JP3239251B2 - 洗浄液生成装置および洗浄液 - Google Patents

洗浄液生成装置および洗浄液

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は腹腔内等を洗浄する洗浄
液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】盲腸炎、消化器癌、消化器潰瘍等に伴っ
て、または手術による化膿菌の腹腔内感染により腹膜炎
が発生する。例えば、手術後に腹膜炎が発生すると、手
術後の経過に大きく作用し、炎症の結果、回復が遅れる
場合がある。このため、化膿菌の感染により腹膜炎の発
生の惧れがある場合、腹開のときまたは腹開して化膿菌
数を可能な限り減らす目的で、大量の生理食塩水を用
い、胃、腸、脾臓、肝臓などの腹腔内にある臓器を洗浄
する方法がとられる場合がある。洗浄により化膿菌は少
なくなり腹膜炎の発生を抑制するものとされる。この場
合、仮に、洗浄後多少の化膿菌が存在したとしても自助
回復力によって化膿菌は死滅し回復することを期待する
もので積極的に化膿菌を死滅させるものではない。
【0003】前記洗浄に使用する生理食塩水は水道水な
どの市水に所定の食塩を加え、更に煮沸などして化膿菌
を含む菌類、ウイルス等を死滅させ、生体組織細胞の浸
透圧に均衡させるため、例えば、4.5%のブドウ糖等
の糖やグリセリン等の細胞に無害な浸透圧保持剤を加え
前記臓器細胞と同じ浸透圧に等張したものである。従っ
て、胃、腸、脾臓、肝臓等を構成する細胞組織には何ら
影響がない反面、洗浄の際、積極的に化膿菌を死滅させ
る効果はなく、単に腹腔内にある化膿菌を洗浄によって
洗い流す効果を期待するものである。しかも、腹開され
た状態での洗浄は短時間に終わらせる必要があるうえ、
腹開位置によっては回復後の手術個所を小さく見せる必
要から腹開長を短くする傾向にあり、腹腔内の細部を視
診するのは容易でなく、臓器の背後部分の上記洗浄は必
ずしも十分に行い得ないのが実情である。
【0004】他方、患者に多様な種類の抗菌剤が投与さ
れている場合がある。その使用量が増大かつ長期に亘る
場合に、患者ごとに投与された抗菌剤に応じて固有の耐
性菌がつくりだされている可能性があり、これらに対し
ても効果のある殺菌性洗浄液が所望される。
【0005】水道水等の原水に電解質を一定の割合で添
加して密閉された電解槽に導入し、電解槽内のイオン浸
透性隔膜を介して分離した陰陽極間に直流電流を通電し
て、水の電気分解およびイオン浸透作用を行い、陰極側
には陰極水を、陽極側には陽極水を生成し、陰極水は排
水し、陽極水を殺菌性水として使用する酸化電位水生成
装置がある。
【0006】酸化電位水は消毒、殺菌水として効果があ
る。しかも、この酸化電位水には有機殺菌液のような殺
菌性のある薬剤を投入しないため、有害な物質を含ま
ず、生体組織に刺激性や毒性を与えない。また、経時と
共に酸化還元電位(ORP)が低下し酸化電位水として
の消毒、殺菌効果は低下するため残留性がなく信頼ので
きる消毒、殺菌水として重宝されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、酸化
電位水生成装置から得た酸化電位水にブドウ糖等の糖や
グリセリン等の細胞に無害な、しかも、臓器を構成する
細胞と同じ浸透圧にする浸透圧保持剤を加えてなる洗浄
液生成装置を提供しようとするものである。また、洗浄
液生成装置で生成された洗浄液を腹腔内の洗浄液や生理
洗浄液として使用し、腹腔内や人体表皮を洗浄、殺菌す
ることにより腹膜炎の発生予防と早期治療並びに細菌に
よる表皮の感染を阻止することが可能な洗浄液を提供し
ようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的に鑑み本発明
は、電解槽直前に置かれた電解質供給手段からNaC
l、KCl等の電解質を添加して流入し、イオン透過性
隔膜で分割され、陰電極を挿入した陰極室と陽電極を挿
入した陽極室との陰陽電極間に直流電圧を印加し、電解
槽の電解強度を可変する印加電圧可変手段を設け、電解
槽に流入した電解質を添加した原水を電解する装置で生
成した陽極水に浸透圧保持剤を加えた生成水を所望の水
圧、流量で吐水する手段をもって構成することを要旨と
する。
【0009】またこの場合、ORP900mv以上、p
H3.0以下の酸化電位水に前記浸透圧保持剤が添加さ
れて生体臓器と等張に構成してもよい。
【0010】或いは、前記浸透圧保持剤として食塩、糖
およびグリセリンの少なくとも1つを含むようにしても
よい。
【0011】
【作用】洗浄液はウイルスや細菌、真菌等を死滅する効
果があり、また、血液、体液、膿等の水溶解性物質に浸
透・溶解する性質がある酸化電位水に浸透圧保持剤を加
えて臓器と同じ浸透圧にしてあるので臓器に対して悪影
響を及ぼすことがなく、しかも化膿菌を死滅することが
できる。更に、加圧水流を調節する手段によって、自在
に水流および水圧を調整することができるので視診でき
ない患部の着菌の洗浄を確実に行うことができる。
【0012】なお、前記酸化電位水は原水への単位流量
に対する電流量、単位流量に対する電解質の添加量など
によって各種の酸化電位水が得られるが、酸化還元電位
(ORP)が900mv以上で且つpHが3.0以下の
ものを使用すれば殺ウイルス、殺菌効果がある目的とす
る洗浄液が得られる。
【0013】
【実施例】図1は本発明に関わる洗浄液生成装置の説明
図である。図において、電解槽4へ流入する市水の流量
を制御する弁体1等で流量を制御された市水は粒子径で
規定する濾過装置2を通過する。濾過装置2は、例え
ば、中空糸のようなある粒子以上の汚濁物質や細菌等を
阻止するのに適合する部材で構成される。濾過装置2を
経て、電解槽4直前に置かれた電解質供給手段3からN
aCl、KCl等の電解質が所定量添加され電解槽4に
入る。電解槽4はイオン透過性隔膜41で分割され、陰
電極を挿入した陰極室42と陽電極を挿入した陽極室4
3との陰陽電極間に直流電圧を印加するように構成さ
れ、また、図示しない電解槽の電解強度を可変する印加
電圧可変手段を設けられている。電解槽の陽極室43を
出た吐水、つまり、酸化電位水は所定の酸化還元電位
(ORP)、pH等が酸化還元電位計、水素イオン濃度
計等のセンサ手段5で確認され、所定の範囲にあるとき
は逆止弁11を介して混入タンク6に流入する。
【0014】電解槽への供給水量、電解液供給手段3へ
の電解質の供給量、電解槽の陰陽極印加電圧等が適切な
値であるかは陽極室から吐出する酸化電位水を測定する
センサ手段5のORPおよびpHの値から知ることがで
きる。酸化電位水の所定値がORP900mv以上、p
H3.0以下の場合、混入タンク6に給水する。それ以
外の値のものは三方弁12から排水される。また、陰極
室から吐水される陰極水も排水される。好ましい状態で
吐出する酸化電位水は通常、ORP1050程度、pH
2.8以下を示し、消毒、殺菌水として機能する。なお
この際、同時に吐出する陰極水は通常は排出されるが、
pH12以上を確保できるので高pHを要求される各種
用途、例えば、酸の中和剤等として使用することができ
る。
【0015】混入タンク6では別に用意された浸透圧保
持剤が添加される。浸透圧保持剤は所定の食塩と糖等が
単独もしくは混合された状態で添加される。なお、これ
らの薬剤は事前に純水等に混合した混合液として添加す
れば酸化電位水との混合が容易である。混合は公知の手
段によつて行われる。混合した溶液は洗浄液として機能
するもので、加圧手段7、流量制御手段8等で所定の圧
力、量が自在に制御され適宜使用されるものである。
【0016】前記浸透圧保持剤として前記のように食塩
および糖およびグリセリンの少なくとも1つを含むもの
が適宜使用できる。なお、糖およびグリセリンは臓器を
形成する細胞組織と同じ浸透圧にするものであれば他の
薬剤をもって構成してもよい。即ち、人の細胞が必要と
する浸透圧は290mOsm/lであるのでこの値に等
張で無害な薬剤はいずれも使用できる。従って、糖とし
てブドウ糖以外に蔗糖等を使ってもよい。これらは混入
タンク6に固体として投入して混合してもよく、また、
前記のようにあらかじめ溶液の状態で混合してもよい。
ただし、前記浸透圧保持剤混入の際、酸化電位水が稀釈
されない必要がある。いずれの場合でも、混入タンクの
吐水管口部からは上記の浸透圧をもった均一組成の洗浄
液が吐出される。
【0017】腹腔内の洗浄には20〜100lの洗浄液
が使用される。従って、混入タンク6はこれに見合う容
量が望ましい。他方、酸化電位水は生成後、経時と共に
酸化還元電位が低下し、それに伴って、殺菌、消毒効果
が低下する。従って、洗浄液の使用量に合わせ、酸化電
位水生成装置を複数台並列に接続してもよい。
【0018】上記のようにして生成された殺菌性の洗浄
液はウイルス、細菌および真菌に対して細菌抑止および
殺菌効果を持つ。例えば、下表に示す細菌および真菌に
対して効果を持つ。即ち、表記菌を肉汁培養液で培養
し、夫夫の菌液各0.1mlと洗浄液0.9mlを混和
して酸化電位水濃度として90%とし、室温で3分間処
理した後に残存している菌数をコロニー形成により調べ
た。結果は表に示すように、いずれの菌も完全に不活性
化されたことが確認される。
【表1】 酸化電位水の殺菌効果 細菌、真菌名 生菌数/ml 未処理 3分処理 黄色ブドー球菌 108.3 <100 細菌 大腸菌 109.0 <100 枯草菌 107.4 <100 真菌 カンデーダ 107.3 <100
【0019】図1において、10は制御手段であって電
解槽の給水量、電解質供給手段の電解質供給量、電解印
加電圧等をセンサ手段5からのデータに基づきORP、
pHが規格範囲ないに入るように自動的に制御するもの
である。即ち、制御手段の一部を構成するROMに所望
する値を入力しておけば、センサ手段5からのデータに
基づき比較回路が働き所望する範囲に電解槽の給水量、
電解質供給手段の電解質供給量、電解印加電圧等を制御
することができる。
【0020】また、加圧手段7、流量制御手段9も上記
制御手段10の制御と関連させて制御することができ
る。即ち、一旦、混入タンク6に流入した洗浄液は使用
と共に流出水圧が低下する。使用と共に加圧手段7が混
入タンク内部を加圧すれば常に一定の圧力で洗浄液を流
出することができる。また、センサ手段8はORP、p
Hおよび浸透圧を計測する手段で、この手段からの情報
に基づき、混入タンク6内部の洗浄液が前記したOR
P、pHおよび浸透圧を示さないときは、ドレン13を
介して排水することができる。酸化電位水は経時と共に
ORPが低下する。従って、既に行われた洗浄等に使用
した洗浄液が混入タンク6内部に残存している場合、そ
の殺菌能力は低下している惧れがある。これも、前記同
様に制御手段10によって自動的に排除することが可能
である。これらは例示にすぎず、以上説明した実施例以
外にも本発明の枠を逸脱しない範囲内で各種の変形実施
が可能である。
【0021】
【発明の効果】洗浄液は臓器細胞と同じ浸透圧をもって
いるだけではなく、殺菌性をもっているので腹腔内の殺
菌性洗浄に適するばかりでなく、表皮の洗浄にも適する
ので外科手術においても有用である。
【0022】洗浄液には有機殺菌液のような殺菌性のあ
る薬剤を投入しないため、有害な物質を含まず、また、
経時と共に酸化還元電位(ORP)が低下し酸化電位水
としての消毒、殺菌効果は低下するため残留性がなく、
しかも、安価に供給できる。
【0023】酸化電位水生成装置および洗浄液供給部材
はコンパクトに構成することができ、しかも設置後の維
持管理においても、点検修理等が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる洗浄液生成装置の説明図であ
る。
【符号の説明】
1 弁体 2 濾過装置 3 電解質供給手段 4 電解槽 5 センサ手段 6 混入タンク 7 加圧手段 8 流量制御手段 9 センサ手段 10 制御手段 11 逆止弁 12 三方弁 13 ドレン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61P 31/00 A61P 31/00 41/00 41/00 C02F 1/461 C02F 1/46 101Z (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 33/00 A61K 9/08 A61K 47/02 A61K 47/10 A61K 47/26 A61P 31/00 A61P 41/00 C02F 1/461

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電解槽直前に置かれた電解質供給手段か
    NaCl、KCl等の電解質を添加して流入し、イオ
    ン透過性隔膜で分割され、陰電極を挿入した陰極室と陽
    電極を挿入した陽極室との陰陽電極間に直流電圧を印加
    し、電解槽の電解強度を可変する印加電圧可変手段を設
    け、電解槽に流入した電解質を添加した原水を電解する
    装置で生成した陽極水に浸透圧保持剤を加えた生成水を
    所望の水圧、流量で吐水する手段をもって構成したこと
    を特徴とする洗浄液生成装置。
  2. 【請求項2】 ORP900mv以上、pH3.0以下
    の酸化電位水に前記浸透圧保持剤が添加されている生体
    臓器と等張なることを特徴とする洗浄液。
  3. 【請求項3】 前記浸透圧保持剤として食塩、糖および
    グリセリンの少なくとも1つを含む請求項2記載の洗浄
    液。
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