JP3201871B2 - ガス分析方法及び二次元磁場形成用偏向磁石 - Google Patents

ガス分析方法及び二次元磁場形成用偏向磁石

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガス分析方法及び二次
元磁場形成用偏向磁石に関し、特に、多種イオン検出器
により多種イオンを同時に分析するための新規な改良に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、用いられていたこの種のガス分析
方法としては、一般に、図7で示す偏向磁石の均一磁場
を用いたガス分析方法及び図8で示す四重極ガス分析装
置が採用されていた。
【0003】まず、図7に示すガス分析方法の場合、質
量分析部1がイオン源2、偏向磁石3及びイオン検出器
4で構成されている。このガス分析方法の動作原理は、
対象ガスをイオン源2にてイオン化してイオンビーム2
aとして放出し、偏向磁石3にて、イオン種ごとに軌道
分離し、多種イオン検出器4でイオン電流を検出するこ
とによりガス分析を行う。イオン源2から放出するイオ
ンビーム2aを偏向磁石3で質量分析を行う場合、イオ
ンの放出エネルギーと偏向磁石3による磁束密度Bが一
定の時には、磁界中でのイオン軌道の曲率半径rはイオ
ンの質量数Mの1/2乗に比例する関係にある。図7に
示す従来の均一磁場を使用したガス分析方法では、磁場
が一定の偏向磁石を使用している。これは、ファラデー
カップなどのイオン検出器4でイオンを検出する際に、
隣接するイオンの分離を容易にするためである。
【0004】また、図8で示す四重極ガス分析方法の場
合、分析に磁場を用いず四重極の電極10,11,1
2,13に特定の直流と交流を重畳した電圧U+Vcos
ωtを印加し特定のガスだけを分離、計測する方法であ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のガス分析方法
は、以上のように構成されていたため、次のような課題
が存在していた。すなわち、図7で示す従来方法の場
合、特定の磁場を用い、イオン化したガスを特定のエネ
ルギーで磁場の中に入射させ質量電荷比によって、特定
のガスだけを軌道分離する方法であるため、多種のガス
分析を行う場合は、イオン化したガスを磁場の中に入射
させるエネルギーをスキャニングするか、磁石が電磁石
の場合は励磁電流を変化させ磁束密度をスキャニングし
ながら分析しなければならないという課題があり、完全
な同時分析は不可能であった。また、質量電荷比の差が
大きいと曲率半径の差が大きくなり、複数のイオンを狭
い計測領域に集中させることは出来なかった。
【0006】また、図8の従来方法により多種のガス分
析を行う場合は、四重極の電極10〜13に特定の直流
と交流を重畳した電圧を時間に対して連続的に変化させ
て行く、すなわちスキャニングを繰り返しながら分析し
なければならないという課題があり、完全な同時分析は
出来ない。また各種イオンに対して検出感度、分解能を
一定に保つことが困難であった。従って、従来のガス分
析方法では、多種のガス分析を行うとき、電場ないし磁
場をスキャニングしながら分析しなければならず、この
スキャニングを行うが故に、完全な同時分析を行うこと
は不可能であった。また、前述のスキャニングを行う
と、各種イオンに対して検出感度、分解能を一定に保つ
ことは極めて困難であった。
【0007】本発明は以上のような課題を解決するため
になされたもので、特に、多種イオン検出器により多種
イオンを同時に分析するようにしたガス分析方法を提供
することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によるガス分析方
法は、質量分析部の二次元的磁場強度分布を有する磁場
中にイオン源からのイオンビームを入射させて、このイ
オンビームを曲折し、前記質量分析部の出射側に設けた
多種イオン検出器により前記イオンビーム中の多種イオ
ンを分析するようにした方法である。
【0009】さらに詳細には、前記二次元的磁場強度分
布は、前記イオンビームが曲折する曲折軌道の外側に強
く、前記曲折軌道の内側に弱くなるように構成した偏向
磁石により得る方法である。
【0010】さらに詳細には、前記二次元的磁場強度分
布は、前記イオンビームが曲折する曲折軌道の外側に強
く、前記曲折軌道の直径のほぼ中央位置において弱くな
るように構成した偏向磁石により得る方法である。
【0011】本発明による二次元磁場形成用偏向磁石は
対面する2つの磁極面の面間距離が、前記磁極面上で交
叉する2本の軸方向においてそれぞれ連続的に変化する
ようにした構成である。
【0012】
【作用】本発明によるガス分析方法及び二次元磁場形成
用偏向磁石において、分析すべきガスをイオン源でイオ
ン化して得られた多種イオンを含むイオンビームは不均
一な二次元的磁場強度分布を有する偏向磁石の磁場中に
入射させることにより、質量電荷比(M/e)が大きい
イオンほど強い偏向を受けるため、質量電荷比(M/
e)すなわち、質量(M)の異なるイオン間の曲率半径
の差を小さくすることが可能となり、出射側の狭い計測
領域に質量の異なる複数のイオンを集中させて多種イオ
ン検出器で個別にかつ同時に検出することができる。従
って、従来のように、イオン種ごとにスキャニングした
り印加電圧を変更するような手間を省くことができ、自
動的に同時分析を行うことができる。
【0013】
【実施例】以下、図面と共に本発明によるガス分析方法
及び二次元磁場形成用偏向磁石の好適な実施例について
詳細に説明する。なお、従来例と同一又は同等部分には
同一符号を付して説明する。図1から図6迄は本発明に
よるガス分析方法を示すもので、図1は構成図、図2は
偏向磁石の磁場分布図、図3は図2の他の実施例を示す
磁場分布図、図4は図2に対応する偏向磁石の斜視図、
図5は図3に対応する偏向磁石の斜視図、図6は図1の
他の実施例を示す構成図である。
【0014】図1において符号1で示されるものは質量
分析部であり、この質量分析部1は分析すべきガスをイ
オン化するためのイオン源2、不均一磁場分布を有する
二次元磁場形成用偏向磁石3、3E及びこの偏向磁石
3、3Eの出射側5に位置する多種イオン検出器4とか
ら構成されている。
【0015】前記偏向磁石3、3Eは、図4及び図5で
示す形状を有すると共に、その二次元的磁場強度分布
は、図2及び図3で示すように構成されている。すなわ
ち、図2及び図4で示す二次元磁場形成用偏向磁石3の
場合、両磁極面3A,3Bの面間距離Dが、右手前部分
3bにおいて最も大きく、右手前部分3bから左側横行
部分3cの方向および奥行部分3dの方向にそれぞれ面
間距離Dを連続的に減少させ、右手前部分3bの対角部
分3eにおいて面間距離Dが最小となるように構成して
いる。従って、両磁極面3A,3Bの中間に想定される
平面3C上における磁場強度分布は、図2で示すよう
に、右手前部分3bにおいて最も弱く、横行部分3cお
よび奥行部分3dの方向に連続的に変化して強くなり、
対角部分3eにおいて最も強くなるように形成される。
【0016】また、図3及び図5で示す二次元磁場形成
用偏向磁石3Eの場合、前述の図2及び図4で示す偏向
磁石3を2個、その右手前部分3bおよび奥行部分3d
で向い合せに、左右対称に構成したものである。すなわ
ち、両磁極面3A,3Bの面間距離Dが、手前中央部分
3fにおいて最も大きく、手前中央部分3fから両側横
行部分3gの方向および中央奥行部分3hの方向にそれ
ぞれ面間距離Dを連続的に減少させ、両側奥行部分3i
において面間距離Dが最小となるように構成している。
従って、両磁極面3A,3Bの中間に想定される平面上
における磁場強度分布は、手前中央部分3fにおいて最
も弱く、両側横行部分3gおよび中央奥行部分3hの方
向に連続的に変化して強くなり、両側奥行部分3iにお
いて最も強くなるように形成される。なお、前述の偏向
磁石3Eの構成は一例であり、円弧状にイオンビーム2
aを180゜曲折させるだけではなく、例えば、数10
度だけ曲折する場合も適用できることは述べるまでもな
いことであると共に、このように単に曲折したイオンビ
ーム2aの内側で磁場が弱く、その外側で磁場が強くな
る構成である。なお、前述の両磁極面3A、3Bは平面
に限定されるものではなく、凸面、凹面あるいはこれら
の組合わせの曲面とすることができるものである。
【0017】次に、前述の構成において、ガスを同時分
析する方法について述べる。すなわち、分析すべきガス
をイオン源2でイオン化して得られた多種イオンを含む
イオンビーム2aは図2又は図3で示される不均一な二
次元的磁場強度分布を有する偏向磁石3,3Eの磁場中
に入射させることにより、外周が強く球面的に連続変化
する磁場分布中で、質量電荷比(M/e)が大きいイオ
ンも強磁場部分で強く偏向され、質量電荷比(M/e)
の異なる複数のイオンが出射側の狭い計測領域に集中し
て放出され、検出範囲のイオンをイオン種それぞれに対
応して出射側5の多種イオン検出器4で個別にかつ同時
に検出することができる。
【0018】また、図6に示す構成は、図1の他の実施
例を示すもので、多種イオン検出器4にファラデーカッ
プ4Aを設け、多種イオン検出のダイナミックレンジを
拡大することができるようにした構成である。また計測
領域において、前記質量電荷比(M/e)が等ピッチで
検出されるようにすることも可能である。
【0019】
【発明の効果】本発明によるガス分析方法は、以上のよ
うに構成されているため、次のような効果を得ることが
できる。すなわち、イオン源からのイオンビームを偏向
磁石の不均一な二次元的磁場強度分布を有する磁場中に
入射させ、イオン種ごとに多種イオン検出器により同時
検出されるため、従来、不可能であった非スキャニング
等による多種イオンの同時ガス分析が可能となる。よっ
て、この種のガス分析(質量分析)装置の分析速度を大
幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガス分析方法に適用した装置を示
す構成図である。
【図2】偏向磁石の磁場分布図である。
【図3】図2の他の実施例を示す磁場分布図である。
【図4】図2に対応する二次元磁場形成用偏向磁石の斜
視図である。
【図5】図3に対応する二次元磁場形成用偏向磁石の斜
視図である。
【図6】図1の他の実施例を示す構成図である。
【図7】従来のガス分析方法に適用した装置を示す構成
図である。
【図8】従来のガス分析方法に適用した装置を示す構成
図である。
【符号の説明】
1 質量分析部 2 イオン源 2a イオンビーム 2aA 曲折軌道 3,3E 二次元磁場形成用偏向磁石 4 多種イオン検出器 5 出射側
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 49/30 G01N 27/62

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量分析部(1)の磁場中にイオン源(2)か
    らのイオンビーム(2a)を入射させてこのイオンビーム(2
    a)を曲折し、前記質量分析部(1)の出射側(5)に設けた多
    種イオン検出器(4)により前記イオンビーム(2a)中の多
    種イオンを分析するガス分析方法において、前記質量分
    析部(1)内の磁場は、対面する2つの磁極面(3A,3B)の面
    間距離(D)が、前記磁極面(3A,3B)上で交叉する2本の軸
    方向においてそれぞれ連続的に変化する二次元磁場形成
    用偏向磁石(3,3E)により形成されることを特徴とするガ
    ス分析方法。
  2. 【請求項2】 前記質量分析部(1)内の磁場は、2つの
    前記二次元磁場形成用偏向磁石(3)のそれぞれの前記磁
    極面(3A,3B)の面間距離が広い側面同士を合わせた磁石
    (3E)により形成されていることを特徴とする請求項1記
    載のガス分析方法。
  3. 【請求項3】 対面する2つの磁極面(3A,3B)の面間距
    離(D)が、前記磁極面(3A,3B)上で交叉する2本の軸方向
    においてそれぞれ連続的に変化するように構成したこと
    を特徴とする二次元磁場形成用偏向磁石。
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CN111293031B (zh) * 2020-03-19 2023-05-23 中国科学院近代物理研究所 一种多质荷比离子束质谱分析装置和方法

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