JP3228462B2 - 光導波路及びそれを用いた1.5μm帯光増幅器 - Google Patents

光導波路及びそれを用いた1.5μm帯光増幅器

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信などで用い
られる光導波路及びそれを用いた光増幅器に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】Erを活性イオンとして添加した石英系
ファイバーは、1.5μm帯の光信号を増幅する光増幅
器に使用され、光通信の高速化に大きな役割を果たして
きた。このような光増幅器では、Erの 413/24
15/2の誘導放出が利用され、励起には1.48μmと0.
98μmが利用されている。そのErの準位図を図1に
示す。0.98μm励起の場合、1.48μm励起よりも
低雑音な増幅器が構成できることが判っている。一方、
通信の大容量化に伴い、波長多重通信方式が注目され、
広帯域な光増幅媒質が要求されている。このような背景
から、Er添加石英系ファイバーの広帯域化や、Er添
加ハライドガラスやカルコゲナイドガラスの研究が盛ん
に行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】Erを添加したハライ
ドガラス、カルコゲナイドガラスまたはハロゲン酸化物
ガラスの導波路およびファイバーは、石英ファイバーよ
り平坦な利得帯域が広いことが知られており、1.5μ
m帯波長多重通信用の増幅媒質として期待されている。
しかし、低雑音な増幅器を構成するために0.98μm
で励起すると、励起状態からの吸収(ESA)が起こり
やすくなる。これは、ハライドガラス、カルコゲナイド
ガラスまたはハロゲン酸化物ガラスのフォノンエネルギ
ーが酸化物より小さいことにより、Erの411/2から4
13/2へのマルチフォノン緩和が起こりにくく、4
11/2の蛍光寿命が長くなるためである。その結果、ES
Aによる吸収損失が大きくなり、1.5μm帯の誘導放
出に分配される励起エネルギーの割合が小さくなって、
増幅効率が低下する。このため、ハライドガラス、カル
コゲナイドガラスまたはハロゲン酸化物ガラスを用いた
低雑音広帯域な増幅器が実現できない。この問題を解決
するためには、Erの411/2の蛍光寿命を短寿命化す
る必要がある。このような理由から、Er(0.05〜
0.5wt%)とTb,Dy,Euを共添加する方法が
開示されている(特開平8−222784号)。しか
し、Tb,Dy,Euは、ホスト材料の組成による吸収
波長の変動や、大量に添加した場合には吸収の裾の影響
で、励起光や信号光を吸収して効率を低下させる可能性
がある。
【0004】本発明の目的は、1.5μm帯光増幅器に
おいて、Erを添加したハライドガラス、カルコゲナイ
ドガラスまたはハロゲン酸化物ガラスからなるコアを持
つガラス導波路を用い、0.98μm帯励起を可能にす
る光増幅器を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための具体的手段】本発明者らは、前
記目的を達成するため鋭意検討の結果、光導波路のコア
部分のハライドガラス、カルコゲナイドガラスまたはハ
ロゲン酸化物ガラスにErとCeを共添加することによ
り、低雑音広帯域な増幅器が構築できることを見いだし
本発明に到達したものである。
【0006】すなわち本発明は、光導波路のコア部が、
ErとCeとを含有したハライドガラス、カルコゲナイ
ドガラスまたはハロゲン酸化物ガラスからなる光導波路
で、また、少なくとも励起光源、光合分波素子、光アイ
ソレータ、増幅用光導波路を備え、かつ増幅用光導波路
として該光導波路を用いることを特徴とする1.5μm
帯光増幅器であり、その増幅用光導波路がファイバーま
たは平面光導波路からなる1.5μm帯光増幅器を提供
するものである。
【0007】以下本発明について詳述する。本発明にお
いて、0.98μmで励起したときのESAを抑制する
ためには、前述したようにErの411/2の蛍光寿命を
短寿命化する必要がある。本発明の光導波路は、ハライ
ドガラス、カルコゲナイドガラスまたはハロゲン酸化物
ガラスにErとCeを添加したものであり、Ceを添加
した場合、2.7μmから3μmの吸収帯が、Erの4
11/2413/2の遷移エネルギー差に相当する。このた
め、クロス緩和が生じてErの411/2の蛍光寿命を効
率よく短寿命化できる。そのCeの吸収スペクトルを図
2に示す。Ceは、0.3μmから2.5μmに至る非常
に広い透過域を持ち、0.98μmの励起光と1.55μ
mの信号光に吸収損失を与える可能性は全くない。この
ため、大量に添加可能であり、ErとCeの原子間距離
を小さくしてクロス緩和の割合を大きくすることができ
る。
【0008】本発明におけるErの添加量としては、ガ
ラス組成にもよるが0.01〜10wt%の範囲が好ま
しく、この範囲をはずれると増幅作用が得られない。ま
た、Ceの添加量としては、0.01〜30wt%の範
囲が好ましく、0.01wt%未満だと効果がなく、3
0wt%を超えると結晶化が起こる。また、励起光をよ
り効率よく利用するために、YbやHo,Ndなどの増
感材をさらに添加しても、クロス緩和過程は変化しな
い。また、本発明で用いるハライドガラスとしては、フ
ッ化物ガラス、塩化物ガラス、塩素含有フッ化物ガラス
等が、カルコゲナイドガラスとしては硫化物ガラス、セ
レン化物ガラス、テルル化物ガラス、セレン含有硫化物
ガラス、テルル含有硫化物ガラス、テルル含有セレン化
物ガラス等が、ハライド酸化物ガラスとしては、フツリ
ン酸ガラス、フッ素含有珪酸塩ガラス、フッ素含有ゲル
マネートガラス、フッ素含有アルミネートガラス等が特
に好ましい。
【0009】次に光増幅器の励起源としては、0.98
μm帯のレーザーであれば何でも良いが、小型高効率か
つ光導波路との結合が容易である点から、ファイバーに
レンズ系を使用して結合された半導体レーザー(ピグテ
ール半導体レーザー)が好ましい。励起方法は、前方励
起、後方励起、双方向励起など、励起が効率よく行われ
る方法なら何でも良い。また、励起に使用されるレーザ
ーは、1台でも良いし、複数台をまとめて利用しても良
い。さらに、Erの吸収帯を完全に利用して励起効率を
高めるために、広い発振波長帯域を持つレーザーを用い
ることも効果的である。このようなレーザーは、わずか
に発振波長の異なるレーザーを複数台結合したり、誘導
ラマン散乱を利用する方法で実現できる。
【0010】また励起光と信号光を1本の光導波路にま
とめるためには、光合分波素子が必要である。光合分波
素子としては、挿入損失が小さく、合分波が効率よく行
える方法なら何でも良い。このような合分波素子として
は、波長分割多重素子(WDM)が適当である。光合分
波素子は、挿入損失低減の観点から、ファイバーや平面
導波路光部品で構成されたものが好ましい。また、光合
分波素子内に光アイソレータを内蔵した場合は、増幅器
の小型化低挿入損失化が図れる。
【0011】光アイソレータは、戻り光を十分に抑制
し、挿入損失の小さなものであれば何でも良い。前述し
たように、他の光学部品と一体にすれば、増幅器が小型
化できるため、好ましい。
【0012】また、増幅器に利得監視や利得等化機能を
内蔵または付属させると、光通信システムの信頼性が向
上するので好ましい。利得の監視には、実質的に入射信
号光強度と出力信号光強度を比較できる方法なら、どん
な方法を用いても良い。波長多重通信を行う場合は、各
波長に割り当てられた信号ごとに検出、監視できる方法
が望ましい。利得等化機能は、受動的な方法でも能動的
な方法でも良い。受動的な利得等化方法としては、光学
フィルターを利用した構成が簡単である。能動的な利得
等化方法は、利得監視機能とフィードバック機能から構
成され、実質的に入射信号光強度と出力信号光強度を比
較し、利得を一定にできる方法なら、どんな方法を用い
ても良い。波長多重通信を行う場合は、各波長に割り当
てられた信号ごとに利得等化できる方法が望ましい。利
得等化と同様の機能であるが、出力信号光強度を一定に
保つような、出力等化機能も利得等化機能と同じように
有効である。これらの機能は、遠隔操作でプログラミン
グ可能なマイクロプロセッサなどで、自動的に調整可能
になっていることが好ましい。
【0013】以上のように、CeとErを光導波路のコ
アに共添加することで、ハライドガラス、カルコゲナイ
ドガラスまたはハロゲン酸化物ガラスのようなフォノン
エネルギーの小さなガラス中においてもErのESAを
効果的に抑制し、0.98μm励起可能な高効率で低雑
音広帯域な光増幅器を提供できる。
【0014】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0015】実施例1 コアにErを0.1wt%、Ceを0.5wt%添加し
たフッ化物ガラスファイバーを用いた。コアとクラッド
の基本ガラス組成を以下に示す。ErとCeは、Laを
置換している。数字はmol%である コア:51ZrF4-19BaF2-4.5LaF3-2YF3-2AlF3-13.5LiF-8Pb
F2 クラッド:40HfF4-10ZrF4-19BaF2-3LaF3-2YF3-4AlF3-22
NaF このファイバーの比屈折率差は3.3%、カットオフ波
長は1.0μmであった。
【0016】次ぎに測定に使用した光増幅器の構成を図
3に示す。測定に使用したファイバーは長さ10mであ
る。励起にはファイバーピグテイル付きの半導体レーザ
ー3を使用し、光合分波素子2と高N.A.の石英ファ
イバー5を介して光増幅用フッ化物ファイバー4と結合
している。石英ファイバー5とフッ化物ファイバー4の
結合はV溝ブロックを利用し、接合端面は反射損失を低
減するため斜めに光学研磨して、光学接着剤で固定し
た。1.55μm帯の信号光を光合分波素子2から入射
して、増幅された出射光を光アイソレーター6に通して
測定器7において小信号利得、利得スペクトル、雑音指
数特性について測定を行った。小信号利得を図4に、利
得スペクトルを図5に、雑音指数特性を図6にそれぞれ
示す。図4から判るとおり、0.98μmの励起光強度
が100mWの時、信号光波長1.55μmにおいて2
9dBの利得を達成した。また、この時の利得スペクト
ルは、1.530μmから1.562μmの広い波長範囲
で±0.2dB以内の平坦度を確保できた。また、この
波長域での雑音指数は3.7dBであった。
【0017】比較例1 コアにErを0.1wt%添加したフッ化物ファイバー
を用いた。コアとクラッドの基本ガラス組成は実施例1
と同じである。Erは、Laを置換している。このファ
イバーの比屈折率差は3.3%、カットオフ波長は1.
0μmであった。測定に使用したファイバーは長さ10
mである。実施例1と同様に測定系を構成し、増幅され
た出射光の小信号利得、利得スペクトルについて測定を
行った。小信号利得を図7に、利得スペクトルを図8に
示す。図7から判るとおり、0.98μmの励起光強度
が100mWの時、信号光波長1.55μmにおいて1
8dBの利得しか得られなかった。このことから、Ce
共添加による11dBの利得改善が確認できた。また、
この時の利得スペクトルは、実施例1と全く同じであ
り、Ce添加による増幅帯域幅への影響はなかった。
【0018】実施例2 実施例1に記載のクラッドガラス組成で、Erを1wt
%、Ceを1wt%添加したガラスプレートに、高繰り
返しフェムト秒レーザーで平面光導波路を書き込んだ。
ErとCeはLaを置換している。この導波路の比屈折
率差は0.8%、カットオフ波長は0.9μm、導波路
長は20cmである。実施例1と同様に測定系を構成し
たが、高N.A.の石英ファイバーは使用していない。
平面光導波路と石英ファイバーとの接続は、斜め研磨し
た端面を光学接着して固定した。ファイバーと導波路の
位置あわせには、微動調整付きのステージを利用し、信
号光透過率が最大になるようにした。増幅特性は実施例
1とほぼ同じ傾向を示し、100mW励起の時1.55
μmの利得が22dBであり、1.535〜1.56μm
の範囲で±0.2dBの利得平坦度を確認し、この雑音
指数は3.8dBであった。
【0019】比較例2 実施例1に記載のクラッドガラス組成で、Erを1wt
%添加したガラスプレートに、高繰り返しフェムト秒レ
ーザーで平面光導波路を書き込んだ。ErはLaを置換
している。この導波路の比屈折率差は0.8%、カット
オフ波長は0.9μm、導波路長は20cmである。実
施例1と同様に測定系を構成したが、高N.A.の石英
ファイバーは使用していない。平面光導波路と石英ファ
イバーとの接続は、斜め研磨した端面を光学接着して固
定した。ファイバーと導波路の位置あわせには、微動調
整付きのステージを利用し、信号光透過率が最大になる
ようにした。増幅特性は実施例1とほぼ同じ傾向を示
し、100mW励起の時1.55μmの利得が17dB
であり、雑音指数は4.2dBであった。
【0020】実施例3 コアにErを0.1wt%、Ceを1wt%添加したフ
ッ化物/フツ燐酸ガラスファイバーを用いた。コアとク
ラッドの基本ガラス組成を以下に示す。Er,CeはG
dを置換している。数字はmol%である。 コア:18InF3-12GaF3-20ZnF2-30BaF2-10GdF3-10LuF3 クラッド:12Al(PO3)3-11.1AlF3-36.6RF-40.3MF2 (R:L
i,Na M:Mg,Ca,Sr,Ba)
【0021】このファイバーの比屈折率差は1.9%、
カットオフ波長は1.35μmであった。測定に使用し
たファイバーは長さ10mである。実施例1と同様に測
定系を構成し、増幅された出射光の小信号利得、雑音指
数特性について測定を行った。その結果、励起パワー1
00mWのとき26dBの利得を得た。この波長域での
雑音指数は3.7dBであった。
【0022】比較例3 実施例3と同じ基本ガラス組成で、コアにErを0.1
wt%添加したフッ化物/フツ燐酸ガラスファイバーを
用いた。このファイバーの比屈折率差は1.9%、カッ
トオフ波長は1.35μmであった。測定に使用したフ
ァイバーは長さ10mである。実施例1と同様に測定系
を構成し、増幅された出射光の小信号利得、雑音指数特
性について測定を行った。その結果、励起パワー100
mWのとき18.5dBの利得を得た。この波長域での
雑音指数は4.2dBであった。
【0023】実施例4 コアにErを1wt%、Ceを3wt%添加したカルコ
ゲナイド/フツ燐酸ガラス平面導波路を用いた。コアと
クラッドの基本ガラス組成を以下に示す。数字はmol
%である。 コア:30In2S3-40Ga2S3-30La2S3 クラッド:12Al(PO3)3-11AlF3-30.5RF2-46.5MF2 (R:Mg,
Ca M:Sr,Ba)
【0024】ErとCeはLaを置換している。この導
波路の比屈折率差は3%、カットオフ波長は1.45μ
mであった。測定に使用した導波路は長さ20cmであ
る。実施例2と同様に測定系を構成し、増幅された出射
光の小信号利得、雑音指数特性について測定を行った。
その結果、励起パワー100mWのとき25dBの利得
を得た。この波長域での雑音指数は4.0dBであっ
た。
【0025】比較例4 実施例4と同じ基本ガラス組成で、コアにErを1wt
%添加したカルコゲナイド/フツ燐酸ガラス平面導波路
を用いた。この導波路の比屈折率差は3%、カットオフ
波長は1.45μmであった。測定に使用した導波路は
長さ20cmである。実施例2と同様に測定系を構成
し、増幅された出射光の小信号利得、雑音指数特性につ
いて測定を行った。その結果、励起パワー100mWの
とき16dBの利得を得た。この波長域での雑音指数は
4.6dBであった。
【0026】
【発明の効果】本発明の光導波路を用いることにより、
0.98μm励起可能な高効率で低雑音広帯域な光増幅
器を構成でき、それにより信頼性の高い大容量高速光通
信網が構築できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Erの準位図と、Ceによるクロス緩和過程を
示す図である。
【図2】Ceの吸収を示す図である。
【図3】本発明の光増幅器の構成図である。
【図4】Er−Ce共添加ファイバー増幅器の小信号利
得特性を示す図である。
【図5】Er−Ce共添加ファイバー増幅器の利得スペ
クトルを示す図である。
【図6】Er−Ce共添加ファイバー増幅器の雑音特性
を示す図である。
【図7】Er添加ファイバー増幅器の小信号利得特性を
示す図である。
【図8】Er添加ファイバー増幅器の利得スペクトルを
示す図である。
【符号の説明】
1 信号光の入射部 2 光合分波素子 3 半導体レーザー 4 光増幅用ファイバー 5 高N.A.石英ファイバー 6 光アイソレーター 7 計測器
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−331091(JP,A) D.Pureur et al.”D esign of Grating−B ased Fiber Lasers: Power and Spectra l Behaviors”,JOURN AL DE PHYSIQUE(▲II I▼),France,Mar.1995, Vol.5,No.3,pp.237− 249. H.Poignant et a l.”Efficiency and thermal behaviour of cerium−doped fu luorozirconate gra ss fibre Bragg gra tings”,ELECTRONICS LETTERS,Aug.1994,Vo l.30,No.16,pp.1339−1341. (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01S 3/00 - 3/30

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光導波路のコア部が、ErとCeとを含
    有したハライドガラス、カルコゲナイドガラスまたはハ
    ロゲン酸化物ガラスからなり、励起波長として0.98
    μm帯を用いることを特徴とする、増幅用光導波路。
  2. 【請求項2】 少なくとも励起光源、光合分波素子、光
    アイソレータ、増幅用光導波路を備え、かつ増幅用光導
    波路として請求項1記載の光導波路を用いることを特徴
    とする1.5μm帯光増幅器。
  3. 【請求項3】 増幅用光導波路がファイバーからなるこ
    とを特徴とする請求項2記載の1.5μm帯光増幅器。
  4. 【請求項4】 増幅用光導波路が平面光導波路からなる
    ことを特徴とする請求項2記載の1.5μm帯光増幅
    器。
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