JP3217010B2 - 自由電子レーザ装置 - Google Patents

自由電子レーザ装置

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JP3217010B2
JP3217010B2 JP08435397A JP8435397A JP3217010B2 JP 3217010 B2 JP3217010 B2 JP 3217010B2 JP 08435397 A JP08435397 A JP 08435397A JP 8435397 A JP8435397 A JP 8435397A JP 3217010 B2 JP3217010 B2 JP 3217010B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発生する自由電子
レーザ(FEL)の波長領域が広い小型の自由電子レー
ザ装置に関し、特に大気センシングに適した波長領域の
放射光を発生する自由電子レーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自由電子レーザは1977年にメーデー
が原理実証実験を成功させて以来各国で活発に開発が進
められてきた。特に、線形加速器を用いた装置では、基
本的な実証は完了し、その利用研究の段階に入ってい
て、医療分野、同位体分離等の原子力分野、半導体分野
などに広がってきている。
【0003】これらの応用分野においてはそれぞれに適
した波長のレーザが必要となり、対象が多岐にわたれば
それだけ広い範囲の波長変化をさせる必要がある。とこ
ろで、自由電子レーザの波長は、アンジュレータを通過
するときの電子ビームのエネルギー及びアンジュレータ
の磁場強度と磁石の周期によって決定される。従って、
アンジュレータに永久磁石を用いた自由電子レーザ装置
においては、磁石の周期を変更することは困難であり、
また磁場強度は永久磁石の残留磁界の強度により制約を
受けるので、同じエネルギー水準を有する電子ビームを
用いて広範囲の自由電子レーザを発生させることはでき
ない。
【0004】そこで、従来、例えば特開平6−2963
0に開示されているように、複数の加速管を直線上に並
べておいて、電子銃から放射される電子ビームを適当な
数の加速管を通過させて順次加速し所定のエネルギー水
準まで加速されたところで偏向電磁石群により取り出し
て、それぞれの水準に適合するように調整されたアンジ
ュレータに入射させることにより、所望の波長域の自由
電子レーザを選択して発生できるようにしていた。この
ように、所望の波長領域ごとにアンジュレータを備え
て、エネルギー水準の異なる電子ビームを導入して自由
電子レーザを発生させるため、広い波長範囲の自由電子
レーザを得ることができる。
【0005】この方法を小型の装置に応用しようとする
と、例えば図6に示すような構成になる。RFガンなど
適当な電子銃で発生する電子ビームは加速管を走行して
所定のエネルギーまで加速されると偏向電磁石により取
り出されて、加速管と平行に設けられたアンジュレータ
に入射され、放射光を発生する。放射光はアンジュレー
タを挟んで対向するミラーチェンバ中の反射鏡の間を往
復する間に電子ビームと相互作用して所定の波長の鋭い
ピークを持ったレーザ光となり対象物に向かって射出さ
れる。アンジュレータを通過した電子ビームは下向き偏
向磁石により下方に設けられたビームダンパに棄却され
る。より短い波長のレーザ光が求められる場合は、電子
ビームを必要な数の加速管を直列に走行させて高い水準
のエネルギーを与えてから偏向電磁石により別のアンジ
ュレータに導き光放射させ、この光ビームをミラーチェ
ンバ間で光共振させて所定の波長を有するレーザ光とし
て射出させる。
【0006】ところがこうした方法では、波長範囲が大
幅に異なる場合は、加速管やアンジュレータを目的の波
長に適するように一旦調整して用い、その後に波長範囲
を変更するためには改めて加速管やアンジュレータの調
整をし直す必要がある。また、波長範囲が広ければ広い
ほど必要とされるアンジュレータの台数が多くなりコス
トが大きくなる。また装置も巨大なものとなりがちであ
る。したがって、設置場所の条件が厳しく使用対象の制
約が大きい。特に、多数の地点で局所的な気象状況を観
測する必要がある大気センシングに用いるためには、よ
り小型で低廉な装置であることが望まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の解決
しようとする課題は、より少ない要素で構成される小型
で経済的な自由電子レーザ装置を提供することによっ
て、広い波長範囲の自由電子レーザを得ることができる
ようにすることであり、特に大気センシングに適した波
長範囲の自由電子レーザを放射する小型の自由電子レー
ザ装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の自由電子レーザ装置は、複数の線形加速器
を直列に配設し電子ビームが全部の線形加速器を通過し
た後に1基のアンジュレータで放射光を発生するように
構成した装置であって、線形加速器の間から電子ビーム
を逸流させて後続の線形加速器を通さずにそのアンジュ
レータに導くこともできるようにして、波長領域の異な
る複数の自由電子レーザ(FEL)を発生するようにし
たことを特徴とする。
【0009】また、本発明の自由電子レーザ装置は、電
子銃と第1の線形加速器と第1の偏向電磁石群と第2の
線形加速器と第2の偏向電磁石群をこの順に直線上に配
設し、1基のアンジュレータを第1偏向電磁石群と第2
偏向電磁石群の間に第2線形加速器と並んで配設した自
由電子レーザ装置であって、第1線形加速器と第2線形
加速器を通過した電子ビームがこのアンジュレータを線
形加速器中の電子ビームと反対方向に通過するととも
に、第1線形加速器を通過した電子ビームが第2線形加
速器を通らずに前記アンジュレータに導かれて線形加速
器中の電子ビームと同じ方向に通過することもできるよ
うにして、波長領域の異なる自由電子レーザを発生する
ようにしたものであってもよい。
【0010】なお、1基のアンジュレータを上流側の第
1線形加速器と並んで配設して、第2線形加速器から入
射するときの電子ビームと第1線形加速器から入射する
ときの電子ビームが共に線形加速器中の走行方向と逆の
方向に通過するようにしたものであってもよい。さら
に、第2偏向電磁石群とアンジュレータの間にもう1群
の偏向電磁石群を設けるようにしてもよい。また、発射
される自由電子レーザが2.3μmから26μmの範囲
に波長を変化させて大気センシングができるようにする
ことが好ましい。
【0011】本発明によれば、従来複数必要とされてき
たアンジュレータを1基で兼用するため、装置の製作に
掛かる費用が節減でき、また設置スペースが小さくなり
装置重量も小さくなる。また、1基のアンジュレータを
第1偏向電磁石群と第2偏向電磁石群の間に第2線形加
速器と並んで配設した本発明の自由電子レーザ装置は、
装置構成の長さが従来と比較してアンジュレータの分だ
け短くなるため、これらを搭載する架台の面積も小さく
装置全体がより小さく纏まるので、装置の設置や移設も
より容易になる。この構成では通過後の電子ビームを除
去する下向き偏向電磁石をアンジュレータを挟んで対向
する位置に1基増設するだけで、他のアンジュレータと
その周辺機器を節減することが可能となり経済的であ
る。
【0012】なお、1基のアンジュレータを上流側の第
1線形加速器と並んで配設して、第2線形加速器から入
射するときの電子ビームと第1線形加速器から入射する
ときの電子ビームが同じ方向に通過するようにした自由
電子レーザ装置は、下向き偏向電磁石が1基あればよい
ので、さらに設備費を節約することが可能となる。な
お、第2偏向電磁石群とアンジュレータの間にもう1群
の偏向電磁石群を設けることにより、アンジュレータを
挟んで対置されるミラーチェンバ間の距離を短くする
と、放射光の共振効率も向上する。さらに、発射される
自由電子レーザが2.3μmから26μmの範囲に波長
を変化させて大気センシングができるようにしたもの
は、従来よりコスト及び敷地の問題をより対処し易いも
のとするので、より多くの地点に設置して大気状態の観
測を行うようにすることができる。
【0013】このように、本発明では第1加速管を用い
て加速した電子ビームも、さらに第2加速管を用いて加
速した電子ビームも、同じアンジュレータ中を通過させ
てFELを発生させる。1個のアンジュレータで広範囲
の波長領域にわたって変化するFELを発生するからコ
ストも小さくなる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る自由電子レー
ザ装置を、図面を用い実施例に基づいて詳細に説明す
る。図1は本発明の第1実施例を示す自由電子レーザ装
置の主要要素を表した配置図、図2は本実施例の作用を
説明する図表、図3と図4と図5はそれぞれ本発明の別
の実施例を示す自由電子レーザ装置の骨格を表した配置
図である。
【0015】図1において、1はRF電子銃、2は第1
加速管、3は第1偏向電磁石群、4は第2加速管、5は
第2偏向電磁石群、6はアンジュレータ、7は下向き偏
向電磁石、8は光共振系の第1ミラーチェンバ、9は第
2ミラーチェンバ、10は全体架台である。第1偏向電
磁石群3と第2偏向電磁石群5は、それぞれ2基の偏向
電磁石aと、電磁石群の入射側と出射側にそれぞれ備え
た1対ずつの4極電磁石bと、偏向電磁石の間に備えた
1基の4極電磁石bから構成される。第1ミラーチェン
バ8と第2ミラーチェンバ9は、光共振させるための反
射鏡を備えたもので、間にアンジュレータ6と下向き偏
向電磁石7の他に第1偏向電磁石群3の1個の偏向電磁
石aと第2偏向電磁石5の1個の偏向電磁石aを挟んで
配設されている。両ミラーチェンバ中の反射鏡は光軸を
一致させて鏡面が互いに対向するように配置されてい
る。
【0016】本実施例の自由電子レーザ装置では、RF
電子銃1から放射される電子ビームは第1加速管2で第
1段の所定エネルギーまで加速され、その後第2加速管
4で第2段の所定エネルギーまで加速される。電子ビー
ムを第2加速管4に導入するときには、第1偏向電磁石
群3の偏向電磁石aを励起しないようにして運転する。
第2加速管4を通過して第2段エネルギーまで加速され
た電子ビームは、第2偏向電磁石群5で軌道を平行に移
動させてアンジュレータ6を通過し、下向き偏向電磁石
7で下方に偏向して図外の電子ビームダンパに排出され
る。ここで、装置全体の長さをより短くするためには、
第2偏向電磁石群5の2個の偏向電磁石aにより電子ビ
ームの軌道がほぼ直角に偏向されるようにすることが好
ましい。
【0017】アンジュレータ6は強力な永久磁石を所定
のピッチで極性が交代するように配設した磁石列を対向
して配置したもので、磁石列間のギャップを調整するこ
とにより電子ビームの軌道における磁場強度を変化させ
て、K値を所定の値に制御することができるようになっ
ている。アンジュレータ6の中で電子ビームが蛇行して
発生する放射光は第1ミラーチェンバ8と第2ミラーチ
ェンバ9の反射鏡間を往復する間に電子ビームと相互干
渉しつつ波長分布を尖鋭化しエネルギーを累積し、強く
て単色性のよい自由電子レーザ(FEL)となる。
【0018】また、第1偏向電磁石群3を運転すれば、
第1加速管2により第1段エネルギーまで加速された電
子ビームが第2加速管4に入射する前に第1偏向電磁石
群3により軌道を平行に移動させてアンジュレータ6に
入射するようになる。アンジュレータ6を通過した電子
ビームは下向き偏向電磁石7で下方に偏向して図外の電
子ビームダンパに排出される。第1段エネルギーは第2
段エネルギーより低いため、第1段エネルギー水準の電
子ビームにより生成されるFELの波長は第2段エネル
ギー水準の電子ビームによるFELより波長が長くな
る。
【0019】本実施例の自由電子レーザ装置ならば、長
波長FELを発生させるために使用する第1加速器2の
出射電子ビームをそのまま第2加速器4に導入してさら
に加速し、短波長FELを発生するために使用できるよ
うに加速管を調整することにより、一旦加速管を調整す
れば波長選択の度に調整する必要がなくなる利点があ
る。なお、第1偏向電磁石群3が第2偏向電磁石群5と
同じ磁石構成を有するようにすれば、装置を構成する部
品の種類が少なくなり製作上および保全上の利益があ
る。一方、偏向電磁石aの偏向角度を直角より小さくす
ることは与えたエネルギーの利用効率を高める効果があ
る。
【0020】このように、本実施例の自由電子レーザ装
置は、直線上に配設された電子ビーム発生部、第1電子
加速部、第2電子加速部、および、これらと平行してア
ンジュレータ、FEL共振系を備え、第1電子加速部の
みで加速した電子ビームと、さらに第2電子加速部を通
して加速した電子ビームを選択して同じアンジュレータ
でFELを発生させる。この装置は1基のアンジュレー
タしか備えないにも拘わらず、得られるFELの波長は
広範囲の波長領域にわたって選択することができる。
【0021】K値がkのアンジュレータにエネルギーを
静止エネルギで割ったローレンツファクター値γを有す
る電子ビームを導入したときに得られるFELの波長λ
との間には、 λ=(1+k2/2)2/2γ2 (1) の関係がある。図2は、電子ビームのエネルギーγを横
軸にFELの波長λを縦軸にとり、アンジュレータのK
値が0.7と2.5のときについて両者の関係を示すグ
ラフである。本実施例の自由電子レーザ装置のアンジュ
レータは、周期長を32mmとしている。K値はアンジ
ュレータの磁場強度に比例するパラメータで、本実施例
に用いたアンジュレータのK値は、十分なFELゲイン
を得るために必要な最小値が0.7であり、アンジュレ
ータギャップを最狭で5mmとすることから、最大値が
2.5となる。本アンジュレータでは磁石列間の距離を
変えたり両者を軸方向に相対的に平行移動させることに
より上記0.7から2.5の範囲で容易に変化させるこ
とができる。従って、これらの特性曲線により挟まれた
図中のハッチング部分が調整可能なFEL波長領域であ
る。
【0022】本実施例では、第1加速管2でエネルギー
を25MeVまで加速した電子ビームをアンジュレータ
6に導いてFELを発生させると、FELの波長はK値
の範囲に従ってほぼ7〜26μmの範囲で可変となる。
また、さらに第2加速管4によりエネルギーを47Me
Vまで加速した電子ビームを用いてFELを発生させれ
ば、2.3〜7.5μmの範囲で波長可変となる。従っ
て、第1加速管2で電子エネルギーを25MeVまで加
速し、さらにこの電子ビームを第2加速管4に入射して
47MeVまで加速するように機器調整を行っておい
て、第1偏向電磁石群3の励磁により電子ビーム走行軌
道の切換を行うことによりアンジュレータ6に入射する
電子ビームのエネルギーを切り換えるようにすることに
より、2.3〜26μmの範囲で波長選択可能なFEL
発生装置となる。
【0023】例えば、2.3〜26μmの波長範囲を有
するFELによれば、FELを空中に放射して吸収を測
定して大気成分のセンシングを行う場合に、2.3μm
と4.65μmに吸収帯を持つCO、3.6〜3.8μ
mに吸収帯を持つHCl、CH4、N2O、H2Sおよび
2CO、5.3μmに吸収帯を持つNO、6.5μm
に吸収帯を持つNO2、8.77μmに吸収帯を持つS
2、9.6μmに吸収帯を持つO3、14μm付近に吸
収帯を持つWF6やSF4等、通常必要とされる殆どの成
分を測定することができる。このように、本実施例の自
由電子レーザ装置により、1基のアンジュレータを用い
た経済的な装置で、電子加速部の調整を毎時繰り返すこ
となく、広範囲にFELの波長を調整することができる
ようになる。
【0024】なお、上記実施例の説明では波長可変領域
を2.3〜26μmとしているが、この範囲は必要によ
り適当に選択することができることは言うまでもない。
また、上記実施例では電子エネルギーを2段の電子加速
管で加速し格段の出射ビームをそれぞれ利用したが、さ
らに多数の電子加速管を備えて直列的に加速し、その段
毎に備えた偏向電磁石群で当該エネルギーまで加速され
た電子ビームを偏向させてアンジュレータに供給するよ
うにしてもよい。このようにすると、より連続性をもっ
た波長選択が可能となり、装置の運転が容易になる効果
がある。さらに、偏向電磁石群等において具体的に説明
した構成に限られるわけでなく所定の機能を有する構成
であれば本発明の技術的思想から逸脱しないことは当然
である。
【0025】図3は、本発明の第2の実施例を示す自由
電子レーザ装置の骨格を表した配置図である。本実施例
が図1の実施例と異なるところは、アンジュレータを第
2線形加速器の先に配設する代わりに第2線形加速器と
平行に並んで配設するようにしてミラーチェンバ間の共
振距離を短縮したところであり、この配置変更に伴う変
更点以外には本質的な違いはない。アンジュレータをこ
の位置に配設することにより、装置全体をアンジュレー
タの分だけ短くすると共に共振ミラーの距離をより短く
することができ、FEL出力の立ち上がり時間を短縮す
る他に設置場所の制約が少なくなる利点がある。以下図
面により本実施例の自由電子レーザ装置を説明する。な
お、図中、図1と同じ機能を有する機器については同じ
参照番号を付して説明の簡略を図る。図3において、1
はRF電子銃、2は第1加速管、3は第1偏向電磁石
群、4は第2加速管、5は第2偏向電磁石群、6はアン
ジュレータ、7は第1下向き偏向電磁石、8は光共振系
の第1ミラーチェンバ、9は第2ミラーチェンバ、10
は全体架台、11は第2下向き偏向磁石である。
【0026】アンジュレータ6は第2加速管4と平行に
並んで配設される。第2加速管4で第2段エネルギーま
で加速して射出された電子ビームは、第2偏向磁石群5
の2個の偏向電磁石により180度偏向され、第2加速
管4と並列して配置されたアンジュレータ6の図中下側
の入口に輸送される。このため、第2偏向磁石群5の後
段の偏向電磁石aは図1の実施例と射出方向が180度
異なるように配設されている。こうしてアンジュレータ
を通過した電子ビームは第2下向き偏向電磁石11によ
り下方に偏向して図外の電子ビームダンパに排出され
る。図1の実施例と比較すると、第1ミラーチェンバ8
と第2ミラーチェンバ9の間には第2下向き偏向電磁石
11が余分に介在することになるが、第2加速管4の長
さに相当する空間が排除されるので、ミラーチェンバ内
の反射鏡表面間距離は大幅に短縮される。このため、ア
ンジュレータ6中で生ずる電子ビームと放射光の相互干
渉効率が向上し、より早く安定したFELを生成できる
ようになる。
【0027】また、第1偏向電磁石群3を運転すれば、
第1段エネルギーまで加速された電子ビームが第1加速
管2から射出されたところで第1偏向電磁石群3により
軌道を平行に移動させてアンジュレータ6に入射するよ
うになる。アンジュレータ6を通過した電子ビームは第
1下向き偏向電磁石7で下方に偏向して図外の電子ビー
ムダンパに排出される。このように、本実施例の自由電
子レーザ装置は第2実施例の自由電子レーザ装置よりよ
い性能を有するにも拘わらず、図1の実施例が第2加速
管4の先の延長部分にアンジュレータ6を配設している
のに対して第2加速管4と並列に配設しているため、装
置の長さが短く、全体架台10の面積が小さくなる。こ
のため、場所がより狭くても設置することが可能とな
る。
【0028】図4は、本発明の第3の実施例を示す自由
電子レーザ装置の骨格を表した配置図である。第3実施
例が第2実施例と異なるところは、アンジュレータを第
2線形加速器と平行に並んで配設する代わりに、第1線
形加速器と並行に配設したことであり、この配置変更に
伴う変更点以外には本質的な違いはない。アンジュレー
タをこの位置に配設することにより、下向き偏向電磁石
を1台節約することができると共にその分だけ装置全体
を短くすることができ、より経済的になり場所の制約が
より小さくなる利点がある。以下図面により第3実施例
の自由電子レーザ装置を説明する。なお、図中、図3と
同じ機能を有する機器については同じ参照番号を付して
説明の簡略を図る。図4において、1はRF電子銃、2
は第1加速管、3は第1偏向電磁石群、4は第2加速
管、5は第2偏向電磁石群、6はアンジュレータ、8は
光共振系の第1ミラーチェンバ、9は第2ミラーチェン
バ、10は全体架台、11は下向き偏向磁石である。
【0029】アンジュレータ6は第1加速管2と平行に
並んで配設される。第2加速管4で第2段エネルギーま
で加速して射出された電子ビームは、第2偏向磁石群5
の2個の偏向電磁石により180度偏向され、第1加速
管2と並列して配置されたアンジュレータ6の図中左側
の入口に輸送される。アンジュレータ6を通過した電子
ビームは下向き偏向電磁石11により下方に偏向して図
外の電子ビームダンパに排出される。アンジュレータ6
の中で発生する放射光は第1ミラーチェンバ8と第2ミ
ラーチェンバ9の反射鏡間で電子ビームと相互干渉して
単色性がよく輝度の高いFELとなる。
【0030】また、第1偏向電磁石群3を運転すれば、
第1段エネルギーまで加速された電子ビームが第1加速
管2から射出されたところで第1偏向電磁石群3の2個
の偏向電磁石により180度偏向され、第1加速管2と
並列して配置されたアンジュレータ6の入口に輸送され
る。このため、第1偏向磁石群3の後段の偏向電磁石a
は図3の第2実施例と射出方向が180度異なるように
配設されている。アンジュレータ6を通過した電子ビー
ムは下向き偏向電磁石11で電子ビームダンパに排出さ
れる。このように、本実施例の自由電子レーザ装置は第
2実施例の自由電子レーザ装置に対して、下向き偏向電
磁石を1個節減することができ、かつその分だけ装置全
体の長さが短くなる。また、電子ビームダンパの削減に
伴い電子ビームの減速に伴う放射線の発生源を減少させ
る効果もある。
【0031】図5は本発明の第4の実施例を示す自由電
子レーザ装置の主要部の配置を表した平面図である。第
4実施例が図4の第3実施例と異なるのは、第3の偏向
電磁石群をさらに設けることにより、共振系の反射鏡間
距離を短縮してエネルギー蓄積をより容易にするととも
に装置全体の長さをより短縮するところである。以下図
面により第4実施例の自由電子レーザ装置を説明する。
なお、図中、図4と同じ機能を有する機器については同
じ参照番号を付して説明の簡略を図る。図5において、
1はRF電子銃、2は第1加速管、3は第1偏向電磁石
群、4は第2加速管、5は第2偏向電磁石群、6はアン
ジュレータ、8は光共振系の第1ミラーチェンバ、9は
第2ミラーチェンバ、10は全体架台、11は下向き偏
向磁石、12は第3偏向電磁石群である。
【0032】第2加速管4で第2段エネルギーまで加速
して射出された電子ビームは、第2偏向磁石群5の2個
の偏向電磁石により180度偏向され、さらにアンジュ
レータ6に入射する前に第3偏向磁石群12により走行
軌道を平行にずらしてアンジュレータ6の入口に輸送さ
れる。また、第1加速管により第1段エネルギーまで加
速された電子ビームをアンジュレータ6の入口に輸送す
るため、第1偏向磁石群3の偏向電磁石間の距離がのば
されて、後段の偏向電磁石aの電子ビーム射出位置が前
記第3偏向磁石群12の後段偏向電磁石aの電子ビーム
射出位置と同軸になるように配設されている。このよう
に配設するようにすると、第1ミラーチェンバ8と第2
ミラーチェンバ9の間の距離がほぼ第2加速管4の長さ
分だけ短縮され、かつ、装置全体の長さが第1ミラーチ
ェンバの長さ分だけ短縮されることになる。このため、
共振系における光エネルギーの蓄積がより早く容易にな
り、また装置の設置場所の制約がより緩くなる利点があ
る。
【0033】上記実施例では、偏向電磁石群の構成要素
の形状や組み合わせを含めて、諸元に具体的な数値に基
づいて説明しているが、これらの形状や数値は発明の理
解を容易にするために使用したものであって設計上の選
択に過ぎず、当業者ならば発明の技術的思想に基づいて
他の適当な形状や値を選択して組み合わせることができ
ることは言うまでもない。例えば偏向電磁石群は永久磁
石で組み上げた一体の磁石構造体であってもよい。
【0034】
【発明の効果】以上詳細に説明した通り、本発明の自由
電子レーザ装置は、広い範囲にわたって自由電子レーザ
の波長が選択できる上、小型で低廉な装置であるため、
広く利用目的に対応できる上、利用現場の設置条件に制
約されることが少なく、経済性に優れる。また、特にF
ELの波長範囲を2.3〜25μmとする場合は、大気
センシングに適用して効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す自由電子レーザ装
置の配置図である。
【図2】本発明の自由電子レーザ装置の作用を説明する
グラフである。
【図3】本発明の第2の実施例を示す自由電子レーザ装
置の配置図である。
【図4】本発明の第3の実施例を示す自由電子レーザ装
置の配置図である。
【図5】本発明の第4の実施例を示す自由電子レーザ装
置の配置図である。
【図6】従来の自由電子レーザ装置の配置図である。
【符号の説明】
1 電子銃 2、4 加速管 3、5 偏向電磁石群 6 アンジュレータ 7、11、12 下向き偏向電磁石 8、9 ミラーチェンバ 10 全体架台 a 偏向電磁石 b 4極電磁石
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−29630(JP,A) 特開 平8−148299(JP,A) 特開 平8−203698(JP,A) 特開 平3−173492(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01S 3/30 H05H 13/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の線形加速器を直列に配設し電子ビ
    ームが全部の線形加速器を通過した後に1基のアンジュ
    レータで放射光を発生するように構成した自由電子レー
    ザ装置において、線形加速器の間から電子ビームを逸流
    させて後続の線形加速器を通さずに前記アンジュレータ
    に導くこともできるようにして、波長領域の異なる複数
    の自由電子レーザを発生するようにしたことを特徴とす
    る自由電子レーザ装置。
  2. 【請求項2】 電子銃と第1の線形加速器と第1の偏向
    電磁石群と第2の線形加速器と第2の偏向電磁石群を直
    線上に配設し、1基のアンジュレータを第1偏向電磁石
    群と第2偏向電磁石群の間に第2線形加速器と並んで配
    設した自由電子レーザ装置であって、第1線形加速器と
    第2線形加速器を通過した電子ビームが前記アンジュレ
    ータを線形加速器中の電子ビームと反対方向に通過する
    とともに、第1線形加速器を通過した電子ビームが第2
    線形加速器を通らずに前記アンジュレータに導かれて線
    形加速器中の電子ビームと同じ方向に通過することもで
    きるようにして、波長領域の異なる自由電子レーザを発
    生するようにしたことを特徴とする自由電子レーザ装
    置。
  3. 【請求項3】 電子銃と第1の線形加速器と第1の偏向
    電磁石群と第2の線形加速器と第2の偏向電磁石群を直
    線上に配設し、1基のアンジュレータを第1線形加速器
    と並んで配設した自由電子レーザ装置であって、第1線
    形加速器と第2線形加速器を通過した電子ビームが第2
    偏向電磁石群を介して前記アンジュレータを線形加速器
    中の電子ビームと反対方向に通過するとともに、第1線
    形加速器を通過した電子ビームが第2線形加速器を通ら
    ずに第1偏向電磁石群を介して前記アンジュレータに導
    かれて線形加速器中の電子ビームと反対の方向に通過す
    ることもできるようにして、波長領域の異なる自由電子
    レーザを発生するようにしたことを特徴とする自由電子
    レーザ装置。
  4. 【請求項4】 前記第2偏向電磁石群と前記アンジュレ
    ータの間にさらに第3の偏向電磁石群を設けて、アンジ
    ュレータを挟んで設けられる共振ミラー間の距離を短縮
    したことを特徴とする請求項3記載の自由電子レーザ装
    置。
  5. 【請求項5】 前記自由電子レーザにより2.3μmか
    ら26μmの範囲に波長を変化させて大気センシングが
    できるようにしたことを特徴とする請求項1から4のい
    ずれかに記載の自由電子レーザ装置。
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