JP3202837B2 - 無電解ニッケルメッキ部材およびその製造方法 - Google Patents

無電解ニッケルメッキ部材およびその製造方法

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JP3202837B2
JP3202837B2 JP13391093A JP13391093A JP3202837B2 JP 3202837 B2 JP3202837 B2 JP 3202837B2 JP 13391093 A JP13391093 A JP 13391093A JP 13391093 A JP13391093 A JP 13391093A JP 3202837 B2 JP3202837 B2 JP 3202837B2
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篤夫 末廣
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、継手、バルブやポンプ
本体などの鉄系素材を無電解ニッケルメッキした部材お
よびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄系素材は、安価であり、種々の用途、
例えば、鋼板、継手、バルブやポンプ本体などの広い分
野で利用されている。特に、鋳鉄は、複雑な形状の部材
を作製するために広く利用されている。しかし、鉄系素
材は、一般に耐蝕性が十分でない。特に鋳鉄は、多数の
ポーラスな欠陥部を有しているので、耐蝕性が劣る。そ
のため、鉄系基材には、例えば、ニッケル電気メッキ、
溶融亜鉛メッキなどの種々の耐蝕処理が施されている。
【0003】しかし、前記電気メッキでは、メッキ面の
電流分布が不均一であるため、電気的に影が生じ、メッ
キ層の均一性に乏しい。特に形状が複雑な鉄系素材で
は、均一なメッキ層を形成するのが困難である。また、
複雑な形状の鉄系素材を溶融亜鉛メッキすると、メッキ
溜りが生じ、均一な溶融亜鉛ッキ層を形成するのが困
難である。また、この溶融亜鉛メッキでは、メッキ被膜
を薄くして耐蝕性を高めることが困難である。
【0004】一方、均一なメッキ層を形成できる方法と
して、無電解メッキ法が知られている。また、無電解メ
ッキ法によりニッケルメッキ層を形成すると、一般に耐
蝕性が向上する。しかし、鉄系素材を無電解ニッケルメ
ッキしても、未だ耐蝕性が十分でなく、早期に錆が生じ
る。
【0005】耐蝕性の高い鉄系素材としてステンレスス
チールも知られている。しかし、ステンレススチール
は、鋳鉄などに比べて加工性に劣り、高価である。その
ため、ステンレススチールにより複雑な形状の部材を形
成すると、高価となり、汎用性に乏しい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、腐蝕性を有する鉄系素材であっても、ステンレスス
チールと同等の耐蝕性を有する安価な無電解ニッケルメ
ッキ部材を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、鉄系素材の形状が複
雑であっても均一なメッキ層を形成でき、前記の如き優
れた特性を有する無電解ニッケルメッキ部材を効率よく
製造できる方法を提供することにある。
【0008】
【発明の構成】本発明者らは、前記目的を達成するた
め、鉄系素材が多くの欠陥部を有することに着目して鋭
意検討の結果、導電性基材のみならず電気絶縁性基材に
もメッキ層を形成できる無電解ニッケルメッキと、前記
欠陥部を埋設する特定の熱硬化性樹脂の含浸とを組合せ
ると、鋳鉄などの鉄系素材に耐蝕性を付与できると予想
されること、鉄系素材に樹脂を含浸して無電解ニッケル
メッキを施しても、耐蝕性がさほど向上しないにも拘ら
ず、無電解ニッケルメッキし、特定の熱硬化性樹脂を含
した後、特定の温度で前記樹脂を硬化すると、意外に
も、鉄系素材の耐蝕性が格段に向上することを見いだ
し、本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、鉄系素材に無電解ニ
ッケルメッキ層が形成された部材であって、前記鉄系素
材の欠陥部が、前記メッキ層の欠陥部とともに熱硬化性
アクリル樹脂により含浸されている無電解ニッケルメッ
キ部材を提供する。
【0010】また、本発明の方法では、鉄系素材を無電
解ニッケルメッキ処理し、熱硬化性アクリル樹脂を含浸
た後、80〜150℃で前記樹脂を硬化して、無電解
ニッケルメッキ部材を製造する。
【0011】本発明は、鉄を主成分として含む種々の鉄
系素材、例えば、腐蝕性を有する鉄鋼材料例えば、低
炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼などの炭素鋼;マンガン
鋼、クロム鋼、クロム−モリブデン鋼、ニッケル−クロ
ム鋼、高張力鋼などの低合金鋼;マンガン、クロム、ニ
ッケル、モリブデン、ケイ素などの各種金属との合金
鋼;ねずみ鋳鉄、特殊鋳鉄、可鍛鋳鉄などの鋳鉄など)
に適用できる。
【0012】本発明が好適に適用される鉄系素材には、
鉄系粉末材料を圧縮成形し、焼結して得られる多数の欠
陥部を有する鉄系素材、特に安価で複雑な立体形状の鉄
鋼製品を容易に得ることができる鋳鉄が含まれる。この
鋳鉄は、他の鉄鋼材料に比べて多数のポーラスな欠陥部
を有しており、一般に耐蝕性が劣る。
【0013】鉄系素材の形状は、特に制限されず、鋼線
などの線状や、鋼板、鋼帯などの二次元的構造であって
もよいが、湾曲状、断面異形状、筒状などの三次元的構
造である場合が多い。このような三次元的構造の鉄系素
材には、例えば、給水や排水用管、ガス用管、継手、ボ
ルト・ナット、バルブ、ポンプのハウジングなどが含ま
れる。
【0014】前記鉄系素材は、通常、無電解ニッケルメ
ッキ処理に先だって、慣用の前処理、例えば、バフ研
磨、バレル研磨、研磨剤のエアレススプレー法などによ
る表面研磨;トリクロロエチレン、パークロロエチレン
などの脱脂用有機溶剤、灯油、トリクロロエチレンなど
の溶剤と界面活性剤とを含むエマルジョン、水酸化ナト
リウム、炭酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、リ
ン酸ナトリウムなどのアルカリなどによる脱脂処理;ア
ルカリを主成分とした洗浄液中での電解洗浄;塩酸、硝
酸、硫酸、シュウ酸、過マンガン酸カリウム、フッ化水
素酸などによる酸洗処理;電解加工;陽極酸化処理;仮
成処理などに供することができる。鉄系素材が鋳鉄であ
る場合、有機溶剤及び/又はアルカリによる脱脂処理、
塩酸、硝酸、硫酸などの稀薄液(例えば、5〜25W/
V%程度)による洗浄処理に供する場合が多い。
【0015】前記鉄系素材は、無電解ニッケルメッキ層
により被覆されている。この無電解ニッケルメッキ層
は、慣用の無電解メッキ方法、例えば、ニッケル塩と、
還元剤とを含む無電解メッキ液に浸漬処理し、鉄系素材
の表面にニッケルを析出させることにより形成できる。
【0016】ニッケル塩としては、例えば、塩化ニッケ
ル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルなどの鉱酸塩の少なく
とも一種の塩が使用できる。還元剤としては、例えば、
次亞リン酸ナトリウムなどの次亜リン酸塩、水素化ホウ
素化合物、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ブドウ糖、
酒石酸などが挙げられ、これらの還元剤は一種または二
種以上使用できる。
【0017】また、無電解メッキ処理浴には、慣用の添
加剤、例えば、酢酸ナトリウム、プロピオン酸、クエン
酸ナトリウム、乳酸、塩化アンモニウム、硫酸アンモニ
ウム、マロン酸ナトリウム、エチレンジアミン、水酸化
ナトリウム、安定剤などが含まれていてもよい。さら
に、ニッケルメッキ層の硬度や耐摩耗性を向上させるた
め、ダイヤモンド、シリコンカーバイド、コランダム、
タングステンカーバイドなどの添加剤を添加し、メッキ
層に共析させてもよい。
【0018】無電解ニッケルメッキ浴は、例えば、pH
3〜6程度の酸性浴、pH7程度の中性浴、pH8〜1
4程度のアルカリ性浴などであってもよく、また、低温
浴、高温浴のいずれであってもよい。
【0019】無電解ニッケルメッキ処理によるニッケル
メッキ層の厚みは、耐蝕性を損わない範囲で適宜設定で
き、例えば、1〜50μm程度、好ましくは5〜40μ
m、さらに好ましくは10〜35μm程度で十分であ
る。
【0020】無電解ニッケルメッキ処理工程は、上記メ
ッキ液に、適宜の温度で所定時間、例えば、30〜10
0℃程度の温度で1〜200分間程度、好ましくは10
〜150分間程度浸漬することにより行なうことができ
る。
【0021】無電解ニッケルメッキ処理した後、鉄系素
材は、必要に応じて、例えば、100〜800℃、好ま
しくは250〜600℃程度で熱処理し、ニッケルメッ
キ層の硬度及び耐摩耗性を高めてもよい。
【0022】なお、無電解ニッケルメッキを繰返し行な
うと、次亜リン酸ナトリウムなどの還元剤の濃度の低下
に伴なって、反応速度が低下する。特に鋳鉄を無電解ニ
ッケルメッキ処理に供すると、鋳鉄に付着した鋳砂を除
去するためのブラスト処理による表面粗さの増加、およ
び鉄粉の生成などにより、無電解ニッケルメッキ浴が早
期に劣化し易い。そのため、浴の劣化に伴なってメッキ
層にピンホールが早期に生成し、3〜4ターン分の使用
でメッキ液を排液せざるを得ない場合がある。なお、
「ターン」とは、メッキ処理に伴なって消費するニッケ
ル成分などを、添加補充する回数を意味する。
【0023】このような場合、排液同然の劣化した無電
解ニッケルメッキ浴を用いて、鉄系素材を予備メッキし
た後、新鮮な無電解ニッケルメッキ浴でメッキ処理する
と、排液同然のメッキ浴を有効利用できるだけでなく、
新鮮なメッキ浴による消費を抑制しつつ、長期に亘り使
用できるという利点がある。
【0024】無電解ニッケルメッキ処理により、複雑な
形状の鉄系素材であっても、ニッケルメッキ層を均一に
形成できる。しかし、無電解ニッケルメッキ層で被覆し
ても、原因は不明であるが、鉄系素材の耐蝕性はさほど
向上しない。
【0025】そこで、上記無電解ニッケルメッキ層を形
成した鉄系素材は、樹脂による含浸工程に供される。無
電解ニッケルメッキ処理した後、樹脂を含浸させると、
鉄系素材の耐蝕性が顕著に向上する。
【0026】より詳細には、一般に、鉄系素材には多少
の相違はあってもポーラスな欠陥部が存在する。特に鋳
鉄には、多数の欠陥部が存在する。そのため、前記欠陥
部を樹脂で埋設すると、耐蝕性が向上すると予想される
ものの、樹脂を含浸しても鉄系素材の耐蝕性は向上しな
い。一方、無電解ニッケルメッキ処理によれば、導電性
部材に限らず、電気絶縁性部材にもニッケルメッキ層を
形成できる。従って、樹脂で含浸した後、無電解ニッケ
ルメッキ層を形成すると、鉄系素材の耐蝕性が向上する
と思われる。しかし、この場合でも、鉄系素材の耐蝕性
はさほど向上しない。
【0027】これに対して、無電解ニッケルメッキ処理
と樹脂の含浸処理とを組合せる場合であっても、無電解
ニッケルメッキ処理した後、樹脂を含浸するという特定
の順序で処理すると、鉄系素材の耐蝕性が予想に反して
顕著に向上する。上記より明らかなように、本発明の方
法は、鉄系素材を無電解ニッケルメッキ処理した後、樹
脂で含浸処理するという特定の順序で処理する点に特色
がある。
【0028】前記含浸処理に使用する樹脂としては、耐
性の高い樹脂である熱硬化性アクリル樹脂が使用さ
る。なお、熱硬化性アクリル樹脂は、樹脂の種類に応じ
て、硬化剤や架橋剤を含んでいてもよい。
【0029】この樹脂は、鉄系素材への含浸効率を高め
るため、溶液又は分散液、特に有機溶媒溶液として使用
される場合が多い。溶媒としては、前記樹脂の種類に応
じて、例えば、脂肪族又は脂環族炭化水素類、芳香族炭
化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エス
テル類、ケトン類、エーテル類などの有機溶媒やこれら
の混合溶媒が使用できる。前記樹脂を溶液又は分散液と
して使用する場合、樹脂の含有量は、例えば、0.1〜
35重量%、好ましくは1〜20重量%程度である。
【0030】なお、前記樹脂は、必要に応じて、安定化
剤、老化防止剤、着色剤などの添加剤を含んでいてもよ
い。
【0031】無電解ニッケルメッキ層が形成された鉄系
素材への樹脂の含浸は、慣用の方法、例えば、常圧下で
の浸漬法などによって行なってもよいが、樹脂を効率よ
く含浸させるため、減圧又は加圧下で含浸するのが好ま
しい。また、含浸処理に先だって、鉄系素材を減圧脱気
処理し、含浸処理に供するのも好ましい。これらの樹脂
含浸法は、組合せて行なうことができる。
【0032】減圧下での樹脂の含浸は、無電解ニッケル
メッキ処理した鉄系素材と樹脂(好ましくは樹脂溶液)
を収容する所定の容器内を減圧する真空含浸法;鉄系基
材を収容した容器内を減圧して脱気し、容器内に樹脂溶
液などを送液して樹脂を含浸させる真空浸漬含浸法;鉄
系基材を収容した容器内を減圧して脱気し、容器内に樹
脂溶液などを送液して樹脂を含浸させ、さらに容器内を
減圧し樹脂を含浸させる方法などにより行なうことがで
きる。含浸時の減圧度は、適当に選択でき、例えば、1
×10-4〜100torr、好ましくは1×10-2〜5
0torr程度である。また、含浸時間は、鉄系基材の
種類と大きさなどによって変動するが、通常、30秒〜
1時間、好ましくは1〜30分程度である。
【0033】加圧下での樹脂の含浸は、鉄系基材の種類
と大きさなどに応じて、例えば、圧力1〜100kg/
cm2、好ましくは2〜50kg/cm2程度で行なうこ
とができ、含浸時間は、前記と同様である。
【0034】なお、樹脂の含浸は、室温下で行なっても
よく、例えば、30〜70℃程度の加熱下で行なっても
よい。なお、含浸温度は、樹脂の硬化温度未満である場
合が多い。
【0035】前記樹脂は、少なくとも1回含浸すればよ
いが、複数回に亘り含浸すると、鉄系基材の耐蝕性がさ
らに向上する。なお、樹脂の含浸回数が1回であって
も、鉄系素材の耐蝕性が顕著に向上し、2回の含浸によ
り、略ステンレススチールと同等の耐蝕性が得られる。
また、樹脂を3回以上に亘り含浸させてもよいが、2回
の樹脂含浸に比べて、耐蝕性がさほど向上しない場合が
多い。好ましい樹脂の含浸回数は、1〜5回、特に1〜
3回程度である。なお、上記含浸回数は、一連の含浸工
程を1回とした回数である。すなわち、真空含浸と加圧
含浸とを組合せて樹脂を含浸する場合、真空含浸および
加圧含浸の含浸工程を1回とするものである。
【0036】本発明では、無電解ニッケルメッキした
後、樹脂を含浸するので、樹脂を含浸し無電解ニッケル
メッキする場合と異なり、樹脂の含浸量が極めて少なく
ても高い耐蝕性を付与できるという特色がある。例え
ば、鉄系素材としてマリアブル鋳鉄を用いた場合、鋳鉄
の種類によっても変動するが、鋳鉄100gに対して、
樹脂の含浸量が1000mg以下(1重量%以下)、例
えば、1〜100mg(0.001〜0.1重量%)、
好ましくは2〜50mg(0.002〜0.05重量
%)程度であっても極めて高い耐蝕性が得られる。な
お、含浸率は、樹脂の含浸に伴なう重量増加により評価
できる。
【0037】前記含浸処理の後、鉄系素材は、過剰な樹
脂を除去するため液切り工程に供してもよい。また、液
切りされた鉄系素材は、洗浄工程に供してもよい。な
お、この洗浄工程において、前記樹脂に対して良溶媒を
用いると、欠陥部に含浸した樹脂が溶出するので、洗浄
溶媒として、前記樹脂に対して貧溶媒を用いるのが好ま
しい。貧溶媒としては、樹脂の種類に応じて選択できる
が、通常、水などが使用できる。なお、貧溶媒による洗
浄は、バブリングやジェット流などによる水流を利用し
た物理的方法により行なうことができる。
【0038】次に、鉄系素材は硬化工程に供される。樹
脂の硬化は、樹脂の硬化温度に応じて、80〜150℃
程度で行なうことができる。また、樹脂の硬化は、熱水
中で行なうこともできる。
【0039】このようにして得られた無電解ニッケルメ
ッキ部材は、鉄系素材に樹脂を含浸した後、無電解ニッ
ケルメッキ処理したメッキ部材とは構造的に識別でき
る。すなわち、本発明の無電解ニッケルメッキ部材は、
鉄系素材に無電解ニッケルメッキ層が形成され、前記鉄
系素材の欠陥部が、前記メッキ層の欠陥部とともに樹脂
により含浸されている。これに対して、樹脂を含浸した
後、無電解ニッケルメッキ処理したメッキ部材は、鉄系
素材の欠陥部が樹脂により含浸されているものの、無電
解ニッケルメッキ層の欠陥部は樹脂により含浸されてい
ない。
【0040】このような構造的な相違に起因して、本発
明の無電解ニッケルメッキ部材は、鉄系素材が鋳鉄であ
っても極めて高い耐蝕性を示す。
【0041】なお、前記のように本発明の無電解ニッケ
ルメッキ部材は、高い耐蝕性を示すが、必要に応じて、
無電解ニッケルメッキ層に被膜を形成してもよい。この
場合、前記液切り工程、洗浄工程は必ずしも必要ではな
い。前記被膜は、前記例示の樹脂や、塗料などをコーテ
ィングし、必要に応じて硬化させることにより形成でき
る。被膜の厚さは特に制限されず、例えば、0.1〜1
00μm程度であり、通常、1〜50μm程度である場
合が多い。
【0042】
【発明の効果】本発明の無電解ニッケルメッキ部品は、
腐蝕性を有する鉄系素材であっても、高い耐蝕性を示
し、安価である。
【0043】本発明の方法によると、無電解ニッケルメ
ッキ処理と特定の樹脂による含浸処理と前記樹脂の硬化
処理とを特定の順序で行なうので、鉄系素材の形状が複
雑であっても均一なメッキ層を形成でき、前記の如き優
れた特性を有する無電解ニッケルメッキ部材を効率よく
製造できる。特に、複数回に亘り樹脂を含浸すると、腐
蝕性の鉄系素材であってもステンレススチールと同等の
耐蝕性を付与できる。
【0044】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明する。
【0045】実施例1 1/2インチのマリアブル鋳物製継手を、水酸化ナトリ
ウム水溶液(50g/L)により脱脂処理し、水洗した
後、塩酸水溶液(20g/L)に3分間浸漬し、水洗し
た。次いで、下記の条件で無電解ニッケルメッキ処理を
行ない、継手の表面に厚さ20μmの無電解ニッケルメ
ッキ層を形成した。
【0046】 (a)無電解ニッケルメッキ液の組成 硫酸ニッケル 30g/l 酢酸ナトリウム 10g/l 次亜リン酸ナトリウム 10g/l (b)浴の温度 90℃ (c)メッキ時間 80分 無電解ニッケルメッキ処理した継手を水洗し、乾燥した
後、樹脂含浸工程に供した。この樹脂含浸工程では、ア
クリル樹脂系含浸剤(ダイアフロック(株)製、DIAKIT
E PF-1900)と硬化剤(ダイアフロック(株)製、A−
1)とを含む含浸液を用いて行なった。
【0047】すなわち、無電解ニッケルメッキ処理した
継手を、真空ポンプにより真空容器内で5torrで1
0分間脱気し、前記含浸液を容器内に送液し、5tor
rで10分間真空浸漬含浸した後、大気下に開放した。
次いで、前記容器内を加圧して、圧力5kg/cm2
10分間加圧含浸した後、継手を取出して、含浸液を液
切りし、バブリングによる水流で3分間洗浄し、温度9
5℃の熱水中に15分間浸漬して、樹脂を硬化させ、樹
脂が含浸したニッケルメッキ継手を得た。樹脂の含浸率
を、重量増加から算出したところ、約0.02重量%で
あった。
【0048】実施例2 無電解ニッケルメッキ処理を120分間行ない、厚み3
0μmのニッケルメッキ層を形成する以外、実施例1と
同様にして、樹脂が含浸したニッケルメッキ継手を得
た。樹脂の含浸率を、重量増加から算出したところ、約
0.02重量%であった。
【0049】実施例3 実施例1と同様に無電解ニッケルメッキ処理して厚み2
0μmのニッケルメッキ層を形成した継手に、真空浸漬
含浸と加圧含浸とをそれぞれ2回繰返して樹脂を含浸す
る以外、実施例1と同様にして、樹脂が含浸したニッケ
ルメッキ継手を得た。なお、樹脂の含浸率を、重量増加
から算出したところ、約0.03重量%であった。
【0050】実施例4 実施例2と同様に無電解ニッケルメッキ処理して厚み3
0μmのニッケルメッキ層を形成した継手に、真空浸漬
含浸と加圧含浸とをそれぞれ2回繰返して樹脂を含浸す
る以外、実施例1と同様にして、樹脂が含浸したニッケ
ルメッキ継手を得た。なお、樹脂の含浸率を、重量増加
から算出したところ、約0.03重量%であった。
【0051】比較例1 樹脂を含浸することなく、実施例1と同様にして、厚さ
20μmのニッケルメッキ層を形成した継手を得た。
【0052】比較例2 樹脂を含浸することなく、実施例2と同様にして、厚さ
30μmのニッケルメッキ層を形成した継手を得た。
【0053】比較例3 無電解ニッケルメッキ処理と樹脂含浸処理の順序を逆に
する以外、実施例1と同様にして、樹脂が含浸したニッ
ケルメッキ継手を得た。すなわち、実施例1のマリアブ
ル鋳物製継手を、実施例1と同様にして、アルカリ脱脂
処理した後、実施例1と同様にして樹脂含浸工程に供す
ると共に、実施例1と同様にして、アルカリ脱脂処理
し、水洗した後、塩酸水溶液に浸漬し、水洗した。次い
で、実施例1と同様にして無電解ニッケルメッキ処理を
行ない、継手の表面に厚さ20μmの無電解ニッケルメ
ッキ層を形成した。樹脂の含浸率を、重量増加から算出
したところ、約0.2重量%であった。
【0054】比較例4 無電解ニッケルメッキ処理を120分間行ない、厚み3
0μmのニッケルメッキ層を形成する以外、比較例3と
同様にして、樹脂が含浸したニッケルメッキ継手を得
た。樹脂の含浸率を、重量増加から算出したところ、約
0.2重量%であった。
【0055】各実施例及び比較例で得られた継手をJI
S H 8502に規定する中性塩水噴霧試験方法(塩
化ナトリウムの調製時の濃度40g/L、pH6.5〜
7.2)に供し、塩水噴霧時間の経過に伴なう継手の腐
蝕欠陥(耐蝕性)の程度を、表1に示すレイティングナ
ンバー標準図表により評価した。結果を表に示す。
【0056】なお、レイティングナンバー標準図表は、
全腐蝕面積率(%)に対応し、実施例および比較例の結
果と関連する全腐蝕面積とレイティングナンバーとの関
係は、数値が大きい程、耐蝕性が高い。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】表より、各実施例のニッケルメッキ継手
は、比較例の継手に比べて、耐蝕性が著しく高い。すな
わち、樹脂含浸した後、無電解ニッケルメッキ処理した
比較例3及び4の継手では、さほど耐蝕性が改善され
ず、早期に耐蝕性が低下する。これに対して、無電解ニ
ッケルメッキ処理した後、樹脂を含浸した実施例1〜4
のニッケルメッキ継手は、240時間経過後において、
比較例に比べて、レイティングナンバーで2倍以上、全
腐蝕面積で20倍以上の耐蝕性を示す。さらに、樹脂含
浸を2回行なった実施例3および4の継手は、塩水噴霧
試験においても、殆ど腐蝕しない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 26/00 C21D 10/00 C23C 18/36

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄系素材に無電解ニッケルメッキ層が形
    成された部材であって、前記鉄系素材の欠陥部が、前記
    メッキ層の欠陥部とともに熱硬化性アクリル樹脂により
    含浸されている無電解ニッケルメッキ部材。
  2. 【請求項2】 鉄系素材を無電解ニッケルメッキ処理
    し、熱硬化性アクリル樹脂を含浸した後、80〜150
    ℃で前記樹脂を硬化する無電解ニッケルメッキ部材の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 鋳鉄素材を無電解ニッケルメッキ処理す
    る請求項2記載の無電解ニッケルメッキ部材の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 三次元的構造を有する鉄系素材を無電解
    ニッケルメッキ処理する請求項2記載の無電解ニッケル
    メッキ部材の製造方法。
  5. 【請求項5】 熱硬化性アクリル樹脂を複数回含浸させ
    る請求項2記載の無電解ニッケルメッキ部材の製造方
    法。
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