JP3200936B2 - 嫌気性処理における臭気ガスの脱臭方法 - Google Patents

嫌気性処理における臭気ガスの脱臭方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有機性排水の嫌気性処
理において発生する臭気ガスの脱臭方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】有機性排水の省エネルギ型の処理法とし
て、嫌気性処理が注目されている。この方法は、酸生成
菌による酸生成相、およびメタン生成菌によるメタン生
成相からなる嫌気処理により有機物を分解する方法であ
る。特にUASB(上向流スラッジブランケット)法、
流動床法などは、反応槽内にメタン生成菌を中心とした
微生物群を高濃度に保持できるため、処理効率も高く、
活性汚泥などの好気性処理の5〜10倍の容積負荷で運
転でき、食品排水を中心に広く採用されている。
【0003】ところが嫌気性処理は、空気を供給せず、
嫌気的雰囲気で行われるため、臭気が発生する。臭気の
成分は、酸生成相で発生する有機酸臭、およびメタン生
成相で発生する硫化水素臭が主なものであり、これが外
部にもれると、臭気公害を引き起こす。このため処理槽
をカバーで覆って吸引し、臭気ガスが外部にもれないよ
うにするとともに、吸引した臭気ガスは、薬品洗浄や活
性炭処理等により脱臭している。
【0004】一方、特公昭62−38015号には、メ
タン生成相で発生するメタンガス中に含まれる硫化水素
を除去するために、生成メタンガスを好気性処理におけ
る活性汚泥と接触させる方法が開示されている。この方
法は活性汚泥に硫化水素を吸収させることにより、硫化
水素を資化する細菌を活性汚泥中で増殖させ、脱硫を行
う方法である。
【0005】生成メタンガスとは別に、装置から吸引し
た臭気ガスの脱臭にも、このような方法は適用可能であ
り、嫌気性処理とは別に、あるいは嫌気性処理の後処理
として設置された好気性処理装置に臭気ガスを導入して
活性汚泥と接触させ、脱臭することも可能である。
【0006】このように嫌気性処理装置の近くに好気性
処理装置がある場合には、臭気ガスを好気処理装置に導
いて吹込むだけで脱臭できるが、嫌気性処理水を下水に
放流する場合のように、近くに好気性処理装置がない場
合には、別途臭気ガスの処理設備が必要となる。ところ
が好気性処理装置として、臭気処理専用の活性汚泥処理
装置を設置することは、曝気槽、沈殿槽、汚泥返送ポン
プ等が要ることから不経済である。
【0007】また活性汚泥の返送を行わず、単に一過式
に嫌気性処理水を曝気槽に通過させるだけでは、活性汚
泥が流出するため、好気性処理に必要な菌体を保持でき
ず、臭気ガスを吹込んでも脱臭することはできない。こ
のほか好気性処理装置の活性汚泥を脱臭槽に入れ、ここ
に臭気ガスを吹込んでも、最初は脱臭可能であるが、し
だいにpHが低下して脱臭能力が低下し、脱臭できなく
なる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、この
ような問題点を解決するため、簡単な装置と操作によ
り、嫌気性処理において発生する臭気ガスを、安定して
効率よく脱臭することができる臭気ガスの脱臭方法を提
案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、有機性排水を
嫌気性処理する方法において、原水、嫌気性処理途中の
水または嫌気性処理水の少なくとも一部を脱臭槽に導い
て、槽内の微生物と混合し、前記嫌気性処理で発生する
臭気ガスを空気とともに前記脱臭槽に通気して好気性処
理を行い、前記脱臭槽に導入する水は脱臭槽における滞
留時間が1日以上となるように一過式で通水することを
特徴とする嫌気性処理における臭気ガスの脱臭方法であ
る。
【0010】本発明において、嫌気性処理の対象となる
有機性排水は、有機物を含み、嫌気性処理が可能なもの
であれば制限はない。このような排水としては、ビール
排水、製糖排水、でんぷん排水等の食品排水、紙パルプ
排水などの産業排水のほか、下水、し尿、汚泥、あるい
はこれらを処理した排水などがある。
【0011】嫌気性処理の方式としては、酸生成相とメ
タン生成相を分離して行う二相方式、あるいはこれらの
二相を一槽で行う一相方式のいずれでもよい。また嫌気
性処理の方法としては、UASB法、流動床法、その他
任意の方法を採用することができる。
【0012】本発明の処理対象となる臭気ガスは、この
ような嫌気性処理で発生する臭気ガスであり、処理装置
の全体、またはこれを構成する個々の装置をカバーで覆
い、内部をブロア、ファンなどで吸引することにより得
られる。処理装置としては、単一槽となる場合もある
が、通常は原水調整槽、酸生成槽、メタン生成槽、処理
水槽などから構成される。
【0013】臭気成分としては、原水調整槽および酸生
成槽では、有機酸およびそのエステルによる有機酸臭を
主体とする臭気が発生する。メタン生成槽および処理水
槽では、処理が順調なときは有機酸の臭気は少ないが、
硫化水素による硫化水素臭およびアンモニア臭が発生
し、原水の硫酸イオン濃度によっては、硫化水素濃度が
数千ppmに達する場合がある。メタン生成槽の処理が
順調でないときは、ここでも有機酸臭が発生する。
【0014】本発明で処理する臭気ガスはこれらを含む
ものであり、各部で発生する臭気ガスを別々に吸引して
別々に処理してもよいが、全体を混合した状態で処理し
てもよい。これらの臭気ガスは、それぞれまたは全体の
装置をカバーで覆って吸引することにより得られるが、
このとき吸引により空気も混入した状態で得られる。
【0015】本発明では、これらの臭気ガスを脱臭する
ために、脱臭槽を設けて、ここで微生物を増殖させ、原
水、嫌気性処理途中の水または嫌気性処理水(以下、こ
れらを嫌気性処理水等ということがある)の少なくとも
一部を導入して好気性処理を行う。微生物は嫌気性処理
水等を好気性処理することにより自然に増殖させてもよ
いが、最初は他の好気性処理装置から活性汚泥を移送し
て接種するのが好ましい。
【0016】脱臭槽の容量は臭気ガスの脱臭に必要な大
きさでよく、原水の種類、嫌気性処理条件、装置の構造
等により異なるが、一般的には被処理CODcr 1TN
に対して、1〜30m3程度とされ、導入する嫌気性処
理水等の滞留時間が1日以上、好ましくは1〜10日間
となる大きさとする。
【0017】脱臭槽に導入する嫌気性処理水等は臭気ガ
スの脱臭に必要な量でよく、一般的には処理水全体の
(1/10000)〜(1/10)程度でよい。この嫌
気性処理水等は、前記の滞留時間(1日以上、好ましく
は1〜10日)となるように、脱臭槽に導入して槽内の
活性汚泥と混合する。
【0018】この状態で、前記臭気ガスを空気とともに
脱臭槽に通気して、完全混合型の好気性処理を行い、臭
気ガスの脱臭を行う。嫌気性処理装置の密閉度が高く
て、臭気ガス中の空気量が少ないときは、別途空気を混
入する必要があるが、一般的には吸引により大量の空気
が混入するので、さらに空気を混入しなくてもよい場合
が多い。脱臭槽における通気量はSVとして5〜50h
-1程度とするのが好ましい。
【0019】脱臭槽に導入する嫌気性処理水等を、前記
滞留時間となるように一過式で通水して、完全混合型の
好気性処理を行うと、槽内の汚泥中には、嫌気性処理水
等の中に残留する、あるいは臭気ガス中に含まれる有機
酸等の有機物や硫化水素等の硫化物、およびアンモニア
などを好気的に酸化分解する微生物が増殖し、臭気ガス
中の臭気成分は除去される。
【0020】本発明では、脱臭槽における嫌気性処理水
等の滞留時間を1日以上とすることにより、嫌気性処理
水等および臭気ガス中の成分を分解する微生物の増殖が
可能となり、一過式の場合でも、嫌気性処理水等および
臭気ガス中の成分の分解に必要な量の微生物を脱臭槽に
保持することができる。
【0021】このように長い滞留時間で嫌気性処理水等
を通水し、完全混合型の好気性処理を行うことにより、
脱臭槽は一種のケモスタット型反応槽として機能し、嫌
気性処理水等および臭気ガス中の成分は効率よく微生物
に摂取され、脱臭が行われる。
【0022】ここで増殖する微生物を含む汚泥は、一般
の活性汚泥のような沈降性に欠け、浮遊状態で液中に保
持される。また菌体濃度も活性汚泥法と比較すると著し
く低い。一方、臭気ガス中の臭気成分は、物質濃度が低
くても臭気濃度としては高い物質、すなわち域値の小さ
い物質であるため、ガス中に含まれる絶対量は少なく、
これを液中に溶解させれば、前記浮遊状態の微生物によ
り容易に資化される。
【0023】脱臭槽に汚泥だけを入れ、嫌気性処理水等
を供給することなく臭気ガスを通気すると、前述のよう
にpHが低下して、脱臭能力がなくなるが、嫌気性処理
水等を供給して通気することにより、菌体を維持すると
ともに、pHに対する緩衝作用、および窒素、リン酸な
どの栄養源の補給を行い、これにより脱臭性能を維持す
ることができる。
【0024】脱臭槽から流出する処理液は、液の有機物
や臭気成分は微生物により除去されているが、微生物自
体はそのまま汚泥として液中に浮遊状態で存在する。こ
の汚泥は分離性が悪いが、返送する必要がないので、そ
のまま嫌気性処理水とともに、または嫌気性処理水とは
別に放流することができる。また後処理工程がある場合
は後処理工程に移すことができる。
【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。図
1は実施例の嫌気性処理装置を示すフロー図である。図
において、1は原水調整槽、2は酸生成槽、3はメタン
生成槽、4は処理水槽、5は脱臭槽である。
【0026】上記の嫌気性処理装置による処理は、原水
6を原水調整槽1に導入し、ここから順次酸生成槽2お
よびメタン生成槽3に送って嫌気性処理を行う。酸生成
槽2では酸生成菌の作用により有機酸に分解される。メ
タン生成槽3ではメタン生成菌の作用によりメタンおよ
び炭酸ガスに分解する。ここで生成するメタンガスは、
生成ガス7として取り出し、脱硫後ガスホルダ(図示せ
ず)に送られる。また嫌気性処理水8は処理水槽4に導
入し、大部分は処理水9として下水道に放流したり、後
処理装置に送られる。
【0027】脱臭槽5内には微生物を増殖させておき、
処理水槽4からポンプ10により嫌気性処理水11を導
入して、微生物と混合する。一方、原水槽1、酸生成槽
2、メタン生成槽3および処理水槽4はカバーで覆った
構造とし、それぞれ吸気管12を通してブロア13で吸
引し、空気が混入した臭気ガス14として脱臭槽5に導
入して通気し、完全混合型の好気性処理を行い、脱臭す
る。嫌気性処理水11は1日以上の滞留時間で一過式に
通水し、処理水15としてオーバフローさせ、放流す
る。
【0028】上記の処理装置において、ビール工場の仕
込排水を原水とし、メタン生成槽4として、1.5m3
のUASB槽を採用し、嫌気性処理を行った。また脱臭
槽5として、容量212 literの塔を使用し、原
水調整槽1、酸生成槽2、メタン生成槽3、処理水槽4
の空間部から吸引した臭気ガス14を0.1Nm3/m
inで通気して脱臭した。
【0029】当初、脱臭槽5には好気性処理装置から移
送した活性汚泥を導入し、嫌気性処理水11を供給しな
い状態で脱臭を行ったところ、槽内のpHが低下し、脱
臭効率が低下した。このため活性汚泥を入替えて同様に
脱臭を行ったが、再び同様の現象が起こった。
【0030】そこで104日目以降処理水槽4から嫌気
性処理水11を40〜60 liter/日の供給量で
脱臭塔に通液して、滞留時間3.5〜5.3日で完全混
合型の好気性処理を行い、一過式で放流したところ、脱
臭槽5のpHは安定し、脱臭効果も安定した。
【0031】上記の試験中の臭気ガスおよび処理ガスの
臭気濃度、ならびに脱臭槽5のpHの変化を図2および
図3に示す。図3において、A、Bは活性汚泥を入替え
た時点、Cは嫌気性処理水を供給開始した時点を示す。
【0032】以上の結果より、脱臭槽に嫌気性処理水を
供給して滞留時間1日以上で好気性処理することによ
り、脱臭槽の微生物を維持し、安定して効率よく脱臭で
きることがわかる。
【0033】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、嫌気性処
理水等を脱臭槽に導いて槽内の微生物と混合し、臭気ガ
スを通気して好気性処理を行い、脱臭するようにしたの
で、簡単な装置と操作により、嫌気性処理において発生
する臭気ガスを、安定して効率よく処理することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の嫌気性処理装置を示すフロー図であ
る。
【図2】実施例の試験結果を示す臭気濃度のグラフであ
る。
【図3】実施例の試験結果を示すpHのグラフである。
【符号の説明】
1 原水槽 2 酸生成槽 3 メタン生成槽 4 処理水槽 5 脱臭槽 10 ポンプ 13 ブロア

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機性排水を嫌気性処理する方法におい
    て、原水、嫌気性処理途中の水または嫌気性処理水の少
    なくとも一部を脱臭槽に導いて、槽内の微生物と混合
    し、前記嫌気性処理で発生する臭気ガスを空気とともに
    前記脱臭槽に通気して好気性処理を行い、前記脱臭槽に
    導入する水は脱臭槽における滞留時間が1日以上となる
    ように一過式で通水することを特徴とする嫌気性処理に
    おける臭気ガスの脱臭方法。
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