JP3232084B2 - 耐疲れ亀裂性ニッケル基超合金の製造方法およびその製品 - Google Patents

耐疲れ亀裂性ニッケル基超合金の製造方法およびその製品

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JP3232084B2 JP17207389A JP17207389A JP3232084B2 JP 3232084 B2 JP3232084 B2 JP 3232084B2 JP 17207389 A JP17207389 A JP 17207389A JP 17207389 A JP17207389 A JP 17207389A JP 3232084 B2 JP3232084 B2 JP 3232084B2
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Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 ニッケル基超合金が高性能を必要とする環境で広く使
われていることはよく知られている。そのような合金
は、ジェットエンジン、陸上ガスタービンおよび1000゜
F以上の高温で高強度その他の望ましい物性を保持しな
ければならないような他の機関に広く使用されて来てい
る。
これらの合金の多くはいろいろな体積割合(%)の
γ′析出物を含んでいる。このγ′析出物はこのような
合金の高い使用温度での高性能特性を担っている。
γ′析出物の相化学の特性は、ホール(E.L.Ha11)、
クー(Y.M.Kouh)およびチャン(K.M.Chang)によっ
て、1983年8月のアメリカ電子顕微鏡検査学会第41回年
会会報(Proceedings of 4lst Annual Meeting of Elec
tron Microscopy Society of America)第248頁の「析
出強化型超合金の相化学(Phase Chemistries in Preci
pitation−Strengthening Superalloy)」中にさらに詳
しく述べられている。
米国特許第2,570,193号、第2,621,122号、第3,046,10
8号、第3,061,426号、第3,151,981号、第3,166,412号、
第3,322,534号、第3,343,950号、第3,575,734号、第3,5
76,861号、第4,207,098号および第4,336,312号にはさま
ざまなニッケル基合金組成物が開示されている。これら
の特許は今日までに報告されたたくさんの合金化の開発
の代表的なものであり、元素間の異なる機能的関連をつ
かむために、さまざまな物理的・機械的特性をもった合
金系を生じさせる相が形成されるように、同じ元素をさ
まざまに組合せている。しかしながら、ニッケル基合金
に関して利用可能なデータは豊富にあるにもかかわら
ず、公知の元素をある濃度で組合せて使用して合金を形
成する場合、そのような組合せが業界で一般化されてい
る広い教示範囲内に入るものであるにしても、特に、そ
の合金を従来使用されていた熱処理とは異なる熱処理を
用いて加工したときに、形成されたそのような合金が示
すはずの物理的・機械的性質をある程度の正確さをもっ
て予想することは当業者にとってもいまだに不可能であ
る。
多くのそのようなニッケル基超合金でますます重視さ
れ認識されて来ている問題は、製造時または使用中に亀
裂(割れ)が形成されたりあるいは発生しかけたりしや
すく、しかもこの亀裂はガスタービンやジェットエンジ
ンなどのような構造体中でその合金を使用している間に
応力下で実際に伝播または成長し得るということであ
る。亀裂の伝播や拡大により部品の破壊その他の故障が
起こり得る。亀裂の発生および伝播に起因する可動機械
部品の故障の結果はよく分かっている。ジェットエンジ
ンの場合は特に重大な危険を招き得る。
しかし、最近の研究がなされるまであまり良く理解さ
れていなかったことは、超合金で形成されている構造体
における亀裂の発生と伝播が、すべての亀裂が同じ機
構、同じ速度で、同じ基準に従って発生し、かつ伝播す
るような単純な現象ではないということである。対照的
に、亀裂の発生と伝播および亀裂現象は複雑であること
が一般に認められて来ており、近年はそのような伝播と
応力のかかり方との間の相互の関連に関する新しい重要
な情報が集積されている。亀裂が拡大または伝播するま
でに部材に応力がかけられる時間、かかる応力の強さ、
その部材に応力をかけたり除いたりする際の速度、およ
びこの応力をかける予定・計画がもたらす影響が合金に
よっていろいろ変化することは、米国家航空宇宙局(Na
tional Aeronautics and Space Administration)との
契約に基づいてある研究がなされるまで産業界では良く
理解されていなかった。この研究はNASA CR−165123と
いう技術レポートに報告されている。このレポートは、
1980年8月に米国家航空宇宙局から発行されたカウルズ
(B.A.Cowles)、ウォーレン(J.R.Warren)およびホー
ク(F.K.Hauke)による「航空機タービンディスク合金
の循環挙動の評価(Evaluation of the Cyclic Behavio
r of Aircraft Turbine Disk Alloys)」第II部、最終
報告とされてオリ、米国家航空宇宙局(National Aeron
autics and Space Administration)のNASAルイス研究
センター(NASA Lewis Research Center)、契約NAS3−
21379のために作成されたものである。
このNASAの後援による研究の主要な知見は、疲れ現象
に基づく伝播速度、すなわち疲れ亀裂伝播(FCP)の速
度が、かけられた応力やそのかかり方に対して必ずしも
一様ではないということである。また、それより重要な
ことに、疲れ亀裂伝播が現実に、応力が部材に対して亀
裂を拡大するようなやり方でかけられる場合のその応力
をかける頻度によって変化するということが発見され
た。さらに驚くべきことに、NASAの後援による研究の重
大な発見は、それまでの研究で使用されていた高い頻度
より低い頻度で応力をかける方が亀裂伝播速度を実際に
増大させるということである。いいかえると、このNASA
の研究によって、疲れ亀裂伝播に時間依存性があること
が確かめられたということである。さらに、この疲れ亀
裂伝播の時間依存性は、頻度のみに依存するのではな
く、その部材が応力下に保持されている時間、すなわち
いわゆる保持時間にも依存することが判明した。
この低めの応力頻度で異常な程増大した疲れ亀裂伝播
が実証された後、産業界では、この新たに発見された現
象がニッケル基超合金をタービンおよび航空機エンジン
の応力がかかる部品に使用できる可能性の究極的な限界
を示しており、この問題を迂回して設計するためにあら
ゆる設計努力をしなければならないものと信じられてい
た。
しかし、大幅に低下した亀裂伝播速度と良好な高温強
度をもち、タービンおよび航空機エンジン内で高い応力
で使用するニッケル基超合金製部品を構築できることが
発見された。
超合金に一番要求される性質がジェットエンジンの構
築に関して必要とされるものであることは知られてい
る。必要とされる性質のうち、エンジンのいろいろな要
素によって必要とされる性質の組合せはさまざまである
が、普通、エンジンの可動部分に対して必要とされるも
のの方が固定部分に対して必要とされるものより多くて
厳しい。
鋳造合金材料ではある種の性質が得られないので、粉
末冶金技術によって部品を製造しなければならないこと
がある。しかし、ジェットエンジンの可動部品の製造の
際に粉末冶金技術を使用することに伴う制限のひとつ
は、粉末の純度の問題である。もし粉末が小粒のセラミ
ックまたは酸化物などのような不純物を含有している
と、可動部品中でその小粒がある所は亀裂の発生が始ま
る潜在的に弱い点になる。そのような弱い点は本質的に
潜在的な亀裂である。そのような潜在的亀裂が存在する
可能性があるため、亀裂伝播速度を低下・抑制するとい
う問題がいっそう重要になる。本発明者は、合金組成の
調整とそのような金属合金の製造方法とを両方とも適用
することによって亀裂伝播を抑えることが可能なことを
発見した。
本発明によって、粉末冶金技術で製造することができ
る超合金が提供される。また、この超合金を加工処理し
て、最先端のエンジンディスク用に使用するのに優れた
性質を組合せて有する材料を製造する方法も提供され
る。ディスク材用に使用される材料に対して従来から必
要とされている性質には高い引張強さと高い応力破壊強
度が包含される。さらに、本発明の合金は時間依存性の
亀裂成長伝播に抵抗するという望ましい性質を示す。こ
のような亀裂の成長に対する抵抗性は部品の低サイクル
疲れ(LCF)寿命にとって本質的なものである。
タービンやジェットエンジンに使用する合金製品が開
発されるにつれて、エンジンやタービンの各種部分に使
用される部品に対してさまざまな性質が必要とされるこ
とが明らかになって来た。ジェットエンジンの場合、航
空機のエンジンの性能要求が増大するにつれて、より進
んだ航空機エンジンの材料に要求される要件はさらに厳
しくなり続けている。このいろいろな要件は、たとえ
ば、多くのブレード材用合金が鋳造状態で非常に良好な
高温特性を示すという事実によって立証されている。し
かし、ブレード材合金は中間の温度で不十分な強度を示
すので、鋳造ブレード合金からディスク材合金への直接
変換は極めてありそうもないことである。さらに、ブレ
ード合金は鍛造するのが極めて困難であることが判明し
ており、しかもディスク合金からディスクを製造するの
には鍛造が望ましいことが分かっている。また、ディス
ク合金の耐亀裂成長性は評価されていない。したがっ
て、エンジン効率を上げると共に性能をさらによくする
ために、航空機エンジンに使用される特別な合金の一群
としてのディスク合金の強度と温度性能を改良すること
が常に望まれている。
したがって、本発明に至った研究を遂行する上で求め
られていたことは、疲れ亀裂伝播の時間依存性が小さい
かまたは中程度であり、さらに疲れ亀裂発生に対する抵
抗性が高いディスク合金の開発であった。加えて、特性
のバランス、特に引張、クリープおよび疲れの特性のバ
ランスをとることが求められていた。さらに求められて
いたことは、亀裂成長現象の阻止に関して確立されてい
た合金系の強化であった。
本発明の超合金組成物およびその加工処理方法の開発
では、疲れ特性に着目し、特に亀裂成長の時間依存性を
扱っている。
高強度合金物体における亀裂成長、すなわち亀裂伝播
の速度は、かかっている応力(σ)と亀裂の長さ(a)
に依存することが知られている。これらのふたつの因子
は破壊力学によって組合せられて、単一の亀裂成長駆動
力すなわち応力度因子(stress intensity factor)K
になる。この因子Kは に比例する。疲れ条件下で疲れサイクル中のこの応力度
はふたつの成分、すなわち反復成分と静的成分のふたつ
から成るとすることができる。前者は、反復応力度の最
大の変化(ΔK)、すなわちKmaxとKminとの差を表わ
す。適度の温度の場合、静的破壊靭性KICが達成される
までは、亀裂成長は主として反復応力度(ΔK)によっ
て決定される。亀裂成長速度は数学的にda/dN∝(Δ
K)と表わされる。Nはサイクルの数を示し、nは材
料に依存する。反復頻度と波形形状は亀裂成長速度を決
定する重要なパラメーターである。所定の反復応力度で
は、小さめの反復頻度の方が速めの亀裂成長速度を与え
ることになり得る。疲れ亀裂伝播のこの望ましくない時
間依存性の挙動は現存するほとんどの高強度超合金で見
ることができる。この時間依存性の現象の複雑さに加え
て、温度をある点より高く上げると、亀裂は、反復成分
がまったくかからない(すなわちΔK=0)ある強度K
の静的応力下で成長し得る。設計の目標は、できるだけ
小さくてできるだけ時間依存性の少ないda/dNの値を見
出すことである。応力度の成分は、亀裂成長が反復およ
び静的の両方の応力度、すなわちΔKとKの関数となる
ように、ある温度範囲ではお互いに相互作用することが
できる。
発明の簡単な説明 したがって、本発明のひとつの目的は、亀裂発生に対
する抵抗性がより高くなったニッケル基超合金製品を提
供することである。
もうひとつ別の目的は、確立されている公知のニッケ
ル基超合金が亀裂を発生させ易いという傾向を低下せし
める方法を提供することである。
また、別の目的は、反復する高応力下で使用される疲
れ亀裂伝播に対する抵抗がより高くなった物品を提供す
ることである。
さらに、別の目的は、ある範囲の頻度に亘って反復し
て加えられる応力下の亀裂に対する抵抗性をニッケル基
超合金に付与できるようにする組成物と方法を提供する
ことである。
その他の目的の一部は以下の説明から明らかであろう
し、一部は以下で指摘する。
その一般的な側面のひとつにおいて、本発明の目的
は、次の概略組成を有する組成物を提供することによっ
て達成することができる。成 分 組成物中の濃度(重量%) (下限量)〜(上限量) Ni 残 部 Co 12〜18 Cr 7〜13 Mo 2〜4 Al 3〜5 Ti 3.5〜5.5 Ta 1〜2 Nb 3〜5 Zr 0.0〜0.10 V 0.0〜2.0 C 0.0〜0.20 B 0.0〜0.10 W 0.0〜1.0 本発明の目的は、また、その別な側面のひとつにおい
て、次の概略組成を有する組成物を提供することによっ
て達成することができる。成 分 組成物中の濃度(重量%) (下限量)〜(上限量) Ni 残 部 Co 12〜18 Cr 7〜13 Mo 2〜4 Al 3〜5 Ti 3.5〜5.5 Ta 1〜2 Nb 3〜5 Re 0.0〜3.0 Hf 0.0〜0.75 Zr 0.0〜0.10 V 0.0〜2.0 C 0.0〜0.20 B 0.0〜0.10 W 0.0〜1.0 Y 0.0〜0.10。
以下の詳細説明は、添付の図面を参照するとより分か
り易くなるであろう。
発明の詳細な説明 本発明者は、高温で高強度を必要とする構造体に使用
されている現在市販の合金を研究することによって従来
の合金があるパターンをもっていることを発見した。こ
のパターンは、前記の最終レポートNASA CR−165123に
あるデータを本発明者が考案した方法で行なったプロッ
トに基づくものである。本発明者は、1980年のこのNASA
レポートのデータを、第1図に示したパラメーターを用
いてプロットした。第1図を見ると明らかなように、こ
れらのデータはほぼ対角線に沿って並んでいる。
第1図では、亀裂成長速度(インチ/サイクル)が極
限引張強さ(ksi)に対してプロットされている。個々
の合金はこのグラフ上にプラス(+)の記号で示してあ
るが、この記号は、それぞれの合金に特徴的な極限引張
強さ(ksi)におけるその合金の対応する特性である亀
裂成長速度(インチ/サイクル)を示している。見て分
かるように、滞留時間900秒と表示した直線は、これら
従来周知の合金の亀裂成長速度と極限引張強さとの間の
特徴的な関係を示している。このグラフの底部には、表
示した+の記号の点に対応する類似のデータの点が、0.
33ヘルツ(Hz)すなわちいいかえるとより高めの頻度で
行なった亀裂伝播速度試験に関して示されている。菱形
で示されたデータは、このグラフの上部に示したそれぞ
れの合金に対して、0.33Hzと表示した直線に沿った領域
にある。
第1図から明らかになるように、長い滞留時間に対し
てこのグラフの右下隅の座標をもつ合金組成物はないと
いうことである。実際、長めの滞留時間の亀裂成長試験
に対するデータの点はすべてこのグラフの対角線に沿っ
て並んでいるので、形成される合金組成物はいずれもこ
のグラフの対角線に沿ったどこかに位置することになる
ように思われた。いいかえると、第1図にプロットした
パラメーターに従って長い滞留時間で高い極限引張強さ
と低い亀裂成長速度とを両方とも有する合金組成物を見
出すことはできないように見えた。
しかし、本発明者は、高い極限強度と低い亀裂成長速
度とのユニークな組合せを達成することが可能な組成を
有する合金を製造することが可能であることを発見し
た。
本発明者が仮説的に到達した結論のひとつは、クロム
濃度が各種合金の亀裂成長速度に対してなんらかの影響
を及ぼし得るということであった。このため、本発明者
は亀裂成長速度に対してクロム含量(重量%)をプロッ
トした。このプロットの結果を第2図に示す。この図
で、クロム含量は約9%から約19%まで変化しているこ
とが分かり、対応する亀裂成長速度の測定値は、クロム
含量が増大すると共に一般に亀裂成長速度が低下するこ
とを示している。このグラフによると、クロム含量が低
くて、しかも同時に、長い滞留時間で低い亀裂成長速度
も有する合金組成物を考案することは極めて困難である
かまたは不可能であるかもしれないように思われた。
しかしながら、本発明者は、ある超合金組成物の成分
を組合せて適切に合金化すると、低いクロム含量と長い
滞留時間での低い亀裂成長速度とを両方とも有する組成
物を形成することが可能であることを見出した。
試験片に応力をかける際の保持時間と亀裂成長が変化
する速度との関係の一例を第3図に示す。この図では、
亀裂成長速度の対数を縦軸に、滞留時間または保持時間
(秒)を横軸にプロットしてある。5×10-5という亀裂
成長速度は、反復応力度因子が25ksi/inの場合理想的な
速度であると見られるかもしれない。もし理想的な合金
が形成されれば、その合金は亀裂または試片に応力をか
けている保持時間の間ずっとこの速度を示すであろう。
そのような現象は第3図の直線(a)で表わされるであ
ろう。この直線は、亀裂生成速度が試片に応力をかけて
いる間、保持時間または滞留時間と本質的に無関係であ
ることを示している。
これとは対照的に、現実の亀裂成長現象により近い現
実に即した非理想的な亀裂成長速度を、第3図に曲線
(b)として示す。数秒以内の非常に短い保持時間の
間、理想的な線(a)と実際的な曲線(b)はあまり大
きく離れないことが分かる。このように高い頻度すなわ
ち短い保持時間で試料に応力をかける場合には、亀裂成
長速度は比較的低い。
しかし、試料に応力をかける保持時間が長くなると、
従来の合金に対する実験で得られる結果は曲線(b)に
従う。したがって、応力負荷の頻度が低くなり応力負荷
に要する保持時間が長くなると、直線的な速度からのず
れが大きくなることが分かる。約500秒という保持時間
を任意に選択してみると、亀裂成長速度は標準的な速度
の5×10-5から5×10-3へと100倍も増大し得ることが
第3図から明らかである。
ここでもまた、亀裂成長速度が時間に依存しなければ
望ましいことであろうし、これは保持時間が長くなり応
力をかける頻度が低くなるとき曲線(a)をたどること
で理想的に表現されるであろう。
驚くべきことに、本発明者は、超合金の成分を少しだ
け変えることによって、その合金の長い滞留時間での亀
裂成長伝播に対する抵抗性を大きく改良することが可能
であることを見出した。換言すると、合金化の修正によ
り亀裂成長の速度を低下させることが可能であることが
判明したのである。さらに、合金の処理によって強度の
増大も可能である。そのような処理は主として熱処理で
ある。
実施例 HK79といわれる合金を製造した。この合金の組成は本
質的に以下の通りであった。成 分 濃度(重量%) Ni 残部 Co 15 Cr 10 Mo 3 Al 4 Ti 3.55 Ta 1.50 Nb 4 Re 0.0 Hf 0.0 Zr 0.06 V 1 C 0.05 B 0.03 Y 0.0。
この合金を各種の試験に供した。その試験結果を第4
〜10図にプロットした。ここで、「−SS」の文字をつけ
て表わしてある合金は、その合金に対してとったデータ
が「スーパーソルバス」処理された材料に対して採取さ
れたものである合金である。すなわち、この材料に対し
て行なった高温の固体状態熱処理は、強化性のγ′析出
物が溶解する温度よりは高くて初期融点よりは低い温度
で行なった。この結果、通常はその材料中の結晶粒度が
粗くなる。強化性のγ′相はその後の冷却および時効の
際にふたたび析出する。
ここで第4図を参照すると、亀裂伝播速度(インチ/
サイクル)が冷却速度(゜F/分)に対してプロットさ
れている。ルネ(Rene')95−SSとHK79−SSのサンプル
は、最大応力度因子で保持時間を1000秒として1200゜F
の空気中で試験した。明らかに、75゜Fと350゜Fで冷却
したサンプルの場合、HK79−SSはルネ(Rene')95−SS
よりずっと低い亀裂成長度を有している。1000℃以上の
速度で冷却されたサンプルのda/dNは、同じ速度で冷却
されたルネ(Rene')95−SSのサンプルのda/dNより多少
低い。このような超合金から製造された部品に対する冷
却速度の範囲は、100゜F/分から600゜F/分の範囲であ
ると予想されることに注意すべきである。
以上のことから明らかなように、本発明は、成分の種
類およびそれらの相対濃度の両方に関してユニークな組
合せの成分を有する合金を提供する。また、本発明によ
って提案される合金は亀裂伝播抑制に関して新規で独特
な能力を有していることも明らかである。第4図から明
らかなHK79−SS合金の低い亀裂伝播速度da/dNは本発明
独自の新規で顕著な結果である。約400゜F/分で冷却さ
れたサンプルでみられる約1.2×10-4というda/dNを第1
図にプロットすると、第1図のプロットの右下隅に位置
し、しかもそのプロットに示した0.33Hz線より下にな
る。
同様に、第2図に関し、クロムが10%でda/dNが1.2×
10-4という本発明のHK79−SS合金に対するデータ点は、
長い滞留時間の直線よりずっと下であって、0.33Hz試験
に対する疲れ成長速度線に極めて近いがそれより下にな
る。第4図に示した試験データは保持時間が1000秒のも
のであり、第2図のプロットは滞留時間が900秒のもの
である。これに基づいて考えると、本発明の合金に対す
るデータ点は、0.33Hz線に近い程度より900秒線の方に
ずっと近いはずであり、その線より上になることもある
はずである。しかしながら、実際みられるのはまさに逆
である。これは、成分の少しの違いが長いサイクルの疲
れ試験において亀裂伝播速度に対して劇的な相違をもた
らし、特にそのような速度を低下させるのに極めて重要
な意味をもっているにしても、本発明の合金の成分がIN
−100合金でみられる成分とは少し相違するだけである
ので極めて驚くべきことである。本出願に添付した図面
のグラフからも明らかなように、極めて望ましい強度や
その他の性質の組合せと共に驚くほど予想外の顕著な低
い疲れ亀裂伝播速度が得られるのは、まさに、この成分
およびその割合の小さな違いに基づくのである。
本発明の合金のその他の性質に関して、第5〜10図を
参照して以下に説明する。
本発明の合金はいくつかの点でIN−100に類似してい
るが、本発明の合金をIN−100よりずっと強い合金と比
較するための基礎とするために、本発明の合金とルネ
(Rene')95−SSのサンプルの比較試験を実施した。750
゜Fで得られた引張試験結果を第5図と第6図に、また1
400゜Fで得られた引張試験結果については第7図と第8
図にプロットした。
まず、第5図にプロットした試験データを参照する。
第5図には、750゜Fで試験を行なった2種の合金サンプ
ルHK79−SSとルネ(Rene')95−SSについて、降伏応力
(ksi)と冷却速度(゜F/分)との関係がプロットされ
ている。このプロットで、部品が使用されると期待され
る冷却速度範囲においてルネ(Rene')95−SSサンプル
と比較するとHK79−SS合金サンプルの優秀さが明らかで
ある。HK79−SSとルネ(Rene')95−SSのサンプルはど
ちらもすべて粉末冶金技術によって製造したものであ
り、したがって強度およびその他の性質の点でお互いに
非常に良く似ている。
第6図は、上記の実施例に従って製造した合金HK79−
SSのサンプルおよび比較としてのルネ(Rene')95−SS
のサンプルについて、極限引張強さ(ksi)を冷却速度
(゜F/分)に対してプロットしたものである。試験し
たサンプルは750゜Fで測定した。ルネ(Rene')95が市
販されている公知の超合金の中で最強のもののひとつで
あることはよく知られている。第6図から明らかなよう
に、HK79−SS合金とルネ(Rene')95−SS合金のそれぞ
れのサンプルに対して行なった極限引張強さの測定の結
果は、HK79−SS合金が実際ルネ(Rene')95−SS材料よ
り高い引張強さ、特に極限引張強さを有しているという
ことを示した。
第7図のプロットから明らかなように、本発明の合金
が有する1400゜Fでの降伏強さの範囲は、約75゜F/分で
冷却された合金サンプルの約153から、1000゜F/分以上
で冷却されたサンプルの165以上の降伏応力までに亘っ
ている。
そこで、第8図を参照すると、いずれも1400゜Fで試
験した2種の合金サンプル、すなわちルネ(Rene')95
−SSとHK79−SSについて1400゜Fでの極限引張強さと冷
却速度(゜F/分)との間の関係をプロットしてある。
第5〜8図にプロットしたデータは、さらに、本発明
の合金がルネ(Rene')95の性質とほとんど同じ引張強
度特性を有していることも比較に基づいて示している。
ここで第9図を参照すると、このグラフは、いずれも
アルゴン雰囲気中1400゜F、80ksiで試験したHK79−SSと
ルネ(Rene')95−SSのサンプルについて破壊寿命(時
間)を冷却速度(゜F/分)に対してプロットしたもの
である。このグラフから明らかなように、HK79−SSサン
プルの破壊寿命はこのサンプルが約75゜F/分で冷却さ
れると500時間以上であり、このサンプルを1000゜F/分
以上で冷却すると破壊寿命は約800時間まで伸びた。HK7
9−SSの破壊耐性は試験した冷却速度すべてでルネ(Ren
e')95−SSより秀れていることが示されている。
まったく同じではないが似ているグラフを第10図に示
す。第10図では、応力破壊寿命が100時間であるとした
場合のサンプルに関して相当温度を縦軸にプロットして
ある。いいかえると、第10図のプロットは、アルゴン中
80ksi、1400゜Fで試験したサンプルが100時間耐えられ
る温度を示している。ここでもまた、冷却速度を基準に
して100時間応力破壊耐性に対する温度の相違がこのグ
ラフから明らかである。
さらに、疲れ亀裂伝播の抑制に関して、本発明の合金
は、ルネ((Rene')95、特にこのような合金の工業生
産で使用されるはずの100゜F/分〜600゜F分の冷却速度
で製造された合金よりずっと秀れている。
本発明の達成に関して顕著であることは、IN−100合
金の成分と比較してHK79合金の成分の変化は比較的小さ
くて、疲れ亀裂伝播耐性が大幅に改良されることであ
る。
合金組成の小さい変化を例示するためにIN−100とHK7
9の両者の成分を以下に挙げる。 表 I 成分 HK79 IN−100 Ni 57.81 60.55 Co 15 15 Cr 10 10 Mo 3 3 Al 4 5.5 Ti 3.55 4.7 Ta 1.5 − Nb 4 − Zr 0.06 0.06 V 1 1 C 0.05 0.18 B 0.03 0.01 上の表Iから明らかなように、合金HK79の組成と比べ
て合金IN−100の組成で意味のある違いは、本発明の合
金ではアルミニウムが1.5重量%、チタンが1.15重量%
減っており、1.5重量%のタンタルと4.0重量%のニオブ
が添加されていることだけである。
このような組成の変化によって、合金の基本的な強度
特性をルネ(Rene')95の強度特性まで強化または改良
しながら、同時にこの合金の長い滞留時間のときの疲れ
亀裂抑制を得ることができるということはむしろ驚くべ
きことであると思われる。しかし、これは、添付の図面
に挙げ、上で詳細に述べたデータによって明らかにされ
ているように、まさにこの組成の変化の結果なのであ
る。
上記のような特性の顕著な変化に関係しない成分のそ
の他の変更、特に添加する成分の少なめの変更をしても
よい。たとえば、HK−79合金で見出された特性のユニー
クで有益な組合せを変更することなく、特にそのような
特性を損うことのない程度にレニウムを少量添加しても
よい。
本発明の合金を特に亀裂伝播の抑制に関して独特に有
利な割合を与える成分および成分のパーセントの点から
記載して来たが、その他の成分、たとえばイットリウ
ム、ハフニウムなどを新規な亀裂伝播抑制に干渉するこ
とのないパーセントで組成物中に含ませることができる
ということが分かるであろう。たとえば、0〜0.1%程
度の少量のイットリウムを、本発明の合金のユニークで
価値の高い組合せの特性を損うことなく本発明の合金中
に含ませることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、650℃での疲れ亀裂伝播(30ksiにおけるΔ
K)について、極限引張強さ(ksi)に対して疲れ亀裂
成長(インチ/サイクル)を対数目盛りでプロットした
グラフである。 第2図は、第1図と同様な試験結果をプロットしたグラ
フであるが、横軸はクロム含量(重量%)を表わしてい
る。 第3図は、試験片に反復して応力をかけた場合の保持時
間(秒)に対して亀裂成長速度の対数をプロットしたグ
ラフである。 第4図は、亀裂伝播速度da/dN(インチ/サイクル)を
冷却速度(゜F/分)に対してプロットしたグラフであ
る。試験条件:1200゜F、空気中、R=0.05、1000秒の保
持時間、 第5図は、対数目盛りの冷却速度(゜F/分)に対して
プロットした750゜Fでの降伏応力(ksi)のグラフであ
る。 第6図は、対数目盛りの冷却速度(゜F/分)に対して
プロットした750゜Fでの極限引張強さ(ksi)のグラフ
である。 第7図は、冷却速度(゜F/分)に対してプロットした1
400゜Fでの降伏応力(ksi)のグラフである。 第8図は、冷却速度(゜F/分)に対してプロットした1
400゜Fでの極限引張強さ(ksi)のグラフである。 第9図は、アルゴン中1400゜Fで80ksiにの応力をかけた
場合の破壊寿命(時間)を冷却速度(゜F/分)に対し
てプロットしたグラフである。 第10図は、80ksiで100時間の寿命が期待できる温度(゜
F)を冷却速度(゜F/分)に対してプロットしたグラフ
である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−30037(JP,A) 特開 昭63−114933(JP,A) 特開 平1−165741(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 19/05 C22F 1/10

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の成分を以下の割合で含有する高強度
    で疲れ亀裂伝播速度の低いニッケル基超合金: 成 分 合金中の濃度(重量%) Ni 残 部 Co 12〜18 Cr 7〜13 Mo 2〜4 Al 3〜5 Ti 3.5〜5.5 Ta 1〜2 Nb 3〜5 Re 3.0まで Hf 0.75まで Zr 0.10まで V 2.0まで C 0.20まで B 0.01〜0.10 W 1.0まで Y 0.1まで。
  2. 【請求項2】熱処理後600゜F/分以下の速度で冷却され
    ている請求項1記載のニッケル基超合金。
  3. 【請求項3】熱処理後50〜600゜F/分の速度で冷却され
    ている請求項1記載のニッケル基超合金。
  4. 【請求項4】以下の成分を以下の割合で含有する高強度
    で疲れ亀裂伝播速度の低いニッケル基超合金: 成 分 合金中の濃度(重量%) Ni 残部 Co 15 Cr 10 Mo 3 Al 4 Ti 3.55 Ta 1.5 Nb 4 Zr 0.06 V 1 C 0.05 B 0.03。
  5. 【請求項5】熱処理後600゜F/分以下の速度で冷却され
    ている請求項4記載のニッケル基超合金。
  6. 【請求項6】熱処理後50〜600゜F/分の速度で冷却され
    ている請求項4記載のニッケル基超合金。
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