JP3250416B2 - 耐磨耗性の優れた高炭素電縫鋼管 - Google Patents

耐磨耗性の優れた高炭素電縫鋼管

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JP3250416B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は石炭等のスラリー輸送
や、塵芥の空気輸送等に使用される耐磨耗性の優れた電
縫鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、土砂、鉱石、石炭等のスラリー、
塵芥等の空気輸送、固体と液体の混合物のパイプ輸送等
のために、鋼管を用いたパイプラインが普及しつつあ
る。このようなパイプラインに使用される鋼管の内面
は、管内を輸送される固体物質に常時接触する結果、そ
の固体物質によって絶えず研削されることになる。その
ために、鋼管内面の磨耗が極めて大きく、従って、鋼管
の寿命が短く、頻繁に交換を必要とする結果、コストが
高騰するばりでなく、プラント等の稼働率を下げる要因
ともなっていた。
【0003】鋼管内面の耐磨耗性を高めるために、従来
から種々の方法が開発または提案されており、例えば、
管内面のコーティング、ステライト等の固い合金による
被覆、樹脂によるコーティング管等が知られている。し
かしながら、これらの方法には、コスト高や溶接部近傍
の対策等の問題がある。
【0004】鋼管の耐磨耗性は、一般的には、その表面
硬度を高めることにより向上する。例えば、機械構造用
の部品等について、その表面に浸炭等によって硬化層を
形成することにより、耐磨耗性を向上させることが知ら
れている。しかしながら、製品が大きい場合には、この
ような方法の適用が困難であり、また、コスト的にも高
価になる問題がある。
【0005】単重の大きな鉄鋼製品においても、耐磨耗
性を向上させる試みがなされており、例えば、特開昭6
2−270725号公報には、C当量を規定した鋼管を
加熱し、内面から冷却し、低温で焼き戻す技術が開示さ
れており、また、特開平6−17188号公報には、
C、SiおよびMnを含有する耐磨耗鋼が開示されてい
る。この技術は、鋼をフェライト相とマルテンサイト相
との混合組織となし、軟らかいフェライト相の中に固い
マルテンサイト相を分散させたものである。また、特開
平5−98351号公報には、C量が低く軟らかい鋼を
C量が高く固い鋼で包んだスラブを圧延して鋼帯をつく
り、その鋼帯より溶接鋼管を製造する技術が開示されて
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た技術を含め従来の技術は、耐磨耗性に優れた電縫鋼管
を得るためには、必ずしも適してはいない。即ち、耐磨
耗性に優れた電縫鋼管には、鋼管としての健全性と共
に、能率的に且つ安価に製造し得ることが要求されてお
り、これに対して、上述した技術には、いずれも次のよ
うな欠点がある。
【0007】特開昭62−270725号公報に開示さ
れた技術は、低温で焼き戻すことが前提とされている
が、低温焼き戻しは、しばしば硬度および靱性を同時に
低下させる熱処理であることが知られており、わざわざ
コストをかけてこのような熱処理を行なうことは問題で
ある。
【0008】特開平6−17188号公報に開示された
技術は、Si量の高い鋼を使用するために、健全な電縫
部を得ることが必ずしも容易ではなく、結果的に製造コ
ストを上昇させる。更に、特開平5−98351号公報
に開示された技術も、スラブの組み立てが大変であり、
経済的な方法とはいえない。
【0009】鋼の耐磨耗性を向上させる最も一般的な方
法は、鋼の硬度を高めることである。マルテンサイト組
織の鋼の硬度は、C量が多いほど高くなる。したがっ
て、C量が高いほど良好な耐磨耗性が得られる。一方、
C量の増加にともなって溶接性および加工性等が低下す
る。また、鋼をマルテンサイト相にするためには、焼入
れが有効であるが、十分に配慮をしない場合は焼き割れ
が起こる可能性が高い。なお、上記特開昭62−270
725号公報に開示された技術は、この焼き割れを防止
する技術であるともされているが、どの状態における割
れの発生を防止するのか必ずしも明らかにはされていな
い。
【0010】上述したことから、通常の電縫鋼管の製造
方法と大差がなく、また製造装置等の変更も必要とせ
ず、安価で且つ能率的に製造し得る耐磨耗性電縫鋼管の
開発が待たれている。
【0011】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、土砂、鉱石、石炭等のスラリー、ゴミ等の固
体のパイプ輸送、固体と液体の混合物のパイプ輸送用の
鋼管として好適な、優れた耐磨耗性を有し、通常の製造
方法と同様の方法によって、経済的且つ能率的に製造し
得る電縫鋼管を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
観点から、能率的に生産が可能でかつ経済的な、内面の
耐磨耗性の優れた電縫鋼管を開発すべく、長期間にわた
り鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。
【0013】この出願の請求項1に記載の発明は、 C :0.40〜0.50wt.%、 Si:0.15〜0.30wt.%、 Mn:0.75〜1.20wt.%、 S :0.005wt.%以下、 P :0.015wt.%以下を含み、 残り:Feおよび不可避不純物からなり、肉厚が8mm
以上であって、オーステナイト結晶粒度番号が5.0以
上であることに特徴を有するものである。この出願の請
求項2に記載の発明は、 C :0.40〜0.50wt.%、 Si:0.15〜0.30wt.%、 Mn:0.75〜1.20wt.%、 S :0.005wt.%以下、 P :0.015wt.%以下を含み、 Cu:0.10wt.%以下、 Ni:0.10wt.%以下、 Cr:0.10wt.%以下、および Mo:0.10wt.%以下の1種または2種以上を更
に含み、 残り:Feおよび不可避不純物からなり、肉厚が8mm
以上であって、オーステナイト結晶粒度番号が5.0以
上であることに特徴を有するものである。
【0014】この出願の請求項に記載の発明は、鋼管
の内表面から0.5mmの位置における焼入れままのマ
ルテンサイト量が60体積%以上であり、かつ前記鋼管
の内表面から2.5mmの位置における焼入れままのマ
ルテンサイト量が35体積%以下であることに特徴を有
するものである。
【0015】
【作用】この発明の電縫鋼管は、上述した化学成分組成
の鋼を溶製し、連続鋳造によりスラブとなし、前記スラ
ブを、所定温度に加熱した上熱間圧延して、熱延鋼帯を
調製し、得られた熱延鋼帯を成形してオープンパイプと
なし、次いで、高周波誘導溶接または電気抵抗溶接によ
って電縫溶接鋼管となし、オーステナイト化温度まで昇
温させた上、鋼管の内面より水冷することにより製造さ
れる。
【0016】この発明の電縫鋼管の金属組織は、焼入れ
ままのマルテンサイト相を含むものである。ここにおい
て焼入れままとは、通常行なわれる焼入れ後の焼き戻し
を行なわないという積極的な意味である。電縫鋼管をマ
ルテンサイト変態が起こったままにした場合には、しば
しば割れが発生する。この割れは、単に鋼管を保管中に
生ずることもあるが、溶接等を行なった場合には頻繁に
発生する。このような割れは、鋼管に対し適切な焼戻し
処理を施すことにより殆ど発生しなくなるが、一方、鋼
管の硬度が低下し、その耐磨耗性が劣化する。
【0017】本発明者らは、上記割れの発生防止には焼
入れ後の焼戻し処理が唯一の対応策ではないとの方針に
基づいて研究を重ね本発明を完成した。この発明の電縫
鋼管は、パイプライン用としてスラリー等の輸送に使用
することが目的であり、従って、耐磨耗性に優れている
ことが第一に必要とされ、更に、必要最小限の溶接性を
持たせるようにした。勿論、フランジによる接続も考慮
の対象ではある。
【0018】鋼管に耐磨耗性を付与する上で最も一般的
な方法は、上述したように、その硬度を高めることであ
る。そして、硬度の高い鋼管を得るための最も一般的な
方法は、鋼のマルテンサイト変態を利用することであ
る。ところで、マルテンサイト変態を起こしたままの鋼
管は、一般的に脆く、種々の加工に耐えないばかりでな
く、保管中にも割れが発生する。
【0019】上記現象は、鋼管の全体に焼きが入る条件
下で焼入れが行なわれ、マルテンサイト変態の起こる時
間の差に起因すると思われることから、本発明者等は、
上記割れの発生を防止するためには、鋼管の成分組成を
特定の範囲に限定し、且つ、加熱条件および冷却条件を
制御することが有効であることを見出した。
【0020】即ち、鋼管の内面近傍はマルテンサイト変
態量が多く、十分な耐磨耗性があり、鋼管の肉厚方向に
外面側に入るに従って、マルテンサイト変態量が少ない
状態とすることが有効であることを見出し、鋼の成分組
成を特定の範囲に限定し、更に焼入れ前の鋼の組織およ
び焼入れ条件を制御することにより、耐磨耗性の優れた
鋼管を得ることに成功した。
【0021】次に、この発明における鋼管の成分組成を
上述した範囲に限定した理由について説明する。 (1) C:Cは、鋼に耐磨耗性を付与する重要な元素であ
る。しかしながら、C含有量が0.4wt.%未満では所望
の効果が得られず、一方、C含有量が0.5wt.%を超え
ると焼き割れが発生しやすくなる。従って、C含有量は
0.4〜0.5wt.%の範囲内に限定すべきである。
【0022】(2) Mn:Mnは、鋼の焼入れ性を確保す
るための必須元素である。しかしながら、Mn含有量が
0.75wt.%未満では、鋼の内面近傍の硬度をHv40
0以上にすることができない。一方、Mn含有量が1.
20wt.%を超えると、鋼の内部にまで焼きが入りすぎ
て、割れが発生する。従って、Mn含有量は0.75〜
1.20wt.%の範囲内に限定すべきである。なお、上記
上限値は製造性、溶接性を確保するための上限値ともほ
ぼ等しい。
【0023】(3) Si:Siは脱酸元素であり、0.1
5〜0.30wt.%の範囲で含有させる。Si含有量が
0.15wt.%未満では脱酸の効果が十分でなく、一方、
Si含有量が0.30wt.%を超えると、脱酸効果が飽和
するばかりでなく、靱性が劣化する等の悪影響が生ず
る。
【0024】(4) Cu、Ni、Cr、Mo:Cu、N
i、Cr、Moも鋼の焼入れ性を高める元素である。上
記各元素は、必要に応じて、その少なくとも1つを0.
1wt.%以下の範囲で含有させる。上記各元素の少なくと
も1つの含有量が0.1wt.%を超えると焼きが入りやす
くなり、鋼の内部にまで焼きが入って割れ発生の原因と
なる。なお、上記元素の合計含有量は0.3wt.%が目安
となる。合計含有量が0.3wt.%を超えると、同様の理
由により、割れ発生の原因になる。
【0025】(5) S:不純物としてのSの含有量は0.
005wt.%以下に限定すべきである。Sは加工性に有害
であることが知られているが、本発明鋼管のように、C
含有量が高い場合には特に有害である。S含有量が0.
005wt.%を超えると、熱間圧延時に割れが発生しやす
くなり、鋼帯の端部に耳われが大きく発生する。
【0026】(6) P:不純物としてのPの含有量は0.
015wt.%以下に限定すべきである。P含有量が上記値
を超えると、やはり、機械特性が劣化する。さらに、P
は焼入れ性を高める作用を有しているため、P含有量が
0.015wt.%を超えると、焼入れが深くなりすぎる問
題が生ずる。
【0027】(7) Al:Alは脱酸剤であると同時にN
と共にAlNを形成し、鋼のオーステナイト結晶粒を微
細化して、機械特性を向上させる作用を有している。上
記オーステナイト結晶粒の微細化によって、鋼の焼入れ
性が減少し、焼入れ深さが浅くなる。従って、表面近く
に焼きが大きく入り、内部には焼きが余り入らない組織
が得られる。しかしながら、Al含有量が0.005w
t.%未満では、所望の効果が得られず、一方、Al含有
量が0.05wt.%を超えると介在物の量が増えることに
よる脆化作用が大になる。従って、Al含有量は、0.
005〜0.05wt.%の範囲内とすることが好ましい。
【0028】(8) N:Nは、Alと共にAlNを形成
し、鋼のオーステナイト結晶粒を微細にして、機械特性
を向上させ、又、焼入れ性を減少させる作用を有してい
る。しかしながら、N含有量が0.01wt.%を超えると
機械特性が劣化する。下限は特に定める必要はないが、
通常は0.001wt.%以上の量は鋼の溶解時に混入す
る。従って、N含有量は、0.001〜0.01wt.%の
範囲内とすることが好ましい。
【0029】(9) O:Oは、鋼の延性および靱性を劣化
させ、その悪影響はO含有量が0.007wt.%を超える
と著しくなる。従って、O含有量は0.007wt.%以下
とすることが好ましい。
【0030】(10) H:Hが鋼中に含有されていると割
れの発生原因になり、その量が0.0001wt.%を超え
ると特に割れが発生しやすくなる。従って、H含有量
は、0.0001wt.%以下に制限することが好ましい。
【0031】なお、Ti,Vは0.1wt.%程度含有され
ていても、本発明の本質には影響を与えない。0.01
wt.%以下のCa,Mgも同様である。ただし、Bは焼入
れ性に大きく影響を与える元素であるため、不純物とし
て入る場合でも0.0001wt.%以下に制限することが
好ましい。
【0032】次に、金属組織について述べる。本発明に
おいては、まず、焼入れ前のオーステナイト粒度の制御
が重要である。オーステナイト結晶粒が大きいと、焼き
が入りやすく、鋼管を内面より水冷し焼入れした場合
に、肉厚の内部にまで焼きが入り、焼入れままで使用す
ることが不可能になる。従って、過度にオーステナイト
結晶粒が大きい場合には割れが発生しやすくなる。具体
的には、オーステナイト結晶粒度番号5.0が限界値で
あり、これより粗粒の場合は焼きが入りすぎる。従っ
て、オーステナイト結晶粒は、5.0以上の細粒にすべ
きである。
【0033】本発明電縫鋼管の製造において、鋼管に加
工する熱延鋼帯を巻き取る場合に、水冷は行なわない。
その理由は、割れの発生を防止するためであるが、更
に、徐冷を行なうことにより、AlN等の析出を促進
し、その後の熱処理時におけるオーステナイト結晶粒の
成長を抑制させるためである。
【0034】本発明電縫鋼管は、上記成分組成のスラブ
を調製し、次いで、前記スラブを熱間圧延して熱延鋼帯
を調製し、前記熱延鋼帯を多段の成形ロールにより連続
的にオープンパイプに成形した後、電縫溶接して電縫鋼
管となし、得られた電縫鋼管の溶接部を焼鈍し、焼鈍さ
れた鋼管を加熱し次いでその内面を水冷することにより
製造される。
【0035】焼鈍された鋼管の加熱温度は、850〜9
50℃の範囲内とする。即ち、本発明範囲内の成分組成
の鋼のAc3 点は、850℃以下であるが、以下に述べ
るように、熱処理時間が短いため、多少の余裕を持たせ
る。なお、加熱温度の上限は厳しく管理することが必要
である。本発明鋼管の場合には、焼入れ後に焼き戻し処
理は行なわない。即ち、管内面の内部まで焼き入れ組織
とすることは好ましくない。そのためには、焼入れ性を
あまり高めないことが必要であり、オーステナイト結晶
粒の過度な成長は好ましくない。
【0036】なお、上記焼入れ温度範囲、冷却速度範囲
の中での最適値は、鋼の組成、管の製造履歴により異な
ることは勿論である。例えば、AlやNの含有量が比較
的多く、オーステナイト結晶粒が成長しにくい組成の場
合には、熱処理温度が950℃近くの場合でも目的とす
る組織が得られる。これに対して、AlやNの含有量が
少なく、オーステナイト結晶粒が成長しやすい組成の場
合には、熱処理温度を900℃以下にする必要がある。
【0037】大気溶解を行なう場合には、N量は通常
0.005wt.%程度であるが、Al量が0.01wt.%以
下の場合には、加熱温度を850〜900℃の範囲内と
し、Al量が0.01wt.%を超える場合には、加熱温度
を850〜950℃の範囲とする。
【0038】高温に保持する時間も重要である。保持時
間が短い場合にはオーステナイト化が十分に進行しな
い。一方、保持時間が長すぎると結晶粒の粗大化が生ず
る。好ましい保持時間は、30秒から2分の範囲内であ
る。
【0039】加熱方法は特に限定する必要はないが、急
速に昇温することが好ましく、かつ保持時間も短いこと
が好ましいため、高周波誘導加熱が最適である。即ち、
高周波誘導加熱コイルを移動させながら、加熱ゾーンを
形成させ、管内には、円周方向に均一に高圧冷却水を噴
出するノズルを挿入し、このノズルを加熱コイルと等速
でかつ一定の距離を保ちつつ移動させる方法により、最
適の冷却条件が得られ目的とする組織が得られる。な
お、上記とは逆に、高周波誘導加熱コイルおよびノズル
を固定し、鋼管を移動させるようにしてもよい。
【0040】冷却は、鋼管の内面に高圧水をノズルより
吹きつけることによって行なうが、冷却速度は内面から
肉厚方向に1mm入った位置において30〜50℃/秒
の範囲とする必要がある。冷却速度が30℃/秒以下の
場合は十分な硬度が得られず、耐磨耗性が確保されな
い。一方、冷却速度が60℃/秒を超えると焼きが入り
過ぎて、管内面に焼き割れが発生し易くなる。また肉厚
方向に深く焼きが入るために、溶接時に割れが発生しや
すくなり、且つ、加工が困難になる。
【0041】上述したように、上記成分組成を有する鋼
を溶製し、その組織を制御し、さらに冷却条件を制御す
ることにより、目的とする焼入れ後の組織が得られる。
本発明において、鋼管の内表面から0.5mmの位置の
硬度は、HV 400以上であることが必要である。これ
は、炭素鋼の3倍の耐磨耗性(磨耗試験における磨耗量
が1/3以下)を得るために必要とされる硬度である。
【0042】また、鋼管としての健全性を確保するため
に、鋼管の内表面から2.5mmの位置の硬度はHV
50以下であることが必要である。上記位置の硬度がH
V 250超の場合には、焼きが入りすぎた状態になり割
れが発生する。本発明においては、鋼管の肉厚を8mm
以上に限定しているが、その理由は、肉厚が8mm未満
の場合には、焼きが入った部分の割合が大きくなりすぎ
て、割れが発生するためである。
【0043】本発明の鋼管は、上述したように、マルテ
ンサイト相を含むものであり、かつそのマルテンサイト
相の割合が、鋼管の内表面近くで高く、肉厚の内部に行
くに従って低くなるという特徴を有している。ただし、
最も内面に近い部分は、上記マルテンサイト相の量と肉
厚方向の位置の関係から外れることもある。これは、表
面近くの部分は熱処理時等に脱炭反応により、C量の減
少が生ずることによる。なお、表面に発生した脱炭層は
耐磨耗性は低いが、鋼の割れを防止する作用を有する。
電縫溶接部の硬度と母材部の硬度の間には大きな差はな
い。
【0044】
【実施例】次に、この発明を実施例により、比較例と対
比しながら、更に説明する。表1に示した、この発明の
範囲内の化学成分組成を有する鋼を転炉によって溶製
し、連続鋳造によりスラブとなし、前記スラブを、所定
温度に加熱した上熱間圧延して熱延鋼帯とし、水冷を行
なうことなく巻取った。
【0045】次いで、得られた熱延鋼帯を多段の成形ロ
ールで連続的にオープンパイプに成形し、次いで、その
両エッジ部を電気的に加熱し電縫溶接して電縫溶接鋼管
となし、電縫溶接後、溶接部の割れ発生を防止するため
に熱処理を施して、本発明鋼管の供試体(以下、本発明
供試体という)No. 1〜7を調製した。なお、C量が高
い鋼を用いており、溶接時に割れが発生しやすいため、
溶接部(いわゆるVスロート)に冷却水がかからないよ
うに工夫をした。表2にその製造条件を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】溶接は、高周波誘導溶接、電気抵抗溶接の
いずれでも可能であるが、本実施例では電気抵抗溶接法
によった。溶接後における溶接部の割れの発生を防止す
るために、550〜650℃で溶接後、溶接部の近傍を
焼鈍した。なお溶接部の焼鈍後は管を水冷してもよい。
【0049】冷却後、超音波等により検査を行い、無欠
陥であることを確認した後に高周波加熱により所定の温
度まで昇温させ、内面より水冷した。加熱は、コイルを
移動させながら、加熱ゾーンを形成させ、管の内表面に
対して、円周方向に均一に高圧冷却水を噴出するノズル
を加熱コイルと等速でかつ一定の距離を保ちつつ移動さ
せることにより行った。鋼管のサイズは、No. 1〜No.
5はいずれも外径609.6φ、肉厚11.1mmであ
り、No. 6は外径609.6φ、肉厚8.7mmであ
り、No. 7は外径609.6φ、肉厚12.7mmであ
る。
【0050】上記本発明供試体No. 1〜7について、そ
のオーステナイト粒度、マルテンサイト量、硬度(H
v)、耐磨耗性、焼き割れ状態を調べ、表2に合わせて
示した。表1、表2から明らかなように、いずれの供試
体も炭素鋼管の3倍以上の耐磨耗性を有しており、ま
た、保管時や溶接時に割れの発生は認められなかった。
【0051】表3に、化学成分組成、オーステナイト粒
度および肉厚の少なくとも1つが本発明の範囲外である
比較用鋼管の供試体(以下、比較用供試体という)No.
11〜20を示し、その各々について、その硬度(H
v)、耐磨耗性、焼き割れ状態を調べた結果を示した。
鋼管のサイズは、比較用供試体No. 11は外径609.
6φ、肉厚7.9mmであり、他はいずれも外径60
9.6φ、肉厚11.1mmである。
【0052】
【表3】
【0053】表3から明らかなように、比較用供試体N
o. 11は鋼管の肉厚が本発明の範囲外であり、焼き割
れが発生した。比較用供試体No. 12は加熱温度が高
く、オーステナイト結晶粒度が本発明の範囲外で、内表
面より2.5mmの位置のマルテンサイト量も好ましい
範囲を外れており、同様に焼き割れが発生した。
【0054】比較用供試体No. 14はC量が本発明の範
囲を外れて多く、内表面より2.5mmの位置のマルテ
ンサイト量も好ましい範囲を外れており、同様に焼き割
れが発生した。比較用供試体No. 15はMn量が本発明
の範囲を外れて多く、内表面より2.5mmの位置のマ
ルテンサイト量も好ましい範囲を外れており、同様に焼
き割れが発生した。比較用供試体No. 17はP量が本発
明の範囲を外れて多く、内表面より2.5mmの位置の
マルテンサイト量も好ましい範囲を外れており、同様に
焼き割れが発生した。
【0055】比較用供試体No. 19はCu、Ni、C
r、Mo量が本発明の範囲を外れて多く、内表面より
2.5mmの位置のマルテンサイト量も好ましい範囲を
外れており、同様に焼き割れが発生した。そして、比較
用供試体No. 20もCu、Ni、Cr、Mo量が本発明
の範囲を外れて多く、内表面より2.5mmの位置のマ
ルテンサイト量も好ましい範囲を外れており、同様に焼
き割れが発生した。
【0056】比較用供試体No. 13はC量が本発明の範
囲を外れて少なく、内表面より0.5mmの位置のマル
テンサイト量も好ましい範囲を外れており、耐磨耗性が
十分でなかった。比較用供試体No. 16もMn量が本発
明の範囲を外れて少なく、内表面より0.5mmの位置
のマルテンサイト量も好ましい範囲を外れており、耐磨
耗性が十分でなかった。比較用供試体No. 18はS量が
本発明の範囲を外れて多く、熱間圧延時に割れの発生が
著しく鋼管への製造をあきらめた。
【0057】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
土砂、鉱石、石炭等のスラリー、ゴミ等の固体のパイプ
輸送、固体と液体の混合物のパイプ輸送用の鋼管として
好適な、鋼管としての機械的特性を保持しつつ、極めて
優れた耐磨耗性を有する電縫鋼管を、通常の製造方法と
同様の方法によって、経済的且つ能率的に得ることがで
きる、工業上有用な効果がもたらされる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−188647(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C :0.40〜0.50wt.%、 Si:0.15〜0.30wt.%、 Mn:0.75〜1.20wt.%、 S :0.005wt.%以下、 P :0.015wt.%以下を含み、 残り:Feおよび不可避不純物からなり、肉厚が8mm
    以上であって、オーステナイト結晶粒度番号が5.0以
    上であることを特徴とする耐磨耗性の優れた高炭素電縫
    鋼管。
  2. 【請求項2】 C :0.40〜0.50wt.%、 Si:0.15〜0.30wt.%、 Mn:0.75〜1.20wt.%、 S :0.005wt.%以下、 P :0.015wt.%以下を含み、 Cu:0.10wt.%以下、 Ni:0.10wt.%以下、 Cr:0.10wt.%以下、および Mo:0.10wt.%以下の1種または2種以上を更
    に含み、 残り:Feおよび不可避不純物からなり、肉厚が8mm
    以上であって、オーステナイト結晶粒度番号が5.0以
    上であることを特徴とする耐磨耗性の優れた高炭素電縫
    鋼管。
  3. 【請求項3】鋼管の内表面から0.5mmの位置におけ
    る焼入れままのマルテンサイト量が60体積%以上であ
    り、かつ前記鋼管の内表面から2.5mmの位置におけ
    る焼入れままのマルテンサイト量が35体積%以下であ
    る請求項1または2に記載の耐磨耗性の優れた高炭素電
    縫鋼管。
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