JP3279630B2 - 石炭の乾留方法 - Google Patents

石炭の乾留方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、石炭の乾留方法、特に
コークス炉炭化室内での乾留速度のばらつきを低減し、
炭化時間を短縮するとともに、コークス品質のばらつき
を減少して全体としてコークス品質を向上させる石炭の
乾留方法に関する。
【0002】
【従来の技術】室炉式コークス製造方法において、乾留
進行速度を早め生産性を向上させる方法としては、事前
処理により、原料炭中の水分を8〜11%から5〜6%
に低減する調湿炭法や、原料炭の温度を200℃前後ま
で予熱する予熱炭法などの技術があり、これらの技術に
より、大幅な生産性向上が可能であることが知られてい
る。
【0003】しかし、これらの技術を実用化するには、
乾燥機や予熱機などの大型設備や、発塵防止対策などに
多大な設備投資を必要とする。また、調湿炭法や予熱炭
法では炭化室内の装入密度が向上するので、石炭乾留過
程における膨張圧が増大し、炉壁が損傷する危険性があ
る。そのため、調湿炭法や予熱炭法は、現在一部のコー
クス工場で実用化されているに過ぎず、日本国内の多く
のコークス炉は従来からの湿炭装入による操業を行って
いるのが実状である。
【0004】この問題点を解決するため、乾留に先だっ
て装入炭中に、石炭乾留中に形成される軟化溶融層で包
囲される未乾留部分とコークス炉の上部空間とを通ぜし
める通路(抽気孔)を形成し、この通路を通して未乾留
部分から発生する水蒸気を排出しながら乾留する乾留方
法が提案されている。しかし、この方向では、装入炭中
にコークス炉の上部空間と通じる通路(抽気孔)を開け
る方法とその手段(装置)が課題であり、開孔装置への
設備投資や高稼動率操業下での開孔作業の難しさを考慮
すると、まだ残存する問題は多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、6〜12%
の水分を含む湿炭をコークス炉炭化室で乾留する際に、
乾留速度のばらつきを低減し、炭化時間を短縮するとと
もに、コークス品質のばらつきを減少し全体としてコー
クス品質を向上させる石炭の乾留方法を提供することを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記のよう
な問題点を解決するため、湿炭を用いた室炉式コークス
製造法において乾留速度を向上させる方法について検討
を行ってきた。実炉炭化室を、乾留進行中に急速に冷却
し、乾留の進行過程を観察した試験結果によると、湿炭
では炭化室内の任意の位置において局部的に極端な乾留
の進行遅れが生じることが知られている。発明者らは、
湿炭を乾留する際、石炭乾留中に形成される軟化溶融層
で包囲された未乾留石炭層内で発生した水蒸気が、局所
的に炉壁方向に噴出し、炉壁近傍および炉壁近傍のコー
クスを冷却するため乾留の進行が局部的に遅れることを
発見し、他の部分は乾留が終了していても、この局部的
に極端に乾留進行が遅れている部分の火落ちが遅れるた
め、コークス炉の炭化室一窯全体の火落ちが約30分か
ら2時間遅れてしまうことを見いだした。
【0007】また発明者らは、軟化溶融層の厚み(乾留
条件、および幅方向の位置により異なるが、2mm〜2
0mm。なお本発明においては、事前に軟化溶融層の厚
みを求めておくことが必要。)よりも大きな不溶融物
(例えば塊コークスや無煙炭など)を石炭層中に入れて
乾留を行うと、不溶融物の存在する場所で軟化溶融層が
とぎれ、不連続な軟化溶融層が形成されることを見いだ
した。さらに発明者らは、図1に示すようにこの不溶融
物1と軟化溶融層2の界面では、水蒸気などのガスが流
れやすいことを発見した。図中3は石炭層、4はコーク
ス層、5は炉塵を示す。本発明はこの知見に基づいてな
された。
【0008】本発明は、室炉式コークス炉により石炭を
乾留する際、コークス炉炭化室内で石炭乾留過程で生じ
る軟化溶融層の厚みよりも大きな粒度3〜25mmの小
塊コークスまたは/および小塊セミコークス、塊状の無
煙炭または/および半無煙炭、あるいは、内径1〜30
mm、外径3〜50mm、長さ15〜100mmの竹筒
を0.5〜3%(重量基準)装入炭中に配合して未乾留
部分で発生する水蒸気を炉壁方向に排出させることを特
徴とする。
【0009】すなわち、未乾留部分とコークス炉の上部
空間とを通ぜしめる通路によって炉頂方向に水蒸気を抜
かなくとも、局所的な水蒸気の吹きだしを抑制し、炉壁
方向に水蒸気が均一に抜けるように水蒸気の抜け道をあ
らかじめ確保しておけさえすれば、火落ちのネックとな
っている極端な乾留進行遅れ部分が消滅する。
【0010】具体的には、軟化溶融しない塊コークスや
セミコークス、無煙炭、半無煙炭の塊、および竹筒など
を石炭中にランダムに適量混在せしめることにより、乾
留過程において不連続な軟化溶融層を形成させ、これら
の塊コークスや無煙炭と軟化溶融層の界面、あるいは竹
筒の空洞部を通じて石炭層側からコークス層側に水蒸気
を排出させる。このような水蒸気の抜け道は炭化室中に
たくさんあるので、水蒸気が軟化溶融層をつきやぶって
局所的に炉壁方向に噴出することはなく、多くの抜け道
から容易に水蒸気は壁方向に流れる。この結果、炉壁の
一部分が局部的に冷却されて極端な乾留の進行遅れが生
じることはなくなり、乾留速度のばらつきが減少してコ
ークス炉の炭化室一窯の火落ち時間が短くなり、炭化時
間が短縮される。また、乾留速度のばらつきが減少する
結果、コークス品質のばらつきも減少し全体としてコー
クス品質が向上する。
【0011】
【実施例】実施例1 揮発分26.0%、灰分8.9%、最高流動度(log
MF=)3.10の配合炭(水分9%)を、鉄製の装入
缶に入れたのち、装入缶を試験コークス炉の炭化室に装
入して炉温1250℃で乾留試験を2回行った。
【0012】1回目は、乾留開始6時間後に、装入缶を
試験炉内よりとりだし、水にて急冷・消火し、乾留の進
行状況を観察した。高さ方向中央での炭化室水平断面図
を図2に示す。
【0013】また2回目は、炭化室中心温度が1000
℃に到達してから装入缶を試験炉よりとりだし、窒素ガ
スで冷却後できたコークスの強度を測定した。コークス
強度としては、ドラム強度(JIS K 2151 に
よる)と反応後強度(1100℃で二酸化炭素と2時間
反応させた後の強度)を測定した。その結果を表1に示
す。
【0014】実験番号1(図2(a))は、塊コークス
や無煙炭などを混合しなかった場合で、コークス層の厚
みにばらつきがあり、乾留進行のばらつきがあることが
わかる。
【0015】実験番号2(図2(b))は、粒度3〜2
5mmの小塊コークスを2%混合した場合で、実験1に
比べると、ばらつきはかなり改善され、乾留は均一化さ
れている。さらに、乾留進行速度は、実験1で最も早く
乾留が進んでいる部分と同じ程度である。また、コーク
ス強度は若干低下しているものの、配合などでカバーで
きる範囲の低下代であるといえる。
【0016】実験番号3は、粒度3〜25mmの無煙炭
を2%混合した場合で、やはり実験1に比べると、ばら
つきはかなり改善され、乾留は均一化されている。さら
に、乾留進行速度は、実験1で最も早く乾留が進んでい
る部分と同じ程度である。また、コークス強度は若干低
下しているものの、配合などでカバーできる範囲の低下
代であるといえる。
【0017】
【表1】
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
湿炭をコークス炉炭化室で乾留する際に、乾留速度のば
らつきを減少し、炭化時間を短縮するとともに、コーク
ス品質のばらつきを減少させることができる。
【0019】この方法は多大な設備投資を必要としない
簡便な方法であり、しかも高炉に使用しにくい粒度の小
さなコークスを有効に使用することができるので、コー
クス塊歩留向上にもつながり、その経済的な効果は大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概念を示す、不溶融物と軟化溶融層の
界面で水蒸気などのガスが流れやすいことを示す図であ
る。
【図2】急冷後の高さ方向中央での炭化室水平断面図で
あり、(a)塊コークス未添加と(b)添加の場合で乾
留進行状況の違いを示す図。
【符号の説明】
1…不溶融物 2…軟化溶融 3…石炭層 4…コークス層 5…炉壁 6…装入缶
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C10B 47/10 C10B 57/04

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 室炉式コークス炉により石炭を乾留する
    際、コークス炉炭化室内で石炭乾留過程で生じる軟化溶
    融層の厚みよりも大きな粒度3〜25mmの小塊コーク
    スまたは/および小塊セミコークスを0.5〜3%装入
    炭中に配合して未乾留部分で発生する水蒸気を炉壁方向
    に排出させることを特徴とする石炭の乾留方法。
  2. 【請求項2】 室炉式コークス炉により石炭を乾留する
    際、コークス炉炭化室内で石炭乾留過程で生じる軟化溶
    融層の厚みよりも大きな粒度3〜25mmの塊状の無煙
    炭または/および半無煙炭を0.5〜3%装入炭中に配
    合して未乾留部分で発生する水蒸気を炉壁方向に排出さ
    せることを特徴とする石炭の乾留方法。
  3. 【請求項3】 室炉式コークス炉により石炭を乾留する
    際、内径1〜30mm、外径3〜50mm、長さ15〜
    100mmの竹筒を0.5〜3%(重量基準)装入炭中
    に配合して未乾留部分で発生する水蒸気を炉壁方向に排
    出させることを特徴とする石炭の乾留方法。
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