JP3201600B2 - 建造物における地盤補強壁及びその工法 - Google Patents

建造物における地盤補強壁及びその工法

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拓造 中村
俊明 小林
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建造物における地
盤の補強として施工することのできる建造物における地
盤補強壁及びその工法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、建造物の地盤における地震、交通
等による、主に横方向に伝わる振動波の耐震性向上対策
として、建造物周辺の地盤にコンクリート、金属、発泡
スチロールで構成される板状体8を、いわゆる防振壁と
して埋設する方法等が知られている(図8)。
【0003】しかしながら、上記の方法では、地盤中の
細かい空隙部により、地盤中の水が該空隙部を伝って上
昇してくるいわゆる毛管現象(例えば、該空隙部が直径
2mm以下の場合)が起こると、防振壁として用いられ
るコンクリート等には透水性がないため、地表面付近の
土質が上昇してきた水により軟弱化して、安定した地盤
が得られなかった。また、上記防振壁は、空気層を有さ
ず地震又は交通の振動波の吸収、反射が充分なものでな
いため、建造物の地盤における耐震性能に大きな向上が
認められないという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を
解決するためになされたもので、防振壁付近の湧き水、
地下水等を効率よく排水し、安定した地盤を保つことが
でき、また、地震又は交通の振動波を効率的に吸収及び
反射して、建造物における地盤の補強を目的として施工
することのできる建造物における地盤補強壁及びその工
法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、(1)建
造物周囲の少なくとも一部を囲むように反射盤を埋設し
てなる建造物における地盤補強壁において、上記反射盤
の外壁面の少なくとも一部に、連通した空隙部により透
水性を有する多孔質体を接合させたことを特徴とする建
造物における地盤補強壁、(2)多孔質体が傾斜面又は
湾曲面を有している上記(1)記載の建造物における地
盤補強壁、(3)多孔質体が複数の異なる多孔質体を積
層してなる多層多孔質体である上記(1)又は(2)記
載の建造物における地盤補強壁、(4)建造物周囲の少
なくとも一部を囲む位置において地盤を掘削して土を排
除し、次いで、土を排除して形成された穴部に反射盤及
び連通した空隙部により透水性を有する多孔質体を密接
した状態で穴部に埋入したことを特徴とする建造物にお
ける地盤補強壁の工法、(5)多孔質体として傾斜面又
は湾曲面を有する多孔質体を用いるものである上記
(4)記載の建造物における地盤補強壁の工法、(6)
多孔質体として複数の異なる多孔質体を積層してなる多
層多孔質体を用いるものである上記(4)又は(5)に
記載の建造物における地盤補強壁の工法である。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基
づき説明する。
【0007】図1は、補強を施したベタ基礎構造1の周
囲における地盤を完全に取り囲んで本発明補強壁2を適
用した例を示す。図1(a)は建造物の基礎部分を上か
らみた模式図、同図(b)は同図(a)のX−Y線に沿
う縦断面略図である。図2は、道路3付近のベタ基礎構
造1の周囲における地盤の一部を取り囲んで本発明補強
壁2を適用した例を示すもので、建造物の基礎部分を上
からみた模式図である。4は砂利、5は発泡樹脂基盤又
は発泡樹脂コンクリート基盤、6は発泡樹脂、7は側面
部発泡樹脂盤である。尚、GLはグランドラインであ
る。
【0008】ベタ基礎構造1の下部に発泡樹脂基盤又は
発泡樹脂コンクリート基盤5を埋設し、該ベタ基礎構造
1と該発泡樹脂基盤又は発泡樹脂コンクリート基盤5と
を、連通した発泡樹脂6を介在させて接合一体化し、更
に、発泡樹脂基盤又は発泡樹脂コンクリート基盤5にお
ける側面の全部、又は一部に側面部発泡樹脂盤7を当接
して設けた建造物における防振基礎構造15の周囲の地
盤中に埋設した反射盤8の外壁面の少なくとも一部に、
連通した空隙部により透水性を有する多孔質体9を接合
させて本発明補強壁2を構成した。
【0009】補強壁2は、防振基礎構造15の周囲にお
ける地盤を完全に取り囲んでもよく(図1(a))、
又、一部を取り囲んでもよい(図2)。前者の場合、あ
らゆる方向から伝わってくる虞のある地震の振動波、及
び一定の方向から伝わってくる交通の振動波を遮るのに
有効である。後者の場合、振動波の発生源(例えば、道
路3)が判明している交通の振動波を遮るのに有効であ
る。この場合、図2に示すように、振動波の発生源であ
る道路3と防振基礎構造15の間の地盤中に本発明補強
壁2を設ける。また、上記した理由により、反射盤8の
外壁面全体に多孔質体9を接合させてもよく、又、一部
に接合させてもよい。更に、補強壁2で囲まれた地盤に
おいて、いわゆる毛管現象を防止するため、反射盤8の
内壁面全体に多孔質体9を接合させてもよく、又、一部
に接合させてもよい(図4(c))。
【0010】多孔質体9を傾斜面又は湾曲面を有する形
状とすると、補強壁2外部から伝わってくる振動波の一
部が多孔質体9と反射盤8の接合部分16で乱反射する
ため、建造物の基礎構造に伝わる振動波を一層軽減する
ことができる。多孔質体9の有する面の形状としては、
凹凸形状(図3(a))、湾曲形状(同図(b))、楔
形(同図(c))、微細凹凸形状(同図(d))等が挙
げられる。尚、多孔質体9を型枠として反射盤8をコン
クリート打設により形成すれば、容易に、微細凹凸形状
(同図(d))の接合部分16を得ることができる。
【0011】多孔質体9は複数の異なる多孔質体を積層
してなる多層多孔質体として構成することができる。一
般に、振動波の伝搬媒体(伝搬地盤)に、特性インピー
ダンス(密度×伝搬速度)の異なる層を設けることによ
り、特性インピーダンスの小さい層から、特性インピー
ダンスの大きい層に伝わる振動波を、その境界面で反射
して、透過エネルギーを減少させることができる。特
に、伝搬地盤の途中に空気層がある場合は、地盤を伝わ
る振動波を効果的に遮断することができる。図4(a)
には、多孔質体を2つの異なる多孔質体9a、9bを積
層して構成した例を示す。即ち、補強壁2は、反射盤8
の外壁面に、多孔質体9bを接合し、該多孔質体9bの
外壁面に多孔質体9aを接合して形成されている。上記
した特性を利用して、多孔質体9a、多孔質体9b、反
射盤8の順に、特性インピーダンスが大きくなるよう
に、各々の素材を構成することにより、補強壁2の外部
から伝わる振動波を各々多孔質体9a、多孔質体9b、
反射盤8の境界面で反射して、透過エネルギーを大幅に
減少させることができる。
【0012】また、補強壁2として、多孔質体9のみを
用いる場合(図4(b))は、補強壁2で取り囲まれた
地盤を地盤改良材を用いて、強化することにより、上記
した特性を利用して本発明の課題を解決することが可能
となる。
【0013】補強壁2は、深さ2〜20m(図1(b)
中A)、厚みが5〜50cm(同図(b)中B)程度が
好ましい。また、補強壁2の設置場所は、建造物のベタ
基礎構造1から1〜5m(同図(b)中C)離れた位置
が好ましい。更に、補強壁2の最下端部とベタ基礎構造
を結んだ線とGLのなす角度(図1(b)中θ)は45
°以上が好ましい。地震の横方向から伝わるS波は、θ
が主に0〜45°の範囲で伝搬してくるからである。
【0014】本発明補強壁2を交通振動対策に用いる場
合は、補強壁2の深さは300cm程度でも充分に交通
の振動波を吸収及び反射することができる。該交通の振
動波は、地表付近を伝搬してくるからである。
【0015】本発明で用いる多孔質体9は、透水性を有
している。具体的には、連通した空隙部を有する。例え
ば、溝10及び/又は貫通した孔11を設けた発泡樹脂
盤12(図6)、発泡ビーズ13間に連続した隙間(空
隙部)14を有する発泡樹脂盤(図7)、マカロニ形状
又はチップ形状等の発泡粒子を成形した発泡樹脂盤等で
ある。該空隙部は、直径2mmより大きく形成する。空
隙部中の水が該空隙部を伝って上昇してくるいわゆる毛
管現象を防止し、水を下降させて排水する為である。多
孔質体として連通した空隙部を有する発泡樹脂盤を用い
た場合、発泡樹脂盤において空隙部の占める割合は、弾
性変形等の効果を得るため、10〜40%が好ましい。
発泡樹脂盤としては、軽量で、必要な圧縮強度を有する
ものであればよく、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポ
リエチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩
化ビニル等の発泡体よりなるものを挙げることができる
が、ポリウレタンは、加水分解が起こるので耐久性に難
があり、ポリ塩化ビニルは燃えると塩酸ガスが発生し、
公害上の問題を有するので、ポリスチレン、ポリプロピ
レン、ポリエチレン等の発泡体よりなるものが好まし
い。この発泡樹脂盤の圧縮強度は、地盤の地震特性等に
より異なるが一般的には1〜15t/m2 である。尚、
図6は、連接体の一実施例として用いる溝10及び/又
は貫通孔11を設けた発泡樹脂盤12であり、同図
(a)は、その平面図、同図(b)は、同図(a)のX
−Y線に沿う縦断面略図である。図7は、連接体の一実
施例として用いる発泡ビーズ間13に連続した隙間(空
隙部)14を有する発泡樹脂盤の縦断面略図である。
【0016】多孔質体9として上記の連通した空隙部を
有する発泡樹脂盤を用いた場合、該空隙部が形成する空
気層により、振動波を伝わりにくくすると共に、多孔質
体9が効率よく弾性変形等することにより振動波のエネ
ルギーを吸収し、該振動波の建造物への伝達を少なくす
ることができる。また、多孔質体9が圧縮されて変形し
た場合、空隙部を有する発泡樹脂盤を用いた方が、空隙
部のない発泡樹脂盤に比べ、ポアソン比が小さいため振
動波の吸収に有利である。
【0017】反射盤8としては、従来から防振壁として
用いられている鋼板、コンクリート、硬質樹脂盤等が挙
げられる。該反射盤8は透水性を有しないものが用いら
れる。該反射盤8は、振動波を反射する反射盤としての
役割と、土留めに用いるいわゆる土留板としての役割を
有する。
【0018】建造物のベタ基礎構造1の周囲の地盤中に
埋設した反射盤8の外壁面全体又は一部に多孔質体9を
接合させて補強壁を形成することにより、補強壁2及び
その周辺地盤では、湧き水、地下水、雨水等による、い
わゆる毛管現象が起こらずに、該湧き水等を地下方向へ
排水し、補強壁2の内部の地盤を安定に保つことがで
き、また、多孔質体9が弾性変形等することにより地震
又は交通の振動波を効率的に吸収し、更に、該振動波を
多孔質体9と反射盤8の境界で反射することができるた
め建造物における地盤の補強に極めて有効なものとな
る。
【0019】次に本発明の施工方法を、順を追って具体
的に説明する(図5)。
【0020】(1)建造物、建造物の建造予定地におけ
る地盤の地震特性、又は交通の振動データ等を解析し、
反射盤8の最適な大きさ、多孔質体9の最適な大きさ、
圧縮強度及び、補強壁2の設置場所を決定する。
【0021】(2)補強壁2を埋設する地盤において、
深さ約30〜100cmの穴部18を掘削する(同図
(a))。必要に応じて、穴部1の外側壁面19及び/
又は内側壁面20に当接して、土留板(図示しない)を
設ける。穴部1の大きさは、必要に応じて適宜変えるこ
とができる。
【0022】(3)穴部1の外側壁面19に、多孔質体
9の外壁面を密接して設ける(同図(b))。尚、必要
に応じ、多孔質体9を布(不織布を含む)、フィルム、
ゴム等で包み、空隙部に土砂、コンクリート等が侵入す
るのを防止する。
【0023】(4)多孔質体9と穴部1の内側壁面20
の間に形成される穴部において、反射盤8を多孔質体9
の内壁面に密接して一体化する(同図(c))。土留板
を設けた場合は、外側壁面19に当接した土留板(図示
しない)をとりはずし、その後GLまで土を敷き固める
(同図(d))。尚、反射盤8として、コンクリートを
用いる場合、コンクリート打設時のコンクリートの無駄
な消費を避けるため、周囲に型枠を設けると好ましい。
この際、多孔質体9を型枠の一部として用いると、反射
盤8としてのコンクリートと多孔質体9とが強固に接合
一体化して、更に好ましい。
【0024】本発明を適用できる建物の基礎構造として
は、上記ベタ基礎以外に、杭基礎、独立基礎、独立基礎
と梁構造の基礎等が挙げられる。
【0025】本発明建造物における地盤補強壁の工法を
用いることにより、従来の地盤補強策に比較して、簡単
に補強できるので、工事期間が短期間で済み、経済的に
安価であるという効果を有し、特に、改修工事に有利で
ある。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は建造物の
ベタ基礎構造の周囲の地盤中に埋設した反射盤の外壁面
全体又は一部に連通した空隙部により透水性を有する多
孔質体を接合させて補強壁を形成することにより、補強
壁及びその周辺地盤では、湧き水、地下水、雨水等によ
る、いわゆる毛管現象が起こらずに、該湧き水等を地下
方向に排水し、補強壁の内部の地盤を安定に保つことが
でき、また、連通した空隙部により透水性を有する多孔
質体において地震又は交通の振動波を効率的に吸収し、
更に、該振動波を連通した空隙部により透水性を有する
多孔質体と反射盤の境界で反射することができるため建
造物における地盤の補強に極めて有効なものとなる。
【0027】また、本発明建造物における地盤補強壁の
工法を用いることにより、従来の地盤補強策に比較し
て、簡単に補強できるので、工事期間が短期間で済み、
経済的に安価であるという効果を有し、特に、改修工事
に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の建造物における地盤補強壁の一実施例
を示すもので、同図(a)は平面図、同図(b)は同図
(a)のX−Y線に沿う縦断面略図である。
【図2】本発明の建造物における地盤補強壁の一実施例
を示す平面図である。
【図3】本発明の建造物における地盤補強壁の一実施例
を示す縦断面略図である。
【図4】本発明の建造物における地盤補強壁の一実施例
を示す縦断面略図である。
【図5】本発明の建造物における地盤補強壁の工法を説
明するための縦断面略図である。
【図6】多孔質体の一実施例として用いる溝及び/又は
貫通孔を設けた発泡樹脂盤であり、同図(a)は、その
平面図、同図(b)は、同図(a)のX−Y線に沿う縦
断面略図である。
【図7】多孔質体の一実施例として用いる発泡ビーズ間
に連続した隙間(空隙部)を有する発泡樹脂盤の縦断面
略図である。
【図8】建造物における地盤中に従来技術の補強を施し
た例を示す縦断面略図である。
【符号の説明】
1 ベタ基礎構造 2 補強壁 8 反射盤 9 多孔質体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−195300(JP,A) 特開 昭55−9971(JP,A) 特開 平10−204873(JP,A) 特開 平4−312607(JP,A) 実開 昭54−178906(JP,U) 実開 昭57−128642(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E02D 31/08

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 建造物周囲の少なくとも一部を囲むよう
    に反射盤を埋設してなる建造物における地盤補強壁にお
    いて、上記反射盤の外壁面の少なくとも一部に、連通し
    た空隙部により透水性を有する多孔質体を接合させたこ
    とを特徴とする建造物における地盤補強壁。
  2. 【請求項2】 多孔質体が傾斜面又は湾曲面を有してい
    る請求項1記載の建造物における地盤補強壁。
  3. 【請求項3】 多孔質体が複数の異なる多孔質体を積層
    してなる多層多孔質体である請求項1又は2記載の建造
    物における地盤補強壁。
  4. 【請求項4】 建造物周囲の少なくとも一部を囲む位置
    において地盤を掘削して土を排除し、次いで、土を排除
    して形成された穴部に反射盤及び連通した空隙部により
    透水性を有する多孔質体を密接した状態で穴部に埋入し
    たことを特徴とする建造物における地盤補強壁の工法。
  5. 【請求項5】 多孔質体として傾斜面又は湾曲面を有す
    る多孔質体を用いるものである請求項4記載の建造物に
    おける地盤補強壁の工法。
  6. 【請求項6】 多孔質体として複数の異なる多孔質体を
    積層してなる多層多孔質体を用いるものである請求項4
    又は5記載の建造物における地盤補強壁の工法。
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