JP3236393B2 - 通電加熱用金属触媒担体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、通電加熱用金属触媒担
体に関し、たとえば自動車用内燃機関の排気ガス浄化用
触媒の触媒担体に利用される。

【０００２】

【従来の技術】触媒担体を金属から構成し、それにアル
ミナをコートし、アルミナに触媒金属を担持させた触媒
は知られている。このような触媒は、たとえば速やかな
立上りが要求される自動車用スタート触媒で、エンジン
始動時に通電して発熱させるタイプのヒータ触媒に用い
ることができる。すなわち、エンジン始動時に金属触媒
担体に通電して電気的に発熱させ、スタート触媒を速や
かに活性化温度以上に昇温し、エンジン始動直後に多量
に排出されるＨＣ（未燃炭化水素）を低減させるのに有
効である。

【０００３】触媒を速やかに活性化するには、触媒を部
分的に通電加熱して活性化し、その部分の酸化発熱反応
の熱も利用してまわりの部分を加熱するのが有効であ
る。特願平３−３３８５５６号は、図６〜図７に示すよ
うに、金属製の波箔１と平箔２とからなる組合せ箔を中
心電極３まわりに巻回し、巻回体を外筒４に収納し、中
心電極３と外筒４を電極とし、箔に通電して加熱する通
電加熱用金属触媒担体において、箔巻回体の内周部５と
外周部６のみの軸方向前端面を放電接合して組合せ箔間
を電気的に短絡し、箔巻回体の中間部７のみを抵抗加熱
するようにして触媒担体のヒートマスを小さくしたもの
を提案している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、従来触媒担体
には次の問題があった。すなわち、巻回体の少なくとも
中間部においては、抵抗発熱するように組合せ箔は層間
で電気的に絶縁されていなければならない。そのため、
組合せ箔は、焼成などにより表面に酸化皮膜（絶縁皮
膜）が形成されている。この場合、箔間の放電接合前に
箔表面に酸化皮膜が形成されていると、箔同志の放電接
合が困難になり、放電接合部で箔同志が離れると巻回体
は使用中にスコーピング（層間軸方向ずれ）を生じやす
くなる。逆に、表面が酸化されていない生箔の状態で端
面接合し、その後巻回箔の表面に酸化皮膜を形成する
と、箔間の接触部に酸化皮膜が形成されにくくなり、そ
こが電気導通部となる。そのため、巻回体内外周部は、
その軸方向全域にわたって半径方向に短絡され、巻回体
中間部において軸方向全域にわたって電流が半径方向に
渦巻状に流れるようになり、ヒートマスが大となって触
媒の速やかな昇温上好ましくないという問題が生じる。

【０００５】本発明の目的は、組合せ箔同志を生箔の状
態で端面接合でき、しかも軸方向に接合部のみ電気を流
すことができる通電加熱用金属触媒担体を提供すること
を目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の通電加熱用金属触媒担体は次のものから成
る。すなわち、波箔と平箔の組合せ箔を多層に巻回しそ
の内周部および外周部の軸方向前端部にて組合せ箔同志
を通電可能に接合した通電加熱用触媒担体において、組
合せ箔同志が接合される部位の組合せ箔間に触媒担体の
軸方向長さより小さい幅のスペーサを設けて組合せ箔同
志を接合した通電加熱用金属触媒担体。

【０００７】

【作用】上記本発明の通電加熱用金属触媒担体におい
て、波箔と平箔の組合せ箔を、巻回時に発熱させたい部
分（中間部）のみの表面に予じめ酸化皮膜を形成し、そ
の他の部分（内、外周部）を表面に酸化皮膜が形成され
ていない生箔のままで残す。続いて、少なくとも１層の
組合せ箔をうず巻状に巻回する。そのとき発熱を抑えた
い部分（内、外周部）に組合せ箔間にスペーサを介装す
る。このスペーサは組合せ箔に予じめ一体に形成された
ものであってもよい。巻回後発熱を抑えたい部分（内、
外周部）を、その軸方向端部にて端面接合する。端面接
合は、放電接合またはロー付けなどによる。端面接合す
る部分は表面に酸化皮膜が形成されていない部分である
から、良好に接合できる。その後巻回体の全体を酸化処
理するかまたは車両の排気系に取付けて排気ガスを流す
ことにより、生箔の部分の組合せ箔の表面に酸化皮膜を
形成する。この場合、スペーサが介装されているので、
生箔の部分の組合せ箔同志が接触することはなく、生箔
の部分の組合せ箔の全表面が、スペーサを介しての接合
部を除いて、酸化され電気的に互いに絶縁される。

【０００８】上記触媒担体を車両用内燃機関の排気系に
とりつけて通電すると、内、外周部は端面接合部のみを
短絡して電流が流れ、中間部では、最短コースを通るよ
うに、内、外周部の端面接合部側の軸方向端部を半径方
向にうず巻状に電流が流れ、その部分が発熱する。した
がって、発熱部が半径方向には中間部に、軸方向には前
端部に限定され、ヒートマスが小さくなって、触媒を速
やかに部分的に加熱することができるようになる。発熱
部がいったん活性化温度以上になると、そこでＨＣ（未
燃炭化水素）の酸化反応による発熱が利用できてさらに
昇温し、まわりに熱が伝わって触媒全域を速やかに活性
化温度以上にできる。

【０００９】

【実施例】以下に、本発明の望ましい実施例を図１〜図
５を参照して説明する。図３〜図５において、金属製
（たとえば、アルミ入りステンレス）の波箔１１と平箔
１２を接触部でレーザ溶接などにより部分的に接合した
組合せ箔を、少なくとも１層、中心電極１３まわりにう
ず巻状に巻回し、それを外筒１４に挿入して金属触媒担
体を構成する。組合せ箔の内周側端部は中心電極１３に
レーザ溶接等により接合され、外周側端部は外筒１４に
レーザ溶接等により接合される。中心電極１３は図５に
示すように、Ｌ字状に曲って外筒１４を貫通し、電気絶
縁体１８を介して外筒１４に固定される。中心電極１３
はバッテリに接続されてプラスの電極を構成し、外筒１
４は車体にアースされてマイナスの電極を構成する。

【００１０】組合せ箔の巻回体の内周部１５および外周
部１６は、中間部１７を除いて、排気ガス流れ方向上流
側の軸方向端面が、放電接合またはロー付け等により層
間が端面接合される。放電接合の場合は巻回体をオイル
等の液中に入れて、放電電極を巻回体端面に対向させて
セットし、電極と巻回体端面間に放電することによって
行われる。端面接合された部分は電気的に短絡するので
端面が電極化するとともに、スコーピング（層間の軸方
向ずれ）を防止する。

【００１１】巻回したときに中間部１７を構成する部分
は、組合せ箔同志は層間で電気的に絶縁されており、電
気は短絡しないでうず巻状に流れ、抵抗値が大のため発
熱部を構成する。組合せ箔のうち巻回したときに中間部
１７を構成する部分には、予じめ表面に電気絶縁皮膜が
形成される。したがって、巻回しても層間は電気的に絶
縁される。組合せ箔のうち巻回したときに、内、外周部
１５、１６を構成する部分は、マスキングすることなど
によって中間部１７を構成する部分の酸化処理時に、酸
化されず生箔の状態が保たれるようにする。

【００１２】組合せ箔を中心電極１３まわりに巻回する
ときに、図１に示すように、表面が酸化されていないス
ペーサ１９を、巻回体の内、外周部１５、１６に対応す
る部分に巻き込む。スペーサ１９は巻回体の中間部１７
を構成する部分には巻き込まれない。スペーサ１９の巾
は組合せ箔巻回体の軸方向長さより小であり、排気ガス
流れ方向上流側端部に巻き込まれる。スペーサ１９の材
質は、波箔１１、平箔１２と同じ材質であることが接合
上望ましい。スペーサ１９の厚さは、組合せ箔間に巻き
込んだときに、組合せ箔がスペーサ１９部分を除いて互
いに接触することを防止できる厚さに選定される。

【００１３】スペーサ１９は、図２に示すように、組合
せ箔のうち平箔１２の、排気ガス流れ方向上流側端部
（巻回したときの軸方向、上流側端部）を一部折り返し
て、組合せ箔に一体に形成してもよい。

【００１４】内、外周部１５、１６にスペーサ１９が巻
き込まれた状態で、内、外周部１５、１６の、排気ガス
流れ方向上流側端部の端面接合が行われる。この場合、
内、外周部１５、１６の組合せ箔は生箔であり、スペー
サ１９も酸化皮膜をもたないので、放電接合またはロー
付けによる接合は容易に行われる。内、外周部１５、１
６のうちスペーサ１９以外の部分は組合せ箔同志はスペ
ーサ１９の厚み分互いに離れている。端面接合後、触媒
担体を焼成すると、内、外周部１５、１６の組合せ箔の
表面にも酸化皮膜（ステンレス中のアルミが酸化されて
アルミナ皮膜となる）が形成され、これが絶縁皮膜とな
る。

【００１５】金属触媒担体形成後、金属触媒担体にアル
ミナをコートする。金属箔成分にアルミニウムを入れて
おくことによりアルミナ（Ａｌ₂ Ｏ₃ ）の金属担体への
付着性がよくなる。このアルミナに白金（Ｐｔ）をやロ
ジウム（Ｒｈ）などの触媒成分を担持させて触媒とす
る。

【００１６】つぎに作用を説明する。中心電極１３から
の電流は、内周部１５においてスペーサ１９を介した端
面接合部のみを通って中間部１６へと流れる。スペーサ
１９以外の部分は組合せ箔同志が離れており、かつ表面
が酸化状態にされるので、電気は流れない。そのため、
内周部１５における電流経路はスペーサ１９の部分のみ
に集められる。この部分は電気的に導通しているので電
流は半径方向に内側から外方へと流れる。抵抗は小さい
ので、内周部１５における発熱は抑えられる。

【００１７】外周部１６においても、内周部１５と同様
にスペーサ１９を介した端面接合部のみを通って、電流
は内側から外方に半径方向に流れる。抵抗が小さいの
で、外周部１６における発熱は抑えられる。

【００１８】中間部１７においては、組合せ箔は互いに
絶縁されているので、電流はうず巻状に流れる。したが
って電流経路長が大のため抵抗大となり、発熱する。こ
の場合、中間部１７には、内周部１５の上流側端部のみ
から電気が流れて入り、外周部１６の上流側端部のみに
流れ出ていくので、中間部１７を流れる電気の経路は中
間部１７の上流側端部近傍に限定される。これは電気は
最も抵抗の少ない経路を流れようとし、上流側端部を通
ることが最短距離になるからである。その結果、中間部
１７は上流側端部が主に発熱する。

【００１９】このため、触媒の電気発熱部は、半径方向
には中間部１７に限定されるとともに、軸方向に上流側
端部に限定される。したがって、ヒートマスが小さくな
り、触媒昇温の電気エネルギが少なくて済むとともに部
分加熱により速やかな触媒の部分加熱が可能になる。い
ったん、触媒が部分的に活性化温度以上にされると、そ
の部分においてＨＣの酸化が始まり、酸化反応による発
熱も利用できてその部分は益々昇温し、その熱がまわり
に伝わって、触媒全域を比較的速やかに活性化温度以上
にすることができる。

【００２０】排気ガスは、内、外周部１５、１６を含み
触媒の全域を通過するが、中心電極１３がある場合最も
排気ガス流量が多くなる部分は中間部１７である。した
がって、中間部１７を部分的に加熱することは、排気ガ
スの熱を最も利用できること、およびエンジンスタート
直後のＨＣを多量に含むガスが浄化されないで排出され
ることを抑えることができるという観点から望ましいこ
とである。また、中間部１７のうち、上流側端部を電気
的に加熱することは、そこが早く活性化されれば、ガス
流れによって下流側部分に熱伝達されやすいので、望ま
しいことである。

【００２１】また、内、外周部１５、１６をそれぞれ端
面接合することによって、スコーピングが防止される。
すなわち、内、外周部１５、１６の過渡時温度分布によ
る熱応力によって、層間に軸方向荷重が作用しても、端
部が接合されているので、内、外周部１５、１６は層間
ずれを起さない。

【００２２】

【発明の効果】本発明によれば、内、外周部の組合せ箔
間に巾が小さいスペーサを設けて端面接合したので、中
間部における通電時の電気の流れを軸方向に内外周部の
スペーサを設けた部分に対応する部分に限定でき、電気
加熱のヒートマスを小とすることができ、その結果、触
媒を速やかに部分加熱することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る通電加熱用金属触媒担
体の波箔と平箔の組合せ箔とスペーサの部分展開斜視図
である。

【図２】本発明の別の実施例に係る通電加熱用金属触媒
担体の組合せ箔と一体型スペーサの部分展開斜視図であ
る。

【図３】本発明の一実施例に係る通電加熱用金属触媒担
体の外筒への組立途中の斜視図である。

【図４】本発明の一実施例に係る通電加熱用金属触媒担
体の正面図である。

【図５】図４の担体の断面図である。

【図６】従来の金属触媒担体の端面部分放電接合前の部
分斜視図である。

【図７】図６の担体を端面部分放電接合した後の部分断
面図である。

【符号の説明】 １１ 波箔 １２ 平箔 １３ 中心電極 １４ 外筒 １５ 内周部 １６ 外周部 １７ 中間部 １９ スペーサ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 聖彦 愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地 株式 会社日本自動車部品総合研究所内 (56)参考文献 特開 平５−168946（ＪＰ，Ａ) 特表 平７−505825（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B01J 21/00 - 38/00 B01D 53/94 F01N 3/20

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 波箔と平箔の組合せ箔を多層に巻回しそ
   の内周部および外周部の軸方向前端部にて組合せ箔同志
   を通電可能に接合した通電加熱用触媒担体において、組
   合せ箔同志が接合される部位の組合せ箔間に触媒担体の
   軸方向長さより小さい幅のスペーサを設けて組合せ箔同
   志を接合したことを特徴とする通電加熱用金属触媒担
   体。