JP3206162B2 - 生体リズム曲線測定装置 - Google Patents

生体リズム曲線測定装置

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JP3206162B2
JP3206162B2 JP34292992A JP34292992A JP3206162B2 JP 3206162 B2 JP3206162 B2 JP 3206162B2 JP 34292992 A JP34292992 A JP 34292992A JP 34292992 A JP34292992 A JP 34292992A JP 3206162 B2 JP3206162 B2 JP 3206162B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒトの深部体温の計測
値から生体リズム曲線を測定するための生体リズム曲線
測定装置に関するものであり、特に、約1日周期の生体
リズム(サーカディアンリズム)を日常生活中で測定す
る用途に利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】様々な生体現象を時系列的に表現する
と、周期性を示すことが多い。しかも、その多くは自励
的な振動であると考えられており、生体リズムと総称さ
れている。生体リズムはその周期によっていくつかの種
類に分けられ、1年という長いものから数秒という短い
ものまである。人間は明期に覚醒度が向上して活動的と
なり、暗期に覚醒度が低下して休息に入るが、これはサ
ーカディアンリズム(Circadian rhyth
m:約1日を周期とするリズム)と呼ばれる生物時計
(Biological clock)によって刻まれ
る生体リズム(Biological rhythm)
の1つである。
【0003】生体リズムのうち、人間の生活に最も関わ
りの深いものは、約1日を周期とするサーカディアンリ
ズムである。人間の代表的なサーカディアンリズムとし
て、体温変動、睡眠覚醒サイクル、ホルモン分泌量変動
などを挙げることができる。その他、心身の活動度、作
業や運動能力、薬品に対する感受性、自律系の機能に至
るまで、人間の生活に付随する生理的現象はサーカディ
アン変動を示すと考えてよい。
【0004】ヒトのサーカディアンリズムは、深部体温
リズムを中心とするグループと睡眠覚醒サイクルを中心
とするグループとの2系統の振動体群に分かれるのでは
ないかという説が現在のところ有力である。深部体温リ
ズムは明暗周期の影響を受けており、睡眠覚醒サイクル
は社会的同調因子の影響を受けていると言われている。
覚醒度や生体リズムをモニターするには、実験室レベル
ではポリグラフ等のかなり進んだ技術が存在するが、日
常的な作業場面において被験者に苦痛を与えず、また、
その作業行動に支障がなく、非侵襲的に生体の活性度を
モニターすることはできないのが現状である。
【0005】以下、体温による生体リズムの計測法につ
いて説明する。体温、特に深部体温のリズムは、外部か
らの影響が少なく、明瞭なサーカディアンリズムを示す
こと、他のリズムとの関係がかなり明らかになっている
こと、連続計測が可能なことなどから、ヒトのサーカデ
ィアンリズムの中で最も重要な指標とされている。深部
体温計測法の候補としては、直腸温・鼓膜温(外耳道壁
の奥の温度でもよい)・食道温・深部皮下温・尿温・膣
温・肺動脈血温などが挙げられるが、誰でも長時間の連
続測定が可能という条件を満たすものは直腸温である。
しかし、いずれも被験者に心理的あるいは肉体的苦痛を
与える計測法であることが難点である。
【0006】直腸温の一般的な計測法は、先端にサーミ
スタを埋め込んだプローブを肛門から10cm以上挿入
し、それが抜けないようにテープで固定する方法であ
る。サーミスタの抵抗値から温度を算出してメモリに記
憶する装置が携帯用体温計として市販されている。ま
た、直腸温を直接計測する方法の他に、対流熱交換方式
で皮膚の表面から深部体温を測定できる装置(コアテン
プ)が市販されている。センサーの直径が大きくなるほ
ど、より深部の体温が計測でき、皮膚表面から約10m
m深さの体温計測まで可能である。しかし、この方式で
はセンサー部で皮膚を加熱する必要があり、リズム計測
のように長時間使用する場合には低温やけどの危険性が
あり、取り扱いに注意しなければならない。
【0007】次に、生体リズムの解析法について説明す
る。生体リズムの解析は、リズムの三要素(周期・位相
・形)を求めることが基本になる。体温リズムを解析す
るには、周期と最小値位相を求めると共に、形の特徴と
しては振幅を求める。体温リズムにおいては、特に最小
値位相が重要な要素であるが、これは視察により求める
方法が一般的である。
【0008】また、一定間隔で計測されたデータからリ
ズムの周期を求める方法としては、自己相関法(コレロ
グラム)、パワースペクトル法、コサイナー法、ペリオ
ドグラム法などを用いることができる。体温リズムの場
合、コサイナー法、ペリオドグラム法が利用されること
が多い。コサイナー法とは、正弦波への最小自乗近似に
より周期・振幅・位相を求める方法である。
【0009】次に、サーカディアンリズムを厳密に求め
る方法として、コンスタント・ルーチン(Consta
nt routine)法が知られている。この方法
は、深部体温といえども外乱の影響を受けるため、真の
リズムをそのまま表現しているとは限らないという観点
から、外乱を可能な限り除去するような計測条件を設定
して、被験者の直腸温を数十時間計測し、深部体温の周
期・振幅・位相を求める方法である。
【0010】一方、日常生活の中で体温計測結果から生
体リズムを測定する装置として、特願平3−15344
3号出願では、深部体温計測結果に対して外乱の影響を
補正する手段と体温リズム曲線から真のリズム曲線を推
定する手段とを備えた生体リズム曲線測定装置が提案さ
れている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、体温計
測による生体リズムの解析法としては、視察による方
法、コサイナー法、コンスタント・ルーチン法が一般的
であるが、視察による方法では定量的解析ができないと
いう問題がある。また、コサイナー法では外乱による体
温曲線の歪みを補正できないという問題があり、その
上、体温リズムの波形が実際には正弦波状とは限らない
という根本的な問題もある。
【0012】次に、コンスタント・ルーチン法では、外
乱の影響は除去できるが、実験室に被験者を数十時間拘
束する必要があり、日常生活におけるリズム計測は不可
能であるという問題がある。この方法は生体リズムがフ
リーランしている状態での計測ということになる。従っ
て、24時間周期の同調因子の影響を受ける通常の生活
で生体リズムがどのようになっているかを知ることはで
きない。生体リズムの特性を知るうえでは、フリーラン
周期や位相を知ることは勿論重要であるが、実際に社会
生活をする上では、24時間周期の同調因子あるいは勤
務ローテーションなどの社会の約束事にどの程度うまく
適応して生体リズムにメリハリがあるかどうかを知るこ
との方が大切であると考えられる。また、特願平3−1
53443号の出願で提案された方法では、外乱影響補
正手段の開示が不十分であった。
【0013】本発明はこのような点に鑑みてなされたも
のであり、その目的とするところは、日常的な作業場面
において、被験者に外乱を与えながらも、その外乱の影
響を除去して真の生体リズム曲線を測定できるようにし
た生体リズム曲線測定装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係る生体リズム
曲線測定装置にあっては、上記の課題を解決するため
に、図1に示すように、生体の深部体温を測定するため
の主センサー部2と、外乱計測用の副センサー部3と、
各センサー部2、3による計測タイミングを決定するた
めのタイマー手段4と、各センサー部2、3による計測
結果を時系列的に記憶するための記憶手段5と、セン
サー部3の計測結果に基づいて主センサー部2の計測結
果に対する外乱の影響を補正する補正手段6と、補正さ
れた体温のリズム曲線を出力するリズム曲線出力手段8
とから構成され、前記補正手段6は、図6に示すよう
に、副センサー部3の計測結果から体温上昇の原因が生
じている区間を判別し、その区間に体温反応遅延時間を
加えたものを体温が外乱の影響を受けて上昇した変動区
間として判別する外乱影響判別手段65と、外乱影響判
別手段65の出力結果に応じて主センサー部2の計測結
果のうち体温が外乱の影響を受けて上昇した変動区間の
体温データを削除して前後の体温データから補完する外
乱影響補正手段62とから構成されていることを特徴と
するものである。
【0015】なお、補正された体温のリズム曲線から真
のリズム曲線を推定する推定手段7と、リズム曲線の特
徴パラメータを出力する特徴パラメータ出力手段9を更
に備えることが好ましい。
【0016】
【作用】本発明においては、主センサー部2により直腸
温や鼓膜温(あるいは外耳道壁の奥の温度)あるいは体
幹部中枢温を計測し、副センサー部3では外気温や照
度、身体活動度、身体姿勢状態、心電情報(心拍数・R
−R間隔など)を計測する。各センサー部2、3による
計測タイミングはタイマー手段4により決定され、その
計測データは記憶手段5に時系列的に記憶される。この
記憶された計測結果に基づいて、図6に示すように、外
乱影響判別手段65と外乱影響補正手段62とを備えた
補正手段6により、副センサー部3の計測結果から体温
上昇の原因が生じている区間を判別し、その区間に体温
反応遅延時間を加えたものを体温が外乱の影響を受けて
上昇した変動区間として判別し、主センサー部2の計測
結果のうち体温が外乱の影響を受けて上昇した変動区間
の体温データを削除して前後の体温データから補完する
という手法で深部体温から外乱の影響を除去し、リズム
曲線出力手段8により体温のリズム曲線を出力するもの
である。
【0017】
【実施例】本発明の一実施例のブロック構成図を図1に
示す。本実施例では、検出手段1として、主センサー部
2と副センサー部3を備えている。主センサー部2は、
深部体温計測用であり、その主な計測項目は直腸温であ
る。直腸温の一般的な計測法は、先端にサーミスタを埋
め込んだプローブを肛門から10cm以上挿入し、それ
が抜けないようにテープで固定する方法である。サーミ
スタの抵抗値から温度を算出してメモリに記憶する装置
が携帯用体温計として市販されている。ただし、直腸温
が測定困難な場合には、代替計測項目として、鼓膜温
(外耳道奥の温度でもよい)あるいは体幹部中枢温を計
測する。また、副センサー部3は、外乱計測用であり、
その主な計測項目は、外気温と照度、及び身体の活動
度、姿勢状態、心電情報(心拍数・R−R間隔など)で
ある。この検出手段1による深部体温計測と外乱計測の
タイミングはタイマー手段4により決定される。タイマ
ー手段4のタイマー時間を任意に設定可能とすることに
より、可変サンプリングを行うことができる。これによ
り、体温変動の大きい部分では、サンプリング周期を短
くし、体温変動の小さい部分ではサンプリング周期を長
くすることができ、効率的な計測データの収集が可能と
なる。
【0018】検出手段1の主センサー部2と副センサー
部3の計測データは、記憶手段5に時系列的に記憶され
る。上述のタイマー手段4による計測間隔は、1分〜5
分の範囲とすることが好ましいが、計測間隔は例えば1
分程度に短く設定して、隣接する複数個(例えば5個)
の計測データの平均値を演算し、その平均値を時系列的
に記憶するようにしてもよい。
【0019】次に、補正手段6では、記憶手段5に時系
列的に記憶された計測データのうち、主センサー部2に
よる深部体温の計測データの失測値を補完し、副センサ
ー部3による外乱計測データに基づいて外乱要素の影響
を補正し、さらに、低周波通過フィルタで高周波ノイズ
を除去して体温リズム曲線を取り出すものである。推定
手段7は、体温リズムを近似する周期関数曲線によるカ
ーブフィッティング手段と、前後の点列からリズム曲線
の谷間やピークを推定する手段等を有する。リズム曲線
出力手段8は、リズム曲線の波形を表示する手段であ
り、例えば、グラフィック機能付きのLCDディスプレ
イにより構成されている。特徴パラメータ出力手段9
は、体温のリズム曲線の特徴を算出して出力するもので
ある。ここで、その他のリズム曲線の特徴としては、例
えば、デューティ比やスペクトル、立ち上がりの傾き、
極大値の数、極小値の数などが挙げられる。
【0020】次に、検出手段1の詳細な構成を図2に示
し説明する。図中、21はサーミスタ直腸温センサーで
あり、深部体温として直腸温を計測する。その計測デー
タは、データロガー51に記憶される。このデータロガ
ー51は各種の計測データを時系列的に記憶するための
記憶手段である。31は加速度センサーであり、例えば
万歩計のような構成で、被験者の手首に装着されて手首
の加速度を検出する。32は活動度計であり、手首の加
速度に基づいて身体の活動度を検出する。31は、手首
だけでなく、万歩計のように腹部に装着してもよく、そ
の場合、32は全身的な活動度を検出するものとなる。
その計測データは、単位時間当たりの加速度出力のゼロ
クロスの回数あるいは加速度出力の積分値としてデータ
ロガー51に記憶される。33は受光センサーであり、
受光量に応じて通電量が変化するものである。34は照
度計であり、受光センサー33の出力により周囲照度を
計測する。その計測データは、データロガー51に記憶
される。35はサーミスタ外気温センサーであり、周囲
温度を計測するものである。その計測データもデータロ
ガー51に記憶される。36は圧電あるいは感圧導電セ
ンサーであり、押圧力に応じて通電量が変化するもので
ある。37は姿勢計測装置であり、人体臀部あるいは大
腿部背中側上部などに装着した圧電あるいは感圧導電セ
ンサー36の出力により人体の姿勢、即ち、立位である
か座位・臥位であるかを計測する。その計測データは、
データロガー51に記憶される。39は心電情報計測装
置であり、心電(脈拍)センサー38の出力に応じて例
えば心拍数やR−R間隔という心電情報を計測する。そ
の計測データもデータロガー51に記憶される。
【0021】図3〜図5は、直腸温、活動度(手首の動
き)、心拍数(拍/分)、姿勢情報の長時間計測例を示
したものである。活動度(手首の動き)はゼロクロス
(回/分)で表わしている。また、姿勢情報は立位か否
かで表わしている。図中、sは睡眠期、wは覚醒期を示
す。図3は通常生活における計測(約58時間)、図4
は身体活動を抑制するなどにより外乱の影響を極力減少
させた条件における計測(約35時間)、図5は両条件
の計測データの時間軸をそろえて重ね書きして比較した
ものである。各データは1分毎にサンプリングしたもの
である。これらのデータは同一被験者のものである。当
然予測されることであるが、図3のデータが日常生活の
中で得られるものであるのに対して、図4のデータは本
発明により推定したい体温リズム曲線に近いものであ
る。リズムをフリーラン状態で計測しているわけではな
く、Constant routine法ほど厳密に外
乱の影響を除去することもできなかったが、24時間周
期の外的同調因子の影響の下では、図4のような体温変
動をもって推定したい生体リズム曲線が得られたと考え
てよい。ここでは、図3のような体温データから外乱の
影響を除去して図4のような体温変動に近い体温波形を
推定する例を開示する。
【0022】直腸温の変動をみると、就寝中は体温が低
く、覚醒中は上昇していて、これは、通常生活及び活動
抑制とも同様の傾向である。図3〜図5をみると、通常
の生活における計測データでは、日常生活による影響
で、体温リズムのマスキングが観測され、特に、身体活
動(走歩行・手足の運動など)や入浴による体温上昇が
顕著である。このように体温変動に対する外乱の影響は
体温上昇方向に現れるのが通常である。さらに、体温上
昇の原因となる事象に対して、直腸温の反応には数十分
の遅延が見られる。これらのことから、外乱の影響を補
正する手段としては、まず、副センサーの計測データか
ら、体温上昇の原因が生じていると考えられる区間を判
別し、その区間に体温反応遅延時間を加えたものを体温
が外乱の影響を受けた区間とし、次に、その区間の体温
データを削除して前後の体温データから補完をしてリズ
ム曲線を推定すればよいと考えられる。なお、体温が外
乱の影響を受けた区間が補完できないほど長い時間であ
るような場合には、より急峻な体温変動区間のみを削除
補完した後、全体を下方補正すればよいと考えられる。
【0023】次に、補正手段6の詳細な構成を図6に示
し説明する。まず、計測される体温データには、外乱の
影響の他に、計測上のノイズが現れることが考えられ
る。そこで、ノイズ除去手段61では、周囲の点列と比
較して、0.1℃以上離れている孤立点列をノイズとし
て除去する。これは、深部体温は急激には変化しないと
いう性質を利用している。
【0024】一方、外乱影響判別手段65では、副セン
サー部3による外乱計測データに基づいて、深部体温デ
ータへ影響を及ぼすと考えられる外乱要素の出現区間を
判別し、その外乱要素出現区間に体温反応遅延時間を加
えた区間を外乱要素による体温変動区間と判別する。深
部体温データへ影響を及ぼすと考えられる外乱要素の出
現区間を判別する例としては、次のようなものが考えら
れる。第1の例として、姿勢計測装置37の出力を利用
し、人体の姿勢、即ち、立位であるか座位・臥位である
かによって外乱要素の出現区間を判別する方式が考えら
れる。この場合は、人体の姿勢が立位である時に身体活
動の影響を受けると予想されるので、その区間を外乱要
素の出現区間と判別すればよい。この方式では、姿勢計
測装置37の出力だけでなく照度計34の出力や外気温
センサーの出力も利用することができる。つまり、周囲
照度が上昇した場合には外出したと判断できるので、身
体活動の影響を受けた区間と判別でき、外気温が急激に
上昇あるいは下降した場合にも外乱要素出現区間と判別
できる。第2の例として、活動度計32の出力を利用
し、身体の活動量がある設定値より大きい区間を外乱要
素の出現区間であると判別する方式が考えられる。この
方式では、活動度計32の出力の代わりに心電情報計測
装置39の出力(心拍数など)を利用することもでき
る。さて、このようにして判別した外乱要素出現区間に
体温反応遅延時間を加えた区間を外乱要素による体温変
動区間と判別するわけであるが、体温反応遅延時間とし
ては、数十分の値(例えば、20〜30分)を設定すれ
ばよい。
【0025】次に、外乱影響補正手段62では、外乱影
響判別手段65の出力結果に基づいて、ノイズ除去手段
61を通過した後の深部体温データを補正する。外乱影
響判別手段65で判別された外乱要素による体温変動区
間がさほど長くない場合には、その変動区間の体温デー
タを削除した後、前後の体温データから補完を行う。こ
の補完方法としては、直線補完・高次曲線補完・スプラ
イン補完などの方法を採用することができる。また、外
乱影響判別手段65で判別された外乱要素による体温変
動区間が長くて削除した後、補完ができないような場合
には、特に、外乱の影響が大きいと判断される体温変動
区間のみを削除補完した後、全体を下方修正するという
方法をとればよい。
【0026】以上のようにして外乱要素による体温変動
区間を判別して体温データを削除補完する経過を図7と
図8に示す。(a)が補正前、(b)が削除後、(c)
が補完後のデータである。図7は、第1の例による外乱
影響補正の結果を示す。ここでは、人体の姿勢が立位で
ある区間を外乱要素の出現区間と判別し、体温反応遅延
時間を30分として外乱要素による体温変動区間を算出
して体温データの削除補完を行った。図8では、第2の
例による外乱影響補正の結果を示す。ここでは、活動度
計32の出力としてゼロクロス回数を利用し、毎分10
0回を越える区間を外乱要素の出現区間と判別し、体温
反応遅延時間を20分として外乱要素による体温変動区
間を算出して体温データの削除補完を行った。いずれの
例においても、外乱影響補正により、図4のような外乱
の影響を極力減少させた体温変動に波形として近い結果
が得られたと考えられる。これらの出力結果の振幅を身
体活動の大きさなどに基づいて下方修正すれば、さらに
外乱の影響を極力減少させた体温変動に近い体温変動波
形を推定できる。
【0027】次に、欠測値補完手段62では、ノイズと
して除去した区間・計測不能だった区間などの欠測区間
を補完する。この補完方法としては、直線補完・高次曲
線補完・スプライン補完などの方法を採用することがで
きる。最後に、低域通過フィルタ64では、外乱影響補
正及び欠測値補完の処理をした後の計測データから高周
波ノイズを除去して、深部体温のリズム曲線を出力する
ものである。これにより、約1日を周期とする非常に滑
らかなリズム曲線が得られる。
【0028】次に、推定手段7では、補正手段6で得ら
れた深部体温のリズム曲線から、真の深部体温のリズム
曲線を推定するものである。例えば、最小2乗近似によ
る基準曲線へのカーブフィッティングを行うことが考え
られる。基準曲線としては、三角関数を変形したものと
して、次式のような関数を用いることができる。 f(x)=A{1−(1−cos(2π(x−c)/
L))2 /4} ここで、Aは振幅であり、Lは約24時間の周期であ
る。他の基準曲線として、図9に示すように、周期が約
24時間でデューティ比が1:2の矩形波あるいはその
角を取って丸みを付けた曲線を用いてもよい。これは、
就寝期と覚醒期の比率が約1:2であることを利用して
いる。また、図10に示すように、周期が約24時間の
三角波あるいはその角をとって丸みを付けた曲線を用い
てもよい。そのほかに、個人の数周期分のデータの加算
平均により作成した基準データを用いることもできる
が、これは被験者により異なることは言うまでもない。
【0029】次に、基準曲線へのカーブフィッテング以
外の方法で、真のリズム曲線を推定する方法を説明す
る。例えば、非線型振動を表現する微分方程式(ファン
デアポール型、ボルテラ型など)を利用して、計測デー
タにフィットするような方程式の係数を求める方法が考
えられる。あるいは、補正手段6の出力曲線の立ち上が
り・立ち下がり部分のデータ時系列から最低点や最高点
付近の曲線を推定したり、前後の関係から間の曲線を予
測する方法があり、例えば、線形ARモデルや線形AR
MAモデルを利用すればよい。さらに、補正手段6の低
周波通過フィルタ64の出力をそのまま推定曲線として
利用することもできる。この場合、特に、睡眠中の深部
体温の最低点を決めるとき、谷間が1つとは限らない
が、極小値の中の最小値を取ることにすればよい。
【0030】なお、鼓膜温あるいは外耳道壁奥の方の温
度は、直腸温と同じような変化をするので、直腸温の測
定が困難な場合には、図11に示すようなイヤホン型の
鼓膜温(耳内温)センサーは、サーミスタあるいは赤外
線放射温度計を用いて構成することができる。また、カ
プセル型の温度計が実用化されれば、体幹部の深部体温
を非侵襲的に測定することは容易となる。そのほか、対
流熱交換方式で皮膚の表面から深部体温を測定できる装
置を使用してもよい。この装置では、センサーの直径が
大きくなるほど、より深部の体温が計測でき、皮膚表面
から約10mm深さの体温計測まで可能である。しか
し、この方式ではセンサー部で皮膚を加熱する必要があ
り、リズム計測のように長時間使用する場合には低温や
けどの危険性があり、取り扱いに注意しなければならな
い。
【0031】
【発明の効果】本発明の生体リズム曲線装置では、被験
者に外乱を与えないで深部体温を測定する従来技術とは
異なり、被験者に与えられる外乱を副センサー部により
計測し、その計測結果から体温上昇の原因が生じている
区間を判別し、その区間に体温反応遅延時間を加えたも
のを体温が外乱の影響を受けて上昇した変動区間として
判別し、主センサー部の計測結果のうち体温が外乱の影
響を受けて上昇した変動区間の体温データを削除して前
後の体温データから補完するように構成したので、日常
生活の中での被験者の深部体温のリズムを測定すること
が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の全体構成を示すブロック図
である。
【図2】本発明の一実施例に用いる検出手段の詳細な構
成を示すブロック図である。
【図3】本発明による通常生活時の長時間計測例を示す
図である。
【図4】本発明による活動抑制時の長時間計測例を示す
図である。
【図5】通常生活時と活動抑制時の長時間計測例を比較
して示す図である。
【図6】本発明の一実施例に用いる補正手段の詳細な構
成を示すブロック図である。
【図7】姿勢計測装置の出力を利用した第1の補正手段
の動作説明図である。
【図8】活動度形の出力を利用した第2の補正手段の動
作説明図である。
【図9】本発明に用いる第1の基準曲線の波形図であ
る。
【図10】本発明に用いる第2の基準曲線の波形図であ
る。
【図11】本発明の他の実施例に用いる耳内温センサー
の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 検出手段 2 主センサー部 3 副センサー部 4 タイマー手段 5 記憶手段 6 補正手段 7 推定手段 8 リズム曲線出力手段 9 特徴パラメータ出力手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−236033(JP,A) 特開 平4−367653(JP,A) 特開 平5−3876(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61B 5/00 101 A61B 10/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生体の深部体温を計測するための主セ
    ンサー部と、外乱計測用の副センサー部と、各センサー
    部による計測タイミングを決定するためのタイマー手段
    と、各センサー部による計測結果を時系列的に記憶する
    ための記憶手段と、センサー部の計測結果に基づいて
    主センサー部の計測結果に対する外乱の影響を補正する
    補正手段と、補正された体温のリズム曲線を出力するリ
    ズム曲線出力手段とから構成され、前記補正手段は、副
    センサー部の計測結果から体温上昇の原因が生じている
    区間を判別し、その区間に体温反応遅延時間を加えたも
    のを体温が外乱の影響を受けて上昇した変動区間として
    判別する外乱影響判別手段と、外乱影響判別手段の出力
    結果に応じて主センサー部の計測結果のうち体温が外乱
    の影響を受けて上昇した変動区間の体温データを削除し
    て前後の体温データから補完する外乱影響補正手段とか
    ら構成されていることを特徴とする生体リズム曲線測定
    装置。
  2. 【請求項2】 外乱影響補正手段は、体温変動区間が
    前後のデータから補完できないほど長い場合には、より
    急峻な体温変動区間のみを削除補完した後、全体を下方
    修正することを特徴とする請求項1記載の生体リズム曲
    線測定装置。
  3. 【請求項3】 前記副センサー部の計測項目として外
    気温または照度の少なくとも1つ以上を含むことを特徴
    とする請求項1または2記載の生体リズム曲線測定装
    置。
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