JP3206118B2 - コンタクトレンズ用処理溶液 - Google Patents

コンタクトレンズ用処理溶液

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンタクトレンズ用処
理溶液に関し、より詳細には、ハードコンタクトレン
ズ、非含水性ソフトコンタクトレンズ及び含水性ソフト
コンタクトレンズに親水性、防汚性等を付与することが
できるコンタクトレンズ用処理溶液に関する。
【0002】
【従来の技術】コンタクトレンズには、非含水性コンタ
クトレンズ及び含水性コンタクトレンズがあり、非含水
性コンタクトレンズとしてはハードコンタクトレンズ及
びソフトコンタクトレンズが、含水性コンタクトレンズ
にはソフトコンタクトレンズがある。非含水性コンタク
トレンズは、含水性コンタクトレンズに比してレンズ材
料の安定性、ケアの簡便さの点で優れている。該非含水
性コンタクトレンズとしては、メチルメタクリレートを
主成分とするもの、シリコンラバーを用いたもの等が従
来より知られており、更に最近では眼に対する影響を更
に緩和したシリル系メタクリレート、フッ素系メタクリ
レート等を主成分とした高酸素透過性ハードコンタクト
レンズが使用されるようになっている。
【0003】しかしながら、前記非含水性コンタクトレ
ンズでは、レンズ表面が疎水性であるため装用感が悪
く、眼内細胞に対する影響がある等の問題がある。特に
前記高酸素透過性ハードコンタクトレンズでは、主成分
としてシリコン、フッ素等を多量に含有するため、疎水
性が強く、眼との密着性が低下するので、装用感に劣
り、タンパク質・脂質が付着する等の問題がある。
【0004】そこで、前記コンタクトレンズの疎水性表
面に親水性を付与するため、プラズマ処理、酸性・塩基
性物質による化学処理を行う方法等が用いられている
が、該方法では親水性の維持が困難である、化学処理に
よるコンタクトレンズの変性が生じる、更に処理工程が
煩雑である等の問題がある。
【0005】コンタクトレンズ表面に親水性を付与する
その他の方法として、例えば特公昭48−37910号
公報において、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチ
ルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性重合体
を含有する溶液にコンタクトレンズを浸漬する方法が提
案されているが、該方法では、コンタクトレンズの種類
によって親水性付与の程度に制限があり、更にタンパク
質・脂質等の付着を十分に防止できない等の問題があ
る。
【0006】一方、含水性コンタクトレンズは非含水性
コンタクトレンズに比して、装用感に優れるが、主成分
として2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピ
ロリドン等を含有するハイドロゲル状のレンズであるた
め、タンパク質・脂質等が付着し、更には細菌が繁殖す
る等の衛生上の問題がある。また、前記レンズの含水率
を高めると機械的強度が低下するという問題もある。
【0007】そこで通常の使用にあたっては、煮沸滅菌
処理、タンパク質除去処理、殺菌剤及び洗浄液によるケ
ア等の煩雑な衛生管理を行う必要があり、このような処
理を簡便に行うことが可能なコンタクトレンズ用処理溶
液の開発が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡便
な浸漬処理方法により、非含水性コンタクトレンズ表面
に親水性を付与することができ、一方、含水性コンタク
トレンズに高含水性を付与し、更にはタンパク質・脂質
との付着・沈着等を抑制することのできるコンタクトレ
ンズ用処理溶液を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、下記一
般式化2で表わされるイタコン酸ジエステル単量体(以
下イタコン酸ジエステル単量体1と称す)を単独若しく
は他の共重合可能なビニルモノマーと重合させてなる重
合体と、該重合体を溶解する溶媒とを必須成分として含
有するコンタクトレンズ用処理溶液が提供される。
【0010】
【化2】
【0011】以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0012】本発明のコンタクトレンズ用処理溶液は、
特定のリン脂質極性基を有するイタコン酸ジエステル単
量体を単独若しくは他の共重合可能なビニルモノマーと
重合して得られる重合体と、該重合体を溶解する溶媒と
を必須成分として含有する。
【0013】本発明において前記必須成分として用いる
重合体の原料モノマーとして使用する特定のイタコン酸
ジエステル単量体は、前記一般式化2で表わされるイタ
コン酸ジエステル1である。該イタコン酸ジエステル単
量体1において、nが8を超える場合、またR4の炭素
数が8を超える場合には、親水性及び重合性が低下し、
1又はR2が炭素数20を超えるアルキル基、アルケニ
ル基又はヒドロキシアルキル基の場合には、疎水性が高
くなるので使用できない。
【0014】前記イタコン酸ジエステル単量体1として
は、具体的に例えば、2−(エチルイタコノイルオキ
シ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルリ
ン酸、2−(イソプロピルイタコノイルオキシ)エチル
−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルリン酸、3−
(sec−ブチルイタコノイルオキシ)プロピル−2’
−(トリメチルアンモニオ)エチルリン酸、4−(n−
ヘキシルイタコノイルオキシ)ブチル−2’−(トリメ
チルアンモニオ)エチルリン酸、2−(エチルイタコノ
イルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)
エチルリン酸、3−(イソプロピルイタコノイルオキ
シ)プロピル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチル
リン酸、6−(メチルイタコノイルオキシ)ヘキシル−
2’−(トリメチルアンモニオ)エチルリン酸、2−
(ミリスチルイタコノイルオキシ)エチル−2’−(ト
リフェニルアンモニオ)エチルリン酸、2−(エチルイ
タコノイルオキシ)エチル−2’−(トリ−2''−ヒド
ロキシエチルアンモニオ)エチルリン酸、2−(t−ブ
チルイタコノイルオキシ)エチル−2’−(トリ−2''
−ヒドロキシエチルアンモニオ)エチルリン酸、ジ−
((2−トリメチルアンモニオエチルリン酸)エチル)
イタコネート等を好ましく挙げることができる。
【0015】前記イタコン酸ジエステル単量体1を調製
するには、例えばヒドロキシアルキル−アルキルイタコ
ン酸ジエステル等のイタコン酸誘導体と、2−クロロ−
2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン等のホス
ホラン化合物とをトリメチルアミン等の3級アミン等の
存在下にて、0〜50℃で、1〜10時間反応させる等
して、イタコン酸モノホスホラン誘導体を得、次いで得
られたイタコン酸モノホスホラン誘導体とトリアルキル
アミン等の3級アミンとを反応温度30〜100℃に
て、反応時間3〜48時間で反応させる等して得ること
ができる。また得られた生成物は、再結晶やカラムクロ
マトグラフィーなどの公知の方法により、精製すること
ができる。
【0016】本発明において、前記イタコン酸ジエステ
ル単量体1と共重合させることができる他の共重合可能
なビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、核置換
メチルスチレン、α−メチルスチレン、核置換クロロス
チレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルピバ
レート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)
アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、(メ
タ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アミド、2−ヒド
ロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルビニルエー
テル、n−ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリド
ン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレ
ン、イソブチレン、アクリロニトリル等を好ましく挙げ
ることができ、使用に際しては単独若しくは混合物とし
て用いることができる。
【0017】前記他の共重合可能なビニルモノマーを用
いる場合の使用量は、前記イタコン酸ジエステル単量体
1 100重量部に対して、5〜10000重量部の範
囲で使用することが望ましい。前記使用範囲が1000
0重量部を超える場合には、水溶性、防汚性等が十分発
現せず、一方、5未満の場合には、共重合による効果が
発揮できないので好ましくない。
【0018】本発明において必須成分として用いる重合
体は、前記イタコン酸ジエステル単量体1を、単独若し
くは他の共重合可能なビニルモノマーと重合させてなる
重合体であって、前記イタコン酸ジエステル単量体単位
を有しておれば特に限定されるものではない。該重合体
の数平均分子量は、重合温度、重合開始剤使用量、重合
度調整剤の使用等により異なり、特に限定されるもので
はないが、1000〜300000の範囲が好ましく、
特に後述する溶媒への溶解性、コンタクトレンズ用処理
溶液の粘度、コンタクトレンズ表面への付着性等から2
000〜200000の範囲が好ましい。前記数平均分
子量が1000未満の場合には、粘着性が低下し、30
0000を超えると、粘度が高くなり操作性が悪くなる
ので、好ましくない。
【0019】前記重合体を調製するには、例えばラジカ
ル重合開始剤の存在下、前記イタコン酸ジエステル単量
体1又は前記イタコン酸ジエステル単量体及び前記他の
共重合可能なビニルモノマーを塊状重合、懸濁重合、溶
液重合、乳化重合等、公知の重合方法により、ラジカル
重合または共重合を行う等して、容易に得ることがで
き、特に溶液重合、非水懸濁重合及び塊状重合等が好ま
しい。前記ラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾ
イル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシジ
カーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキ
サノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブ
チルペルオキシイソブチレート、アゾビスジメチルバレ
ロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸塩若
しくは過硫酸塩−亜硫酸水素塩等を好ましく用いること
ができる。前記ラジカル重合開始剤の使用量は、使用す
る全原料モノマー 100重量部に対して0.01〜1
0重量部が望ましく、特に0.1〜5重量部が好まし
い。
【0020】前記重合を行うには、窒素、二酸化炭素、
ヘリウム等の不活性ガスで重合系を置換するか若しくは
雰囲気下とし、好ましくは重合温度30〜100℃の範
囲にて、好ましくは重合時間5〜72時間にて重合する
等して行うことができる。またこの際、更に分別操作を
行うことにより分子量分布の狭い重合体を得ることもで
きる。
【0021】本発明において必須成分として用いる溶媒
は、前記重合体を溶解し、コンタクトレンズに対して変
性、変形等の影響を与えず、かつ水混和性であり、浸漬
・洗浄等の簡便な操作にてコンタクトレンズに対し、親
水性、防汚性等を付与することができるものであれば、
特に限定されるものではない。前記溶媒としては、具体
的には例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロ
パノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコー
ル、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテ
ル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセ
トン等を好ましく挙げることができ、使用に際しては、
単独若しくは混合物として用いることができる。
【0022】本発明において、前記重合体と前記溶媒と
の配合割合は、前記重合体を本発明の処理溶液全体に対
して、好ましくは0.01〜10重量%の範囲となるよ
うに配合するのが好ましい。前記重合体の配合割合が
0.01重量%未満の場合には、コンタクトレンズに親
水性、防汚性等を十分に付与することができないので好
ましくない。
【0023】本発明のコンタクトレンズ用処理溶液を使
用するには、該コンタクトレンズ用処理溶液を好ましく
は20〜70℃に昇温し、該処理溶液にコンタクトレン
ズを浸漬若しくは接触させる方法等により用いることが
できる。処理後、水、生理食塩水若しくは適当な洗浄液
を用いてコンタクトレンズを濯ぐことにより、コンタク
トレズを装着可能状態とすることができる。
【0024】更に本発明のコンタクトレンズ用処理溶液
は、必要に応じて、界面活性剤、殺菌剤、防腐剤等と併
用して用いることもでき、洗浄剤、保存液として用いる
こともできる。
【0025】
【発明の効果】本発明のコンタクトレンズ用処理溶液
は、特定のリン脂質極性基を有する重合体を必須成分と
して含有するので、簡便な操作にて、コンタクトレンズ
に親水性及びタンパク質・脂質に対する防汚性を付与す
ることができ、装用感の向上、コンタクトレンズの変性
防止に有用である。
【0026】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【実施例1】 (A)コンタクトレンズ用処理溶液の調製 2−(イソプロピルイタコノイルオキシ)エチル−2’
−(トリメチルアンモニオ)エチルリン酸5g、メチル
メタクリレート5g及びアゾビスイソブチロニトリル
0.1gをエタノール30gに溶解し、ガラス管に封入
した。該ガラス管を窒素置換後、密封し、ガラス管内の
原料モノマーを60℃にて12時間重合させ、重合体を
得た。得られた重合体をエタノール/ジエチルエーテル
(3/7)100gを用いて再沈殿精製し、乾燥させ
た。得られた乾燥物2gを、エチレングリコール98g
に溶解させ、コンタクトレンズ用処理溶液を得た。
【0028】(B)コンタクトレンズテストピースの作
成 一方、コンタクトレンズとして以下の3種類のテストピ
ースを作成した。 (1)ハードコンタクトレンズ メチルメタクリレート99g、ジエチレングリコールジ
メタクリレート1g及びアゾビスイソブチロニトリル
0.2gをガラス管に注入し、窒素置換−脱気を繰り返
した後、該ガラス管を密封し、30℃から100℃ま
で、50時間かけて昇温し、ガラス管内の原料モノマー
を加熱硬化させ、無色透明の重合物を得た。得られた重
合物を通常の加工方法により、切削、研磨し、所定形状
のコンタクトレンズテストピースを作成した。
【0029】(2)酸素透過性ハードコンタクトレンズ トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリ
レート40g、トリフルオロエチルメタクリレート30
g、メチルメタクリレート10g、トリエチレングリコ
ールジメタクリレート15g及びメタクリル酸5gを用
いた以外は前記(1)ハードコンタクトレンズと同様に
して、テストピースを作成した。
【0030】(3)ソフトコンタクトレンズ 2−ヒドロキシエチルメタクリレート99g及びエチレ
ングリコーリジメタクリレート1gを用いた以外は、前
記(1)ハードコンタクトレンズと同様にして、テスト
ピースを作成した。
【0031】(C)コンタクトレンズ用処理溶液の親水
性、防汚性の測定 前記コンタクトレンズ用処理溶液をコンタクトレンズ用
保存ケースに満たし、前記(1)〜(3)のコンタクト
レンズテストピースを30分間浸漬した後、水で洗浄
し、該コンタクトレンズテストピースの親水性、防汚性
を以下の方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0032】a)親水性の測定 前記テストピース表面を乾燥後、水液適法により、テス
トピース表面の水接触角を測定した。なお該接触角が小
さいほど、親水性が高いことを示す。
【0033】b)防汚性の測定 アルブミン0.39重量%、リゾチーム0.17重量
%、グロブリン0.105重量%を含有する生理食塩水
中に、前記テストピースを35℃にて2週間、浸漬した
後、前記生理食塩水より取り出し、次いで生理食塩水を
用いて洗浄し、界面活性剤を用いて前記テストピース表
面に付着したタンパク質を剥離させ、得られた溶液中
に、タンパク質定量用試薬「マイクロ ビーシーエー(m
icro BCA)」(商品名、ピエルス社製(PIERSC))を注入し、
溶液中のタンパク質量を測定した。
【0034】
【実施例2】原料モノマーとして、4−(n−ヘキシル
イタコノイルオキシ)ブチル−2’−(トリメチルアン
モニオ)エチルリン酸5g及びメチルメタクリレート5
g、溶媒としてエチレングリコール98gを用いた以外
は実施例1と同様にして、コンタクトレンズ用処理溶液
を調製し、前記各テストピースについて、得られた処理
溶液の親水性及び防汚性を測定した。測定結果を表1に
示す。
【0035】
【実施例3】原料モノマーとして、2−(エチルイタコ
ノイルオキシ)エチル−2’−(トリ−2''−ヒドロキ
シエチルアンモニオ)エチルリン酸9g及びスチレン1
g、溶媒としてエチレングリコール/水(50/50)
98gを用いた以外は実施例1と同様にして、コンタク
トレンズ用処理溶液を調製し、前記各テストピースにつ
いて、得られた処理溶液の親水性及び防汚性を測定し
た。測定結果を表1に示す。
【0036】
【比較例1】ポリビニルアルコール(鹸化度88%)水
溶液100gを用いた以外は、実施例1と同様にして、
実施例1で調製した(1)ハードコンタクトレンズテス
トピースを処理し、親水性、防汚性を測定した。測定結
果を表1に示す。
【0037】
【比較例2】実施例1で調製した(2)酸素透過性ハー
ドコンタクトレンズについて、何等処理を行わずに、親
水性、防汚性を測定した。測定結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−191320(JP,A) 特開 平5−107512(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02C 1/00 - 13/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式化1で表わされるイタコン酸
    ジエステル単量体を、単独若しくは他の共重合可能なビ
    ニルモノマーと重合させてなる重合体と、該重合体を溶
    解する溶媒とを必須成分として含有するコンタクトレン
    ズ用処理溶液。 【化1】
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