JP3183500B2 - 糖アルコールの定量方法 - Google Patents

糖アルコールの定量方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は糖アルコールの定量
法、カラム及びキットに関する。1,5−アンヒドログ
ルシトール(以下AGという)やミオイノシトール(以
下MIという)などの糖アルコールは近年糖尿病のマー
カーとして注目を集めている物質である。
【0002】
【従来の技術】ヒト体液中の糖アルコールを定量する場
合、通常多量に含まれている糖類(特にグルコース)や
タンパク質などの定量に影響を与えるような干渉物質を
除去した試料を使用する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記干渉物質の除去、
特にタンパク質の除去は従来遠心分離操作を必要とし、
煩雑であり、特に臨床応用を考える場合、その操作の簡
略化が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、 (1)糖アルコール、タンパク質、糖類を含有する検体
を、タンパク質除去能及び糖類除去能を有する塩基性陰
イオン交換樹脂を充填したカラムに通し、次いで通過液
中の糖アルコールを定量することを特徴とする糖アルコ
ールの定量方法。 (2)親水性ゲルろ過担体に4級アンモニウム基を導入
した強塩基性陰イオン交換樹脂及びホウ酸水溶液を充填
したタンパク質及び糖類除去用カラム (3)タンパク質除去能及び糖類除去能を有する塩基性
陰イオン交換樹脂及びホウ酸水溶液を充填したカラム、
糖アルコール定量用試薬及び検量線作製用糖アルコール
からなるキット (4)糖アルコール、タンパク質、糖類を含有する検体
に、油状沈澱を生じさせるタンパク質不溶化剤を添加
し、タンパク質を油状沈澱物として沈降させて上清液を
得、次いでその上清液をタンパク不溶化剤吸着樹脂及び
塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通すか又
は、タンパク質沈澱剤及びタンパク質変性剤を添加
し、タンパク質を水不溶化物として析出させ、得られた
析出液を塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通
し、次いで、得られた通過液中の糖アルコールを定量す
ることを特徴とする糖アルコールの定量方法及び (5)血中の1,5−アンヒドログルシトールを定量す
るにあたり、通液している干渉物質除去カラムとインジ
ェクターとバイオセンサーを備えた装置に多数の検体を
順次注入することを特徴とする1,5−アンヒドログル
シトールの定量法に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明で用いられる検体として
は、タンパク質や糖類の混入が予想され、かつ糖アルコ
ールを含有するものであれば特に制限は無く、例えば血
清、血漿、尿、髄液などの体液や植物、動物等の組織の
抽出液などがあげられる。糖アルコールとしては、糖類
の還元体である直鎖状の多価アルコールやこれらの化合
物が分子内で脱水閉環したアンヒドロ化合物及び環状の
多価アルコールが有る。これら糖アルコールのうちでA
GとMIは糖尿病の診断マーカーとして有用であり、糖
尿病患者の血清中のAG濃度は著しく低下し、尿中のM
I濃度は上昇することが知られている。なお、糖類と
は、アルドース、ケトースなどの単糖類やこれらのオリ
ゴ糖類の意で、糖アルコールは含まない。
【0006】本発明の第1の発明においてカラムに充填
されるタンパク質除去能及び糖類除去能を有する塩基性
陰イオン交換樹脂は糖アルコールの除去能を有さないも
ので、芳香環を有さない親水性の高分子担体、例えば親
水性ゲルろ過担体(分子ふるい作用を有する高分子ゲ
ル)に4級アンモニウム基を交換基として導入した強塩
基性の陰イオン交換樹脂が好ましい。親水性ゲルろ過担
体としては例えばデキストラン、アガロース、セルロー
ス、キトサンなどの多糖類系、ポリビニルアルコール
系、ポリエチレングリコール系、ポリアクリルアミド
系、ポリ(メタ)アクリレート系などの、好ましくはポ
リビニルアルコール系又はポリ(メタ)アクリレート系
の樹脂があげられる。又、4級アンモニウム基として
は、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウ
ム基などのトリ低級(C1 −C4 )アルキルアンモニウ
ム基、又、ヒドロキシエチルジメチルアンモニウム基等
のヒドロキシ低級(C1 −C4 )アルキル・ジ低級(C
1 −C4 )アンモニウム基があげられる。
【0007】これらの強塩基性樹脂のイオン型は、OH
形またはホウ酸形などの弱酸塩形として用いられる。好
ましい樹脂としてはMonoQ (フアルマシア社製)、Shod
exTM(昭和電工社製)、Nucleosil 100 −SB(ナーゲ
ル社製)、Partisil 10SAX (ワットマン社製)、Sepra
lyte SAX 、Bond Elute SAX(アナリテカル インター
ナショナル社製)、QAE-Toyopearl (東ソ社製)、QA-T
risacryl(IBF社製)、Sepabeads FP-QA (三菱化成
製)、QAE-Sephadex、Q-Sepharose (ファルマシア社
製)、QAE-Cellulose (チッソ社製)などがある。より
好ましい樹脂としてはポリビニルアルコール系の樹脂で
あってトリエチルアンモニウム基を有するQAE-Toyopear
l があげられる。又、後記のバイオセンサーを用いる場
合はポリ(メタ)アクリレート系の樹脂であってトリメ
チルアンモニウム基を有するShodex TMもあげられる。
【0008】これらの樹脂の使用量は検体1ml当り1
ml以上好ましくは2〜6ml程度がよい。又、これら
の樹脂は目的に応じ2種以上併用してもよく、又、糖類
除去能が充分でない場合は後記の糖類除去能を有する樹
脂と併用してもよい。
【0009】これらの樹脂はOH形では安定性が無く、
長期間保存するとタンパク質除去能及び糖類除去能が低
下してくる。通常市販されるCl形は安定であるが、ア
ルカリでClを除去した後中性になるまで洗浄する必要
があるので、手間と時間がかかり好ましくない。本発明
者らは、ホウ酸形にすることにより安定性が向上し、使
用の際には水洗するだけでよいことを見い出した。即
ち、OH形又はホウ酸形の上記樹脂を樹脂が浸らない部
分が生じない程度の量のホウ酸水溶液、好ましくは0.
05−1M濃度のホウ酸水溶液に浸しておくことにより
少なくとも1年間はその性能の低下を防ぐことができ
る。従って両者を充填したカラムを製造することによ
り、本発明の定量法が容易に実施しうる。また、これら
の樹脂は、イオン交換作用があるので、サンプル中にイ
オン性物質があると、イオン交換し流出液がアルカリ性
になるため、pH調整用に強カチオン交換樹脂を併用
し、例えばカラムの最下層に充填しても良く、例えばA
G50W−×8(バイオラッド社製)やAmberlite CG−
120 Type I(ローム&ハース社製)などのスルフォン
酸を導入したイオン交換樹脂が用いられる。
【0010】第1の発明を実施するには例えば次のよう
にすればよい。即ち、検体50〜100μlをそのまま
上記カラムに通し、水0.5〜1.0mlで該カラムを
2〜4回洗浄し、得られた通過液中に定量的に回収され
た糖アルコールをガスクロマトグラフィー法や酵素法な
どの常法により定量すればよい。なお、定量法によって
はタンパク質や糖類、特にタンパク質を完全に除去しな
くてもよい場合があり、この場合は、これらを定量に支
障のない程度に除去すればよい。
【0011】酵素法について説明すると、測定しようと
する糖アルコールと特異的に反応する酵素を用い、たと
えば、血清中のAGを測定する場合には、ピラノースオ
キシダーゼやL−ソルボースオキシダーゼ等の1,5−
AG酸化酵素が用いられ、AGの酸化反応により発生し
た過酸化水素を、種々の方法により検出すればよい。ま
た、尿中のMIを測定する場合にはミオイノシトールデ
ヒドロゲナーゼが用いられ反応によって生じた補酵素β
−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又
はβ−ニコチンアミドアデニンヌクレオチドリン酸(N
ADP)のそれぞれの還元体NADH又はNADPHを
検出すればよい。
【0012】定量法をさらに詳しく説明すると、例えば
AGの場合、次のようにすればよい。即ち、試料に電子
受容体及びピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボース
オキシダーゼを試料1ml当り0.5〜10単位、好ま
しくは1〜5単位添加し、4〜50℃好ましくは25〜
40℃で、0.5〜3時間、好ましくは0.5〜1時間
インキュベートし次いで生成する過酸化水素量を測定
し、別に作成した検量線からAG量を求めればよい。具
体的には次のとおりである。
【0013】本発明で用いられる過酸化水素を検出する
方法としては、高感度に検出できる方法であれば、いず
れであっても良く、数多くの方法が利用できる。これら
のうちで最も一般的に用いられている方法は、ホースラ
ディッシュペルオキシダーゼ(HRP)を触媒酵素とし
て、各種のHRP基質を過酸化水素で酸化するものであ
り、酸化反応の結果生成した色素、ケイ光物質や化学発
光をそれぞれ吸光度測定、ケイ光測定及び発光測定すれ
ば良い。色素を生成するHRPの基質としては2,2′
−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スル
ホン酸(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OP
D)、5−アミノサリチル酸(5−AS)、3,3′,
5,5′−テトラメチルベンジジン(TMB)、4−ア
ミノアンチピリンと各種のトリンダー試薬などがある。
トリンダー試薬としては、フェノール、3−ヒドロキシ
−2,4,6−トリヨード安息香酸(HTIB)などの
フェノール誘導体、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ
−3−スルホプロピル)−m−トルイジン(TOOS)
や3,5−ジメトキシ−N−エチル−N−(2−ヒドロ
キシ−3−スルホプロピル)アニリン(DAOS)など
のアニリン誘導体がある。
【0014】ケイ光物質を生成するHRPの基質として
は、p−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(p−ヒドロキ
シフェニル)プロピオン酸(HPPA)などがある。ま
た、化学発光するHRPの基質としては、ルミノール、
イソルミノールなどが知られている。具体的には例えば
次のとおり、
【0015】リン酸ナトリウム緩衝液(1/15M,p
H5.6)0.3ml、4mMの2,2′−アジノビス
(3−エチルベンツチアゾリン−6−スルホン酸)(A
BTS)と12単位/mlのホースラディッシュペルオ
キシダーゼを含む発色液0.5ml、25単位/mlの
ピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダー
ゼ溶液0.1ml及びAG溶液0.1mlを容器に入
れ、25°で1時間反応させた後、420nmにおける
吸光度を測定する。既知濃度のAG溶液で検量線を作成
しておき試料の吸光度よりAGの濃度を算出する。
【0016】HRPなしに化学発光で検出する方法もい
くつか知られている。たとえば、フェリシアンイオン存
在下に過酸化水素でルミノールを発光させる方法、金属
イオン存在下に過酸化水素でルシゲニンを発光させる方
法、ビス(2,4,6−トリクロルフェニル)オキザレ
ートの様なアリルシュウ酸エステル類の化合物をケイ光
物質存在下に過酸化水素と反応させ、シュウ酸エステル
の分解エネルギーでケイ光物質を励起させ発光させる方
法などが知られている。さらに過酸化水素を直接検出す
る方法として、過酸化水素電極を用いてもよい。
【0017】又、たとえば、MIの場合、次のようにす
ればよい。即ち、カラム通過液に補酵素及びミオイノシ
トールデヒドロゲナーゼを試料1ml当り0.1〜10
単位、好ましくは0.5〜5単位添加し、4〜50℃、
好ましくは25〜40℃で0.5〜3時間、好ましくは
0.5〜2時間インキュベートし、次いで生成する補酵
素の還元体を測定し、別に作成した検量線からMI量を
求めればよい。
【0018】本発明で用いられる補酵素の還元体、たと
えばNADHやNADPHを検出する方法としては、高
感度に検出できる方法であればいずれであっても良く、
数多くの方法が利用できる。これらのうちで、最も一般
的に用いられている方法は、これらの還元体そのものの
吸光度もしくはケイ光強度を測定するものである。さら
には、生成した補酵素の還元体をフェメジンメトサルフ
ェート、1−メトキシ−5−メチルフェナジウムメチル
サルフェート、メチレンブルーなどの電子伝達体の存在
下に空気酸化し、発生した過酸化水素を前述の方法によ
り検出することもできる。具体的には、例えば次のとお
り。
【0019】140mMの硫安を含む40mM炭酸ナト
リウム緩衝液(pH9.0)1.0ml、7mM NA
D溶液0.2ml、10単位/mlのミオイノシトール
デヒドロゲナーゼ溶液0.2ml、蒸留水0.4ml及
びMI溶液0.2mlを容器に入れ、25℃で2時間反
応させた後、励起波長365nm、検出波長450nm
におけるケイ光強度を測定する。既知濃度のMI溶液で
検量線を作成しておき、試料のケイ光強度よりMIの濃
度を算出する。
【0020】第3の発明におけるキットは上記したタン
パク質除去能及び糖類除去能を有する塩基性陰イオン交
換樹脂及びホウ酸水溶液を充填したカラム、糖アルコー
ル定量用酵素及び検出用試薬からなる糖アルコール定量
用試薬及び検量線作成用糖アルコールをワンセットした
ものである。カラムは除タンパク、、除糖しうる親水性
ゲルろ過担体を基材とした強塩基性の陰イオン交換樹脂
を上層に陽イオン交換樹脂を下層に充填したディスポー
ザブルなミニカラムである。このカラムに充填する樹脂
の1回当りの使用量は例えば次のとおり。
【0021】 親水性ゲルろ過担体より成る塩基性 陰イオン交換樹脂(OH形又はホウ酸形) 0.1〜2.0ml ホウ酸 〜 ml 陽イオン交換樹脂 0.01〜0.5ml Sub Total 0.5〜2.0ml ホウ酸 0.5〜 10ml 全量で 1〜 12ml
【0022】糖アルコール定量用酵素としては、たとえ
ば、AGの場合、AGの定量に直接使用しうる酵素であ
れば特に制限はなく、例えば前記のピラノースオキシダ
ーゼやL−ソルボースオキシダーゼなどがあげられる。
また、たとえばMIの場合MIの定量に直接使用しうる
酵素であれば特に制限はなく、例えば前記のミオイノシ
トールデヒドロゲナーゼがあげられる。
【0023】糖アルコール定量用試薬としては、発生す
る過酸化水素量を指標とする場合、パーオキシダーゼも
しくはパーオキシダーゼ様活性物質と発色基質もしくは
発色剤およびカップラー、パーオキシダーゼとケイ光基
質、パーオキシダーゼと発光基質、フェリシアンイオン
と発光基質の組み合せなどが例示される。これらの試薬
の具体例は前記「過酸化水素を検出する方法」の記載よ
り明らかである。
【0024】又、補酵素の還元体たとえばNADHやN
ADPHの量を指標とする場合、補酵素自身とし、その
もの自身の吸光度もしくはケイ光強度を測定する。一
方、補酵素の還元体を電子伝達体を介して過酸化水素に
変換すれば、前記の過酸化水素検出試薬が使用できる。
【0025】キット中の糖アルコール定量用の酵素の量
は100検体用、300検体用など測定し得る試料の数
により異なるが、1検体当り、たとえばAGを定量する
場合0.5〜10単位程度、MIを定量する場合0.1
〜5単位程度を加えればよい。又、定量用試薬について
は、過酸化水素検出用試薬としてHRPとABTSを用
いる場合、HRP1検体当り、0.01〜0.1単位、
ABTSは1〜20μMになるようにキット中に入れ
る。
【0026】補酵素の還元体の検出方法として、そのも
ののケイ光強度を測定する場合、補酵素は1検体当り、
0.2〜10μMになるようにキットの中に入れる。ま
た、この他、検量線作成用試料として、たとえばAG又
はMIの場合、それぞれの100〜1000μMをキッ
トに組み込むのがよい。なお、1,5−AG定量用酵素
及び検出用試薬は、全てを混合して単一の試薬としても
よく、相互に干渉する成分が存在する場合には、各成分
を適宜な組み合せとなる様に分割してもよい。また、こ
れらは、溶液状、もしくは粉末状試薬として調製しても
よく、さらにこれらを濾紙もしくはフィルムなどの適当
な支持体に含有させ試験紙もしくは分析用フィルムとし
て調製してもよい。
【0027】次に第5の発明であるバイオセンサーを用
いる自動定量法につき説明する。この方法は干渉物質除
去カラムに水あるいはほう酸緩衝液等を通液していると
ころにサンプルを注入し、サンプル中の干渉物質を吸着
除去し、AGを含む通過液を直接バイオセンサーで検出
する方法である。したがって、本発明に用いる装置は、
基本的には、検体を注入するためのインジェクターとポ
ンプ等を用いることにより通液している干渉物質除去カ
ラムとAGを検出するためのバイオセンサーから成って
いる。
【0028】本発明で用いられるバイオセンサーとして
は、例えば1,5−AG酸化酵素を固定化した膜を過酸
化水素電極表面に装着したフロ・セル型検出器が挙げら
れる。フロ・セル中を通過しているAGは、過酸化水素
電極表面のAG酸化酵素によって酸化され、同時に過酸
化水素を生成し、これを過酸化水素電極によって検出
し、AGを定量するセンサーである。また、膜型の固定
化酵素ではなく、小カラムに固定化酵素を充填したカラ
ムを用いたリアクター型のセンサーを用いても同時にA
Gを定量することができる。更には、このリアクター型
の場合、AGは過酸化水素に変換されて出てくるので、
過酸化水素電極の代わりに、過酸化水素を検出できる電
気化学検出器を用いたバイオセンサーを使用することも
できる。
【0029】1,5−AG酸化酵素の固定化の方法は、
一般的に行われている酵素固定化法例えば吸着法、架
法、共有結合法のいずれの方法を採用しても良いが、基
質であるAGおよび過酸化水素の透過性の良い膜を得る
方法を採用するのが好ましい。リアクター型の場合、通
液性の良いものを採用するのが好ましい。
【0030】過酸化水素電極を用いたバイオセンサーで
は、電気化学的に酸化還元反応を検出しているため、還
元性あるいは酸化性のある物質では、シグナルが出て過
酸化水素と同様に検出してしまうため、検体中にこのよ
うな物質が共存しているとAGだけを検出することがで
きない。特に血液中に存在するアスコルビン酸、尿酸等
によって、妨害されるため、AGのみを測定することが
できない。そこで一般的にはこれらの物質の透過性のな
い保護膜を装置して防いでいる。ところが、本発明によ
る方法では、前記の強塩基性陰イオン交換樹脂を充填し
た干渉物質除去カラムを用いることで、これらの妨害物
質を吸着除去することができ、該カラム流出液を直接バ
イオセンサーで測定することが可能となった。なお、バ
イオセンサーでの測定には、ほとんと影響が無いが検体
中には多量のタンパクがあるため、糖類を吸着する官能
基をタンパクが覆ってしまって処理能力を著しく低下さ
せることがあるので、充填剤の素材には、注意を要す
る。好ましくは、疎水性の強い芳香環を持たない比較的
親水性の素材のアクリル系、親水性素材のポリビニルア
ルコール系の素材に第4級アンモニウム基を導入した硬
質の樹脂が良い。また、これらの樹脂のOH形あるいは
ほう酸形の樹脂では、前述したようにバイオセンサーの
測定を妨害する血中成分をも除去するので、バイオセン
サーにて連続的に検出するには最適の干渉物質除去カラ
ムとなっている。また、これらの樹脂は、ンオン交換作
用があるので、サンプル中にイオン性物質があると、イ
オン交換し流出液がアルカリ性になるため、pH調整用
に強カチオン交換樹脂を併用して充填しても良く、スル
フォン酸を導入したイオン交換樹脂が用いられる。
【0031】カラムの通液速度は、バイオセンサー部分
の接触時間と関係し、接触時間によって感度と測定時間
が変わるので慎重に選ぶ必要があるが、干渉物質除去カ
ラムの内径が4〜100mmφの場合0.1から5.0
ml/min程度の流速が好ましい。このときの通液
は、圧力差を用いて流下させても良いが、流速のコント
ロールが難しいので、ポンプを使用したほうが良い。使
用するポンプは脈動の少ないものが望ましく、シリンダ
ー型、プランジャー型が優れている。インジェイターは
シリンダータイプ、固定ループタイプのどちらでも構わ
ないが、低いAG濃度の検体の再現性を良くするために
は、変動の少ないインジェクターを使用したほうが良
い。全自動のシステムでは、オートインジェクターを使
用するのは言うまでもない。また、サンプルの注入量
は、測定感度にもよるが、少ないほうが、干渉物質除去
カラムの耐久性にかかわるので良く、5〜50μl程度
が好ましい。本発明で用いるサンプル(検体)として
は、除タンパクをしていない血清又は血漿をそのまま用
いることが出来るが、後記の如く血清又は血漿にタンパ
ク不溶化剤を添加してタンパクを水不溶化したものをサ
ンプルとして用いてもよい。
【0032】カラムの通液には、水あるいはほう酸緩衝
液等が用いられているが、ほう酸緩衝液ではその濃度が
高いと糖類を吸着しない場合があり、低い濃度のほう酸
緩衝液が望ましく、0.2M以下、好ましくは0.1M
以下、さらに好ましくは0.001−0.05Mの濃度
が好ましい。この場合ほう酸緩衝液のpHは、干渉物質
除去カラムの充填剤の種類によって変える必要があり、
強カチオン交換樹脂を併用した場合は、陽イオンが吸着
するため、pHを上げたほう酸緩衝液は好ましくなく、
むしろほう酸単独のほうが好ましい。強アニオン交換樹
脂単独で使用した場合には、陽イオンは通過するのでい
ずれのpHでも良く、バイオセンサーの酵素の至適p
H、例えばpH5〜9を採用することができる。水ある
いは低濃度のほう酸では、緩衝作用が小さいため、サン
プル中のイオン性物質が、干渉物質除去カラムでイオン
交換されpHが変動する。そのため、酵素反応の至適p
Hを維持することができず、バイオセンサーの酵素膜の
耐久性を悪くしたり、ノイズやショックの原因となる場
合がある。そこで、至適pHを維持するため干渉物質除
去カラムの後で、緩衝作用の強い緩衝液を混合すること
は、バイオセンサーの耐久性に良い結果を与える。ここ
で用いられる緩衝液は、AG酸化酵素の至適pH、例え
ばpH5〜9を維持できる緩衝液であれば、何でも良
く、例えばリン酸緩衝液が挙げられる。
【0033】本発明による方法の好ましい測定法を挙げ
ると、オートインジェクターと干渉物質除去カラムと
1,5−AG酸化酵素固定化膜を装着した過酸化水素電
極型のバイオセンサーに蒸留水あるいは低濃度のほう酸
緩衝液を流し、干渉物質除去カラムとバイオセンサーの
間にミキシングジョイントを設けリン酸緩衝液を混合
し、ミキシングコイルを経てバイオセンサーに接続して
いるものである。バイオセンサーは記録計あるいはデー
タ処理機につながり、過酸化水素電極からのシグナルを
ピークとし、面積あるいは高さとして定量する。オート
インジェクターから標準AG及びサンプルである血清あ
るいは血漿を注入し、干渉物質除去カラムの通過液中の
AGのみがバイオセンサーで過酸化水素の量として定量
される。標準AGから検量線を作成し、その検量線を元
にサンプル中のAGが定量されてくる。
【0034】次に第4の発明について説明する。第4の
発明ので用いられている油状沈澱を生じさせるタンパ
ク不溶化剤とは、該タンパク不溶化剤を加えることによ
り、タンパク質が油状沈澱物として析出し、遠心分離操
作をすることなしに除タンパク上清を得ることができる
様にするものである。たとえば、アクリノールなどが有
る。その使用量は、検体1ml当り2〜50mg、好ま
しくは5〜20mg程度であり、水溶液として検体に添
加することが好ましい。
【0035】また、タンパク不溶化剤吸着樹脂とは、除
タンパクのために過剰に加えられたタンパク不溶化剤を
吸着し得るものであれば何でもよく、アクリノールを用
いた場合には、ダイヤイオンHP−20SS(三菱化成
製)などの疎水性樹脂が好ましい。これらのタンパク不
溶化剤吸着樹脂は塩基性陰イオン交換樹脂の上層部に添
加すればよく、一回のクロマト操作により、タンパク不
溶化剤の除去と糖類の除去の両方を同時に行うことがで
きる。
【0036】塩基性陰イオン交換樹脂は主として糖類を
除去するものであり、通常OH形又はホウ酸形として用
いられる。陰イオン交換樹脂のOH形を用いる方法で
は、検体を強塩基性樹脂のOH形にゆっくりと通し、糖
類を吸着除去するものである。好ましい強塩基樹脂は、
4級アンモニウム塩を交換基とする樹脂で、強塩基性の
トリメチルアミノ基(I型)やヒドロキシエチルジメチ
ルアミノ基(II基)を有する陰イオン交換樹脂、トリ
エチルアミノ基を有する陰イオン交換樹脂(QAE−樹
脂)などが有る。また、この方法では、処理液の樹脂中
の通過速度の影響を受けるため、樹脂の粒度を細かく
(200〜400メッシュ)し、ゆっくり通過させるの
が好ましい。また、処理液を中和するために、さらに陽
イオン交換樹脂で処理しても良い。
【0037】陽イオン交換樹脂とは、各種の陰イオン性
樹脂のH形である。陰イオン性樹脂としては、強酸性の
陽イオン交換樹脂から弱酸性の陽イオン交換樹脂まで、
あらゆるタイプの陽イオン交換樹脂を包含する。特に好
ましくは、スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹
脂のH形などがある。
【0038】陰イオン交換樹脂のホウ酸形を用いる方法
では糖をホウ酸との複合体として吸着除去するものであ
るが、ホウ酸形の陰イオン交換樹脂であれば特に制限は
なく、強塩基性の陰イオン交換樹脂から弱塩基性の陰イ
オン交換樹脂まであらゆるタイプの陰イオン交換樹脂を
包含する。特に好ましくは、強塩基性のトリメチルアミ
ノ基(I型)を有する陰イオン交換樹脂のホウ酸塩形、
強塩基性のヒドロキシエチルジメチルアミノ基(II
型)を有する陰イオン交換樹脂のホウ酸塩形、トリエチ
ルアミノ基を有する陰イオン交換樹脂(QAE−樹脂)
のホウ酸塩形、中塩基性でジメチルアミノ基とヒドロキ
シエチルジメチルアミノ基の2種類のイオン交換基を有
する樹脂(バイオラッド社製、バイオレックス5)のホ
ウ酸塩形などが有る。また、検体の処理により脱落して
来るホウ酸イオンを再吸着するため、さらに陰イオン交
換樹脂で処理しても良い。さらに、処理液を中和するた
めに、陽イオン交換樹脂による処理を追加しても良い。
【0039】陰イオン交換樹脂とは、各種陽イオン性樹
脂のOH形又は弱酸塩形のものであり、陽イオン性の樹
脂としては、強塩基性の陰イオン交換樹脂から弱塩基性
の陰イオン交換樹脂まで、あらゆるタイプの陰イオン交
換樹脂を包含する。また、これら陽イオン性樹脂の弱酸
塩形を構成する弱酸類としては、炭酸、蟻酸,酢酸など
の有機酸が好ましい。陽イオン性樹脂で特に好ましいも
のは、強塩基性のトリメチルアミノ基(I型)やヒドロ
キシエチルジメチルアミノ基(II型)を有する陰イオ
ン交換樹脂などが有る。陽イオン交換樹脂としては前記
のものがある。糖類を主とすると干渉物質の除去に多種
類の樹脂を必要とする組み合せにおいては、1本のカラ
ムに全ての樹脂が層状になる様重ねて充填するか、混合
して充填すれば良い。層状に重ねて充填する場合、糖類
を除去する樹脂を上層に、中和用樹脂を下層に充填する
のが好ましい。
【0040】第4の発明のを実施するには検体に、タ
ンパク質を油状沈澱させうるタンパク質不溶化剤を添加
し、タンパク質を沈澱させた後、その上清を上記のカラ
ムに通過させ、カラムを水洗後通過液中の糖アルコール
を定量すればよい。第4の発明のにおいて、タンパク
質の沈澱剤としては例えばトリクロル酢酸、過塩素酸、
硫酸、塩酸などの強酸類が有る。沈澱剤の添加量は0.
5〜10%であるが、使用する検体及び変成剤の種類と
量によって変化し、血清にSDSを添加した場合のトリ
クロル酢酸の至適使用量は2〜6%となる。又、タンパ
ク質変成剤とは沈澱剤により沈澱したタンパク質の再溶
解を防止するために加えるものであり、ドデシルベンゼ
ンスルホン酸ナトリウム(以下SDSと言う)、タング
ステン酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、ベンジ
ンアルコールなどが有り、中でもSDSがより好まし
い。SDSを用いた場合の添加量は、検体中のタンパク
質を完全に変成させ得る十分な量であれば良く、血清の
場合0.2%〜5%であるが、より好ましくは0.5〜
2%である。
【0041】上記のタンパク質変成剤と沈澱剤はそれぞ
れ単独に2つの溶液として構成し、順次検体に添加する
が、場合によっては、それぞれ混合した溶液とし一度に
添加しても良い。又、カラムに充填する塩基性陰イオン
交換樹脂としては上記発明2で使用するものと同じも
のが使用され、又、中和剤として陽イオン交換樹脂も併
用しうる。
【0042】この発明4のの方法を実施するには、検
体にタンパク質変性剤と沈澱剤を添加し、タンパク質を
水不溶性の沈澱とした後、沈澱を遠心分離することな
く、そのまま樹脂を充填したカラムに通し、水洗後、通
過液中の糖アルコールを定量すればよい。なお、ここで
使用するカラムは不溶化したタンパク質をろ過して除去
できるものであれば何でもよいが、濾紙、表面親水化処
理ポリエチレン樹脂の焼結シートなどのフィルターを樹
脂の上部に取りつけたものの方が好ましい。
【0043】第4の発明のを実施する場合の1検体当
りの使用量は例えば次のとおり、 タンパク質の変成沈澱剤 タンパク質変成剤:SDS 2〜20μg 沈 澱 剤 :トリクロロ酢酸 5〜30μg カ ラ ム ろ過フィルター 1枚以上 強塩基性陰イオン交換樹脂(OH形) 0.1〜1.0ml 陽イオン交換樹脂 0.01〜0.5ml 全量で0.2〜1.5ml 又は ろ過フィルター 1枚以上 強塩基性陰イオン交換樹脂(ホウ酸形) 0.1〜0.5ml 強塩基性陰イオン交換樹脂(OH形) 0.1〜1.0ml 陽イオン交換樹脂 0.01〜0.5ml 全量で0.5〜2ml
【0044】第4の発明のを実施する場合の1検体当
りの使用量は例えば次のとおり、 油状沈澱を生じさせるタンパク不溶化剤 アクリノール 2〜20μg カ ラ ム ダイヤイオン HP−20 SS 0.1〜0.5ml 強塩基性陰イオン交換樹脂(OH形) 0.1〜1.0ml 陽イオン交換樹脂 0.01〜0.5ml 全量で0.5〜2ml 又は ダイヤイオン HP−20 SS 0.1〜0.5ml 強塩基性陰イオン交換樹脂(ホウ酸形) 0.1〜0.5ml 強塩基性陰イオン交換樹脂(OH形) 0.1〜1.0ml 陽イオン交換樹脂 0.01〜0.5ml 全量で0.5〜2.0ml
【0045】
【実施例】次に、実験例、実施例により、本発明を具体
的に説明する。
【0046】実験例1. (ピラノースオキシダーゼを使用した。AGの検量線)
0.25Mのリン酸緩衝液(pH5.6)にピラノース
オキシダーゼ(グルコースに対する比活性5単位/m
g、宝酒造製)2mg/ml、HRP0.24単位/m
l、ABTS 4mMとなる様に溶解しAG検出試薬を
作成した。AG標準液0.1mlに蒸留水2ml添加し
てAG溶液とし、さらに前記のAG検出試薬0.5ml
を加えて25℃で1時間反応した。この反応液の420
nmにおける吸光度を測定して検量線を作成したものを
図1に示した。
【0047】実験例2. (L−ソルボースオキシダーゼを使用したAGの検量
線)実験例1のピラノースオキシダーゼの代りにL−ソ
ルボースオキシダーゼ(グルコースに対する比活性4.
3単位/mgに変えて全く同様に反応させ、AGの検量
線を作成した。その結果を図2に示した。
【0048】実験例3. (ミオイノシトールデヒドロゲナーゼを使用したMIの
検量線)70mM硫安を含む20mM炭酸ナトリウム緩
衝液(pH9.0)で、ミオイノシトールデヒドロゲナ
ーゼ(10単位/mg、シグマ社製)及びNADをそれ
ぞれ1単位/ml、1mMとなる様に溶解しMI検出試
薬を作成した。MI標準液0.1mlに、MI検出試薬
0.9mlを加え25℃で2時間反応した。この反応液
のケイ光強度を励起波長365nm、検出波長450n
mで測定し、その結果を図3に示した。
【0049】実施例1−1. (ピラノースオキシダーゼを使用するAGの測定)血清
検体を、後述した実施例1−4〜1−6に示す前処理を
ほどこして糖類を除去し、残存するAGの実験例1に示
した方法で測定した。AGの定量は、それぞれのAG標
準液を血清検体と全く同様の方法で前処理して作成した
検量線によって行った。その結果を表1に示した。
【0050】実施例1−2 (L−ソルボースオキシダーゼを使用するAGの測定)
実施例1−1で使用したものと同一の血清検体を後述し
た実施例1−4〜1−6に示した前処理をほどこして糖
類を除去し、残存するAGを実験例2に示した方法で測
定した。AGの定量は、それぞれのAG標準液を血清検
体と全く同様の方法で前処理して作成した検量線によっ
て行った。その結果を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】実施例1−3. (ミオイノシトールデヒドロゲナアーゼを使用するMI
の測定)尿検体を、後述した実施例1−7に示す前処理
をほどこして糖類を除去し、残存するMIを実験例3に
示した方法で測定した。MIの定量は、それぞれMI標
準液を尿検体と全く同様の方法で前処理して作成した検
量線によって行った。結果は同一尿検体をガスクロで測
定した値と良く一致した。
【0053】実施例1−4. (血清検体の、タンパク質吸着樹脂を添加した干渉物質
除去カラムによる糖アルコール分析用前処理)イオン交
換樹脂AG50W−X8H形、QAE−トヨパール55
0C(東ソ製)ホウ酸形をそれぞれ0.1ml、0.5
mlづつ小カラムに下部より順次層状に充填し試料前処
理カラムを作成した。このカラムにヒト血清0.1ml
を直接導通後蒸留水0.5mlで4回洗浄して通過液
2.1mlを得た。この通過液中に回収された糖アルコ
ールのうち、AGを定量する場合の例を、実験例1と同
様にして行った。同一検体のガスクロ法による測定値と
の相関を図6に示した。上記カラムにおいて、QAE−
トヨパール550Cホウ酸形をそのOHに変え、他は上
記と同様にすると、本実施例と同様の結果を得た。
【0054】また、上記前処理カラムに充填する樹脂
を、AG50W−X8 H形とQAE−トヨパール ホ
ウ酸形の1:5の混合樹脂に変え、他は上記と同様とす
ると、本実施例と同様の結果が得られた。なお、本実施
例で使用したQAE−Toyopearl のOH形及びホウ酸形
の樹脂は市販のCl形より次の方法で調製される。即
ち、QAE−Toyopearl 550C(Cl形)250m
lをカラムに充填し、0.2M水酸化ナトリウム溶液1
lをゆっくり流してClイオンを流出させた後、蒸留水
で洗浄し、カラム流出廃液が中性になるので洗浄し、O
H形の樹脂を得る。このOH形の樹脂に、0.5Mホウ
酸溶液3lを上部よりゆっくり流し、流出廃液のpHが
酸性になるまで中和する。ついで蒸留水で流出廃液が中
性になるまで洗浄し、ホウ酸形の樹脂を得る。又、AG
50W−X8のH形は市販のNa形より次の方法で調製
される。即ち、AG50W−X8(Na形)200ml
をカラムに充填し、IM塩酸1リットルをゆっくり流し
てNaイオンを流出させた後、蒸留水で洗浄し、流水廃
液のpHを中性とする。
【0055】実施例1−5. (血清検体の不可逆的タンパク不溶化剤とろ過フィルタ
ー付干渉物質除去カラムによる糖アルコール分析用前処
理)イオン交換樹脂AG50W−X8 H形、AG1−
X8 OH形(いづれもバイオラッド社製)をそれぞれ
0.1ml、0.4mlづつ小カラムに下部より順次層
状に充填し、充填した樹脂の最上部に親水性ポリエチレ
ンの焼結フィルターをセットし、試料前処理カラムを作
製した。ヒト血清0.2ml〜5%SDS溶液0.1m
lを加えて振トウの後、さらに12%トリクロル酢酸水
溶液0.1mlを加えて強く振トウした。得られた沈澱
物を含む分散液の0.2mlを上記の試料前処理カラム
導通し、蒸留水0.5mlで4回洗浄して通過液2.2
mlを得た。この通過液中に回収された糖アルコールの
うち、AGを定量する場合の例を以下に示す。AGの測
定は、実験例1に示した方法で行った。即ち、このAG
溶液にAG検出試薬0.5mlを直接添加して反応させ
た。さらに、AGの標準液を用いて作成した検量線を用
いて定量した。この様にして測定した正常人及び糖尿病
患者の血清AG値と、同一検体をガスクロ法で測定した
場合の血清AG値の相関を、図4に示した。この図から
明らかなように、本発明の方法による定量値は、ガスク
ロ法による定量値と高い相関性を示し、大過剰に存在す
るグルコースの影響を全く受けなかった。
【0056】実施例1−6. (血清検体の、油状沈澱を生じさせるタンパク不溶化剤
と不溶化剤吸着樹脂添加干渉物質除去カラムによる糖ア
ルコール分析用前処理)イオン交換樹脂AG50W−X
8 H形、AG1−X8 0H形(いずれもバイオラッ
ド社製)、疎水性樹脂ダイヤイオンHP−20SS(三
菱化成製)をそれぞれ0.1ml、0.3ml、0.1
mlづつ小コラムに下部より順次層状に充填し試料前処
理カラムを作製した。ヒト血清0.2mlへ2.5%ア
クリノール0.2mlを加えて振トウした。血清中のタ
ンパク質は油状の沈澱となって沈降するので、この上清
部分の0.2mlを上記の飼料前処理カラムへ導通し、
蒸留水0.5mlで4回洗浄して通過液2.2mlを得
た。この通過液中に回収された糖アルコールのうち、A
Gを定量とする場合の例を、実施例1−4と同様にして
行った。同一検体のガスクロ法による測定値との相関を
図5に示した。
【0057】実施例1−7. (尿検体のタンパク吸着樹脂を添加した干渉物質除去カ
ラムによる糖アルコール分析用前処理)イオン交換樹脂
AG50W−X8 H形、QAE−トヨパールホウ酸形
をそれぞれ0.2ml.1.8mlづつ小カラムに下部
より順次層状に充填し、試料前処理カラムを作成した。
このカラムにヒト尿0.5mlを直接導通後、蒸留水
1.0mlで8回洗浄して通過液8.5mlを得た。こ
の通過液中に回収された糖アルコールのうち、MIを定
量する場合の例を以下に示す。上記の通過液8.5ml
全量を濃縮乾固し、蒸留水0.1mlで再溶解して前処
理カラムの処理液を得た。MIの検出は実験例3に従っ
て行った。即ち、この処理液に、直接MI検出試薬を
0.9ml添加して反応させた。さらに、MIの定量は
MI標準液を用いて作成した検量線を用いて行った。こ
の様にして測定した正常人と糖尿病患者の尿中MI値
を、同一検体のガスクロ法での測定値と比較した結果を
表2に示した。
【0058】
【表2】
【0059】実施例1−8. (血清AG測定キットの例) (1)キットの調整 AG検出試薬:PROD200mg(5単位/mg、宝
酒造製)、HRP0.24mg(100U/mg、和光
純薬製)及びABTS220mg(ベーリンガー社製)
を0.25Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.6)1
00mlを溶解し、16mlづつバイアルに分注し、常
法により凍結乾燥した。 復元液:トリトン;X−405(和光純薬製)0.6g
を蒸留水100mlに溶解し、バイアルに16mlづつ
分注して栓をした。 標準液:5mgのAGを100mlの蒸留水で溶解し、
バイアルに3mlづつ分注して栓をした。 前処理カラム:フリットフィルターを装着したリザーバ
ー(1.5ml容量、アナリティカルインターナショナ
ル社製)に、下から順にAG50W−X8 H形(バイ
オラッド社製)0.1mlとQAE−トヨパールホウ酸
形(東ソ社製)0.5mlを充填した。さらに充填した
樹脂上からフリットフィルターを装着し、樹脂が動かな
い様に固定した。また、充填した樹脂の安定性を保ちか
つ乾燥しない様に0.2Mのホウ酸溶液をカラム上部に
満たし、出口にはキヤップを取り付け入口にはシールを
して密封した。
【0060】(2)操作法 前処理カラムのキャップとシールを取り除きリザーバー
内のホウ酸溶液を排液し、さらに1mlの蒸留水で2回
洗浄することにより、樹脂内の過剰のホウ酸を完全に洗
い流した。この洗浄した前処理カラムを試験管の上にセ
ットし、血清検体100μlを直接導通後、さらに蒸留
水0.5mlで4回洗浄して通過液2.1mlを得た。
AG検出試薬1バイアルを復元液1バイアルで復元し、
この溶液0.5mlを、上記の前処理カラム通過液2.
1mlに加えて攪拌し、25℃で1時間反応した。この
反応液の420nmにおける吸光度を通常の分光光度計
により測定した。また標準液を蒸留水で倍々希釈して希
釈系列を作成し、これも血清検体の場合と同様に処理し
て反応させ、AGの検量線を作成した。血清検体中のA
G濃度は、この検量線を用い検体の吸光度値から計算し
た。キットの方法によっても、実施例1−4と同様の結
果が得られた。
【0061】実施例2−1 測定は、ポンプから、0.05M−ほう酸緩衝液(pH
5.8)を0.5ml/minの流速で送液し、オート
インジェクター、干渉物質除去カラム、バイオセンサー
とこれに連結したデータ処理機からなる装置で行った。
バイオセンサーは、フローセル(容量約100μlにつ
いた過酸化水素電極((株)エイブル社製)の表面(5
mmφ)に同じ大きさのPROD固定膜をナイロンネッ
トで装着して使用した。PROD固定化膜は、次の方法
により作成した。PROD(宝酒造(株)製5.4U/
mg)10mgと牛血清アルブミン(シグマ社製)6m
gを1/15M−リン酸緩衝液(pH7.2)0.6m
lに溶解し、1%グルタルアルデヒド水溶液0.2ml
を加え混合する。混合後直ちにニトロセルロース膜(2
5mmφ×孔径3μm)2枚の上にゆっくり滴下し、全
体が均一になるように広げて、4℃で一夜風乾して得
た。
【0062】干渉物質除去カラムは、5mmφ×100
mmのカラムにポリビニルアルコール系のQAE−トヨ
パール550C(東ソ−(株)社製)を通常の方法でO
H形としさらにほう酸形とした樹脂と強カチオン交換樹
脂AG50W−X8(H形)(バイオラッド社製)を
5:1に混合した樹脂を充填したカラムを用いた。この
装置で、オートインジェクター(20μl固定ループ)
にAGの標準1,10,40μg/mlを並べ、次いで
血清サンプル10本並べて、測定を開始した。データ処
理機により、AGの標準の面積値から検量線を作製し、
サンプルのAG定量値が得られた。また、同一検体をG
C法で測定した定量値と相関を図7に示した。この図か
ら明らかなように、本発明による定量値は、GC法と高
い相関を示した。
【0063】実施例2−2 測定装置は、ポンプ2台、オートインジェクター、干渉
物質除去カラム、バイオセンサーとこれに連結したデー
タ処理機からなっており、オートインジェクターに接続
して干渉物質除去カラムに水0.5ml/minの流速
で流し、カラム通過液は、0.1ml/minの流速で
供給される0.5M−リン酸緩衝液とミキシングジョイ
ントを通じて混合され、ミキシングコイル(1.0mm
φ×3m)にて完全に混合された実施例2−1と同じバ
イオセンサーのフローセルに入るように接続された装置
である。干渉物質除去カラムは、5mmφ×100mm
のカラムにQAE−トヨパール550C(ほう酸形)を
充填したものを用いた。この装置で、実施例2−1と同
様に測定した。また、同一検体をGC法で測定した定量
値との相関を図8に示した。この図から明らかなよう
に、本発明による定量値は、GC法と高い相関を示し
た。
【0064】実施例2−3 測定装置は、実施例2−2と同様なシステムで行い、干
渉物質除去カラムに0.01M−ほう酸緩衝液(pH
6.0)を1.0ml/minの流速で流し、もう一方
から1.1M−りん酸緩衝液(pH5.8)を0.1m
l/minの流速で供給して使用した。干渉物質除去カ
ラムは、5mmφ×100mmのカラムにアクリル系の
シヨウデックスTM−L(昭和電工(株)製)(ほう酸
形)を充填したものを用いた。この装置で、実施例2−
1と同様にして、血清サンプル20本を測定した。ま
た、同一検体をGC法で測定した定量値との相関を図9
に示した。この図から明らかなように、本発明による定
量値は、GC法と高い相関を示した。
【0065】
【発明の効果】以上から明らかなように、本発明の方法
によれば、検体中のタンパク質や糖類などの干渉物質が
簡単に除去でき、糖アルコール類の測定が極めて簡便に
なった。特定の糖アルコールに特異性は有るが、糖類と
幅広く反応する様な酵素であっても、本発明の糖類除去
の前処理法を組み合せれば、充分定量用に用い得ること
が明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ピラノースオキシダーゼを使用したAGの検
量線
【図2】 L−ソルボースオキシダーゼを使用したAG
の検量線
【図3】 ミオイノシトールデヒドロゲナーゼを用いた
MIの検量線
【図4】 第4のの発明により処理された血清をピラ
ノースオキシダーゼを用いて測定した値と、ガスクロ法
の相関
【図5】 第4のの発明により処理された血清をピラ
ノースオキシダーゼを用いて測定した値とガスクロ法の
相関
【図6】 第1の発明により処理された血清をピラノー
スオキシダーゼを用いて測定した値と、ガスクロ法の相
【図7】 実施例2−1の測定システムで血清中のAG
を測定したときのGC法との相関
【図8】 実施例2−2の測定システムで血清中のAG
を測定したときの相関
【図9】 実施例2−3の測定システムで血清中のAG
を測定したときのGC法との相関
フロントページの続き (72)発明者 橋場 正 群馬県新田郡笠懸村阿左美804−12 (72)発明者 速水 宏 群馬県高崎市岩鼻町239 (72)発明者 竹澤 智子 群馬県藤岡市藤岡1906−5 (72)発明者 平山 正近 埼玉県大宮市奈良町136−51奈良町団地 7−203 審査官 宮澤 浩 (56)参考文献 特開 昭58−109849(JP,A) 特開 昭62−266071(JP,A) 特開 昭60−31055(JP,A) 特開 昭64−6756(JP,A) 特開 昭62−79780(JP,A) 特開 昭59−35231(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 30/88 G01N 27/416 G01N 30/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】糖アルコール、タンパク質、糖類を含有す
    る検体に、油状沈澱を生じさせるタンパク質不溶化剤
    を添加し、タンパク質を油状沈澱物として沈降させて上
    清液を得、次いでその上清液をタンパク不溶化剤吸着樹
    脂及び塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通す
    か又は、タンパク質沈澱剤及びタンパク質変性剤を添
    加し、タンパク質を水不溶化物として析出させ、得られ
    た析出液を塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムに
    通し、次いで、得られた通過液中の糖アルコールを酵素
    法により定量することを特徴とする糖アルコールの定量
    方法。
  2. 【請求項2】血中の1,5−アンヒドログルシトールを
    定量するにあたり、通液している干渉物質除去カラムと
    インジェクターとバイオセンサーを備えた装置に多数の
    検体を順次注入することを特徴とする1,5−アンヒド
    ログルシトールの定量法。
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