JP2004133329A - 非線形光学薄膜及びそれを用いた非線形光学素子並びにそれを用いた光スイッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】光信号の進路を高速に切り替える光学素子を提供する。
【解決手段】薄膜中に酸化物からなるコランダム型結晶構造の結晶粒子と、結晶粒子の周囲に非晶質部分を有する非線形光学材料を提供する。この非線形光学薄膜は、エネルギーを与えることにより屈折率が大きく変化する性質を有する。また、透過した光の損失が少ないため、この材料を用いて、効率的に光信号の進路の切り替え又はオン・オフを行う非線形光学素子を提供することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】薄膜中に酸化物からなるコランダム型結晶構造の結晶粒子と、結晶粒子の周囲に非晶質部分を有する非線形光学材料を提供する。この非線形光学薄膜は、エネルギーを与えることにより屈折率が大きく変化する性質を有する。また、透過した光の損失が少ないため、この材料を用いて、効率的に光信号の進路の切り替え又はオン・オフを行う非線形光学素子を提供することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号の光路の切り替えまたは信号のオン・オフを行う素子に用いるための非線形光学性を有する非線形光学膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光情報のスイッチングには、中継点において、一度光情報を電気情報に変換するに光電変換手段と電気情報を光情報に逆変換する電光変換手段とが必要であったが、より高速な光通信システムを構築するため、光情報を直接スイッチングする光スイッチ(メカニカル型光スイッチ,平面光導波路型光スイッチ,ミラー型光スイッチ,バブル型スイッチなど)が開発されている(非特許文献1)。
【0003】
さらに高速なスイッチングの可能な光スイッチの開発を目的として、非線形光学性を有する材料により更なる高速応答性を達成しようという動きがある。強磁性酸化物の半導体微粒子を分散したガラス状薄膜を用いることによって、高速でかつ大きな非線形光学性が出ると報告されている(特許文献1,2)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−224262号
【特許文献2】
特開2002−72264号
【非特許文献1】
『日経エレクトロニクス』No.8,2000年1月29日号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような薄膜を用いた光スイッチでは、信号の光路切り替えを行う際、薄膜による吸収・分散が起こり、信号が減衰するという問題があった。
【0006】
本発明では上記課題を解決する薄膜と、それを用いた光学素子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の特徴は、コランダム型結晶構造を有する酸化物粒子と、その周囲の非晶質の粒界からなる薄膜である。コランダム型構造とは、六方晶の内部の空隙中にもう1種類の原子が入っている構造であり、広角X線やTEMの回折像によって識別することが可能である。このような薄膜は、光学素子に適用できる充分な屈折率変化量を有し、信号の損失が少ない。
【0008】
上記酸化物粒子は、平均粒径が25nm以下であると良好なスイッチング特性を有する。上記酸化物粒子として、酸化アルミニウム,酸化鉄,酸化ガリウムを含有するものは、損失をさらに低減するため望ましい。また、酸化鉄は薄膜の屈折率変化量を大きくするため望ましい。これらの酸化物粒子となる材料酸化物は、薄膜全体に対し重量比で30%以上95%未満の割合で添加することができる。
【0009】
上記金属酸化物材料には、希土類元素酸化物を重量比で1〜20%添加することができる。希土類元素を添加した本発明は、高速に屈折率が変化する性質を有するので好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
発明者らが光スイッチに最適な非線形光学材料について鋭意検討した結果、コランダム型結晶構造を有する柱状の酸化物粒子が非晶質粒界に覆われている構造を有する非線形光学薄膜の屈折率変化が大きく、光の透過を妨げにくいことがわかった。つまり、本発明は酸化物のコランダム型結晶粒子とその間を満たす非晶質の部分からなる。この材料は一定強度以上の光の照射により屈折率が大きく変化するため、基板上に形成し、信号光の光路変換を行う光スイッチ等の光学素子に適用することが可能である。更に、波長1.55μmの光の消衰係数を0.04以下とすることができ、この材料を適用した低損失な特性を有する光学素子が得られる。この場合、信号の透過率80%以上(信号損失20%以下)の光学素子を作製することが可能となる。発明者らは、NaCl型結晶構造を有する化合物(ex:FeO),スピネル型結晶構造を有する化合物(ex:Fe3O4)を有する光学素子についても検討を行ったが、これらの結晶構造を有する酸化物では、信号光の透過の際の光の損失が大きかった。
【0011】
酸化物は、重量比で全体の30%以上95%未満の割合で混合することが望ましい。なお、この酸化物を酸化アルミニウム,酸化鉄,酸化ガリウムとすると損失が更に低減でき、酸化鉄とすると屈折率変化が大きくなる。
【0012】
本発明の非線形光学薄膜は、非線形性を有するものであり、それを用いた光学素子は信号の光路の切り替え、または信号のオン・オフ,遮断等を行う素子である。
【0013】
一般的に材料の屈折率は光の強度等によってはほとんど変化しないが、非線形光学性を有する材料は、照射される光の強度等によって、屈折率が可逆的または不可逆的に変化する。屈折率変化量が大きい材料ほど、光路切り替えに必要な屈折率変化が得やすく、光路切り替えに要する時間は短縮されるため、性能の安定した高速に応答する光学素子を作製することができ高速のデータ処理が可能となる。本発明を適用した光学素子は、応答速度を1μs以下とすることが可能であり、励起条件,薄膜組成により、15ns以下、さらに0.5ps 以下にすることが可能である。
【0014】
また、薄膜の消衰係数が大きい材料では材料の光の透過率が低く、透過等によって信号が減衰・損失してしまうため、実用上は通信波長領域で0.04 以下程度とする必要がある。
【0015】
光学素子では、非線形光学薄膜の形成時の成長方向(つまり結晶の成長方向)に対し、60度以上の方向から信号光を照射する必要がある。このとき、薄膜を励起するための外場として、エネルギーを励起光源,電気,熱等により与えることができる。
【0016】
また、励起光源の波長が650nmから800nmであることが切り替えを行うには必要である。
【0017】
【実施例】
以下、図面を用いて、実施形態をさらに詳しく説明する。
【0018】
(実施例1)
図1に、本実施例で実施した素子及びその素子に用いた薄膜について示す。この図において、図1a)は今回検討した素子構造、図1b)は、その素子に用いた、コランダム型結晶構造を有する酸化物と非晶質酸化物成分からなる非線形光学薄膜の模式図である。図に示した各番号は、1:ガラス基板、2:金属酸化物とその粒界部分を形成する非晶質酸化物からなる非線形光学膜、3:信号光、4,6:出射光、5:ファイバ、7:非晶質部、8:酸素原子、9:金属原子をそれぞれ表す。また、A:信号光の入射角度、B:基板の傾斜角度である。
【0019】
ガラス基板1は、石英ガラスに酸化チタンをドープさせ、屈折率が1.65 になるように調整した。基板の屈折率を調整することにより、励起状態で透過する光学素子と反射する光学素子とのいずれかを選択して作製することができる。
【0020】
以下変化させる入射角度は、図1においてAで示す角度であり、入射する石英ガラス基板端面の角度Bと同一にしてある。その結果、信号光は常に垂直に基板1へ入射されることになる。
【0021】
次に、図2を用いて、本実施例の素子構造の製造方法について示す。
a) 10mm×10mm×1mmtの石英ガラス基板上に、非線形光学膜を膜厚750nmまで垂直に成膜した。膜厚は段差法及びエリプソメータを用いて算出した。
【0022】
本実施例では、RFスパッタリング法により成膜を行ったが、CVD,真空蒸着法により成膜することも可能である。但し、スパッタリングではより広い組成範囲の膜を形成できるので好ましい。
【0023】
Fe2O3とSiO2 をスパッタリングターゲットとし、重量比は70:30とした。スパッタリングの条件は、ターゲットは6インチサイズ、スパッタガスはAr+20%O2 とし、5mTorrで行った。
b) a)で非線形光学膜2を成膜した基板1及び、成膜しなかった基板1の側面を所定の角度で加工して、両者を図1b)に示すように貼り合わせた。
c) 加工した基板側面に石英系のファイバ5を接着剤により取り付け非線形光学素子とした。本実施例では、アラルダイトを接着剤として用いたが、光学接着剤を塗布し、後にUVで硬化させる方法を用いてもよい。
d) 図2c)のC−Dの断面図を用いて、面発光レーザによる励起光の照射方法を示す。面発光レーザ10を、非線形光学薄膜の所定の位置(信号光の分岐点)にレーザ光が照射できるよう非線形光学膜2に対して垂直の位置に装着した。面発光レーザの波長は775nmとした。面発光レーザから出射された励起光11は矢印に従って非線形光学膜2に照射される。
【0024】
次に、上記方法により作製した非線形光学素子のスイッチング特性を検証した。図3に、スイッチング特性の検証方法について示す。薄膜に入力する信号光の入射角度Aを70°に固定し、波長は通信光波長である1550nmとした。面発光レーザを薄膜部に照射しない場合には、信号光は4から出力された。図3において、G地点は励起光の照射位置である。図3のG地点に面発光レーザを0.3MW/m2 の強度で照射すると、出力光の位置は4から6に変化し、スイッチングができている事が確認された。この時の応答速度(励起光照射を停止した後、信号光が元の光路に戻るまでの時間)を測定すると15nsと非常に高速であった。
【0025】
更に、上記光学素子を構成する薄膜の屈折率変化を測定した。図4に測定系を示す。図4において、11:励起光、12:信号光、13:信号光の光源、14:信号光の受光器、15:コリメータレンズ、16:偏光子、17:検光子、
18:集光レンズである。
【0026】
この検討においては、ガラス基板1に非線形光学膜2のみを成膜した試料を用意した。測定光は試料に対してs偏光,p偏光とし、非線形光学膜2によるs偏光とp偏光の反射率の違いから屈折率を測定する楕円偏光法の光学系(エリプソメトリ)を用い、屈折率及び消衰係数を測定した。
【0027】
励起光11の光源として発振駆動制御が容易な波長775nmのフェムト秒レーザを用いた。このレーザの最大出力は8mWであり、レンズにより薄膜に集光させた。また、信号光(測定光)12には、通信で使われている1550nmのフェムト秒レーザを用いた。励起光,測定光、いずれも周波数は1kHzとし、1周期あたりのレーザ照射時間は0.2ps とした。応答時間の測定は励起光11及び信号光12の周波数間隔を変化させることにより算出した。また、この信号光(測定光)12によって試料が励起されてしまわないように、励起光11の強度に対して十分弱いレーザパワーで測定した。
【0028】
図5は、非線形光学膜2に励起光11を照射した時の屈折率変化の例を示す図である。レーザが照射されると薄膜の屈折率は1.55または1.62まで急激に変化し、照射を停止した後psオーダーで1.66 まで戻った。その後、屈折率はnsオーダーで1.68 に戻った。
【0029】
測定波長が1550nmの場合、励起光11を照射しない状態での屈折率は
1.68 であった。励起光11の強度に応じて屈折率は減少し、0.3MW/m2の強度では1.62,0.5MW/m2 の強度では1.55に変化した。
【0030】
さらに、励起光11のレーザ波長を変化させて、屈折率変化の応答特性を調べた。励起光11のパワーは先程の検討で使用した0.3MW/m2とした。表1に、励起光波長の変化に対する屈折率変化の応答特性を調べた結果を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
この表では、励起光波長,屈折率変化(Δn/n)を示している。この表から、励起光波長が650nm〜800nmにおいて、大きく減少し、2%以上変化していたことが分かった。
【0033】
この結果から、屈折率変化のメカニズムについて推測した。今回用いた薄膜中に含まれ、非線形光学効果を生じさせる主な成分はFe2O3であり、この物質の吸収端(光吸収の始まる波長)は500nm付近である。しかし、今回の結果では、励起光波長が吸収端の500nmではなく650nm〜800nmの場合において、屈折率変化が最も大きかった。この原因としては、2光子吸収が考えられる。2光子吸収とは、二種類の光エネルギーが合わさることによって非線形光学材料が励起される減少であり、励起エネルギーは光1のエネルギーと光2のエネルギーの和で示される。
【0034】
今回用いた信号光(波長1550nm),励起光(波長650〜800nm),吸収端(波長500nm)をそれぞれエネルギーに変換すると0.8eV,1.6〜1.9eV,2.5eVである。この関係を見ると、ほぼ「信号光のエネルギー+励起光のエネルギー=吸収端のエネルギー」である。この関係が2光子吸収と呼ばれる現象である。本実施例で、励起光波長が、吸収端の500nmではなく650nm〜800nmであるのは、この現象が起きたためであると考えられる。
【0035】
上記のように、鉄の酸化物を含有する非線形光学膜では、650〜800nmの光の照射により屈折率が大きく変化するため、上記非線形光学膜を適用した光学素子では、励起するための光源波長を650〜800nmに設定することが好ましい。
【0036】
また、同様にコランダム構造を有する鉄以外の酸化物についても、650から800nmの光の照射により大きく屈折率が変化することが推測される。同じ結晶構造を有する化合物の波長に対する光の吸収を測定すると類似する形状の結果を示すことから、同種のエネルギーバンドを有することが予測され、エネルギー励起される原因が同様であることから、鉄の酸化物の場合と近いエネルギーによって励起されると思われる。従って、コランダム構造を有する薄膜を用いて光学素子を作成する場合には、650nm〜800nm光を照射する励起光源を付加することが望ましい。
【0037】
次に、入射角度に対する薄膜の通信光波長(1.55μm)における屈折率変化,消衰係数,応答速度,スイッチング特性を検討した。表2に、上記方法により調べた入射角度に対する、非線形光学薄膜の屈折率変化,消衰係数,スイッチング特性,応答時間を示す。
【0038】
【表2】
【0039】
ここで、スイッチング特性とは、出力光の強度の90%以上が励起光の照射によって他方へ出力された場合を◎で表示し、切り替わらなかった場合及び出力光が検出器に殆ど検出されなかった場合を×で示してある。
【0040】
入射角度65°〜80°において、スイッチング特性が観測されていたことが分かった。入射角度60°〜80°においては、屈折率が2%以上減少し、60°以下及び80°以上では屈折率変化は2%以下であった。上記のような屈折率変化が小さい場合には、信号の透過・反射がスイッチングに充分な程度に切り替わらず、良好なスイッチング特性が得られなかった。
【0041】
(実施例2)
上記実施例1の非線形光学薄膜は結晶粒子を柱状に成長させた。基板から柱状成長すると光学的に異方性が大きい。以下、膜の異方性について検討するため、非線形光学薄膜を斜めに成長させた場合の結果を示す。図6は、その方法を示す図である。この図において、19はスパッタターゲット、1はガラス基板である。この図に示すように、スパッタターゲットに対し、基板を5°傾けて成膜させた。
【0042】
形成した薄膜部の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察すると、薄膜が基板に対して斜めに成長している様子が観測され、その方向が傾斜角度5°と一致していることを確認した。この方法で作成したガラス基板に対して、先程の作成法b)〜c)を行い、光学素子を作製した。
【0043】
図7に、素子に対する入射光の導入の仕方について示す。この図に示すように、傾斜をつけた方向に対して、入射光が進入するように調整した。
【0044】
傾斜角度を付けた試料に対して、入射角度に対する薄膜の通信光波長における屈折率変化,消衰係数,スイッチング特性,応答速度を検討した。表3に、その結果を示す。
【0045】
【表3】
【0046】
この結果を見ると、入射角度60°〜80°においてスイッチング特性が観測されていたことが分かった。これは、先程の結果と合わせると、スイッチング特性が始まる角度は、入射角度から傾斜角度を引いた60°に一致しており、成長方向と入射方向との成膜角度が少なくとも65°以上とすることが必須条件であることが分かった。
【0047】
つまり、薄膜に対して特定の方向に信号光を通過させると、光量が減衰せずに目的方向に進路変化するという結論が得られた。光の入射方向の指定によって、光の進路を効率的に切り替えすることができる。これは、薄膜に異方性があるため、柱状の結晶の横方向からの光に反応しにくく、入射角度により屈折率変化量が異なるためと考えられる。
【0048】
上記のようにコランダム型結晶構造を有する酸化物を含む薄膜を設けた光学素子は、更に光の入射方向を指定することによって、高速に信号光路を変更し、信号光の損失が少ない光スイッチを提供することができる。
【0049】
(実施例3)
非線形光学素子を用いて、光スイッチを作製した。面発光レーザを、光信号の中に書き込まれた切り替え情報と合わせて照射した。切り替え情報の長さは、現状のデータ転送速度に対応する20nsとした。その結果、入力光は切り替え情報に基づいて光路を切り替えられていることが分かった。
【0050】
上記のように、本発明の薄膜を用いることにより、効率的かつ低損失で光路の切り替えまたはオン・オフを行う素子を作製できる。なお、本実施例では、光路の切り替えについての実証を行ったが、光を吸収するフィルタにより出射光路4または6のいずれかの方向の出力光を吸収させることによって、光シャッター、またはヒューズとして用いることができる。
【0051】
(実施例4)
実施例4として、薄膜の組成を検討する実験を行った。信号光入射角度は70°と一定にした。まず、薄膜組成のうち、金属酸化物とガラス成分SiO2 の組成割合を重量比で70:30として、金属酸化物の種類を変更した。表4に結果を示す。
【0052】
【表4】
【0053】
この図において、左側から、金属酸化物の種類,広角X線回折法によって確認した結晶構造,波長1550nmの消衰係数,励起光を照射した時の屈折率変化,スイッチング特性の結果である。この結果、コランダム型結晶構造を有するFe2O3,Cr2O3,Al2O3,Ga2O3において、屈折率変化が2%以上変化し、消衰係数が0.04 以下と非常に良好であった。薄膜の消衰係数が大きい材料では材料の光の透過率が低く、透過等によって信号が減衰・損失してしまうため、実用上は通信波長領域で0.04 以下とする必要がある。
【0054】
更に、金属酸化物がFe2O3,Al2O3,Ga2O3である場合、消衰係数が0.03 以下であり、さらに信号の損失が低減されることが分かった。また、Fe2O3では屈折率の変化が大きくなっていた。
【0055】
上記の結果より、コランダム型結晶構造の結晶粒子を有する薄膜は消衰係数が小さく、信号の損失の少ない光学素子に適用可能であることがわかった。
【0056】
次に、薄膜中に含有される金属酸化物とガラス成分の比を検討した。Fe2O3とSiO2 の組成比を変化させた結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
左側から、酸化物の組成比,波長1550nmの消衰係数,励起光を照射した時の屈折率変化,応答速度,スイッチング特性の結果である。この結果、Fe2O3の量が30%以上になると、屈折率変化が2%以上と大きくなり、スイッチング特性が確認された。しかし、Fe2O3 が100%の薄膜は、消衰係数が0.07と高い為、屈折率変化が大きいにも拘らず、スイッチング特性が得られなかった。観察によると、Fe2O3の含有量が30%以下の薄膜では、鉄の化合物はSiO2との化合物を作っていたり、アモルファス状で存在したりしている。そのため、屈折率変化が小さいものと思われる。
【0059】
上記のFe2O3とSiO2 からなる薄膜に希土類元素酸化物を添加する検討を行った。希土類元素酸化物は、Er2O3を選択した。表6に、その結果を示す。
【0060】
【表6】
【0061】
この表において、左側から、添加したEr2O3,Fe2O3,SiO2 の組成割合,波長1550nmの消衰係数,励起光を照射した時の屈折率変化,応答速度,スイッチング特性の結果である。この場合のSiO2 量は全体の30%である。
【0062】
この結果、希土類元素酸化物の重量比が1〜30%になると、屈折率変化が3%以上と大きくなり、スイッチング特性も0.5ps 以下と非常に高速になっていたことが分かった。この結果は、希土類元素酸化物を含まない図5の結果と比較すると、より屈折率変化が大きくなり、さらに屈折率が戻るまでの時間のうち、nsオーダーで応答する部分が小さかった為と考えられる。
【0063】
なお、ここでは、希土類元素酸化物としてEr2O3のみの結果を示したが、他の希土類元素酸化物においても、同様の特性向上が観測された。上記のように、本発明の非線形光学材料は希土類元素の添加により応答時間が短縮され、高速な光スイッチに適用が可能となる。
【0064】
次に、表4において、ZnOでは屈折率がほとんど変化せず、Fe2O3では変化していたことに注目して、ZnOを添加して非線形光学材料の検討を行った。表7に、この結果を示す。
【0065】
【表7】
【0066】
表7において、左から、Fe2O3とZnOの組成比,平均粒径,屈折率変化,スイッチング特性である。SiO2 は全体量の30wt%添加した。平均粒径は、平面透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)により得られたTEM像を観察することにより求めた。
【0067】
加速電圧は200kVとした。得られたTEM像から粒子の面積を画像解析装置によって計算し、その面積を有する円を仮定し、その直径をもって粒径とした。1つの試料から100〜300個程度の粒子の粒径を解析し、その粒径の平均値を平均粒径とした。
【0068】
ZnO組成と平均粒径の関係を見ると、ZnOを混入させていくに従い、平均粒径が大きくなっていたことが分かった。さらに、Fe2O3にZnOを30%以上入れた場合は、屈折率変化が小さくなり、スイッチングが出来ていなかった。これは、平均粒径が25nmを超えたためであると推測できる。
【0069】
非線形光学材料の屈折率変化の起きるメカニズムのひとつとして、微結晶の量子効果によって物質のエネルギーバンドに影響が与えられていることが挙げられる。特定の微粒子を含む材料では、励起光を照射すると微粒子の分極が生じてさらにエネルギーバンドに影響があり、大きく屈折率が生じていると予測される。上記の結果より、量子効果の起きる上限は25nmであると考えられる。従って、スイッチング特性は結晶粒子の粒径に左右されており、平均粒径が25nm以下の場合にスイッチング特性がよいことがわかった。
【0070】
以上の本実施例から、薄膜組成の最適化によって応答時間が0.5ps 〜15nsと非常に高速で光信号の損失の少ない光学素子が作製できることがわかった。
【0071】
(実施例5)
実施例1〜4で外場としてレーザ光(励起光)を用いた。本実施例5は、光学薄膜の屈折率を変化させるための外場として電気,ヒーターを用いる検討を行った。
【0072】
図8に模式図を示す。図8a)において、20は薄膜の両面上に形成されたCr電極である。Cr電極は、スパッタリング法により膜厚100nm形成した。その際、信号光が電極に入射しないよう、電極形成後、イオンミリング法によりマスクを用いて信号光が入射する周辺部の電極を約10μm除去した。
【0073】
ここで、Cr電極24,25の間にパルス電圧(パルス1つの幅10ns,パルス間の間隔1kHz)をかけ、非線形光学膜2に40Vの電圧を印加した。その結果、励起光11を照射する実施例と同様に、出射光の光路が変わることを観測できた。
【0074】
また、図8b)のようにヒーター線21を配置し、ヒーター線に幅1μs,間隔1kHz,印加電圧40Vのパルス電圧を印加し、薄膜を加熱してスイッチングを行った。この時、加熱を中止した際、薄膜からすぐに熱が逃げるように薄膜の周囲に熱放射板22を設置した。その結果、励起光照射,電圧を印加した場合と同様に、熱を加えた場合にも出射光の光路が変わることが確認された。
【0075】
本実施例により、電気駆動,熱駆動型の光スイッチを製造できることが判明した。但し、応答時間は、外場が電気の場合は100nsオーダー、熱の場合は2μsオーダーであり、外場に励起光を用いた場合に最も高速のスイッチの作製が可能である。
【0076】
(実施例6)
スイッチングを行うためには、薄膜の屈折率を、基板の屈折率より大きい値と基板の屈折率よりも小さい値との間で変化させる必要がある。しかしながら、基板の組成・形成条件等により基板の屈折率が合致しない場合には、非線形光学膜2の上下に、透過率が高く適当な屈折率を有する屈折率調整膜を形成することができる。つまり、非線形光学膜2の屈折率(ex:1.8)が光の照射により2.0に変化する場合には、基板1の屈折率は1.8〜2.0の間の値、例えば1.9 に設定する必要がある。しかし、基板の屈折率が1.6 の場合には、その内側に調整膜を作製することができる。
【0077】
基板1と非線形光学膜2の間にそれぞれ屈折率調整膜として窒化珪素の薄膜23をスパッタリングにより形成した光学素子を作製した。図9に模式図を示す。Si3N4の屈折率は1.9〜2.0であり、非常に透過率が高い。従って、非線形光学膜2の屈折率変化領域が基板1と合致しない場合でも、基板に屈折率調整膜を設けることにより、光学素子の作製が可能である。また、非線形光学薄膜に対して屈折率の合致しない基板を用いて光学素子を作成することができる。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、光学素子に適用可能な非線形光学材料と、信号の損失の少ない光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非線形光学素子と、その薄膜中に含有される酸化物の結晶構造を示す図である。
【図2】図1の非線形光学素子の製造工程,面発光レーザと光学素子の位置関係を示す図である。
【図3】面発光レーザ10からの励起光11を照射された光スイッチの構造を示す図である。
【図4】薄膜の屈折率を測定する測定系を示す図である。
【図5】非線形光学膜2に励起光11を照射したときの屈折率変化の一例を示す図である。
【図6】傾斜角度をつけて成膜する方法を示す図である。
【図7】傾斜角度をつけて成膜した薄膜を含む非線形光学素子を示す図である。
【図8】a)非線形光学素子を電気により駆動させる方法を示す図である。b)非線形光学素子をヒーターにより駆動させる方法を示す図である。
【図9】屈折率調整膜を作成した光学素子を示す図である。
【符号の説明】
1…ガラス基板、2…非線形光学膜、3…信号光の入射光路、4…信号光の出射光路、5…ファイバ、6…信号光の出射光路、7…非晶質部、8…酸素原子、9…金属原子、10…面発光レーザ、11…励起光、12…信号光、13…信号光光源、14…信号光受光器、15…コリメータレンズ、16…偏光子、17…検光子、18…集光レンズ、19…ターゲット、20…Cr電極、21…ヒーター線、22…熱放射板、23…屈折率調整膜。
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号の光路の切り替えまたは信号のオン・オフを行う素子に用いるための非線形光学性を有する非線形光学膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光情報のスイッチングには、中継点において、一度光情報を電気情報に変換するに光電変換手段と電気情報を光情報に逆変換する電光変換手段とが必要であったが、より高速な光通信システムを構築するため、光情報を直接スイッチングする光スイッチ(メカニカル型光スイッチ,平面光導波路型光スイッチ,ミラー型光スイッチ,バブル型スイッチなど)が開発されている(非特許文献1)。
【0003】
さらに高速なスイッチングの可能な光スイッチの開発を目的として、非線形光学性を有する材料により更なる高速応答性を達成しようという動きがある。強磁性酸化物の半導体微粒子を分散したガラス状薄膜を用いることによって、高速でかつ大きな非線形光学性が出ると報告されている(特許文献1,2)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−224262号
【特許文献2】
特開2002−72264号
【非特許文献1】
『日経エレクトロニクス』No.8,2000年1月29日号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような薄膜を用いた光スイッチでは、信号の光路切り替えを行う際、薄膜による吸収・分散が起こり、信号が減衰するという問題があった。
【0006】
本発明では上記課題を解決する薄膜と、それを用いた光学素子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の特徴は、コランダム型結晶構造を有する酸化物粒子と、その周囲の非晶質の粒界からなる薄膜である。コランダム型構造とは、六方晶の内部の空隙中にもう1種類の原子が入っている構造であり、広角X線やTEMの回折像によって識別することが可能である。このような薄膜は、光学素子に適用できる充分な屈折率変化量を有し、信号の損失が少ない。
【0008】
上記酸化物粒子は、平均粒径が25nm以下であると良好なスイッチング特性を有する。上記酸化物粒子として、酸化アルミニウム,酸化鉄,酸化ガリウムを含有するものは、損失をさらに低減するため望ましい。また、酸化鉄は薄膜の屈折率変化量を大きくするため望ましい。これらの酸化物粒子となる材料酸化物は、薄膜全体に対し重量比で30%以上95%未満の割合で添加することができる。
【0009】
上記金属酸化物材料には、希土類元素酸化物を重量比で1〜20%添加することができる。希土類元素を添加した本発明は、高速に屈折率が変化する性質を有するので好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
発明者らが光スイッチに最適な非線形光学材料について鋭意検討した結果、コランダム型結晶構造を有する柱状の酸化物粒子が非晶質粒界に覆われている構造を有する非線形光学薄膜の屈折率変化が大きく、光の透過を妨げにくいことがわかった。つまり、本発明は酸化物のコランダム型結晶粒子とその間を満たす非晶質の部分からなる。この材料は一定強度以上の光の照射により屈折率が大きく変化するため、基板上に形成し、信号光の光路変換を行う光スイッチ等の光学素子に適用することが可能である。更に、波長1.55μmの光の消衰係数を0.04以下とすることができ、この材料を適用した低損失な特性を有する光学素子が得られる。この場合、信号の透過率80%以上(信号損失20%以下)の光学素子を作製することが可能となる。発明者らは、NaCl型結晶構造を有する化合物(ex:FeO),スピネル型結晶構造を有する化合物(ex:Fe3O4)を有する光学素子についても検討を行ったが、これらの結晶構造を有する酸化物では、信号光の透過の際の光の損失が大きかった。
【0011】
酸化物は、重量比で全体の30%以上95%未満の割合で混合することが望ましい。なお、この酸化物を酸化アルミニウム,酸化鉄,酸化ガリウムとすると損失が更に低減でき、酸化鉄とすると屈折率変化が大きくなる。
【0012】
本発明の非線形光学薄膜は、非線形性を有するものであり、それを用いた光学素子は信号の光路の切り替え、または信号のオン・オフ,遮断等を行う素子である。
【0013】
一般的に材料の屈折率は光の強度等によってはほとんど変化しないが、非線形光学性を有する材料は、照射される光の強度等によって、屈折率が可逆的または不可逆的に変化する。屈折率変化量が大きい材料ほど、光路切り替えに必要な屈折率変化が得やすく、光路切り替えに要する時間は短縮されるため、性能の安定した高速に応答する光学素子を作製することができ高速のデータ処理が可能となる。本発明を適用した光学素子は、応答速度を1μs以下とすることが可能であり、励起条件,薄膜組成により、15ns以下、さらに0.5ps 以下にすることが可能である。
【0014】
また、薄膜の消衰係数が大きい材料では材料の光の透過率が低く、透過等によって信号が減衰・損失してしまうため、実用上は通信波長領域で0.04 以下程度とする必要がある。
【0015】
光学素子では、非線形光学薄膜の形成時の成長方向(つまり結晶の成長方向)に対し、60度以上の方向から信号光を照射する必要がある。このとき、薄膜を励起するための外場として、エネルギーを励起光源,電気,熱等により与えることができる。
【0016】
また、励起光源の波長が650nmから800nmであることが切り替えを行うには必要である。
【0017】
【実施例】
以下、図面を用いて、実施形態をさらに詳しく説明する。
【0018】
(実施例1)
図1に、本実施例で実施した素子及びその素子に用いた薄膜について示す。この図において、図1a)は今回検討した素子構造、図1b)は、その素子に用いた、コランダム型結晶構造を有する酸化物と非晶質酸化物成分からなる非線形光学薄膜の模式図である。図に示した各番号は、1:ガラス基板、2:金属酸化物とその粒界部分を形成する非晶質酸化物からなる非線形光学膜、3:信号光、4,6:出射光、5:ファイバ、7:非晶質部、8:酸素原子、9:金属原子をそれぞれ表す。また、A:信号光の入射角度、B:基板の傾斜角度である。
【0019】
ガラス基板1は、石英ガラスに酸化チタンをドープさせ、屈折率が1.65 になるように調整した。基板の屈折率を調整することにより、励起状態で透過する光学素子と反射する光学素子とのいずれかを選択して作製することができる。
【0020】
以下変化させる入射角度は、図1においてAで示す角度であり、入射する石英ガラス基板端面の角度Bと同一にしてある。その結果、信号光は常に垂直に基板1へ入射されることになる。
【0021】
次に、図2を用いて、本実施例の素子構造の製造方法について示す。
a) 10mm×10mm×1mmtの石英ガラス基板上に、非線形光学膜を膜厚750nmまで垂直に成膜した。膜厚は段差法及びエリプソメータを用いて算出した。
【0022】
本実施例では、RFスパッタリング法により成膜を行ったが、CVD,真空蒸着法により成膜することも可能である。但し、スパッタリングではより広い組成範囲の膜を形成できるので好ましい。
【0023】
Fe2O3とSiO2 をスパッタリングターゲットとし、重量比は70:30とした。スパッタリングの条件は、ターゲットは6インチサイズ、スパッタガスはAr+20%O2 とし、5mTorrで行った。
b) a)で非線形光学膜2を成膜した基板1及び、成膜しなかった基板1の側面を所定の角度で加工して、両者を図1b)に示すように貼り合わせた。
c) 加工した基板側面に石英系のファイバ5を接着剤により取り付け非線形光学素子とした。本実施例では、アラルダイトを接着剤として用いたが、光学接着剤を塗布し、後にUVで硬化させる方法を用いてもよい。
d) 図2c)のC−Dの断面図を用いて、面発光レーザによる励起光の照射方法を示す。面発光レーザ10を、非線形光学薄膜の所定の位置(信号光の分岐点)にレーザ光が照射できるよう非線形光学膜2に対して垂直の位置に装着した。面発光レーザの波長は775nmとした。面発光レーザから出射された励起光11は矢印に従って非線形光学膜2に照射される。
【0024】
次に、上記方法により作製した非線形光学素子のスイッチング特性を検証した。図3に、スイッチング特性の検証方法について示す。薄膜に入力する信号光の入射角度Aを70°に固定し、波長は通信光波長である1550nmとした。面発光レーザを薄膜部に照射しない場合には、信号光は4から出力された。図3において、G地点は励起光の照射位置である。図3のG地点に面発光レーザを0.3MW/m2 の強度で照射すると、出力光の位置は4から6に変化し、スイッチングができている事が確認された。この時の応答速度(励起光照射を停止した後、信号光が元の光路に戻るまでの時間)を測定すると15nsと非常に高速であった。
【0025】
更に、上記光学素子を構成する薄膜の屈折率変化を測定した。図4に測定系を示す。図4において、11:励起光、12:信号光、13:信号光の光源、14:信号光の受光器、15:コリメータレンズ、16:偏光子、17:検光子、
18:集光レンズである。
【0026】
この検討においては、ガラス基板1に非線形光学膜2のみを成膜した試料を用意した。測定光は試料に対してs偏光,p偏光とし、非線形光学膜2によるs偏光とp偏光の反射率の違いから屈折率を測定する楕円偏光法の光学系(エリプソメトリ)を用い、屈折率及び消衰係数を測定した。
【0027】
励起光11の光源として発振駆動制御が容易な波長775nmのフェムト秒レーザを用いた。このレーザの最大出力は8mWであり、レンズにより薄膜に集光させた。また、信号光(測定光)12には、通信で使われている1550nmのフェムト秒レーザを用いた。励起光,測定光、いずれも周波数は1kHzとし、1周期あたりのレーザ照射時間は0.2ps とした。応答時間の測定は励起光11及び信号光12の周波数間隔を変化させることにより算出した。また、この信号光(測定光)12によって試料が励起されてしまわないように、励起光11の強度に対して十分弱いレーザパワーで測定した。
【0028】
図5は、非線形光学膜2に励起光11を照射した時の屈折率変化の例を示す図である。レーザが照射されると薄膜の屈折率は1.55または1.62まで急激に変化し、照射を停止した後psオーダーで1.66 まで戻った。その後、屈折率はnsオーダーで1.68 に戻った。
【0029】
測定波長が1550nmの場合、励起光11を照射しない状態での屈折率は
1.68 であった。励起光11の強度に応じて屈折率は減少し、0.3MW/m2の強度では1.62,0.5MW/m2 の強度では1.55に変化した。
【0030】
さらに、励起光11のレーザ波長を変化させて、屈折率変化の応答特性を調べた。励起光11のパワーは先程の検討で使用した0.3MW/m2とした。表1に、励起光波長の変化に対する屈折率変化の応答特性を調べた結果を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
この表では、励起光波長,屈折率変化(Δn/n)を示している。この表から、励起光波長が650nm〜800nmにおいて、大きく減少し、2%以上変化していたことが分かった。
【0033】
この結果から、屈折率変化のメカニズムについて推測した。今回用いた薄膜中に含まれ、非線形光学効果を生じさせる主な成分はFe2O3であり、この物質の吸収端(光吸収の始まる波長)は500nm付近である。しかし、今回の結果では、励起光波長が吸収端の500nmではなく650nm〜800nmの場合において、屈折率変化が最も大きかった。この原因としては、2光子吸収が考えられる。2光子吸収とは、二種類の光エネルギーが合わさることによって非線形光学材料が励起される減少であり、励起エネルギーは光1のエネルギーと光2のエネルギーの和で示される。
【0034】
今回用いた信号光(波長1550nm),励起光(波長650〜800nm),吸収端(波長500nm)をそれぞれエネルギーに変換すると0.8eV,1.6〜1.9eV,2.5eVである。この関係を見ると、ほぼ「信号光のエネルギー+励起光のエネルギー=吸収端のエネルギー」である。この関係が2光子吸収と呼ばれる現象である。本実施例で、励起光波長が、吸収端の500nmではなく650nm〜800nmであるのは、この現象が起きたためであると考えられる。
【0035】
上記のように、鉄の酸化物を含有する非線形光学膜では、650〜800nmの光の照射により屈折率が大きく変化するため、上記非線形光学膜を適用した光学素子では、励起するための光源波長を650〜800nmに設定することが好ましい。
【0036】
また、同様にコランダム構造を有する鉄以外の酸化物についても、650から800nmの光の照射により大きく屈折率が変化することが推測される。同じ結晶構造を有する化合物の波長に対する光の吸収を測定すると類似する形状の結果を示すことから、同種のエネルギーバンドを有することが予測され、エネルギー励起される原因が同様であることから、鉄の酸化物の場合と近いエネルギーによって励起されると思われる。従って、コランダム構造を有する薄膜を用いて光学素子を作成する場合には、650nm〜800nm光を照射する励起光源を付加することが望ましい。
【0037】
次に、入射角度に対する薄膜の通信光波長(1.55μm)における屈折率変化,消衰係数,応答速度,スイッチング特性を検討した。表2に、上記方法により調べた入射角度に対する、非線形光学薄膜の屈折率変化,消衰係数,スイッチング特性,応答時間を示す。
【0038】
【表2】
【0039】
ここで、スイッチング特性とは、出力光の強度の90%以上が励起光の照射によって他方へ出力された場合を◎で表示し、切り替わらなかった場合及び出力光が検出器に殆ど検出されなかった場合を×で示してある。
【0040】
入射角度65°〜80°において、スイッチング特性が観測されていたことが分かった。入射角度60°〜80°においては、屈折率が2%以上減少し、60°以下及び80°以上では屈折率変化は2%以下であった。上記のような屈折率変化が小さい場合には、信号の透過・反射がスイッチングに充分な程度に切り替わらず、良好なスイッチング特性が得られなかった。
【0041】
(実施例2)
上記実施例1の非線形光学薄膜は結晶粒子を柱状に成長させた。基板から柱状成長すると光学的に異方性が大きい。以下、膜の異方性について検討するため、非線形光学薄膜を斜めに成長させた場合の結果を示す。図6は、その方法を示す図である。この図において、19はスパッタターゲット、1はガラス基板である。この図に示すように、スパッタターゲットに対し、基板を5°傾けて成膜させた。
【0042】
形成した薄膜部の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察すると、薄膜が基板に対して斜めに成長している様子が観測され、その方向が傾斜角度5°と一致していることを確認した。この方法で作成したガラス基板に対して、先程の作成法b)〜c)を行い、光学素子を作製した。
【0043】
図7に、素子に対する入射光の導入の仕方について示す。この図に示すように、傾斜をつけた方向に対して、入射光が進入するように調整した。
【0044】
傾斜角度を付けた試料に対して、入射角度に対する薄膜の通信光波長における屈折率変化,消衰係数,スイッチング特性,応答速度を検討した。表3に、その結果を示す。
【0045】
【表3】
【0046】
この結果を見ると、入射角度60°〜80°においてスイッチング特性が観測されていたことが分かった。これは、先程の結果と合わせると、スイッチング特性が始まる角度は、入射角度から傾斜角度を引いた60°に一致しており、成長方向と入射方向との成膜角度が少なくとも65°以上とすることが必須条件であることが分かった。
【0047】
つまり、薄膜に対して特定の方向に信号光を通過させると、光量が減衰せずに目的方向に進路変化するという結論が得られた。光の入射方向の指定によって、光の進路を効率的に切り替えすることができる。これは、薄膜に異方性があるため、柱状の結晶の横方向からの光に反応しにくく、入射角度により屈折率変化量が異なるためと考えられる。
【0048】
上記のようにコランダム型結晶構造を有する酸化物を含む薄膜を設けた光学素子は、更に光の入射方向を指定することによって、高速に信号光路を変更し、信号光の損失が少ない光スイッチを提供することができる。
【0049】
(実施例3)
非線形光学素子を用いて、光スイッチを作製した。面発光レーザを、光信号の中に書き込まれた切り替え情報と合わせて照射した。切り替え情報の長さは、現状のデータ転送速度に対応する20nsとした。その結果、入力光は切り替え情報に基づいて光路を切り替えられていることが分かった。
【0050】
上記のように、本発明の薄膜を用いることにより、効率的かつ低損失で光路の切り替えまたはオン・オフを行う素子を作製できる。なお、本実施例では、光路の切り替えについての実証を行ったが、光を吸収するフィルタにより出射光路4または6のいずれかの方向の出力光を吸収させることによって、光シャッター、またはヒューズとして用いることができる。
【0051】
(実施例4)
実施例4として、薄膜の組成を検討する実験を行った。信号光入射角度は70°と一定にした。まず、薄膜組成のうち、金属酸化物とガラス成分SiO2 の組成割合を重量比で70:30として、金属酸化物の種類を変更した。表4に結果を示す。
【0052】
【表4】
【0053】
この図において、左側から、金属酸化物の種類,広角X線回折法によって確認した結晶構造,波長1550nmの消衰係数,励起光を照射した時の屈折率変化,スイッチング特性の結果である。この結果、コランダム型結晶構造を有するFe2O3,Cr2O3,Al2O3,Ga2O3において、屈折率変化が2%以上変化し、消衰係数が0.04 以下と非常に良好であった。薄膜の消衰係数が大きい材料では材料の光の透過率が低く、透過等によって信号が減衰・損失してしまうため、実用上は通信波長領域で0.04 以下とする必要がある。
【0054】
更に、金属酸化物がFe2O3,Al2O3,Ga2O3である場合、消衰係数が0.03 以下であり、さらに信号の損失が低減されることが分かった。また、Fe2O3では屈折率の変化が大きくなっていた。
【0055】
上記の結果より、コランダム型結晶構造の結晶粒子を有する薄膜は消衰係数が小さく、信号の損失の少ない光学素子に適用可能であることがわかった。
【0056】
次に、薄膜中に含有される金属酸化物とガラス成分の比を検討した。Fe2O3とSiO2 の組成比を変化させた結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
左側から、酸化物の組成比,波長1550nmの消衰係数,励起光を照射した時の屈折率変化,応答速度,スイッチング特性の結果である。この結果、Fe2O3の量が30%以上になると、屈折率変化が2%以上と大きくなり、スイッチング特性が確認された。しかし、Fe2O3 が100%の薄膜は、消衰係数が0.07と高い為、屈折率変化が大きいにも拘らず、スイッチング特性が得られなかった。観察によると、Fe2O3の含有量が30%以下の薄膜では、鉄の化合物はSiO2との化合物を作っていたり、アモルファス状で存在したりしている。そのため、屈折率変化が小さいものと思われる。
【0059】
上記のFe2O3とSiO2 からなる薄膜に希土類元素酸化物を添加する検討を行った。希土類元素酸化物は、Er2O3を選択した。表6に、その結果を示す。
【0060】
【表6】
【0061】
この表において、左側から、添加したEr2O3,Fe2O3,SiO2 の組成割合,波長1550nmの消衰係数,励起光を照射した時の屈折率変化,応答速度,スイッチング特性の結果である。この場合のSiO2 量は全体の30%である。
【0062】
この結果、希土類元素酸化物の重量比が1〜30%になると、屈折率変化が3%以上と大きくなり、スイッチング特性も0.5ps 以下と非常に高速になっていたことが分かった。この結果は、希土類元素酸化物を含まない図5の結果と比較すると、より屈折率変化が大きくなり、さらに屈折率が戻るまでの時間のうち、nsオーダーで応答する部分が小さかった為と考えられる。
【0063】
なお、ここでは、希土類元素酸化物としてEr2O3のみの結果を示したが、他の希土類元素酸化物においても、同様の特性向上が観測された。上記のように、本発明の非線形光学材料は希土類元素の添加により応答時間が短縮され、高速な光スイッチに適用が可能となる。
【0064】
次に、表4において、ZnOでは屈折率がほとんど変化せず、Fe2O3では変化していたことに注目して、ZnOを添加して非線形光学材料の検討を行った。表7に、この結果を示す。
【0065】
【表7】
【0066】
表7において、左から、Fe2O3とZnOの組成比,平均粒径,屈折率変化,スイッチング特性である。SiO2 は全体量の30wt%添加した。平均粒径は、平面透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)により得られたTEM像を観察することにより求めた。
【0067】
加速電圧は200kVとした。得られたTEM像から粒子の面積を画像解析装置によって計算し、その面積を有する円を仮定し、その直径をもって粒径とした。1つの試料から100〜300個程度の粒子の粒径を解析し、その粒径の平均値を平均粒径とした。
【0068】
ZnO組成と平均粒径の関係を見ると、ZnOを混入させていくに従い、平均粒径が大きくなっていたことが分かった。さらに、Fe2O3にZnOを30%以上入れた場合は、屈折率変化が小さくなり、スイッチングが出来ていなかった。これは、平均粒径が25nmを超えたためであると推測できる。
【0069】
非線形光学材料の屈折率変化の起きるメカニズムのひとつとして、微結晶の量子効果によって物質のエネルギーバンドに影響が与えられていることが挙げられる。特定の微粒子を含む材料では、励起光を照射すると微粒子の分極が生じてさらにエネルギーバンドに影響があり、大きく屈折率が生じていると予測される。上記の結果より、量子効果の起きる上限は25nmであると考えられる。従って、スイッチング特性は結晶粒子の粒径に左右されており、平均粒径が25nm以下の場合にスイッチング特性がよいことがわかった。
【0070】
以上の本実施例から、薄膜組成の最適化によって応答時間が0.5ps 〜15nsと非常に高速で光信号の損失の少ない光学素子が作製できることがわかった。
【0071】
(実施例5)
実施例1〜4で外場としてレーザ光(励起光)を用いた。本実施例5は、光学薄膜の屈折率を変化させるための外場として電気,ヒーターを用いる検討を行った。
【0072】
図8に模式図を示す。図8a)において、20は薄膜の両面上に形成されたCr電極である。Cr電極は、スパッタリング法により膜厚100nm形成した。その際、信号光が電極に入射しないよう、電極形成後、イオンミリング法によりマスクを用いて信号光が入射する周辺部の電極を約10μm除去した。
【0073】
ここで、Cr電極24,25の間にパルス電圧(パルス1つの幅10ns,パルス間の間隔1kHz)をかけ、非線形光学膜2に40Vの電圧を印加した。その結果、励起光11を照射する実施例と同様に、出射光の光路が変わることを観測できた。
【0074】
また、図8b)のようにヒーター線21を配置し、ヒーター線に幅1μs,間隔1kHz,印加電圧40Vのパルス電圧を印加し、薄膜を加熱してスイッチングを行った。この時、加熱を中止した際、薄膜からすぐに熱が逃げるように薄膜の周囲に熱放射板22を設置した。その結果、励起光照射,電圧を印加した場合と同様に、熱を加えた場合にも出射光の光路が変わることが確認された。
【0075】
本実施例により、電気駆動,熱駆動型の光スイッチを製造できることが判明した。但し、応答時間は、外場が電気の場合は100nsオーダー、熱の場合は2μsオーダーであり、外場に励起光を用いた場合に最も高速のスイッチの作製が可能である。
【0076】
(実施例6)
スイッチングを行うためには、薄膜の屈折率を、基板の屈折率より大きい値と基板の屈折率よりも小さい値との間で変化させる必要がある。しかしながら、基板の組成・形成条件等により基板の屈折率が合致しない場合には、非線形光学膜2の上下に、透過率が高く適当な屈折率を有する屈折率調整膜を形成することができる。つまり、非線形光学膜2の屈折率(ex:1.8)が光の照射により2.0に変化する場合には、基板1の屈折率は1.8〜2.0の間の値、例えば1.9 に設定する必要がある。しかし、基板の屈折率が1.6 の場合には、その内側に調整膜を作製することができる。
【0077】
基板1と非線形光学膜2の間にそれぞれ屈折率調整膜として窒化珪素の薄膜23をスパッタリングにより形成した光学素子を作製した。図9に模式図を示す。Si3N4の屈折率は1.9〜2.0であり、非常に透過率が高い。従って、非線形光学膜2の屈折率変化領域が基板1と合致しない場合でも、基板に屈折率調整膜を設けることにより、光学素子の作製が可能である。また、非線形光学薄膜に対して屈折率の合致しない基板を用いて光学素子を作成することができる。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、光学素子に適用可能な非線形光学材料と、信号の損失の少ない光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非線形光学素子と、その薄膜中に含有される酸化物の結晶構造を示す図である。
【図2】図1の非線形光学素子の製造工程,面発光レーザと光学素子の位置関係を示す図である。
【図3】面発光レーザ10からの励起光11を照射された光スイッチの構造を示す図である。
【図4】薄膜の屈折率を測定する測定系を示す図である。
【図5】非線形光学膜2に励起光11を照射したときの屈折率変化の一例を示す図である。
【図6】傾斜角度をつけて成膜する方法を示す図である。
【図7】傾斜角度をつけて成膜した薄膜を含む非線形光学素子を示す図である。
【図8】a)非線形光学素子を電気により駆動させる方法を示す図である。b)非線形光学素子をヒーターにより駆動させる方法を示す図である。
【図9】屈折率調整膜を作成した光学素子を示す図である。
【符号の説明】
1…ガラス基板、2…非線形光学膜、3…信号光の入射光路、4…信号光の出射光路、5…ファイバ、6…信号光の出射光路、7…非晶質部、8…酸素原子、9…金属原子、10…面発光レーザ、11…励起光、12…信号光、13…信号光光源、14…信号光受光器、15…コリメータレンズ、16…偏光子、17…検光子、18…集光レンズ、19…ターゲット、20…Cr電極、21…ヒーター線、22…熱放射板、23…屈折率調整膜。
Claims (10)
- 酸化物の結晶粒子と、該結晶粒子の間に存在する非晶質部からなり、入射光強度により屈折率が変化する非線形光学膜であって、該結晶粒子はコランダム型結晶構造を有することを特徴とする非線形光学膜。
- 粒子の集合体から構成され、該粒子は非晶質粒界に覆われている非線形光学膜であって、該非線形光学膜の波長1.55μmの光の消衰係数は0.04以下であり、該粒子はコランダム構造を有し、平均粒径25nm以下の金属酸化物であることを特徴とする非線形光学膜。
- 請求項1に記載された非線形光学膜であって、該結晶粒子は酸化アルミニウム,酸化鉄,酸化ガリウムのいずれかの結晶粒子であることを特徴とする非線形光学膜。
- 請求項1に記載された非線形光学膜であって、該結晶粒子を形成する酸化物は重量比で全重量に対し30%以上95%未満含有されていることを特徴とする非線形光学膜。
- 請求項1に記載された非線形光学膜であって、酸化物中に希土類元素酸化物を重量比で1%以上20%以下含有することを特徴とする非線形光学膜。
- 入射光強度により屈折率が変化する非線形光学膜を有し、信号光を複数の進路へ切り替える光学素子であって、該非線形光学膜はコランダム型結晶構造を有する酸化物の結晶粒子と、該結晶粒子の間に存在する非晶質部からなることを特徴とする光学素子。
- 請求項6に記載された光学素子であって、該コランダム型結晶の成長方向に対して60度以下の方向から信号光を入射されることを特徴とする光学素子。
- 請求項6に記載された光学素子であって、該光学素子に励起光,電圧または熱のいずれかの外場を与えることにより信号光の進路を切り替えることを特徴とする光学素子。
- 基板と、非線形光学膜と、光信号を入射するための入射光路と、光信号を出射するための出射光路と、該非線形光学膜の屈折率を変化させる励起手段とを有する光スイッチであって、該非線形光学膜は酸化物の結晶粒子と該結晶粒子の間に存在する非晶質部からなり、該結晶粒子はコランダム型結晶構造を有することを特徴とする光スイッチ。
- 請求項9に記載された光スイッチにおいて、該光信号を入射するための入射光路が、コランダム型結晶の成長方向に対して60度以下の方向に形成されていることを特徴とする光スイッチ。
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