JP3191977B2 - カラー陰極線管 - Google Patents

カラー陰極線管

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、螢光体スクリーンでの
電子ビームの到達位置を決定するシャドウマスクを保持
するマスクフレームの変位に伴う当該シャドウマスクの
変形を回避する構造を有するシャドウマスク構体を備え
たカラー陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、カラー陰極線管は、パネルとフ
ァンネルとネックを連結させた外周器と、前記パネル内
面に形成された螢光体スクリーンと、励起発光せしめる
複数の電子ビームを射出する電子銃と、前記螢光体スク
リーンに近接対向して配置され、電子ビーム通過孔であ
る多数のスロットが配列形成されたシャドウマスクと、
前記シャドウマスクを溶接固定するマスクフレームから
なるシャドウマスク構体を備えている。
【0003】最近のカラー陰極線管は、そのパネルを平
面化する傾向にあり、これに伴ってシャドウマスクの平
面化が必要になってきた。図7はこの種のシャドウマス
ク式カラー陰極線管の概略構造を説明する断面図であっ
て、1はパネル、2はファンネル、3はネック、4は電
子銃、5は偏向ヨーク、6は螢光体スクリーン、7はマ
スクフレーム、8はシャドウマスクである。
【0004】同図において、パネル1の内面に形成され
た螢光体スクリーン6に対向してマスクフレーム7とこ
のマスクフレーム7に溶接固定されたシャドウマスク8
とからなるシャドウマスク構体が配置される。ネック3
内に配置された電子銃4から発射される電子ビームR,
G,Bは、このシャドウマスク8によって螢光体スクリ
ーン6の対応する色の螢光体上にランディングするよう
になっている。
【0005】パネルの平面化(以下、フラット化ともい
う)に伴うシャドウマスクのフラット化においては、当
該シャドウマスクの平面一様性を確保しなければならな
いという問題がある。このシャドウマスクの平面一様性
の確保を行うために、フラットなシャドウマスクに一方
向の張力をかけてマスクフレームに溶接固定することが
行われている。
【0006】シャドウマスクに張力をかける方法として
は、例えば、特開昭62−249339号公報に開示さ
れているように、シャドウマスクを加熱して熱膨張さ
せ、この状態でマスクフレームに溶接し、当該シャドウ
マスクの温度低下に伴う収縮を利用して張力を引加する
のが一般的である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、マスクフレー
ムとして板材をプレス加工した所謂プレスフレーム等の
完全な剛体でない枠体を使用する場合、マスクフレーム
はマスクにかかる張力により変形する。スロットタイプ
の電子ビーム通過孔を備えたシャドウマスクでは、長辺
側の張力が強いためにマスクフレームの長辺が内側に変
位するとそれに伴い、短辺が長辺の変位と反対に外側に
変位する。このため、マスクに電子ビームがあたり、加
熱されて張力が弱くなるとマスクフレームが変形し、螢
光体のストライプが短軸と並行に形成されたタイプのカ
ラーブラウン管では短辺中央部で色ズレが起こりやす
い。この動きは長辺と短辺では反対に動くため、レバー
等のスプリングで補正し難いという問題がある。
【0008】図8はこの動きの説明する図であり、7は
マスクフレーム、71は長辺、711は張力を受けて変
形した長辺、712は加熱されて張力が弱くなった状態
での長辺、72は短辺、721は張力を受けて変形した
短辺、722は加熱されて張力が弱くなった状態での短
辺、8はシャドウマスクである。同図において、マスク
フレーム7にシャドウマスク8を固定する際には、シャ
ドウマスク8を加熱するか、或いは、長辺間に短辺間に
比べ大きな張力が加わるようにマスクフレーム7を変形
させて、シャドウマスク8をマスクフレーム7の長辺7
1と短辺72に溶接する。
【0009】本発明は、上記の問題を解消し、長辺側の
動きと短辺側の動きが連動しないか、あるいは連動し難
い構造のマスクフレームを用いたシャドウマスク構体を
もつカラー陰極線管を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、シャドウマスク構体を構成するマスクフレ
ームのコーナ部に、その長辺側の動きと短辺側の動きが
連動しないか、あるいは連動しにくい構造を持たせたこ
とを特徴とする。すなわち、本発明は、パネル1とファ
ンネル2とネック3を連結させた外周器と、前記パネル
1内面に形成された螢光体スクリーン6と、この螢光体
スクリーン6を励起発光せしめる複数の電子ビームR,
G,Bを出射する電子銃4と、上記螢光体スクリーン6
に近接対向して配置され、該螢光体スクリーン6の所定
位置に上記複数の電子ビームを射突させるためのシャド
ウマスク8およびこのシャドウマスク8を保持するマス
クフレーム7とからなるシャドウマスク構体を備えたカ
ラー陰極線管において、前記シャドウマスク構体を構成
する前記マスクフレーム7の短辺72と長辺71との接
続部に、当該マスクフレーム7の前記シャドウマスク接
合面から断面方向に切り込んだスリット73を設け、前
記短辺に対する前記長辺の変形の伝達を阻止することを
特徴とする。
【0011】また、本発明は、前記シャドウマスク構体
を構成する前記マスクフレーム7の長辺71の長手方向
に沿って、当該長辺71の外周側から内周方向に切り込
んだ複数のスリット74を設け、前記短辺に対する前記
長辺の変形の伝達を阻止することを特徴とする。さら
に、本発明は、前記シャドウマスク構体が、各平行する
辺の接触部で接合した一対の略々矩形状枠体710,7
20からなり、前記各枠体710,720がそのコーナ
ー部(長辺と短辺の接続部)において表裏入れ替わる構
成とし、一方の枠体710の長辺と他方の枠体720の
短辺に前記シャドウマスクを接合してなることを特徴と
する。
【0012】なお、本発明は、上記のスリット73、ス
リット74を組合せて用いることも可能であり、マスク
フレームとしてプレス成形した所謂プレスフレームを用
いたものに適用して特に有効である。
【0013】
【作用】マスクフレーム7の長辺71と短辺72の結合
部にスリットを設けたものでは、長辺71の変形が上記
スリット部分で短辺72側へ伝達されないため(あるい
は、この伝達が小さくなり)、シャドウマスク8の張力
印加により長辺71が変形しても、短辺72の変形は極
めて少なくなる。
【0014】また、長辺71の長手方向に複数のスリッ
ト74を設けたものでは、シャドウマスク8へ印加され
る張力による長辺71の変形が、長辺自身の上記スリッ
トで吸収されるため、短辺72に変形を及ぼすことがな
い。そして、マスクフレームを、各平行する辺の接触部
で接合した一対の略々矩形状枠体710,720を用
い、前記各枠体710,720がそのコーナー部(長辺
と短辺の接続部)において表裏入れ替わる構成としたも
のでは、シャドウマスクに印加される張力による枠体7
10の変形が、枠体720から独立したものとなるた
め、枠体720に溶接固定されるシャドウマスクの短辺
近傍の電子ビーム通過孔の変位は発生しない。
【0015】このように、本発明によれば、マスクフレ
ームの長辺と短辺がそのコーナー部で相互の変形が伝達
されないように分離されているため、長辺の動きにたい
して短辺が連動せず、あるいは連動し難く、長辺間に印
加されるシャドウマスクの張力に起因する短辺近傍の電
子ビーム通過孔の変位が起こらないことで、色再現性の
良好なカラー陰極線管が得られる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例につき、図面を参照し
て詳細に説明する。図1は本発明によるカラー陰極線管
に用いるシャドウマスク構体を構成するマスクフレーム
の第1実施例の説明図で、(a)は平面図、(b)は長
辺方向断面図、(c)は短辺方向断面図である。
【0017】このマスクフレーム7は所謂プレスフレー
ムであり、螢光体スクリーン側に大径をもち、この大径
側の長辺71と短辺72の上記螢光体スクリーン側に対
面する面(シャドウマスク接合面)にシャドウマスクを
溶接固定してシャドウマスク構体を構成するものであ
る。本実施例では、上記長辺71と短辺72の接続部で
あるコーナー部に当該マスクフレームの上記シャドウマ
スク接合面から断面方向に切り込んだスリットを設け、
前記短辺に対する前記長辺の変形の伝達を阻止すること
を特徴とする。
【0018】図2は図1に示したマスクフレームのコー
ナー部を拡大して示す要部平面図であり、図3は図2の
A−A線断面図である。図2に示したように、マスクフ
レーム7のコーナー部には、当該マスクフレームの外周
側から内周方向に切り込んだスリット73を設けてい
る。このスリット73は図3からも分かるように、シャ
ドウマスク8を溶接する長辺71の動きが短辺72から
分離するように機能するため、シャドウマスク8の張力
によって長辺71が前記図8に示したように変形して
も、短辺72は変形を起こすことがない。
【0019】マスクフレーム7に用いる板材としては、
例えば、熱膨張係数が低いステンレス材の厚さ2.3m
mのものを使用する。長辺方向寸法である長径Lは40
4mm、短辺方向寸法である短径Sは306mm、管軸
方向寸法である高さHは36mmである。このマスクフ
レーム7において、前記図8で説明したように、長辺7
1が中心方向に変位すると短辺72は外側に動く。この
長辺71と短辺72が逆の方向に動くと、シャドウマス
ク構体の所謂Q寸法の制御に悪影響を与える。
【0020】上記スリット73の寸法は、例えば幅1m
m、深さ12mmであり、このマスクフレーム7の上に
板厚0.025mmの鉄板から製作したシャドウマスク
を長辺と短辺、あるいは長辺側だけを溶接して固定す
る。これにより、スロットタイプのシャドウマスク8を
マスクフレーム7の長辺71と短辺72に溶接固定して
も、色ズレを起こす原因となる短辺近傍のスロットが変
位を起こすことが回避され、良好な色再現が可能とな
る。
【0021】なお、パネルに対するマスクフレームの変
位補正にはカンチレバー式のスプリング支持機構を採用
して色ズレを補正する。図4は本発明によるカラー陰極
線管に用いるシャドウマスク構体を構成するマスクフレ
ームの第2実施例の説明図であって、本実施例では、長
辺71にその長手方向に複数のスリット74を形成して
いる。
【0022】また、図5は図4のマスクフレームのコー
ナー部を拡大して示す要部平面図である。この実施例で
は、そのスリット74は前記第1実施例のスリット73
と同様の寸法としてもよいが、その幅,深さ、あるいは
相互間隔を適宜に選択して張力によるシャドウマスクの
変形が局部的に偏らないようにする。
【0023】この構成によれば、シャドウマスクの張力
による長辺の変形は複数のスリット74の存在で吸収さ
れて短辺72側に伝達されない。なお、長辺71と短辺
72が接続するコーナー部に前記第1実施例と同様のス
リット73を設けてもよい。図6は本発明によるカラー
陰極線管に用いるシャドウマスク構体を構成するマスク
フレームの第3実施例を説明する要部斜視図である。
【0024】本実施例ではマスクフレーム70がパイプ
フレームからなる2つの枠体をその接触部で溶接した二
重枠体構造をしており、シャドウマスクが溶接される長
辺710側と短辺720側とで、当該枠体が別個のもの
となっている。すなわち、マスクフレーム70が、各平
行する辺の接触部で接合した一対の略々矩形状枠体から
なり、一方の枠体の長辺710と他方の枠体の短辺72
0がそのコーナー部(長辺と短辺の接続部)において表
裏入れ替わる構成とし、一方の枠体の長辺710と他方
の枠体の短辺720に前記シャドウマスクを接合してな
る。なお、シャドウマスクの溶接は長辺側のみとしても
よい。
【0025】この構成において、シャドウマスクの張力
で当該シャドウマスクを溶接した長辺710側が変位す
ると、この長辺710を構成する枠体の短辺側のマスク
の溶接されていない側が変位する。シャドウマスクとマ
スクフレームの全周溶接の場合は短辺720側のシャド
ウマスクが溶接されている枠体は、長辺のシャドウマス
クが溶接されている枠体の長辺710側の変位に連動し
て変位しない。シャドウマスクが長辺710にのみ溶接
されているものでは、マスクフレームをパネルに支持す
るためのスプリング機構が溶接されている部分が当該シ
ャドウマスクを溶接固定した枠体とは別枠体であるた
め、長辺710の変位が連動しない。このため、上記変
位にたいしてスプリング機構の作動に影響が及ばない。
【0026】したがって、本実施例によれば、軽量のパ
イプフレームで高精度のシャドウマスク構体を構成で
き、シャドウマスクの張力による電子ビーム通過孔の変
位等の発生を回避でき、色再現性を向上させたカラー陰
極線管を得ることができる。なお、本実施例では、マス
クフレームは2つのパイプフレームからなる二重枠体構
造としたが、通常のマスクフレームの短辺部に、例え
ば、段差を設け、ここに別部材を固定し、ここにシャド
ウマスクを溶接しても同様の効果が得られることを確認
している。
【0027】以上の実施例では、シャドウマスクの電子
ビーム通過孔をスロットタイプのものとして説明した
が、本発明はこれ以外の、例えば円形タイプの電子ビー
ム通過孔をもつシャドウマスク、あるいはフラットタイ
プ以外のシャドウマスクにも適用できるものである。
【0028】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、シャド
ウマスクを溶接固定するマスクフレームの長辺と短辺の
動きが連動しない、または連動し難くなるので、シャド
ウマスクの熱変形に伴う電子ビームのドリフトに対する
補正が容易になり、色ずれが起こり難いカラー陰極線管
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるカラー陰極線管に用いるシャドウ
マスク構体を構成するマスクフレームの第1実施例の説
明図で、(a)は平面図、(b)は長辺方向断面図、
(c)は短辺方向断面図である。
【図2】図1に示したマスクフレームのコーナー部を拡
大して示す要部平面図である。
【図3】図2のA−A線で切断した断面図である。
【図4】本発明によるカラー陰極線管に用いるシャドウ
マスク構体を構成するマスクフレームの第2実施例の説
明図である。
【図5】図1のマスクフレームのコーナー部を拡大して
示す要部平面図である。
【図6】本発明によるカラー陰極線管に用いるシャドウ
マスク構体を構成するマスクフレームの第3実施例を説
明する要部斜視図である。
【図7】シャドウマスク式カラー陰極線管の概略構造を
説明する断面図である。
【図8】マスクフレームの長辺と短辺の変形を説明する
模式図である。
【符号の説明】
1 パネル 2 ファンネル 3 ネック 4 電子銃 5 偏向ヨーク 6 螢光体スクリーン 7,70 マスクフレーム 8 シャドウマスク 71,710 長辺 72,720 短辺 73,74 スリット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川崎 浩 千葉県茂原市早野3681番地 日立デバイ スエンジニアリング株式会社内 (56)参考文献 特公 昭45−38164(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 29/07

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】パネルとファンネルとネックを連結させた
    器と、前記パネル内面に形成された蛍光体スクリー
    ンと、前記蛍光体スクリーンを励起発光せしめる複数の
    電子ビームを出射する電子銃と、記蛍光体スクリーン
    に近接対向して配置され、前記蛍光体スクリーンの所定
    位置に記複数の電子ビームを射突させるためのシャド
    ウマスクおよび前記シャドウマスクを保持するマスクフ
    レームとからなるシャドウマスク構体を備えたカラー陰
    極線管において、前記シャドウマスクには張力が印加されているととも
    に、前記シャドウマスクは前記マスクフレームの長辺と
    短辺に固定されており、 前記シャドウマスク構体を構成
    する前記マスクフレームの短辺と長辺との接続部に、当
    該マスクフレームの前記シャドウマスク接合面から断面
    方向に切り込んだスリットを設けることを特徴とするカ
    ラー陰極線管。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のカラー陰極線管におい
    て、前記マスクフレームがプレスフレームであって、前
    記スリットが前記マスクフレームの外周から内周に向け
    て配置されていることを特徴とするカラー陰極線管。
  3. 【請求項3】請求項1に記載のカラー陰極線管におい
    て、前記マスクフレームの長辺にスリットを備えている
    ことを特徴とするカラー陰極線管。
  4. 【請求項4】パネルとファンネルとネックを連結させた
    器と、前記パネル内面に形成された蛍光体スクリー
    ンと、前記蛍光体スクリーンを励起発光せしめる複数の
    電子ビームを出射する電子銃と、記蛍光体スクリーン
    に近接対向して配置され、前記蛍光体スクリーンの所定
    位置に記複数の電子ビームを射突させるためのシャド
    ウマスクおよび前記シャドウマスクを保持するマスクフ
    レームとからなるシャドウマスク構体を備えたカラー陰
    極線管において、前記シャドウマスクには張力が印加されているととも
    に、 前記マスクフレームが、各平行する辺の接触部で接
    合した一対の略々矩形状枠体からなり、一方の枠体の長
    辺と他方の枠体の短辺とがマスクフレームコーナー部で
    表裏が入れ替わっており、前記一方の枠体の長辺および
    前記他方の枠体の短辺に前記シャドウマスクを接合して
    なることを特徴とするカラー陰極線管。
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