JP3182426B2 - 光制御素子 - Google Patents

光制御素子

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JP3182426B2
JP3182426B2 JP10206391A JP10206391A JP3182426B2 JP 3182426 B2 JP3182426 B2 JP 3182426B2 JP 10206391 A JP10206391 A JP 10206391A JP 10206391 A JP10206391 A JP 10206391A JP 3182426 B2 JP3182426 B2 JP 3182426B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、所定波長λの制御光に
よってそれと同じ波長の被制御光を制御することができ
る光制御素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】たとえば光通信、光情報処理などの光エ
レクトロニクスの分野において、被制御光を制御光によ
り制御する研究が行われている。電気的スイッチング回
路よりも高速スイッチング操作が可能であること、光の
結像性を利用して多重の並列処理が可能なことなどがあ
り、光集積回路などにおいて極めて有用性が期待できる
からである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これに対し、光制御の
ために非線形光学効果を利用した光デバイスが活発に研
究されている。この非線形光学効果は、従来、第2高調
波発生などの波長変換効果が実用上重要視されていた
が、最近では特に光の強度に依存する屈折率変化や吸収
係数変化の効果が注目され、研究されている(応用物理
59,155頁乃至163頁:1990年2月発行)。
しかし、光強度によって屈折率や吸収係数が変わる効果
は3次の分極で生じるため、高次分極効果の大きな非線
形光学材料が必要である〔“Degenerate fourwave mixi
ng in semiconductor-doped glasses"J.Opt.Soc.Am.,7
3,pp.647-653(May 1983)〕。また、半導体光制御素子と
して最も有望視されている吸収飽和型双安定半導体レー
ザでは、オフ状態からオン状態へ切り換えるスイッチに
は、光入力が用いられるが、反対にオン状態からオフ状
態へ切り換えるには負の光パルスが存在しないため、同
一波長の光入力では実現されていない(応用物理58,
1574頁乃至1583頁:1989年11月発行)。
【0004】本発明は以上の事情を背景として為された
ものであり、その目的とするところは、所定波長λの制
御光によってそれと同一波長の被制御光をオン状態およ
びオフ状態の一方から他方へ切り換えることができる、
或いはその被制御光の強度を増減できる光制御素子を提
供することにある。
【0005】本発明者は、以上の事情を背景として種々
の検討を重ねた結果、希土類元素の一つであるエルビウ
ム元素を石英系或いは弗化物系ガラス或いは窒化珪素な
どの絶縁物、或いは半導体などの固体光透過媒体内にド
ーピングすると、エルビウム元素イオンが基底吸収およ
び励起吸収の可能な4準位系のエネルギ準位を構成し、
その固体光透過媒体に照射する制御光をオンオフさせる
ことにより、その固体光透過媒体内を透過する被制御光
が吸収される状態と吸収されない状態とに切り換えられ
ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて為さ
れたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
とするところは、所定波長λの被制御光と同一波長の制
御光を用いてその被制御光の強度を制御するために、被
制御光の光路に配設される光制御素子であって、固体光
透過媒体と、その固体光透過媒体にドープされ、前記所
定波長λの光に対する準安定準位E2 から励起準位E4
への励起吸収の度合が、基底準位E1 から励起準位E3
への基底吸収の度合よりも大きい4準位エネルギ系を有
するエルビウム元素とを備え、固体光透過媒体に照射さ
れる前記制御光の強度の増加に関連して前記被制御光の
透過率が減少する負性特性を示すことにある。
【0007】
【作用】このようにすれば、固体光透過媒体には、制御
光に励起されることに関連して発生する励起吸収により
被制御光を吸収する4準位系のエルビウム元素がドープ
されているので、その固体光透過媒体が被制御光を透過
させる光路に位置させられた状態で、その固体光透過媒
体に制御光が入射させられると、ドープされているエル
ビウム元素では基底吸収により制御光が吸収されて基底
準位E1 から励起準位E3 への励起が発生するととも
に、この励起に関連して基底吸収よりも吸収の度合が大
きい励起吸収が発生し、この励起吸収に関連して被制御
光が吸収されて上記固体光透過媒体を透過する被制御光
の透過率が減少させられる。また、上記固体光透過媒体
に対する制御光の入射強度が減少されると、被制御光に
対する励起吸収がなくなって被制御光の透過率が高めら
れる。このように、本発明の光制御素子は、制御光の基
底吸収に関連して発生する励起吸収によりその制御光と
同一波長の被制御光をスイッチングするものであるか
ら、複可飽和吸収体による同一周波数光スイッチ(Comm
on-Frequency Optical Switches by Complex Saturable
Absorber :COCA)と言うべきものである。
【0008】
【発明の効果】したがって、本発明の光制御素子によれ
ば、所定波長λの制御光の固体光透過媒体に対する照射
光量の変化に対応して、その固体光透過媒体を透過する
被制御光の透過光強度が変化させられる。たとえば、制
御光を固体光透過媒体に入射させる状態とさせない状態
との2制御状態に対応して、固体光透過媒体を透過する
被制御光がオフ状態とオン状態とに切り換えられる。ま
た、固体光透過媒体に対する制御光の照射光量の増減に
対応して、固体光透過媒体を透過する被制御光の透過強
度が減少および増加させられるのである。ここで、励起
吸収とは、基底準位E1 からの直接励起或いは準安定準
位E2 よりも高い励起準位E3 からの緩和によって準安
定準位E2 へ一旦励起された電子が、その準安定準位E
2 よりもさらに高い所定の準位E4 へ再び励起される際
のエネルギ吸収をいう。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。図1に示す装置は、エルビウム元素Er
3+を含む光ファイバ10の光制御機能を測定するための
ものである。この光ファイバ10は、470ppm程度
の濃度のエルビウム元素Er3+および500ppm程度
の濃度のアルミニウム元素Al3+が共にドープされた石
英系ガラス製のコアと、そのコアの外周において設けら
れた相対的に低い屈折率を有するクラッド層とを備えて
いる。また、この光ファイバ10のコア径は6.5μ
m、比屈折率差1.12%、長さ1.5m程度である。
【0010】制御光の光源として機能する半導体レーザ
素子12は、駆動制御回路14によって駆動されること
により787nmの中心波長のレーザ光LCを出力し、
ビームスプリッタ15および集光レンズ16を通して光
ファイバ10の一端に入射させる。この駆動制御回路1
4は、その出力を変更することにより半導体レーザ素子
12から出力されるレーザ光LC の強度を調節する。ま
た、被制御光の光源として機能する半導体レーザ素子1
8は、パルス発生回路20からの出力信号によって駆動
されることにより、予め定められた一定の周波数、たと
えば100Hzにパルス変調されたレーザ光LS を出力す
る。このレーザ光LS は、一定の強度のパルス光であっ
て、上記レーザ光LC と同一の787nmの中心波長を
備えている。
【0011】半導体レーザ素子18から出力されたレー
ザ光LS は、ビームスプリッタ15により反射され且つ
集光レンズ16により集光されて光ファイバ10の一端
に入射させられる。なお、半導体レーザ素子12から出
力されるレーザ光LC の一部はビームスプリッタ15に
より反射されて光検出素子22により受光される。ま
た、半導体レーザ素子18から出力されたレーザ光LS
の一部もビームスプリッタ15を透過することにより光
検出素子22により受光される。この光検出素子22
は、光ファイバ10の一端に入射させられるレーザ光L
C またはLS の強度をそれぞれ検出するためのものであ
る。
【0012】光ファイバ10の他端から出力された光
は、光強度を検出するための光検出素子24により受け
られ、光検出素子24の出力信号は増幅器26を介して
ロックイン増幅器28に供給される。ロックイン増幅器
28は、前記パルス発生回路20からのタイミング信号
に対応した周波数の交流信号を選択的に増幅するもので
あり、光検出素子24に受けられたレーザ光LC および
S のうち、パルス変調されているレーザ光LS に対応
した信号のみを増幅して出力する。これにより、制御光
であるレーザ光LC の強度変化に拘わらず、被制御光で
あるレーザ光LS の強度変化が検出される。
【0013】以上のように構成された装置において、半
導体レーザ素子18から出力されるレーザ光LS の強度
を複数種類に設定し、各設定値毎に半導体レーザ素子1
2から出力されるレーザ光LC の強度を増加させると、
ロックイン増幅器28の出力信号は、図2に示すよう
に、不連続に低下した。このように、光ファイバ10の
コア中を透過する被制御光であるレーザ光LS の出力強
度は、そのコアに対するレーザ光LC の照射強度の増減
に応じて減少増大制御されるので、エルビウム元素Er
3+がドープされた光ファイバ10が光制御素子として機
能することが明らかである。なお、図2の横軸は、上記
レーザ光LC およびLS による光ファイバ10への入射
強度である。
【0014】上記の装置では、被制御光であるレーザ光
S と制御光であるレーザ光LC とが光制御素子として
機能する光ファイバ10のコア内を同じ方向に伝播させ
られるものであったが、被制御光であるレーザ光LS
伝播方向に対して制御光であるレーザ光LC の伝播方向
が交差する方向、好ましくは直角方向であってもよい。
図3は、被制御光の伝播方向に対して制御光が直角の方
向に伝播させられる例を示している。
【0015】図3において、半導体レーザ素子40の端
面には、この端面から出力されるレーザ光LS が透過す
るように光制御セル42が固設されている。半導体レー
ザ素子40は、一対のクラッド層間に挟まれた活性層で
生じた光をその端面の間で発振させるよく知られたもの
であって、たとえば790nmの中心波長のレーザ光Lを
出力する。また、上記光制御セル42は、たとえばシリ
カガラス(SiO2 を主成分とする石英系光学ガラス)
を母材とする固体光透過媒体にて構成されており、その
シリカガラス内にはエルビウム元素Er3+が約1020cm
-3程度ドープされている。このエルビウム元素Er3+
より、光制御セル42内には図5に示すエネルギ準位が
構成されている。そして、上記光制御セル42は、半導
体レーザ素子44から出力されるレーザ光LC がレーザ
光LSに対して直交する方向から入射させられるように
配置されている。この半導体レーザ素子44から出力さ
れるレーザ光LC も、上記レーザ光LS と同一の790
nmの中心波長を備えている。
【0016】上記シリカガラスを母材とする光制御セル
42は、被制御光としてそれを透過するレーザ光L
S を、制御光であるレーザ光LC の入射に関連して発生
する励起吸収によりレーザ光LS を吸収する。このた
め、図4に示すように、被制御光であるレーザ光LS
透過させられている状態でレーザ光LC がオン状態とさ
れると、レーザ光LS の透過率が低下して光制御セル4
2からのレーザ光LS の出力がオフ状態とされる。反対
に、レーザ光LC がオフ状態とされると、レーザ光LS
に対する励起吸収がなくなってそのレーザ光LS の透過
率が元の値に戻り、再びオン状態とされる。本実施例で
は、レーザ光LS の伝播方向とレーザ光LC の伝播方向
とが直交しているので、分離手段を用いることなく被制
御光であるレーザ光LS を取り出すことができる。
【0017】次に、前記光ファイバ10および上記光制
御セル42において得られる励起吸収によるレーザ光L
S に対する制御原理を詳しく説明する。先ず、光制御セ
ル42にドープされているエルビウム元素Er3+のエネ
ルギ準位は図5に示すものである。しかし、本実施例で
は、光ファイバ10および光制御セル42に入射させら
れるレーザ光LC およびレーザ光LS は同一波長である
から、理解を容易とするために、図5に示すエネルギ準
位図を図6に示すように4つの主要な準位にモデル化す
ることができる。すなわち、図6のエネルギ準位図にお
いて、図5の 415/2が第1準位(基底準位)E1 に相
当し、図5の 413/2が第2準位(準安定準位)E2
相当し、図5の 49/2 が第3準位(励起準位)E3
相当し、図5の 411/2がの第4準位(励起準位)E4
からなる4準位系から構成されている。図6中のσ1
第1準位E1 から第3準位E3 への基底吸収における吸
収断面積、σ2 は第2準位E2 から第4準位E4 への励
起吸収における吸収断面積である。また、図において、
31は第3準位E3 から第1準位E1 への緩和率、A32
は第3準位E3 から第2準位E2 への緩和率、A21は第
2準位E2 から第1準位E1 への緩和率、A42は第4準
位E4 から第2準位E2 への緩和率である。なお、上記
において、E1 <E3 、E2 <E4 、E2 <E3 3
−E1 ≒E4 −E2 である。
【0018】ここで、図6の4準位系に示すように、光
ファイバ10および光制御セル42では同一波長λの光
に対して基底吸収および励起吸収の2種類の吸収が発生
するので、その複合吸収について説明する。すなわち、
数式1に示すエネルギを有する光子が光ファイバ10或
いは光制御セル42に入射すると、第1準位E1 に存在
する電子は基底吸収によってその光子のエネルギをσ1
の吸収断面積で吸収して第3準位E3 へ励起される。こ
の第3準位E3 へ励起された電子は、所定の緩和率A31
およびA32でそれぞれ第1準位E1 や第2準位E2 に緩
和する。一方、第2準位E2 に緩和した電子は、励起吸
収によって光子エネルギをσ2 の吸収断面積で吸収して
第4準位E4 に励起される。なお、数式1において、h
はプランク定数、Cは光速、νは光の周波数、λは光の
波長である。
【0019】
【数1】
【0020】以上の複合吸収において、理論的には、光
ファイバ10或いは光制御セル42の緩和率が数式2お
よび数式3に示す条件を満足し、且つ初期透過率TO
50%である場合には、所定の波長λに対する励起吸収
と基底吸収との強度比σ21(=σ2 /σ1 )が1より大
きい(σ21>1)ことにより、光ファイバ10或いは光
制御セル42に入射する光の強度が大きくなるに従っ
て、基底状態における吸収断面積σ1 による基底吸収は
飽和するのに対して励起状態における吸収断面積σ2
よる励起吸収は増大し、この吸収断面積σ2 による吸収
が飽和するまでは光透過率が減少する。たとえば、前記
実施例の光ファイバ10では、シリカガラスに470p
pm程度のエルビウム元素Er3+および500ppm程
度のアルミニウム元素Al3+がドープされているので、
波長λ=787nmに対する励起吸収と基底吸収との強度
比σ21は「4」程度である。この強度比σ21は、母材に
共添加する元素の種類および入射光の波長に依存して変
化し、1以下から5程度の値をとることが可能であるこ
とから、1より大きい値とすることにより上記励起吸収
によるレーザ光Lの光透過率の制御が可能となるのであ
る。
【0021】
【数2】
【0022】
【数3】
【0023】ここで、数式2に示すγは、第3準位E3
から第2準位E2 への移乗の割合を示しており、上記強
度比σ21の大きさとともに励起吸収の働きを示すパラメ
ータである。また、数式3に示すζは、第3準位E3
らの緩和率と第4準位E4 からの緩和率との割合を示し
ており、小さい値程第2準位E2 からの励起吸収の飽和
が生じ難いことを示している。また、本実施例の光制御
セル42では、第2準位E2 413/2)から第1準位
415/2)への緩和率A21は71sec -1である。ま
た、第4準位E4 411/2)から第2準位E2 4
13/2)への緩和過程は、その第4準位E4 411/2
のすぐ下にある準位 43/2 に非常に速やかに緩和した
後、その準位 43/2 から第2準位E2 413/2)へ
150μsec で緩和するので、第4準位E
4 411/2)から第2準位E2 413/2)への緩和
率A42は6300sec -1である。また、第3準位E3
49/2 )から第1準位( 415/2)への緩和は多フォ
ノン放出過程であり、その緩和率は遷移準位間のエネル
ギ差から求められる。すなわち、第3準位E3 4
9/2 )と準位411/2との間のエネルギ差は2254cm
-1、およびその準位 411/2と第2準位( 413/2)と
の間のエネルギ差は3650cm-1であるから、第3準位
3 49/2 )から第2準位( 413/2)への緩和率
32は8000sec -1程度となる。さらに、第3準位E
3 49/2 )から第1準位( 415/2)への緩和率A
31は1600sec -1程度となる。したがって、前記γは
140程度の値となり、また、前記ζは1.5程度の値
となる。
【0024】数式4は、前記光ファイバ10および光制
御セル42の特性を理論的に説明するために本発明者が
予め求めた4準位系複合吸収モデルの基本的飽和方程式
である。図7は、初期透過率TO を0.5と設定すると
ともに、上記のようにγ=140,ζ=1.5とした場
合において、強度比σ21を0.1から6まで変化させた
場合に、上記数式4に示す基本的飽和方程式を用いてそ
れぞれ得られた透過率曲線の数値解析結果である。な
お、数式4において、Tは入射光強度Iinに依存する透
過率であり、Iin’は入射光強度の無次元の実効値であ
る。
【0025】
【数4】
【0026】図7において、σ21≦1のときは入射光強
度を大きくするに従って光ファイバ10および光制御セ
ル42の透過率が単調に増大し、その後に吸収が完全に
飽和する。しかし、σ21>1のときは第2準位E2 から
の励起吸収の作用により、入射強度が大きくなるに伴っ
て光ファイバ10および光制御セル42の透過率曲線に
へこみが発生する。このように透過率が50%を下まわ
る領域において光ファイバ10および光制御セル42を
透過するレーザ光LS を減少させたり若しくはオフ状態
としたりする制御が理論的に行われ得るのである。
【0027】図8は、図9の透過率測定装置を用いて光
ファイバ10の透過率のレーザ光強度依存性を実際に測
定した結果を示している。図9において、図1の装置と
共通する部分には同一の符号を用いて説明が省略されて
いる。図9の演算器30においては、光ファイバ10の
一端に入射させられるレーザ光LC と光ファイバ10の
他端から出射させられる上記レーザ光LC との強度との
差に基づいて光ファイバ10中におけるレーザ光LC
透過率が算出される。
【0028】図7において理論的に予想したように、図
8においては、レーザ光LC の強度の増加に対して逆に
透過率が減少する負性領域が観測されている。また、図
8中のA点およびB点は、透過率曲線の変曲点および極
小点であり、これらの点における光強度は図2における
A点およびB点の光強度とほぼ一致している。
【0029】ここで、図2においてレーザ光LS がA点
およびB点において不連続な変化を示している理由は、
透過率曲線における変曲点および極小点において一次の
相転移が生じたためであると考えられる。この一次の相
転移は、一般に、レーザ発振器の中にその発振周波数で
吸収飽和する媒質(可飽和吸収体)を挿入することによ
り生じ、これが前記した吸収飽和型双安定半導体レーザ
の動作基本原理である。すなわち、小さい光強度で低透
過率状態を示し、大きい光強度で高透過率状態を示すこ
とを利用して光入力を加えることによりオフ状態からオ
ン状態に光スイッチするのである。これに対して、本発
明で得られた透過率に負性光強度依存性を示す複可飽和
吸収体は、小さい光強度で高透過率状態を示し、大きい
光強度で低透過率状態を実現している。このことは、前
記数値解析において一般の可飽和吸収体はσ21≦1の場
合に相当し、本発明で得られた可飽和吸収体はσ21>1
の場合に相当することからも理論的に理解できるのであ
る。
【0030】上述のように、本実施例によれば、固体光
透過媒体として機能するシリカガラスには、制御光であ
るレーザ光LC に励起されることに関連して発生する励
起吸収により被制御光であるレーザ光LS を吸収するエ
ルビウム元素Er3+がドープされているので、被制御光
であるレーザ光LS が透過させられている状態で光ファ
イバ10或いは光制御セル42に制御光であるレーザ光
C が入射させられると、そのレーザ光LC を基底吸収
することによって励起が行われるともに、この基底吸収
に関連して吸収する励起吸収が発生してレーザ光LS
透過率が低下し、レーザ光LS の出力がオフ状態とされ
る。また、上記光ファイバ10或いは光制御セル42に
対するレーザ光LC の入射が停止されると、それを透過
しているレーザ光LS に対する励起吸収がなくなって光
ファイバ10或いは光制御セル42を透過し、レーザ光
S の出力が再びオン状態とされるのである。
【0031】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
説明したが、本発明はその他の態様においても適用され
る。たとえば、前述の実施例では、光制御セル42のオ
ンオフ作動について説明されていたが、その光制御セル
42に入射させるレーザ光LC の光強度を連続的に変化
させる手段を設けることにより、光制御セル42を透過
するレーザ光LS の出力強度を連続的に制御することが
できる。
【0032】また、前述の実施例では、半導体レーザ素
子44が用いられていたが、LED、色素レーザ素子な
どの他の種類の単色光源が用いられても差支えない。
【0033】また、前述の実施例では、光制御セル42
が半導体レーザ素子40の端面に用いられていたが、光
集積回路内の光路中に設けられていてもよいのである。
【0034】また、前述の実施例の光制御セル42は石
英系或いは弗化物系ガラスを母材としていたが、窒化珪
素などの絶縁体や、GaP、GaAlAsなどのたとえ
ばバンドギャップが少なくとも1.6eVの半導体な
ど、他の固体光透過媒体を母材として用いられてもよ
い。エルビウムなどの希土類元素ではその原子の最外殻
が電子で満たされており、その電子によるシールド効果
のために内側の非閉殻の光学遷移はあまり母材の影響を
受けないからである。
【0035】また、前述の実施例の光ファイバ10およ
び光制御セル42には、エルビウム元素Er3+に加えて
アルミニウム元素Al3+がそれぞれドープされている
が、エルビウム元素Er3+だけでもよく、反対に、上記
アルミニウム元素Al3+に替えて或いは加えて、励起吸
収の改善のための他の元素がドープされてもよい
【0036】また、前述の実施例では、被制御光である
レーザ光LS および制御光であるレーザ光LC の波長は
787nmが用いられていたが、770nm乃至830
nmの範囲内であれば、励起吸収による被制御光の制御
が可能である。
【0037】なお、上述したのはあくまでも本発明の一
実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲にお
いて種々変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光制御素子の一例である光ファイバの
光制御機能を測定する装置の構成を示す図である。
【図2】図1の実施例において光ファイバに入射させる
レーザ光の強度とその光ファイバを透過するレーザ光L
S を検出するロックイン増幅器の出力信号との関係を示
す図である。
【図3】本発明の光制御素子の他の例である光制御セル
を含むレーザ光出力制御装置の構成を示す図である。
【図4】図3の実施例の光制御セルにおいて制御光であ
るレーザ光LC と被制御光であるレーザ光LS との関係
を説明する図である。
【図5】図1の光ファイバおよび図3の光制御セルにド
ープされているエルビウム元素のエネルギ準位を説明す
る図である。
【図6】図5のエネルギ準位の理解を容易とするために
主要な準位から構成される4準位モデルを示す図であ
る。
【図7】図1の光ファイバおよび図3の光制御セルにお
ける励起吸収作用を説明するための図であって、4準位
系モデルにおけるレーザ光の強度と透過率との関係の数
値解析結果を、所定の波長λに対する励起吸収と基底吸
収との強度比σ21をパラメータとして説明する図であ
る。
【図8】図1の実施例の光ファイバに入射させるレーザ
光LC の強度とその透過率との関係を示す図である。
【図9】図8に示すレーザ光LC とその透過光との関係
を求めるための装置を説明する図である。
【符号の説明】
10 光ファイバ(光制御素子) 42 光制御セル(光制御素子) LC レーザ光(制御光) LS レーザ光(被制御光)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定波長λの被制御光と同一波長の制御
    光を用いて該被制御光の強度を制御するために、被制御
    光の光路に配設される光制御素子であって、 固体光透過媒体と、該固体光透過媒体にドープされ、前
    記所定波長λの光に対する準安定準位E2 から励起準位
    4 への励起吸収の度合が、基底準位E1 から励起準位
    3 への基底吸収の度合よりも大きい4準位エネルギ系
    を有するエルビウム元素とを備え、該固体光透過媒体に
    照射される前記制御光の強度の増加に関連して前記被制
    御光の透過率が減少する負性特性を示すことを特徴とす
    る光制御素子。
  2. 【請求項2】 前記固体光透過媒体にはエルビウム元素
    Er3+がドープされており、該エルビウム元素Er3+
    415/2準位、 413/2準位、 49/2 準位、 411/2
    準位が、前記基底準位E1 、準安定準位E2 、励起準位
    3 、励起準位E4 をそれぞれ構成しているものである
    請求項1に記載の光制御素子。
  3. 【請求項3】 前記固体光透過媒体は、石英系或いは弗
    化物系ガラス、窒化珪素、半導体から選択された1つの
    物質である請求項1または請求項2に記載の光制御素
    子。
  4. 【請求項4】 前記制御光および被制御光の波長λは、
    770〜830nmの範囲内である請求項1乃至請求項
    3のいずれかに記載の光制御素子。
  5. 【請求項5】 前記固体光透過媒体には、少なくともア
    ルミニウム元素が更にドープされている請求項1乃至請
    求項4のいずれかに記載の光制御素子。
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