JP3213955B2 - セラミックス超伝導体の製造方法 - Google Patents

セラミックス超伝導体の製造方法

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  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
  • Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超伝導軸受け、超伝導
非接触搬送機、送電線、アンテナ、超伝導マグネットな
どに用いるセラミックス超伝導体の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】最近もっとも注目されているセラミック
ス超伝導体の製造方法のひとつとしてMPMG法(Me
lt Powder Melt Grouth 法)が
挙げられる。MPMG法の詳細についてはたとえば、セ
ラミックス 25(1990)No.12.pp.11
64〜1170に述べられている。セラミックス超伝導
体に要求される特性のひとつに臨界電流密度Jcの値が
大きいことが挙げられるが、MPMG法で特に注目され
る点は高い臨界電流密度が得られることである。YBa
CuO系において、超伝導相であるYBa2Cu3
x(123相)は非超伝導相であるYa2BaCuO
5(211相)と液相との包晶反応によって生成し、1
23相中に211相が点状かつ均一に分散してピン止め
中心となることによって高い臨界電流密度が得られる。
MPMG法ではピン止め中心となる211相を試料全体
にわたって123相中に均一かつ微細に分散させるよう
に制御することが可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、MPMG法で
セラミックス超伝導体を製造する場合には、原料組成物
を1200℃から1400℃の温度で急熱、溶融し、さ
らに室温まで急冷した後に試料を粉砕して混合するとい
う工程が必要であった。この粉砕および混合の目的は、
その後で試料を再加熱して室温まで徐冷するときに21
1相を生成する核となるY23を試料に均一に分散させ
ることにあるが、大きな時間と労力を必要とする工程で
ある。
【0004】本発明は、この問題を解決するものであっ
て、試料を粉砕して混合するという工程なしで、連続成
長した超伝導相にピン止め中心が均一に分散した高い臨
界電流密度を有するセラミックス超伝導体の製造方法を
提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するものであり、セラミックス超伝導体用原料組成
物からなる試料を加熱することによって少なくともその
一部を溶融状態にする溶融工程、試料を溶融状態から室
温に急冷する急冷工程、急冷して得られた試料を再加熱
して半溶融状態にする半溶融工程、および試料を半溶融
状態から室温まで徐冷する徐冷工程を含むセラミックス
超伝導体の製造方法において、前記工程の少なくとも溶
融工程もしくは半溶融工程の一工程において、大きさと
方向の少なくとも一方が時間的に変化する変動磁界を試
料に印加することを特徴とする。
【0006】
【実施例】以下、実施例に従って、本発明を詳細に説明
する。
【0007】(実施例1)図1は、本発明の第1の実施
例におけるセラミックス超伝導体の製造方法のプロセス
を示した図である。図1に従って、このプロセスの詳細
を述べると次のとおりである。本実施例における原料組
成物はY23、BaCO3、およびCuOであり、それ
らの粉末を混合し、900℃の酸素雰囲気中で12時間
仮焼する。各粉末の混合比は、非超伝導相である211
相を析出させるために、超伝導相である123相の化学
量論的組成比を少し補正した値を用いる。次に、粉砕し
た仮焼粉を1400℃まで急加熱して溶融する。溶融時
間は15分である。この溶融状態において、電磁石を用
いて変動磁界を印加する。電磁石には正弦波交流を流し
て周期的な変動磁界をつくりだす。その後、変動磁界の
印加を停止すると同時に室温まで急冷する。さらに、も
う一度1100℃に再加熱して20分間半溶融させてか
ら、徐冷して超伝導体を得る。このプロセスについて変
動磁界の作用を中心に述べると次のとおりである。14
00℃の溶融状態は高融点のY23(融点2410℃)
粒子と液相の混合状態である。この状態で変動磁界を印
加すると液相中のイオンが攪拌され、それに追従してY
23粒子も攪拌されて均一に分散することになる。な
お、変動磁界の印加時間は短時間でも効果があるが、Y
23粒子が充分均一に分散するためには変動磁界の印加
時間を10分以上にすることが望ましい。本実施例で
は、攪拌作用のマージンを考慮する一方、工程時間を節
約するという立場から、変動磁界の印加時間を15分に
設定した。次に、1400℃の溶融状態から室温まで急
冷することにより、液相部分は結晶化せずにアモルファ
ス状態で固体化する。その後、1100℃に再加熱して
半溶融すると非超伝導相である211相と液相になる。
この半溶融の過程において、Y23粒子は溶融状態で印
加された変動磁界による攪拌作用のおかげで試料中に均
一に分散しているので、Y23を核として生成する21
1相も均一に分散する。つづいて、1100℃から徐冷
すると超伝導相である123相が211相と液相との包
晶反応によって生成する。
【0008】以上述べてきたように、本実施例では、従
来のMPMG法でおこなわれていた溶融、急冷後の粉砕
および混合という工程をおこなうことなくY23を均一
に分散できるため、超伝導相である123相を連続的に
成長させることが可能になり、且つピン止め中心になる
211相を123相中に均一に分散させることが可能に
なる。
【0009】本実施例の方法によって作製した試料の臨
界電流密度Jcを測定したところ、温度77K、ゼロ磁
場において1平方センチメートル当り約10の5乗アン
ペアという値が得られた。この値は、本実施例との比較
実験のために、溶融、急冷、粉砕、混合、半溶融、そし
て徐冷という従来の方法に従うプロセスによって作製し
た試料の臨界電流密度の値とほぼ同等あるいはそれ以上
であった。さらに、顕微鏡観察をおこなったところ、本
実施例の方法によって作製した試料にはボイドがほとん
ど観察されなかった。これは、Y23の粒子が変動磁界
の攪拌作用によって均一に分散したことに起因してい
る。このように、変動磁界の印加にはボイド抑制効果も
ある。この効果のおかげで、本実施例の方法によって作
製した試料は、高い臨界電流密度をもっているととも
に、その機械的強度も改善されている。
【0010】また、変動磁界を溶融工程だけでなく急冷
工程においても試料に印加し、その他の条件および原料
組成物は実施例1と同様にして作製した試料について臨
界電流密度を測定したところ、実施例1による試料の臨
界電流密度に比べて約5パーセント高い値が得られた。
したがって、変動磁界の効果に関しては、溶融工程にお
いて変動磁界を試料に印加するだけでも充分その効果が
得られるが、溶融工程だけでなく急冷工程においても変
動磁界を試料に印加すれば、その効果はより顕著にな
る。
【0011】(実施例2)図2は、本発明の第2の実施
例におけるセラミックス超伝導体の製造方法のプロセス
を示した図である。図2に従って、このプロセスの詳細
を述べると次のとおりである。原料組成物は実施例1の
場合と同様であり、Y23、BaCO3、およびCuO
である。混合、仮焼から急冷までのプロセスは実施例1
の場合とまったく同様であるので、ここでは説明を省略
する。半溶融工程では、試料を1100℃に再加熱して
20分間半溶融させる。この半溶融している20分間、
試料に電磁石を用いて変動磁界を印加する。電磁石には
正弦波交流を流して周期的な変動磁界をつくりだす。そ
の後、変動磁界の印加を停止して徐冷をおこない、超伝
導体を得る。
【0012】半溶融工程において変動磁界を試料に印加
した場合には、液相中のイオン攪拌に追従して、液相と
の包晶反応によって123相を生成する核となる211
相の粒子も攪拌される。したがって本実施例では、この
攪拌効果と溶融工程における変動磁界によるY23粒子
の攪拌効果の相乗効果によって、より高い臨界電流密度
とより高い機械的強度を有するセラミックス超伝導体が
得られることになる。実際、本実施例の方法によって作
製した試料について、臨界電流密度の測定と顕微鏡観察
をおこなったところ、実施例1の場合と同等以上の結果
を得た。特に、臨界電流密度は、実施例1の臨界電流密
度の1.5倍から2倍の値を得た。すなわち、本実施例
の方法によれば、従来のMPMG法でおこなわれていた
溶融、急冷後の粉砕および混合という工程なしで、より
高い臨界電流密度とより高い機械的強度を有するセラミ
ックス超伝導体を製造することができる。
【0013】なお、半溶融工程においてだけ変動磁界を
試料に印加し、溶融工程では変動磁界を試料に印加しな
いプロセスで超伝導体を作製して評価したところ、半溶
融工程において変動磁界を試料に印加するだけでもかな
りの効果があることが確認された。しかし、その臨界電
流密度は従来例の臨界電流密度を上まわるものではない
ので、半溶融工程だけでなく溶融工程にも変動磁界を印
加することがより望ましい。
【0014】以上で述べた実施例1と実施例2ではY系
のセラミックス超伝導体の製造方法について述べたが、
本発明はこれに限られるものではない。本発明は、Bi
系やTl系などの他の材料組成を用いたセラミックス超
伝導体の製造方法にも応用することができる。特に、半
溶融状態から室温までの徐冷過程において超伝導相が非
超伝導相と液相との包晶反応によって生成する材料組成
を用いた場合には、高い臨界電流密度が得られ、本発明
の効果は顕著である。
【0015】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、高い臨界電流密度を有するセラミックス超伝導体
を、粉砕して混合するという工程なしに製造することが
可能になる。さらに、本発明によれば、機械的強度も改
善される。したがって、高い臨界電流密度と高い機械的
強度を有するセラミックス超伝導体の製造プロセスを大
幅に簡素化および合理化することができるので、本発明
はセラミックス超伝導体の製造方法として工業上極めて
有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例におけるセラミックス超
伝導体の製造方法のプロセスを示す図である。
【図2】本発明の第二の実施例におけるセラミックス超
伝導体の製造方法のプロセスを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩下節也 長野県諏訪市大和3丁目3番5号セイコ ーエプソン株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−133363(JP,A) 特開 昭64−56384(JP,A) 特開 平1−286902(JP,A) 国際公開90/13517(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 1/00 CA(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックス超伝導体用原料組成物から
    なる試料を加熱することによって少なくともその一部を
    溶融状態にする溶融工程、試料を溶融状態から室温に急
    冷する急冷工程、急冷して得られた試料を再加熱して半
    溶融状態にする半溶融工程、および試料を半溶融状態か
    ら室温まで徐冷する徐冷工程を含むセラミックス超伝導
    体の製造方法において、前記工程の少なくとも溶融工程
    もしくは半溶融工程の一工程において、大きさと方向の
    少なくとも一方が時間的に変化する変動磁界を試料に印
    加することを特徴とするセラミックス超伝導体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 溶融工程および急冷工程において変動磁
    界を試料に印加することを特徴とする請求項1記載のセ
    ラミックス超伝導体の製造方法。
  3. 【請求項3】 溶融工程および半溶融工程において変動
    磁界を試料に印加することを特徴とする請求項1記載の
    セラミックス超伝導体の製造方法。
  4. 【請求項4】 変動磁界は一定の時間周期で変化する周
    期的変動磁界であることを特徴とする請求項1記載のセ
    ラミックス超伝導体の製造方法。
  5. 【請求項5】 超伝導相は非超伝導相と液相との包晶反
    応によって生成する超伝導物質であることを特徴とする
    請求項1記載のセラミックス超伝導体の製造方法。
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