JP3233361B2 - 耐疲労亀裂性のrene′95型超合金 - Google Patents

耐疲労亀裂性のrene′95型超合金

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JP3233361B2 JP33676289A JP33676289A JP3233361B2 JP 3233361 B2 JP3233361 B2 JP 3233361B2 JP 33676289 A JP33676289 A JP 33676289A JP 33676289 A JP33676289 A JP 33676289A JP 3233361 B2 JP3233361 B2 JP 3233361B2
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Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 ニッケル基超合金が高性能を必要とする環境で広く使
われていることはよく知られている。そのような合金
は、1000゜F以上の高温で高強度その他の望ましい物性
を保持しなければならないジェットエンジン、陸上ガス
タービン、その他の機関に広く使用されて来ている。
これらの合金の多くはいろいろな体積割合(%)で
γ′析出物を含んでいる。このγ′析出物はこのような
合金の高い使用温度での高性能特性を担っている。Ren
e′95は市販の超合金でありγ′析出により強化した超
合金であって、この種の超合金で市販されている中では
最高強度を保有する超合金の一つである。
γ′析出物の相化学の特性は、ホール(E.L.Ha11)、
クー(Y.M.Kouh)およびチャン(K.M.Chang)によっ
て、1983年8月のアメリカ電子顕微鏡検査学会第41回年
会会報(Proceedings of 4lst Annual Meeting of Elec
tron Microscopy Society of America)第248頁の「析
出強化型超合金の相化学(Phase Chemistries in Preci
pitation−Strengthening Superalloy)」中でさらに詳
しく述べられている。
米国特許第2,570,193号、第2,621,122号、第3,046,10
8号、第3,061,426号、第3,151,981号、第3,166,412号、
第3,322,534号、第3,343,950号、第3,575,734号、第3,5
76,861号、第4,207,098号および第4,336,312号にはさま
ざまなニッケル基合金組成物が開示されている。これら
の特許は今日までに報告されたたくさんの合金化の開発
の代表であり、同じ元素をいろいろに組合せて、さまざ
まな物理的・機械的特性をもった合金系を生じさせる相
が形成されるように元素間の異なる機能的関連をつかも
うとしている。しかしながら、ニッケル基合金に関して
利用可能なデータは豊富にあるにもかかわらず、公知の
元素をある濃度で組合せて使用して合金を形成する場
合、そのような組合せが業界で一般化されている広い教
示範囲内に入るものであるにしても、特に、その合金を
従来使用されていた熱処理とは異なる熱処理を用いて加
工したときに、形成されたそのような合金が示すはずの
物理的・機械的性質をある程度の正確さをもって予想す
ることは、当業者にとってもいまだに不可能である。
そのようなニッケル基超合金の多くでますます重視さ
れ認識されて来ている問題は、製造時または使用中に亀
裂(割れ)が形成されたりあるいはそのような亀裂が発
生する原因が生じたりし易く、しかも現実問題としてこ
の亀裂がガスタービンやジェットエンジンなどのような
構造体中でその合金を使用している間に応力下で伝播ま
たは成長し得るということである。亀裂の伝播や拡大に
より部品の破壊その他の故障が起こり得る。亀裂の発生
および伝播に起因する可動機械部品の故障の結果は充分
に理解されている。ジェットエンジンの場合は特に重大
な危険を招くことになる。
「疲労耐性ニッケル基超合金およびその製法(Fatigu
e−Resistant Nickel−Base Superalloys and Metho
d)」と題する米国特許第4,685,977号は本出願の譲受人
に譲渡されている。この特許には、合金化学、γ′析出
物含量および結晶粒子構造に基づいて疲労亀裂伝播に対
して秀でた抵抗性を有する合金が開示されている。ま
た、そのような合金の製造方法も教示されている。
しかし、最近の研究がなされるまであまり良く理解さ
れていなかったことは、超合金で形成されている構造体
における亀裂の発生と伝播が、すべての亀裂が同じメカ
ニズム、同じ速度で、かつ同じ基準に従って発生・伝播
するような単純な現象ではないということである。対照
的に、亀裂の発生と伝播および亀裂現象は複雑であるこ
とが一般に認められて来ており、近年はそのような伝播
と応力のかかり方との間の相互の関連に関する新しい重
要な情報が集積されている。亀裂が拡大または伝播する
までに部材に応力がかけられる時間、かかる応力の強
さ、その部材に応力をかけたり除いたりする際の速度、
およびこの応力がかけられる経過がもたらす影響が合金
によっていろいろに変化することは、(米)国家航空宇
宙局(National Aeronautics and Space Administratio
n)との契約に基づいてあるひとつの研究がなされるま
で産業界では良く理解されていなかった。この研究は、
(米)国家航空宇宙局のNASAルイス研究センター(NASA
Lewis Research Center)から契約NAS3−21379の下で1
980年8月発行されたNASA CR−165123という技術レポ
ートに報告されている。「航空機タービンディスク用合
金の繰返し応力挙動の評価……その2最終報告」、ビー
・エー・カウレス、ジェー・アール・ウォーレンおよび
エフ・ケー・ホーク著(Evaluation of the Cyclic Beh
avior of Aircraft Turbine Disk Alloys“Part II,Fin
al Report,by B.A.Cowles,J.R.Warren and F.K.Hauke) このNASAの後援による研究の主要な知見は、疲労(疲
れ)現象に基づく伝播速度、すなわち疲労亀裂伝播(FC
P)の速度が、かけられた応力や応力のかかり方に対し
て必ずしも一様ではないということである。また、それ
より重要なことに、疲労亀裂伝播は、応力が部材に対し
て亀裂を拡大するようにかけられる場合のその応力をか
ける頻度によって実際変化するということが発見され
た。さらに驚くべきことに、NASAの後援によるの研究の
重大な発見は、それまでの研究で使用されていた高めの
頻度より低い頻度で応力をかける方が亀裂伝播の速度を
実際に増大させるということである。いいかえると、こ
のNASAの研究によって、疲労亀裂伝播には時間依存性が
あることが確かめられたということである。さらに、こ
の疲労亀裂伝播の時間依存性は、頻度のみに依存するの
ではなく、その部材が応力下に保持される時間、すなわ
ちいわゆる保持時間にも依存することが判明した。
この低めの応力頻度で異常な程増大した疲労亀裂伝播
が実証された後、産業界では、この新たに発見された現
象が、ニッケル基超合金をタービンおよび航空機エンジ
ンの応力がかかる部品に使用できる可能性の究極的な限
界を示しており、この問題を迂回して設計するためにあ
らゆる設計努力をしなければならないものと信じられて
いた。
しかし、亀裂伝播速度が大幅に低下していて高温強度
が良好であり、タービンや航空機エンジン内で高い応力
下で使用するニッケル基超合金製部品を構築できること
が発見されたのである。
超合金に一番要求される性質がジェットエンジンの構
築に関して必要とされるものであることは知られてい
る。必要とされる性質のうち、エンジンのいろいろな要
素によって必要とされる性質の組合せはさまざまである
が、普通、エンジンの可動部分に対して必要とされる性
質の方が固定部分に対して必要とされるものより多くて
厳しい。
鋳造合金材料ではある種の性質が得られないので、粉
末冶金技術によって部品を製造しなければならないこと
がある。しかし、ジェットエンジン用の可動部品の製造
の際に粉末冶金技術を使用することに伴う制限のひとつ
は、粉末の純度の問題である。もし粉末が小粒のセラミ
ックまたは酸化物などのような不純物を含有している
と、可動部品中でその小粒がある所は亀裂の発生が始ま
る潜在的に弱い点になる。そのような弱い点は本質的に
潜在的な亀裂である。そのような潜在的亀裂が存在する
可能性があるため、亀裂伝播速度を低下・抑制するとい
う問題がいっそう重要になる。本発明者は、合金組成の
調整とそのような金属合金の製造方法とを両方とも適用
することによって亀裂伝播を抑えることが可能なことを
発見した。
本発明によって、粉末冶金技術で製造することができ
る超合金が提供される。また、この超合金を加工処理し
て、最先端のエンジンディスク用に使用するのに優れた
性質を組合せて有する材料を製造する方法も提供され
る。ディスク材用に使用される材料に対して従来から必
要とされている性質には高い引張強さと高い応力破壊強
度が包含される。さらに、本発明の合金は時間依存性の
亀裂成長伝播に抵抗するという望ましい性質を示す。こ
のような亀裂の成長に対する抵抗性は部品の低サイクル
亀裂(LCF)寿命にとって本質的なものである。
タービンやジェットエンジンに使用する合金製品が開
発されるにつれて、エンジンやタービンの各種部分に使
用される部品に対してさまざまな性質の組合せが必要と
されることが明らかになって来た。ジェットエンジンの
場合、航空機のエンジンの性能要求が増大するにつれ
て、より進んだ航空機エンジンの材料に要求される要件
はさらに厳しくなり続けている。このいろいろな要件
は、たとえば、多くのブレード材用合金が鋳造状態で非
常に良好な高温特性を示すという事実に現われている。
しかし、ブレード材合金は中間の温度で不十分な強度を
示すので、鋳造ブレード合金からディスク材合金への直
接変換は極めてありそうもないことである。さらに、ブ
レード合金は鍛造するのが極めて困難であることが判明
しており、しかもディスク合金からディスクを製造する
のには鍛造が望ましいことが分かっている。また、ディ
スク合金の耐亀裂成長性はまだ評価されていない。した
がって、エンジン効率を上げると共に性能をさらに良く
するために、航空機エンジンに使用される特別な合金の
一群としてのディスク合金の強度と温度性能を改良する
ことが常に望まれている。
したがって、本発明に至った研究を遂行する上で求め
られていたことは、疲労亀裂伝播の時間依存性が小さい
かまたは最低であり、さらに疲労亀裂発生に対する抵抗
性が高く、しかもRene′95超合金の特徴である非常に高
い高温強度水準を保有するディスク合金の開発であっ
た。加えて、特性のバランス、特に引張、クリープおよ
び疲労の特性のバランスをとることが求められていた。
さらに、亀裂成長現象の抑制に関して確立されていたRe
ne′95合金系の強化が求められていた。
本発明の超合金組成物およびその加工処理方法の開発
では、疲労特性に着目し、特に亀裂成長の時間依存性を
扱った。
高強度合金物体における亀裂成長、すなわち亀裂伝播
の速度は、かかっている応力(α)と亀裂の長さ(a)
に依存することが知られている。これらのふたつのファ
クターは破壊メカニズムによって結び付けられて、単一
の亀裂成長駆動力すなわち応力度因子(stress intensi
ty factor)Kになる。この因子Kは に比例する。疲労条件下で疲労サイクル中のこの応力度
はふたつの成分、すなわち反復成分と静的成分のふたつ
から成るとすることができる。前者は、反復応力度の最
大の変化(ΔK)、すなわちKmaxとKminとの差を表わ
す。適度の温度の場合、静的破壊靭性KICが達成される
までは、亀裂成長は主として反復応力度(ΔK)によっ
て決定される。亀裂成長速度は数学的にはda/dN∝(Δ
K)と表わされる。Nはサイクルの数を示し、nは材
料に依存する。反復頻度と波形は亀裂成長速度を決定す
る重要なパラメーターである。所定の反復応力度では、
反復頻度が小さい方が亀裂成長速度も速くなり得る。疲
労亀裂伝播のこの望ましくない時間依存性の挙動は現存
するほとんどの高強度超合金で見ることができる。この
時間依存性の現象の複雑さに加えて、温度をある点より
高くすると、亀裂は、反復成分がまったくかからない
(すなわちΔK=0)で、ある強度Kの静的応力下で成
長することができる。設計の目標は、できるだけ小さく
てできるだけ時間依存性のないda/dNの値を見出すこと
である。応力度の成分は、亀裂成長が反復および静的の
両方の応力度、すなわちΔKとKの関数となるように、
ある温度範囲ではお互いに相互作用することができる。
発明の簡単な説明 したがって、本発明のひとつの目的は、亀裂発生に対
する抵抗性がより高くなったニッケル基超合金製品を提
供することである。
もうひとつ別の目的は、確立されている公知のニッケ
ル基超合金の亀裂が発生し易いという傾向を低下せしめ
る方法を提供することである。
また、別の目的は、反復する高応力下で使用される疲
労亀裂伝播に対する抵抗がより高くなった物品を提供す
ることである。
さらに、別の目的は、ある範囲の頻度に亘って反復し
て加えられる応力下の亀裂発生に対する抵抗性をニッケ
ル基超合金に付与できるようにする組成と方法を提供す
ることである。
その他の目的の一部は以下の説明から明らかであろう
し、一部は以下で指摘する。
本発明の一般的な側面のひとつにおいて、本発明の目
的は、次の概略組成を有する組成物を提供することによ
って達成することができる。成 分 組成物中の濃度(重量%) (下限量)〜(上限量) Ni 残 部 Co 4〜12 Cr 10〜16 Mo 2〜6 Al 2.5〜4.5 Ti 1.5〜3.2 Ta 5.0〜6.0 Nb 1.0〜3.0 Zr 0.0〜0.10 V 0.0〜0.5 C 0.0〜0.20 B 0.0〜0.10 W 0.0〜1.0 本発明のもう一つの側面おいて、本発明の目的は下記
の概略含有量の組成を有する組成物を作成することによ
り達成できる。成 分 組成物中の濃度(重量%) Ni 残 部 Co 4〜12 Cr 10〜16 Mo 2〜6 Al 2.5〜4.5 Ti 1.5〜3.2 Ta 5〜6 Nb 1〜3 Re 0.0〜3.0 Hf 0.0〜0.75 Zr 0.0〜0.10 V 0.0〜0.5 C 0.0〜0.20 B 0.0〜0.10 W 0.0〜1.0 Y 0.0〜0.10 発明の詳細な説明 本発明者は、高温で高強度を必要とする構造体に使用
されている現在市販の合金を研究することによって従来
の超合金があるパターンをもっていることを発見した。
このパターンは、前記の最終レポートNASA CR−165123
にあるデータを本発明者が考案した方法で行なったプロ
ットに基づくものである。本発明者は、1980年のこのNA
SAレポートのデータを、第1図に示した座標のパラメー
ターを用いてプロットした。添付の第1図を見ると明ら
かなように、これらのデータはほぼ対角線上に並んでい
る。
第1図では、亀裂成長速度(インチ/サイクル)が極
限引張強さ(ksi)に対してプロットされている。個々
の合金はこのグラフ上にプラス(+)の記号で示してあ
るが、この記号は、それぞれの合金に特徴的な極限引張
強さ(ksi)におけるその合金の対応する特性である亀
裂成長速度(インチ/サイクル)を示している。見て分
かるように、「900秒滞留時間」と表示した直線は、こ
れら従来周知の合金の亀裂成長速度と極限引張強さとの
間の特徴的な関係を示している。
このグラフの底部には、0.33ヘルツ(Hz)すなわちい
いかえるとより高頻度で行なった亀裂伝播速度試験に関
して、表示した+の記号の点に対応する類似のデータが
示されている。このグラフの上部に示したそれぞれの合
金に対して菱形で示されたデータは、0.33Hzと表示した
直線に沿った領域にある。
第1図から、長い滞留時間に対してこのグラフの右下
隅の座標をもつ合金組成物はないということが明らかに
なった。実際、滞留時間が長い方の亀裂成長試験に対す
るデータの点はすべてこのグラフの対角線に沿って並ん
でいるので、超合金用途に対して要求されるような高温
で高強度を示すように形成された合金組成物はいずれも
このグラフの対角線に沿ったどこかに位置することにな
るように思われた。いいかえると、第1図にプロットし
たパラメーターに従って長い滞留時間で高い極限引張強
さと低い亀裂成長速度とを両方とも有する合金組成物を
見出すことはできないように見えた。
しかし、本発明者は、高い極限強度と低い亀裂成長速
度とのユニークな組合せを達成することが可能な組成を
有する合金を製造することが可能であることを発見し
た。
本発明者が第1図にプロットしたデータから仮説的に
到達した結論のひとつは、クロム濃度が各種合金の亀裂
成長速度に対してなんらかの影響を及ぼし得るというこ
とであった。このため、本発明者は亀裂成長速度に対し
てクロム含量(重量%)をプロットした。このプロット
の結果を第2図に示す。この図で、クロム含量は約9%
から約19%まで変化していることが分かり、対応する亀
裂成長速度の測定値は、クロム含量が増大すると共に一
般に亀裂成長速度が低下することを示している。このグ
ラフによると、クロム含量が低くて、しかも同時に、長
い滞留時間での低い亀裂成長速度も有する合金組成物を
考案することは極めて困難であるかまたは不可能である
かもしれないように思われた。
しかしながら、本発明者は、ある超合金組成物の成分
を組合せて適切に合金化することによって、低いクロム
含量と長い滞留時間での低い亀裂成長速度とを両方とも
有する組成物を形成することが可能であることを見出し
た。
試験片に応力をかける際の保持時間と亀裂成長が変化
する速度との関係の一例を第3図に示す。この図では、
亀裂成長速度の対数を縦軸に、滞留時間すなわち保持時
間(秒)を横軸にプロットしてある。5×10-5という亀
裂成長速度は、反復応力度因子が であれば理想的な速度であると考えられるかもしれな
い。もし理想的な合金が形成されたら、その合金は亀裂
すなわち試片に応力をかけている保持時間の間ずっとこ
の速度を示すであろう。そのような現象は第3図の直線
(a)で表わされるであろう。この直線は、試片に応力
がかかっている間、亀裂成長速度は保持時間すなわち滞
留時間と本質的に無関係であることを示している。
これとは対照的に、現実の亀裂生成現象により近い現
実に即した非理想的な亀裂成長速度を、第3図に曲線
(b)として示す。数秒以内の非常に短い保持時間の
間、理想的な直線(a)と実際的な曲線(b)はあまり
大きく離れないことが分かる。このように高い頻度すな
わち短い保持時間で試料に応力をかける場合には、亀裂
成長速度は比較的低い。
しかし、試料に応力をかける保持時間が長くなると、
従来の合金に対する実験で得られる結果は曲線(b)に
従う。したがって、応力負荷の頻度が低くなり応力負荷
に要する保持時間が長くなると、直線的な速度からのず
れが大きくなることが分かる。約500秒という保持時間
を任意に選択してみると、第3図で見られるように、亀
裂成長速度は標準的な速度の5×10-5から5×10-3へと
100倍も増大し得る。
繰返すと、亀裂成長速度が時間に依存しなければ望ま
しいことであろうし、これは、理想的には、保持時間が
長くなり応力をかける頻度が低くなったとき曲線(a)
の経路によって表わされることになろう 驚くべきことに、本発明者は、超合金の成分を少しだ
け変えることによって、そうして得られる合金の長い滞
留時間での亀裂成長伝播に対する抵抗性を大きく改良す
ることが可能であることを見出した。換言すると、合金
化の修正により亀裂成長の速度を低下させることが可能
であることが判明したのである。さらに、この合金の処
理によっても増大させることが可能である。そのような
処理は主として熱処理である。
実施例 HK−101と呼ぶ合金を製造した。この合金の組成は本
質的に以下の通りであった。成 分 濃度(重量%) Ni 残 部 Co 8 Cr 13 Mo 4 Al 3.5 Ti 2.5 Ta 5.6 Nb 1.9 Re 0.0 Hf 0.0 Zr 0.06 V 0 C 0.05 B 0.03 W 0.0 この合金を各種の試験に供した。その試験結果を第4
〜8図にプロットした。ここで、「−SS」の文字がつい
ているものは、その合金に対してとったデータが「スー
パーソルバス」処理された材料に対して採取されたもの
であることを示している。すなわち、この材料に対して
行なった高温の固体状態熱処理は、強化性のγ′析出物
が溶解する温度よりは高くて初期融点よりは低い温度で
行なった。その結果、通常はその材料中の結晶粒度が粗
くなる。強化性のγ′相はその後の冷却および時効化の
際にふたたび析出する。
次に第4図を見れば、インチ/サイクルで表示した亀
裂伝播速度を゜F/分で表示した冷却速度に対してプロ
ットしたグラフが示されている。Rene′95−SSおよびHK
101−SSの試験片を最大応力度因子で保持する時間1000
秒、温度1200゜Fで大気中で試験した。明らかに、試験
した試料のすべての冷却速度についてHK101−SSはRen
e″95−SSより亀裂成長速度は低く、HK101−SSの亀裂成
長速度は2〜20倍遅い。このような超合金から作製した
部品について、冷却速度の範囲は100゜F/分〜600゜F/
分であることが期待されることに注意すべきである。
上記のことから、成分決定およびその相対的濃度に基
づいて新規な成分の組合せを持つ合金を本発明が提供す
ることは明らかである。本発明により提供される合金が
亀裂伝播停止に関して新規で独特の性能を保有している
こともまた明らかである。第4図において明らかなHK10
1−SS合金の亀裂伝播速度da/dNが低いことは特異に新規
な注目すべき結果である。
これは全く驚くべきことである。なぜならば、Rene′
95合金の成分と本発明の合金の成分とは少しだけ異なる
だけであるからである。この少しの相違が降伏現象に大
幅な変化をもたらすうえで極めて重要であり、長いサイ
クルによる疲労試験での亀裂伝播速度を増加することな
く強度を向上するうえで特に重要である。添付図面のグ
ラフからも明らかなように、合金成分とその比率のわず
かの差によって、強度およびその他の性質の組合せを高
度に望ましくするとともに予想外に低い亀裂伝播速度が
もたらされることは意外である。
本発明の合金のその他の特性に関しては、第5図、第
6図、第7図および第8図において示す。
本発明の合金はいくつかの点においてRene′95と類似
している。本発明合金とRene′95−SSの試料の比較試験
を実施して、本発明合金とRene′95−SS合金との比較の
根拠を提供した。750゜Fで得られた試験結果を第5図お
よび第6図に、1400゜Fで得られた試験結果を第7図お
よび第8図にプロットした。
はじめに、第5図にプロットした試験結果を見る。第
5図には、HK101−SSとRene″95−SSについて750゜Fで
実施した試験の降伏応力(ksi)と冷却速度(゜F/分)
との関係をプロットしてある。それは、HK101−SS合金
と高強度を有するとして周知の合金R′95−SSとが750
゜Fにおける降伏応力について本質的に同等であること
の証拠となる。
HK101−SSとRene″95−SSの試料はともに粉末冶金技
法により作成し、たがいに比較するのに極めて適してい
る。
第6図では、上記の実施例の合金HK101−SSから作成
した試料と、比較用のRene′95−SSの試料とについて引
張強さ(ksi)を冷却速度(゜F/分)に対してプロット
した。試験試料の測定温度は750゜Fである。知られてい
る範囲の市販の超合金の中でRene′95は最高強度の超合
金の一つであることはよく知られている。第6図から、
HK101−SS合金およびRene′95−SS合金のそれぞれの試
料について実施した引張強さ測定により、HK101−SS合
金がRene′95−SS材料と本質的に同等の極限引張強さを
実際に保有することを示していることが明らかである。
次に、第7図および第8図には、1400゜Fで試験したR
ene′95−SSおよびHK101−SSの二つの合金の試料につい
て、1400゜Fでの降伏点および引張強さと冷却速度(゜F
/分)との関係がプロットされている。HK101−SSはRen
e′95−SSと本質的に同等である。
さらに、本発明の合金はRene′95−SSとほとんど同等
の引張強度特性の組合せを保有することが、第5図、第
6図、第7図および第8図にプロットしたデータを比較
することによりわかる。
また、疲労亀裂伝播停止に関しては本発明の合金はRe
ne′95よりはるかに優れており、特に本発明の合金を工
業生産用に用いる場合の冷却速度である100゜F/分〜60
0゜F/分の冷却速度で作成された合金においてそうであ
る。
Rene′95合金と比較してHK101合金の成分を比較的少
し変化させて疲労亀裂伝播速度を顕著に向上させたこと
が本発明の成果の注目すべき点である。
合金組成の小さい変更を説明するためにRene′95およ
びHK101の成分の一覧表を示す。
第1表 成 分 HK101 Rene′95 Ni 61.36 62.43 Co 8 8 Cr 13 13 Mo 4 3.5 Al 3.5 3.5 Ti 2.5 2.5 Ta 5.6 0 Nb 1.9 3.5 Zr 0.06 0.05 C 0.05 0.01 B 0.03 0.01 W 0 3.5 上記第1表から、Rene′95合金組成とHK101合金組成
との大きな差異は、本発明の合金から3.5重量%のWと
1.6重量%のNbとを除去し5.6重量%のTaを添加している
ことである。
組成のこの変更により合金の基本的強度特性はRene′
95と本質的に同じとなり、同時に合金の長い滞留時間の
ときの疲労亀裂停止がもたらされると考えられる。しか
れば、これは厳密には図に示しすでに広範に検討したデ
ータを証拠とする組成の変更の結果である。
特性に顕著な変化を起こさないその他の成分の変更、
特に一部の成分の微量の変更は可能である。たとえば、
HK101合金において発見された特有に有利な特性の組合
せをかえたり損なったりしない範囲でReを少量添加して
もよい。
独特に有利な特性、特に亀裂伝播停止に関してそれを
もたらす成分および成分の含有量という点から本発明の
合金を説明してきたが、新規な亀裂伝播阻止を妨げない
割合の範囲でY,Hf等のその他の成分を組成に含めること
が可能であることははっきり理解されたい。本発明の合
金の特性の新規で価値のある組合せを損なうことなく本
発明の合金に0〜0.1%の少量のYを添加してもよい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、650℃での疲労亀裂伝播(30ksiにおけるΔ
K)について、極限引張強さ(ksi)に対して疲労亀裂
成長(インチ/サイクル)を対数目盛りでプロットした
グラフである。 第2図は、第1図と同様な試験結果をプロットしたグラ
フであるが、横軸はクロム含量(重量%)を表わしてい
る。 第3図は、試験片に反復して応力をかけた場合の保持時
間(秒)に対して亀裂成長速度の対数をプロットしたグ
ラフである。 第4図は、対数目盛りの疲労亀裂成長速度da/dN(イン
チ/サイクル)を対数目盛りの冷却速度(゜F/分)に
対してプロットしたグラフである。試験条件:R=0.05、
空気中、1200゜F、 第5図は、750゜Fにおける引張試験結果について、降伏
応力(ksi)を対数目盛りの冷却速度(゜F/分)に対し
てプロットしたグラフである。 第6図は、750゜Fにおける引張試験結果について、極限
引張強さ(ksi)を対数目盛りの冷却速度(゜F/分)に
対してプロットしたグラフである。 第7図は、1400゜Fにおける引張試験結果について、降
伏応力(ksi)を対数目盛りの冷却速度(゜F/分)に対
してプロットしたグラフである。 第8図は、1400゜Fにおける引張試験結果について、極
限引張強さ(ksi)を対数目盛りの冷却速度(゜F/分)
に対してプロットしたグラフである(ただし、溶液温度
からの冷却速度は360゜F/分である)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−30037(JP,A) 特開 昭58−120758(JP,A) 特開 昭60−141843(JP,A) 特開 昭60−141842(JP,A) 特開 昭63−114933(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 19/05 C22F 1/10

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の成分を以下の割合で含有する、高強
    度で疲労亀裂伝播速度の低いニッケル基合金組成物:成 分 組成物中の濃度(重量%) Ni 残 部 Co 4〜12 Cr 10〜16 Mo 2〜6 Al 2.5〜4.5 Ti 1.5〜3.2 Ta 5.0〜6.0 Nb 1.0〜3.0 Re 3.0以下 Hf 0.75以下 Zr 0.10以下 V 0.5以下 C 0.20以下 B 0.01〜0.10 W 1.0以下 Y 0.1以下
  2. 【請求項2】スーパーソルバス熱処理後に600゜F/分以
    下の速度で冷却されたものである、請求項1記載の組成
    物。
  3. 【請求項3】スーパーソルバス熱処理後に50〜600゜F/
    分の速度で冷却されたものである、請求項1記載の組成
    物。
  4. 【請求項4】以下の成分を以下の割合で含有する高強度
    で疲労亀裂伝播速度の低いニッケル基合金組成物成 分 組成物中の濃度(重量%) Ni 残 部 Co 8 Cr 13 Mo 4 Al 3.5 Ti 2.5 Ta 5.6 Nb 1.9 Zr 0.06 C 0.05 B 0.03
  5. 【請求項5】スーパーソルバス熱処理後に600゜F/分以
    下の速度で冷却されたものである、請求項4記載の組成
    物。
  6. 【請求項6】スーパーソルバス熱処理後に50〜600゜F/
    分の速度で冷却されたものである、請求項4記載の組成
    物。
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