JP3199263U - 刷毛 - Google Patents
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Abstract
【課題】支持線に吊り下げ保持された刷毛を迅速に取り出すことができ作業効率を向上させた刷毛を提供する。【解決手段】多数の毛が束ねられた毛束10と、先端部に毛束が取り付けられた柄20とを有し、毛束に含浸させた液体を被塗布面に塗布するための刷毛であり、柄の基端側に吊り構造30を備え、吊り構造は、柄を表裏貫通する孔部31と、一端が孔部と繋がり外方に延び他端が孔部よりも先端側の柄の側面に開口して、孔部と開口33とを連通させる連通路部32とからなる。【選択図】図1
Description
本考案は、多数の毛が束ねられた毛束と先端部に毛束が取り付けられた柄とを有し、毛束に含浸させた液体を被塗布面に塗布する刷毛に関する。
上記のような刷毛は、建築物の内外壁や鉄骨等の構造物、家具などの被塗装面に、プライマーやペンキ、ラッカー、ニスなどの液体を塗布する手工具として幅広く用いられている。刷毛には、外観上の形態から、平バケや寸胴バケ、筋交いバケ(折違バケ)、ラスターバケなどがあり、各々被塗布面の面積に応じた幅(号数)のものがあるが、これらはいずれも、多数の毛が束ねられた毛束と、先端に毛束が取り付けられて把持容易な形状に形成された柄とを有して構成される。
刷毛に用いる毛は非常に細く、且つ一般的に柄の先端から突出する毛丈が長い。そのため、例えば図7に示すように、容器BKに穂先7aを下にして刷毛7を立てかけるように置いておくと、刷毛の自重で毛が変形して曲がり癖がつき、塗装作業がスムーズに行えなくなる。刷毛の自重を支えなくても、穂先7aが何かに当接して毛が変形した状態で長時間放置すると、同様に曲がり癖がついて塗装作業に支障が生じることになる。そのため、刷毛の柄7bには、基端側に位置して刷毛7を吊り下げるための円孔7c(図8を参照)が柄7bの表裏を貫通して形成されている。従来では、この円孔7cに、いわゆる番線(焼き鈍し鉄線)やステンレス鋼線等を支持線HSとして通して刷毛7を吊り下げ、穂先が容器BKの底面や側面に当接することなく垂下した状態で保持されるようにしていた(例えば、特許文献1、2を参照)。
確かに、柄の基端側に形成された円孔に支持線を通して刷毛を吊り下げておけば、毛束に曲がり癖がつくことを防止できる。しかし、作業の進捗に応じて複数の刷毛を使い分ける塗装作業の現場においては、このような刷毛は選択・保持の作業が煩雑であり作業効率を低下させる一因となっていた。すなわち、作業者は、被塗布面の位置や広さ等に応じて、作業に適した形態および号数の刷毛を適宜選んで使用する。ところが、図8に示すように複数の刷毛7(A〜G)が支持線HSに串刺し状態で保持されていると、使用したい刷毛Dを取り出すためには、いちど支持線HSごと刷毛の束を持ち上げて刷毛A〜D(または刷毛D〜G)を引き抜き、選んだ刷毛Dを取り分けた後に、再び刷毛A,B,C(または刷毛E,F,G)を一本ずつ各円孔7cに支持線HSを通してこれらの刷毛を吊り下げ、一体となった刷毛の束を元に戻す、という煩雑な作業が必要であった。
本考案は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡明な構成でスピーディーに刷毛の選択・保管作業を行うことができ、作業効率を向上可能な刷毛を提供することを目的とする。
上記課題を解決して目的を達成するため、本考案は、多数の毛が束ねられた毛束と、先端部に毛束が取り付けられた柄とを有し、毛束に含浸させた液体を被塗布面に塗布するための刷毛である。この刷毛は、柄の基端側に、柄を表裏貫通する孔部と、一端が孔部と繋がって外方に延び他端が孔部よりも先端側の柄の側面に開口して孔部と開口とを連通させる連通路部と、を有する吊り構造を備えて構成される。
なお、前記連通路部の溝幅は孔部の有効径よりも小さく形成することができる。ここで、「有効径」は、平面視における孔部の形状が円形の場合には円の直径を、長穴状の場合には長穴の幅(長穴を構成する円の直径)を、楕円形の場合には短軸の長さ(短軸径)をいう。
また、前記孔部の中心と前記開口の中心とを結んだ直線は、柄が延びる方向の中心線と鋭角で交わるように構成することが好ましい。
また、前記連通路部は孔部と開口とを直線状に結んで形成し、当該連通路部の中心線は柄が延びる方向の中心線と30〜70度の挟み角で交わるように構成することも好ましい。
また、前記連通路部は、当該連通路部の中心線を挟んで対向する柄の先端側の溝面と基端側の溝面とからなり、先端側の溝面は孔部の内面と滑らかに繋がるように形成することが好ましい。
また、前記孔部を柄が延びる方向の中心線に対して左右いずれか一方にオフセットして形成し、連通路部は孔部がオフセットされた側に形成することが好ましい。
また、刷毛の形態は筋交い(スジカイ)型の刷毛であり、連通路部は、毛束の幅方向に延びる線と柄が延びる方向の中心線との交点に対して交差角が鋭角となる側(毛束に対して柄が傾斜した側)に形成されることが好ましい形態である。
本考案に係る刷毛は、柄の基端側に吊り構造を備え、この吊り構造は、柄を表裏貫通する孔部と、一端が孔部と繋がって外方に延び他端が孔部よりも先端側の柄の側面に開口して孔部と開口とを連通させる連通路部とを有して構成される。そのため、例えば、図8に示したように複数の刷毛7(A〜G)が支持線に保持されており、この中から刷毛Dを選択して取り出す際に、刷毛Dの基端部を把持し支持線HSが連通路を通って開口から抜けるように引き出すことで、選択した刷毛Dを簡単に取り出すことができる。すなわち、支持線HSごと刷毛の束を持ち上げて刷毛A〜D(または刷毛D〜G)を引き抜いたり、刷毛Dを取り出した後に再び刷毛A,B,C(刷毛E,F,G)を吊り下げて、刷毛の束を元に戻したりする必要がなく、選択した刷毛Dのみを簡単に取り出すことができる。従って、簡明な構成でスピーディーに刷毛の選択・保管作業を行うことができ、作業効率を向上させた刷毛を提供することができる。
なお、連通路部の溝幅を孔部の有効径よりも小さく形成することにより、振動等によって刷毛が支持線から外れて脱落するような事態を低減することができる。
また、前記孔部の中心と開口の中心とを結んだ直線が、柄が延びる方向の中心線と鋭角で交わるように構成することにより、人為的な操作なしに刷毛が支持線から外れることを効果的に抑制することができる。
また、連通路部を直線状に形成し、連通路部の中心線が柄の中心線と30〜70度の挟み角で交わるように構成することにより、人為的な操作なしに刷毛が支持線から外れることを効果的に抑制できるとともに、柄の損傷を抑制し、支持線への刷毛の着脱操作を容易に行うことができる。
また、中心線を挟んで対向する連通路部の二つの溝面のうち、柄の先端側の溝面が孔部の内面と滑らかに繋がるように形成することによって、支持線に支持された刷毛を取り出す際に支持線が孔部と連通路部との接続部(かど部)に引っかかるようなことがなく、刷毛の着脱操作を容易且つスピーディーに行うことができる。
また、孔部を柄の中心線に対して左右いずれか一方にオフセットして形成し、連通路部は孔部がオフセットされた側に形成したような構成によれば、非オフセット側に、柄の先端側と基端側とが連通路部により分断されることなく一体に繋がった状態の領域を広く確保することができる。換言すれば、柄の中心線上に孔部を形成した場合と比較して、柄の先端側と基端側とが繋がった領域の断面積を大きく取ることができる。そのため、連通路部を設けることに伴って不可避的に生じる柄の強度低下を抑制しつつ、作業効率が高い刷毛を提供することができる。
なお、本考案を筋交い型の刷毛に適用する場合において、連通路部を、毛束の幅方向に延びる線と柄の中心線との交点に対して交差角が鋭角となる側に形成するような構成によれば、支持線への着脱操作が容易で使い勝手が良好な刷毛を提供することができる。
以下、本考案を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。本考案を適用した刷毛1の構成例を図1、図2に示す。図1は刷毛1の正面図、図2は図1中のII矢視方向に見た刷毛1の側面図である。
なお、本明細書においては、各部の方向について説明するときに、図1に示す刷毛1の配置姿勢を基準とし、図1における上方/下方をそれぞれ基端側/先端側、左方/右方をそれぞれ左側/右側、紙面に直交する手前方向/奥方向をそれぞれ表側/裏側と称することにする。また、実施形態では本考案を筋交い型の刷毛(筋交いバケ)に適用した場合を説明するが、適用する刷毛は、平型、寸胴型、ラスター型など他の形態のものであっても良い。
刷毛1は、多数の毛が束ねられた毛束10と、先端部に毛束10が取り付けられた柄20とを有し、柄20を把持して毛束10に含浸させたプライマーや塗料などの液体を被塗布面に塗布する際に好適に用いられるものである。
毛束10は、例えば、馬毛や豚毛、山羊毛等の獣毛、PBT(ポリ・ブチレン・テレフタレート)やPP(ポリプロピレン)等の化学繊維、パキンや麻等の植物繊維などを原毛とし、選毛、毛組、秤量し、毛元側を紙巻き及び糸締め(及び/または接着剤等で固定)することにより造られる。
柄20は、先端に設けられて毛束10が取り付けられる毛束装着部21と、毛束装着部21から斜めに延びて塗布作業時に作業者が握るグリップ部25とを主体として構成される。筋交いバケや寸胴バケ等は、毛束10の厚さ(図1における紙面直交方向の厚さ:玉厚という)が柄20の厚さよりも大きい場合が多い。そのため、これらの刷毛では、一般的に、柄20はグリップ部25の途中から先端側が表裏に二分割されて表側柄部20aと裏側柄部20bとになっており、毛束10はこれらの間に挟まれて毛束装着部21に装着され、各柄部の表裏に形成された毛引溝及び綴じ孔を利用して銅線や麻糸などにより毛束装着部21に固定される。
柄20の基端側は、表側柄部20aと裏側柄部20bとが合体して一体の基端側柄部20cを形成し、この基端側柄部20cに吊り構造30が設けられる。柄20は、一般的には、桧やブナ、松などの所定板厚の木材を型抜きし、毛引溝、綴じ孔等を形成した後、先端側から基端側に向けて表裏中央部に鋸歯でスリットを入れることにより作成される。なお柄20は、PPやエラストマー等の各種樹脂材料で構成しても良い。
吊り構造30は、基端側柄部20cを表裏貫通する孔部31と、一端が孔部31と繋がって孔部の外方に延び、他端が孔部31よりも先端側の基端側柄部20cの側面に開口して、孔部31と開口33とを連通させる連通路部32とから構成される。
孔部31は、刷毛1を支持線(図8におけるHS)に吊り下げ保持するための吊り孔である。支持線は、直径が2〜4mm程度の番線(焼き鈍し鉄線)やステンレス鋼線が広く用いられており、従来の刷毛では、一般的に、直径が5〜8mm程度の円孔が柄の中心線上に設けられている。そこで、本考案の第1実施形態では、円形の孔部31を柄20が延びる方向の中心線CL上に設ける場合における吊り構造30の具体的な構成例について、図3を参照しながら説明する。なお、図3における(a)〜(c)の各図は、吊り構造30(30A〜30C)が形成された柄20の基端部のみを部分的に示しており、各図中には基端方向と先端方向を表す矢印を付記している。
図3(a)に示す吊り構造30Aは、連通路部32を直線状のスリット(表裏貫通した溝)とし、連通路部32の中心線clが孔部31の中心を通って右斜め先端方向に延び、開口33が孔部31よりも先端側の基端側柄部20cの右側面に形成されるようにした実施例である。連通路部32の溝幅wは孔部31の直径dよりも小さく(w<d)、例えば、3.5〜6mm程度に設定される。
孔部31の中心と開口33の中心とを結ぶ直線(本実施例においては該直線が連通路部32の中心線clと共通する)は、柄20が延びる方向の中心線CLと角度αで交わる。この角度αは鋭角とし、概ね30〜70度の範囲内で設定することが好ましく、45〜60度とすることがより好ましい。連通路部32を挟んで右側の柄部は、孔部31から先端側がいわば片持ち梁状態になるところ、角度αが30度よりも小さいと、梁の長さが長尺化して強度が低下するとともに、開口33近傍で先端が薄く尖って欠損しやすくなるからである。また、角度αが70度よりも大きいと刷毛1を支持線に吊り下げた状態における孔部31の上面と開口33の上縁との高さの差が小さくなって、振動等に起因した刷毛の脱落に対する抗力が低くなるからである。図3(a)に示す実施例は、角度αを40度に設定した構成を例示している。
図3(b)に示す吊り構造30Bは、連通路部32を溝幅wが孔部31の直径dよりも小さいL字状ないし左右反転したJ字状のスリットとし、孔部31に繋がる連通路部32が先端方向に延びたのち右方に屈曲して、開口33が孔部31よりも先端側の基端側柄部20cの右側面に形成されるようにした実施例である。
このとき、孔部31の中心と開口33の中心とを結んだ直線(仮想線)fは、柄20が延びる方向の中心線CLと角度αで交わるが、この角度αは概ね30〜70度の範囲内で設定することが好ましく、45〜60度とすることがより好ましい。上記実施例と同様に、角度αが30度よりも小さいと、連通路部32を挟んだ右側の柄部の梁の長さが長くなって強度が低下するからであり、角度αが70度よりも大きいと、刷毛を吊り下げた状態における孔部31の上面と開口33の上縁との高さの差が小さくなって脱落に対する抗力が低下するからである。図3(b)は角度αを50度に設定した構成を例示している。
図3(c)に示す吊り構造30Cは、図3(a)に示した吊り構造30Aの連通路部と同様に、連通路部32の形状が孔部31から右斜め先端方向に延びる直線状であり、開口33が孔部31よりも先端側の基端側柄部20cの右側面に形成される。一方、本実施例の吊り構造30Cは、孔部31と連通路部32との相対的な位置関係が吊り構造30Aと異なっている。本実施例の連通路部32は、中心線clを挟んで対向する先端側の溝面32aと基端側の溝面32bのうち、先端側の溝面32aが孔部31の内面と滑らかに繋がるように構成される。すなわち、連通路部の先端側の溝面32aが孔部31の内周面に接するように、孔部31と連通路部32との相対的な位置を設定している。
連通路部32の中心線clと柄20が延びる方向の中心線CLとは角度βで交わるが、この角度βは概ね30〜70度の範囲内で設定することが好ましく、45〜60度とすることがより好ましい。角度βが30度よりも小さいと、連通路部32を挟んだ右側の柄部の梁の長さが長くなって強度が低下するとともに、開口33近傍で先端が薄く尖って欠損しやすくなるからであり、角度βが70度よりも大きいと、刷毛を吊り下げた状態における孔部31の上面と開口33の上縁との高さの差が小さくなって脱落に対する抗力が低下するからである。図3(c)は角度βを45度に設定した構成を例示している。
以上説明した第1実施形態の吊り構造30(30A,30B,30C)を備えた刷毛1は、柄20を表裏貫通する孔部31と、一端が孔部31と繋がって外方に延び他端が孔部31よりも先端側の柄20の側面に開口して孔部31と開口33とを連通させる連通路部32とを有して構成される。そのため、図8に示したように多数の刷毛が支持線に保持されたような状態でも、それらの中から所望の刷毛を簡単に取り出すことができる。従って、簡明な構成でスピーディーに刷毛の選択・保管作業を行うことができる。
また、連通路部32の溝幅wが孔部31の直径dよりも小さく構成されているため、振動等による支持線からの脱落を低減することができる。また、孔部31の中心と開口33の中心とを結んだ直線が柄の中心線CLと鋭角で交わるため、刷毛1が支持線から外れることを効果的に抑制することができる。さらに、連通路32を直線状とし、その中心線clが柄20の中心線CLと30〜70度の挟み角で交わるような構成の吊り構造30A,30Cによれば、簡明な構成で、人為的な操作なしに刷毛が支持線から外れることを効果的に抑制できるとともに、柄の損傷を抑制し、支持線への刷毛の着脱操作を容易に行うことができる。
また、連通路部32を構成する二つの溝面32a,32bのうち、柄20の先端側の溝面32aが孔部31の内面と滑らかに繋がるような構成の吊り構造30Cによれば、支持線に支持された刷毛を取り出す際に刷毛1を上方に引き上げればよく、孔部31と連通路部32との接続部(かど部)に支持線が引っかかることなく、刷毛の着脱操作を容易且つスピーディーに行うことができる。
なお、例示した刷毛1は左右非対称の筋交い型の刷毛であるところ、各吊り構造30A,30B,30Cにおいては、毛束10の幅方向(左右方向)に延びる線と柄20の中心線CLとの交点に対して、連通路部32を交差角が鋭角となる側(すなわち図1における中心線CLの右側)に形成している。そのため、支持線への着脱操作が行いやすく、使い勝手が良好な刷毛を提供することができる。
次に、第2実施形態の吊り構造40について、図4を参照して説明する。本実施形態の吊り構造40は、第1実施形態として説明した吊り構造30の円形の孔部31に代えて、柄20の軸方向に延びる長穴状の孔部41を柄の中心線CL上に設けたものである。図4は、図3と同様に、柄20の基端部のみを部分的に示し、基端方向と先端方向を表す矢印を付記している。
図4(a)に示す吊り構造40Aは、図3(a)に示した吊り構造30Aの変更例である。すなわち、吊り構造40Aは、孔部41を長穴状、連通路部42を直線状とし、連通路部42の中心線clが孔部41の中心を通って右斜め先端方向に延び、開口43が孔部41よりも先端側の柄20の右側面に形成されるようにした実施例である。連通路部42の溝幅wは孔部41の短手方向の幅(長穴を構成する円の直径:有効径と称する)dよりも小さく、3.5〜6mm程度に設定される。
孔部41の中心と開口43の中心とを結ぶ直線(連通路部42の中心線clと共通する)は、柄20が延びる方向の中心線CLと角度αで交わる。この角度αは鋭角とし、概ね30〜70度の範囲内で設定することが好ましく、45〜60度とすることがより好ましい。その理由は第1実施形態の吊り構造において説明した理由と同様であり、加えて、連通路部42を挟んだ左側の先端部も薄く尖って欠損しやすくなるからである。図4(a)に示す実施例は、角度αを50度に設定した構成を例示する。なお、連通路部42は図3(b)に示した実施例と同様に、溝幅wが孔部41の短手方向の幅dよりも小さいL字状ないし左右反転したJ字状に形成してもよい。
図4(b)に示す吊り構造40Bは、図3(c)に示した吊り構造30Cの変更例である。吊り構造40Bの連通路部42は、連通路部の中心線clを挟んで対向する先端側の溝面42aと基端側の溝面42bのうち、先端側の溝面42aが孔部41の内面と滑らかに繋がるように構成される。すなわち、連通路部の先端側の溝面42aが孔部41の内周面に接するように、孔部41と連通路部42との相対的な位置が設定される。一方、図4(b)に示す吊り構造40Bは、これまでに説明した各実施例とは異なり、連通路部42の溝幅wを孔部41の有効径dと同一(w=d)にしている。このとき、溝幅w及び孔部の有効径dは、4〜7mm程度とするのが好適である。
連通路部42の中心線clと柄20の中心線CLとは角度βで交わり、この角度βは概ね30〜70度の範囲内で設定することが望ましい。その理由は第1実施形態の吊り構造において説明したのと同様である。図4(b)に示す実施例は、角度αを60度に設定した構成を例示する。
以上説明した第2実施形態の吊り構造40(40A,40B等)を備えた刷毛1は、基本的に、第1実施形態の吊り構造30(30A,30B,30C)を備えた刷毛と同様の効果を得ることができる。一方、図4(a)に示したような吊り構造40Aを備えた刷毛によれば、刷毛1を特定の高さ位置に持ち上げた状態においてのみ、刷毛1を支持線から取り外すことができる。そのため、人為的な操作なしに刷毛が支持線から外れるような事態をほぼ完全に抑止することができる。
また、図4(b)に示したような吊り構造40Bを備えた刷毛によれば、刷毛を吊り下げた状態における孔部41の上面と開口43の上縁との高さの差が大きいため、振動等に起因した刷毛の脱落をより効果的に抑制することができる。さらに、孔部41の幅と連通路部42の溝幅wとが同一であることから、連通路部42の二つの溝面がともに孔部41の内面と滑らかに繋がり、尖った角部が生じない。そのため、支持線に支持された刷毛1を引き上げて取り出す際に引っかかるようなことがなく、刷毛1を滑らか且つスピーディーに取り出すことができる。
次に、第3実施形態の吊り構造50について、図5を参照して説明する。本実施形態の吊り構造50は、第1、第2実施形態の吊り構造30,40を、柄20が延びる方向の中心線CLに対して左右いずれか一方にオフセットして形成したものである。図5には、第1実施形態における第1実施例として説明した吊り構造30Aと近似した吊り構造50を、柄20の中心線CLに対して右方にオフセットして設けた構成を例示する。
すなわち、吊り構造50では、孔部51を柄20の中心線CLに対して右方にsだけオフセットして形成し、連通路部52も孔部51をオフセットした方向と同じ柄20の右側に形成している。連通路部52の中心線clは孔部51の中心を通って右斜め先端方向に延び、開口53が孔部51よりも先端側の柄20の右側面に形成される。孔部51の中心と開口53の中心とを結ぶ直線(連通路部52の中心線clと共通する)は、柄20が延びる方向の中心線CLと角度αで交わり、この角度αは概ね30〜70度の範囲内で設定され、45〜60度とすることが好ましい。その理由は第1,第2実施形態の吊り下げ構造で説明したのと同様である。図5には、角度αを45度に設定した構成を例示する。
なお、オフセットして設ける孔部51及び連通路部52は、図3(b)(c)を参照して説明したような第1実施形態における他の実施例の孔部31や連通路部32を適用してもよく、図4(a)(b)を参照して説明したような第2実施形態の孔部41及び連通路部42等を適用してもよい。
以上説明したような第3実施形態の吊り構造50を備えた刷毛1は、基本的に、第1実施形態の吊り構造30(30A,30B,30C)、第2実施形態の吊り構造40(40A,40B等)を備えた刷毛と同様の効果を得ることができる。
ここで、図5中のVI−VI矢視の断面図を図6に示す。図6において、ハッチングを付した部分が柄20の先端側と基端側とが連通路部52によって分断されることなく一体に繋がった状態の領域である。図6から明らかなように、孔部51及び連通路部52をオフセットした吊り構造50を備えた刷毛によれば、柄20の中心線CL上に孔部を形成した場合と比較して、柄の先端側と基端側とが一体に繋がった領域の断面積を大きく取ることができる。そのため、本実施形態の吊り構造50を用いることにより、連通路部52を設けることに伴って不可避的に生じる柄20の強度低下を効果的に抑制しつつ、既述した各実施形態、各実施例について説明した吊り構造の刷毛と同様の効果を得ることができる。
なお、以上の実施形態では、筋交い型の刷毛における毛束10の幅方向(図1における左右方向)に延びる線と柄20の中心線CLとの交点に対して、交差角が鋭角となる側、すなわち図1における柄の中心線CLの右側に連通路部を形成した構成について説明したが、連通路部(及び孔部)は中心線CLの左側に形成しても良い。また、本校案に係る吊り構造30,40,50を、筋交い型の刷毛に適用した場合について説明したが、刷毛の形態は平型や寸胴型、ラスター型など他の形態の刷毛であっても同様に適用することができ、同様の効果を得ることができる。さらに、実施形態では毛束10が柄20の先端部に表裏の柄部20a,20bに挟まれて固定されるような構成を示したが、毛束10は口金を介して柄20の先端部に固定するものであっても良く、柄20の先端部に着脱可能に取り付けられるものであっても良い。
1 刷毛
10 毛束
20 柄(20a 表側柄部、20b 裏側柄部、20c 基端側柄部)
21 毛束装着部
25 グリップ部
30(30A,30B,30C) 第1実施形態の吊り構造
31 孔部
32 連通路部(32a 先端側の溝面、32b 基端側の溝面)
33 開口
40(40A,40B) 第2実施形態の吊り構造
41 孔部
42 連通路部(42a 先端側の溝面、42b 基端側の溝面)
43 開口
50 第3実施形態の吊り構造
51 孔部
52 連通路部
53 開口
d 孔部の有効径
w 連通路部の溝幅
CL 柄が延びる方向の中心線
cl 連通路部の中心線
vl 孔部の中心と開口の中心とを結んだ直線
α 孔部の中心と開口の中心とを結ぶ直線と、柄が延びる方向の中心線との交差角
β 連通路部の中心線と柄が延びる方向の中心線との交差角
10 毛束
20 柄(20a 表側柄部、20b 裏側柄部、20c 基端側柄部)
21 毛束装着部
25 グリップ部
30(30A,30B,30C) 第1実施形態の吊り構造
31 孔部
32 連通路部(32a 先端側の溝面、32b 基端側の溝面)
33 開口
40(40A,40B) 第2実施形態の吊り構造
41 孔部
42 連通路部(42a 先端側の溝面、42b 基端側の溝面)
43 開口
50 第3実施形態の吊り構造
51 孔部
52 連通路部
53 開口
d 孔部の有効径
w 連通路部の溝幅
CL 柄が延びる方向の中心線
cl 連通路部の中心線
vl 孔部の中心と開口の中心とを結んだ直線
α 孔部の中心と開口の中心とを結ぶ直線と、柄が延びる方向の中心線との交差角
β 連通路部の中心線と柄が延びる方向の中心線との交差角
Claims (7)
- 多数の毛が束ねられた毛束と、先端部に前記毛束が取り付けられた柄とを有し、前記毛束に含浸させた液体を被塗布面に塗布する刷毛であって、
前記柄の基端側に、前記柄を表裏貫通する孔部と、一端が前記孔部と繋がって外方に延び他端が前記孔部よりも先端側の前記柄の側面に開口して前記孔部と前記開口とを連通させる連通路部と、を有する吊り構造を備えたことを特徴とする刷毛。 - 前記連通路部の溝幅は前記孔部の有効径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の刷毛。
- 前記孔部の中心と前記開口の中心とを結んだ直線は、前記柄が延びる方向の中心線と鋭角で交わることを特徴とする請求項1または2に記載の刷毛。
- 前記連通路部は前記孔部と前記開口とを直線状に結んで形成され、当該連通路部の中心線は、前記柄が延びる方向の中心線と30〜70度で交わることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の刷毛。
- 前記連通路部は、当該連通路部の中心線を挟んで対向する前記柄の先端側の溝面と基端側の溝面とからなり、前記先端側の溝面は前記孔部の内面と滑らかに繋がって形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の刷毛。
- 前記孔部は前記柄が延びる方向の中心線に対して左右いずれか一方にオフセットして形成され、前記連通路部は前記オフセットされた側に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の刷毛。
- 刷毛の形態は筋交い型の刷毛であり、前記連通路部は、前記毛束の幅方向に延びる線と前記柄が延びる方向の中心線との交点に対して交差角が鋭角となる側に形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の刷毛。
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JP2015002788U JP3199263U (ja) | 2015-06-02 | 2015-06-02 | 刷毛 |
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---|---|---|---|---|
JPS5514070A (en) * | 1978-07-18 | 1980-01-31 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | Washer of juicer |
JPS56115927U (ja) * | 1980-02-07 | 1981-09-05 | ||
JPH1094747A (ja) * | 1996-09-22 | 1998-04-14 | Jinichiro Hara | 塗装刷毛の柄 |
-
2015
- 2015-06-02 JP JP2015002788U patent/JP3199263U/ja not_active Expired - Fee Related
Patent Citations (3)
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