JP3222763B2 - 入浴用車椅子昇降装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、入浴用車椅子を
昇降させるための入浴用車椅子昇降装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】老人や身体障害者等の要介護者を入浴さ
せる場合に、入浴用車椅子を利用する方法がある。すな
わち、要介護者をベッドやストレッチャー等から入浴用
車椅子に移し替え、この入浴用車椅子ごと扉開閉式の浴
槽内に入れたり、入浴用車椅子を多数の穴があいた底板
上に乗せ底板を下降させて入浴用車椅子ごと浴槽内に浸
したり、あるいは、入浴用車椅子ごとリフタにより持ち
上げて浴槽内に入れたりして、要介護者を入浴させる方
法がある。

【０００３】上記した入浴方法で用いられる入浴用車椅
子の椅子部の高さは、通常、入浴用車椅子を浴槽内に侵
入させやすく、しかも、浴槽の湯量が適当な範囲におさ
まることを主に設定される。ところで、上記した従来の
入浴用車椅子の椅子部の高さは、必ずしも、ベッド等か
ら要介護者を入浴用車椅子に移乗させるときの移乗作業
や、要介護者を洗うときの洗浄作業に適した高さとは限
らない。すなわち、入浴用車椅子の椅子部の高さは、前
記した浴槽内で使用される湯量をできるだけ少なくする
目的から、ある程度低い値に設定されるが、その高さは
ベッド等から入浴用車椅子に移乗させるときの移乗作業
や、要介護者を洗浄するときの洗浄作業に適する高さよ
りも相当低い値に設定されている。このため、従来の入
浴用車椅子では、移乗作業や洗浄作業が行い難く、それ
らの作業が行いやすいように、椅子部の高さをより高く
することが望まれていた。

【０００４】本発明は、前記事情に鑑みてなされたもの
で、必要なときにのみ入浴用車椅子を持ち上げて高さ調
整することで、ベッドからの移乗作業や洗浄作業が行い
やすくなる入浴用車椅子昇降装置を提供することを目的
とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成させるた
めに、請求項１記載の発明では、キャスタ付きの台座
と、該台座に立設された支持ロッドと、該支持ロッドに
よって支持される椅子部とを備えた入浴用車椅子を昇降
させる昇降装置であって、キャスタを備える移動可能な
基台と、該基台に昇降可能に支持され、かつ、前記入浴
用車椅子の椅子部の下面に当接される椅子部支えと、前
記基台に設けられ、かつ、前記椅子部支えを昇降させる
昇降手段とを備え、前記椅子部支えには、前記入浴用車
椅子の椅子部を椅子部支えに固定する固定手段が付設さ
れていることを特徴とする。請求項２記載の発明では、
前記椅子部支えは、上部を水受けカバーによって覆われ
ていることを特徴とする。

【０００６】

【作用】本発明によれば、椅子部支えで入浴用車椅子の
椅子部を支え、昇降手段を駆動させて椅子部支えごと入
浴用車椅子を昇降させる。これにより、入浴用車椅子の
椅子部の高さを現状よりも高くすることができ、もっ
て、入浴用車椅子を、ベッドからの移乗作業や洗浄作業
が行いやすい任意の高さに設定する。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の各実施の形態を図
面に基づいて説明する。 ＜第１の実施の形態＞ここで示す第１の実施の形態は、
図１で示す扉開閉式浴槽に用いられる入浴用車椅子を昇
降させるために用いられるものである。ここで示す入浴
用車椅子１は、キャスタ２ａを有する台座２と、該台座
２に立設された支持ロッド３と、該支持ロッド３によっ
て支持される椅子部４を備えるものである。そして、こ
の入浴用車椅子１は、図中実線で示すように、扉５ａが
開かれた状態の扉開閉式浴槽５内に侵入されるときに、
椅子部４の下面に設けられたローラ６が浴槽５の内側壁
に設けられた左右の出っ張り部分７に上面に乗り上が
り、これにより、入浴した状態において椅子部４が安定
した状態で支持されるようになっている。ここで示す入
浴用車椅子の昇降装置１０は、入浴用車椅子の椅子部４
を任意に高さまで持ち上げる構造のものである。

【０００８】すなわち、第１の実施の形態の昇降装置１
０は、図２〜図４に示すように、下部にキャスタ１１ａ
を有する移動可能な基台１１と、該基台１１に昇降可能
に支持され、かつ、入浴用車椅子１の椅子部４の下面に
当接される椅子部支え１２と、該椅子部支え１２を昇降
させる昇降手段１３とを備える。

【０００９】前記基台１１は、図２及び図３に示すよう
に、入浴用車椅子１の台座２の左右のキャスタ２ａより
も幅を狭く設定され、かつ、その高さを入浴用車椅子１
の台座２よりも低く設定されて前方（ここでは、図２に
おいて左方を前方とする）へ延びる縦フレーム部１５
と、縦フレーム部１５の後端部にそれと直交するように
延びる横フレーム部１６とからなっていて、全体が略Ｔ
字状に形成されている。

【００１０】横フレーム部１６の左右には内筒１７，１
７がそれぞれ鉛直方向に延びるように設けられており、
この内筒１７には、図６に示すように外筒１８が略同心
状にかつ適宜間隔をあけて外嵌される。そして、内筒１
７と外筒１８との間にはローラ１９が、ローラ支持部１
９ａをボルト１９ｂにより外筒１８に固定されることで
介装されており、これにより、外筒１８は内筒１７に対
して位置決めされた状態で上下方向に相対移動可能とさ
れている。また、外筒１８は前記椅子部支え１２の下面
に固定されている。

【００１１】椅子部支え１２は、図３にも示すように、
左右のパイプ２０と、それらパイプ２０どうしをつなぐ
前側補強部材２１及び後側補強部材２２とを有してお
り、左右のパイプ２０の後端並びに後側補強部材２２の
左右両端にそれぞれ前記外筒１８が固着されている。図
４に示すように、左右のパイプ２０の外側には入浴用車
椅子の椅子部のローラ６を案内するための案内ガイド２
３がパイプ２０よりも上方へ突出されて取りつけられて
いる。なお、左右のパイプ２０の高さは、昇降装置１０
によって椅子部支え１２を最も低い位置に下げたとき
に、入浴用車椅子１の椅子部４のローラ６よりも若干低
い値に設定されている。また、左右のパイプ２０の離間
距離は、図４に示すように、入浴用車椅子１の椅子部４
の左右のローラ６の離間距離とほぼ同程度に設定されて
いる。

【００１２】前記椅子部支え１２には、入浴用車椅子１
の椅子部４を椅子部支え１２に固定する固定手段２５が
付設されている。固定手段２５は、図２，図３に示すよ
うに、前端に係合溝２６ａを有する係合ロッド２６が略
中央部分をピン２６ｂを介して前記椅子部支え１２に回
転可能に支持され、係合ロッド２６の後端部には上下方
向へ移動可能に配された中間ロッド２７の上端が当接可
能に設けられ、この中間ロッド２７の下方には該中間ロ
ッド２７の下端を上方へ押圧するぺダル２８が設けられ
ている。そして、このペダル２８を踏圧操作することに
より、中間ロッド２７を介して係合ロッド２６の後端が
押し上げられて回動され、これにより、該係合ロッド２
６によって入浴用車椅子１の椅子部４の被係合ロッド４
ａを係合している状態を解除することができる。なお、
ペダル２８は図示しないスプリングによって押圧され、
その前端が前記中間ロッド２７の下端に当接するように
なっている。前記係合ロッド２６は、図示しないスプリ
ングによって図２中ピン２６ａを中心に時計方向へ回動
するように付勢されるとともに、図示しないストッパに
当接されて略水平状態となるように保持されている。入
浴用車椅子１が当該昇降装置１０に対して近づくように
相対移動されたとき、入浴用車椅子１の椅子部４の被係
合ロッド４ａが係合ロッド２６の前端の傾斜部２６ｃに
突き当たり、この係合ロッド２６を付勢部材に抗して図
２中反時計方向へ強制的に回動させ、被係合ロッド４ａ
が係合ロッド２６の係合溝２６ａに対向する位置に来る
と、係合ロッド２６が付勢部材により回動されて元の位
置に戻り、入浴用車椅子１の被係合ロッド４ａに係合す
る。

【００１３】前記椅子部支え１２は、上部を水受けカバ
ー３０によって覆われており、入浴用車椅子１からした
たり落ちる水が椅子部支え１２にあたりにくいようにな
っている。また、水受けカバー３０によって前記昇降手
段１３も覆われている。

【００１４】前記昇降手段１３は、前記内筒１７、外筒
１８、及びそれらの間に介装されるローラ１９とからな
る案内機構３２と、基台１１と椅子部支え１２との間に
介装されて椅子部支え１２を昇降させる昇降機構３３と
から構成される。昇降機構３３は前記左右の案内機構３
２の間に配置されるもので、例えば、電動モータとラッ
クピニオンの組み合わせ、あるいは、油圧シリンダ等が
用いられる。なお、昇降機構３３はコントローラ３４に
よって制御される。

【００１５】次に、上記入浴用車椅子昇降装置の作用に
ついて説明する。まず、当該昇降装置１０を浴室の洗い
場、あるいはベッドの近傍等の所定の位置にセットし
（このとき、キャスタ１１ａに付随するストッパを機能
させてもよい）、入浴用車椅子１を背側を昇降装置１０
に向けて、椅子部４が椅子部支え１２の上側に来るよう
に昇降装置１０に近づける。このとき、図４，図５に示
すように、昇降装置１０の案内ガイド２３が入浴用車椅
子のローラ６に当接して該ローラ６を案内するため、昇
降装置１０に対して入浴用車椅子１を、その左右方向の
おおよその位置決めを行って近づけるだけで、入浴用車
椅子１のローラ６を昇降装置１０の左右のパイプ２０上
に位置させることができる。

【００１６】そして、入浴用車椅子１をある程度昇降装
置１０に近づけると、前記したように入浴用車椅子１の
椅子部４被係合ロッド４ａが係合ロッド２６の前端の傾
斜部２６ｃに突き当たり、この係合ロッド２６を付勢部
材に抗して図２中反時計方向へ強制的に回動させる。そ
の後、被係合ロッド４ａが係合ロッド２６の係合溝２６
ａに対向する位置に来ると、係合ロッド２６が付勢部材
により回動されて元の位置に戻り、入浴用車椅子１の被
係合ロッド４ａに係合する。これにより、椅子部４が椅
子部支え１２に固定される。

【００１７】次いで、コントローラ３４を操作すること
により、昇降機構３３を介して椅子部支えを上昇させ
る。このとき、入浴用車椅子１も、ローラ６が椅子部支
え１２のパイプ２０によって持ち上げられることによ
り、椅子部支え１２と一体的に上昇させることができ
る。このようにして入浴用車椅子１を椅子部支え１２ご
と上昇させることができるが、必要な高さ位置まで上昇
させると、コントローラ３４を介して昇降機構３３を停
止させ、この状態で、入浴用車椅子上の要介護者に対す
る洗浄作業、あるいは、ベッドあるいはストレッチャか
らの入浴用車椅子へ要介護者の移乗作業を行えばよい。
なお、必要な作業が終わったら、その時点で、コントロ
ーラ３４を操作して昇降機構３３を介して入浴用車椅子
１の椅子部４を元の位置まで下降させた後、ペダル２８
を踏圧操作し、中間ロッド２７を介して係合ロッド２６
を所定角度回動させて該係合ロッド２６と被係合ロッド
４ａとの係合を解除する。その後、入浴用車椅子１を昇
降装置１０から離間するように引き出せばよい。

【００１８】＜第２の実施の形態＞図７〜図９で示す第
２の実施の形態は、ピット式の浴槽に入浴する場合に用
いられる、図１０に示すようなキャスタ付きの台座４０
によって椅子部４１が固定的に支持される形式の入浴用
車椅子４２を昇降させるために用いられる昇降装置であ
る。すなわち、昇降装置４５は、前後にキャスタ４６ａ
を備える基台４６と、入浴用車椅子４２の台座４０が乗
せられる昇降フレーム４７と、昇降フレーム４７を昇降
させる昇降手段４８とからなる。昇降フレーム４７は、
昇降手段４８のパンタグラフ５０を収納する上板部４７
ａと、該上板部４７ａの外側に延びる下板部４７ｂとか
ら構成されている。下板部４７ｂの前端は傾斜部４７ｂ
ｂが形成され、この傾斜部４７ｂｂを利用して前記入浴
用車椅子４２のキャスタが乗り上げられる。

【００１９】前記昇降手段４８は、左右のパンタグラフ
５０と、昇降機構５１とからなる。パンタグラフ５０
は、左右の一対の中空ロッド５２，５２が中央をピン結
合されて、前記基台４６と昇降フレーム４７との間にＸ
字状に組み込まれたものであり、昇降フレーム４７を左
右及び前後方向へずれることなく真上に案内するもので
ある。また、昇降機構５１は、起立シリンダ５３と、該
起立シリンダ５３の上端に取りつけられたスプロケット
５４と、該スプロケット５４に巻回されたチェーン５５
とからなるものであり、チェーン５５の一端は基台４６
の一部であるハンドル基部５６に固定され、チェーン５
５の他端は前記昇降フレーム４７の後端部に連結されて
いる。

【００２０】この昇降装置４５によって入浴用車椅子４
２を所定高さまで上昇させるには、まず、昇降装置４５
を固定させ、前端の傾斜部４７ｂｂを利用して入浴用車
椅子４２のキャスタを昇降フレーム４７上に乗り上げさ
せる。次いで、この乗り上げさせた入浴用車椅子のキャ
スタを固定した後、ハンドル５６に設けてある操作スイ
ッチ５６ａを操作し、昇降機構５１を作動させて、昇降
フレーム４７を上昇させる。すなわち、起立シリンダ５
３を伸長させてスプロケット５４を上昇させると、チェ
ーン５５の一端が固定されている関係上、該チェーン５
５の他端が引き上げられ、これに伴い、このチェーン５
５の他端に連結されている昇降フレーム４７が持ち上げ
られる。このとき、昇降フレーム４７と一体的に入浴用
車椅子４２が上昇する。この入浴用車椅子４２が所定高
さに至ると昇降機構５１を停止させて、入浴用車椅子４
２をその位置で停止させる。この状態で、入浴用車椅子
４２上の要介護者に対する洗浄作業、あるいは移乗作業
を行なう。洗浄作業あるいは移乗作業が終わったら、そ
の時点で、操作スイッチ５６ｂを操作して昇降機構４５
を介して入浴用車椅子４２を元の位置まで下降させた
後、入浴用車椅子４２のキャスタをフリーにして入浴用
車椅子４２を移動させ、前端の傾斜部４７ｂｂを利用し
て昇降フレーム４７から降ろす。

【００２１】なお、本発明の昇降装置は、前記した実施
の形態に限られることなく、昇降機構の構造、昇降フレ
ームの構造等の具体的構成要件は、実施に当り適宜変更
可能である。

【００２２】

【発明の効果】請求項１記載の発明によれば、入浴用車
椅子の椅子部を椅子部支え上に位置決めし、昇降手段を
作動させることにより、入浴用車椅子を任意の高さまで
上昇させることができ、このため、介護者にとって入浴
用車椅子上の要介護者に対する洗浄作業や移乗作業が容
易になる。また、椅子部支えに、車椅子該入浴用車椅子
の椅子部を椅子部支えに固定する固定手段を設けている
から、椅子部支えを昇降させる際に上側の入浴用車椅子
が椅子部支えからずれたり移動したりするのを未然に防
止でき、安心して入浴用車椅子を昇降させることができ
る。請求項２記載の発明によれば、椅子部支えが、上部
を水受けカバーによって覆われているので、当該昇降装
置によって入浴用車椅子を移動させるときに廊下等に水
が滴り落ちるのを防止することができ、また、洗浄時に
石鹸水が基台や椅子部支えに流れるのを防止することが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施の形態の昇降装置によって
上昇させる対象となる、入浴用車椅子を示す浴槽装置の
断面図である。

【図２】本発明の第１の実施の形態を示す昇降装置の側
面図である。

【図３】同昇降装置の平面図である。

【図４】図２のＸ方向矢視図である。

【図５】図２のＹ方向矢視図である。

【図６】図２のＺーＺ線に沿う断面図である。

【図７】本発明の第２の実施の形態を示す昇降装置の側
面図である。

【図８】同昇降装置の平面図である。

【図９】同昇降装置の断面図である。

【図１０】同昇降装置によって上昇される対象となる、
入浴用車椅子を示す側面図である。

【符号の説明】

１ 入浴用車椅子 ２ 台座 ３ 支持ロッド ４ 椅子部 ５ 扉開閉式浴槽 ６ ローラ １０ 昇降装置 １１ 基台 １２ 椅子部支え １３ 昇降手段 ２５ 固定手段 ３０ 水受けカバー ３３ 昇降機構 ４０ 台座 ４１ 椅子部 ４２ 入浴用車椅子 ４５ 昇降装置 ４７ 昇降フレーム（台座支持部） ４８ 昇降手段 ５０ パンタグラフ ５１ 昇降機構

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 キャスタ付きの台座（２）と、該台座に
   立設された支持ロッド（３）と、該支持ロッドによって
   支持される椅子部（４）とを備えた入浴用車椅子（１）
   を昇降させる昇降装置（１０）であって、 キャスタを備える移動可能な基台（１１）と、 該基台に昇降可能に支持され、かつ、前記入浴用車椅子
   の椅子部の下面に当接される椅子部支え（１２）と、 前記基台に設けられ、かつ、前記椅子部支えを昇降させ
   る昇降手段（１３）とを備え、前記椅子部支えには、前記入浴用車椅子の椅子部を椅子
   部支えに固定する固定手段（２５）が付設されているこ
   と を特徴とする入浴用車椅子昇降装置。
2. 【請求項２】 請求項１記載の入浴用車椅子昇降装置に
   おいて、 前記椅子部支えは、上部を水受けカバー（３０）によっ
   て覆われていることを特徴とする入浴用車椅子昇降装
   置。