JP3279062B2 - 耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法

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JP3279062B2 JP11916394A JP11916394A JP3279062B2 JP 3279062 B2 JP3279062 B2 JP 3279062B2 JP 11916394 A JP11916394 A JP 11916394A JP 11916394 A JP11916394 A JP 11916394A JP 3279062 B2 JP3279062 B2 JP 3279062B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車、建築資材、
電気機器等に使用される鋼板に好適な耐食性に優れた表
面処理鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、鋼材の防食方法として、塗
装、めっき等の表面被覆層を設けることにより、鋼材と
腐食生成物質との接触を断ち防食性を向上させるという
手法が用いられている。しかし、鋼材を使用形態に応じ
て加工する際、被覆されていない剪断面や、加工時の応
力による被覆層の剥離が発生し鋼材が露出して腐食が生
じる。また、このような表面被覆層により製造コストも
上昇する。さらに鋼材に被覆層があることからリサイク
ル性にも問題があり、近年の環境への関心の高まりにつ
いても配慮する必要がある。このような視点から、それ
自体の耐食性に優れた鋼材が求められるようになってい
る。
【0003】このような背景の下、材質面を改良して鋼
材自体の耐食性を高めた耐候性鋼が知られている。これ
は、腐食の進行に伴い表面に緻密な錆層が形成し、これ
が一種の表面被覆としての役割を果たすものである。し
かし、耐候性鋼をそのまま板厚の薄い例えば冷延鋼材に
適用すると、緻密な錆層が形成される前に腐食により穴
開きが発生する虞がある。このことから、板厚の薄い冷
延鋼材において、耐食性の改善が求められている。
【0004】このような冷延鋼材として、Cr,Cuを
添加し、(S/Cu)を0.5以下に規定したものが提
案されている(特開平2−156042号参照)。しか
しながら、これはCrを添加しているため、孔食の問題
が指摘されている。また別の技術としてはCu,Pを添
加して耐食性を得る技術も提案されているが(特開平4
−235250号参照)、P添加による加工性の劣化は
避けられない。一方、Cu,P複合添加によって耐食性
を高めた鋼を用い、さらに深絞り性を向上させるため
に、2回冷間圧延を行う技術も提案されているが(特開
平4−285125号参照)、冷圧回数の増加による、
製造コストの上昇は免れない。このように、現在までの
技術では耐食性、加工性、コスト等の観点からすべての
条件を満たした鋼板は存在しない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情
に鑑みてなされたものであって、優れた加工性等を維持
したまま、製造コストが低く、耐食性に優れた表面処理
鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】一般に鋼板の耐食性は、
初期錆発生の起点となる鋼材表面の析出物などに影響を
受け、初期錆発生後の腐食の進行は、粒界など鋼材での
ミクロな不均一部の性状により異なるとされている。こ
れらの耐食性に影響をおよぼす因子は、鋼材の成分と密
接に関係している。本発明者らは、耐食性を支配する鋼
材成分に関して種々検討し、前述した従来技術における
課題を解決することについて検討を重ねた。
【0007】その結果、極低炭素鋼を基本に、腐食発生
に強く影響を及ぼすS量を制御し、耐食性に有効な働き
をするCuを添加してCuに対するSの比(S/Cu)
の値を0.1以下にし、さらに粒界の耐食性に関与する
B,Tiを適量添加することによって、鋼板自体が耐食
性の優れたものとなり、その少なくとも一方の表面にF
e−Ni−Pを主成分とする拡散合金領域を形成するこ
とにより、極めて高い耐食性を有する表面処理鋼板が得
られることを見出した。
【0008】本発明は、このような知見に基づいてなさ
れたものであり、第1に、重量%で、C:0.001〜
0.005%、Si:0.1%以下、Mn:0.05〜
0.3%、P:0.02%以下、S:0.001〜0.
01%、N:0.004%以下、sol.Al:0.1
%以下、Ni:0.05〜0.3%、Ti:0.005
〜0.1%、Cu:0.05〜0.3%、B:0.00
02〜0.002%、残部Fe及び不可避不純物からな
り、重量比で(S/Cu)≦0.1を満たす鋼板と、そ
の少なくとも一方の表面に形成され、Fe−Ni−Pを
主成分とする拡散合金領域と、を具備することを特徴と
する耐食性に優れた表面処理鋼板を提供するものであ
る。
【0009】第2に、重量%で、C:0.001〜0.
005%、Si:0.1%以下、Mn:0.05〜0.
3%、P:0.02%以下、S:0.001〜0.01
%、N:0.004%以下、sol.Al:0.1%以
下、Ni:0.05〜0.3%、Ti:0.005〜
0.1%、Cu:0.05〜0.3%、B:0.000
2〜0.002%、残部Fe及び不可避不純物からな
り、重量比で(S/Cu)≦0.1を満たす鋼板と、そ
の少なくとも一方の表面に形成され、Fe−Ni−Pを
主成分としW,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上
を含有する拡散合金領域と、を具備することを特徴とす
る耐食性に優れた表面処理鋼板を提供する物である。
【0010】第3に、重量%で、C:0.001〜0.
005%、Si:0.1%以下、Mn:0.05〜0.
3%、P:0.02%以下、S:0.001〜0.01
%、N:0.004%以下、sol.Al:0.1%以
下、Ni:0.05〜0.3%、Ti:0.005〜
0.1%、Cu:0.05〜0.3%、B:0.000
2〜0.002%、残部Fe及び不可避不純物からな
り、重量比で(S/Cu)≦0.1を満たす鋼板を、酸
洗した後焼鈍の前に、または酸洗しさらに冷間圧延した
後焼鈍の前に、前記鋼板の少なくとも一方の表面に電気
めっきまたは無電解めっきによってPを8〜18重量%
含有し、付着量0.05g/m2 超え8g/m2 以下の
Ni−Pめっきを施し、ただちに非酸化性雰囲気で50
0〜880℃で拡散熱処理を行い、鋼板素地表面にFe
−Ni−Pを主成分とする拡散合金領域を形成すること
を特徴とする耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法を
提供するものである。
【0011】第4に、重量%で、C:0.001〜0.
005%、Si:0.1%以下、Mn:0.05〜0.
3%、P:0.02%以下、S:0.001〜0.01
%、N:0.004%以下、sol.Al:0.1%以
下、Ni:0.05〜0.3%、Ti:0.005〜
0.1%、Cu:0.05〜0.3%、B:0.000
2〜0.002%、残部Fe及び不可避不純物からな
り、重量比で(S/Cu)≦0.1を満たす鋼板を、酸
洗した後焼鈍の前に、または酸洗しさらに冷間圧延した
後焼鈍の前に、前記鋼板の少なくとも一方の表面に電気
めっきまたは無電解めっきによってPを8〜18重量
%、W,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上を15
重量%以下の範囲で含有し、付着量0.05g/m2
え8g/m2 以下のNi−Pめっきを施し、ただちに非
酸化性雰囲気で500〜880℃で拡散熱処理を行い、
鋼板素地表面にFe−Ni−Pを主成分とする拡散合金
領域を形成することを特徴とする耐食性に優れた表面処
理鋼板の製造方法を提供するものである。
【0012】第5に、上記いずれかの方法における非酸
化性雰囲気での拡散熱処理に際し、連続焼鈍炉によって
加熱することにより、鋼板素地とめっき層の界面にFe
−Ni−Pを主成分とする拡散合金領域が形成されるこ
とを特徴とする耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法
を提供するものである。
【0013】
【作用】以下、本発明について詳細に説明する。まず、
本発明の根拠となる実験結果について説明する。重量%
で、C:0.001 〜0.005 %、Si:0.1 %以下、Mn:
0.05〜0.3 %、P:0.02%以下、N:0.004 %以下、N
i:0.05〜0.3 %、sol.Al:0.1%以下を満た
し、残部がFe及び不可避不純物からなる成分組成を基
本とし、さらに、S:0.2 %以下、Ti:0.005 〜0.1
%、Nb:0.025 %以下、B:0.0002〜0.002 %、C
u:0.3 %以下の各元素の量を種々変化させ、組み合わ
せて添加した鋼板を用意し、その鋼板の少なくとも一方
の表面に、Fe−Ni−Pを主成分とし、W,Mo,C
r,Cuの一種または二種以上を含有する拡散合金層を
形成し、さらにその上にZn系めっきを有する表面処理
鋼板の耐食性を調査した。
【0014】ここでは、乾湿繰り返しに塩水噴霧を組み
合わせた腐食環境で60日間経過後の無塗装鋼板の腐食
深さを測定し、その平均腐食深さで耐食性を評価した。
ここでいう平均腐食深さとは、鋼板の露出部を10mm×10
mmの区画に分割し、その各区画内での最大浸食深さを測
定し平均したものである。
【0015】得られた平均腐食深さと重量比で表した
(S/Cu)値との関係を図1に示す。図1によりS/
Cu値の低下に伴い各鋼材の耐食性が良好になることが
わかる。また、Ti添加鋼、Ti、Nb添加鋼、B添加
鋼及びTi、B添加鋼の平均腐食深さを比較すると、特
にTi、Bを複合添加した鋼で、かつ(S/Cu)値が
0.1以下の時に、著しく耐食性が向上していることが
わかる。これはTi、B複合添加鋼の場合はTiがTi
Cを形成するので固溶炭素がなく、またBが粒界に偏析
して粒界からの腐食を抑制する効果を有しているためと
考えられる。
【0016】一方、Ti、B複合添加鋼以外の鋼におい
て耐食性が劣るのは次のような理由であると考えられ
る。まず、B単独添加鋼は、Bが窒化物形成元素である
ため、鋼中で固溶炭素が残存する。この固溶炭素はフェ
ライト粒内に存在するだけでなく粒界にも偏析する。こ
の影響でBが粒界に存在しにくくなる。このため、B単
独添加鋼では耐食性が劣るものと考えられる。Ti添加
鋼ではBの粒界偏析による腐食抑制効果が期待できない
ことからやはり耐食性が劣る。また、Nb添加鋼におい
てNbはNbCを生成するため固溶炭素は存在しない
が、Nbが粒界に偏析することはなく、耐食性向上には
さほど影響を及ぼさないと推測される。この点TiとB
とを複合添加した本発明鋼は、上述したように、鋼中に
固溶炭素がなく、さらにBが粒界に存在することによ
り、耐食性向上効果が顕著になり、Ti添加鋼、Ti,
Nb複合添加鋼、B添加鋼など他の添加元素の組み合わ
せよりも格段に優れた耐食性を有することは明らかであ
る。
【0017】次に、鋼成分の限定事由について説明す
る。なお、以下において%表示は全て重量%を表わす。 C:Cは鋼板の成形性を確保するためには少ないほうが
よく、0.005%を上限とする。しかし、0.001
%未満に低下させると、製造コストが上昇してしまう。
したがって、C量を0.001〜0.005%とした。
望ましくは0.003%以下である。
【0018】Si:Siは化成処理性を悪化させ、塗装
後耐食性に悪影響をもたらす。したがって少なければ少
ないほど望ましいが、製造コストなどを考えて、0.1
%以下とした。
【0019】Mn:Mnは耐食性向上のためには少なけ
れば少ないほど望ましく、0.3%を上限とする。しか
し、製造コストを考慮すると0.05%が事実上の下限
となる。したがって、Mn量を0.005〜0.3%と
した。
【0020】P:Pは熱間加工時に中央偏析しやすいの
で、多量に添加すると加工時に割れが生じやすくなる。
したがって、少ないほうが望ましくその上限を0.02
%とした。
【0021】S:Sは本発明において要求する耐食性に
非常に大きな影響を及ぼす。SはMnと結合しMnSを
生成する。これは初期錆発生の核となり、耐食性に悪影
響を及ぼすので低減させることが望ましいが、0.00
1%を下回ると製造コストの上昇を伴うだけでなく酸洗
時のスケール剥離性が低下する。一方、0.01%を超
えて含有させると鋼材の耐食性が著しく劣化する。した
がって、S量を0.001〜0.01%とした。
【0022】N:Nは鋼材の成形性を向上させるには、
少ないほうが望ましいが、本発明の効果を損なわない範
囲としてその上限を0.004%とした。望ましくは
0.003%以下である。
【0023】sol.Al:Alは、鋼の脱酸元素とし
て有効である。しかし、0.1重量%以上添加しても、
脱酸能力の向上効果が小さくなるので、0.1重量%以
下とした。
【0024】B:Bは粒界に偏析して、粒界からの腐食
の進行を抑制する。極低炭素鋼(IF鋼)は粒界が特に清
浄なため、Bを添加することにより、Bを粒界に偏析さ
せることができ、耐食性の向上には効果的である。ま
た、粒界を強化する作用も合わせて有する。しかし、
0.0002%未満ではそれらの効果が小さい。一方、
Bは熱間加工時の熱変形抵抗を上昇させるため、0.0
02%を超える過剰な添加は熱延時に形状不良及び、所
定板厚が得られない等の問題が発生しやすくなる。した
がって、B量を0.0002〜0.002%とした。
【0025】Ni:鋼にCuを添加している場合、熱間
加工時にCuによる表面疵発生率が上昇するが、Niは
この表面疵を低減させることに有効である。しかし、
0.05%未満ではその効果が得られず、0.3%を超
えると鋼材の成形性の劣化だけでなくコストの上昇を招
く。したがって、Ni量を0.05〜0.3%とした。
【0026】Ti:TiはTiN,TiS等を生成し、
N,S等を減少させ、耐食性の向上に大きな役割を果た
す。また鋼中固溶Cを減少させ、深絞り性を向上させる
作用がある。しかし、0.005%未満ではそれらの効
果が小さい。一方、0.1%を超えるとコストの上昇を
招く。したがって、Ti量を0.005〜0.1%とし
た。
【0027】Cu:Cuは耐食性を向上させる有用な元
素である。しかし、0.05%未満の添加では良好な耐
食性を示さず、また0.3%を超えると耐食性の向上効
果が小さくなる上に、製造コストの上昇、表面性状、加
工性が劣化する。したがって、Cu量を0.05〜0.
3%とした。
【0028】この発明では、このような成分限定に加え
て、腐食発生に強く影響を及ぼすS量と、耐食性に有効
な働きをするCu量との比S/Cuの値を規定する。上
述したようにこの値が0.1以下であれば、Sの悪影響
が防止されると共に、Cuの耐食性向上効果が有効に発
揮される。
【0029】なお、Cr,Sn,V等、製鋼時に混入す
る少量の不可避不純物が存在してもよく、これらの不可
避的不純物によって本発明鋼の効果が損なわることはな
い。このような鋼成分により、極めて耐食性に優れた鋼
板となり得るが、苛酷な環境下で使用される自動車用の
鋼板としては、さらに優れた耐食性が要求される。
【0030】したがって、さらなる耐食性を付与するた
めに、本発明では上記鋼成分を有する鋼板にFe−Ni
−Pを主成分とする拡散合金領域を形成する。このよう
な拡散合金層は下地鋼を腐食から保護すると共に、一度
下地鋼板の腐食が開始された後には、形成される鉄の腐
食生成物を素早く緻密なものとする。その結果、従来技
術では得られなかった優れた耐食性を得ることができ
る。
【0031】このFe−Ni−Pを主成分とする拡散合
金領域にW,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上を
含有させることもできる。これらはいずれも鋼の腐食に
対してインヒビター的な役割をもつと同時に、Ni,P
との相乗効果で初期錆の緻密性、安定性を一層向上させ
る効果を有する。
【0032】次に、本発明の製造条件について説明す
る。本発明では、上記成分組成の鋼板を酸洗してスケー
ル除去後、拡散合金層を形成するために、まずその上に
Pを8〜15重量%含有するNi−P系合金めっき層を
形成する。この工程は焼鈍前に実施されるものである
が、酸洗ライン出側にて酸洗に引き続いて冷間圧延前に
実施しても、酸洗後に冷間圧延してから実施してもよ
い。特にこのめっき工程が冷間圧延前に実施される場合
には、めっき前の洗浄、めっき前の活性化処理としての
酸洗が不要となるため有利である。
【0033】Pを8〜18%含有するNi−P合金めっ
きはアモルファスに近い構造をとり、このようなめっき
層を有する鋼板を熱処理すると一般の結晶性のめっき皮
膜の場合に比較して均一な拡散合金領域が短期間のうち
に形成される。Pが8%未満ではNi−P合金めっき皮
膜は結晶質であり、Pの分布も均一でない。このため、
熱処理を受けたときに形成される拡散合金領域の組成が
均一でなく、前記初期生成錆の均質さ・緻密さが十分で
なく、安定な耐食性が得られない。一方、Pが18%超
ではNi−P合金めっきは脆くなりその密着性が劣化す
る。このため、冷間圧延などの過程でめっき剥離を生じ
やすい。このようなことから、本発明における鋼板に形
成するめっき層のPの含有率は8〜18%とした。望ま
しい範囲は10〜13%である。
【0034】また、上述したように、鋼の腐食を抑制
し、初期錆の緻密性、安定性を一層向上させるために、
Fe−Ni−Pを主成分とする拡散合金領域にW,M
o,Cr,Cuの一種または二種以上を含有させてもよ
いが、この場合にはNi−P系めっき層として、Ni−
PにW,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上を15
%以下の範囲で複合化したものを使用する。W,Mo,
Cr,Cuの含有率増加と共に耐食性は向上するが、そ
の合計値が15%を超えるとその密着性が低下するた
め、冷間圧延などの過程でめっき剥離を生じやすい。従
って、W,Mo,Cr,Cuの含有率についてはその合
計値で15重量%以下とした。W,Mo,Cr,Cuの
含有効果を発揮するために、その下限は0.5%以上が
好ましい。
【0035】また、このNi−P系合金層のめっき量
は、0.05g/m2 超え〜8g/m2 の範囲とする。
0.05g/m2 未満では耐食性向上効果が十分ではな
く、8g/m2 超えではめっき層の加工性が低下し剥離
しやすくなるとともに、めっき量を多くするためにライ
ンスピードを遅くする必要があり生産効率上不利とな
る。
【0036】Ni−P系合金めっき層の形成方法は種々
考えられるが、簡便性および得られる膜質などの点で電
気めっきまたは無電解めっき(化学めっき)が望まし
い。次に、N−P系合金めっき層を施した鋼板を非酸化
雰囲気で熱処理して、鋼板素地とNi−P系合金めっき
層の界面にFe−Ni−Pを主成分とする拡散合金領域
を形成する。この拡散のための熱処理は冷間圧延後の通
常の焼鈍を兼ねており、その際に用いられる通常の焼鈍
設備で行うことが可能である。特に、生産性の高い連続
焼鈍を用いる方法が望ましい。ここにおける連続焼鈍
は、一般的な圧延鋼板用の連続焼鈍設備および溶融めっ
きラインの前処理設備としての焼鈍設備を用いて行うこ
とができる。この際に、直火式加熱炉によって昇温速度
50℃/sec以上で加熱することが好ましい。
【0037】この熱処理の際における鋼板の最高到達温
度は500℃以上880℃以下であることが望ましく、
より望ましくは800℃以上880℃以下である。50
0℃未満ではN−P系合金めっき層と鋼表面との間の拡
散層が十分に形成されず、したがって腐食過程での緻密
な錆を十分に形成できないために耐食性向上効果が小さ
い。一方880℃超では熱処理炉内ロールへのめっき金
属のピックアップが生じやすく、その結果表面疵等の原
因となりやすい。さらに880℃を超える温度で焼鈍す
ると、フェライト粒の粗大化により、プレス成形後、肌
荒れを起こしやすくなる。この最高到達温度での保持時
間は温度によっても異なるが、1秒から120秒が望ま
しい。短すぎると十分な拡散領域が形成されないため、
耐食性の向上効果が現われず、120秒超では過度の拡
散合金化によってこの界面層が脆くなるため、めっき層
の密着性・加工性が低下する。この熱処理により形成さ
れる拡散領域の好適な深さは0.1〜20μm程度であ
る。また、この熱処理の際に300〜400℃程度の温
度で数分程度の過時効処理が行われてもよい。
【0038】なお、Ni−P系合金めっき層を熱処理す
ると、その一部が拡散合金領域を形成して、鋼板/拡散
合金領域/Ni−P系合金めっき層の構成となる場合
と、その全てが拡散合金領域を形成して、鋼板/拡散合
金領域の構成となる場合とがあるが、本発明はいずれも
含む。
【0039】拡散のための熱処理後に、必要により適宜
な条件で調質圧延がおこなわれる。このようにして製造
された本発明の鋼板は、優れた耐食性を有しており、自
動車、建築資材、電気機器等、耐食性を要求されるあら
ゆる分野での使用が可能である。
【0040】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。 (実施例1)表1に示す化学組成の鋼を溶解してスラブ
としたものを加熱、熱間圧延して、4.0mm厚の熱延鋼
板とした。その後この鋼板を酸洗後、冷間圧延を施して
0.8mm厚とした。この冷間圧延後の鋼板に対し、表2
に示すNi−P系めっきを施し、焼鈍を兼ねた拡散熱処
理および調質圧延を行い試験片を作成した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】このようにして作成した試験片について、
耐食性、加工性を評価した。この際の評価方法および評
価基準は以下のとおりである。 (評価方法・基準) (1)耐食性:乾湿繰り返しに塩水噴霧を組み合わせた
腐食環境で60日間経過後の無塗装鋼板の腐食深さを測
定し、以下の基準で評価した。
【0044】○ 最大腐食深さが0.2mm以下 △ 最大腐食深さが0.2mm超,0.4mm以下 × 最大腐食深さが0.4mm超 (2)加工性:180度曲げ試験で曲げ先端部のめっき
皮膜の損傷状況を観察し、以下の基準で評価した。
【0045】○ 損傷ゼロもしくは微細クラックが発生
する程度 △ 大きなクラックの発生またはめっき片の剥離を部分
的に生じる。
【0046】× 広範囲にめっき剥離が認められる。 以上の評価結果を表3〜表7に示す。これら表中、本発
明例とあるのは本発明の条件を全て満たすものであり、
比較例とあるのはいずれかの要件が本発明の範囲から外
れるものである。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】これらの表から明らかなように、本発明例
では比較例と比較して、耐食性、加工性のいずれも優れ
ていることが確認された。 (実施例2)表1に示す鋼のうち、本発明の範囲である
鋼番号1〜3を溶解してスラブとしたものを加熱、熱間
圧延して、4.0mm厚の熱延鋼板とした。その後この鋼
板を酸洗後、冷間圧延を施して0.8mm厚とした。この
冷間圧延後の鋼板に対し、表2に示すNi−P系めっき
のうちA〜C,M〜Oに示したものを施し、焼鈍を兼ね
た拡散熱処理および調質圧延を行い試験片を作成した。
【0053】このようにして作成した試験片について、
耐食性、加工性を上述した方法および基準で評価した。
その結果を表8に示す。表8においても、表3〜表7と
同様、本発明例とあるのは本発明の条件を全て満たすも
のであり、比較例とあるのはいずれかの要件が本発明の
範囲から外れるものである。
【0054】
【表8】 この表から明らかなように、この実施例からも本発明例
では比較例と比較して、耐食性、加工性のいずれも優れ
ていることが確認された。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
S量を制御し、Cu,B,Tiを少量添加した鋼板を基
本とし、その上にFe−Ni−Pを主成分とする拡散合
金領域を形成したので、優れた加工性等を維持したま
ま、製造コストが低く、耐食性に優れた表面処理鋼板お
よびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】S/Cu(重量比)と平均腐食深さとの関係を
示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C25D 5/26 C25D 5/26 Z (72)発明者 木戸 章雅 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 渡辺 豊文 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 塩原 幸光 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−65595(JP,A) 特開 昭63−96294(JP,A) 特開 昭61−279696(JP,A) 特開 平3−138374(JP,A) 特開 平4−6259(JP,A) 特開 平3−226550(JP,A) 特開 平7−292437(JP,A) 特開 平7−97658(JP,A) 特開 平6−212276(JP,A) 特開 平4−285125(JP,A) 特開 昭63−79996(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 9/46 - 9/48 C23C 2/02 C25D 5/26

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.001〜0.005
    %、Si:0.1%以下、Mn:0.05〜0.3%、
    P:0.02%以下、S:0.001〜0.01%、
    N:0.004%以下、sol.Al:0.1%以下、
    Ni:0.05〜0.3%、Ti:0.005〜0.1
    %、Cu:0.05〜0.3%、B:0.0002〜
    0.002%、残部Fe及び不可避不純物からなり、重
    量比で(S/Cu)≦0.1を満たす鋼板と、 その少なくとも一方の表面に形成され、Fe−Ni−P
    を主成分とする拡散合金領域と、 を具備することを特徴とする、耐食性に優れた表面処理
    鋼板。
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.001〜0.005
    %、Si:0.1%以下、Mn:0.05〜0.3%、
    P:0.02%以下、S:0.001〜0.01%、
    N:0.004%以下、sol.Al:0.1%以下、
    Ni:0.05〜0.3%、Ti:0.005〜0.1
    %、Cu:0.05〜0.3%、B:0.0002〜
    0.002%、残部Fe及び不可避不純物からなり、重
    量比で(S/Cu)≦0.1を満たす鋼板と、 その少なくとも一方の表面に形成され、Fe−Ni−P
    を主成分としW,Mo,Cr,Cuの一種または二種以
    上を含有する拡散合金領域と、 を具備することを特徴とする、耐食性に優れた表面処理
    鋼板。
  3. 【請求項3】 重量%で、C:0.001〜0.005
    %、Si:0.1%以下、Mn:0.05〜0.3%、
    P:0.02%以下、S:0.001〜0.01%、
    N:0.004%以下、sol.Al:0.1%以下、
    Ni:0.05〜0.3%、Ti:0.005〜0.1
    %、Cu:0.05〜0.3%、B:0.0002〜
    0.002%、残部Fe及び不可避不純物からなり、重
    量比で(S/Cu)≦0.1を満たす鋼板を、酸洗した
    後焼鈍の前に、または酸洗しさらに冷間圧延した後焼鈍
    の前に、前記鋼板の少なくとも一方の表面に電気めっき
    または無電解めっきによってPを8〜18重量%含有
    し、付着量0.05g/m2 超え8g/m2 以下のNi
    −Pめっきを施し、ただちに非酸化性雰囲気で500〜
    880℃で拡散熱処理を行い、鋼板素地表面にFe−N
    i−Pを主成分とする拡散合金領域を形成することを特
    徴とする、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 重量%で、C:0.001〜0.005
    %、Si:0.1%以下、Mn:0.05〜0.3%、
    P:0.02%以下、S:0.001〜0.01%、
    N:0.004%以下、sol.Al:0.1%以下、
    Ni:0.05〜0.3%、Ti:0.005〜0.1
    %、Cu:0.05〜0.3%、B:0.0002〜
    0.002%、残部Fe及び不可避不純物からなり、重
    量比で(S/Cu)≦0.1を満たす鋼板を、酸洗した
    後焼鈍の前に、または酸洗しさらに冷間圧延した後焼鈍
    の前に、前記鋼板の少なくとも一方の表面に電気めっき
    または無電解めっきによってPを8〜18重量%、W,
    Mo,Cr,Cuの一種または二種以上を15重量%以
    下の範囲で含有し、付着量0.05g/m2 超え8g/
    2 以下のNi−Pめっきを施し、ただちに非酸化性雰
    囲気で500〜880℃で拡散熱処理を行い、鋼板素地
    表面にFe−Ni−Pを主成分とする拡散合金領域を形
    成することを特徴とする、耐食性に優れた表面処理鋼板
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記非酸化性雰囲気での拡散熱処理に際
    し、連続焼鈍炉によって加熱することにより、鋼板素地
    とめっき層の界面にFe−Ni−Pを主成分とする拡散
    合金領域が形成されることを特徴とする請求項3または
    4に記載の耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
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