JP3230706B2 - ビスコース繊維の製造方法 - Google Patents

ビスコース繊維の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は染色性及び湿潤時の強伸
度が優れたビスコース繊維を製造する方法に関するもの
である。特に衣料用、フロッキー用その他の染色性と湿
潤時の強伸度の向上が期待される用途分野に供して、有
用なビスコース繊維を合理化された手段で連続的に製造
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、染色性に優れたビスコース繊
維を連続的に製造する方法は、例えば特公昭43−26
341号公報、および特公昭43−16663号公報に
より知られている。
【0003】前記特公昭43−26341号公報の場合
は、高重合度ビスコースの低酸低温紡糸法によるビスコ
ース繊維の製造において、再生未完結の残存γ価2〜2
0%の切断糸条を直ちに硫酸ソーダーとアルカリよりな
るアルカリ浴で処理を行い、ついで再生を完結させる製
造法である。又前記特公昭43−16663号公報の場
合は、同様の高重合度ビスコースの低酸低温紡糸法によ
るビスコース繊維の製造において、再生調整浴を設け残
存γ価が25〜45%になるまで再生せしめ、次に空気
中にて無緊張で残存γ価が10〜35となるまで再生せ
しめて後50%以上の分解浴でビスコースのγ価の5〜
15%まで分解して空気中に取り出しさらに最終の熱浴
中に導入して完全に分解再生する製造法である。
【0004】しかしながら、特公昭43−26341号
公報に記載されている方法は、アルカリ浴で処理を行う
ため、特に湿潤時の強伸度の低下が避けられない。又特
公昭43−16663号公報に記載されている方法は、
到達できる染色性と湿潤時の強伸度が低く、近年の後化
工における高速化及びビスコース繊維のファッション商
品としての要求を満足できにくいという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は高重合度ビス
コースの低酸低温紡糸法によるビスコース繊維の製造に
おける前記従来の欠点、即ちアルカリ浴で処理を行うこ
となく又染色性と湿潤時の強伸度を大幅に向上させたビ
スコース繊維の製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の手段、即ち本発明は、高重合度ビスコースの低酸低温
紡糸法によるビスコース繊維の製造において、再生遅延
浴を設け、再生過程での糸条の残存γ価を30〜40及
び糸条の温度を10℃以下に調整し、引き続き硫酸2g
/l以下、温度95℃以上の分解浴を通して再生を完結
させる事を特徴とするビスコース繊維の製造方法であ
り、特に、ビスコース繊維が、10ミクロン以上のミク
ロボイドを形成することなく、繊維表面に多数の20〜
100オングストロームの超ミクロボイドを形成してい
るビスコース繊維の製造方法である。
【0007】本発明における第1工程は第1浴でのビス
コースの凝固工程であるが一般に行われている低酸濃
度、低温浴でよい。第1浴の最適条件はビスコース条件
および紡糸速度、浴温度、浴長等の紡糸条件と関連する
ので、これのみを単独に規制することはできないが、一
般的な範囲として硫酸濃度15〜30g/l、硫酸亜鉛
濃度0.1〜3g/l、硫酸ソーダー濃度100g/l
以下、温度28℃以下である。
【0008】本発明の第2工程も一般に行われている低
酸、低温の再生浴中にて再生せしめ、40〜120%延
伸する工程である。再生浴の最適条件は前述の第1浴と
同様に紡糸条件と関連するのでこれのみを単独に規制す
ることはできないが、糸条の最適延伸点で延伸するため
に残存γ価を35〜45の範囲まで再生する必要があ
る。低酸、低温の再生浴は糸条の再生分解を急激に進行
させないものであれば良く硫酸濃度5〜15g/l、硫
酸亜鉛濃度3g/l以下、硫酸ソーダー濃度50g/l
以下、浴温10〜30℃である。
【0009】本発明の第3工程は再生過程の残存γ価を
30〜40及び糸温度10℃以下の糸条に調整する工程
である。即ち本工程は本発明において特に重要であり、
本発明で特定する条件を満足する場合にはじめて本発明
の所期の目的となる効果がえられる。
【0010】本発明の第3工程は残存γ価が35〜45
の延伸糸条を再生遅延浴中に導き、残存γ価を30〜4
0及び糸温度を10℃以下に強制的に調整する。短時間
に再生分解を抑制して糸温度を10℃以下に下げるため
には、第2工程で糸条に含有する薬液(硫酸濃度5〜1
5g/l、硫酸亜鉛濃度3g/l以下、硫酸ソーダー濃
度50g/l以下)を0〜10℃に冷却した0.1〜5
g/lの低濃度硫酸液あるいは水で洗浄することにより
達成できる。又、洗浄方法としては連続的に上記再生遅
延浴に通す以外に、走行糸条に冷却洗浄液をシャワーリ
ングしても良い。
【0011】本発明の第3工程の残存γ価が30以下に
再生されると糸条は優れた分子配向を示すが糸の表面に
亀裂を生じ強伸度等の物理的特性を低下させ本発明の目
的とする効果が得られなくなる。逆に40以上である場
合、再生不十分の状態で次の工程(分解浴)に入り糸切
れが発生する。本発明における他の要件である糸温度に
ついては10℃以上になると本発明の目的とする染色性
の向上が得られない。好ましくは5〜8℃の範囲であ
る。
【0012】本発明の第4工程は第3工程で固定された
糸条を熱浴にて分解再生することにあるが、第3工程と
同様に本発明で特定する条件を満足する場合にはじめて
本発明の所期の目的とする効果がえられる。ここで熱浴
は硫酸2g/l以下、温度95℃以上である。前記の第
1〜第3工程を経過した糸条は本工程で上記好適範囲の
熱浴により急激に温度の上昇と低濃度の硫酸による分解
再生が起こることにより繊維内部の結晶を微細構造とな
す。硫酸2.1g/l以上及び温度95℃未満では糸の
表面にボイドが生じ本発明の目的とする効果が得られな
くなる。第4工程で分解再生された糸条の残存γ価は5
〜15%となる。必要に応じて最終の熱浴中に導入して
完全に分解再生させてもよい。
【0013】本発明はビスコース繊維の微細構造につい
て詳細な研究を行い繊維の強伸度のごとく力学的特性と
染色性のごとく化学的特性を同時に満足する製造方法を
完成した。即ち、第2工程で最適延伸点で延伸された糸
条は、本発明である第3工程(再生遅延浴)で高残留γ
価のまま超低温の糸条に調整され、引き続き超高温の第
4工程(熱浴)で分解再生させる方法である。本発明の
実施によりセルロースザントゲン酸ソーダの分解再生過
程で発生する二硫化炭素ガスの凝集が大幅に減少して以
下に述べる効果が得られると考えられる。
【0014】すなわち、従来のビスコース繊維で見られ
た二硫化炭素が集合した液摘の脱け殻と考えられてい
る、比較的大きな(約10ミクロン以上の)ミクロボイ
ドが無くなり、対応して糸表面に(約20〜100オン
グストローム程度の)超ミクロボイドが増加することが
判明した。ビスコース繊維は水溶性溶室との親和性があ
り、このため糸表面の超ミクロボイド数の増加により染
料分子が容易に拡散して超ミクロボイドの穴に吸着され
るものと考えられる。又10ミクロン以上の大きなミク
ロボイドが無くなることにより力学的な応力の集中が減
少して湿潤時の強伸度が向上するものと考えられる。
【0015】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明を詳述する。
【0016】実施例において、評価に用いたγ価、染着
率の測定方法について以下に記述する。
【0017】γ価 セルロース0.25〜0.35gに相当する再生未完結
の切断糸条を0〜4℃に冷却したアンモニア、アルカリ
性アンモニウム塩飽和溶液中に採取し、分解を停止せし
めると共に5分間放置し、すべての残存ザンテート基を
アンモニウムカチオンで置換する。次いで0〜4℃に冷
却した水、アルコール4:6混液により数回にわたり液
を交換しつつ充分に洗浄し、遊離のアンモニウムイオン
を除去する。精製終了後予め50℃に加温した0.5%
塩酸により分散し、NH4 Clを生成せしめこの分解液
を濾別洗浄し、糸条は乾燥し繊維素量(Sg)とする。
濾液はフラスコ中に入れ20%NaOHでアルカリ性と
なしコンデンサーを連結して蒸留し、溜出するアンモニ
アを0.1N H2 SO4 (Acc)中に導き、完全に
アンモニアが溜出したことを確認した後0.1NaOH
で逆滴定する。(Bcc) 前記測定より糸条中に残存するザンテート基量は次の通
り示される。 残存γ価(%)=(A−B)/S×1.62
【0018】染着率 染色しようとする繊維の正量重量に対して染料(直接染
料 Direct Sky Blue6B)が6.0重
量%になるような染色液を作って、45℃で20分間染
色する。染色前の染料原液と染色後の染料残液の染料濃
度を比色法により測定して算出する。染色残液が完全に
透明となれば染着率100%、染色残液の染料原液に対
する比色濃度が半分であれば染着率50%、比色濃度が
同じの場合は染着率0%として表した値である。本発明
のボイド%は次の方法で測定した値である。測定しよう
とする繊維を38mmにカットして引き揃え、倍率30
0倍の光学顕微鏡下で繊維の側面を観察する。10μ以
上の大きさの穴(ボイド)の有無を100本の単糸につ
いて観察し以下の式で表した値である。 ボイド(%)=ボイドが観察された単糸本数/100×
100
【0019】実施例1 常法によりセルロース含有量4.7%、アルカリ2.5
0%、γ価75、落球粘度230秒、平均重合度550
のビスコースを調整した。これを孔径0.06mm、孔
数27000のノズルより硫酸18.0g/l硫酸亜鉛
0.5g/l及び硫酸ソーダ20g/lを含有し温度2
8℃の1浴中に紡糸した。この場合糸条は20cmの浴
中を通り残存γ価45で1浴をでる。次に硫酸7.0g
/l硫酸亜鉛0.5g/l及び硫酸ソーダ23g/lを
含有し温度27℃の2浴にて残存γ価が40になるまで
徐々に再生せしめて後、糸条を55%伸長する。得られ
た糸条を硫酸1.5g/lを含有する温度9.0℃の再
生遅延浴にて残存γ価35糸条温度10℃になるまで徐
々に再生せしめた。次に浴温97℃、硫酸1.0g/
l、浴長1.2mの3浴に浸潤して残存γ価10なる糸
条を得る。かかる糸条を空気中に取り出した後、最終工
程の熱浴にて完全に分解した。比較例として再生遅延浴
を設けずに同一条件で紡糸を行ったものの場合を記載す
る。得られた糸の特性及び再生状態を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】実施例2 実施例1と同一条件で製造されたビスコースを実施例1
と同一設備で紡糸して延伸点残存γ価40の糸条を得
る。この糸条を再生遅延浴の温度のみ変更して他は実施
例1と全く同一条件にて糸を得た。得られた糸の特性及
び再生状態を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】実施例1と同一条件で製造されたビスコー
スを実施例1と同一設備で紡糸して熱浴前残存γ価35
の糸条を得る。この糸条を3浴(熱浴)の温度のみ変更
して他は実施例1と全く同一条件にて糸を得た。得られ
た糸の特性を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
【発明の効果】本発明により製造される繊維の第1の特
徴は表面に多数の超ミクロボイドを有するが10ミクロ
ン以上の大きなボイドを有しないということである。そ
の他にビスコース繊維としては従来達成困難とされてい
た、高染着度と高湿潤強力を兼ね備えている。本発明に
より合理化された手段で衣料用やフロッキー用等のビス
コース繊維を得ることが可能になり、かくして得られた
繊維は後加工での操業性も従来のものと比較して格段に
優れている。又、染色加工後の濃度、鮮明度も従来のも
のと比較して格段に優れている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 2/06 - 2/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高重合度ビスコースの低酸低温紡糸法に
    よるビスコース繊維の製造において、再生遅延浴を設
    け、再生過程での糸条の残存γ価を30〜40及び糸条
    の温度を10℃以下に調整し、引き続き硫酸3g/l以
    下温度95℃以上の分解浴を通して再生を完結させる事
    を特徴とするビスコース繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】 ビスコース繊維が、10ミクロン以上の
    ミクロボイドを形成することなく、繊維表面に多数の2
    0〜100オングストロームの超ミクロボイドを形成し
    ている請求項1記載のビスコース繊維の製造方法。
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