JP3249385B2 - ポリイミドチューブの製造方法 - Google Patents

ポリイミドチューブの製造方法

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祐司 鈴木
修二 今
俊光 岩田
淳一 西岡
公樹 小林
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子複写機などの
熱定着部での使用に適したポリイミド樹脂チューブの製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子写真方式による普通紙複
写機、いわゆる電子複写機としては、光により電荷を発
生する感光体を利用して静電潜像を形成し、その静電潜
像に着色荷電粉体であるトナーを付着させて現像すなわ
ち可視像化し、これを熱により記録紙上に定着させる方
式のものが知られている。定着にあたっては、内部にヒ
ータを備えた熱定着ローラを用いる方式が一般的であ
る。これは、熱定着ローラに圧接して加圧ローラを設
け、この2つのローラ間に、トナー像が形成された記録
紙を順次送りこむことによってトナーの加熱溶融を行
い、トナー像を記録紙上に定着させるという方法であ
る。
【0003】ところで、近年の複写機のめざましい普及
に伴い、機器の簡易化・小型化、そして高速化・省エネ
ルギー化の要求がさらに高まっている。そのような要求
に応えるべく、熱定着ローラを使用しない熱定着方式が
開発されている。そのような方式の一つとして、熱定着
ローラの代わりに、ポリイミドあるいはポリイミド系樹
脂フィルムからなるシームレス管状物、すなわちポリイ
ミドチューブを使用するようにした、フィルム定着方式
とよばれるものがある。
【0004】この方式による定着装置は、薄膜ポリイミ
ドフィルムからなるチューブの内側にヒータと駆動ロー
ルとを備え、ヒータに圧接した部分の外側に加圧ロール
を備えた構造を有しており、さらにポリイミドチューブ
の内側には、フィルムのエンドレス走行を安定させるた
めのテンションローラや、ヒータのホルダーなどが必要
に応じて設けられる。定着にあたっては、トナー像を形
成した記録紙をポリイミドチューブと加圧ロールとの間
に供給しつつ、ポリイミドチューブ内側のヒータからの
加熱により、順次トナー像を定着させる機構となってい
る。
【0005】この定着装置は、薄いポリイミドフィルム
の内側に設置されたヒータが、外表面上を通過する記録
紙上のトナーを加熱し溶融させることによって熱定着を
行なうため、熱定着ローラのように予め定着ローラを予
備加熱する時間を必要とせず、電源スイッチを入れると
すぐに熱定着を開始できるという特長を有している。ま
た、熱容量の大きいローラを加熱する必要がないことか
ら、ヒータの電気容量も小さくて済み消費電力も少ない
という利点もある。
【0006】なお、使用されるポリイミドチューブとし
ては、その表面を、トナーとの離型性にすぐれたフッ素
樹脂により被覆したものが一般的である。通常、このよ
うなフッ素樹脂被覆ポリイミドチューブの場合、要求さ
れる熱伝導性や機械的強度を満たすため、ポリイミド層
の厚さは30〜100μm程度、フッ素樹脂層の厚さは
5〜30μm程度とされている。
【0007】このようなポリイミドチューブにおいて、
厚みにバラツキがあるとトナーの溶融が均一にできなく
なり、オフセット現象が発生する。また、チューブの周
長差、すなわち管状物の長さ方向における内径のバラツ
キは、薄膜チューブを2軸又は3軸間で回転させる場合
に、チューブの長さ方向への蛇行を発生させることにな
る。したがって、ポリイミドチューブの熱定着用シーム
レスベルトとしての使途に対しては、精度の高い円筒度
が要求される。また、駆動プーリーからの駆動力をチュ
ーブにスムーズに伝達するためには、チューブの内面の
粗さも用途に応じて一定の粗度が必要である。
【0008】そこで、熱定着フィルムとしての使用に適
して厚みの一様なポリイミドシームレスチューブを得る
ため、これまでにも様々な方法が提案されている。な
お、ポリイミドチューブの製造に際しては、熱可塑性樹
脂で作るチューブのように押出成形やインフレーション
または真空成形ができないという問題がある。そのた
め、たとえば特開平3−180309号公報や特開平3
−261518号公報に開示されているように、芯体と
なる金型の外面にポリアミド酸溶液のようなポリイミド
前駆体溶液を均一な厚さで付着させ、加熱により乾燥お
よびイミド化した後、チューブ状物を芯体から分離する
という方法が、その代表的な製造方法として開発されて
いる。
【0009】しかしながら、ポリイミド樹脂は接着剤と
して使用される樹脂であり、ポリアミド酸溶液を金型塗
布し加熱によりイミド転化すると、ポリイミドチューブ
は収縮して金型に密着または接着してしまい、その緊縛
力から、芯体とポリイミドチューブを取り外すことは一
層困難になる。
【0010】そこで、このような金型からの離型を容易
にするため、さらに様々な方法が提案されている。たと
えば、特開平3−110137号公報に開示されている
ように、ポリイミド前駆体溶液を芯体に塗布した後、溶
剤が1〜30%程度残存した時点で芯体から離型し、次
いでそのチューブの内径よりも小径の芯体に再挿入し、
その後焼成してイミド転化すなわちイミド閉環させ、芯
体からチューブを離型するという2種類の大きさの芯体
を使用する方法が提案されている。あるいは、特開平6
−143512号公報、特開平6−344360号公
報、あるいは特開平6−298952号公報などに開示
されているように、芯体に小孔を設けておき、芯体にポ
リイミド前駆体溶液を塗布後、芯体の内側から小孔を通
して空気を圧送し、芯体からチューブを離型するという
方法も提案されている。
【0011】さらには、芯体とチューブをスムーズに分
離するために、芯体の表面をフッ素樹脂などの離型性樹
脂で被覆したり離型剤を塗布するなどの手段により、表
面の接着エネルギーを下げるようにした方法も考えられ
ている。たとえば、特開平6−23770号公報には、
芯体表面にシリコーンオイルを塗布する方法が開示され
ている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、芯体表
面に離型剤を塗布するようにした場合には、離型剤の塗
りムラがあると、形成されたポリイミドチューブが芯体
表面に部分的に密着して、離型が困難になっていた。ま
た、芯体表面を離型性樹脂で被覆した場合には、形成さ
れたポリイミドチューブ表面にフッ素樹脂を塗布し焼成
する工程で、芯体表面に被覆したフッ素樹脂も溶融して
芯体に焼き付き、さらに離型し難くなるという不都合が
生じていた。離型が容易でない場合にチューブを芯体か
ら分離しようとすると、無理な力がチューブにかかって
寸法的にも不安定になり、さらには傷やシワなどが発生
するため、製品の歩留まりが非常に悪化する。
【0013】本発明は、このような従来の事情に対処し
て成されたものであり、定着フィルムとしての使用に適
したポリイミドチューブの製造方法、さらに詳しくは、
芯体とチューブの分離が容易で高品質のフッ素樹脂被覆
ポリイミドチューブが簡便に得られるポリイミドチュー
ブの製造方法を提供することを、その目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明において、芯体に
離型性部材として被覆するフッ素樹脂と、ポリイミドチ
ューブに被覆するフッ素樹脂とを適切に選択することに
よって、上記目的が達成し得ることが見出だされた。
【0015】すなわち、本発明のポリイミドチューブの
製造方法は、融点m1 のフッ素樹脂から成る被覆層を有
する金属製芯体の表面に、ポリイミド前駆体溶液を実質
的に均一な厚さで付着させ、次いで加熱によりイミド転
化反応を行わせてチューブ状物を形成し、形成されたこ
のチューブ状物の表面に、融点m2 (ただしm1
2 )のフッ素樹脂を被覆し温度T(ただしm1 >T>
2 )で焼成して成るフッ素樹脂層を設け、しかるのち
前記金属製芯体から分離するようにしたことを特徴とし
ている。
【0016】本発明において、予め芯体に被覆しておく
フッ素樹脂F1 として、ポリイミドチューブに被覆する
フッ素樹脂F2 の融点m2 よりも高い融点m1 をもつも
のを選択し、m2 よりも高くm1 より低い温度でフッ素
樹脂F2 を焼成することによって、芯体に被覆されたフ
ッ素樹脂F1 がフッ素樹脂F2 の焼成温度では溶融しな
いようにしている。
【0017】本発明において、フッ素樹脂F1 およびフ
ッ素樹脂F2 としては、それらの融点m1 およびm
2 が、m1 >m2 という関係にありm1 とm2 の間にフ
ッ素樹脂F2 の焼成温度を設定できれば、とくにその種
類を限定されるものではない。たとえば、フッ素樹脂F
1 として融点327℃のポリテトラフロオロエチレン樹
脂(PTFE)、フッ素樹脂F2 として融点307℃の
パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)の組み合わせ、
あるいは、フッ素樹脂F1 としてPFA、フッ素樹脂F
2 として融点270℃のFEPなどの組み合わせが好適
である。選択したフッ素樹脂F1 とフッ素樹脂F2 の種
類に合わせて、焼成温度Tはm1 >T>m2の範囲で適
宜設定することができる。
【0018】本発明において使用可能なポリイミド前駆
体としてはとくに制限はないが、たとえば芳香族ジアミ
ンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるも
のなどがあげられ、芳香族ジアミンとしては、たとえば
3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノビフェニル、
3,3´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジ
アミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンな
ど、芳香族テトラカルボン酸としては、たとえば3,3
´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3´,
4,4´−テトラカルボン酸二無水物などがあげられ
る。これらの芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸
との反応は、たとえばジメチルアセトアミド、ジメチル
ホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機
極性溶剤中で行なわれる。
【0019】本発明において、所望の厚さを得るため
に、ポリイミド前駆体溶液は比較的高い粘度で使用され
ることになる。そこで、芯体の外周全体に均一な厚さで
付着させるにあたってどのような方法を用いてもよい
が、たとえば浸漬や塗布などの一般的な塗装方法により
芯体の外周上部に所定量付着させた後、その長手方向を
鉛直に保持した金属芯体の外側に、所定のクリアランス
を有する『通しダイス』状の外金型を嵌め、その自重に
よって外金型を降下させる、いわゆるダイスコート法な
どはとくに好適である。
【0020】本発明において、金属製芯体にフッ素樹脂
1 からなる被覆層を形成するにあたっては、どのよう
な方法を用いてもよい。またフッ素樹脂F2 をチューブ
状物表面に被覆するにあたっても、焼成温度の他にとく
に制限はなく、たとえばスプレー塗布など、フッ素樹脂
の種類に合わせた一般的な被覆方法を用いることができ
る。
【0021】本発明は、厚さ10μm〜200μm、内
径10mm〜100mmのポリイミドチューブの製造に
適用可能であり、所望の均一な厚さと内径のポリイミド
チューブを得るためには、ポリイミド前駆体溶液の濃度
や粘度を調整することが望ましい。本発明においてポリ
イミド前駆体溶液の粘度は、50ポアズ〜10000ポ
アズの範囲内であることが望ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細を実施例にし
たがって説明する。
【0023】実施例1 ポリイミドチューブの製造に先立ち、本発明に係わる金
属製芯体を作製した。まず、外径24.0mm、長さ3
50mmのアルミニウム製芯体の表面に、PTFE(ダ
イキン社製、商品名D−1、融点m1 =327℃)を常
法にしたがって被覆し、厚さ20μmのフッ素樹脂F1
層を形成した。
【0024】次いで、ポリアミド酸として、4,4´−
ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物
の等モルを、フラスコ内で溶剤ジメチルアセトアミド/
ナフサ(9/1)中に溶解させて重合し、樹脂分20重
量%、粘度1500ポアズのポリイミド前駆体溶液を調
製し、これを金属製芯体の外周表面上部に塗布した。
【0025】そして、この芯体の上部に、内径24.1
mmの通しダイス状の外金型を嵌めて、外金型の自重と
ポリイミド前駆体溶液の粘性によって自然降下させ、芯
体外表面にポリイミド前駆体溶液の薄膜を形成した。
【0026】その後この芯体を、150℃で30分加熱
焼成した後、温度を250℃に上げてさらに30分加熱
焼成した。芯体の外周に形成されたチューブ状物の表面
に、プライマを介してフッ素樹脂F2 としてPFA(デ
ュポン社製、商品名X−500−CL、融点m2 =30
7℃)をスプレー塗装した。そしてこの芯体を、320
℃の炉中に30分間保持して加熱焼成させた後、芯体か
ら複層のポリイミドチューブを取り外したところ、容易
に取り外すことができた。
【0027】得られた複層ポリイミドチューブは、ポリ
イミド層厚50μm、PFA層厚10μmであり、定着
フィルムとして好適に使用可能であった。
【0028】実施例2 芯体に被覆するフッ素樹脂F1 としてPFA(デュポン
社製、商品名X−500−CL、融点m1 =307
℃)、チューブ状物の表面に被覆するフッ素樹脂F2
してFEP(ダイキン社製、商品名ND−1、融点m2
=270℃)を使用し、フッ素樹脂F2 の焼成条件を2
95℃で30分とした他は、実施例1と同様にして複層
のポリイミドチューブを作製した。
【0029】この複層のポリイミドチューブは、芯体か
ら容易に取り外すことができ、定着フィルムとして好適
に使用可能であった。
【0030】比較例 芯体に被覆するフッ素樹脂F1 としてPFA(デュポン
社製、商品名X−500−CL、融点m1 =307
℃)、チューブ状物の表面に被覆するフッ素樹脂F2
してPTFE(ダイキン社製、商品名D−1、融点m1
=327℃)を使用し、フッ素樹脂F2 の焼成条件を3
50℃で30分とした他は、実施例1と同様にして複層
のポリイミドチューブを作製した。
【0031】芯体に被覆したPFAが溶融してしまい、
この複層のポリイミドチューブは芯体から取り外すこと
ができなかった。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
芯体とチューブの分離が容易で、高品質のフッ素樹脂被
覆ポリイミドチューブが簡便に得られるポリイミドチュ
ーブの製造方法が提供される。
【0033】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西岡 淳一 神奈川県川崎市川崎区小田栄2丁目1番 1号 昭和電線電纜株式会社内 (72)発明者 小林 公樹 神奈川県川崎市川崎区小田栄2丁目1番 1号 昭和電線電纜株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−186162(JP,A) 特開 昭61−35241(JP,A) 特開 平3−180309(JP,A) 特開 平5−305681(JP,A) 特開 平8−190294(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 41/10 B29C 41/46 G03G 15/20 103 B29D 29/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 融点m1 のフッ素樹脂から成る被覆層を
    有する金属製芯体の表面に、ポリイミド前駆体溶液を実
    質的に均一な厚さで付着させ、次いで加熱によりイミド
    転化反応を行わせてチューブ状物を形成し、形成された
    このチューブ状物の表面に、融点m2 (ただしm1 >m
    2 )のフッ素樹脂を被覆し温度T(ただしm1 >T>m
    2 )で焼成して成るフッ素樹脂層を設け、しかるのち前
    記金属製芯体から分離するようにしたことを特徴とする
    ポリイミドチューブの製造方法。
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