JP3208750B2 - 背面投写型スクリーン - Google Patents

背面投写型スクリーン

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JP3208750B2
JP3208750B2 JP35946492A JP35946492A JP3208750B2 JP 3208750 B2 JP3208750 B2 JP 3208750B2 JP 35946492 A JP35946492 A JP 35946492A JP 35946492 A JP35946492 A JP 35946492A JP 3208750 B2 JP3208750 B2 JP 3208750B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、スクリーンの中央部
の輝度に対する周辺部の輝度の低下を防止し、またゴー
ストの発生を抑制した背面投写型スクリーンに関する。
【0002】
【従来の技術】大画面の映像の表示方法として、CRT
や液晶パネル等からの光学像を投写レンズにより背面投
写型スクリーンに拡大投写する方法が知られている。図
5はこのような方法で映像を形成する表示装置の一般的
な概略構成図である。同図の表示装置においては、投写
機1からの光学像が、フレネルレンズ2とレンチキュラ
ーレンズシート3からなる2枚式スクリーン4の面上に
結像され、観察者はこの投写像をスクリーン4のレンチ
キュラーレンズシート3側から観察することとなる。こ
こで、フレネルレンズ2は入射した光を観察者の位置す
る方向にほぼ向けさせるという作用を担い、レンチキュ
ラーレンズシート3はフレネルレンズ2から出た光を水
平および垂直の所定の角度に適当な分配割合で分散さ
せ、視野角を所定の範囲に広げるという作用を担ってい
る。
【0003】しかしながら、このような背面投写型スク
リーンにおいては、投写機1からの投写光Lがフレネル
レンズ2とレンチキュラーレンズシート3の各界面で反
射されるため、スクリーン全体としての透過率が低下
し、スクリーンとして明るい画面を得られないという問
題や、図4に示したように、フレネルレンズ2へ入射し
た光Lが光線Laとして出射する他に、出射側界面で反
射され、次いで入射側界面で再反射されてゴースト光L
bとして出射するという問題があった。
【0004】また、外光もフレネルレンズ2とレンチキ
ュラーレンズシート3の各界面で反射されるため、映像
の暗い部分が明るくなり、コントラストが低下するとい
う問題があった。
【0005】このような問題に対しては、フレネルレン
ズ面とレンチキュラーレンズ面の少なくとも一方にフッ
素樹脂化合物からなる薄膜を形成し、それにより各界面
での反射率を低減させ、スクリーン全体の透過光量を多
くすることが提案されている(特開平3−220542
号公報)。これにより、スクリーン中央部の輝度が増加
して画面が明るくなり、また、外光の反射が減りコント
ラストが向上するという効果が認められた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
特開平3−220542号公報にしたがってスクリーン
を構成するレンズの界面に薄膜を形成しても、スクリー
ンの周辺部の輝度が中央部の輝度に対して低いという問
題があり、また、ゴーストの発生を十分に抑制すること
はできなかった。
【0007】この発明は以上のような従来技術の問題点
を解決しようとするものであり、背面投写型スクリーン
において、中央部に対する周辺部の輝度の低下を防止
し、またゴーストの発生を抑制することを目的としてい
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明者らは、スクリ
ーンを構成するレンズの界面にフッ素樹脂等の薄膜を形
成してスクリーンの透過光量を多くする場合に、従来は
スクリーンの中央部の輝度を向上させることによりスク
リーン全体の輝度を向上させようとしていたため、薄膜
の厚さをスクリーンの中央部の反射率を最も低下させる
厚さに設定していたが、そのような厚さの薄膜では周辺
部の反射率を効率よく低下させることはできないこと、
即ち、中央部と周辺部とでは反射率を最も低下させる薄
膜の厚さが異なり、スクリーンの周辺輝度と中心輝度と
の差を小さくするためには周辺部の反射率を最も低下さ
せる厚さに薄膜を形成することが有効であることを見出
し、この発明を完成させるに至った。
【0009】即ち、この発明は、フレネルレンズを有す
る背面投写型スクリーンにおいて、フレネルレンズの入
射面または出射面の少なくとも一方に、屈折率がフレネ
ルレンズの構成基材よりも低い材料からなる薄膜が形成
され、かつその薄膜が、背面投写型スクリーンの周辺部
において透過率が最大となる厚さを有していることを特
徴とする背面投写型スクリーンを提供する。
【0010】一般に、背面投写型スクリーンにおいて
は、周辺輝度はスクリーンの中心から離れるにしたがっ
て単調に低下するので、スクリーンの中心から最も離れ
ている四隅部分において輝度の低下が大きくなり、その
部分の画面の明るさのむらが目立ちやすくなる。そこ
で、上述のこの発明の背面投写型スクリーンにおいて、
特にスクリーンの中央部に対する周辺部の輝度の低下を
抑制する場合には、スクリーンの四隅部分、即ち、背面
投写型スクリーンの対角線上の中心部から80〜100
%の位置において、薄膜の厚さを、透過率が最大となる
厚さに設定することが好ましい。
【0011】また、一般に、背面投写型スクリーンにお
いてゴースト光は前述の図4に示したように発生する
が、フレネルレンズの中心に近い領域では、ゴースト光
Lbは主光線Laと出射位置が近く、またフレネルレン
ズの出射面への入射角θ3 が小さく反射率も小さいた
め、その光量は少なくなり目立たなくなる。また、背面
投写型スクリーンは通常レンチキュラーレンズと共に用
いられるため、ゴースト光Lbのうち水平方向の出射角
が主光線Laと異なるものは、レンチキュラーレンズの
出射側に通常設けられている光吸収部で遮られて見えな
くなる。従って、ゴーストは、当該スクリーンに用いら
れる投射光学系、フレネルレンズ、レンチキュラーレン
ズの特性等により異なるが、一般には画面の上下でそれ
ぞれフレネルレンズの中心から中心角約120°の扇形
の範囲内で、且つ中心から約250mmより外側で観察
される。そこで、この発明の背面投写型スクリーンにお
いて、特にゴーストの発生を抑制する場合には、このよ
うな背面投写型スクリーンのゴースト発生域において透
過率が最大となる厚さに薄膜の厚さを設定することが好
ましい。
【0012】以下、この発明の背面投写型スクリーンを
図面に基づいて更に詳細に説明する。なお、各図中同一
符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0013】上述のように、この発明においては、フレ
ネルレンズに薄膜を形成するにあたり、その膜厚を、ス
クリーンの対角線上の中心部から80〜100%の位置
あるいはゴースト発生域といったスクリーンの周辺部に
おいて、透過率が最大となるような厚さに設定するが、
このような膜厚は次のようにして定める。即ち、一般
に、屈折率n1 の媒体から屈折率n2 の媒体へ光が入射
するとき、次のスネルの式(1)
【0014】
【数1】 n1 sinφ1 =n2 sinφ2 式(1) (式中、φ1 は入射角、φ2 は出射角を表す)が成立す
るから、S偏光の振幅反射率rS 及びP偏光の振幅反射
率rP はそれぞれ次式(2)及び(3)
【0015】
【数2】 rS =(n1 cosφ1 −n2 cosφ2 )/(n1 cosφ1 +n2 cosφ2 ) 式(2)
【0016】
【数3】 rP =(n2 cosφ1 −n1 cosφ2 )/(n2 cosφ1 +n1 cosφ2 ) 式(3) と表されることとなる。
【0017】一方、図6に示したように、一般に屈折率
0 の媒体から、屈折率n1 で厚さd1 の薄膜5へ光が
入射し、さらに屈折率n2 の媒体へ出射するとき、その
光の薄膜の反射率rは、次式(4)
【0018】
【数4】 r=(r0 +r1 −2iδ)/(1+r0 1 −2iδ) 式(4) (式中、r0 は屈折率n0 の媒体と屈折率n1 の薄膜と
の界面の反射率、r1 は屈折率n1 の薄膜と屈折率n2
の媒体との界面の反射率を表す。また、δは位相の遅れ
量を表し、2δ=(4π/λ)n1 1 cosφ1 で表さ
れる)と表される。また、このときのエネルギー反射率
Rは次式(5)
【0019】
【数5】 R=|r| 式(5) と表される。このようにして表される薄膜のエネルギー
反射率を、S偏光及びP偏光のそれぞれについて求める
ことにより、全体のエネルギー反射率Rを次式(6)
【0020】
【数6】 R=(RS +RP )/2 式(6) より求めることができ、この薄膜の透過率Tを次式
(7)
【0021】
【数7】 T=1−R 式(7) より求めることができる。以上のように、薄膜の透過率
Tは薄膜の膜厚d1 の関数となり、更に、入射角φ1
関数ともなる。
【0022】このような関係を図5のフレネルレンズ2
に薄膜を形成した場合に適用することにより、投写機1
からフレネルレンズ2の半径lの位置へ入射角θ1 で入
射した光のフレネルレンズ2の透過率を求めることがで
きる。即ち、図4に示したように、フレネルレンズ2の
入射面と出射面の両面に厚さd1 の薄膜を形成した場合
について、その入射角θ1 を前述の式(4)の入射角φ
1 に適用することにより、入射面に形成した薄膜の透過
率Ti が求まり、また同様に、入射角φ1 にフレネルレ
ンズ2の出射面における入射角θ3 を適用することによ
り、出射面に形成した薄膜の透過率To が求まり、これ
から全体の透過率Tt を次式(8)
【0023】
【数8】 Tt =Ti ×To 式(8) から求めることが可能となる。
【0024】図1は、図3に示したように、フレネルレ
ンズ2の入射面と出射面の双方に厚さd1 の薄膜5を形
成した場合につき、その中心部に入射した光と周辺部に
入射した光のそれぞれについて以上のようにしてフレネ
ルレンズの透過率Tt を求めたときの薄膜の厚さd1
透過率Tt との一般的な関係図である。図中、実線はフ
レネルレンズの中心部、即ち投写機からの入射角θ1
0°の位置に入射した光についての関係を表し、破線は
フレネルレンズの周辺部、即ち投写機からの入射角θ1
が比較的大きい位置に入射した光についての関係を表し
ている。
【0025】このように、中心部に入射する光の透過率
を最大にする薄膜の膜厚dx と周辺部に入射する光の透
過率を最大にする薄膜の膜厚dy とは異なる。この発明
においては、フレネルレンズに形成する薄膜を、周辺部
に入射する光の透過率が最大になる厚さdy にするの
で、従来のように中心部に入射する光の透過率を最大に
する厚さdx に形成した場合に比べて、スクリーンの中
心輝度と周辺輝度との差を小さくすることが可能とな
る。また、そのように透過率を最大にした領域では、ゴ
ーストの原因となる界面反射が最も効率よく抑制される
こととなるので、この発明によればゴーストの発生も抑
制することが可能となる。
【0026】この発明のスクリーンにおいて、薄膜の厚
さを定めるにあたり、スクリーンの周辺部のいずれの部
位の透過率が最大になるようにするかは、スクリーンの
大きさ、接地場所、スクリーンに対する観察者の位置な
どに応じて適宜定める。例えば、スクリーンの周辺輝度
を特に改善したい場合には、スクリーンの対角線上の中
心部から80〜100%の位置の透過率が最大となるよ
うにすることが好ましく、一般的には図2(a)に示し
たようにスクリーン4の対角線上で中心Oから90%の
位置Pの透過率が最大となるようにすればよい。また図
2(b)に示したようにスクリーン4の斜線部分にゴー
ストが発生する場合に、そのようなゴーストの発生を特
に抑制したい場合には、そのようなゴースト発生域での
透過率が最大となるようにすればよく、一般には、スク
リーン4の対角線上の中心Oからスクリーン上下方向に
80%の位置Qの透過率が最大となるようにすればよ
い。
【0027】このような厚さに形成する薄膜の材料とし
ては、その屈折率がフレネルレンズの構成基材よりも低
いものであればよい。一般には成膜の容易性からフッ素
系樹脂を使用することが好ましい。
【0028】また、このような薄膜の形成方法には特に
制限はなく、ディップ法、スプレー法、蒸着法等を使用
することができる。例えばディップ法でフッ素系樹脂の
薄膜を所定の厚さに形成する場合、ディップするフッ素
系樹脂組成物の粘度を制御したり、引上げ速度を制御す
ることにより、フレネルレンズの入射面と出射面の両面
に所期の厚さの薄膜を容易に形成することができる。
【0029】なお、この発明において形成する薄膜は、
必ずしもフレネルレンズの入射面と出射面の両面に形成
する必要はなく、いずれか一方の面に形成してもよい。
また、この発明は、図5に示したようなフレネルレンズ
2とレンチキュラーレンズシート3とからなる2枚式レ
ンズに限らず、フレネルレンズの背面にレンチキュラー
レンズ面が形成された1枚式レンズにも適用することが
できる。
【0030】
【作用】この発明によれば、フレネルレンズに薄膜を形
成してスクリーンの透過率を向上させるに際し、その薄
膜を、スクリーン周辺部の所定の位置での透過率が最大
となる厚さに形成する。したがって、スクリーンの中心
輝度に対する周辺輝度の低下を抑制することが可能とな
る。また、そのように透過率を最大にするスクリーン上
の位置をスクリーンのゴースト発生域とすることによ
り、ゴーストの原因となる反射光を低減させることがで
きるので、スクリーンのゴーストを抑制することが可能
となる。
【0031】
【実施例】以下、この発明を実施例により具体的に説明
する。
【0032】実施例1 屈折率1.494のアクリル樹脂からなるフレネルレン
ズ(焦点距離530mm)の入射面と出射面の両面に、
屈折率1.34のフッ素樹脂(CYTOP、旭硝子
(株)製)を、表1に示すように厚さd(nm)を変え
て形成し、そのフレネルレンズの中心から680mmの
距離から波長600nmの光を照射した場合についてフ
レネルレンズの中心での透過率T0 と中心から480m
mの位置での透過率T480 とを求め、さらにそれぞれの
位置でフッ素樹脂薄膜を形成しなかった場合の透過率に
対する透過率の増加率を算出した。また、このフレネル
レンズとレンチキュラーレンズシート(ピッチ0.9m
m、ゲイン5.2)とを組み合わせ、投射距離が680
mmのTVセットに取り付け、中心部と中心から480
mmの位置の輝度を測定した。この場合、測定は、スク
リーンの正面でスクリーンの中心から3mの距離に設け
た色彩色差計(CS−100、ミノルタ(株)製)を用
いて行った。これらの結果を表1に示す。
【0033】
【表1】 表1から、フッ素樹脂の膜厚を110nmとすると16
0nmにした場合に比べて中心部での透過率は大きい
が、このとき中心部と周辺部(中心から480mmの位
置)での透過率の差は16.9%と大きい。これに対し
て、フッ素樹脂の膜厚を160nmにすると中心部での
透過率は低下するが周辺部での透過率の増加率が大きい
ので、中心部と周辺部の透過率の差は12.9%と小さ
くなっている。また、スクリーン輝度も、フッ素樹脂の
膜厚を110nmとした場合に比べて160nmにした
場合の方が周辺部で大きい。したがって、このフレネル
レンズの投写系においては、フレネルレンズに形成する
フッ素樹脂の膜厚を160nmとすることにより周辺輝
度を大きく向上させられることがわかる。
【0034】実施例2 実施例1のフレネルレンズにおいて薄膜を形成しなかっ
た場合には、中心から280mmの位置にゴーストが観
察された。そこで、フレネルレンズの入射面と出射面の
両面に、実施例1と同様のフッ素樹脂を表2に示すよう
に厚さd(nm)を変えて形成し、それぞれの厚さで形
成した場合についてフレネルレンズの中心から280m
mの位置での反射率R280を求めた。また、これらの
フレネルレンズとレンチキュラーレンズシート(ピッチ
0.9mm、ゲイン5.2)とを組み合わせ、TVセッ
トに取り付けて画像を観察した。これらの結果を表2に
示す。
【表2】
【0035】表2からこのフレネルレンズの投写系にお
いては、フレネルレンズに形成するフッ素樹脂の膜厚を
140nmとすることにより膜厚を110nmにした場
合に比べて20%もゴーストの原因となる反射率が低下
することがわかる。実際、TVセットに取り付けた状態
で画像を観察した場合、ゴーストの発生が良好に抑制さ
れていることが認められた。
【0036】
【発明の効果】この発明の背面投写型スクリーンによれ
ば、中央部に対する周辺部の輝度の低下を防止し、また
ゴーストの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フレネルレンズに形成した薄膜の厚さと透過率
の関係図である。
【図2】スクリーンの周辺輝度を向上させる場合に、透
過率を最大とするスクリーン上の位置の説明図(同図
a)、及びスクリーンのゴースト発生域の説明図(同図
b)である。
【図3】両面に薄膜を形成したフレネルレンズに入射し
た光の光路の説明図である。
【図4】フレネルレンズで発生するゴースト光の説明図
である。
【図5】背面型投写型スクリーンを使用した表示装置の
一般的な概略構成図である。
【図6】薄膜を透過する光の光路の説明図である。
【符号の説明】
1 投写機 2 フレネルレンズ 3 レンチキュラーレンズシート 4 スクリーン 5 薄膜

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フレネルレンズを有する背面投写型スク
    リーンにおいて、フレネルレンズの入射面または出射面
    の少なくとも一方に、屈折率がフレネルレンズの構成基
    材よりも低い材料からなる薄膜が形成され、かつその薄
    膜が、背面投写型スクリーンの周辺部において透過率が
    最大となる厚さを有していることを特徴とする背面投写
    型スクリーン。
  2. 【請求項2】 該薄膜の厚さが、背面投写型スクリーン
    の対角線上の中心部から80〜100%の位置において
    透過率が最大となる厚さである請求項1記載の背面投写
    型スクリーン。
  3. 【請求項3】 該薄膜の厚さが、背面投写型スクリーン
    のゴースト発生域において透過率が最大となる厚さであ
    る請求項1記載の背面投写型スクリーン。
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