JP3243330U - 既設建築物の浸水防止構造 - Google Patents

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益男 勘田
征喜 山岸
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Abstract

【課題】住宅等の既設建築物に後付け可能な床上浸水に特化した既設建築物の浸水防止構造を提供する。【解決手段】本考案の既設建築物の浸水防止構造1は、既設建築物Aの外壁A2を被覆する外壁防水部10と、既設建築物Aの開口部A3を被覆する開口防水部20と、を備え、外壁防水部10は、外壁A1及び/又は基礎A2に設置した複数の連結部材12と、連結部材12に固定した複数の複合防水壁11と、を有し、複合防水壁11が、矩形のパネル11aと、隣り合う2枚のパネル11aの間及びパネル11aとパネル11a外側の敷地の間を密閉する防水面材11bと、からなり、外壁防水部10及び開口防水部20の上部が、既設建築物Aにおける1階の床面より高く窓下端より低いことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本考案は、既設建築物の浸水防止構造に関し、特に住宅等の既設建築物に後付け可能な、床上浸水に特化した既設建築物の浸水防止構造に関する。
国土が急峻で平坦な土地が少ない地政学上の制限から、日本の都市の多くは海や河川の水位より低い土地に形成されており、豪雨によって河川が氾濫したり堤防が決壊すると、生命や財産に対する甚大な被害が生じうる。
特に近年は、気候変動による豪雨の頻発や、都市化に伴う表流水の河川への短時間流入等によって、家屋等への床上浸水のリスクが著しく高まっている。
非特許文献1には、床上浸水を防止するための構造として建築物を嵩上げする方法、基礎をピロティ構造とする方法、及び建築物を恒久的な防水壁で包囲する方法、が開示されている。
特許文献1には、建築物の床下に、発泡樹脂や木材等からなる水浮上体を設置する構造が開示されている。この構造によれば、床下に水が流入すると、水浮上体の浮力によって建築物が水上に浮上し、これによって床上への浸水を免れることができるとしている。
特開2006-219972号公報
"水害対策を考える 4-1-3 浸水の予防・人命を守る家づくり",[online],国土交通省,[令和5年6月14日検索],インターネット<URL:https://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/bousai/saigai/kiroku/suigai/suigai_4-1-3.html>
従来技術には次のような欠点があった。
<1>建築物の嵩上やピロティ構造は、新築時の設計に織り込むことはできるが既設の建築物に後付けすることができない。また、建築物の設計に組む込む構造であるため、導入コストが嵩む。
<2>恒久的な防水壁は、敷地を広く占有すると共に、日常的な通行や日照への障害となり建築物の居住性を損なう。
<3>床下に水浮上体を設ける構造は、浮力によって躯体に負担がかかり建物を損傷するおそれが大きい。また、浮上の前後で設置場所が変わってしまうため現実性が薄い。
本考案の既設建築物の浸水防止構造は、既設建築物の外壁を被覆する外壁防水部と、既設建築物の開口部を被覆する開口防水部と、を備え、外壁防水部は、外壁及び/又は基礎に設置した複数の連結部材と、連結部材に固定した複数の複合防水壁と、を有し、複合防水壁は、矩形のパネルと、隣り合う2枚のパネルの間及びパネルとパネル外側の敷地の間を密閉する防水面材と、からなり、外壁防水部及び開口防水部の上部が、既設建築物における1階の床面より高く窓下端より低いことを特徴とする。
本考案の既設建築物の浸水防止構造は、開口防水部が、開口部の両側に立設した2本の固定支柱と、2本の固定支柱の間を閉塞した遮蔽板と、を備えていてもよい。
本考案の既設建築物の浸水防止構造は、固定支柱が、支柱本体と、支柱本体の高さ方向に延在する固定溝を備え、2本の固定支柱における対向する2本の固定溝で遮蔽板を幅方向に挟持していてもよい。
本考案の既設建築物の浸水防止構造は、開口防水部が、遮蔽板の下縁に沿って敷地に設けた止水溝を備え、止水溝が、敷地に埋設した断面略コ字状又は断面略C字状の長尺の溝金具と、溝金具の全長にわたって溝金具内に設置した止水材と、を有し、遮蔽板の自重によって、遮蔽板の下縁を止水材に密着させてもよい。
本考案の既設建築物の浸水防止構造は、遮蔽板が、高さ方向に並列した複数の分割板の組合せからなっていてもよい。
本考案の既設建築物の浸水防止構造は、開口防水部が、2本の固定支柱の間に立設した補助支柱を備え、補助支柱によって遮蔽板を既設建築物側から支持していてもよい。
本考案の既設建築物の浸水防止構造は、既設建築物の換気口を被覆する換気口防水部を更に備え、換気口防水部が、換気口を被覆するように付設したフレームと、フレームの両面を貫通する通風孔と、フレームに磁着して通風孔を被覆可能な磁着シートと、を有していてもよい。
本考案の既設建築物の浸水防止構造は、パネル及び/又は遮蔽板が、繊維強化プラスチック(FRP)からなっていてもよい。
本考案の既設建築物の浸水防止構造は以上の構成を備えるため、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>比較的低コストで既設の建築物に後付けで設置できる。
<2>平時は開放し、洪水時に開口部や換気口を塞ぐ構造であるため、通行や日照の妨げにならず、建築物の居住性を損なわない。
<3>1階の窓下端までの水位に特化した構造であるため、浮力による躯体への損傷を受けにくく、導入コストが比較的安価である。
本考案の既設建築物の浸水防止構造の説明図 外壁防水部の説明図 開口防水部の説明図 開口防水部の説明図 止水溝の説明図 換気口防水部の説明図
以下、図面を参照しながら本考案の既設建築物の浸水防止構造について詳細に説明する。なお、本発明において「外壁」「外面」「外側」等における「外」とは、既設建築物から水平方向に離れる方向を意味し、「内面」「内側」等における「内」とは、「外」の反対方向を意味する。
[浸水防止構造]
<1>全体の構成(図1)
既設建築物の浸水防止構造1は、住宅等の既設建築物Aに後付けで付設可能な浸水防止用の構造である。
既設建築物の浸水防止構造1は、既設建築物Aの外壁A1を被覆する外壁防水部10と、開口部A3を被覆する開口防水部20と、を少なくとも備える。本例では更に換気口A4を被覆する換気口防水部30を備える。
既設建築物の浸水防止構造1は、主に既設建築物Aの床上浸水の対策として既設建築物Aの外周を防水壁で包囲して水の浸入を防ぐ構造である。
本考案の対象とする限界水位は、1階の窓下端まで(1階床面から1.0m程度、又は屋外地盤面から1.5m程度)である。これは、洪水による水位が窓下端を超えると、既設建築物Aに作用する浮力が大きくなり、既設建築物Aが浮き上がって構造が損壊するおそれがあるためである。
以上より、外壁防水部10及び開口防水部20の上部は、既設建築物Aにおける1階の床面より高く窓の下端より低く設定する。
<1.1>(図1)
既設建築物Aは、敷地上に建築された建築物である。
本発明の既設建築物の浸水防止構造は、新築の建築物でなく既設の建築物に対して設置できる点に1つの特徴を有する。
本例では既設建築物Aとして、コンクリート製の基礎A2の上に土台、柱、梁、及び桁等を組み上げてなる木造軸組構造の住宅を採用する。
既設建築物Aは、基礎A2に立ち上げた外壁A1と、外壁A1の壁面から内側に後退した玄関ポーチやガレージなどの開口部A3と、基礎A2の外面から床下空間に連通する換気口A4と、を備える。本例では、敷地は土間コンクリートである。
<2>外壁防水部(図2)
外壁防水部10は、既設建築物Aの外壁A1を被覆する構造である。
外壁防水部10は、外壁A1及び/又は基礎A2に設置した複数の連結部材12と、連結部材12に固定した複数の複合防水壁11と、を備える。
本例では連結部材12として長尺のチャンネル材を採用し、外壁A1上に水平方向に沿って配置した連結部材12を、高さ方向に複数列並列する。各連結部材12の一側を外壁A1にビス留めし、他側を複合防水壁11の内面にビス留めすることで、連結部材12を介して複合防水壁11を外壁A1に固定する。
ただし、連結部材12は長尺のチャンネル材に限らず、例えば複数の固定金具であってもよい。また、複合防水壁11を、連結部材12を介さず外壁A1に直接固定してもよい。
<2.1>複合防水壁(図2)
複合防水壁11は、外壁A1を被覆して遮水する壁体である。
複合防水壁11は、矩形のパネル11aと、パネル11aの隙間を密閉する防水面材(防水シート11b)と、を備える。
複数のパネル11aを外壁A1に沿って水平方向に並列し、隣り合う2枚のパネル11aの間と、パネル11aとパネル11a前面の敷地(コンクリート面)の間に、外側から防水シート11bを接着して密閉する。また、既設建築物Aの角部では、パネル11aの側面を支柱に突き当て、パネル11aと支柱の間に防水シート11bを接着して密閉する。
本例ではパネル11aとして、矩形の繊維強化プラスチック(FRP)パネルを採用する。FRPパネルは耐久性と耐候性に優れるため、洪水時の高水圧にも破損しにくく、また紫外線や風雨に晒されても劣化しにくい。
本例では防水シート11bとして、ポリ塩化ビニール(PVC)製の帯状のシートを採用する。
ただし複合防水壁11の構成は上記に限らず、例えばパネル11aは金属板や木板であってもよい。また防水シート11bは帯状ではなくパネル11aの全面を被覆するシートであってもよい。
<3>開口防水部(図3)
開口防水部20は、既設建築物Aの開口部A3を被覆する構造である。
開口防水部20は、開口部A3の両側に立設した2本の固定支柱21と、2本の固定支柱21の間を閉塞する遮蔽板22と、を少なくとも備える。本例では更に、遮蔽板22の下縁に沿って敷地に設けた止水溝23と、2本の固定支柱21の間に立設した補助支柱24と、を備える。
固定支柱21は、開口部A3の両側において既設建築物Aの外壁A1に固定する。
本例では固定支柱21が、四角柱形状の支柱本体21aと、支柱本体21aの高さ方向に沿って延在する固定溝21bと、を備え、2本の固定支柱21を、固定溝21bが対向する向きに設置する。固定溝21bの内側には止水用にゴムなどの止水材を貼付する。
本例では遮蔽板22として矩形のFRPパネルを採用し、高さ方向に並列した複数の分割板22aの組合せとする。上下の分割板22aの間にはゴムなどの止水材を介挿して、分割板22a間の水密性を確保する。
<3.1>止水溝(図4)
止水溝23は、遮蔽板22の下縁と敷地の隙間からの浸水を防ぐ溝である。
止水溝23は、敷地に埋設した長尺の溝金具23aと、溝金具23a内に全長にわたって設置した止水材23bと、からなる。
本例では溝金具23aとして、断面略コ字状のレール材を採用する。ただし溝金具23aはこれに限らず、例えば断面略C字状であってもよい。
本例では止水材23bとして、溝金具23aの溝内に配置した長尺の角棒ゴムを採用する。
<3.2>補助支柱(図5)
補助支柱24は、遮蔽板22を内側から支持する支柱である。
補助支柱24は、2本の固定支柱21の中間点において既設建築物A側にセットバックした位置に設ける。
補助支柱24は、補助支柱本体24aと、補助支柱本体24aを差し込み可能な鞘管24bと、からなる。本例では補助支柱本体24aとして、四角柱形状の鋼管を採用する。
鞘管24bは、2本の固定支柱21の間の敷地に鉛直方向に埋設する。
補助支柱24によって、開口部A3がガレージである場合等、固定支柱21間の間隔が広い場合、遮蔽板22の内側を補助支柱で支持することで、遮蔽板22が水圧によって内側に撓んで破損したり固定溝21bから離脱するのを防ぐことができる。
なお補助支柱24は開口防水部20の必須の構成要素ではない。
<3.3>開口防水部の閉鎖
開口防水部20は、平時は開放して通常の用途に使用し、台風や豪雨時など洪水が予想される際に封鎖する。詳細には、例えば以下の手順で閉鎖する。
2本の固定支柱21の固定溝21bの間に、上方から遮蔽板22を落とし込む。これによって、遮蔽板22を2本の固定支柱21の間に挟持する。
この際、遮蔽板22が溝金具23a内の止水材23b上に載ることで、遮蔽板22の自重によって止水材23bが弾性変形して遮蔽板22の下縁に密着する。これによって遮蔽板22の下方からの浸水を防ぐことができる。
遮蔽板22の設置後、鞘管24b内に補助支柱本体24aを差し込んで遮蔽板22を内面から支持する。
<4>換気口防水部(図6)
換気口防水部30は、既設建築物Aの換気口A4を被覆する構造である。
既設建築物Aの基礎A2には、床下に連通する換気口A4が設けられている。然るに、本考案の既設建築物の浸水防止構造1は外壁A1と基礎A2を外壁防水部10で被覆する構造であるため、複合防水壁11によって換気口A4による床下への通気が阻害される。
そこで、換気口A4を開閉自在の換気口防水部30で被覆することで、平時は換気口防水部30を開放して床下の通気を確保し、台風や豪雨時など洪水が予想される際に封鎖して浸水を防ぐことができる。
換気口防水部30は、換気口A4を被覆するように付設したフレーム31と、フレーム31の両面を貫通する通風孔32と、フレーム31に磁着して通風孔32を被覆可能な磁着シート33と、を備える。
詳細には、換気口A4外側の複合防水壁11を切削し、複合防水壁11上に金属製のフレーム31を設置する。フレーム31には通風孔32が設けられているため、通風孔32を通じて床下の換気が可能である。
換気口防水部30を閉鎖する際には、フレーム31上に磁着シート33を貼り付けることで、磁着シート33によって通風孔32を塞いで床下への浸水を防ぐ。
なお、既設建築物Aが固有の換気口A4を備えず、基礎パッキンによる床下換気を行っている場合には、基礎A2を切削して新たに換気口A4を設け、換気口A4上に換気口防水部30を設置する。
<5>その他の床上浸水対策
洪水時には、内外の水位差によって、トイレや浴槽の排水口から廃水の逆流が起こり、室内に浸水するおそれがある。このため、トイレや浴槽の排水口を止水栓や止水パットで閉塞し、上部に水嚢や土嚢を載せて抑える対策が有効である。
また、エアコン室外機などの屋外の電気設備は、高所の基台上に設置することで浸水による損傷を防ぐことができる。
[防水面材がFRP塗装である実施例]
実施例1では防水面材として防水シート11bを採用し、パネル11aの隙間を防水シート11bで密閉したが、これに限らない。
本例では、防水面材としてガラス繊維シートを採用する。
詳細には、隣り合うパネル11aのつなぎ目にガラス繊維シートを接着し、ガラス繊維シートの上に樹脂を塗布して含浸させて、隣り合うパネル11aの間に現場でFRP板を製作する。
本例の場合、複合防水壁10がFRP板の一体構造になるため、水圧に対する高い剛性を発揮することができる。
1 浸水防止構造
10 外壁防水部
11 複合防水壁
11a パネル
11b 防水シート
12 連結部材
20 開口防水部
21 固定支柱
21a 支柱本体
21b 固定溝
22 遮蔽板
22a 分割板
23 止水溝
23a 溝金具
23b 止水材
24 補助支柱
24a 補助支柱本体
24b 鞘管
30 換気口防水部
31 フレーム
32 通風孔
33 磁着シート
A 既設建築物
A1 外壁
A2 基礎
A3 開口部
A4 換気口

Claims (8)

  1. 住宅等の既設建築物に付設可能な既設建築物の浸水防止構造であって、
    前記既設建築物の外壁を被覆する外壁防水部と、
    前記既設建築物の開口部を被覆する開口防水部と、を備え、
    前記外壁防水部は、前記外壁及び/又は基礎に設置した複数の連結部材と、前記連結部材に固定した複数の複合防水壁と、を有し、
    前記複合防水壁は、矩形のパネルと、隣り合う2枚の前記パネルの間及び前記パネルと前記パネル外側の敷地の間を密閉する防水面材と、からなり、
    前記外壁防水部及び前記開口防水部の上部が、前記既設建築物における1階の床面より高く窓下端より低いことを特徴とする、
    既設建築物の浸水防止構造。
  2. 前記開口防水部が、前記開口部の両側に立設した2本の固定支柱と、前記2本の固定支柱の間を閉塞した遮蔽板と、を備えることを特徴とする、
    請求項1に記載の既設建築物の浸水防止構造。
  3. 前記固定支柱が、支柱本体と、前記支柱本体の高さ方向に延在する固定溝を備え、
    前記2本の固定支柱における対向する2本の前記固定溝で前記遮蔽板を幅方向に挟持したことを特徴とする、
    請求項2に記載の既設建築物の浸水防止構造。
  4. 前記開口防水部が、前記遮蔽板の下縁に沿って敷地に設けた止水溝を備え、
    前記止水溝が、前記敷地に埋設した断面略コ字状又は断面略C字状の長尺の溝金具と、前記溝金具の全長にわたって前記溝金具内に設置した止水材と、を有し、
    前記遮蔽板の自重によって、前記遮蔽板の下縁を前記止水材に密着させたことを特徴とする、
    請求項3に記載の既設建築物の浸水防止構造。
  5. 前記遮蔽板が、高さ方向に並列した複数の分割板の組合せからなることを特徴とする、
    請求項2乃至4のいずれか一項に記載の既設建築物の浸水防止構造。
  6. 前記開口防水部が、前記2本の固定支柱の間に立設した補助支柱を備え、
    前記補助支柱によって前記遮蔽板を前記既設建築物側から支持したことを特徴とする、
    請求項2乃至4のいずれか一項に記載の既設建築物の浸水防止構造。
  7. 前記既設建築物の換気口を被覆する換気口防水部を更に備え、
    前記換気口防水部が、換気口を被覆するように付設したフレームと、前記フレームの両面を貫通する通風孔と、前記フレームに磁着して前記通風孔を被覆可能な磁着シートと、を有することを特徴とする、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載の既設建築物の浸水防止構造。
  8. 前記パネル及び/又は前記遮蔽板が、繊維強化プラスチック(FRP)からなることを特徴とする、
    請求項2乃至4のいずれか一項に記載の既設建築物の浸水防止構造。
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