JP3289759B2 - コロナモータおよびその製造方法 - Google Patents

コロナモータおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超小型の回転駆動装置
として用いられる静電力を利用したアクチュエータに関
する。
【0002】
【従来の技術】従来のコロナモータは図6に示すよう
に、絶縁円板からなる回転子2の両面にくし形電極9を
2組配置したものがある。くし形電極9は極性の異なる
一対のくし形電極91ともう一対の92を180°の位
置に配置したものである。くし形電極9から回転子2の
両面にコロナ放電を行わせると、回転子2の円板上にく
し形電極9と同符号の電荷が集まる。そうすると、回転
子2とくし状電極9との間に反発力が生じて回転力が発
生する。回転子2が90度以上回転すると反発力と同時
に今度は反対符号の電極との間に吸引力が働き、反対符
号電極に接近する。接近すると今度はコロナ放電により
同符号の電荷に切り換えられる。くし形電極9のところ
で回転子2の電荷の極性が切り換えられることにより、
回転子2は連続的に同一方向の力を受けて回転する(例
えば、オーム社発行、静電気学会編者の「静電気ハンド
ブック」P.668〜669)
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】ところが、コロナモ
ータを小型化するには、回転力を高める必要がある。回
転力を高めるには、電極数を増やし、かつ傾斜させる必
要がある。従来技術では微小な電極を精度よく傾斜させ
て配置することが困難であり、また、回転子の両面から
電圧を加えるための部品点数が多く、回転子と電極の位
置決めが困難であるといった問題があった。そこで、本
発明は固定子全面にわたって多数の電極を精度よく傾斜
させ配置することにより、駆動力が大きく、構造の簡単
な小型のコロナモータを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するた
め、本発明は少なくとも1対の極性の異なる電極を有す
る固定子と、絶縁体からなる回転子とを微小空隙をもっ
て対向させ、前記電極に印加した電圧により放電現象を
発生させ、前記回転子に前記電極と同極の荷電粒子を帯
電させて生じる反発力と、この反発力によって前記回転
子が駆動して異極性の電極に接近した時に生ずる吸引力
と、吸引後、異極性の電圧により荷電粒子の極性が異極
性に変化したときの反発力との繰り返しによって前記回
転子を駆動させるコロナモータにおいて、前記固定子
、前記回転子の一方の側に設けた絶縁板と、前記絶縁
板表面の中心から放射状に等角度のピッチで延びた一方
の極性の幹線電極と、前記幹線電極同志の間に前記絶縁
板の縁淵部から中心に向かって等角度のピッチで延びた
他方の極性の幹線電極と、前記幹線電極の表面に接触・
導通させたコーン状または錘状の放電電極とからなり、
かつ前記放電電極の先端を通る中心線を前記回転子表面
の垂直線に対して傾斜させた構成にしている。また、前
記固定子の作製方法は絶縁基板の表面に中心から放射状
に等角度で延びる幹線電極を配線し、この上に感光性樹
脂を塗布し微細マスクをもうけて選択的に感光させて電
極支持部をつくり、その上に電極用の金属層を設け、さ
らにその上に放電電極となる部分にレジストマスクをも
うけ、前記電極用の金属層を等方性エッチングによりコ
ーン状または錘状の前記放電電極を形成し、前記感光性
樹脂の非感光部を溶解除去した後、前記幹線電極にパル
ス電圧を印加して前記放電電極を接触・導通させて作製
する。
【0005】
【作用】上記手段により、印加電圧の極性の異なる幹線
電極を交互に配置し、その作製をフォトリソグラフィ技
術や電鋳技術を適用したので、多数の放電電極を設ける
ことができる。したがって、小型にすることができ駆動
力を大きくできる。そして放電電極の形状をコーン状ま
たは錘状にして回転子表面の垂直線に対して傾斜させた
配置にしたので、回転子表面に対する角度の大きい部分
と小さい部分では電界密度の差異が生じ、反発力を増加
することができる。また、回転子の反空隙側の面金属膜
を配置したので、放電電極を固定子の片面のみ配置する
ことができ、部品点数を減らすことができる。さらに幹
線電極を2相の共通配線に結線したので、配線を簡略化
でき、小型化することができる。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明す
る。図1は本発明のコロナモータの概観を示す斜視図、
図2は部分側断面図、図3は固定子の平面図である。図
において1は固定子、2は回転子、3は回転軸である。
固定子4と回転子2とは微小な空隙を介して平行に図示
しない支持機構によって支持されている。固定子は図3
に示すように、円形の絶縁板11の表面に一定の角度ピ
ッチで放射状に設けられた幹線電極12と幹線電極12
を一つ置きに2相に分け、それぞれを内径側と外径側で
結線されている共通配線13および幹線電極12の上に
設けた放電電極14とからなる。幹線電極12はA相幹
線電極121とB相幹線電極122とからなる。A相幹
線電極121は内径側のA相共通配線131に接続され
ており、B相幹線電極122は外径側のB相共通配線1
32に接続されている。放電電極14は図2に示すよう
に、円錐形をしており、底面の一方端が幹線電極12に
接触し電気的導通がとられ、底面の他方端は幹線電極1
2より大きい寸法の段差のある電極支持部6にのってい
る。これにより、放電電極14は先端をとおる中心線が
回転子2の表面に対して傾斜することになる。放電電極
14は図示しないが、全ての幹線電極12の上に配置さ
れている。放電電極14は幹線電極12が交互に二つの
相に接続されているため、交互にA相放電電極141と
B相放電電極142の二つの相にわけられる。回転子2
は絶縁板21と反空隙側の面に金属膜からなる背面電極
22が設けられ、中心部には回転軸3が固定されてい
る。つぎに動作原理を図4により説明する。いま、A相
幹線電極121に直流の正極(+V)の電圧を、B相幹
線電極122に負極(−V)の電圧を加えると、回転子
2と放電電極14間の電界が大きくなりコロナ放電が起
こる。図4(a)では、回転子2に背面電極22を設け
ているので、A相放電電極141に対向する回転子2の
領域では放電電極14に向かって電荷が放出されので、
+の電荷が帯電し、B相放電電極142に対向する回転
子2の領域では放電電極14から回転子2に向かって電
荷が放出されるので、−の電荷が帯電する。したがっ
て、放電電極14と回転子2の電荷が帯電した領域との
間で極性は異なっても全て反発力が働き、回転子2はわ
ずかに回転する。図4(b)では、回転子2の帯電領域
が、隣接する次の放電電極14に接近すると、互いに極
性が異なるため吸引力が働き、さらに回転力を高める。
図4(c)では、帯電領域が放電電極14に最接近する
と、放電電極14からの放電により、今度は反対の極
性、つまり放電電極14と同極性に切り替わる。このた
め、反発力が発生して回転子を押し進めるような力が働
く。順次、この動作が繰り返えされることによって回転
子は連続的に回転する。図5は本発明の固定子1の作製
プロセスを示した図である。微細化するためにフォトリ
ソグラフィ、技術を用いて作製する。まず、絶縁板11
の上にマスクを用いて薄膜金属を蒸着して幹線電極のパ
ターニングを行う(図5(a))。続いて、その上にポ
リイミド系樹脂のような弾力のある感光性樹脂5を塗布
し、たとえば、ポジ型の感光性樹脂5の場合には、電極
支持部6の形状になるように感光性樹脂5を感光させて
おく(図5(b))。さらに、その上に銅のシードめっ
きを蒸着してその上にNi等の金属を電鋳によりメッ
キ、電極用金属層7を形成する。その上に放電電極14
を作製する時のマスクとして用いるレジスト8を塗って
パターニングする(図5(c))。等方性のエッチング
によってNiを尖らせて放電電極14を形成する。つぎ
に、感光性樹脂5を現象、除去する。最後に幹線電極1
2に電圧を加えると静電力によって放電電極14が幹線
電極に引きつけられるが一端が支持されているので固定
子電極は傾きやがて幹線電極と接触する。流れる電流に
よって固定子電極と幹線電極は融着する(図5
(d))。
【0007】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、フ
ォトリソグラフィ技術や電鋳技術を用いて極性の異なる
幹線電極を交互に配置し、その幹線電極に多数の放電電
極を設けたので、駆動力が大きく、構造が簡単な超小型
のコロナモータを得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコロナモータを示す斜視図である。
【図2】本発明のコロナモータの部分側断面図である。
【図3】本発明の固定子を示す平面図である。
【図4】本発明の駆動原理を示す側断面図である。
【図5】本発明の固定子の作製方法を示す断面図であ
る。
【図6】従来のコロナモータを示す断面図である。
【符号の説明】
1 :固定子 11:絶縁板 12:幹線電極 121:A相幹線電極 122:B相幹線電極 13:共通配線 131:A相共通配線 132:B相共通配線 14:放電電極 141:A相放電電極 142:B相放電電極 2 :回転子 21:絶縁板 22:背面電極 3 :回転軸 4 :直流電源 5 :感光性樹脂 6 :感光部(電極支持部) 7 :電極用金属層 8 :レジスト 9、91、92:くし形電極

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも1対の極性の異なる電極を有す
    る固定子と、絶縁体からなる回転子とを微小空隙をもっ
    て対向させ、前記電極に印加した電圧により放電現象を
    発生させ、前記回転子に前記電極と同極の荷電粒子を帯
    電させて生じる反発力と、この反発力によって前記回転
    子が駆動して異極性の電極に接近した時に生ずる吸引力
    と、吸引後、異極性の電圧により荷電粒子の極性が異極
    性に変化したときの反発力との繰り返しによって前記回
    転子を駆動させるコロナモータにおいて、 前記固定子は、前記回転子の一方の側に設けた絶縁板
    と、前記絶縁板表面の中心から放射状に等角度のピッチ
    で延びた一方の極性の幹線電極と、前記幹線電極同志の
    間に前記絶縁板の縁淵部から中心に向かって等角度のピ
    ッチで延びた他方の極性の幹線電極と、前記幹線電極の
    表面に接触・導通させたコーン状または錘状の放電電極
    とからなり、かつ前記放電電極の先端を通る中心線を前
    記回転子表面の垂直線に対して傾斜させたことを特徴と
    するコロナモータ。
  2. 【請求項2】前記回転子の反空隙側の面に電気伝導性の
    膜を設けたことを特徴とする請求項1記載のコロナモー
    タ。
  3. 【請求項3】前記幹線電極は、内径側と外径側にそれぞ
    共通配線をもうけていることを特徴とする請求項1ま
    たは2のいずれかに記載のコロナモータ。
  4. 【請求項4】少なくとも1対の極性の異なる電極を有す
    る固定子と、絶縁体からなる回転子とを微小空隙をもっ
    て対向させ、前記電極に印加した電圧により放電現象を
    発生させ、前記回転子に前記電極と同極の荷電粒子を帯
    電させて生じる反発力と、この反発力によって前記回転
    子が駆動して異極性の電極に接近した時に生ずる吸引力
    と、吸引後、異極性の電圧により荷電粒子の極性が異極
    性に変化したときの反発力との繰り返しによって前記回
    転子を駆動させるコロナモータの製造方法において、 前記固定子は絶縁板の表面に中心から放射状に等角度で
    延びる幹線電極を配線し、この上に感光性樹脂を塗布し
    微細マスクをもうけて選択的に感光させ電極支持部をつ
    くり、その上に電極用の金属層を設け、さらにその上に
    放電電極となる部分にレジストマスクをもうけ、前記電
    極用の金属層を等方性エッチングによりコーン状または
    錘状の前記放電電極を形成し、前記感光性樹脂の非感光
    部を溶解除去した後、前記幹線電極にパルス電圧を印加
    して前記放電電極を接触・導通させて作製することを特
    徴とするコロナモータの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記幹線電極および前記放電電極をフォ
    トリソグラフィ技術を用い、前記放電電極のベースとな
    る前記金属層を電鋳により作製することを特徴とする請
    求項4記載のコロナモータの製造方法。
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