JP3231135B2 - 生体インプラント材料及びその製造方法 - Google Patents
生体インプラント材料及びその製造方法Info
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及びその製造方法に関する。この生体インプラント材料
は、整形外科、形成外科、脳外科、口腔外科、歯科等の
医療分野に於いて人工骨補填部材として好適に利用され
得る。
優れ、その焼結体は骨と化学的に結合あるいは骨に置換
される材料であることが知られている。本発明者らは既
に生体親和性が高く且つ高強度なリン酸カルシウム焼成
体の製造方法として、特公昭60−50744号公報に
おいて、カルシウム/リン原子比1.4〜1.75のリン
酸カルシウム塩を主体とする粉末に、焼成後のリン酸カ
ルシウム焼成体に対し0.5〜15重量%のアルカリ土
類金属酸化物−リン酸系フリットを含有せしめ、所定形
状に成形し焼成する方法を提案した。この方法により生
体親和性に優れ且つ機械的強度の高い生体インプラント
材料が得られた。これらのインプラント材料を生体に移
植すると骨組織と化学的に結合し、高強度のため容易に
破損することなく、良好な結果を示した。
の材料でも新生骨との結合には約1ヶ月を要し、更なる
生体親和性の向上、特に術後初期の骨増殖性の向上が望
まれた。またインプラント材料では多孔体が必要とされ
ることもあるが、従来の多孔体では強度が低く操作中に
破損し易く、操作性が悪いため焼成後の切削加工性が著
しく悪かった。また多孔体に薬物を含浸し生体内に補填
する場合には、多量の薬物を安定して担持し、緩慢に放
出するインプラント材が望まれていた。
骨増殖性に優れ、且つ薬物の安定した担持にも適し、比
較的高い機械的強度も有する生体インプラント材料およ
びその製造方法を提供することにある。
ラント材料が、リン酸カルシウム系セラミックスよりな
る大きさ20〜800μmの連結した粒子の群を備え、
各々の粒子の内部に2μm以下の連続した細孔が存在し
且つそれら粒子間に三次元的に連通した2〜200μm
の気孔が存在することを特徴とする。
末とリン酸カルシウム系フリットとの混合物からなる平
均粒子径5μm以下の微細なリン酸カルシウム系原料粉
末を、粒子径20〜800μmの顆粒状に造粒し、10
〜60Kg/cm2の圧力で成形した後に700℃〜1
400℃で焼成することを特徴とする。
以下の通りである。本発明インプラント材料の優れた生
体親和性は、細孔を備えた粒子が連結して形成される2
重気孔構造(バイモーダル気孔分布)による。特に、そ
の結晶構造が、水酸アパタイト(以下、「HAP」とも
いう。)と第三リン酸カルシウム(以下、「TCP」と
もいう。)からなる複合構造のときに2重気孔構造との
相乗効果が期待される。
例にして説明すると、この粒子の間の2〜200μmの
気孔は体液の侵入を容易にして新生骨の成長を促進す
る。更に粒子内の微細な連続気孔がHAP以外の構成相
であるTCPの溶出を容易にして新たな気孔を形成し、
生体骨を誘導する。こうして、優れた生体親和性を発揮
する。
は、略球形状の粒子がネックを形成して連結した組織に
よるものである。本インプラント材料は薬物を含浸する
担体にも適しており、これは気孔径分布に基因し、略球
形状の粒子の間の気孔は薬物を含浸した溶液の自由拡
散、侵入を容易にし、且つ粒子内の微細な数多くの気孔
は薬物担持のサイトになり多量の薬物の含浸を可能にす
る。逆に薬物の放出の際には、略球形状の粒子内から粒
子間への放出は粒子内の細い気孔を経由するため比較的
緩慢に長期に亘って薬物を放出し、インプラント材内部
でも一旦粒子間に放出された薬物は比較的大きい粒子間
気孔により自由拡散で迅速にインプラント材の外へ供給
される。
て、リン酸カルシウム系原料粉末としては、水酸化アパ
タイト、第三リン酸カルシウムをはじめとするリンとカ
ルシウムの内一種以上を含む原料であれば特に限定はな
い。但し、調合量の合計のカルシウム/リン(Ca/
P)原子比が1.4〜1.75であることが生体親和性の
点で好ましい。例えば、HAPのみ(単味)、又はHA
P粉末と微量の炭酸カルシウムの混合粉末、又は水酸化
カルシウム粉末とTCP粉末の混合粉末が用いられる。
ルシウム系のガラスフリット(粉末)の混合物である。
この混合粉末は焼成プロセスにより化学的に反応しフリ
ットは変化して、HAPとTCPの混合結晶相、あるい
はTCP相となる。この混合粉末が非常に優れる点は、
焼成中に液相が生成し微細なHAP粉末間、および成形
した略球形状の粒子間の接合(ネック形成)を著しく促
進することである。そして、このネックの成長が高い気
孔率と機械的強度を両立させる極めて重要な因子であ
る。
は得られるが、何れの場合でも焼成体のネックの成長が
不十分で強度が低く粒子の脱落が起こりうる。このHA
P粉末とリン酸カルシウム系ガラスフリット(粉末)の
混合物の場合にのみ、50〜70体積%の高い気孔率を
持つにも関わらず、手で擦っても粒子の脱落等は起こら
ず、指等では潰れないかなり高い強度を示した。ダイヤ
モンド砥石を用いた湿式加工では容易に破損することな
く、良好に切削加工が可能であった。
粒子径が5μmを越えて大きいと粒子内の微細粉末間の
ネックが進行し難いばかりか略球形状の粒子間ネックの
成長もしない。従って、焼成体から粒子が脱落したり、
焼成体が低い強度のものとなり易い。よって、5μm以
下であることが必要であり、好ましくは平均粒子径3μ
m以下である。尚、出発原料の粒子径が小さくなると、
インプラント材料の粒子中に形成される微細気孔の径が
小さくなる。
μmの略球形状の二次粒子に造粒する。この造粒法とし
てはスプレードライヤーを用いた噴霧乾燥が好ましい。
具体的には原料粉末の混合物にポリエチレンオキサイド
(PEO)あるいはエマルジョン型アクリル系バインダ
などの有機バインダーと分散剤、水などを加えて粘度5
〜30cpのスラリーに調整し、スプレードライヤで2
0〜800μmのほぼ球状の二次粒子に造粒する。
ト材料の構造により選ばれ、スプレードライヤーの操作
条件(粉末の濃度、スピンドルの回転速度、乾燥温度)
により制御できる。二次粒子の径が大きいとインプラン
ト材料に形成される粒子間の気孔径も大きくなる。なお
スプレードライヤーの条件によっては二次粒子内に数μ
m〜数十μm以上の空洞ができる場合もあるが、そのま
ま使用することができる。
単に「球状粒子」ともいう。)を、1〜100Kg/c
m2の成形圧で金型プレス、ラバープレス、水中プレス
などの加圧成形法にて成形する。HAP粉末とリン酸カ
ルシウム系フリットとの混合物を原料とする場合、好ま
しい成形圧は10〜60Kg/cm2である。これらの
成形体は、約60〜75%の気孔率を有する。
合、その成形圧力は金型プレスでは500〜800Kg
/cm2、静水圧プレスでは1000〜2000Kg/
cm2であるのに対して、本発明製造方法における成形
圧力は極めて低いのが特徴である。即ち、本発明では、
造粒した球状粒子をこの様な低い圧力で成形すると、造
粒した球状粒子が潰れることなく球状粒子同士が均質に
接触する。その結果、バイモーダル気孔径分布を持った
インプラント材料が製造できるのである。
越えると造粒した球状粒子が潰れ目的とするバイモーダ
ルの気孔径分布が得られない。他方、成形圧力が1Kg
/cm2未満では造粒粒子同士の接触が不十分で均質な
成形体が得られず、焼成してもネックの成長が不十分と
なる。そのため、焼成体の強度が低く、切削加工に耐え
られない。
に、球状粒子とほぼ同等の大きさの有機質可燃性粒子を
混入して成形しても良い。また、球状粒子を遠心分離機
にかけて遠心力で乾式成形すると、造粒した粒子に均質
に成形圧が加わり、均質な成形体を得るのに好ましい。
金型成形のように周縁部と中心部とで圧力が不均等にな
るというような不具合が生じないからである。
0℃で焼成することにより、上記のインプラント材料が
得られる。特にHAP粉末とリン酸カルシウム系フリッ
トを用いた場合には、1000〜1300℃の焼成が好
ましい。焼成温度が700℃より低いと粒子間のネック
成長が進行し難く、粒子の連結した上記インプラント材
料が得られない。1400℃より高いと緻密化が進行し
て良好な気孔分布を有した多孔体とならない。
0〜1100℃までの焼成では緻密化は進行せず気孔を
維持し、微粒子間及び二次粒子球間のネックが成長す
る。その結果1100℃での焼成では、二次粒子がネッ
クを形成して連結した構造が形成され、その二次粒子と
二次粒子の隙間に三次元的に連結した2〜200μmの
気孔が形成され、更にその二次粒子内にも原料微粒子間
のネック成長により2μm以下の連続した気孔が形成さ
れ、2重気孔構造を有する生体インプラント材料が得ら
れる。
P微粒子間、二次粒子間で反応して、HAPとTCPの
混合結晶相となる。1100℃を越える温度では二次粒
子内の微細気孔の量と径は徐々に減少するが、造粒した
二次粒子間の気孔は減少せず強度の向上したインプラン
ト材料が得られる。従って焼成温度は実使用時の用途に
より、気孔量と機械的強度のバランスから選定できる。
カルシウム系ガラスフリット(CaO−P2O5が90%
モル以上)5重量%との混合粉末にポリエチレンオキサ
イド系のバインダを添加した水系のスラリーを調製し、
スプレードライヤーで平均粒子径約80μmのほぼ球状
の粒子を造粒した。
0.5〜500Kg/cm2 の各圧力で直径10mmの
円柱試料に成形した。得られた成形体を電気炉にて昇温
速度300℃/時間で、各温度で2時間保持の焼成を行
うことによって、試料No.1〜14を製造した。これ
らの試料について、製造条件と特性を表1に示す。
の範囲に属するので、25〜73%という高い気孔率を
有し、且つ指等で擦っても容易に粒子が脱落することの
なく、通常のハンドリングでは破損しないものであっ
た。そして、X線回折で表面の結晶相を同定したとこ
ろ、すべてTCP相(30%)を含んだHAP−TCP
の複合結晶相となっていた。従って、これら試料と同質
の構造体は、高強度且つ生体親和性に優れたインプラン
ト材料となることが明らかとなった。
o.5と試料No.12)の走査型電子顕微鏡(以下、
「SEM」と略記する。)観察写真を示す。図1(試料
No.5)及び図2(試料No.12)より、本発明に
属する試料は、約80μmのリン酸カルシウム系セラミ
ックスの二次粒子が連結した構造からなり、その二次粒
子の隙間に三次元的に連結した10〜数十μm程度の気
孔を有していることが、判明した。しかも個々の二次粒
子は微細な連結した一次粒子からなっており、少なくと
も1μm以下の連通した気孔が観察された。すなわち、
試料全体として2重(バイモーダル)気孔分布構造を備
えることが確認された。No12では粒子内の緻密化が
進行している。
o.12の水銀圧入法による細孔径分布をそれぞれ示し
た。それによると数μm〜100(装置限界)μmの大
きい気孔と2μm以下の微細気孔のバイモーダルの気孔
分布が見られた。このことは、図1及び図2で示したS
EMの観察結果と基本的に一致する。ただし、水銀圧入
法による細孔径分布では、その原理上、連続した気孔の
最も狭い気孔径と平衡な圧力で圧入が律速されるため
(インクボトム効果)、大気孔が著しく過小評価されて
いる。従って、水銀圧入法による実際の分布の定量は不
可能で、SEMの観察結果のほうが信頼性が高いと考え
られる。
9重量%と炭酸カルシウム1重量%との混合粉末を用い
た以外は実施例1と同様に実施例2の試料を製造した。
その特性を製造条件とともに試料No.15〜20とし
て表2に示す。
HAP粉末85重量%とリン酸カルシウム系ガラスフリ
ット(CaO−P2O5が90%モル以上)15重量%の
混合粉末を用いた以外は実施例1と同様に実施例3の試
料を製造した。その特性を製造条件とともに試料No.
21〜26として表2に示す。
モーダル気孔径分布の多孔体が得られたものの、表2中
に示した様に、実施例1のものと比較すると指で軽く擦
っても粒子の脱落が起こり易く、機械的強度もやや低か
った。
ぼ球状の二次粒子が連結したバイモーダル気孔径分布の
良好な多孔体が得られ、指で軽く擦っても粒子の脱落は
起こらず、機械的強度も高かった。実施例1との違いは
その構成される結晶相がTCPであることであった。
圧0.5Kg/cm2で比較例1の試料を製造した。その
特性を製造条件とともに試料No.27〜30として表
3に示す。実施例1と同様の原料粉末を用い、成形圧5
00Kg/cm2で比較例2の試料を製造した。その特
性を製造条件とともに試料No.31,32として表3
に示す。
P粉末95重量%とリン酸カルシウム系ガラスフリット
5重量%との混合粉末を用いて、実施例1と同様に比較
例3の試料を製造した。その特性を製造条件とともに試
料No.33,34として表3に示す。
の平均粒子径を約10μmとして実施例1と同様に比較
例4の試料を製造した。その特性を製造条件とともに試
料No.35,36として表3に示す。実施例1と同様
であるが、その焼成温度を500℃として比較例5の試
料を製造した。その特性を製造条件とともに試料No.
37,38として表3に示す。
し、強度も低く、ハンドリングに耐える焼成体ではなか
った。これは、造粒粒子の均質な接触・充填が困難で、
成形体中に大きな空洞が生じたことによると考えられ
る。
れ高密度の成形体となり、1100℃で焼成すると単一
気孔径の多孔体、1300℃で焼成すると気孔の無い緻
密な高強度インプラント材料となった。比較例3の試料
は、焼成体の強度が何れも低く、指で擦ると粒子が容易
に脱落し、軽いハンドリングでも形状を保持しなかっ
た。これは、原料粉末間および球状粒子間のネックの成
長がほとんど進行しなかったことによると考えられる。
気孔がほとんど形成されず単一気孔径のインプラント材
料となった。比較例5の試料は、焼成体のネックの成長
は起こらず、粒子の脱落が起こり容易に破損した。
して試料を製造した。その結果、成形圧に関わらず緻密
化が進行し、三次元に連結した気孔もなく閉気孔が残存
するだけであった。
良好で、且つ薬物の担持性にも優れた生体インプラント
材料として有用である。
で、(A)は、倍率200、(B)は、倍率2000の
走査型電子顕微鏡写真である。
ので、(A)は、倍率200、(B)は、倍率2000
の走査型電子顕微鏡写真である。
入法により測定した結果を示すグラフである。
圧入法により測定した結果を示すグラフである。
Claims (3)
- 【請求項1】 リン酸カルシウム系セラミックスよりな
る大きさ20〜800μmの連結した粒子の群を備え、
各々の粒子の内部に2μm以下の連続した細孔が存在し
且つそれら粒子間に三次元的に連通した2〜200μm
の気孔が存在することを特徴とする生体インプラント材
料。 - 【請求項2】 リン酸カルシウム系セラミックスが主た
る結晶相として水酸アパタイト及び第三リン酸カルシウ
ムを含むものである請求項1 に記載の生体インプラン
ト材料。 - 【請求項3】 水酸アパタイト粉末とリン酸カルシウム
系フリットとの混合物からなる平均粒子径5μm以下の
微細なリン酸カルシウム系原料粉末を、粒子径20〜8
00μmの顆粒状に造粒し、10〜60Kg/cm2の
圧力で成形した後に700℃〜1400℃で焼成するこ
とを特徴とする生体インプラント材料の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11414493A JP3231135B2 (ja) | 1993-04-16 | 1993-04-16 | 生体インプラント材料及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP11414493A JP3231135B2 (ja) | 1993-04-16 | 1993-04-16 | 生体インプラント材料及びその製造方法 |
Publications (2)
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JPH06296676A JPH06296676A (ja) | 1994-10-25 |
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JP11414493A Expired - Lifetime JP3231135B2 (ja) | 1993-04-16 | 1993-04-16 | 生体インプラント材料及びその製造方法 |
Country Status (1)
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JP2003062061A (ja) * | 2001-08-22 | 2003-03-04 | Ngk Spark Plug Co Ltd | 生体インプラント材料及びその製造方法 |
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-
1993
- 1993-04-16 JP JP11414493A patent/JP3231135B2/ja not_active Expired - Lifetime
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