JP3289430B2 - セラミック多層基板及びその製造方法 - Google Patents

セラミック多層基板及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はセラミック多層基板に
係り、特にAu系導体の接続ビアとAg系内部導体配線
との間のAu系接続ビアへのAg系導体の拡散により生
ずる導通不良を低減したセラミック多層基板及びその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の小形軽量化や高密度化
にともなって回路基板として多層基板が使用されてい
る。さらに、信号伝播の高速化すなわち高周波化の要求
に答えるため、アルミナに比べて低誘電率でしかも10
00℃以下の低温度で焼結するガラス質材料を絶縁材料
として用い、配線材料として導電性が高く融点の低いA
g系,Au,Cu等の金属を用いるセラミック多層基板
が開発されてきている。
【0003】例えば、この種のセラミック多層基板とし
て特開昭62−279695号公報には、最上部表面に
Au系導体、内部導体配線に低コストで低抵抗のAg系
導体を用い、さらにこの表面のAu系導体配線パターン
と内部導体配線のAg系導体配線パターンとを接続する
接続ビアにAu系導体を用い、内部導体配線のAg系導
体配線パターンの各層間を接続する接続ビアにAg系導
体を用いた図3に示すような構造のセラミック多層基板
が開示されている。
【0004】図3において、参照符号10はセラミック
多層基板を示し、このセラミック多層基板10は、ガラ
ス質材料を絶縁材料とするn枚のグリーンシート10−
1〜10−nから構成される。例えば、グリーンシート
10−1〜10−nとしては、ガラス粉末とアルミナ粉
末よりなるセラミック絶縁体用混合粉末にトルエン等の
溶剤、有機バインダ、可塑剤を加え、充分混練してスラ
リー化した後、通常のドクターブレード法により作製
し、所定の大きさに打ち抜いたものが使用される。この
従来例の場合、第1層目のグリーンシート10−1上に
はAu系導体配線パターン12が印刷され、第2層目の
グリーンシート10−2から第n層目のグリーンシート
10−nにはAg系導体配線パターン14が印刷されて
いる。第1層目のグリーンシート10−1にはAu系導
体を充填した接続ビア16が所要個所に設けられ、第2
層目から第n層目のグリーンシート10−2〜10−n
にはAg系導体を充填した接続ビア18が所要個所に設
けられている。これら各グリーンシート10−1〜10
−nを重ねて熱圧着を行い、900℃で焼成を行うこと
により所望のセラミック多層基板が作製される。
【0005】このように、最上層の配線はAu系導体を
使用しているので耐マイグレーション特性に優れ信頼性
が高く、しかもAg系導体配線は基板の内部に完全に包
含され基板表面から隔絶しているので、湿中電界下にお
けるマイグレーション耐性が向上し、マイグレーション
による接続不良が生じにくいセラミック多層基板を得て
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た耐マイグレーション特性の向上を図った構造を有する
セラミック多層基板において、Au系導体を充填した接
続ビア16とAg系内部導体配線14との間で導通不良
が生じるという問題が発生した。これらの導通不良部の
断面を観察した結果、Ag系内部導体配線14のAgが
焼成時に接続ビア16中へ拡散してビア16とAg系内
部導体配線14との接続部周辺において、Ag系内部導
体配線14の厚みが減少し、その接続部周辺個所で断線
或いは導通不良を生じていることが判明した。Ag系内
部導体配線の厚さをAu系導体ビアへAgが拡散しても
充分な厚さが残るように厚くすることも考えられたが、
しかしグリーンシート上へこのような厚いAg導体ペー
ストを印刷することは、パターンエッジ部でのダレによ
り線間精度が悪くなるだけでなく反りや割れが発生する
という難点があった。また、配線パターンとなるAu系
導体を後焼成を施して形成する場合も、同様の問題が生
じる。
【0007】そこで、本発明の目的は、焼成後に生じる
Au系接続ビアとAg系導体を用いた内部導体配線との
間の導通不良を回避できるセラミック多層基板及びその
製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係るセラミック
多層基板は、導体配線層とセラミック絶縁層とが交互に
複数積層されて構成され、前記各導体配線層の中で各種
能動素子及び受動素子が接続されるべき表面の外部導体
配線層にAu系導体を用いると共に、前記各導体配線層
の中でセラミック絶縁層に挾まれる内部導体配線層にA
g系導体を用い、且つ前記各導体配線層間の接続に金属
導体を充填した接続ビアを用いて構成されるセラミック
多層基板において、前記Au系導体の外部導体配線層と
前記Ag系導体の内部導体配線層の第1層目との間を接
続する接続ビアの充填金属にAu系導体を用いるととも
に、該接続ビアは接続ビア径よりも大きなAg系パッド
を介して前記Ag系導体の第1層目内部導体配線層に接
するよう構成し、前記Ag系パッドから供給されるA
gによる前記接続ビアへのAg拡散領域を備えることを
特徴とする。
【0009】前記セラミック多層基板は、グリーンシー
トを所定の大きさに打ち抜き、打ち抜かれた各グリーン
シートに対して所要の位置にビアホール用の穴開けを行
った後、マスクを用いて第1層目となるグリーンシート
の前記ビアホールに対してはAu系導体ペーストを充填
し、第2層目以降となるグリーンシートの前記ビアホー
ルに対してはAg系導体ペーストを充填する印刷充填工
程を行い、次いで前記第1層目となるグリーンシートに
所要の配線パターンをAu系導体ペーストを用いてスク
リーン印刷し、第2層目以降となるグリーンシートには
それぞれ所要の配線パターンをAg系導体ペーストを用
いて導体印刷し、さらに第1層目の前記Au系導体ペー
ストが充填されたビアホールと接続すべき第2層目のA
g系導体の配線上に、接続ビア径よりも大きなパッドを
設けるためにAg系導体のペーストを用いて2回目の導
体印刷を行った後、前記第1層目のグリーンシートおよ
び第2層目以降のグリーンシートとを所定の順に積層し
プレスした後、同時焼成し、前記パッドからAgが供給
されて接続ビアへAgが拡散されることにより得ること
ができる。
【0010】また、前記セラミック多層基板の製造方法
において、前記第1層目となるグリーンシート上にAu
系導体ペーストを用いてスクリーン印刷する工程を除い
て積層しプレスしたグリーンシートを焼成した後に、前
記第1層目となるグリーンシート上に所要の配線パター
ンをAu系導体ペーストを用いてスクリーン印刷し、そ
の後焼成する方法によっても得ることができる。
【0011】
【作用】本発明に係るセラミック多層基板によれば、最
上層のAu系導体を用いた外部導体配線パターンとAg
系導体を用いた内部導体配線パターンとを接続するため
のAu系導体を用いた接続ビアは、この接続ビア径より
も大きなAg系導体のパッドを介して内部導体配線パタ
ーンと接続される構造であるため、焼成時に生じる接続
ビアへのAg拡散のAgは前記パッドから供給される。
このため、Ag拡散によって生じるAg系導体を用いた
内部導体配線層の厚さ減少を防止でき、導通不良を回避
することができる。
【0012】また、本発明に係るセラミック多層基板の
製造方法によれば、同時焼成による製造方法の場合およ
び後焼成による製造方法の場合のいずれにおいても、A
u系導体を用いた接続ビアが接続されるAg系導体の内
部導体配線パターンが印刷されたグリーンシートに対し
て、さらにAg系導体ペーストを用いた2回目の導体印
刷工程を付加することにより、Au系導体の接続ビアが
接続されるべき前記内部導体配線ターン部分に導通不良
防止のためのAg系パッドを設けることができる。
【0013】
【実施例】次に本発明に係るセラミック多層基板の実施
例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明す
る。
【0014】図1は、本発明の一実施例を示すセラミッ
ク多層基板の断面構造を示す図であり、図2はこのセラ
ミック多層基板を製造する製造方法における主要工程線
図である。以下、図2の製造方法の工程に沿って、図1
の断面構造を参照しながら説明する。図2において参照
符号Aはグリーンシート作製工程を示し、この工程Aで
はガラス−アルミナからなる原料粉末に溶剤、有機バイ
ンダー、可塑剤を加えてスラリー化し、ドクターブレー
ド法によりグリーンシートを作製する。次に、このグリ
ーンシートをブランク工程Bにおいて所定の大きさに打
ち抜く。
【0015】工程Cにおいて、所定の大きさに打ち抜か
れたグリーンシートを所要枚数用意し、それぞれ最上層
から順に番号を仮に付けるとして、C1は第1層目とな
るグリーンシート20−1を表し、C2は第2層目とな
るグリーンシート20−2、C3…Cnはそれぞれ第3
層目となるグリーンシート20−3…第n層目となるグ
リーンシート20−nを表す。それぞれのグリーンシー
トC1…Cnは、以下順に工程D乃至Fを経て積層工程
Gへと処理が進められるが、各工程の添字1乃至nによ
り区別される相違は各グリーンシートC1乃至Cnに施
されるビアパンチパターンや導体印刷のマスクパターン
が異なることの他に次の相違点がある。すなわち、グリ
ーンシートC1に対してはビア埋め工程E1でビア用ペ
ーストとしてAu系導体を用いる点及び導体印刷工程F
1の導体用ペーストとしてAu系導体を用いる点、グリ
ーンシートC2に対してはビア埋め工程E2でビア用ペ
ーストとしてAg系導体を用いる点及び導体印刷工程F
2,F22の2回行うと共に導体用ペーストとしてAg
系導体を用いる点、グリーンシートC3…Cnに対して
はビア埋め工程E3…En及び導体印刷工程F3…Fn
において使用するビア用ペースト及び導体用ペーストに
Ag系導体を用いる点が相違する。
【0016】次に、ビアパンチ工程D1…Dnでは、各
グリーンシートC1…Cnに対してそれぞれ所要個所に
層間接続用のビアホールを形成する。
【0017】ビア埋め工程E1…Enでは、所要の導体
ペーストを各グリーンシートのビアホールに充填する。
ここで第1層目のグリーンシートC1に対するビア埋め
工程E1ではAu系導体ペースト26を用い、第2層目
以降のグリーンシートC2…Cnに対するビア埋め工程
E2…EnではAg系導体ペースト28を用いる。
【0018】導体印刷工程F1…Fnでは、配線パター
ンを所要の導体ペーストを用いて印刷する。すなわち、
第1層目のグリーンシートC1には上部回路配線パター
ン22をAu系導体ペーストを用いて導体印刷し、第2
層目以降のグリーンシートC2…Cnには内部回路配線
パターン24をAg系導体ペーストを用いて導体印刷を
行う。最上層の上部回路配線パターン22は,トランジ
スタ,LSI等の能動素子や、抵抗、コンデンサ等の受
動素子が接続される外部導体配線層であり、信頼性を高
くするためにAu系導体を用いている。ここで、第2層
目のグリーンシートC2は内部配線回路パターン24の
導体印刷(1)工程F2を行った後、導体印刷(2)工
程F22において更に第1層目のAu系導体接続ビア2
6と接続される個所の内部配線回路パターン24上に、
Ag系導体ペーストを用いてパッド30を導体印刷す
る。このときのパッド30の厚さは、後述する焼成時
に、AgがAu系導体接続ビアへ拡散しても下のAg系
導体配線パターン24に断線または導通不良を生じない
厚さとする。
【0019】なお、ビア用ペースト及び導体用ペースト
は、予めペースト作製工程Pにおいて作製しておく。ペ
ースト作製工程Pでは、ビア用ペースト及び導体用ペー
ストをそれぞれAu系,Ag系導体の金属粉末、バイン
ダー及び溶剤を混練して作製する。
【0020】次の積層工程Gにおいて、それぞれ導体印
刷工程F1…Fnを終えた所要枚数のグリーンシートC
1…Cnを、所定の順に重ねて100℃前後の温度と1
00〜150kg/cmの圧力を加えて熱圧着する。
【0021】更に、バーンアウト工程Hにおいて、40
0℃近辺の温度で脱バインダー処理を行い、バインダー
を除去する。
【0022】最後に、焼成工程Iにおいて、900℃で
焼成することにより、図1に示す構造のセラミック多層
基板20を得ることができる。
【0023】この本願発明に係る同時焼成によるセラミ
ック多層基板の製造方法における特徴は、第2層目のグ
リーンシートC2に対して導体印刷工程F22が付加さ
れている点である。この導体印刷工程F22は、第1層
目グリーンシートC1のAu系導体ビアと接続されるべ
き前記導体印刷工程F2で形成されたAg系導体配線パ
ターン位置上に、前記Au系導体ビア径に少なくとも位
置ずれ分を加えた径のAg系導体パッドを設ける工程で
ある。
【0024】尚、最上層のAu系導体配線パターン22
の導体印刷工程F1を行わずにグリーンシートC1を積
層して焼成後にAu系導体配線パターン22の導体印刷
を行い、さらに焼成する後焼成による製造方法を用いて
図1のセラミック多層基板の構造を得ることもできる。
この後焼成による製造方法の場合、焼成によって収縮後
のセラミック多層基板に対するAu系導体配線パターン
22の位置合わせに、さほど精度を要しないような用途
に適する。
【0025】
【発明の効果】前述した実施例から明らかなように、従
来、同時焼成あるいは後焼成のいずれの製造方法によっ
ても焼成時に、Au系導体を用いた接続ビアとAg系導
体配線との間でAgがAu系導体接続ビアへ拡散し、A
g系導体配線の厚さが接続ビア周辺で減少して断線や導
通不良が生じたりしたが、本発明のセラミック多層基板
によれば、Au系接続ビア26とAg系導体配線24と
をAg系パッド30を介して接続する構造としたことに
より、焼成時に生じるAg系導体配線のAu系導体接続
ビア周辺での配線厚さの減少を押さえることができ、断
線或いは導通不良を回避することができる。
【0026】同時焼成あるいは後焼成のいずれの製造方
法においても、第2層目のグリーンシートに対して内部
配線回路パターンの導体印刷を行った後に、所定のパッ
ドを印刷する第2回目の導体印刷を行う工程を付加すれ
ば良いだけであるので、製造方法の変更を容易に行うこ
とができる。
【0027】以上、本発明の好適な実施例について説明
したが、本発明は前記実施例に限定されることなく、本
発明の精神を逸脱しない範囲内において種々の設計変更
をなし得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミック多層基板の一実施例を
示す断面構造図である。
【図2】図1のセラミック多層基板の製造方法の主要工
程を示す工程線図である。
【図3】従来のセラミック多層基板を示す断面構造図で
ある。
【符号の説明】
10 セラミック多層基板 10−1 第1層目グリーンシート 10−n 第n層目グリーンシート 12 Au系導体配線 14 Ag系内部導体配線 16 Au系導体接続ビア 18 Ag系導体接続ビア 20 セラミック多層基板 20−1 第1層目グリーンシート 20−n 第n層目グリーンシート 22 外部回路配線パターン(Au系外部導体配線) 24 内部回路配線パターン(Ag系内部導体配線) 26 Au系導体接続ビア 28 Ag系導体接続ビア 30 パッド
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05K 3/46

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導体配線層とセラミック絶縁層とが交互
    に複数積層されて構成され、前記各導体配線層の中で各
    種能動素子及び受動素子が接続されるべき表面の外部導
    体配線層にAu系導体を用いると共に、前記各導体配線
    層の中でセラミック絶縁層に挾まれる内部導体配線層に
    Ag系導体を用い、且つ前記各導体配線層間の接続に金
    属導体を充填した接続ビアを用いて構成されるセラミッ
    ク多層基板において、前記Au系導体の外部導体配線層
    と前記Ag系導体の内部導体配線層の第1層目との間を
    接続する接続ビアの充填金属にAu系導体を用いるとと
    もに、該接続ビアは接続ビア径よりも大きなAg系パッ
    ドを介して前記Ag系導体の第1層目内部導体配線層に
    接続するよう構成し、前記Ag系パッドから供給される
    Agによる前記接続ビアへのAg拡散領域を備えること
    を特徴とするセラミック多層基板。
  2. 【請求項2】 グリーンシートを所定の大きさに打ち抜
    き、打ち抜かれた各グリーンシートに対して所要の位置
    にビアホール用の穴開けを行った後、マスクを用いて第
    1層目となるグリーンシートの前記ビアホールに対して
    はAu系導体ペーストを充填し、第2層目以降となるグ
    リーンシートの前記ビアホールに対してはAg系導体ペ
    ーストを充填する印刷充填工程を行い、次いで前記第1
    層目となるグリーンシートに所要の配線パターンをAu
    系導体ペーストを用いてスクリーン印刷し、第2層目以
    降となるグリーンシートにはそれぞれ所要の配線パター
    ンをAg系導体ペーストを用いて導体印刷し、さらに第
    1層目の前記Au系導体ペーストが充填されたビアホー
    ルと接続すべき第2層目のAg系導体の配線上に、接続
    ビア径よりも大きなパッドを設けるためにAg系導体の
    ペーストを用いて2回目の導体印刷を行った後、前記第
    1層目のグリーンシートおよび第2層目以降のグリーン
    シートとを所定の順に積層しプレスした後、同時焼成
    し、前記パッドからAgが供給されて接続ビアへAgが
    拡散されることを特徴とするセラミック多層基板の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のセラミック多層基板の製
    造方法において、前記第1層目となるグリーンシート上
    にAu系導体ペーストを用いてスクリーン印刷する工程
    を除いて積層しプレスしたグリーンシートを焼成した後
    に、前記第1層目となるグリーンシート上に所要の配線
    パターンをAu系導体ペーストを用いてスクリーン印刷
    し、その後焼成することを特徴とするセラミック多層基
    板の製造方法。
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