JP3196737B2 - コイル駆動装置 - Google Patents

コイル駆動装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誘導性負荷である
コイルに対し波形歪みの少ない正弦波電流を流せるよう
にしたコイル駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両の前後輪を操舵する4輪操舵(4W
S)機構には、後輪の舵角を検出するのに差動トランス
を用いるものがあり、単電源であるバッテリ電源からの
通電により差動トランスの一次コイルに交流磁界を発生
させる必要がある。正負二電源が得られる場合は、正弦
波電圧を発生させることで差動トランスの一次コイルに
簡単に正弦波電流を通電できるが、単電源であるバッテ
リ電源から給電する場合は、交流周期での通電方向の切
り替えや給電電圧のPWM制御が必要になる。
【0003】図3に示す従来の差動トランス駆動装置1
は、差動トランス2から検出される差動電圧に基づいて
後輪舵角を検出する装置であり、差動トランス2の一次
コイル2aが発生する交流磁界により二次コイル2bに
発生する差動電圧が、後輪舵角に応じて変位する鉄芯2
cの位置によって変化することを利用し、中点にて2分
割された二次コイル2bに発生する差動電圧から後輪舵
角を検出する構成とされている。二次コイル2bに3点
接続した差動電圧発生器3には、差動電圧を後輪舵角に
換算するためのCPU4が接続してあり、このCPU4
から差動トランス2を駆動するための駆動パルスS1〜
S4が出力される。
【0004】差動トランス2の一次コイル2aは、H型
ブリッジ回路5により正弦波電流を通電されて交流励磁
される。ブリッジ回路5は、直流電源とグラウンド間に
互いに並列接続された一対の線路に、線路ごとに2個の
スイッチングトランジスタQ1,Q3とQ2,Q4を接
続し、スイッチングトランジスタQ1,Q3の接続点と
スイッチングトランジスタQ2,Q4の接続点を差動ト
ランス2の一次コイル2aを介して互いに接続して構成
してある。電源側のスイッチングトランジスタQ1,Q
2は、一次コイル2aに対する通電方向を切り替えるも
のであり、それぞれ交流半周期でもって交互にオンオフ
を繰り返す駆動パルスS1,S2により駆動される。ま
た、グラウンド側のスイッチングトランジスタQ3,Q
4は、それぞれ対角位置にあるスイッチングトランジス
タQ2,Q1の導通期間に駆動対象とされ、最小パルス
幅から最大パルス幅への漸増に続き最大パルス幅から最
小パルス幅への漸減という推移を示すPWM駆動パルス
S3,S4をもって駆動される。
【0005】一次コイル2aは、等価的には抵抗Rmと
インダクタンスLmの直列結合素子と考えられ、パルス
電流を通電したときの電気的立ち上がり時定数はLm/
Rmである。また、このインダクタンスLmには相当量
の電磁エネルギが蓄えられるため、パルス電流の通電を
断った後もフライホイール電流と呼ばれる電流が一次コ
イル2aを流れ続けることが知られている。ブリッジ回
路5には、このフライホイール電流の通電路を考慮し、
各スイッチングトランジスタQ1〜Q4のソースとドレ
イン間を結び、コイル励磁電流の通電方向とは逆向きに
回生ダイオードD1〜D4が接続してある。このため、
例えば正の半波駆動期間において、スイッチングトラン
ジスタQ1を導通させ、スイッチングトランジスタQ4
をPWM駆動パルスS4により駆動しているとき、PW
M駆動パルスのオン期間においてコイル励磁電流は時間
とともに直線的に上昇するが、PWM駆動パルスのオフ
期間にあっては、一次コイル2aと回生ダイオードD2
とスイッチングトランジスタQ1を結ぶ閉ループ内を時
間とともに直線的に下降するフライホイール電流が流れ
る。従って、PWM駆動パルスのパルス周期で微視的に
見れば、一次コイル2aには三角波電流が流れることに
なるが、この三角波電流の波高値はPWM駆動パルスの
デューティ比に応じて変化させられるため、巨視的に見
たときには、コイル励磁電流として一次コイル2aには
正弦波電流が通電される。
【0006】通電制御手段であるCPU4は、スイッチ
ングトランジスタQ1に対し図4(A)に示す駆動パル
スS1を印加して導通させ、同時にまたスイッチングト
ランジスタQ1と駆動対をなすスイッチングトランジス
タQ4が同図(B)に示すPWM駆動パルスS4を印加
して断続的に導通駆動する。このPWM駆動パルスS4
は、交流半周期の前半はパルス幅が漸増し後半はパルス
幅を漸減するため、一次コイル2aに流れる電流は前述
の如く巨視的には交流半周期分(0〜180°)の正弦
波電流となる。交流半周期の駆動が終わると、CPU4
はスイッチングトランジスタQ1の駆動を停止し、代わ
って図4(C)に示す駆動パルスS2を印加してスイッ
チングトランジスタQ2を導通させる。同時にまた、こ
のスイッチングトランジスタQ2と駆動対をなすスイッ
チングトランジスタQ3に対し、同図(D)に示すPW
M駆動パルスS3を印加して断続的に導通駆動する。こ
のPWM駆動パルスS3も、交流半周期の前半はパルス
幅が漸増し後半はパルス幅を漸減するため、一次コイル
2aに流れる電流は巨視的には交流半周期分(180〜
360°)の正弦波電流となる。なお、一次コイル2a
は誘導性の交流抵抗であるため、コイル励磁電流の周波
数が高くなるほどインピーダンスが大となり、それだけ
消費電流も少なくなるが、駆動周波数が高くなるほど差
動トランス2の磁気飽和が問題となるため、駆動パルス
S1,S2としては例えば10kHz程度の繰り返しパ
ルスが用いられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の差動トランス駆
動装置1は、一次コイル2aに流れる電流の方向を決め
る駆動パルスS1,S2と誘導性負荷である一次コイル
2aに実際に流れる電流との間には位相差があり、例え
ば駆動パルスS1からS2に切り替わる過渡期間におい
て、現実には一次コイル2aを流れる電流が零になる前
に通電方向を切り替える結果、一次コイル2aに誘起す
る逆起電力により発生する電流が発生し、通電方向が切
り替わる前後において、例えば図4(E)に示したよう
に、正弦波電流が歪みやすい等の課題を抱えるものであ
った。
【0008】本発明は上記課題を解決したものであり、
通電方向の切り替え過渡期間において、コイルに発生す
る逆起電力に基づいて誘起する電流を消滅させ、誘導性
負荷に対し歪みの少ない正弦波電流を流すことを目的と
するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、直流電源とグラウンド間を結ぶ互いに並
列な一対の線路にそれぞれ2個のスイッチング素子を直
列接続し、該2個のスイッチング素子のそれぞれの接続
点をコイルを介して互いに接続してなるブリッジ回路
と、電源側スイッチング素子の一方を導通させた状態
で、該一方のスイッチング素子の対角位置にあるグラウ
ンド側スイッチング素子をパルス幅変調駆動パルスをも
って導通し、前記コイルに対し正の半周期分の正弦波電
流を通電するとともに、電源側スイッチング素子の他方
を導通させた状態で、該他方のスイッチング素子の対角
位置にあるグラウンド側スイッチング素子をパルス幅変
調駆動パルスをもって導通し、前記コイルに対し負の半
周期分の正弦波電流を通電する通電制御手段とを備えた
コイル駆動装置において、前記通電制御手段は、前記正
弦波電流の電流値が零点を横切る直前の一定期間は、前
記電源側スイッチング素子をともに非導通状態とし、パ
ルス幅変調駆動パルスにより導通するグラウンド側スイ
ッチング素子を介して前記コイルを流れる電流を零に強
制する電流波形歪み防止手段を含むことを特徴とするも
のである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図1,
2を参照して説明する。図1は、本発明のコイル駆動装
置を適用した差動トランス駆動装置の一実施形態を示す
回路構成図、図2は、図1に示した回路各部の信号波形
図である。
【0011】図1に示す差動トランス駆動装置は、差動
トランス2の一次コイル2aに対しH型ブリッジ回路5
が正弦波電流を通電して交流励磁を行うものである。た
だし、ブリッジ回路5は、従来とは異なる駆動方式を採
用したCPU12によって駆動するようにしてある。こ
のCPU12による実際の駆動は、一次コイル2aに流
す正弦波電流の零点近傍において特殊な駆動方法をとる
点を除けば、基本的には概ね従来通りと言える。すなわ
ち、電源側のスイッチングトランジスタQ1,Q2は、
一次コイル2aに対する通電方向を切り替えるものであ
り、それぞれ交流半周期でもって交互にオンオフを繰り
返す駆動パルスS1,S2により駆動する。また、グラ
ウンド側のスイッチングトランジスタQ3,Q4は、そ
れぞれ対角位置にあるスイッチングトランジスタQ2,
Q1の導通期間に駆動対象とし、最小パルス幅から最大
パルス幅への漸増に続き最大パルス幅から最小パルス幅
への漸減という推移を示すPWM駆動パルスS3,S4
をもって駆動する。
【0012】通電制御手段であるCPU12には、正弦
波電流の電流値が零点を横切る直前の幅τの期間におい
て、電源側スイッチング素子Q1,Q2をともに非導通
状態とし、パルス幅変調駆動パルスにより導通するグラ
ウンド側スイッチング素子Q3又はQ4を介して一次コ
イル2aを流れる電流を零に強制するよう、電流波形歪
み防止ソフトウェアを搭載してある。この電流波形歪み
防止ソフトウェアによれば、スイッチングトランジスタ
Q3又はQ4に印加するPWM駆動パルスS3又はS4
が最小デューティのPWM駆動に至る直前の一定期間、
すなわち一次コイルを流れる電流が零点を横切る直前の
一定期間において、電源側スイッチングトランジスタQ
1,Q2をともに非導通とし、その状態でスイッチング
トランジスタQ3又はQ4を最小デューティのPWM駆
動パルスをもって駆動する。
【0013】まず、スイッチングトランジスタQ1が図
2(A)に示す駆動パルスS1により導通すると、対と
なるスイッチングトランジスタQ4が同図(B)に示す
PWM駆動パルスS4により断続的に導通駆動される。
このPWM駆動パルスS4は、交流半周期の前半はパル
ス幅が漸増し後半はパルス幅を漸減するため、一次コイ
ル2aに流れる電流は交流半周期分(0〜180°)の
正弦波電流となる。ただし、正弦波電流が零に至る直前
の期間τに至ったときに、スイッチングトランジスタQ
1に印加される駆動パルスS1は強制的に消滅する。一
方、スイッチングトランジスタQ4の方は、従前通りP
WM駆動パルスS4により駆動されるため、電圧印加を
断たれた時点で一次コイル2aに逆起電力が誘起して
も、この逆起電力に伴って発生する誘起電流はスイッチ
ングトランジスタQ4が最小デューティのPWM駆動パ
ルスにより導通したときにグラウンド側に流れて消滅す
る。従って、従来のように誘起電流が零点近傍の正弦波
電流波形を歪ませるといった事態を未然に防止すること
ができ、図2(E)に示すような波形歪みの少ない正弦
波電流を一次コイル2aに流すことができる。
【0014】また、交流半周期の駆動が終わると、スイ
ッチングトランジスタQ1の駆動は停止し、代わってス
イッチングトランジスタQ2が図2(C)に示す駆動パ
ルスS2により導通する。また、これと同時に、スイッ
チングトランジスタQ2と駆動対をなすスイッチングト
ランジスタQ3が、同図(D)に示すPWM駆動パルス
S3により断続的に導通駆動される。このPWM駆動パ
ルスS3も、交流半周期の前半はパルス幅が漸増し後半
はパルス幅を漸減するため、一次コイル2aに流れる電
流は交流半周期分(180〜360°)の正弦波電流と
なる。ただし、正弦波電流が零に至る直前の期間τに至
ったときに、スイッチングトランジスタQ3に印加され
る駆動パルスS3は強制的に消滅する。一方、スイッチ
ングトランジスタQ2の方は、従前通りPWM駆動パル
スS2による駆動されるため、電圧印加を断たれた時点
で一次コイル2aに逆起電力が誘起しても、この逆起電
力に伴って発生する誘起電流はスイッチングトランジス
タQ2が最小デューティのPWM駆動パルスにより導通
したときにグラウンド側に流れて消滅する。従って、従
来のように誘起電流が零点近傍の正弦波電流波形を歪ま
せるといった事態を未然に防止することができ、図2
(E)に示すような波形歪みの少ない正弦波電流を一次
コイル2aに流すことができる。
【0015】このように、上記差動トランス駆動装置1
1によれば、正弦波電流の電流値が零点を横切る直前の
幅τなる期間は、電源側スイッチングトランジスタQ
1,Q2をともに非導通状態とし、パルス幅変調駆動パ
ルスにより導通するグラウンド側スイッチングトランジ
スタQ3,Q4を介して一次コイル2aを流れる電流を
零に強制する構成としたから、電源側スイッチングトラ
ンジスタQ1,Q2を切り替えたときに誘導性負荷であ
る一次コイル2aを流れる電流は直ちに零とはならず、
逆起電力に伴って誘起する誘起電流が正弦波電流の電流
波形を歪ませる危険があるが、正弦波電流の電流値が零
点を横切る直前に、直流電源からの通電を断った状態で
グラウンド側スイッチングトランジスタQ3又はQ4を
断続的に導通させることで、一次コイル2aを流れよう
とする不要電流をグラウンド側に強制流出させることが
できる。従って、次の交流半周期の駆動期間において他
方の電源側スイッチングトランジスタQ2又はQ1に駆
動パルスを印加したときに、誘導性負荷である一次コイ
ル2aに対し歪みの少ない正弦波電流を流すことができ
る。
【0016】なお、上記実施形態では駆動対象となるコ
イルを差動トランス2の一次コイル2aとした場合を例
に説明したが、駆動対象コイルはこの種の一次コイル2
aだけに限定されず、広く一般のコイルとすることがで
きる。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
正弦波電流の電流値が零点を横切る直前の一定期間は、
電源側スイッチング素子をともに非導通状態とし、パル
ス幅変調駆動パルスにより導通するグラウンド側スイッ
チング素子を介してコイルを流れる電流を零に強制する
構成としたから、電源側スイッチング素子を切り替えた
ときに誘導性負荷であるコイルを流れる電流は直ちに零
とはならず、逆起電力に伴って誘起する誘起電流が正弦
波電流の電流波形を歪ませる危険があるが、正弦波電流
の電流値が零点を横切る直前に、直流電源からの通電を
断った状態でグラウンド側スイッチング素子を断続的に
導通させることで、コイルを流れようとする不要電流を
グラウンド側に強制流出させることができ、従って次の
交流半周期の駆動期間において他方の電源側スイッチン
グ素子に駆動パルスを印加したときに、誘導性負荷であ
るコイルに対し歪みの少ない正弦波電流を流すことがで
きる等の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコイル駆動装置を適用した差動トラン
ス駆動装置の一実施形態を示す回路構成図である。
【図2】図1に示した回路各部の信号波形図である。
【図3】従来の差動トランス駆動装置の一例を示す回路
構成図である。
【図4】図3に示した回路各部の信号波形図である。
【符号の説明】
2 差動トランス 2a 一次コイル 2b 二次コイル 2c 鉄芯 3 差動電圧発生器 5 H型ブリッジ回路 11 差動トランス駆動装置 12 CPU(通電制御手段) Q1〜Q4 スイッチングトランジスタ D1〜D4 回生ダイオード
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02M 7/48 H02M 7/5387

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直流電源とグラウンド間を結ぶ互いに並
    列な一対の線路にそれぞれ2個のスイッチング素子を直
    列接続し、該2個のスイッチング素子のそれぞれの接続
    点をコイルを介して互いに接続してなるブリッジ回路
    と、電源側スイッチング素子の一方を導通させた状態
    で、該一方のスイッチング素子の対角位置にあるグラウ
    ンド側スイッチング素子をパルス幅変調駆動パルスをも
    って導通し、前記コイルに対し正の半周期分の正弦波電
    流を通電するとともに、電源側スイッチング素子の他方
    を導通させた状態で、該他方のスイッチング素子の対角
    位置にあるグラウンド側スイッチング素子をパルス幅変
    調駆動パルスをもって導通し、前記コイルに対し負の半
    周期分の正弦波電流を通電する通電制御手段とを備えた
    コイル駆動装置において、前記通電制御手段は、前記正
    弦波電流の電流値が零点を横切る直前の一定期間は、前
    記電源側スイッチング素子をともに非導通状態とし、パ
    ルス幅変調駆動パルスにより導通するグラウンド側スイ
    ッチング素子を介して前記コイルを流れる電流を零に強
    制する電流波形歪み防止手段を含むことを特徴とするコ
    イル駆動装置。
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