JP3283684B2 - 光送信器およびその駆動方法 - Google Patents

光送信器およびその駆動方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光インタコネクトや光
加入者系通信システムにおいて、広い温度範囲で動作す
る光送信器に関し、特にその温度変動によるジッタの低
減に好適な光送信器およびその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、光インタコネクトや光加入者系通
信システムにおいて、自動光出力制御や自動温度制御無
しで、広い温度範囲にて動作する光送信器の実現が、モ
ジュールの小型化・簡略化・低消費電力化・低コスト化
の観点から切望されている。
【0003】そのような広い温度範囲で動作する光送信
器の例として、1993年電子情報通信学会春季大会講
演論文集B−1040:「多チャンネル光送信モジュー
ル」がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術では、L
Dの駆動条件は、バイアス電流=しきい電流(25℃)
としているため、25℃での発振遅延時間は、0psecで
あるが、この設定で温度を60℃まで上げた時の発振遅
延時間は、200psecとなっている。つまり、25℃か
ら60℃までの温度変動に伴って、約200psecのジッ
タが発生している。一方、この送信モジュールの全ch動
作時のジッタ量、すなわち、クロストーク、スキュー、
パターン効果などによるジッタは、入力の位相を同一位
相としたとき最悪で110psecである。ゆえに、光出力
波形の全デューティ変動(ジッタ)の310psecのう
ち、温度変動による効果が、ジッタ量全体の約2/3を
占めるに至っている。
【0005】しかしながら上記従来技術では、この温度
変動によるジッタの低減については、触れられていな
い。
【0006】本発明の目的は、このような温度変動によ
るジッタを低減し、自動光出力制御や自動温度制御無し
で、広い温度範囲にて動作する光送信器及びその駆動方
法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、レーザダイ
オードと該レーザダイオードを駆動する回路から構成さ
れる光送信器において、該レーザダイオードのしきい電
流の特性温度T0と、該レーザダイオードのキャリア寿
命時間の特性温度T1と、前記レーザダイオード駆動回
路の駆動電流の特性温度Tmの間に、 1/T0+1/T1=1/Tm なる関係がほぼ成り立つように、駆動電流に温度依存性
を持たせることにより達成される。
【0008】
【作用】レーザダイオードと該レーザダイオードを駆動
する回路から構成される光送信器において、該レーザダ
イオードのしきい電流の特性温度T0と、該レーザダイ
オードのキャリア寿命時間の特性温度T1と、前記レー
ザダイオード駆動回路の駆動電流の特性温度Tmの間
に、 1/T0+1/T1=1/Tm なる関係がほぼ成り立つように、駆動電流に温度依存性
を持たせることにより、該レーザダイオードのキャリア
寿命時間tn、しきい電流Ithと前記レーザダイオー
ド駆動回路の駆動電流Imという3つのパラメータの温
度依存性を持つファクタがほぼ相殺されるため、レーザ
ダイオードの発振遅延時間が温度によらずほぼ一定とな
り、したがって、自動温度制御無しであるにもかかわら
ず、温度変動による光出力波形のジッタをほぼなくすこ
とができる。
【0009】
【実施例】図1に、本発明による光送信器の一実施例を
示す。光送信器1の外部から電気信号2がレーザダイオ
ード駆動回路3へ入力され、この駆動回路3から生成さ
れる駆動電流によってレーザダイオード4が駆動され
る。ここで、レーザダイオードのしきい電流の特性温度
T0と、レーザダイオードのキャリア寿命時間の特性温
度T1と、レーザダイオード駆動回路の駆動電流の特性
温度Tmの間に、 1/T0+1/T1=1/Tm なる関係がほぼ成り立っている。
【0010】このレーザダイオード駆動回路3は、レー
ザダイオード4へバイアス電流Ibを与えることもでき
る。レーザダイオード駆動回路3とレーザダイオード4
は熱的に結合されており、両者の温度はほぼ等しい。
【0011】ここで、特性温度T0と特性温度Tmは、
それぞれ(数1)、(数2)で定義されている。Tは温度
(℃)、Ith0とIm0は、それぞれ、25℃におけ
るレーザダイオード4のしきい電流と25℃におけるレ
ーザダイオード駆動回路3の駆動電流である。
【0012】
【数1】
【0013】
【数2】
【0014】図2に、光送信器に搭載したレーザダイオ
ード4のしきい電流Ithとキャリア寿命時間tnの温
度特性例を示す。レーザダイオード4として、p基板上
の歪多重量子井戸レーザダイオードを用いている。図2
のように、(数1)の特性温度T0は55K(ケルビ
ン)、キャリア寿命時間tnの特性温度T1は−100
K(ケルビン)である。ここで、特性温度T1は(数
3)で定義されている。tn0は、25℃におけるレー
ザダイオード4のキャリア寿命時間である。
【0015】
【数3】
【0016】レーザダイオードのキャリア寿命時間の特
性温度T1は、しきい電流の特性温度T0のほぼ−2倍
となっている。一方、駆動電流の特性温度Tmは、T0
の2倍の110Kとした。
【0017】以上が、本発明による光送信器の一構成の
概要である。
【0018】次に、レーザダイオード駆動回路の駆動電
流の特性温度を、レーザダイオードのしきい電流の特性
温度の2倍としている理由を説明する。
【0019】”半導体レーザ[基礎と応用](伊藤・中
村共編)、培風館、1989、pp.154”、などに
記載されているように、レーザダイオードの発振遅延時
間Tdは、レーザダイオードのしきい電流Ith及びキ
ャリア寿命時間tnとレーザダイオードへ与える駆動電
流Im及びバイアス電流Ibを用いて、一般に(数4)
のように表される。
【0020】
【数4】
【0021】しきい電流が小さいレーザダイオードへあ
らかじめ微小なバイアス電流を与えておいて、そのレー
ザダイオードを駆動する場合、(数5)の関係が成立し
ていれば、(数4)は(数6)のように近似できる。
【0022】
【数5】
【0023】
【数6】
【0024】したがって、レーザダイオード駆動回路の
駆動電流の特性温度を、レーザダイオードのしきい電流
の特性温度の2倍にしておくことにより、レーザダイオ
ードのしきい電流の特性温度T0と、レーザダイオード
のキャリア寿命時間の特性温度T1と、レーザダイオー
ド駆動回路の駆動電流の特性温度Tmの間に、 1/T0+1/T1=1/Tm なる関係がほぼ成り立つ。
【0025】ゆえに、レーザダイオードのキャリア寿命
時間tn、しきい電流Ithとレーザダイオード駆動回
路の駆動電流Imという3つのパラメータの温度依存性
を持つファクタがほぼ相殺されるため、レーザダイオー
ドの発振遅延時間が温度によらずほぼ一定となり、した
がって、自動温度制御無しであるにもかかわらず、温度
変動による光出力波形のジッタをほぼなくすことができ
るわけである。
【0026】図3に、本発明により試作した光送信器の
発振遅延時間の温度特性を黒丸で示す。使用したレーザ
ダイオードのデバイスパラメータは、tn0=2.5nse
c、Ith0=3.0mA、T0=55K、T1=−10
0Kである。一方、レーザダイオード駆動回路のパラメ
ータは、Im0=30.0mA、Ib=1.5mA、Tm
=110Kである。
【0027】グラフより、0℃から100℃までの温度
変動に伴う発振遅延時間の温度依存性がほぼキャンセル
され、温度変動によるジッタが、駆動電流Im=30.
0mA(固定)である光送信器(図3の白丸を参照)の
場合と比べると、約1/20に低減されていることが分
かる。
【0028】また、その発振遅延時間は約150psecで
あるから、許容される発振遅延時間をデータスロット
(データパルス幅)の約20%と考えると、本発明の光
送信器によって、0℃から100℃までの広い温度範囲
にわたって、ギガビット級(Gbit/s)の高速デー
タ伝送ができる。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、レーザダイオードを用
いた光送信器において、自動温度制御無しであるにもか
かわらず、レーザダイオードの発振遅延時間が温度によ
らずほぼ一定となり、温度変動によるジッタをほぼなく
すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光送信器の一実施例。
【図2】光送信器に搭載したレーザダイオードのしきい
電流とキャリア寿命時間の温度依存性例。
【図3】本発明により試作した光送信器の発振遅延時間
の温度特性。
【符号の説明】
1…光送信器、2…電気信号、3…レーザダイオード駆
動回路、4…レーザダイオード。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H04B 10/152 10/18 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H04B 10/00 - 10/28 H04J 14/00 - 14/08 H01S 5/068

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】レーザダイオードと前記レーザダイオード
    を駆動する回路から構成される光送信器において、前記
    レーザダイオードのキャリア寿命時間tn、しきい電流It
    hおよび前記レーザダイオード駆動回路の駆動電流Imと
    の間にtn × Ith / Im=略一定の関係が成り立ち、 前記レーザダイオードのしきい電流の特性温度T0と、前
    記レーザダイオードのキャリア寿命時間T1と、前記レー
    ザダイオード駆動回路の駆動電流の特性温度Tmとの間に
    1/T0+1/T1=1/Tmの関係が成り立ち、かつ、 前記レーザダイオードのしきい電流IthはIth=Ith0 × e
    xp((T-25)/T0)(ここでIth0は25℃における前記レーザ
    ダイオードのしきい電流値、Tは前記レーザダイオード
    の温度(℃)。但し、レーザダイオード駆動回路とレー
    ザダイオードとは熱的に結合されており、両者の温度は
    ほぼ等しい。以下同じ。)で表され、 前記レーザダイオード駆動回路の駆動電流ImはIm=Im0
    × exp((T-25)/Tm)(ここでIm0は25℃における前記レー
    ザダイオード駆動回路の駆動電流値。)で表され、 前記レーザダイオード駆動回路の駆動電流の特性温度Tm
    はTm=tn0 × exp((T-25)/T1)(ここでtn0は25℃におけ
    る前記レーザダイオードのキャリア寿命時間。)で表さ
    れ、 レーザダイオードの発振遅延時間TdはTd≒(tn×Ith)/
    Imで表され、 前記Tmの値を前記T0の値の2倍に設定したことを特徴と
    する光送信器。
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