JP3186911B2 - 微量成分の定量方法 - Google Patents

微量成分の定量方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は臨床検査の分野において
疾病の診断のために行われる生体試料中の微量成分の定
量等に利用できる検体中の微量成分の定量方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】血清、血漿、尿等の生体試料中の特定の
微量成分の定量は疾病の診断や治療効果の判定に有用で
あり、酵素の特異性を利用して測定されている。
【0003】なかでも酸化酵素により過酸化水素を生成
させ、その量に対応した量で、ペルオキシダーゼなどの
作用下に基質を呈色色素や蛍光色素に変換することによ
って定量する方法が多く用いられている。
【0004】しかしながら過酸化水素は不安定で、特に
微量の場合、基質を効率よく色素へ変換することなく分
解してしまう。その結果、過酸化水素が生成しているに
もかかわらず検出されなかったり、生成した色素量と微
量成分が直線的比例関係を示さないため測定精度が悪く
なるという問題点がある。
【0005】従来この様な問題を回避するために検体量
を増やしたり、多数の濃度の標準を測定し複雑な数学的
処理を必要とした。
【0006】さらに、測定にあたって目的微量成分を分
離することなく生体試料をそのまま使用することが好ま
れるが、検体量の増量は干渉成分の増量もともない、測
定に影響がでるという新たな問題もある。
【0007】また、固定化酵素を用いたフローインジェ
クション法などにより検体を連続測定する場合、本来の
酵素活性は失われていないにもかかわらず、カラム中に
混入したカタラーゼ等の過酸化水素の分解活性のため、
最初の測定を開始してからカタラーゼ等の過酸化水素の
分解活性が失活し安定するまで色素生成量が経時的に変
化するという問題もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】現在、検体中に含まれ
る微量の過酸化水素又は微量成分を簡単でかつ正確に定
量する方法の開発が望まれている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討し
た結果、検体中の被測定物質以外に、過酸化水素、過ほ
う酸若しくはその塩、又は測定系において過酸化水素を
生成する物質を測定系に添加又は供給することにより上
記課題を解決できることを見いだし本発明を完成した。
【0010】即ち、本発明は(1) 検体中に微量含ま
れる過酸化水素の量を測定する際に、検体以外に、過酸
化水素、過ほう酸若しくはその塩、または測定系におい
て過酸化水素を生成する物質を測定系に添加又は供給す
ることを特徴とする微量過酸化水素の定量方法、(2)
検体中の微量成分に酸化酵素を作用させ発生した過酸
化水素を検出することにより微量成分を測定する際に、
検体以外に、過酸化水素、過ほう酸若しくはその塩、ま
たは測定系において過酸化水素を生成する物質を測定系
に添加又は供給することを特徴とする検体中の微量成分
の定量方法、(3) 測定系において過酸化水素を生成
する物質として、酸化酵素の作用により過酸化水素を生
成する物質を添加又は供給する、上記(1)又は(2)
記載の定量方法、(4) 測定系において過酸化水素を
生成する物質として、ピラノースオキシダーゼの作用に
より過酸化水素を生成する物質を添加又は供給する、上
記(1)又は(2)記載の定量方法、(5) 検体中の
微量成分に作用させる酸化酵素がピラノースオキシダー
ゼである上記(2)、(3)又は(4)記載の定量方
法、(6) 酸化酵素が固定化酵素である上記(2)、
(3)、(4)又は(5)記載の定量方法、(7) 過
酸化水素の検出にペルオキシダーゼを用いる上記
(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)記
載の定量方法、(8) ペルオキシダーゼが固定化酵素
である上記(7)記載の定量方法、(9) 測定する検
体中の微量成分が1,5−アンヒドロ−D−グルシトー
ルである上記(2)、(3)、(4)、(5)、
(6)、(7)又は(8)記載の定量方法、(10) 検
体以外に測定系に添加又は供給する過酸化水素、過ほう
酸若しくはその塩、または測定系において過酸化水素を
生成する物質の量が、過酸化水素を検出する際の液体中
の濃度として10-12 〜10-3mol/lとなる量(測
定系において過酸化水素を生成する物質の場合は、該物
質から生成される過酸化水素の量が、過酸化水素を検出
する際の液体中の濃度として10-12 〜10-3mol/
lとなる量)である、上記(1)、(2)、(3)、
(4)、(5)、(6)、(7)、(8)又は(9)記
載の定量方法、に関する。
【0011】以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】上記(1)における過酸化水素を微量含む
検体としては、種々のものが使用でき、特に限定され
ず、例えば工場廃水、河川の水や雨水のような環境分析
に用いられる検体、あるいは、上記(2)において検体
中の微量成分に酸化酵素を作用させて得られるもの等が
挙げられる。本発明で効果の認められる検体中の過酸化
水素量は、検出する際の液体中の検体に由来する過酸化
水素の濃度として10-3mol/l以下となる量であ
り、好ましくは10-11 〜10-4mol/lとなる量で
ある。
【0013】上記(2)における微量成分(定量対象物
質)を含む検体としては、種々のものが使用でき特に限
定されず、例えば、血清、血漿、血液、髄液などの体液
や尿などの排泄物、便などの希釈物から固形分を除去し
たもの、各種組織の抽出液、又は、これらの体液、排泄
物、抽出液等から干渉物質(定量対象物質以外の成分で
目的とする微量成分の定量に悪影響を及ぼす糖や蛋白質
等)を除去したもの等が挙げられる。本発明で効果の認
められる検体中に含まれる定量する微量成分の量は、検
出する際の液体中の濃度として10-3mol/l以下と
なる量であり、好ましくは10-11 〜10-4mol/l
となる量である。
【0014】検体中の定量する微量成分としては、例え
ば1,5−アンヒドロ−D−グルシトール、グルコー
ス、尿酸、コレステロール、ポリアミン、ピルビン酸等
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】酸化酵素とは酸素の存在下、基質を酸化し
て過酸化水素を発生する酵素であり、例えばグルコース
オキシダーゼ(EC1.1.3.4)、コレステロール
オキシダーゼ(EC1.1.3.6)、ピラノースオキ
シダーゼ(EC1.1.3.10)、L−ソルボースオ
キセダーゼ(EC1.1.3.11)、ウリカーゼ(E
C1.7.3.3)、プトレシンオキシーダーゼ(EC
1.4.3.10)等が挙げられるが、これに限定され
るものでなく、過酸化水素を発生する酸化酵素であれば
該当する。
【0016】測定系に添加又は供給する物質である過ほ
う酸の塩としては過ほう酸ナトリウム、過ほう酸カリウ
ム等各種の塩が挙げられ特に限定されない。
【0017】又、測定系において過酸化水素を生成する
物質としては種々のものが使用でき、例えば、使用する
酸化酵素の作用により過酸化水素を生成する物質、即
ち、酸化酵素の基質が挙げられる。たとえばグルコース
オキシダーゼに対してグルコース、コレステロールオキ
シダーゼに対してコレステロール、ピラノースオキシダ
ーゼに対してグルコース、キシロース、ソルボース、グ
ルコノラクトンや1,5−アンヒドロ−D−グルシトー
ル、L−ソルボースオキセダーゼに対してグルコース、
ガラクトースやキシロース、ウリカーゼに対して尿酸、
プトレシンオキシーダーゼに対してプトレッシン等が挙
げられるが、これに限定されるものでない。さらに、酸
化酵素の主要対象基質以外でも反応性のある物質であれ
ば使用できる。例えばピラノースオキシダーゼはグリセ
リン等でも僅かに反応し過酸化水素を生成する。従っ
て、これらの物質も酸化酵素の作用により過酸化水素を
生成する物質となる。
【0018】測定系において過酸化水素を生成する物質
は測定対象物質と同一であっても異なっていてもよい。
例えば、酸化酵素が2種類以上の物質を基質とする場合
には測定対象物質以外の基質を測定系において過酸化水
素を生成する物質として使用することができる。また、
検体中の微量成分の酸化酵素とは異なる酸化酵素とその
基質を併用することもできる。
【0019】測定系に添加又は供給する過酸化水素、過
ほう酸若しくはその塩、または測定系において過酸化水
素を生成する物質の使用量は検出系に悪影響を及ぼさな
い程度の量であることが望ましい。あまり多量に添加し
た場合にはバックグランドやベースラインの上昇を招き
検出器の検出上限を越えてしまう。また、添加量が少な
すぎると十分な効果は期待できない。測定系に添加又は
供給する過酸化水素、過ほう酸若しくはその塩、または
測定系において過酸化水素を生成する物質の使用量は、
これらに由来する過酸化水素の濃度が検出系の液体中に
おいて10-12〜10-3mol/lとなる量であること
が好ましく、特に10-11 〜10-5mol/lとなる量
であることが好ましい。
【0020】過酸化水素、過ほう酸若しくはその塩、ま
たは測定系において過酸化水素を生成する物質は、種々
の方法で測定系に添加又は供給することができる。例え
ば、検体又は基質溶液、酸化酵素溶液、ペルオキシダー
ゼ溶液、キャリアー溶液等の試薬溶液に加えて用いても
よく、又は緩衝液等に溶かして検体又は試薬溶液とは別
に、検体を酸化酵素で作用させる前の適当な所又は時に
添加又は供給することができる。
【0021】酸化酵素及びペルオキシダーゼによる処理
は常法により行なうことができ、好ましい処理温度は2
〜70℃であり、特に15〜40℃が好ましい。
【0022】本発明で採用できる測定系は特に限定され
ない。例えば検出器として分光光度計や蛍光光度計を用
い、石英やガラスセル中に試薬溶液と検体を入れ一定時
間色素量の変化を測定したり、一定時間後の色素量を定
量する測定系に使用できる。また、フローインジェクシ
ョン法も採用できる。この場合酸化酵素は溶液状態で供
給することも固定化酵素にして使用することもできる。
さらに検出器としては過酸化水素電極により直接過酸化
水素を測定する系も使用することができるが、酵素を用
い、基質を呈色色素や蛍光色素に変換して測定する方法
が好ましい。過酸化水素の存在下、被酸化性の基質は種
々の酵素により色素に変換されるが、その際用いる酵素
としては特にペルオキシダーゼが好ましい。
【0023】ペルオキシダーゼとしては、その起源、由
来は特に限定されない。植物、動物、微生物由来のペル
オキシダーゼ(ペルオキシダーゼ様活性物質も含む)が
使用できる。これらのペルオキシダーゼは単独あるいは
組み合わせて使用できる。ペルオキシダーゼは測定系に
より溶液状態でも固定化酵素にして使用することもでき
る。
【0024】酸化酵素および/またはペルオキシダーゼ
を固定化酵素にする場合、その方法は特に限定されな
い。吸着法、包括法、架橋法、共有結合法などの公知の
固定化方法が適用できる。なかでも反応中に酵素の脱離
の起こらない共有結合法が好ましい。共有結合法におい
ても種々の方法が適用される。たとえば、シアン化ブロ
ム法、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、シラン化
法、カルボキシ基を活性エステルにした後結合する方
法、エポキシ基、ホルミル基、トレシル基など官能基を
有する担体と結合させる方法が適用できる。担体の材質
も特に限定されない。たとえば、セルロース、デキスト
ラン、多孔質ガラス、シリカゲル、キサントン、アガロ
ース、ポリアクリルアミド、セラミック、ナイロン、ア
ミノ酸共重合体などが挙げられる。
【0025】本発明によれば、各種の検体中の過酸化水
素や微量成分を簡単且つ正確に定量することができる。
検体中に含まれる過酸化水素や微量成分を定量する際
に、ほぼ直線的な検量線が得られ、より正確で簡単な定
量が可能となる。又、固定化酵素を用いたフローインジ
ェクション法等において、短時間で安定な測定を可能と
する。
【0026】
【実施例】以下に実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらよって本発明が限定されるものではな
い。
【0027】実施例1 グルコース標品の検出における
過ほう酸ナトリウムの添加効果 5μg/mlの過ほう酸ナトリウム50μlおよび0又
は5又は50μg/mlのグルコース水溶液50μlを
試験管に採取し、1u/mlのグルコースオキシダー
ゼ,0.1u/mlのペルオキシダーゼ,1mMの2,
2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−
スルフォン酸)二アンモニウム塩を含む0.1Mクエン
酸緩衝液(pH6.0)を1ml加え室温で1時間反応
させた。その後1%のアジ化ナトリウム水溶液を0.1
ml加えて反応を停止した。蒸留水を対照にして420
nmの吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0028】比較例1 グルコース標品の検出 5μg/mlの過ほう酸ナトリウム50μlを蒸留水5
0μlに変えた以外は実施例1と同一の測定をした。結
果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】実施例1では、バックグランド(グルコー
ス水溶液濃度0μg/ml)の吸光度を差し引いたグル
コースの発色比はグルコースの濃度比である10に近づ
く。50μg/mlの吸光度とバックグランドの吸光度
を結ぶ直線検量線で検体を測定した場合、実施例1の過
ほう酸ナトリウムを添加した場合の方が比較例1の無添
加の場合よりもより真値に近い測定値を与えることが分
かる。
【0031】合成例1 固定化ピラノースオキシダーゼ
の調製 1gのアミノプロピル−CPG(ポアーサイズ1400
オングストローム フナコシ(株)販売)に2.5%グ
ルタルアルデヒド水溶液10mlを添加し、1時間室温
で反応させた後、十分水洗した。これに7000ユニッ
トのピラノースオキシダーゼを含む0.1Mリン酸緩衝
液(pH6.5)10mlを加え、室温で4時間撹拌し
ながら反応させた。このピラノースオキシダーゼ固定化
担体粒子を上記リン酸緩衝液で洗浄し未反応のピラノー
スオキシダーゼを除去し、固定化ピラノースオキシダー
ゼを作製した。
【0032】合成例2 固定化ペルオキシダーゼの調製 合成例1で使用したアミノプロピル−CPG1gに、過
ヨウ素酸法により活性化した10000ユニットのホー
スラデシュペルオキシダーゼを含む0.01M炭酸緩衝
液(pH9.5)10mlを添加し、4℃で4時間反応
させた。このHRP固定化担体粒子を0.1Mリン酸緩
衝液(pH6.5)で洗浄し未反応のペルオキシダーゼ
を除去し、固定化ペルオキシダーゼ作製した。
【0033】実施例2 1,5−アンヒドロ−D−グル
シトール標品の検出における過ほう酸ナトリウムの添加
効果 フローインジェクション法を用いて1,5−アンヒドロ
−D−グルシトール標品の測定をした。
【0034】使用したシステムを図1に示す。ポンプX
2は東ソー社製CCPM、試料注入装置X3は東ソー社
製AS−8010、吸光度検出器X5は島津製作所製S
PD−10AV、指示・記録装置X6は日立社製D−2
500を用いた。合成例1で調製した固定化ピラノース
オキシダーゼおよび合成例2で調製した固定化ペルオキ
シダーゼをそれぞれ内容積150μlのカラムに充填し
吸光度検出器の前に設置した(X4−1、X4−2)。
【0035】発色基質として20μM N−(カルボキ
シメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチ
ルアミノ)−ジフェニルアミン ナトリウム塩を含む5
0mMりん酸緩衝液(pH7.0)に10ng/mlに
なるように過ほう酸ナトリウムを添加した試薬溶液X1
を2ml/minで送液した。
【0036】試料(検体)は5μg/mlおよび0.5
μg/mlの1,5−アンヒドロ−D−グルシトール水
溶液を10μl注入し、727nmの吸光度でピーク面
積を測定した。測定は室温で行った。結果を表2に示
す。
【0037】実施例3 1,5−アンヒドロ−D−グル
シトール標品の検出における1,5−アンヒドロ−D−
グルシトールの添加効果 実施例2と同一の装置と固定化酵素カラムを用い、発色
基質として20μMN−(カルボキシメチルアミノカル
ボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ジフェ
ニルアミン ナトリウム塩を含む50mMりん酸緩衝液
(pH7.0)に10ng/mlになるように1,5−
アンヒドロ−D−グルシトールを添加した試薬溶液を2
ml/minで送液した。
【0038】試料および測定波長、測定温度は実施例2
と同一である。結果を表2に示す。
【0039】実施例4 1,5−アンヒドロ−D−グル
シトール標品の検出におけるグルコースの添加効果 実施例2と同一の装置と固定化酵素カラムを用い、発色
基質として20μMN−(カルボキシメチルアミノカル
ボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ジフェ
ニルアミン ナトリウム塩を含む50mMりん酸緩衝液
(pH7.0)に10ng/mlになるようにグルコー
スを添加した試薬溶液を2ml/minで送液した。
【0040】試料および測定波長、測定温度は実施例2
と同一である。結果を表2に示す。
【0041】実施例5 1,5−アンヒドロ−D−グル
シトール標品の検出における過酸化水素の添加効果 使用したシステムを図2に示す。ポンプX2、試料注入
装置X3、吸光検出器X5、指示・記録装置X6、固定
化酸化酵素カラムX4−1、固定化ペルオキシダーゼカ
ラムX4−2は実施例2と同じものを用いた。
【0042】発色基質として40μM N−(カルボキ
シメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチ
ルアミノ)−ジフェニルアミン ナトリウム塩を含む1
00mMりん酸緩衝液(pH7.0)を試薬溶液X1と
して1ml/minで送液した。また、3ng/mlの
過酸化水素水溶液X7を固定化ピラノースオキシダーゼ
カラムの上流で試薬溶液と混合するようにポンプX8に
より1ml/minで送液した。
【0043】試料および測定波長、測定温度は実施例2
と同一である。結果を表2に示す。
【0044】比較例2 1,5−アンヒドロ−D−グル
シトール標品の検出 実施例2と同一の装置と固定化酵素カラムを用い、発色
基質として20μMN−(カルボキシメチルアミノカル
ボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ジフェ
ニルアミン ナトリウム塩を含む50mMりん酸緩衝液
pH7.0を試薬溶液として2ml/minで送液し
た。
【0045】試料および測定波長、測定温度は実施例2
と同一である。結果を表2に示す。
【0046】比較例2に比べ実施例2〜5はピーク面積
が増大し、その割合は5μg/mlより0.5μg/m
lの方が顕著である。また、ピーク面積の比が10に近
づくことは検量線の直線性が改善され複雑な数学的処理
をしなくても、単純な直線近似で低濃度の測定精度が確
保されることを示す。
【0047】さらに、実施例5は装置を変更し、過酸化
水素を別に添加しているが、実施例2〜4と同様な結果
が得られた。
【0048】
【表2】
【0049】実施例6 過ほう酸ナトリウムの検出にお
ける過ほう酸ナトリウムの添加効果 フローインジェクション法を用いて過ほう酸ナトリウム
の測定をした。使用したシステムは実施例2の装置から
固定化酸化酵素カラムを除いたものである。
【0050】発色基質として20μM N−(カルボキ
シメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチ
ルアミノ)−ジフェニルアミン ナトリウム塩を含む5
0mMりん酸緩衝液(pH7.0)に20ng/mlに
なるように過ほう酸ナトリウムを添加した試薬溶液を2
ml/minで送液した。
【0051】試料は5μg/mlおよび0.5μg/m
lの過ほう酸ナトリウム水溶液を10μl注入し、72
7nmの吸光度でピーク面積を測定した。測定は室温で
行った。結果を表3に示す。
【0052】比較例3 過ほう酸ナトリウムの検出 実施例6と同一の装置と固定化酵素カラムを用い、発色
基質として20μMN−(カルボキシメチルアミノカル
ボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ジフェ
ニルアミン ナトリウム塩を含む50mMりん酸緩衝液
(pH7.0)を試薬溶液として2ml/minで送液
した。
【0053】試料および測定波長、測定温度は実施例6
と同一である。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】比較例3に比べ実施例6はピーク面積が増
大し、その割合は5μg/mlより0.5μg/mlの
方が顕著である。また、ピーク面積の比が10に近づく
ことは検量線の直線性が改善され複雑な数学的処理をし
なくても、単純な直線近似で低濃度の測定精度が確保さ
れることを示す。
【0056】実施例7 血清中の1,5−アンヒドロ−
D−グルコースの定量におけるグルコースの添加効果 実施例2と同一の装置と固定化酵素カラムを用い、発色
基質として20μMN−(カルボキシメチルアミノカル
ボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ジフェ
ニルアミン ナトリウム塩を含む50mMりん酸緩衝液
(pH7.0)に10ng/mlになるようにグルコー
スを添加した試薬溶液を2ml/minで送液した。
【0057】試料(検体)はグルコースおよび夾雑タン
パクを除去するすため市販のキット(ラナAG日本化薬
社製)に添付されている前処理カラムで処理して調製し
た。即ち、ヒト血清50μlを前処理カラムに注入し、
その後2回500μlの蒸留水を注入して溶出したもの
を試料とした。50μg/mlの1,5−アンヒドロ−
D−グルシトール標準液も同様の操作をした。前処理し
た試料および標準を20μl注入し、727nmの吸光
度でピーク面積を測定した。50μg/ml標準のピー
ク面積から原点を通る直線検量線を用いて試料の濃度を
求めた。結果を表4に示す。
【0058】比較例4 血清中の1,5−アンヒドロ−
D−グルシトールの定量(1点検量線) 試薬溶液がグルコース無添加である以外実施例7と同一
の測定を行った。結果を表4に示す。
【0059】参考例1 血清中の1,5−アンヒドロ−
D−グルシトールの定量(多点検量線) 50,30,20,10,5,2.5,1.25及び
0.625μg/mlの1,5−アンヒドロ−D−グル
シトール標準液を使用し多点検量線にした以外は比較例
4と同一の測定を行った。結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】実施例7は1点検量線であるにもかかわら
ず多点検量線で信頼できる測定値が得られると考えられ
る参考例1と良い一致を示した。グルコース無添加かつ
1点検量線である比較例4は参考例1より低めの測定値
になった。その傾向は血清中の1,5−アンヒドロ−D
−グルシトール濃度が低い検体で顕著であった。
【0062】実施例8 グルコース標品の検出における
グルコースの添加効果 グルコースオキシダーゼを常法によりエポキシトヨパー
ル(東ソー社製)に担持し、内径2.0mm、長さ7.
5cmのカラムに充填し、酸化酵素リアクターとした。
カラムあたりの酵素量は1000ユニットであった。
【0063】このようにして得られた固定化グルコース
オキシダーゼカラムを酸化酵素カラムとして使用した以
外は実施例2と同一の装置で測定を行った。
【0064】20μM N−(カルボキシメチルアミノ
カルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ジ
フェニルアミン ナトリウム塩および10ng/mlの
グルコースを含む50mMりん酸緩衝液(pH7.0)
を試薬溶液として2ml/minで送液した。反応は室
温でおこなった。試料は5μg/mlおよび0.5μg
/mlのグルコース水溶液を10μl注入し、727n
mの吸光度でピーク面積を測定した。結果を表5に示
す。
【0065】比較例5 グルコース標品の検出 試薬溶液にグルコースを添加しなかった以外実施例8と
同一の試験を行った。結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】比較例5に比べ実施例8はピーク面積が増
大し、その割合は5μg/mlより0.5μg/mlの
方が顕著である。また、実施例8ではピーク面積の日が
10に近づきグルコースの添加効果が確認された。
【0068】実施例9 固定化ピラノースオキシダーゼ
カラムによる連続測定 実施例2と同一の装置で、合成例1と同一ロットのピラ
ノースオキシダーゼを固定化したにもかかわらず同一濃
度の試料に対して小さいピーク面積しか示さない固定化
ピラノースオキシダーゼを充填したカラムを用い、発色
基質として20μM N−(カルボキシメチルアミノカ
ルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ジフ
ェニルアミン ナトリウム塩を含む50mMりん酸緩衝
液(pH7.0)に10ng/mlになるように1,5
−アンヒドロ−D−グルコースを添加した試薬溶液を2
ml/minで送液した。
【0069】試料および測定波長、測定温度は実施例2
と同一である。送液開始10分後から0.5μg/ml
の1,5−アンヒドロ−D−グルシトール標準液10μ
lを2分間隔で連続注入した。10回毎のピーク面積を
表6に示す。
【0070】比較例6 固定化ピラノースオキシダーゼ
カラムによる連続測定 試薬溶液がグルコース無添加である以外実施例9と同一
の測定を行った。結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】実施例9では短期間にピーク面積が実施例
2の場合と同程度まで増大し20回注入以後安定した。
20回注入以後であれば良好な再現性が得られることが
わかる。比較例6では実施例9に比べピーク面積が小さ
く、しかも徐々に増大している。同一検体を連続測定し
た場合測定値は注入回数が増えるにつれて高くなること
から測定精度の確保が難しいことがわかる。
【0073】
【発明の効果】本発明によれば、各種の検体中の過酸化
水素や微量成分の定量を簡単且つ正確に行なうことがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で用いたフローインジェクション分析
装置の略図。
【図2】実施例5で用いたフローインジェクション分析
装置の略図。
【符号の説明】
X1 緩衝液(試薬溶液) X2 送液装置(ボンプ) X3 試料注入装置 X4−1 固定化酸化酵素カラム X4−2 固定化ペルオキシダーゼカラム X5 吸光度検出器 X6 指示・記録装置 X7 過酸化水素水溶液 X8 送液装置(ボンプ)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長谷川 みどり 群馬県太田市大字由良1133−2 (72)発明者 大川 英子 群馬県高崎市高関町421−1 (72)発明者 梅香家 佳彦 神奈川県藤沢市湘南台4丁目26−5− 205 (72)発明者 古屋敷 佳久 神奈川県藤沢市湘南台4丁目26−5− 304 (72)発明者 北村 隆司 山口県熊毛郡熊毛町西勝間原1100−179 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12Q 1/00 - 1/66 G01N 31/00

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 検体中に微量含まれる過酸化水素の量を
    測定する際に、検体以外に、過酸化水素、過ほう酸若し
    くはその塩、または測定系において過酸化水素を生成す
    る物質を測定系に添加又は供給することを特徴とする微
    量過酸化水素の定量方法。
  2. 【請求項2】 検体中の微量成分に酸化酵素を作用させ
    発生した過酸化水素を検出することにより微量成分を測
    定する際に、検体以外に、過酸化水素、過ほう酸若しく
    はその塩、または測定系において過酸化水素を生成する
    物質を測定系に添加又は供給することを特徴とする検体
    中の微量成分の定量方法。
  3. 【請求項3】 測定系において過酸化水素を生成する物
    質として、酸化酵素の作用により過酸化水素を生成する
    物質を添加又は供給する、請求項1又は2記載の定量方
    法。
  4. 【請求項4】 測定系において過酸化水素を生成する物
    質として、ピラノースオキシダーゼの作用により過酸化
    水素を生成する物質を添加又は供給する、請求項1又は
    2記載の定量方法。
  5. 【請求項5】 検体中の微量成分に作用させる酸化酵素
    がピラノースオキシダーゼである請求項2、3又は4記
    載の定量方法。
  6. 【請求項6】 酸化酵素が固定化酵素である請求項2、
    3、4又は5記載の定量方法。
  7. 【請求項7】 過酸化水素の検出にペルオキシダーゼを
    用いる請求項1、2、3、4、5又は6記載の定量方
    法。
  8. 【請求項8】 ペルオキシダーゼが固定化酵素である請
    求項7記載の定量方法。
  9. 【請求項9】 測定する検体中の微量成分が1,5−ア
    ンヒドロ−D−グルシトールである請求項2、3、4、
    5、6、7又は8記載の定量方法。
  10. 【請求項10】 検体以外に測定系に添加又は供給する
    過酸化水素、過ほう酸若しくはその塩、又は測定系にお
    いて過酸化水素を生成する物質の量が、過酸化水素を検
    出する際の液体中の濃度として10-12 〜10-3mol
    /lとなる量(測定系において過酸化水素を生成する物
    質の場合は、該物質から生成される過酸化水素の量が、
    過酸化水素を検出する際の液体中の濃度として10-12
    〜10-3mol/lとなる量)である、請求項1、2、
    3、4、5、6、7、8又は9記載の定量方法。
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