JP3276238B2 - 比抵抗傾斜型空間光変調素子 - Google Patents

比抵抗傾斜型空間光変調素子

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JP3276238B2 JP05050594A JP5050594A JP3276238B2 JP 3276238 B2 JP3276238 B2 JP 3276238B2 JP 05050594 A JP05050594 A JP 05050594A JP 5050594 A JP5050594 A JP 5050594A JP 3276238 B2 JP3276238 B2 JP 3276238B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は第1透明電極、光導電
層、光吸収層、誘電体多層膜ミラー、光変調層、第2透
明電極を積層した空間光変調素子、もしくは第1透明電
極、光導電層、誘電体多層膜ミラー、光変調層、第2透
明電極を積層した空間光変調素子、または第1透明電
極、光導電層、光変調層、第2透明電極を持ち、前記光
導電層と前記光変調層との間に少なくとも、1つ以上の
透明もしくは不透明な中間層を有する空間光変調素子に
係わり、特に前記光導電層と前記第2透明電極との間に
ある最も厚いA層の比抵抗が、このA層に接し、かつ前
記光導電層により近いB層の比抵抗よりも、少なくとも
小さくならないように前記A層およびB層の比抵抗を設
定することにより、書込み光を用いて画像やデータパタ
ーンのような2次元情報を取り込み、読み出し光を用い
て前記情報を2次元的に、かつ高精細に表示する比抵抗
傾斜型空間光変調素子に関する。
【0002】[発明の概要]本発明は第1透明電極、光
導電層、光吸収層、誘電体多層膜ミラー、光変調層、第
2透明電極を積層した空間光変調素子、もしくは第1透
明電極、光導電層、誘電体多層膜ミラー、光変調層、第
2透明電極を積層した空間光変調素子または第1透明電
極、光導電層、光変調層、第2透明電極を持ち、前記光
導電層と前記光変調層との間に少なくとも、1つ以上の
透明もしくは不透明な中間層を有する空間光変調素子に
関するもので、これらの各空間光変調素子を構成する光
導電層と、第2透明電極との間にある最も厚い層(A
層)の比抵抗が、このA層に接し、かつ前記光導電層に
より近い方の層(B層)の比抵抗よりも、少なくとも小
さくならないように、これらA層およびB層の比抵抗を
設定することにより、高い解像度を持つ画像を表示でき
るようにしたものである。
【0003】
【従来の技術】書込み光を用いて画像やデータパターン
のような2次元情報を取り込み、読み出し光を用いて前
記情報を2次元的に、かつ詳細に表示する空間光変調素
子として、従来、米国特許No.4127322号に示
す素子や文献(Rodony D.Sterling, Robert D.Te Kolst
e, Joseph M.Haggerty, Thomas C.Borah and William
P.Bleha: “Video-rate liquid-crystal light-valve u
sing an amorphous silicon photoconductor"SID 90 Di
gest pp.327-329(1990))に示す素子が知られている。
【0004】同特許明細書および同文献で示されている
空間光変調素子は図12に示す如くファイバープレート
基板101と、第1透明電極102と、光導電層103
と、光吸収層104と、誘電体多層膜ミラー105と、
第1配向層106と、ネマチック液晶層107と、第2
配向層108と、第2透明電極109と、石英基板11
0とを順次、密着積層して形成した素子であり、交流電
源111によって第1透明電極102と、第2透明電極
109との間に交番電圧を印加した状態で、ファイバー
プレート基板101側に書込み光112を入射させるこ
とにより、前記光導電層103の抵抗値を変化させてシ
ール層113で密封されたネマチック液晶層107に光
情報を2次元的に書込み、石英基板110側に入射され
る読み出し光114によって前記ネマチック液晶層10
7に書き込まれている光情報(表示光)115を読み出
して出射させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の空間光変調素子においては、次に述べるような
問題があった。
【0006】すなわち、光導電層103、光吸収層10
4、誘電体多層膜ミラー105、ネマチック液晶層10
7が全て薄膜で構成されているにもかかわらず、空間光
変調素子の解像度が低いという問題があった。
【0007】例えば、前記文献では、この文献内の図6
に示されるように、空間光変調素子を構成する光導電層
103上の1mm幅の間に、光情報として白黒1組の格
子を書込み、かつ光変調層であるネマチック液晶層10
7から読み出すことができる格子数の最大値を限界解像
度として定義し、これをlp(line pairs)/mmと表
わすとき、その限界解像度を30 lp/mm程度以上
にすることが難しい。このため、2インチ以上の対角長
を持つ大型の空間光変調素子にしなければ、高精細画像
を表示することができないという問題があった。
【0008】さらに、このように、空間光変調素子を大
型化すると、この空間光変調素子に画像を書き込む光学
系やこの空間光変調素子から画像を読み出す光学系も大
型化しなければならないので、空間光変調素子を用いた
投射型ディスプレィや画像処理装置全体が大型化してし
まうとともに、製作コストが増大してしまうという問題
があった。
【0009】本発明は上記の事情に鑑み、素子自体の解
像度を大幅に向上させて、素子自体や各光学系を大型化
することなく、高精細画像を表示することができ、これ
によって投射型ディスプレィや画像処理装置自体を大型
化することなく、かつ製作コストを増大させることなく
画像の高精細化を達成することができる比抵抗傾斜型空
間光変調素子を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明は、請求項1の比抵抗傾斜型空間光変調素子
では、第1透明電極、光導電層、光吸収層、誘電体多層
膜ミラー、光変調層、第2透明電極を積層して形成さ
れ、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に繰り
返し電圧を印加しながら、前記第1透明電極側から入射
された書込み光に基づき、前記光導電層のインピーダン
スを変化させて前記光変調層の状態を変化させ、前記第
2透明電極側から入射された読み出し光を前記光変調層
によって選択的に通過させながら、誘電体多層膜ミラー
によって反射して前記第2透明電極側から出射させる空
間光変調素子において、前記光導電層と前記第2透明電
極との間にある最も厚いA層の比抵抗が、このA層に接
し、かつ前記光導電層により近いB層の比抵抗よりも、
少なくとも小さくならないように前記A層およびB層の
比抵抗値を設定することを特徴としている。
【0011】また、請求項2の比抵抗傾斜型空間光変調
素子では、第1透明電極、光導電層、誘電体多層膜ミラ
ー、光変調層、第2透明電極を積層して形成され、前記
第1透明電極と前記第2透明電極との間に繰り返し電圧
を印加しながら、前記第1透明電極側から入射された書
込み光に基づき、前記光導電層のインピーダンスを変化
させて前記光変調層の状態を変化させ、前記第2透明電
極側から入射された読み出し光を前記光変調層によって
選択的に通過させながら、誘電体多層膜ミラーによって
反射して前記第2透明電極側から出射させる空間光変調
素子において、前記光導電層と前記第2透明電極との間
の最も厚いA層の比抵抗が、このA層に接し、かつ前記
光導電層により近いB層の比抵抗よりも、少なくとも小
さくならないように前記A層およびB層の比抵抗値を設
定することを特徴としている。
【0012】また、請求項3の比抵抗傾斜型空間光変調
素子では、第1透明電極、光導電層、光変調層、第2透
明電極を積層して形成され、前記光導電層と前記第2透
明電極との間に少なくとも1つ以上の透明もしくは不透
明な中間層を有し、前記第1透明電極と前記第2透明電
極との間に繰り返し電圧を印加しながら、前記第1透明
電極側から入射された書込み光に基づき、前記光導電層
のインピーダンスを変化させて前記光変調層の状態を変
化させ、前記第2透明電極側から入射された読み出し光
を前記光変調層によって選択的に通過させながら、前記
中間層によって反射して前記第2透明電極側から出射さ
せる空間光変調素子において、前記光導電層と第2透明
電極との間にある最も厚いA層の比抵抗が、前記A層に
接し、さらに前記光導電層により近いB層の比抵抗より
も、少なくとも小さくならないように前記A層およびB
層の比抵抗値を設定することを特徴としている。
【0013】また、請求項4の比抵抗傾斜型空間光変調
素子では、請求項1、2、3のいずれかに記載の比抵抗
傾斜型空間光変調素子において、前記光変調層として、
ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液
晶、これらネマチック液晶、コレステリック液晶、スメ
クチック液晶の混合物によって構成される群から選択さ
れた1つ以上の液晶を選択して用いることを特徴とする
している。
【0014】また、請求項5の比抵抗傾斜型空間光変調
素子では、請求項1、2、3のいずれかに記載の比抵抗
傾斜型空間光変調素子において、前記光変調層として、
ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液
晶、これらネマチック液晶、コレステリック液晶、スメ
クチック液晶の混合物によって構成される群から選択さ
れた1つ以上の液晶の常光屈折率、異常光屈折率または
前記液晶がランダムに配向した際の屈折率のいずれかと
同等の屈折率を持つ樹脂中に前記液晶を分散させた液晶
・樹脂複合体、または前記液晶中に前記樹脂を分散させ
た液晶・樹脂複合体のいずれか一方を用いることを特徴
としている。
【0015】また、請求項6の比抵抗傾斜型空間光変調
素子では、請求項1、2、3のいずれかに記載の比抵抗
傾斜型空間光変調素子において、前記光変調層として、
LiNbO3 、LiTaO3 、KDP、DKDP、AD
P、KTP、KNbO3 、Srx Ba1-x Nb2 6
GaAs、InP、GaP結晶によって構成される群か
ら選択された1つ以上の電気光学結晶を用いることを特
徴としている。
【0016】また、請求項7の比抵抗傾斜型空間光変調
素子では、請求項1、2、3のいずれかに記載の比抵抗
傾斜型空間光変調素子において、前記光導電層として、
珪素、ゲルマニウム、炭素によって構成される群から選
択された1つ以上の元素によって構成されるアモルファ
ス膜を用いることを特徴としている。
【0017】また、請求項8の比抵抗傾斜型空間光変調
素子では、請求項1、2、3のいずれかに記載の比抵抗
傾斜型空間光変調素子において、前記光導電層として、
アモルファスシリコン膜、水素化アモルファスシリコン
膜、アモルファスシリコンカーバイト膜、水素化アモル
ファスシリコンカーバイト膜、アモルファスセレン膜、
アモルファスSeAs膜、アモルファスZnS膜、アモ
ルファスCdS膜、アモルファスCdSe膜によって構
成される群から選択された1つ以上の膜を用いることを
特徴としている。
【0018】また、請求項9の比抵抗傾斜型空間光変調
素子では、請求項1、2、3のいずれかに記載の比抵抗
傾斜型空間光変調素子において、前記光導電層として、
GaAs結晶、GaP結晶、Bi12SiO20結晶、Bi
12GeO20結晶によって構成される群から選択された1
つ以上の結晶を用いることを特徴としている。
【0019】また、請求項10の比抵抗傾斜型空間光変
調素子では、請求項1、2、3のいずれかに記載の比抵
抗傾斜型空間光変調素子において、前記光導電層とし
て、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、多環キノン系
顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、アントラキノ
ン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジオ
キサジン系顔料、アゾレーキ系顔料、チアピリリウム系
色素、キナクリドン系顔料、シアニン系色素、ピロル系
顔料、ポルフィリン系顔料、アンタントン系顔料、スク
アリリウム色素、アズレニウム色素、ZnO、TiO、
CdSあるいはCdSeを樹脂中に分散させた材料を用
いることを特徴としている。
【0020】また、請求項11の比抵抗傾斜型空間光変
調素子では、請求項1に記載の比抵抗傾斜型空間光変調
素子において、前記光吸収層として、CdTe膜、ダイ
ヤモンドライクカーボン膜、珪素と炭素とゲルマニウム
とから実質的に構成されたアモルファス膜によって構成
される群から選択された1つ以上の膜を用いることを特
徴としている。
【0021】また、請求項12の比抵抗傾斜型空間光変
調素子では、請求項1に記載の比抵抗傾斜型空間光変調
素子において、前記光吸収層として、無機顔料、有機顔
料、カーボン、染料によって構成される群から選択され
た1つ以上の材料を樹脂中に分散させた樹脂複合体を用
いることを特徴としている。
【0022】さらに、請求項13では、請求項1または
2のいずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子にお
いて、前記誘電体多層膜ミラーとして、SiO2 膜、T
iO2 膜、HfO2 膜、Ta2 5 膜、ZnS膜、Al
2 3 膜、Na2 AlF6 膜、MgF2 膜、LaF
3 膜、GdF3 膜、SmF3 膜、CeF3 膜、ZrO2
膜、CeO2 膜によって構成される群から選択された2
つ以上の膜を積層した多層膜を用いることを特徴として
いる。
【0023】
【作用】上記の構成において、請求項1では、第1透明
電極、光導電層、光吸収層、誘電体多層膜ミラー、光変
調層、第2透明電極を積層して形成され、前記第1透明
電極と前記第2透明電極との間に繰り返し電圧を印加し
ながら、前記第1透明電極側から入射された書込み光に
基づき、前記光導電層のインピーダンスを変化させて前
記光変調層の状態を変化させ、前記第2透明電極側から
入射された読み出し光を前記光変調層によって選択的に
通過させながら、誘電体多層膜ミラーによって反射して
前記第2透明電極側から出射させる空間光変調素子にお
いて、前記光導電層と前記第2透明電極との間にある最
も厚いA層の比抵抗が、このA層に接し、かつ前記光導
電層により近いB層の比抵抗よりも、少なくとも小さく
ならないように前記A層およびB層の比抵抗値を設定す
ることにより、素子自体の解像度を大幅に向上させて、
素子自体や各光学系を大型化することなく、高精細画像
を表示し、これによって投射型ディスプレィや画像処理
装置自体を大型化することなく、かつ製作コストを増大
させることなく画像の高精細化を達成する。
【0024】また、請求項2では、第1透明電極、光導
電層、誘電体多層膜ミラー、光変調層、第2透明電極を
積層して形成され、前記第1透明電極と前記第2透明電
極との間に繰り返し電圧を印加しながら、前記第1透明
電極側から入射された書込み光に基づき、前記光導電層
のインピーダンスを変化させて前記光変調層の状態を変
化させ、前記第2透明電極側から入射された読み出し光
を前記光変調層によって選択的に通過させながら、誘電
体多層膜ミラーによって反射して前記第2透明電極側か
ら出射させる空間光変調素子において、前記光導電層と
前記第2透明電極との間の最も厚いA層の比抵抗が、こ
のA層に接し、かつ前記光導電層により近いB層の比抵
抗よりも、少なくとも小さくならないように前記A層お
よびB層の比抵抗値を設定することにより、素子自体の
解像度を大幅に向上させて、素子自体や各光学系を大型
化することなく、高精細画像を表示し、これによって投
射型ディスプレィや画像処理装置自体を大型化すること
なく、かつ製作コストを増大させることなく画像の高精
細化を達成する。
【0025】また、請求項3では、第1透明電極、光導
電層、光変調層、第2透明電極を積層して形成され、前
記光導電層と前記第2透明電極との間に少なくとも1つ
以上の透明もしくは不透明な中間層を有し、前記第1透
明電極と前記第2透明電極との間に繰り返し電圧を印加
しながら、前記第1透明電極側から入射された書込み光
に基づき、前記光導電層のインピーダンスを変化させて
前記光変調層の状態を変化させ、前記第2透明電極側か
ら入射された読み出し光を前記光変調層によって選択的
に通過させながら、前記中間層によって反射して前記第
2透明電極側から出射させる空間光変調素子において、
前記光導電層と第2透明電極との間にある最も厚いA層
の比抵抗が、前記A層に接し、さらに前記光導電層によ
り近いB層の比抵抗よりも、少なくとも小さくならない
ように前記A層およびB層の比抵抗値を設定することに
より、素子自体の解像度を大幅に向上させて、素子自体
や各光学系を大型化することなく、高精細画像を表示
し、これによって投射型ディスプレィや画像処理装置自
体を大型化することなく、かつ製作コストを増大させる
ことなく画像の高精細化を達成する。
【0026】また、請求項4では、請求項1、2、3の
いずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子におい
て、光変調層として、ネマチック液晶、コレステリック
液晶、スメクチック液晶、これらネマチック液晶、コレ
ステリック液晶、スメクチック液晶の混合物によって構
成される群から選択された1つ以上の液晶を選択して用
いることにより、現存する材料によって請求項1、2、
3に示す効果を得る。
【0027】また、請求項5では、請求項1、2、3の
いずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子におい
て、前記光変調層として、ネマチック液晶、コレステリ
ック液晶、スメクチック液晶、これらネマチック液晶、
コレステリック液晶、スメクチック液晶の混合物によっ
て構成される群から選択された1つ以上の液晶の常光屈
折率、異常光屈折率または前記液晶がランダムに配向し
た際の屈折率のいずれかと同等の屈折率を持つ樹脂中に
前記液晶を分散させた液晶・樹脂複合体、または前記液
晶中に前記樹脂を分散させた液晶・樹脂複合体のいずれ
か一方を用いることにより、現存する材料によって請求
項1、2、3に示す効果を得る。
【0028】また、請求項6では、請求項1、2、3の
いずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子におい
て、前記光変調層として、LiNbO3 、LiTa
3 、KDP、DKDP、ADP、KTP、KNb
3 、Srx Ba1-x Nb2 6 、GaAs、InP、
GaP結晶によって構成される群から選択された1つ以
上の電気光学結晶を用いることにより、現存する材料に
よって請求項1、2、3に示す効果を得る。
【0029】また、請求項7では、請求項1、2、3の
いずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子におい
て、前記光導電層として、珪素、ゲルマニウム、炭素に
よって構成される群から選択された1つ以上の元素によ
って構成されるアモルファス膜を用いることにより、現
存する材料によって請求項1、2、3に示す効果を得
る。
【0030】また、請求項8では、請求項1、2、3の
いずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子におい
て、前記光導電層として、アモルファスシリコン膜、水
素化アモルファスシリコン膜、アモルファスシリコンカ
ーバイト膜、水素化アモルファスシリコンカーバイト
膜、アモルファスセレン膜、アモルファスSeAs膜、
アモルファスZnS膜、アモルファスCdS膜、アモル
ファスCdSe膜によって構成される群から選択された
1つ以上の膜を用いることにより、現存する材料によっ
て請求項1、2、3に示す効果を得る。
【0031】また、請求項9では、請求項1、2、3の
いずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子におい
て、前記光導電層として、GaAs結晶、GaP結晶、
Bi12SiO20結晶、Bi12GeO20結晶によって構成
される群から選択された1つ以上の結晶を用いることに
より、現存する材料によって請求項1、2、3に示す効
果を得る。
【0032】また、請求項10では、請求項1、2、3
のいずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子におい
て、前記光導電層として、フタロシアニン系顔料、アゾ
系顔料、多環キノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン
系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、チオ
インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、アゾレーキ系顔
料、チアピリリウム系色素、キナクリドン系顔料、シア
ニン系色素、ピロル系顔料、ポルフィリン系顔料、アン
タントン系顔料、スクアリリウム色素、アズレニウム色
素、ZnO、TiO、CdSあるいはCdSeを樹脂中
に分散させた材料を用いることにより、現存する材料に
よって請求項1、2、3に示す効果を得る。
【0033】また、請求項11では、請求項1に記載の
比抵抗傾斜型空間光変調素子において、前記光吸収層と
して、CdTe膜、ダイヤモンドライクカーボン膜、珪
素と炭素とゲルマニウムとから実質的に構成されたアモ
ルファス膜によって構成される群から選択された1つ以
上の膜を用いることにより、現存する材料によって請求
項1に示す効果を得る。
【0034】また、請求項12では、請求項1に記載の
比抵抗傾斜型空間光変調素子において、前記光吸収層と
して、無機顔料、有機顔料、カーボン、染料によって構
成される群から選択された1つ以上の材料を樹脂中に分
散させた樹脂複合体を用いることにより、現存する材料
によって請求項1に示す効果を得る。
【0035】また、請求項13では、請求項1または2
のいずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子におい
て、前記誘電体多層膜ミラーとして、SiO2 膜、Ti
2膜、HfO2 膜、Ta2 5 膜、ZnS膜、Al2
3 膜、Na2 AlF6 膜、MgF2 膜、LaF3 膜、
GdF3 膜、SmF3 膜、CeF3 膜、ZrO2 膜、C
eO2 膜によって構成される群から選択された2つ以上
の膜を積層した多層膜を用いることにより、現存する材
料によって請求項1または2に示す効果を得る。
【0036】
【実施例】
《基本原理の説明》まず、従来から知られている空間光
変調素子の解像度がなぜ低いのか、その原因を考えたと
ころ、光導電層103と、第2透明電極とに挟まれてい
る光吸収層104、誘電体多層膜ミラー105やネマチ
ック液晶層107によって構成される光変調層の比抵抗
が適正な値に設定されていないためではないかという結
論に達した。
【0037】例えば、米国特許No.4127322号
では、空間光変調素子の作製に関する部分で、空間光変
調素子を製作するとき、光導電層103、光吸収層10
4、誘電体多層膜ミラー105およびネマチック液晶層
107が以下に示す層厚を有することを主条件にしてい
る。
【0038】まず、光導電層103の厚さを2〜20μ
mにする(同特許明細書の8ページ第8行目から第14
行目までの記述内容)。
【0039】また、光吸収層104の厚さを1〜4μm
にする(同特許明細書の8ページ第59行目から第63
行目までの記述内容)。
【0040】また、誘電体多層膜ミラー105の厚さを
1.54μmにする(同特許明細書の9ページ第30行
目から第35行目までの記述内容)。
【0041】また、ネマチック液晶層107の厚さを1
〜12μmにする(同特許明細書の10ページ第1行目
から第4行目までの記述内容)。
【0042】さらに、米国特許No.4127322号
では、空間光変調素子を構成する光導電層103、光吸
収層104、誘電体多層膜ミラー105、ネマチック液
晶層107が以下に示すシート抵抗あるいは比抵抗を有
することを主たる条件の他の1つにしている。
【0043】まず、光を照射しない状態(暗状態)にお
いて、光導電層103のシート抵抗をネマチック液晶層
107のシート抵抗とほぼ同じにする(同特許明細書の
7ページ第68行目から8ページの第4行目までの記述
内容)。
【0044】また、暗状態にある光導電層103の比抵
抗を約1010Ωcmにする(同特許明細書の8ページ第
8行目から第14行目までの記述内容)。
【0045】また、光吸収層104の比抵抗を約108
Ωcmにする(同特許明細書の8ページ第59行目から
第63行目までの記述内容)。
【0046】また、誘電体多層膜ミラー105のシート
抵抗を1010Ω/□以上にする(同特許明細書の9ペー
ジ第15行目から第20行目までの記述内容)。
【0047】しかし、これらの各条件は、空間光変調素
子の解像度を最適にする条件ではない。
【0048】以下の説明では、米国特許No.4127
322号に記載されている空間光変調素子を構成する光
導電層103、光吸収層104、誘電体多層膜ミラー1
05、ネマチック液晶層107の諸特性を検証し、この
空間光変調素子の解像度が低い理由を明らかにする。
【0049】まず、上述した各条件から、米国特許N
o.4127322号の空間光変調素子を構成する光導
電層103、光吸収層104、誘電体多層膜ミラー10
5、ネマチック液晶107は表1に示す諸特性を持つ。
【0050】
【表1】 ここで、光導電層103と、第2の透明電極109の間
に挿入される光吸収層104、誘電体多層膜ミラー10
5、ネマチック液晶層107の厚さおよび比抵抗を比較
すると、これら光吸収層104、誘電体多層膜ミラー1
05およびネマチック液晶層107のうち、誘電体多層
膜ミラー105が最も厚い場合、この誘電体多層膜ミラ
ー105の比抵抗が108 Ωcm未満であれば、その値
は、誘電体多層膜ミラー105に接し、かつ光導電層1
03により近い層である光吸収層104の比抵抗よりも
小さくなる。
【0051】また、前記光吸収層104、誘電体多層膜
ミラー105およびネマチック液晶層107のうち、ネ
マチック液晶層107が最も厚く、かつ前記誘電体多層
膜ミラー105の比抵抗が6×1010Ωcmより大きい
場合には、前記ネマチック液晶層107に接し、かつ光
導電層103により近い層である誘電体多層膜ミラー1
05の比抵抗は、前記ネマチック液晶層107よりも大
きくなる。
【0052】しかし、これらの各範囲で、前記光導電層
103、光吸収層104、誘電体多層膜ミラー105、
ネマチック液晶107の特性をいろいろの値に変更して
空間光変調素子の解像度を測定したところ、解像度を高
くすることができないことが分かった。
【0053】例えば、ネマチック液晶層107の比抵抗
を2×1010Ωcmにし、誘電体多層膜ミラー105の
比抵抗を1011Ωcmにし、光吸収層104の比抵抗を
2.2×108 Ωcmにした空間光変調素子では、高々
10 lp/mmの限界解像度しか得ることができな
い。
【0054】そこで、上述した範囲外をも含めて、前記
光導電層103、光吸収層104、誘電体多層膜ミラー
105、ネマチック液晶107の特性をいろいろの値に
変更して空間光変調素子の解像度を測定したところ、前
記光導電層103、光吸収層104、誘電体多層膜ミラ
ー105、ネマチック液晶107のうち、最も厚い層、
例えば前記光変調層をA層とするとともに、このA層に
接し、かつ前記光導電層103に近い層、例えば前記誘
電体多層膜ミラー105や光吸収層104をB層とし
て、前記A層の比抵抗が、前記B層の比抵抗よりも、少
なくとも小さくならないように、前記A層およびB層の
比抵抗を設定することにより、空間光変調素子の解像度
を高くすることができることが分かった。
【0055】《第1実施例の説明》図1は上述した基本
原理に基づく、本発明による比抵抗傾斜型空間光変調素
子の第1実施例を示す構造図である。
【0056】<第1実施例の全体構成の説明>この図に
示す比抵抗傾斜型空間光変調素子1は第1透明基板2
と、第1透明電極3と、光導電層4と、光吸収層5と、
誘電体多層膜ミラー6と、光変調層7と、第2透明電極
8と、第1反射防止膜9と、第2透明基板10と、第2
反射防止膜11とを順次、密着積層して形成した素子で
あり、交流電源12によって第1透明電極3と、第2透
明電極8との間に交流電圧を印加した状態で、第1透明
基板2側に書込み光13を入射させることにより、光導
電層4の抵抗値を変化させて光変調層7に光情報を2次
元的に書込み、第2反射防止膜11側に読み出し光14
を入射させることにより、前記光変調層7に書き込まれ
ている光情報14を読み出し、これを外部に出射する。
【0057】<交流電源12の説明>前記交流電源12
は予め設定されている所定電圧値以上の電圧値を持つ交
流電圧、すなわち光変調層7を構成する液晶・樹脂複合
体19中の液晶分子の長軸を印加電界の方向と一致させ
るのに必要な交流電圧の実効値よりも大きな実効値を持
つ交流電圧値、例えば10〜200V程度の電圧値を持
つ交流電圧を生成し、これを前記第1透明電極3と、第
2透明電極8とに印加する。
【0058】<第1透明基板2の説明>また、前記第1
透明基板2はこの比抵抗傾斜型空間光変調素子1の基板
となる平板状のガラス基板などによって構成されてお
り、その一面に前記第1透明電極3が積層される。
【0059】<第1透明電極3の説明>第1透明電極3
は前記光導電層4の一面に、または前記第1透明基板2
の一面に、例えばIn2 3 に5%のSnを添加して形
成した厚さ0.05μmのITO透明電極膜であり、前
記交流電源12から供給される交流電圧に基づいて前記
光導電層4に電圧を印加する。
【0060】<光導電層4の説明>光導電層4は珪素、
ゲルマニウム、炭素によって構成される群から選択され
る1つ以上の元素からなるアモルファス膜、アモルファ
スシリコン膜、水素化アモルファスシリコン膜、アモル
ファスシリコンカーバイト膜、水素化アモルファスシリ
コンカーバイト膜など、光照射によってインピーダンス
が大幅に変化する材料によって構成され、その一面に前
記光吸収層5が積層される。
【0061】また、光導電層4として、上述した材料以
外にも、例えばアモルファスセレン膜、アモルファスS
eAs膜、アモルファスZnS膜、アモルファスCdS
膜あるいはアモルファスCdSe膜なども使用すること
ができる。さらに、光導電層4として、GaAs結晶、
GaP結晶、Bi12SiO20結晶、あるいはBi12Ge
20結晶など、光照射によりインピーダンスが大幅に変
化する結晶も適している。
【0062】そのほか、光導電層4として、光導電物質
からなる粒子を樹脂中に分散した分散型光導電膜を用い
ることもできる。この場合、分散型光導電膜に用いる光
導電材料としては、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔
料、多環キノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔
料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、チオイン
ジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、アゾレーキ系顔料、
チアピリリウム系色素、キナクリドン系顔料、シアニン
系色素、ピロル系顔料、ポルフィリン系顔料、アンタン
トン系顔料、スクアリリウム色素、アズレニウム色素、
ZnO、TiO、CdS、あるいはCdSeなどを使用
することができる。
【0063】<光吸収層5の説明>光吸収層5はCdT
e膜、ダイヤモンドライクカーボン膜、珪素と炭素とゲ
ルマニウムとから実質的に構成されたアモルファス膜か
らなる群より選ばれた1つ以上の膜、あるいは無機顔
料、有機顔料、カーボン、染料からなる群より選ばれた
1つ以上の材料を樹脂中に分散させた樹脂複合体などで
構成され、特に読み出し光14を吸収しても、その比抵
抗の変化が少くない材料によって構成され、その一面に
誘電体多層膜ミラー6が積層される。
【0064】<誘電体多層膜ミラー6の説明>誘電体多
層膜ミラー6はSiO2 膜、TiO2 膜、HfO2 膜、
Ta2 5 膜、ZnS膜、Al2 3 膜、Na2 AlF
6 膜、MgF2 膜、LaF3 膜、GdF3 膜、SmF3
膜、CeF3 膜、ZrO2 膜、CeO2 膜からなる群よ
り選ばれた2つ以上の膜を積層した多層膜によって構成
されて、その一面に前記光変調層7が積層される。
【0065】<光変調層7の説明>光変調層7は図2に
示す如くネマチック液晶、コレステリック液晶、スメク
チック液晶あるいはこれら各液晶の混合物からなる群か
ら選ばれた1つ以上の液晶17と、この液晶17の常光
屈折率、異常光屈折率または前記液晶17がランダムに
配向した際の屈折率のいずれかと同等な屈折率を持ち、
前記液晶17が分散される透明樹脂18とによって構成
される液晶・樹脂複合体19、または図3に示す如く前
記液晶17中に前記透明樹脂18を分散させた液晶・樹
脂複合体19を備えており、第1透明基板2側から書込
み光13が入射され、これが第1透明電極3を透過して
光導電層4に入射し、この光導電層4のインピーダンス
が変化して光変調層7に印加される電界が変化したと
き、液晶17の屈折率を変化させ、第2反射防止膜11
側から読み出し光14が入射され、これが第2透明基板
10、第1反射防止膜9、第2透明電極8を透過して入
射したとき、液晶17の屈折率に応じてこれを選択的に
散乱させることなく透過させ、透過光を誘電体多層膜ミ
ラー6によって反射し、表示光15として出射する。
【0066】この場合、液晶・樹脂複合体19が、その
構成要素である液晶17の常光屈折率または異常光屈折
率と、透明樹脂18の屈折率とがほぼ一致している液晶
・樹脂複合体19である場合には、液晶・樹脂複合体1
9に電界が印加されていないとき、液晶17の屈折率
と、透明樹脂18の屈折率とが食い違うことから、この
液晶・樹脂複合体19に読み出し光14が入射したと
き、これが液晶・樹脂複合体19中で散乱し、また前記
液晶・樹脂複合体19に十分大きな電界が印加されてい
るとき、液晶17の屈折率と、透明樹脂19の屈折率と
がほぼ一致することから、この液晶・樹脂複合体19に
読み出し光14が入射したとき、これが液晶・樹脂複合
体19で散乱されることなく、透過する。
【0067】また、液晶・樹脂複合体19が、その構成
要素である液晶17がランダムに配向した際の屈折率
と、透明樹脂18の屈折率とがほぼ一致している液晶・
樹脂複合体19である場合には、液晶・樹脂複合体19
に電界が印加されていないとき、液晶17の屈折率と、
透明樹脂18の屈折率とが一致することから、前記液晶
・樹脂複合体19に読み出し光14が入射したとき、こ
れがそのまま透過し、また前記液晶・樹脂複合体19に
十分大きな電界が印加されているとき、液晶17の屈折
率と、透明樹脂19の屈折率とが食い違うことから、こ
の液晶・樹脂複合体19に書込み光14が入射したと
き、これが液晶・樹脂複合体19で散乱される。
【0068】つまり、この第1実施例では、これら両方
の液晶・樹脂複合体19を使用することができる。しか
し、前者の液晶・樹脂複合体19のように、液晶17の
常光屈折率または異常光屈折率と、透明樹脂18の屈折
率とがほぼ一致しているタイプの方が望ましい。これ
は、液晶17がランダムに配向した際の屈折率と、透明
樹脂18の屈折率とがほぼ一致しているタイプの液晶・
樹脂複合体19では、液晶・樹脂複合体19全面の各部
分をマクロ的に見ると、各部分毎に、液晶17のランダ
ムな状態が異なり、光透過状態時にムラがあるように見
えるためである。これに対し、液晶17の常光屈折率ま
たは異常光屈折率と、透明樹脂18の屈折率とが一致し
ているタイプの液晶・樹脂複合体19では、電界が印加
されて液晶分子が一定の方向に配列された状態で、光透
過状態になるため、ランダム配向時に偏った配向をして
いても、ほぼ均一に光を透過することになる。また、電
界が印加されていない状態では、液晶17の分子が透明
樹脂18の壁面に配列し、ランダムに配向しているとき
と、実質的に同じ状態になる。この状態は、光散乱状態
であり、光透過状態とは異なり、わずかに屈折率がずれ
ていても、目立ち難い。したがって、光変調層7とし
て、このタイプの液晶・樹脂複合体19を使用した空間
光変調素子1では、ムラになって認識されることはほと
んどない。
【0069】特に、これらの中でも、液晶17の常光屈
折率と、透明樹脂18の屈折率とがほぼ一致しているタ
イプの液晶・樹脂複合体19がその性能上、最適であ
る。
【0070】そして、この液晶・樹脂複合体19は液晶
17と、透明樹脂18を構成する材料とを混ぜ合わせて
溶液状またはラテックス状にしておいて、これを光硬
化、熱硬化、溶媒除去による硬化、反応硬化等により、
透明樹脂18と液晶17とを分離させて、図2に示すよ
うに透明樹脂18中に液晶17が粒子状に分散した状
態、もしくは図4に示すように透明樹脂18中に液晶1
7が連通状に分散した状態、あるいは図3に示すように
前記液晶17中に透明樹脂18が分散した状態にするこ
とにより、製作される。
【0071】この場合、光硬化または熱硬化タイプの透
明樹脂18は密閉系内で硬化させることができるため、
素子製作上、このタイプの透明樹脂18を使用すること
が好ましい。特に、光硬化タイプの透明樹脂18は短時
間で硬化させることができるとともに、一旦硬化した後
では、熱による影響を受け難いので、これを使用するこ
とが好ましい。
【0072】具体的な製法としては、従来のツイステッ
ドネマチック液晶と同様に、シール材を用いてセルを形
成し、注入口から液晶17となる未硬化のネマチック液
晶と、透明樹脂18となる樹脂前駆体(樹脂が硬化する
前の状態、ここでは、例えばモノマーあるいはオリゴマ
ー等の状態の総称として用いる)を封入した後、硬化さ
せることもできる。
【0073】また、本発明の液晶・樹脂複合体19の場
合、シール材を用いずに、例えば第1透明基板2上に第
1透明電極3、光導電層4、光吸収層5、誘電体多層膜
ミラー6を重ねて密着し、その上に未硬化の前記樹脂前
駆体と液晶17との混合物を塗布し、さらに第2透明電
極8、第1反射防止膜9、第2透明基板10、第2反射
防止膜11を積層後、光照射等により前記樹脂前駆体を
硬化させて、液晶・樹脂複合体19を有する比抵抗傾斜
型空間光変調素子1を形成することもできる。勿論、そ
の後、周囲にシール材を塗布しても良い。この製法によ
れば、単に未硬化の液晶17と、前記樹脂前駆体との混
合物をロールコート、スピンコート、印刷、ディスペン
サーによる塗布等で供給すれば良く、注入工程が簡単で
あることから、生産性を大幅に向上させることができ
る。
【0074】また、これら未硬化の樹脂前駆体と、液晶
17との混合物には、基板間隙制御用のセラミック粒
子、プラスチック粒子、ガラス粒子、ガラス繊維等のス
ペーサ、顔料、色素、粘度調整剤、その他、本発明の性
能に悪影響を与えない添加剤を添加しても良い。
【0075】<第2透明基板10の説明>また、第2透
明電極基板10はこの比抵抗傾斜型空間光変調素子1の
基板となる平板状のガラス基板などによって構成され、
その一面に第1反射防止膜9が積層されるとともに、そ
の他面に第2反射防止膜11が積層される。
【0076】<第2反射防止膜11の説明>第2反射防
止膜はSiO2 膜、TiO2 膜、HfO2 膜、Ta2
5 膜、ZnS膜、Na2 AlF6 膜、MgF2 膜、Ce
3 膜、ZrO2 膜、CeO2 膜によって構成される群
から選択された1つ以上の膜を積層した多層膜によって
構成される。
【0077】<第1反射防止膜9の説明>第1反射防止
膜9はSiO2 膜、TiO2 膜、HfO2 膜、Ta2
5 膜、ZnS膜、Na2 AlF6 膜、MgF2 膜、Ce
3 膜、ZrO2 膜、CeO2 膜によって構成される群
から選択された1つ以上の膜を積層した多層膜によって
構成され、その一面に第2透明電極8が積層される。
【0078】<第2透明電極8の説明>第2透明電極8
は前記第1反射防止膜9上に、例えばIn2 3 に5%
のSnを添加して形成した厚さ0.05μmのITO透
明電極膜であり、前記交流電源12から供給される交流
電圧に基づいて前記光変調層7に電界を印加する。
【0079】上述した説明から明らかなように、図1に
示す比抵抗傾斜型空間光変調素子では、この比抵抗傾斜
型空間光変調素子を構成する光導電層4と、第2透明電
極8との間にある各層のうち、最も厚い層、すなわち光
変調層7をA層とし、かつこのA層に接し、前記光導電
層4により近い層、すなわち誘電体多層膜ミラー6をB
層とするとき、光変調層7(A層)の比抵抗が誘電体多
層膜ミラー6(B層)の比抵抗よりも、少なくとも小さ
くならないようにしている。
【0080】なお、上述した第1実施例においては、第
2透明電極8と第2透明基板10との間に、第1反射防
止膜9を配置するようにしているが、第2透明電極8と
第1反射防止膜9とを入れ替えて、第1反射防止膜9
と、第2透明基板10との間に、第2透明電極8を配置
するようにしても同様な効果を得ることができる。
【0081】《第2実施例の説明》図5は本発明による
比抵抗傾斜型空間光変調素子の第2実施例を示す断面図
である。なお、この図において、図1の各部と同じ部分
には、同じ符号が付してある。
【0082】<第2実施例の全体構成の説明>この図に
示す比抵抗傾斜型空間光変調素子1が図1に示す素子と
異なる点は、図1に示す比抵抗傾斜型空間光変調素子1
から光吸収層5を除き、第1透明基板2と、第1透明電
極3と、光導電層4と、誘電体多層膜ミラー6と、光変
調層7と、第2透明電極8と、第1反射防止膜9と、第
2透明基板10と、第2反射防止膜11とを順次、密着
積層して形成した素子であり、交流電源12によって第
1透明電極3と、第2透明電極8との間に交流電圧を印
加した状態で、第1透明基板2側に書込み光13を入射
させることにより、光導電層4の抵抗値を変化させて光
変調層7に光情報を2次元的に書込み、第2反射防止膜
11側に読み出し光14を入射させることにより、前記
光変調層7に書き込まれている光情報14を読み出し、
これを外部に出射する。
【0083】そして、この比抵抗傾斜型空間光変調素子
でも、この比抵抗傾斜型空間光変調素子を構成する光導
電層4と、第2透明電極8との間にある各層のうち、最
も厚い層、すなわち光変調層7をA層とし、かつこのA
層に接し、前記光導電層4により近い層、すなわち誘電
体多層膜ミラー6をB層とするとき、光変調層7(A
層)の比抵抗が誘電体多層膜ミラー6(B層)の比抵抗
よりも、少なくとも小さくならないようにしている。
【0084】このようにしても、上述した第1実施例と
同様に、素子自体の解像度を大幅に向上させて、素子自
体や各光学系を大型化することなく、高精細画像を表示
することができ、これによって投射型ディスプレィや画
像処理装置自体を大型化することなく、かつ製作コスト
を増大させることなく画像の高精細化を達成することが
できる。
【0085】なお、上述した第2実施例においては、第
2透明電極8と第2透明基板10との間に、第1反射防
止膜9を配置しているが、第2透明電極8と第1反射防
止膜9とを入れ替えて、第1反射防止膜9と第2透明基
板10との間に、第2透明電極8を配置するようにして
も同様な効果を得ることができる。
【0086】《第3実施例の説明》図6は本発明による
比抵抗傾斜型空間光変調素子の第3実施例を示す断面図
である。なお、この図において、図1の各部と同じ部分
には、同じ符号が付してある。
【0087】<第3実施例の全体構成の説明>この図に
示す比抵抗傾斜型空間光変調素子1が図1に示す素子と
異なる点は、液晶層70として、ネマチック液晶、コレ
ステリック液晶、スメクチック液晶およびこれらのネマ
チック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶の
混合物によって構成される群から選択された1つ以上の
液晶を用いるとともに、誘電体多層膜ミラー6と液晶層
70との間に液晶分子を配向させる第1配向層20を設
け、さらに前記液晶層70と第2透明電極8との間に液
晶分子を配向させる第2配向層21を設け、前記第1配
向層20と、前記液晶層70と、前記第2配向層21を
まとめて光変調層7とし、これら第1透明基板2と、第
1透明電極3と、光導電層4と、光吸収層5と、誘電体
多層膜ミラー6と、光変調層7と、第2透明電極8と、
第1反射防止膜9と、第2透明基板10と、第2反射防
止膜11とを順次、密着積層して素子を形成したことで
あり、交流電源12によって第1透明電極3と、第2透
明電極8との間に交流電圧を印加した状態で、第1透明
基板2側に書込み光13を入射させることにより、光導
電層4の抵抗値を変化させて光変調層7に光情報を2次
元的に書込み、第2反射防止膜11側に読み出し光14
を入射させることにより、前記光変調層7に書き込まれ
ている光情報14を読み出し、これを外部に出射する。
ここで、第1配向層20と第2配向層21は、非常に薄
いため、これらと液晶層70をまとめて光変調層7とす
ることは何ら支障がない。
【0088】そして、この比抵抗傾斜型空間光変調素子
でも、この比抵抗傾斜型空間光変調素子を構成する光導
電層4と、第2透明電極8との間にある各層のうち、最
も厚い層、すなわち光変調層7をA層とし、かつこのA
層に接し、前記光導電層4により近い層、すなわち誘電
体多層膜ミラー6をB層とするとき、光変調層7(A
層)の比抵抗が誘電体多層膜ミラー6(B層)の比抵抗
よりも、少なくとも小さくならないようにしている。
【0089】このようにしても、上述した第1実施例と
同様に、素子自体の解像度を大幅に向上させて、素子自
体や各光学系を大型化することなく、高精細画像を表示
することができ、これによって投射型ディスプレィや画
像処理装置自体を大型化することなく、かつ製作コスト
を増大させることなく画像の高精細化を達成することが
できる。
【0090】また、図6に示す比抵抗傾斜型空間光変調
素子1では、第1配向層20、第2配向層21、光吸収
層5を削除しても、この第3実施例と同様な効果を得る
ことができる。
【0091】なお、上述した第3実施例においては、第
2透明電極8と第2透明基板10との間に、第1反射防
止膜9を配置しているが、第2透明電極8と第1反射防
止膜9とを入れ替えて、第1反射防止膜9と第2透明基
板10との間に、第2透明電極8を配置するようにして
も同様な効果を得ることができる。
【0092】《第4実施例の説明》図7は本発明による
比抵抗傾斜型空間光変調素子の第4実施例を示す断面図
である。なお、この図において、図1の各部と同じ部分
には、同じ符号が付してある。
【0093】<第4実施例の全体構成の説明>この図に
示す比抵抗傾斜型空間光変調素子1が図1に示す素子と
異なる点は、図1に示す比抵抗傾斜型空間光変調素子1
から第1反射防止膜9と、第2透明基板10と、第2反
射防止膜11とを除くとともに、光変調層7として、L
iNbO3 、LiTaO3 、KDP、DKDP、AD
P、KTP、KNbO3 、SrxBa1-x Nb2 6
GaAs、InP、GaP結晶によって構成される群か
ら選択された1つ以上の電気光学結晶を用い、さらに光
変調層7と、第2透明電極8との間に反射防止膜22を
挿入し、これら第1透明基板2と、第1透明電極3と、
光導電層4と、光吸収層5と、誘電体多層膜ミラー6
と、光変調層7と、反射防止膜22と、第2透明電極8
とを順次、密着積層して素子を形成したことであり、交
流電源12によって第1透明電極3と、第2透明電極8
との間に交流電圧を印加した状態で、第1透明基板2側
に書込み光13を入射させることにより、光導電層4の
抵抗値を変化させて光変調層7に光情報を2次元的に書
込み、第2透明電極8側に読み出し光14を入射させる
ことにより、前記光変調層7に書き込まれている光情報
14を読み出し、これを外部に出射する。
【0094】そして、この比抵抗傾斜型空間光変調素子
でも、この比抵抗傾斜型空間光変調素子を構成する光導
電層4と、第2透明電極8との間にある各層のうち、最
も厚い層、すなわち光変調層7をA層とし、かつこのA
層に接し、前記光導電層4により近い層、すなわち誘電
体多層膜ミラー6をB層とするとき、光変調層7(A
層)の比抵抗が誘電体多層膜ミラー6(B層)の比抵抗
よりも、少なくとも小さくならないようにしている。
【0095】このようにしても、上述した第1実施例と
同様に、素子自体の解像度を大幅に向上させて、素子自
体や各光学系を大型化することなく、高精細画像を表示
することができ、これによって投射型ディスプレィや画
像処理装置自体を大型化することなく、かつ製作コスト
を増大させることなく画像の高精細化を達成することが
できる。
【0096】なお、上述した第4実施例においては、光
変調層7と第2透明電極8との間に、反射防止膜22を
配置しているが、第2透明電極8と反射防止膜22とを
入れ替えて、光変調層7と反射防止膜22との間に、第
2透明電極8を配置するようにしても同様な効果を得る
ことができる。
【0097】《第5実施例の説明》図8は本発明による
比抵抗傾斜型空間光変調素子の第5実施例を示す断面図
である。なお、この図において、図1の各部と同じ部分
には、同じ符号が付してある。
【0098】<第5実施例の全体構成の説明>この図に
示す比抵抗傾斜型空間光変調素子1が図1に示す素子と
異なる点は、図1に示す比抵抗傾斜型空間光変調素子1
から第1反射防止膜9を除き、第2透明電極8と光調光
層7との間に反射防止膜23を挿入するとともに、第2
透明電極8、第2透明基板10および第2反射防止膜1
1の形状を大きくし、さらに光変調層7として、LiN
bO3 、LiTaO3 、KDP、DKDP、ADP、K
TP、KNbO3 、Srx Ba1-x Nb2 6 、GaA
s、InP、GaP結晶によって構成される群から選択
された1つ以上の電気光学結晶を用い、これら第1透明
基板2と、第1透明電極3と、光導電層4と、光吸収層
5と、誘電体多層膜ミラー6と、光変調層7と、反射防
止膜23と、第2透明電極8と、第2透明基板10と、
第2反射防止膜11とを順次、密着積層して形成した素
子であり、交流電源12によって第1透明電極3と、第
2透明電極8との間に交流電圧を印加した状態で、第1
透明基板2側に書込み光13を入射させることにより、
光導電層4の抵抗値を変化させて光変調層7に光情報を
2次元的に書込み、第2反射防止膜11側に読み出し光
14を入射させることにより、前記光変調層7に書き込
まれている光情報14を読み出し、これを外部に出射す
る。
【0099】そして、この比抵抗傾斜型空間光変調素子
でも、この比抵抗傾斜型空間光変調素子を構成する光導
電層4と、第2透明電極8との間にある各層のうち、最
も厚い層、すなわち光変調層7をA層とし、かつこのA
層に接し、前記光導電層4により近い層、すなわち誘電
体多層膜ミラー6をB層とするとき、光変調層7(A
層)の比抵抗が誘電体多層膜ミラー6(B層)の比抵抗
よりも、少なくとも小さくならないようにしている。
【0100】このようにしても、上述した第1実施例と
同様に、素子自体の解像度を大幅に向上させて、素子自
体や各光学系を大型化することなく、高精細画像を表示
することができ、これによって投射型ディスプレィや画
像処理装置自体を大型化することなく、かつ製作コスト
を増大させることなく画像の高精細化を達成することが
できる。
【0101】また、図8に示す比抵抗傾斜型空間光変調
素子1では、光吸収層5、反射防止膜23、第2反射防
止膜11を削除しても、この第5実施例と同様な効果を
得ることができる。
【0102】なお、上述した第5実施例においては、光
変調層7と第2透明電極8との間に、反射防止膜23を
配置しているが、第2透明電極8と反射防止膜23とを
入れ替えて、光変調層7と反射防止膜23との間に、第
2透明電極8を配置するようにしても同様な効果を得る
ことができる。
【0103】《比抵抗傾斜型空間光変調素子の動作》次
に、液晶17の常光屈折率と、透明樹脂18の屈折率と
がほぼ一致し、かつ図2の構成の液晶・樹脂複合体19
を光変調層7とする図1の比抵抗傾斜型空間光変調素子
1を例にとり、本発明の比抵抗設定型空間変調素子の動
作を説明する。
【0104】まず、書込み光13が無い場合には、比抵
抗傾斜型空間光変調素子1に印加される電圧の大部分が
光導電層4に印加され、光変調層7である液晶・樹脂複
合体19に加わる電圧が小さいことから、透明樹脂18
の不規則な壁面に応じて、液晶17の分子が様々な方向
を向く。
【0105】このとき、液晶17がこの液晶17を囲む
透明樹脂18の屈折率と異なる屈折率を持つため、読み
出し光14が入射したとき、これが液晶・樹脂複合体1
9の中で散乱される。
【0106】次に、光導電層4側に書込み光13が入射
すると、書込み光13の強度に応じて光導電層4のイン
ピーダンスが減少し、液晶・樹脂複合体19に印加され
る電圧が増大する。そして、前記書込み光13の強度が
十分大きいとき、液晶分子の長軸が電界の印加方向を向
くことから、液晶・樹脂複合体19にほぼ垂直に入射し
た読み出し光14に対し、液晶17の中で、液晶17の
常光屈折率とほぼ同じ屈折率が与えられる。このとき、
液晶17の常光屈折率と、透明樹脂19の屈折率とが極
めて近いため、読み出し光14が散乱されずに、液晶・
樹脂複合体19中を直進し、誘電体多層膜ミラー6で反
射された後、再び液晶・樹脂複合体19を直進した後、
第2透明電極8、第1反射防止膜9、第2透明基板1
0、第2反射防止膜11を透過して比抵抗傾斜型空間光
変調素子1の外に出射される。
【0107】《比抵抗傾斜型空間光変調素子の使用例》
このように、本発明による比抵抗傾斜型空間光変調素子
1は書込み光13の強度に応じて、読み出し光14を散
乱あるいは直進させるようにしているので、図9に示す
如く比抵抗傾斜型空間光変調素子1と、レンズ25と、
アパーチャ26とを組み合わせ、散乱光をアパーチャ2
6で遮断すれば、波長変換対象となる画像や2次元パタ
ーンを含む書込み光13を比抵抗傾斜型空間光変調素子
1の一面側に入射させながら、前記書込み光13の波長
と異なる波長を持つ読み出し光14を前記比抵抗傾斜型
空間光変調素子1の他面側に入射させることにより、前
記書込み光13に含まれている画像や2次元のデータパ
ターンを読み出し光14の波長に変換して、これを高い
コントラスト比で表示することができる。
【0108】《比抵抗傾斜型空間光変調素子の試作例》
ここでは、光導電層4として、厚さ0.5mmのBi12
SiO20結晶板を、光吸収層5として、厚さ1.3μm
のダイヤモンドライクカーボン膜を用い、誘電体多層膜
ミラー6として、HfO2 膜とSiO2 膜を交互に17
層重ねた厚さ1.3μmの多層膜を用い、また光変調層
7として使用される液晶・樹脂複合体19として、表2
に示す特性のネマチック液晶と、表3に示す特性の透明
樹脂とを1:1の重量比で混合した厚さ10μmの複合
膜を用い、第1透明電極3および第2透明電極9として
In2 3 に5%のSnを添加した厚さ0.05μmの
ITO透明電極膜を用い、さらに第1反射防止膜9とし
てMgF2 膜を用い、第2反射防止膜11としてCeF
3 膜、ZrO2 膜、MgF2 膜を用いた比抵抗傾斜型空
間光変調素子1を例にとって、その作製方法を詳細に述
べる。
【0109】
【表2】
【表3】 まず、Bi12SiO20結晶から適当な厚さのウェハーを
切り出し、0.5mmの厚さに光学研磨してこれを光導
電層4とした後、この光導電層4の一方の表面に厚さ
0.05μmのITO透明電極を蒸着して第1透明電極
3を形成する。
【0110】次に、メタンガスを原料としてプラズマC
VD法によりBi12SiO20結晶の他の表面に厚さ1.
3μmのダイヤモンドライクカーボン膜を形成してこれ
を光吸収層5とする。このとき得られたダイヤモンドラ
イクカーボン膜は、波長450nmの光に対して0.0
2%の透過率を示し、また、その比抵抗は2.2×10
8 Ωcmであった。
【0111】次に、イオンビームアシスト(IAD)法
を用いて前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に、Hf
2 膜と、SiO2 膜とを交互に17層積層した厚さ
1.3μmの誘電体多層膜ミラー6を形成する。この場
合、IAD法は電子ビーム蒸着中に蒸着膜を形成する基
板上に低エネルギーの酸素イオンを照射する成膜法であ
り、低温で高屈折率・低光吸収特性を持つ薄膜を作成す
ることができる。そして、この誘電体多層膜ミラー6を
形成している最中に基板に照射する酸素イオンビームの
エネルギーを変えることにより、誘電体多層膜ミラー6
の比抵抗の制御して、107 Ωcm以上から1010Ωc
m以下の範囲にしたとき、波長500〜590nmの光
に対して、98%の透過率を示した。
【0112】次いで、第2透明基板10となるガラス基
板の前記光変調層7が積層される側に、電子ビーム蒸着
法によってMgF2 膜を形成してこれを第1反射防止膜
9とするとともに、前記ガラス基板の他方の面に、電子
ビーム蒸着法によってCeF3 膜、ZrO2 膜、MgF
2 膜を形成してこれを第2反射防止膜11とした後、前
記第1反射防止膜9上に、In2 3 に5%のSnを添
加した厚さ0.05μmのITO層を形成してこれを第
2透明電極8とする。
【0113】次に、表2に示す特性のネマチック液晶
と、表3に示す特性の透明樹脂前駆体とを1:1の重量
比で混合し、直径10μmのスペーサ球を適当量だけ加
えた後、この混合液を前記誘電体多層膜ミラー6と、前
記第1反射防止膜9、第2透明電極8および第2反射防
止膜11が積層されたガラス基板(第2透明基板10)
とで挟み、これに波長365nm、光強度20mW/c
2 の紫外線を照射して厚さ10μm、比抵抗1010Ω
cmの液晶・樹脂複合体19(光変調層7)を形成して
比抵抗設定型光変調素子1を製作した。
【0114】この場合、上述した手順で製作される比抵
抗傾斜型空間光変調素子では、前記Bi12SiO20によ
って構成される光導電層4と、ITO透明電極によって
構成される第2透明電極8との間にある液晶・樹脂複合
体19によって構成される光変調層7が最も厚い層(A
層)となり、また前記Bi12SiO20によって構成され
る光導電層4と、ITO透明電極によって構成される第
2透明電極8との間にある誘電体多層膜ミラー6が前記
A層に接し、かつ光導電層4に近いB層となることか
ら、光変調層7を構成する液晶・樹脂複合体19の比抵
抗が1010Ωcmにされ、また前記誘電体多層膜ミラー
6の比抵抗が107 〜1010Ωcmにされ、これによっ
てA層の比抵抗がよりB層の比抵抗よりも、少なくとも
小さくならないように設定されている。
【0115】《比抵抗傾斜型空間光変調素子の画像特性
例》そして、上述したプロセスで作成された本発明によ
る比抵抗傾斜型空間光変調素子1の性能と、従来の空間
光変調素子の性能とを比較するため、2群の空間光変調
素子を評価した。
【0116】第1群は、第1透明電極3としてIn2
3 に5%のSnを添加した厚さ0.05μmのITO膜
を用い、光導電層4として厚さ0.5mmのBi12Si
20結晶板を用い、光吸収層5として厚さ1.3μm、
比抵抗2.2×108 Ωcmのダイヤモンドライクカー
ボン膜を用い、誘電体多層膜ミラー6としてIAD法で
作製したHfO2 膜とSiO2 膜とを交互に17層だけ
重ねた厚さ1.3μmの多層膜を用い、また光変調層7
となる液晶・樹脂複合体19として表2に示すネマチッ
ク液晶と、表3に示す特性を持つ透明樹脂前駆体を1:
1の重量比で混合した厚さ10μm、比抵抗1010Ωc
mの液晶・樹脂複合膜19を用い、第2透明電極8とし
てIn2 3 に5%のSnを添加した厚さ0.05μm
のITO膜を用い、さらに第1反射防止膜9としてMg
2 膜を用い、第2反射防止膜11としてCeF3 膜、
ZrO2 膜、MgF2 膜を用いた素子である。
【0117】一方、第2群は、第1群の空間光変調素子
から光吸収層5であるダイヤモンドライクカーボン膜を
除去した素子である。
【0118】そして、これら両群とも、数個以上の空間
光変調素子を有し、各素子の誘電体多層膜ミラー6は、
107 Ωcmから1012Ωcmの範囲の種々の比抵抗を
持つ。
【0119】両群の空間光変調素子において、1010Ω
cm以下の範囲に含まれる比抵抗を持つ誘電体多層膜ミ
ラー6を備えた空間光変調素子が本発明の比抵抗傾斜型
空間光変調素子1に該当する。
【0120】これらの空間光変調素子を、図10に示す
光学系30内に設置してその画像特性を測定した。
【0121】この光学系30では、キセノンランプ31
および反射鏡32で構成される書込み用光源33によっ
て書込み光13を生成し、紫外線カットフィルタ34、
赤外線カットフィルタ35、400〜500nmの透過
帯域を持つカラーフィルタ36によって前記書込み光1
3を青色光に変換するとともに、レンズ37によって前
記青色光を並行光線にした後、これを解像度評価用パタ
ーン38に照射し、レンズ39によって前記解像度評価
用パターン38を透過した書込み光(画像を含む青色
光)13を、80V(実効値)の電圧値および30〜2
00Hzの繰り返し周波数を持つ矩形波電圧(交流電
圧)が印加されている測定用の空間光変調素子上に結像
させる。
【0122】このとき、解像度評価用パターン38とし
てUSAF1951解像度チャートを使用し、レンズ3
9を通して空間光変調素子の位置に結像したとき、10
0lp/mmまで認識することができた。
【0123】一方、キセノンランプ45および反射鏡4
6で構成される読み出し用光源47によって読み出し光
14を生成し、紫外線カットフィルタ48、赤外線カッ
トフィルタ49、500〜590nmの透過帯域を持つ
カラーフィルタ50によって前記読み出し光14を緑色
光に変換するとともに、レンズ51によって前記緑色光
を集光させながら、反射鏡52によって光路変更した
後、レンズ53によって前記読み出し光(緑色光)を空
間光変調素子に照射させる。
【0124】そして、レンズ53によってこの空間光変
調素子からの表示光15を取込み、これを集光させなが
ら、アパーチャ54によって前記表示光15のうち、散
乱光を遮断し、表示画像のコントラスト比を向上させた
後、レンズ55によってスクリーン56上に対角長2m
のサイズに拡大投射させる。
【0125】以上述べた手順で、誘電体多層膜ミラー6
の比抵抗が各々異なる各空間光変調素子の限界解像度を
測定したところ、図11に示すように、第1群の各空間
光変調素子について、白丸および破線に示す比抵抗−限
界解像度特性を得ることができ、また第2群の各空間光
変調素子について、黒丸および実線に示す比抵抗−限界
解像度特性を得ることができた。
【0126】この図11から明らかなように、光変調層
を構成する液晶・樹脂複合体19の比抵抗である1010
Ωcmよりも、等しいか小さい比抵抗(1010Ωcm以
下の比抵抗)を持つ誘電体多層膜ミラー6を備えた本発
明による比抵抗傾斜型空間光変調素子1では、高い限界
解像度を示すが、この範囲外の比抵抗の誘電体多層膜ミ
ラーを持つ従来の空間光変調素子では、低い限界解像度
になる。
【0127】特に、第2群を構成する各空間光変調素子
では、この傾向が一段と顕著になる。
【0128】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、請
求項1、2、3では、素子自体の解像度を大幅に向上さ
せて、素子自体や各光学系を大型化することなく、高精
細画像を表示することができ、これによって投射型ディ
スプレィや画像処理装置自体を大型化することなく、か
つ製作コストを増大させることなく画像の高精細化を達
成することができる。また、請求項4〜13では、素子
を構成する各要素を特定することにより、現存する材料
によって請求項1、2、3に示す効果を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による比抵抗傾斜型空間光変調素子の第
1実施例を示す構成図である。
【図2】図1に示す光変調層を構成する液晶・樹脂複合
体の一例を示す断面図である。
【図3】図1に示す光変調層を構成する液晶・樹脂複合
体の他の例を示す断面図である。
【図4】図1に示す光変調層を構成する液晶・樹脂複合
体の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明による比抵抗傾斜型空間光変調素子の第
2実施例を示す断面図である。
【図6】本発明による比抵抗傾斜型空間光変調素子の第
3実施例を示す断面図である。
【図7】本発明による比抵抗傾斜型空間光変調素子の第
4実施例を示す断面図である。
【図8】本発明による比抵抗傾斜型空間光変調素子の第
5実施例を示す断面図である。
【図9】本発明による比抵抗傾斜型空間光変調素子の使
用例を示す構成図である。
【図10】本発明による比抵抗傾斜型空間光変調素子を
含む、比抵抗を持つ複数の空間光変調素子の画像特性を
測定するときの光学系を示す構成図である。
【図11】図10に示す光学系によって測定された各空
間光変調素子の比抵抗−限界解像度特性を示す特性図で
ある。
【図12】従来から知られている空間光変調素子の一例
を示す断面図である。
【符号の説明】
1 比抵抗傾斜型空間光変調素子 2 第1透明基板 3 第1透明電極 4 光導電層 5 光吸収層 6 誘電体多層膜ミラー(B層) 7 光変調層(A層) 8 第2透明電極 9 第1反射防止膜 10 第2透明基板 11 第2反射防止膜 12 交流電源 13 書込み光 14 読み出し光 15 光情報(表示光) 17 液晶 18 透明樹脂 19 液晶・樹脂複合体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/135 G02F 1/03 G02F 1/1333

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1透明電極、光導電層、光吸収層、誘
    電体多層膜ミラー、光変調層、第2透明電極を積層して
    形成され、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間
    に繰り返し電圧を印加しながら、前記第1透明電極側か
    ら入射された書込み光に基づき、前記光導電層のインピ
    ーダンスを変化させて前記光変調層の状態を変化させ、
    前記第2透明電極側から入射された読み出し光を前記光
    変調層によって選択的に通過させながら、誘電体多層膜
    ミラーによって反射して前記第2透明電極側から出射さ
    せる空間光変調素子において、 前記光導電層と前記第2透明電極との間にある最も厚い
    A層の比抵抗が、このA層に接し、かつ前記光導電層に
    より近いB層の比抵抗よりも、少なくとも小さくならな
    いように前記A層およびB層の比抵抗値を設定する、 ことを特徴とする比抵抗傾斜型空間光変調素子。
  2. 【請求項2】 第1透明電極、光導電層、誘電体多層膜
    ミラー、光変調層、第2透明電極を積層して形成され、
    前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に繰り返し
    電圧を印加しながら、前記第1透明電極側から入射され
    た書込み光に基づき、前記光導電層のインピーダンスを
    変化させて前記光変調層の状態を変化させ、前記第2透
    明電極側から入射された読み出し光を前記光変調層によ
    って選択的に通過させながら、誘電体多層膜ミラーによ
    って反射して前記第2透明電極側から出射させる空間光
    変調素子において、 前記光導電層と前記第2透明電極との間の最も厚いA層
    の比抵抗が、このA層に接し、かつ前記光導電層により
    近いB層の比抵抗よりも、少なくとも小さくならないよ
    うに前記A層およびB層の比抵抗値を設定する、 ことを特徴とする比抵抗傾斜型空間光変調素子。
  3. 【請求項3】 第1透明電極、光導電層、光変調層、第
    2透明電極を積層して形成され、前記光導電層と前記第
    2透明電極との間に少なくとも1つ以上の透明もしくは
    不透明な中間層を有し、前記第1透明電極と前記第2透
    明電極との間に繰り返し電圧を印加しながら、前記第1
    透明電極側から入射された書込み光に基づき、前記光導
    電層のインピーダンスを変化させて前記光変調層の状態
    を変化させ、前記第2透明電極側から入射された読み出
    し光を前記光変調層によって選択的に通過させながら、
    前記中間層によって反射して前記第2透明電極側から出
    射させる空間光変調素子において、 前記光導電層と第2透明電極との間にある最も厚いA層
    の比抵抗が、前記A層に接し、さらに前記光導電層によ
    り近いB層の比抵抗よりも、少なくとも小さくならない
    ように前記A層およびB層の比抵抗値を設定する、 ことを特徴とする比抵抗傾斜型空間光変調素子。
  4. 【請求項4】 前記光変調層として、ネマチック液晶、
    コレステリック液晶、スメクチック液晶、これらネマチ
    ック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶の混
    合物によって構成される群から選択された1つ以上の液
    晶を選択して用いることを特徴とする請求項1、2、3
    のいずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素子。
  5. 【請求項5】 前記光変調層として、ネマチック液晶、
    コレステリック液晶、スメクチック液晶、これらネマチ
    ック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶の混
    合物によって構成される群から選択された1つ以上の液
    晶の常光屈折率、異常光屈折率または前記液晶がランダ
    ムに配向した際の屈折率のいずれかと同等の屈折率を持
    つ樹脂中に前記液晶を分散させた液晶・樹脂複合体、ま
    たは前記液晶中に前記樹脂を分散させた液晶・樹脂複合
    体のいずれか一方を用いることを特徴とする請求項1、
    2、3のいずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調素
    子。
  6. 【請求項6】 前記光変調層として、LiNbO3 、L
    iTaO3 、KDP、DKDP、ADP、KTP、KN
    bO3 、Srx Ba1-x Nb2 6 、GaAs、In
    P、GaP結晶によって構成される群から選択された1
    つ以上の電気光学結晶を用いることを特徴とする請求項
    1、2、3のいずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変調
    素子。
  7. 【請求項7】 前記光導電層として、珪素、ゲルマニウ
    ム、炭素によって構成される群から選択された1つ以上
    の元素によって構成されるアモルファス膜を用いること
    を特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の比抵
    抗傾斜型空間光変調素子。
  8. 【請求項8】 前記光導電層として、アモルファスシリ
    コン膜、水素化アモルファスシリコン膜、アモルファス
    シリコンカーバイト膜、水素化アモルファスシリコンカ
    ーバイト膜、アモルファスセレン膜、アモルファスSe
    As膜、アモルファスZnS膜、アモルファスCdS
    膜、アモルファスCdSe膜によって構成される群から
    選択された1つ以上の膜を用いることを特徴とする請求
    項1、2、3のいずれかに記載の比抵抗傾斜型空間光変
    調素子。
  9. 【請求項9】 前記光導電層として、GaAs結晶、G
    aP結晶、Bi12SiO20結晶、Bi12GeO20結晶に
    よって構成される群から選択された1つ以上の結晶を用
    いることを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記
    載の比抵抗傾斜型空間光変調素子。
  10. 【請求項10】 前記光導電層として、フタロシアニン
    系顔料、アゾ系顔料、多環キノン系顔料、ペリレン系顔
    料、ペリノン系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ
    系顔料、チオインジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ア
    ゾレーキ系顔料、チアピリリウム系色素、キナクリドン
    系顔料、シアニン系色素、ピロル系顔料、ポルフィリン
    系顔料、アンタントン系顔料、スクアリリウム色素、ア
    ズレニウム色素、ZnO、TiO、CdSあるいはCd
    Seを樹脂中に分散させた材料を用いることを特徴とす
    る請求項1、2、3のいずれかに記載の比抵抗傾斜型空
    間光変調素子。
  11. 【請求項11】 前記光吸収層として、CdTe膜、ダ
    イヤモンドライクカーボン膜、珪素と炭素とゲルマニウ
    ムとから実質的に構成されたアモルファス膜によって構
    成される群から選択された1つ以上の膜を用いることを
    特徴とする請求項1に記載の比抵抗傾斜型空間光変調素
    子。
  12. 【請求項12】 前記光吸収層として、無機顔料、有機
    顔料、カーボン、染料によって構成される群から選択さ
    れた1つ以上の材料を樹脂中に分散させた樹脂複合体を
    用いることを特徴とする請求項1に記載の比抵抗傾斜型
    空間光変調素子。
  13. 【請求項13】 前記誘電体多層膜ミラーとして、Si
    2 膜、TiO2 膜、HfO2 膜、Ta2 5 膜、Zn
    S膜、Al2 3 膜、Na2 AlF6 膜、MgF2 膜、
    LaF3 膜、GdF3 膜、SmF3 膜、CeF3 膜、Z
    rO2 膜、CeO2 膜によって構成される群から選択さ
    れた2つ以上の膜を積層した多層膜を用いることを特徴
    とする請求項1または2のいずれかに記載の比抵抗傾斜
    型空間光変調素子。
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