JP3223636B2 - 液封入防振装置 - Google Patents

液封入防振装置

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等 木野
茂樹 竹尾
伸彦 坂本
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  • Combined Devices Of Dampers And Springs (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液封入防振装置に関し、
特に広い範囲で効果的な防振性能を発揮する液封入防振
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】液封入防振装置はエンジンマウント等に
多用されつつあり、かかる装置の一般的な構造は、振動
体を支持する厚肉ゴム壁を室壁とする主液室と、これと
絞り流路により連通して封入液を保持する副液室とを有
している。そして、主液室および副液室の各室壁のバネ
定数と絞り流路内の液体質量とで決まる共振周波数で絞
り流路の液体流通量は最大となり、大きな減衰力を生じ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】かかる従来の防振装置
では、装置各部の諸元が設計時に決まってしまい、共振
周波数から外れた振動が入力した場合には防振性能が良
好に発揮されないことがある。特に、入力振動の周波数
が共振周波数を越える高周波域では、絞り流路の液体流
通量が減少して主液室の内圧が上昇し、動バネ定数が急
増して防振性能が大きく悪化する。
【0004】加えて、エンジンマウント等に使用した場
合には、車両の走行状態に応じて種々の振動が入力する
ため、広い範囲の振動入力に柔軟に対応できることが求
められている。
【0005】本発明はかかる課題を解決するもので、広
い範囲の振動を効果的に低減できる液封入防振装置を提
供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の構成を説明する
と、振動体Eを支持し振動入力に応じて変形する室壁1
よりなる主液室Aと、該主液室Aに絞り流路Fを経て連
通して封入液を保持する副液室Bと、上記主液室Aの室
壁1の一部を構成し液室内外へ変位せしめられて液室容
積を変更する第1可動板3Aと、上記副液室Bの室壁の
一部を構成し液室内外へ変位せしめられて液室容積を変
更する第2可動板3Bと、上記振動体Eの振動波形を検
出する手段41,42と、振動体の振動状態を判別し
て、各振動状態に応じて予め定めた振幅パラメータおよ
び位相パラメータに基づいて上記振動波形の振幅および
位相を変更した出力信号を生成し、該出力信号に応じて
上記第1可動板3Aおよび第2可動板3Bを変位駆動す
る駆動手段5と、上記主液室Aの内圧の変化波形を検出
する手段43と、上記内圧の変化波形の実効値を検出す
る手段58Aと、上記振動波形と内圧の変化波形の位相
差を検出する手段59Aと、算出された実効値および位
相差に基づいて上記振幅パラメータおよび位相パラメー
タを補正する手段5とを具備している。
【0007】
【作用】上記構成において、振動体Eからの振動入力に
対して、各パラメータに基づき所定量振幅および位相を
ずらした出力信号により各可動板3A,3Bを変位せし
めると、主液室Aの発生内圧および絞り流路Fの液体流
通量がこれに応じて変更され、装置の動バネ定数、減衰
係数が共に大きい状態から両者が共に小さい状態まで、
振動体Eの振動状態に応じて広い範囲で最適な装置特性
が実現されて、効果的な防振作用が発揮される。
【0008】ところで、防振装置は使用する間に、構成
部材の経年変化等により、その諸元が当初の設計値から
ずれてくることが往々にしてあり、設計段階で定めた上
記各パラメータ値に基づく可動板制御では所望の装置特
性が得られないことがある。そこで、作動時の装置特性
を反映する主液室Aの内圧波形を検出して、該波形の実
効値、および振動波形との位相差に基づいて当初設定し
た振幅および位相パラメータを補正すると、経年変化等
の影響を受けることなく常に良好な装置特性が維持され
る。
【0009】
【実施例】図1において、振動体たるエンジンEはフロ
ント側およびリヤ側をそれぞれ本発明になる液封入防振
装置のマウント部M1,M2によって支持されており、
各マウント部M1,M2とエンジン支持脚の間にはロー
ドセル41,42が挿置されて、振動入力に応じた出力
信号4a,4bを発する。この出力信号はフロント側4
aが例えばA2 sinωt で表され、リヤ側4bがA1
sin( ωt+θ) で表される。
【0010】マウント部M1,M2はいずれも同一構造
で、その詳細を図3に示す。図において、Aは主液室で
あり、その室壁は下方へ開放する半容器状の厚肉ゴム壁
1で、エンジン荷重を支持している。主液室Aは仕切壁
2により下方の副液室Bと区画されており、該副液室B
は、車両フレームに固定される底板6の内空間に形成さ
れている。
【0011】上記仕切壁2には厚肉の外周部21に絞り
流路Fが形成され、その一端は主液室Aに、他端は副液
室Bに開口している。薄板状となった仕切壁2の内周部
22上下面にはそれぞれU字断面をなすヨーク71が設
けてあり、各ヨーク71の中心には先端にセンターポー
ル72を接合した柱状の永久磁石73が設けてある。
【0012】上下の上記各ヨーク71を覆って可動板3
A,3Bが設けてあり、これら可動板3A,3Bは外周
縁のゴム膜31が仕切壁外周部21の内縁に接合され
て、それぞれ主液室Aおよび副液室Bの室内空間を閉鎖
形成している。各可動板3A,3Bの裏面には、上記セ
ンターポール72の外周と小間隙をなして電磁コイル3
2が設けてあり、該電磁コイル32への通電を切り換え
ることにより、各可動板3A,3Bが上下に変位して液
室容積が変更される。なお、ヨーク71等を設けた空間
は、仕切壁外周部21に設けた空気導入路23により大
気に連通している。
【0013】マウント部M1には、仕切壁2の外周部2
1上面に圧力センサ43が設けてあり、主液室Aの内圧
変化に応じた出力信号4c(図1)を発する。
【0014】図1において、各ロードセル41,42の
振動波形信号4a,4bはそれぞれバンドパスフィルタ
51A,51B、増幅器52A,52Bを経て可動板位
相調整用コントローラ53A,53Bに入力する。該コ
ントローラ53A,53Bでは、マウント部M1,M2
の上下の可動板3A,3B用の位相パラメータφ1n,φ
2nで示された角度だけ上記信号4a,4bの位相を遅ら
せて、次段の可動板振幅調整用コントローラ54A,5
4Bへ出力する。上記位相パラメータφ1n,φ2nは詳細
を後述する制御回路5より出力される。
【0015】振幅調整用コントローラ54A,54Bで
は、上記制御回路5より出力される、上下の可動板3
A,3B用の振幅パラメータk1n,k2nで示されたゲイ
ンで上記信号4a,4bの振幅を調整して、それぞれ可
動板駆動用コントローラ55A,55Bに出力する。コ
ントローラ55A,55Bは入力信号を電流増幅してフ
ロント側およびリヤ側のマウント部M1,M2の既述の
電磁コイル32に通電し、可動板3A,3Bを変位せし
める。
【0016】マウント部M1の圧力センサ43から出力
される圧力波形信号4cはバンドパスフィルタ56Aに
入力し、増幅器57Aを経て実効値検出回路58Aと位
相差検出回路59Aに入力している。実効値検出回路5
8Aは圧力波形信号4cの実効値ke1を検出して制御回
路5へ送出する。また、位相差検出回路59Aは上記振
動波形信号4aと圧力波形信号4cの位相差Δφ1 を検
出して制御回路5へ送出する。
【0017】上記制御回路5は、マイクロコンピュータ
を内蔵しており、図2に示す如く、ソフトウエアで実現
される運転状態判定部、パラメータ設定部、ファジー推
論部、演算部と、エンジンEの各運転状態に応じて予め
設定された、上下の各可動板3A,3Bに対する位相パ
ラメータおよび振幅パラメータを記憶するメモリ部より
構成されている。
【0018】運転状態判定部は、スロットルポジション
センサ、車速センサ、エンジン回転数センサ、スタータ
リレー、イグニションスイッチおよびロードセルの各信
号より、アイドリング、定速走行、こもり音発生等のエ
ンジンの各運転状態を判定し、パラメータ設定部はメモ
リ部より、判定された運転状態に対応する上下の可動板
3A,3Bの位相および振幅のパラメータφ11, φ12,
…、φ21, φ22, …、k11, k12,…、k21, k22,…
を読み出して(このようにして読み出された位相および
振幅の各パラメータをφ1n,φ2n,k1n,k2nとす
る)、既述の位相調整用および振幅調整用の各コントロ
ーラ53A,53B,54A,54B(図1)に出力す
る。
【0019】ファジー推論部は、これに入力する上記信
号実効値ke1および信号位相差Δφ1 より以下の手順で
ファジー推論を行い、位相補正値Δφおよび振幅補正値
Δkを決定して演算部へ送る。演算部では、判定された
運転状態の下で、メモリ部に記憶された各位相パラメー
タおよび振幅パラメータに上記各補正値Δφ,Δkを加
えて補正し、補正後のパラメータを再びメモリ部に戻
す。
【0020】図4(1)〜(3)には、ファジー推論の
入力部メンバーシップ関数を示し、信号位相差Δφ1 に
対しては「負大」、「負小」、「0」、「正小」、「正
大」の5水準、信号実効値ke1に対しては「小」、「小
中」、「中」、「中大」、「大」の5水準、各運転状態
に対してはその状態数に等しい8水準としてある。
【0021】出力部のメンバシップ関数は、図5
(1)、(2)に示す如く、位相補正値Δφ、振幅補正
値Δkに対してそれぞれ「負大」、「負小」、「0」、
「正小」、「正大」の5水準となっている。
【0022】使用される推論則は例えば以下の如くであ
る。 推論則1 もし信号位相差「0」かつ信号実効値「小
中」かつアイドリング時であれば位相補正値「0」かつ
振幅補正値「0」である。 推論則2 もし信号位相差「0」かつ信号実効値「中」
かつアイドリング時であれば位相補正値「0」かつ振幅
補正値「正小」である。 推論則3 もし信号位相差「正小」かつ信号実効値「小
中」かつアイドリング時であれば位相補正値「負小」か
つ振幅補正値「0」である。 推論則4 もし信号位相差「正小」かつ信号実効値
「中」かつアイドリング時であれば位相補正値「負小」
かつ振幅補正値「正小」である。
【0023】そこで、例えばアイドリング時に、信号位
相差が5°、信号実効値が65N/cm2 である場合、
上記推論則を使用して公知のMIN−MAX−重心法に
より推論すると、位相補正値は−1/4Δφ、振幅補正
値は1/5Δkとなる。
【0024】エンジンEの各運転状態に応じて、装置特
性は表1に示すものが要求される。すなわち、アイドリ
ング、定速走行、こもり音発生の各状態では動バネ定数
Kdおよび減衰係数Cは共に小さく、シェイク、加速、
始動、停止の各状態では動バネ定数Kdおよび減衰係数
Cは共に大きい。その他の場合には動バネ定数Kdおよ
び減衰係数Cは共に中位である。
【0025】しかして、各運転状態におけるエンジン振
動数(周波数)の下で、後述するような可動板3A,3
Bの変位を実現するように補正された各パラメータφ1
n,φ2nが選択され、また、所望の可動板変位量を実現
するように補正された各パラメータk1n,k2nが選択さ
れて、それぞれ位相調整用コントローラ53A,53B
(図1)、振幅調整用コントローラ54A,54Bに出
力される。
【0026】図6〜図8には、各装置特性を実現する可
動板3A,3Bの変位方向を概念的に示す。図中、Xは
入力振動の方向を示し、Y,Zはそれぞれ上側可動板3
Aおよび下側可動板3Bの変位方向を示す。
【0027】図6に示す如く、上側可動板3Aを振動の
入力方向と同方向へ変位せしめるとともに、下側可動板
3Bを振動入力方向と逆方向へ変位せしめると、主液室
Aおよび副液室Bの内圧はいずれも低くなり、絞り流路
Fを流通する液体量は零に近くなる。この結果、装置の
動バネ定数Kdおよび減衰係数Cは共に小さくなる。
【0028】一方、図7に示すように、上側可動板3A
および下側可動板3Bを振動の入力方向と逆方向へ変位
せしめると、主液室Aの内圧が高くなるとともに副液室
Bの内圧は中程度となり、絞り流路Fを流通する液体量
は多くなる。したがって、この場合には装置の動バネ定
数Kdおよび減衰係数Cは共に大きくなる。
【0029】さらに、図8に示すように、上側可動板3
Aおよび下側可動板3Bをいずれも振動の入力方向と同
方向へ変位せしめると、主液室Aおよび副液室Bの内圧
はいずれも中程度となり、絞り流路Fの液体流通量は可
動板3A,3Bの変位量に応じて変化する。したがっ
て、装置の動バネ定数Kdは中位となり、減衰係数Cは
各可動板3A,3Bの変位量を調整することにより小か
ら大へと変更できる。
【0030】
【発明の効果】以上の如く、本発明の液封入防振装置に
よれば、主液室と副液室の各室壁を構成する上側可動板
および下側可動板を適宜変位駆動することにより、所望
の防振特性が得られて、広い範囲の振動伝達が効果的に
防止されるとともに、長期使用により装置各部に経年変
化等を生じても、防振性能は良好に維持される。
【0031】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】制御回路の機能ブロック図である。
【図3】マウント部の全体断面図である。
【図4】ファジー制御におけるメンバーシップ関数を示
す図である。
【図5】ファジー制御におけるメンバーシップ関数を示
す図である。
【図6】装置の作動を示すマウント部の概念的断面図で
ある。
【図7】装置の作動を示すマウント部の概念的断面図で
ある。
【図8】装置の作動を示すマウント部の概念的断面図で
ある。
【符号の説明】
1 厚肉ゴム壁(室壁) 3A,3B 可動板 41,42 ロードセル(振幅波形検出手段) 43 圧力センサ(内圧波形検出手段) 5 制御回路(駆動手段、パラメータ補正手段)) 58A 実効値検出回路(実効値検出手段) 59A 位相差検出回路(位相差検出手段) A 主液室 B 副液室 E エンジン(振動体) F 絞り流路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−26548(JP,A) 特開 平6−206449(JP,A) 特開 平4−312229(JP,A) 特開 平5−231468(JP,A) 特開 平6−137360(JP,A) 特開 平6−219167(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16F 13/26 B60K 5/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 振動体を支持し振動入力に応じて変形す
    る室壁よりなる主液室と、該主液室に絞り流路を経て連
    通して封入液を保持する副液室と、上記主液室の室壁の
    一部を構成し液室内外へ変位せしめられて液室容積を変
    更する第1可動板と、上記副液室の室壁の一部を構成し
    液室内外へ変位せしめられて液室容積を変更する第2可
    動板と、上記振動体の振動波形を検出する手段と、振動
    体の振動状態を判別して、各振動状態に応じて予め定め
    た振幅パラメータおよび位相パラメータに基づいて上記
    振動波形の振幅および位相を変更した出力信号を生成
    し、該出力信号に応じて上記第1可動板および第2可動
    板を変位駆動する駆動手段と、上記主液室の内圧の変化
    波形を検出する手段と、上記内圧の変化波形の実効値を
    検出する手段と、上記振動波形と内圧の変化波形の位相
    差を検出する手段と、算出された実効値および位相差に
    基づいて上記振幅パラメータおよび位相パラメータを補
    正する手段とを具備する液封入防振装置。
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