、エンジン回転数、並びに該エンジン回転数の
代用値として採用可能なスロットル開度、吸入空気量、
吸気充填効率等で代表される運転状態の変化速度を検出
する検出手段と、上記判定手段で判定された駆動状態
と、変速動作が実際に行われる際の駆動状態とが一致す
るように、上記判定手段での判定基準となる基準値を上
記検出手段で検出された運転状態の変化速度に応じて補
正する補正手段とを設けたことを特徴とする。
【0017】また、請求項2に係る発明(以下、第2発
明という)は、上記第1発明と同様に、エンジン側から
車輪側へ動力が伝達される正駆動状態での特定の変速段
から別の変速段への変速時に制御対象となる第1の摩擦
要素と、上記と同一の特定の変速段から上記と同一の別
の変速段への変速時であって車輪側からエンジン側へ動
力が伝達される逆駆動状態での変速時に制御対象となる
第2の摩擦要素とを有する自動変速機において、上記変
速時に、駆動状態が正駆動状態であるか逆駆動状態であ
るかをトルクコンバータの速度比に基づいて判定する判
定手段と、エンジン回転数、並びに該エンジン回転数の
代用値として採用可能なスロットル開度、吸入空気量、
吸気充填効率等で代表される運転状態の変化速度を検出
する検出手段と、上記判定手段で判定された駆動状態
と、変速動作が実際に行われる際の駆動状態とが一致す
るように、上記判定手段での判定基準となる基準速度比
を上記検出手段で検出された運転状態の変化速度に応じ
て補正する補正手段とを設けたことを特徴とする。
【0018】さらに、請求項3に係る発明(以下、第3
発明という)は、上記第2発明において、判定手段での
判定基準となる基準速度比を、正駆動状態から逆駆動状
態への移行を伴う場合には、上記検出手段で検出した運
転状態の変化速度が大きいほど小さな値に、逆駆動状態
から正駆動状態への移行を伴う場合には、運転状態の変
化速度が大きいほど大きな値に補正する補正手段を設け
たことを特徴とする。
【0019】
【作用】上記の構成によれば、次のような作用が得られ
る。
【0020】まず、第1、第2発明のいずれによって
も、所定の変速時に正駆動状態では第1の摩擦要素が制
御対象とされ、逆駆動状態では第2の摩擦要素が制御対
象とされる自動変速機において、上記変速時に、判定手
段により駆動状態が正駆動状態であるか逆駆動状態であ
るかの判定が行われることになるが、その判定に際して
の判定基準値が、該判定手段で判定された駆動状態と、
変速動作が実際に行われる際の駆動状態とが一致するよ
うに、当該変速に伴う運転状態の変化速度に応じて補正
されることになる。
【0021】つまり、エンジン回転数等で代表される運
転状態の変化が急速であるため、変速開始時に駆動状態
を判定しても、実際の変速動作は駆動状態の正逆が切り
換わった後に行われる可能性がある場合に、上記のよう
に判定基準を運転状態の変化の速度に応じて補正するこ
とにより、駆動状態の移行を予め予測して判定するので
ある。これにより、変速開始時に判定した駆動状態のも
とで、その駆動状態に適合した変速動作が行われること
になり、正駆動状態で変速動作が行われるときは常に第
1の摩擦要素が制御対象とされ、逆駆動状態で変速動作
がおこなわれるときは常に第2の摩擦要素が制御対象と
されるのである。
【0022】ところで、駆動状態の判定は、例えば当該
車両の車速とエンジンのスロットル開度とをパラメータ
として設定された所謂ロードロードラインを用い、現実
の運転状態がこのロードロードラインより高スロットル
開度側にあるときには正駆動状態、低スロットル開度側
にあるときには逆駆動状態であると判定することがで
き、第1発明における判定手段には、このような判定方
法を用いるものが含まれる。
【0023】しかし、この判定方法では、例えば当該自
動車の走行地が低地であるか高地であるかによる大気圧
の相違によりロードロードライン自体が変化するため、
その補正が必要となるなどの面倒がある。
【0024】そこで、本願の第2発明では、この判定手
段としてトルクコンバータの速度比を用いるものを採用
したのである。この場合、基本的には、速度比(=ター
ビン回転数/エンジン回転数)が1より小さければ正駆
動状態、1より大きければ逆駆動状態と判定することが
でき、したがって、上記のような大気圧等に応じた補正
が不要となり、駆動状態の判定制御が簡素化されること
になる。
【0025】さらに、第3発明は、上記第2発明におけ
る判定基準に対する補正内容を具体化したものであり、
当該変速時に、正駆動状態から逆駆動状態への移行を伴
う場合には、運転状態の変化速度が大きいほど判定基準
となる基準速度比が小さな値に補正され、また、逆駆動
状態から正駆動状態への移行を伴う場合には、上記変化
速度が大きいほど判定基準となる基準速度比が大きな値
に補正されることになる。
【0026】つまり、運転状態の変化が急速なほど、正
駆動状態から逆駆動状態への移行がある場合には、現実
の移行より早目に逆駆動状態に移行したものと判定し、
同様に、逆駆動状態から正駆動状態への移行がある場合
には、現実の移行より早目に正駆動状態に移行したもの
と判定するのである。これにより、運転状態の変化速度
の遅速に拘らず、変速開始時に判定した駆動状態のもと
で、常にその駆動状態に適合した変速動作が行われるこ
とになる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0028】まず、図1によりこの実施例に係る自動変
速機の構造を説明すると、この自動変速機1は、トルク
コンバータ10と、該トルクコンバータ10と同一軸線
上に配置された主変速機20と、これらの軸線と平行な
軸線上に配置された副変速機30とを有する。
【0029】上記トルクコンバータ10は、エンジン出
力軸2に連結されたケース11に一体のポンプ12と、
該ポンプ12に対向配置されて該ポンプ12により作動
油を介して駆動されるタービン13と、該ポンプ12と
タービン13との間に配置され、かつワンウエィクラッ
チ14を介して変速機ケース3に支持されたステータ1
5と、上記タービン13に連結されたコンバータ出力軸
16と、上記ケース11を介して該出力軸16をエンジ
ン出力軸2に直結するロックアップクラッチ17とで構
成されている。
【0030】なお、トルクコンバータ10と主変速機2
0との間には、該トルクコンバータ10を介してエンジ
ン出力軸2に駆動されるオイルポンプ4が配置されてい
る。
【0031】上記主変速機20は、コンバータ出力軸1
6上における該トルクコンバータ側に配置されたフロン
ト遊星歯車機構21と、反トルクコンバータ側に配置さ
れたリヤ遊星歯車機構22とを有する。そして、上記コ
ンバータ出力軸16が、前進クラッチ23を介してフロ
ント遊星歯車機構21のサンギヤ21aに、また、直結
クラッチ24を介してリヤ遊星歯車機構22のサンギヤ
22aにそれぞれ結合されるようになっていると共に、
フロント遊星歯車機構21のサンギヤ21aとリヤ遊星
歯車機構22のリングギヤ22bとが結合されている。
【0032】また、フロント遊星歯車機構21のリング
ギヤ21bと変速機ケース3との間には、第1ワンウエ
ィクラッチ25とローリバースブレーキ26とが並列に
配置されていると共に、リヤ遊星歯車機構22のサンギ
ヤ22aと変速機ケース3との間には、第2ワンウエィ
クラッチ27と3−4ブレーキ28とが直列に配置さ
れ、かつ、これらに並列にエンジンブレーキ用のコース
トブレーキ29が配置されている。そして、フロント遊
星歯車機構21及びリヤ遊星歯車機構22のピニオンキ
ャリヤ21c,22cが結合され、これらに主変速機2
0から副変速機30へ動力を伝達する中間ギヤ5が連結
されている。
【0033】このような構成により、この主変速機20
によれば、前進の低速段、中速段及び高速段と後退段と
が得られる。
【0034】つまり、まず、前進クラッチ23のみを締
結した状態では、トルクコンバータ出力軸16からの動
力がフロント遊星歯車機構21のサンギヤ21aに入力
されると共に、リングギヤ21bが第1ワンウエィクラ
ッチ25を介してケース3に固定されるので、該フロン
ト遊星歯車機構21のピニオンキャリヤ21cから中間
ギヤ5に上記トルクコンバータ出力軸16の回転が大き
な減速比で減速されて出力されることになり、これによ
り低速段が得られる。
【0035】また、この低速段の状態から3−4ブレー
キ28が締結されると、第2ワンウェイクラッチ27を
介してリヤ遊星歯車機構22のサンギヤ22aが固定さ
れることにより、コンバータ出力軸16から前進クラッ
チ23及びフロント遊星歯車機構21のサンギヤ21a
を介してリヤ遊星歯車機構22のリングギヤ22bに入
力される動力は、該リヤ遊星歯車機構22で上記低速段
の減速比よりも小さな減速比で減速されてピニオンキャ
リヤ22cから中間ギヤ5に出力されることになり、こ
れにより中速段が得られる。
【0036】さらに、この中速段の状態から直結クラッ
チ24が締結されると、コンバータ出力軸16からの動
力は、前進クラッチ23及びフロント遊星歯車機構21
のサンギヤ21aを介してリヤ遊星歯車機構22のリン
グギヤ22bに入力されると同時に、上記直結クラッチ
24を介して該リヤ遊星歯車機構22のサンギヤ22a
にも入力されることになる。したがって、該リヤ遊星歯
車機構22は全体が一体回転することになって、ピニオ
ンキャリヤ22cから中間ギヤ5にコンバータ出力軸1
6の回転と等しい回転が出力され、これにより高速段
(直結段)が得られることになる。
【0037】そして、上記前進クラッチ23が解放され
て、直結クラッチ24とローリバースブレーキ26とが
締結されれば、コンバータ出力軸16からの動力はリヤ
遊星歯車機構22のサンギヤ22aに入力される一方に
おいて、フロント遊星歯車機構21のリングギヤ21b
が固定されることにより、両遊星歯車機構21,22の
ピニオンキャリヤ21c,22cから中間ギヤ5に上記
コンバータ出力軸16の回転が逆転されて出力され、後
退段が得られる。
【0038】なお、低速段及び中速段での減速時には、
上記第1、第2ワンウエィクラッチ25,27がそれぞ
れ空転してエンジンブレーキが作動しないことになる
が、エンジンブレーキ用のレンジにおいては、低速段で
は第1ワンウエィクラッチ25に並列のローリバースブ
レーキ26が締結されることにより、また、中速段では
第2ワンウエィクラッチ27に並列のコーストブレーキ
29が締結されることにより、それぞれエンジンブレー
キが作動する低速段及び中速段が得られる。
【0039】一方、副変速機30は単一の遊星歯車機構
31を有し、上記主変速機20における中間ギヤ5に常
時噛み合った中間ギヤ6が該遊星歯車機構31のリング
ギヤ31aに連結されていると共に、該リングギヤ31
aとサンギヤ31bとの間には直結クラッチ32が配置
され、かつ、サンギヤ31bと変速機ケース3との間に
は、第3ワンウエィクラッチ33と減速ブレーキ34と
が並列に配置されている。そして、該遊星歯車機構31
のピニオンキャリヤ31cに出力ギヤ7が連結され、該
ギヤ7から差動装置を介して左右の駆動輪(図示せず)
に動力が伝達されるようになっている。
【0040】この副変速機30は、主変速機20から中
間ギヤ5,6を介して入力される動力を低速段と高速段
の前進2段に変速して出力ギヤ7に出力することができ
るようになっている。
【0041】つまり、直結クラッチ32が解放されてい
る状態では、第3ワンウェイクラッチ33もしくは減速
ブレーキ34によって遊星歯車機構31のサンギヤ31
bが固定されることにより、該遊星歯車機構31のリン
グギヤ31aに入力される中間ギヤ6からの動力が減速
されてピニオンキャリヤ31cから出力ギヤ7に出力さ
れ、これにより低速段が得られる。
【0042】その場合に、エンジン側から車輪側に動力
が伝達されている正駆動状態では、上記第3ワンウェイ
クラッチ33がロックすることのみで低速段が形成され
るが、車輪側からエンジン側に動力が伝達される逆駆動
状態では、第3ワンウェイクラッチ33が空転するの
で、この場合は減速ブレーキ34を締結することにより
低速段が形成されることになる。そして、この減速ブレ
ーキ34を締結することにより、副変速機30の単体と
して、エンジンブレーキが作動することになる。
【0043】また、上記直結クラッチ32が締結され、
かつ減速ブレーキ34が解放されれば、該遊星歯車機構
31のリングギヤ31aとサンギヤ31bとが結合され
ることにより、上記中間ギヤ6からの動力がピニオンキ
ャリヤ31cからそのまま出力ギヤ7に出力され、これ
により高速段(直結段)が得られることになる。
【0044】このようにして、主変速機20によって前
進3段、後退1段の変速段が得られ、また、副変速機3
0によって、主変速機20の出力に対して高低2段の変
速段が得られるから、自動変速機の全体としては前進に
ついては6段の変速段が得られ、また、後退について
は、主変速機20の後退段と副変速機30の減速ブレー
キ34が締結された低速段との組合せで全体としての後
退段が得られることになる。そして、この実施例では、
前進変速段としては上記6段のうちの所定の5段を採用
するようになっている。
【0045】ここで、この前進5段、後退1段の各変速
段における各クラッチやブレーキの作動状態をまとめる
と、表1のようになる。なお、表1中、(○)は、エン
ジンブレーキ用のレンジのみで締結されることを示す。
【0046】
【表1】 一方、この自動変速機1には、上記表1に従って各クラ
ッチやブレーキ等の摩擦要素を選択的に締結させること
により、運転状態もしくは運転者の要求に応じた変速段
を形成する油圧回路が備えられている。
【0047】この油圧回路は、基本的には、図1に示す
オイルポンプ4の吐出圧を所定のライン圧に調整するプ
レッシャレギュレータバルブと、このライン圧を基にし
て各摩擦要素に作用する作動圧を調整するコントロール
バルブと、この作動圧を運転状態等に応じて各摩擦要素
に選択的に作用させる複数のシフトバルブと、図1に示
すロックアップクラッチ17の制御用バルブ等で構成さ
れている。そして、図2に示すように、この油圧回路4
0には、上記各バルブを電気的に作動させるアクチュエ
ータとして、各種のソレノイドバルブ41〜50が備え
られている。
【0048】つまり、上記プレッシャレギュレータバル
ブにパイロット圧を供給してライン圧の調整値を制御す
るデューティソレノイドバルブ41と、上記複数のシフ
トバルブのうち、主変速機用シフトバルブをそれぞれ作
動させる第1〜第3ON−OFFソレノイドバルブ42
〜44と、同じく副変速機用シフトバルブをそれぞれ作
動させる第4,第5ON−OFFソレノイドバルブ4
5,46と、主変速機用作動圧及び副変速機用作動圧を
それぞれ調整する第1、第2リニアソレノイドバルブ4
7,48と、さらにロックアップクラッチ制御用ON−
OFFソレノイドバルブ49及びデューティソレノイド
バルブ50とが備えられている。
【0049】そして、これらのソレノイドバルブ41〜
50に電気制御信号を出力するコントローラ60が備え
られていると共に、このコントローラ60には、当該自
動車の車速を検出するセンサ61からの信号、エンジン
のスロットル開度を検出するセンサ62からの信号、及
び運転者によって選択されたシフト位置(レンジ)を検
出するセンサ63からの信号等が入力され、これらの信
号によって示される運転状態や運転者の要求に応じて上
記各ソレノイドバルブ41〜50を制御するようになっ
ている。
【0050】また、前述のように、副変速機30におい
て高速段から低速段に切り換える際には、駆動状態が正
駆動状態では直結クラッチ32の解放制御のみが行わ
れ、逆駆動状態では該直結クラッチ32の解放制御と共
に減速ブレーキ34の締結制御が行われるのであるが、
その場合に、駆動状態が正駆動状態であるか逆駆動状態
であるかを判定するために、上記コントローラ60に
は、エンジン回転数を検出するセンサ64からの信号
と、トルクコンバータ10の出力回転数であるタービン
回転数を検出するセンサ65からの信号とが入力され、
これらの信号が示すエンジン回転数NEとタービン回転
数NTとからトルクコンバータ10の速度比E(=NT
/NE)を算出するようになっている。
【0051】次に、上記油圧回路40のうち、本実施例
の特徴部、すなわち副変速機30における直結クラッチ
32と減速ブレーキ34の制御に関する部分の具体的構
成を説明する。
【0052】図3に示すように、直結クラッチ32及び
減速ブレーキ34には、受圧面積の大きな第1油圧室3
1,341と、受圧面積の小さな第2油圧室322,3
2とがそれぞれ設けられている。そして、油圧回路4
0には、主たる構成要素として、直結クラッチ32の上
記第1、第2油圧室321,322に供給される作動圧を
調整する直結クラッチ用コントロールバルブ71と、減
速ブレーキ34の第2油圧室342に供給される作動圧
を調整する減速ブレーキ用コントロールバルブ72と、
これらの作動圧の給排を切り換える第1、第2シフトバ
ルブ73,74と、これらのシフトバルブ73,74を
それぞれ作動させる前述の第4、第5ON−OFFソレ
ノイドバルブ45,46と、さらに上記直結クラッチ3
2の第1油圧室321と減速ブレーキ用コントロールバ
ルブ72に供給される作動圧を調整する前述の第2リニ
アソレノイドバルブ48とが備えられている。
【0053】なお、減速ブレーキ34の第1油圧室34
1には、Rレンジにおいて図示しないマニュアルバルブ
から後退ライン75を介してライン圧が直接供給される
ようになっている。
【0054】上記リニアソレノイドバルブ48は、メイ
ンライン76からライン圧が制御元圧として供給され、
これをコントローラ60からの制御信号に応じて調整し
て所定のリニア圧を生成した上で、ライン77及び第1
シフトバルブ73から、ライン78もしくはライン79
を介して減速ブレーキ用コントロールバルブ72の制御
ポート72aもしくは直結クラッチ32の第1油圧室3
1に作用させる。そして、減速ブレーキ用コントロー
ルバルブ72は、上記リニア圧が制御ポート72aに供
給されているときに、メインライン76からライン8
0、第2シフトバルブ74、ライン81、第1シフトバ
ルブ73及びライン82を介して供給されるライン圧を
上記リニア圧に応じて調整し、これをライン83を介し
て減速ブレーキ34の第2油圧室342に供給する。
【0055】一方、直結クラッチ用コントロールバルブ
71は、メインライン76からライン80、第2シフト
バルブ74、ライン84を介してライン圧が供給され、
これを調整した上で、ワンウェイオリフィス85、ライ
ン86及び第1シフトバルブ73から、上記ライン79
もしくはライン87を介して直結クラッチ32の第1油
圧室321もしくは第2油圧室322に選択的に供給する
ようになっている。
【0056】そして、この直結クラッチ用コントロール
バルブ71の制御ポート71aには、上記直結クラッチ
32の第1油圧室321もしくは第2油圧室322に供給
される作動圧自体が、ワンウェイオリフィス88及びア
キュムレータ89が設けられたライン90を介して制御
圧として供給されるようになっており、したがって、上
記作動圧は、アキュムレータ89の作動により一定の棚
圧状態を経て立ち上がることになる。なお、このアキュ
ムレータ89の背圧ポート89aには、メインライン7
6からライン91を介して背圧が供給されるようになっ
ている。
【0057】さらに、上記第1、第2シフトバルブ7
3,74の一端には制御ポート73a,74aがそれぞ
れ設けられて、これらの制御ポート73a,74aにレ
デューシングバルブ92から導かれた制御用元圧ライン
93,94がそれぞれ接続されていると共に、これらの
制御用元圧ライン93,94には、第1、第2シフトバ
ルブ73,74に対応させて前述の第4、第5ON−O
FFソレノイドバルブ45,46がそれぞれ設置されて
いる。
【0058】これらのON−OFFソレノイドバルブ4
5,46は、ON時に当該シフトバルブ73,74の制
御ポート73a,74b内をドレンさせるようになって
おり、したがって、各シフトバルブ73,74のスプー
ルは、対応するON−OFFソレノイドバルブ45,4
6がONのときに図面上、左側に位置し、OFFのとき
に右側に位置することになる。
【0059】そして、図3に示すように、3速では第
4、第5ON−OFFソレノイドバルブ45,46は共
にOFFの状態にあって、第1、第2シフトバルブ7
3,74のスプールはいずれも右側に位置し、また、図
4に示すように、4速では第4、第5ON−OFFソレ
ノイドバルブ45,46は共にONの状態にあって、第
1、第2シフトバルブ73,74のスプールがいずれも
左側に位置するようになっている。
【0060】ここで、前述の表1から明らかなように、
例えば4−3シフトダウン変速時においては、主変速機
20の変速段を中速段に保持する一方、副変速機30に
おいて、正駆動状態では直結クラッチ32を解放してワ
ンウェイクラッチ33のロック動作により、また逆駆動
状態では直結クラッチ32を解放すると同時に減速ブレ
ーキ34を締結することにより、変速段を高速段から低
速段に切り換える動作が行われるのであるが、このと
き、コントローラ60により、駆動状態の判定制御と、
その判定結果に応じた上記リニアソレノイドバルブ48
による直結クラッチ32及び減速ブレーキ34に対する
作動圧の制御とが行われるようになっている。
【0061】次に、これらの制御の具体的動作を図5に
示すフローチャートに従って説明する。
【0062】まず、コントローラ60は、ステップS1
で、図2に示す各センサ61〜65からの信号に基づい
て車速、スロットル開度、シフト位置、エンジン回転数
及びタービン回転数等を読み込み、次いでステップS2
で、これらの信号に基づいて現時点が変速を行うべき時
期であるか否かの判定制御を行う。そして、現時点が何
らかの変速制御を行うべき時期である場合には、ステッ
プS3でその変速が4−3シフトダウン変速であるか否
かを判定し、この変速でないときには、ステップS4で
他の変速制御を従来通りに行う。
【0063】一方、4−3シフトダウン変速を行うべき
時期であるときには、コントローラ60は、ステップS
5で、駆動状態の判定基準となる基準速度比E0を予め
設定されたマップから読み取る。このマップでは、図6
に示すように、基準速度比E0がエンジン回転数NEの
低下速度ΔNEが大きくなるに従って1よりやや小さい
値からさらに小さくなるように設定されており、該基準
速度比E0として、その時点のエンジン回転数NEの低
下速度ΔNEに応じた値が読み取られるようになってい
る。
【0064】そして、コントローラ60は、次にステッ
プS6を実行して、エンジン回転数NEとタービン回転
数NTとから算出される実際の速度比Eが上記基準速度
比E0よりも小さいか否かを判定し、小さい場合には、
ステップS7で正駆動状態での4−3シフトダウン制御
を実行し、また、実際の速度比Eが基準速度比E0より
も大きい場合には、ステップS8で逆駆動状態での4−
3シフトダウン制御を実行する。
【0065】ここで、両駆動状態での4−3シフトダウ
ン制御の内容を簡単に説明する。
【0066】まず、正駆動状態での変速時には、コント
ローラ60は、リニアソレノイドバルブ48で生成され
るリニア圧を、図7に示すように、変速開始時にまず一
定量低下させ、さらに所定の低下率で次第に低下させる
ように該リニアソレノイドバルブ48に制御信号を出力
する。これにより、図4に示す4速での油圧回路40に
おいて、ライン77から第1シフトバルブ73及びライ
ン79を介して直結クラッチ32の第1油圧室321
に供給されていた作動圧が図7に示す特性で低下し、該
直結クラッチ32が解放されることになる。そして、そ
の解放の途中でワンウェイクラッチ33がロックするこ
とにより、3速への変速が完了する。
【0067】その後、変速開始時から所定時間T1(図
7参照)が経過した時点で第4、第5ON−OFFソレ
ノイドバルブ45,46が共にONの状態から共にOF
Fの状態に切り換わって、第1、第2シフトバルブ7
3,74のスプールが右側に移動し、油圧回路40が図
3に示す3速の状態に切り換わる。また、これとほぼ同
時に、上記リニア圧が所定値まで上昇され、このリニア
圧がライン77から第1シフトバルブ73及びライン7
8を介して減速ブレーキ用コントロールバルブ72の制
御ポート72aに供給されることにより、このリニア圧
に対応する作動圧が減速ブレーキ34の第2油圧室32
2に供給されて、該減速ブレーキ34が締結される。
【0068】一方、逆駆動状態での変速時には、コント
ローラ60は、変速開始時にリニア圧を図8に示すよう
に若干量低下させるようにリニアソレノイドバルブ48
に油圧制御信号を出力する。そして、この逆駆動状態で
は、変速開始時に第4、第5ON−OFFソレノイドバ
ルブ45,46のON,OFFを切り換えて、図3に示
すように、油圧回路40における第1、第2シフトバル
ブ73,74のスプールを左側に位置させる。
【0069】したがって、図8に示すリニア圧が、ライ
ン77から第1シフトバルブ73及びライン78を介し
て直ちに減速ブレーキ用コントロールバルブ72の制御
ポート72aに供給され、このリニア圧に対応する作動
圧で減速ブレーキ34が締結されることになる。これに
より、逆駆動状態のためワンウェイクラッチ33がロッ
クしなくても、減速ブレーキ34が変速開始とほぼ同時
に締結されることになり、変速機のニュートラル状態を
生じることなく、3速へのシフトダウン変速が行われる
ことになる。そして、変速開始時から所定時間T2(図
8参照)が経過した時点でリニア圧が3速での所定の圧
力にセットされ、変速が完了する。
【0070】そして、特にこの4−3シフトダウン制御
においては、前述のように、図6に示すエンジン回転数
NEの低下速度ΔNEに応じて変化する基準速度比E0
を用いて正駆動状態か逆駆動状態かの判定を行うので、
次のような作用が得られることになる。
【0071】今、図9に示すように、正駆動状態(NE
>NT)での走行中にアクセルペダルを戻し、引き続き
エンジンブレーキを作動させるためにシフトレーバー操
作により4−3シフトダウン変速をさせるものとする。
このとき、エンジン回転数NEが低下することにより、
トルクコンバータ10の速度比Eが1より小さな値から
1に近づくように変化する。そして、その途中で変速指
令が出力されると、そのときの速度比Eとマップから読
み取った基準速度比E0とを比較し、駆動状態が正駆動
状態であるか逆駆動状態であるかを判定する。
【0072】その場合に、例えばアクセルペダルの戻し
が緩やかに行われたため、上記エンジン回転数NEの低
下速度ΔNEが比較的小さな値であるΔNE1であった
とすると、図6の特性から求められる基準速度比E0は
比較的1に近い値E01に設定されることになる。
【0073】つまり、この場合は、基準変速比E0が比
較的1に近い値に設定されるが、エンジン回転数NEの
低下速度ΔNEも小さいので、例えば図9に示すよう
に、速度比がE01よりやや小さい状態で変速指令が出
力され、駆動状態が正駆動状態であると判定された場合
に、この変速指令に基づく変速動作が、速度比Eが1よ
り大きくなる前に、すなわち正駆動状態の下で行われる
ことになる。また、速度比Eが基準速度比E0より大き
くなってから変速動作が開始されるときには、逆駆動状
態と判定されると共に、その直後に実際の駆動状態も逆
駆動直後に移行することになり、したがって、いずれの
場合にも、判定された駆動状態と、変速動作が実際に行
われる際の駆動状態とが一致することになる。
【0074】一方、例えばアクセルペダルの戻しが急激
に行われて、エンジン回転数NEの低下速度ΔNEが大
きな値であるΔNE2であったとすると、図6の特性か
ら求められる基準速度比E0は1よりも十分小さい値E
02に設定されることになる。
【0075】この場合は、エンジン回転数NEの低下速
度ΔNEが大きいため、正駆動状態の下で変速指令が出
力されても、実際の変速動作は逆駆動状態に移行してか
ら行われる可能性が高いのであるが、上記のように基準
速度比E0が1よりも十分小さい値E02に設定される
ので、正駆動状態のもとで判定しても、実際の変速動作
が逆駆動状態で行われるような場合には逆駆動状態であ
ると判定されることになる。したがって、この場合も、
判定された駆動状態と、変速動作が実際に行われる際の
駆動状態とが一致することになる。
【0076】なお、以上の説明では、駆動状態によって
制御対象となる摩擦要素が異なる変速時において、この
変速に際して駆動状態が正駆動状態から逆駆動状態に移
行する場合について述べたが、逆駆動状態から正駆動状
態へ移行する場合にも同様に制御されることになる。
【0077】つまり、この場合の駆動状態の判定基準と
なる基準速度比E0’の特性は、図11、図12に示す
ように、1よりやや大きな値からエンジン回転数NEの
上昇速度ΔNE’が大きくなるに従ってさらに大きくな
るように設定されることになる。したがって、この場合
も、この判定基準E0’を用いて判定された駆動状態の
もとで、その駆動状態に応じた摩擦要素の制御が行われ
ることになる。
【0078】また、以上の実施例では、駆動状態の判定
基準としてトルクコンバータ10の速度比Eを用いた
が、これ以外に、例えば車速とスロットル開度とをパラ
メータとするロードロードラインを用い、運転状態がこ
のラインの高スロットル側にあるか低スロットル側にあ
るかによって駆動状態を判定することも可能である。
【0079】この場合、正駆動状態から逆駆動状態に移
行する場合の判定基準は、図13に示すように、本来の
ロードロードラインに対して、エンジン回転数NEの低
下速度ΔNEが大きくなるほど基準ラインを高スロット
ル開度側に設定し、また、逆駆動状態から正駆動状態に
移行する場合の判定基準は、図14に示すように、本来
のロードロードラインに対して、エンジン回転数NEの
上昇速度ΔNE’が大きいほど基準ラインを低スロット
ル開度側に設定することになる。なお、このロードロー
ドラインを駆動状態の判定基準として用いる場合には、
例えば大気圧等によって本来のロードロードライン自体
が変化するから、その補正が必要となる。
【0080】さらに、判定基準を補正するパラメータと
しては、以上の説明ではエンジン回転数NEの低下もし
くは上昇速度ΔNE,ΔNE’を採用したが、これ以外
にも、スロットル開度の変化速度、吸入空気量の変化速
度、吸気充填効率の変化速度等も、エンジン回転数変化
速度の代用値として採用可能である。
【0081】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、所定の変
速時に、正駆動状態と逆駆動状態とで異なる摩擦要素を
制御対象とするようになっている自動変速機において、
上記所定の変速時に、判定手段により駆動状態が正駆動
状態であるか逆駆動状態であるかの判定が行われること
になるが、その判定に際しての判定基準値が、当該変速
に伴う運転状態の変化速度に応じて補正されることによ
り、判定された駆動状態と、変速動作が実際に行われる
際の駆動状態とが常に一致することになる。これによ
り、例えば、正駆動状態の下で、駆動状態を正駆動状態
と判定したにも拘らず、実際の変速動作は逆駆動状態に
移行してから行われて、ワンウェイクラッチがロックし
ないため所要のエンジンブレーキが作動せず、或は駆動
状態に応じた摩擦要素が作動しないため、変速中の伝達
トルクと摩擦要素のトルク容量とが対応しなくなって変
速ショックが発生するなどの不具合が解消され、当該変
速動作が常に良好に行われることになる。
【0082】そして、特に本願の第2、第3発明によれ
ば、駆動状態の判定基準としてトルクコンバータの速度
比を用いるようにしたので、例えばロードロードライン
を用いる場合のような大気圧等に応じた補正が不要とな
り、駆動状態の判定制御が簡素化されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る自動変速機の骨子図で
ある。
【図2】 油圧回路における各種ソレノイドバルブに対
する制御システム図である。
【図3】 油圧回路における副変速機制御部分の3速の
状態を示す油圧回路図である。
【図4】 同4速の状態を示す油圧回路図である。
【図5】 4−3シフトダウン変速時の制御動作を示す
フローチャート図である。
【図6】 図5の制御で用いられる正駆動状態から逆駆
動状態への移行時における基準速度比の特性図である。
【図7】 同制御で用いられる正駆動状態での制御目標
値の特性図である。
【図8】 同制御で用いられる逆駆動状態での制御目標
値の特性図である。
【図9】 エンジン回転数の低下速度が小さい場合の速
度比の変化を示すタイムチャート図である。
【図10】 エンジン回転数の低下速度が大きい場合の
速度比の変化を示すタイムチャート図である。
【図11】 逆駆動状態から正駆動状態への移行時にお
ける基準速度比の特性図である。
【図12】 逆駆動状態から正駆動状態への移行時にお
ける速度比の変化を示すタイムチャート図である。
【図13】 他の判定基準の正駆動状態から逆駆動状態
への移行時における特性図である。
【図14】 同じく逆駆動状態から正駆動状態への移行
時における特性図である。
【図15】 本発明が解決しようとする問題点の説明図
である。
【符号の説明】
1 自動変速機 10 トルクコンバータ 32 第1の摩擦要素(直結クラッチ) 34 第2の摩擦要素(減速ブレーキ) 60 判定手段、補正手段(コントローラ) 63 検出手段(エンジン回転数センサ)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 59/00 - 61/12 F16H 61/16 - 61/24 F16H 63/40 - 63/48

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン側から車輪側へ動力が伝達され
    る正駆動状態での特定の変速段から別の変速段への変速
    時に制御対象となる第1の摩擦要素と、上記と同一の
    定の変速段から上記と同一の別の変速段への変速時であ
    って車輪側からエンジン側へ動力が伝達される逆駆動状
    態での変速時に制御対象となる第2の摩擦要素とを有す
    る自動変速機の変速制御装置であって、上記変速時に、
    駆動状態が正駆動状態であるか逆駆動状態であるかを判
    定する判定手段と、エンジン回転数、並びに該エンジン
    回転数の代用値として採用可能なスロットル開度、吸入
    空気量、吸気充填効率等で代表される運転状態の変化速
    度を検出する検出手段と、上記判定手段で判定された駆
    動状態と、変速動作が実際に行われる際の駆動状態とが
    一致するように、上記判定手段での判定基準となる基準
    値を上記検出手段で検出された運転状態の変化速度に応
    じて補正する補正手段とが設けられていることを特徴と
    する自動変速機の変速制御装置。
  2. 【請求項2】 エンジン側から車輪側へ動力が伝達され
    る正駆動状態での特定の変速段から別の変速段への変速
    時に制御対象となる第1の摩擦要素と、上記と同一の
    定の変速段から上記と同一の別の変速段への変速時であ
    って車輪側からエンジン側へ動力が伝達される逆駆動状
    態での変速時に制御対象となる第2の摩擦要素とを有す
    る自動変速機の変速制御装置であって、上記変速時に、
    駆動状態が正駆動状態であるか逆駆動状態であるかをト
    ルクコンバータの速度比に基づいて判定する判定手段
    と、エンジン回転数、並びに該エンジン回転数の代用値
    として採用可能なスロットル開度、吸入空気量、吸気充
    填効率等で代表される運転状態の変化速度を検出する検
    出手段と、上記判定手段で判定された駆動状態と、変速
    動作が実際に行われる際の駆動状態とが一致するよう
    に、上記判定手段での判定基準となる基準速度比を上記
    検出手段で検出された運転状態の変化速度に応じて補正
    する補正手段とが設けられていることを特徴とする自動
    変速機の変速制御装置。
  3. 【請求項3】 エンジン側から車輪側へ動力が伝達され
    る正駆動状態での特定の変速段から別の変速段への変速
    時に制御対象となる第1の摩擦要素と、上記と同一の
    定の変速段から上記と同一の別の変速段への変速時であ
    って車輪側からエンジン側へ動力が伝達される逆駆動状
    態での変速時に制御対象となる第2の摩擦要素とを有す
    る自動変速機の変速制御装置であって、上記変速時に、
    駆動状態が正駆動状態であるか逆駆動状態であるかをト
    ルクコンバータの速度比に基づいて判定する判定手段
    と、エンジン回転数、並びに該エンジン回転数の代用値
    として採用可能なスロットル開度、吸入空気量、吸気充
    填効率等で代表される運転状態の変化速度を検出する検
    出手段と、上記判定手段で判定された駆動状態と、変速
    動作が実際に行われる際の駆動状態とが一致するよう
    に、上記判定手段での判定基準となる基準速度比を、正
    駆動状態から逆駆動状態への移行を伴う場合には上記検
    出手段で検出した運転状態の変化速度が大きいほど小さ
    な値に、逆駆動状態から正駆動状態への移行を伴う場合
    には運転状態の変化速度が大きいほど大きな値に補正す
    る補正手段とが設けられていることを特徴とする自動変
    速機の変速制御装置。
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