JP3180842B2 - ダイヤモンド膜の製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド膜の製造方法

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JP3180842B2
JP3180842B2 JP26079492A JP26079492A JP3180842B2 JP 3180842 B2 JP3180842 B2 JP 3180842B2 JP 26079492 A JP26079492 A JP 26079492A JP 26079492 A JP26079492 A JP 26079492A JP 3180842 B2 JP3180842 B2 JP 3180842B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアーク放電を利用してダ
イヤモンド膜を気相合成する製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】近年,ダイヤモンド膜の低圧気相合成方法
としては,種々のものが提案されている。まず,第1
に,熱フィラメントCVD法がある。これは,800〜
1000℃に加熱した基板の直上にタングステンフィラ
メントを設け,フィラメントを2000℃以上に加熱
し,水素と炭化水素ガス(例えばCH4 )をフィラメン
トを通して基板に吹きつけ,基板上にダイヤモンド膜を
成長させる方法である。
【0003】第2に,マイクロ波プラズマCVD法が知
られている。これは,数百ワットのマイクロ波により,
水素と炭化水素ガスの混合ガス気体にプラズマを発生さ
せ,プラズマ内に設置された基板上にダイヤモンド膜を
成長させる方法である。上記基板はマイクロ波により加
熱され,700から900℃程度の温度になっている。
これら2種類の合成法では,原子状水素が,CH4 の分
解を促進し,さらに無定形炭素などダイヤモンド以外の
合成物質を選択的にエッチングする作用を担っており,
この原子状水素が重要な役割をしている。
【0004】しかしながら,フィラメントを高温とする
熱フィラメントCVD法ではフィラメントが断線するト
ラブルが多く実用的とは言えない。又,タングステンの
融点を考えるとフィラメントの温度は2000℃程度で
それ以上の温度では断線を招いてしまい,十分な原料ガ
ス分解ができないという問題がある。
【0005】一方,マイクロ波プラズマを用いた合成法
ではプラズマ室の寸法が制約されることにより大面積の
試料への適用が困難であり,さらに原料ガス,特に水素
の分解が不十分となるという問題がある。第3の方法と
して,イオンビームを用いた合成法がある。これは,炭
素のイオンビームを基板に当てることにより,ダイヤモ
ンド膜を成長させようとするものである。しかし,この
方法で形成されたダイヤモンド膜は,アモルファス等の
不純物を多く含むという問題があった。
【0006】そこで,第4の方法として,例えば特開昭
63−176399号公報,あるいは特開平1−201
097号公報に示される製造方法が提案されている。こ
の方法は,まず対向した電極にアーク放電を生じさせ,
原料ガスをアーク放電内に通過せしめてガスプラズマと
する。次いで,このガスプラズマを絞り部によりプラズ
マジェットガスとして基板に吹きつけることにより,こ
の基板上にダイヤモンドを析出形成する合成方法であ
る。この第4の方法によれば,ダイヤモンドの合成速度
を著しく向上することができる。
【0007】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記第4の方
法においても,高純度のダイヤモンドはダイヤモンド膜
の中心部のみに形成される程度であり,その周囲には純
度の悪いダイヤモンドが合成されてしまうという問題点
がある。この原因としては,後述する図7に示すデータ
から明らかのように,ダイヤモンド膜が合成される基板
の温度が,プラズマジェットガスの中心部が当たってい
る部分では高く(例えば750〜810℃),一方この
中心部分より離れるほど低くなっていることが考えられ
る。
【0008】中心部温度(例えば750〜810℃)を
高純度ダイヤモンドが合成される条件とすれば,その周
辺部は不純物炭素が生成しやすい条件になってしまう。
本発明は,かかる問題点に鑑みてなされたもので,合成
速度を速くした上で,高純度のダイヤモンド膜を広い面
積で形成することのできるダイヤモンド膜の製造方法を
提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】本発明は,不活性ガスとエッチング
ガスと炭素源ガスとよりなる原料ガスをプラズマ噴出口
よりプラズマジェットガスとして噴出し,該プラズマジ
ェットガスを基板上に吹き付けてダイヤモンド膜を析出
形成させる方法において,上記エッチングガスのガス量
Eに対する上記炭素源ガスのガス量Cの混合比率(C/
E)は,上記基板上に到達したプラズマジェットガスの
中心部に比較してその周辺部が低い状態にあることを特
徴とするダイヤモンド膜の製造方法にある。
【0010】本発明において最も注目すべきことは,上
記混合比率(C/E)が,基板上に到達したプラズマジ
ェットガスの中心部に比較して,その周辺部が低い状態
においてダイヤモンド膜を析出形成させることにある。
【0011】上記の混合比率(C/E)は,エッチング
ガス及び炭素源ガスにおける,単位時間(分)当たりの
各ガス量mol/分の比率である。この混合比率(C/
E)は,中心部の混合比率(C/E)を1.0とする
と,周辺部の混合比率(C/E)は0.1〜0.8とす
ることが好ましい。0.1未満では,炭素源ガス量が少
ないために膜厚の不均一性が大きくなる。一方,0.8
を越えると不純物生成の問題を生ずるおそれがある。
【0012】また,上記中心部とは,基板上におけるプ
ラズマジェットガスの到達範囲において,その到達部分
の直径(四角状の場合は長径)の40〜60%を占める
内側部分を言う。それよりも外側は周辺部となる。ま
た,上記不活性ガスとしては,Ar(アルゴン),Ne
(ネオン)などを用いる。エッチングガスとしては,H
2 (水素),O2 (酸素)など,炭素源ガスの分解を促
進するガスを用いる。また,炭素源ガスとしては,CH
4 ,C2 2などの炭化水素ガス,或いはCO,CH3
OHなど,ダイヤモンド膜形成用の炭素源となるガスを
用いる。
【0013】また,上記のごとく,プラズマジェットガ
スが基板に吹付けられる時に,上記混合比率(C/E)
を中心部に比較して周辺部を低い状態とする方法として
は,上記プラズマ噴出口と基板との間に外周部ガス導入
口を設けて,該外周部ガス導入口より,少なくともエッ
チングガスを含有する外周部用ガスを上記プラズマジェ
ットガスの周辺部に吹き込む方法であって,かつ上記外
周部用ガス中における上記混合比率(C/E)は,プラ
ズマジェットガスとの混合を考えに入れ,上記プラズマ
ジェットガス中における混合比率(C/E)よりも小さ
くしておく方法がある。また,上記外周部ガス導入口
は,プラズマジェットガスと基板との間に配設したリン
グ状正電極に併設することが好ましい。これにより,エ
ッチングガスの解離量増加の効果が得られる。
【0014】また,上記プラズマ噴出口に外周部ガス導
入口を併設して,該外周部ガス導入口より,少なくとも
エッチングガスを含有する外周部用ガスを上記プラズマ
ジェットガスの周辺部に吹き込む方法であって,かつ上
記外周部用ガス中における上記混合比率(C/E)は,
上記プラズマジェットガス中における混合比率(C/
E)よりも小さくしておく方法もある。
【0015】また,ダイヤモンド膜を析出形成させる際
には,上記基板は,上記プラズマジェットガスの噴射軸
に対して,その垂直面方向に平行に,相対的に移動又は
回転させることが好ましい。これにより,均一で高純度
のダイヤモンド膜を一層広い面積で製造することができ
る。
【0016】また,プラズマ噴出口より噴出させるプラ
ズマジェットガス中には,不活性ガスとエッチングガス
と炭素源ガスとが混合されて,原料ガスを構成してい
る。また,プラズマジェットガスを形成するに当たって
は,アーク放電によりガスプラズマを形成し,これをプ
ラズマ噴出口(絞り部)より噴出させる。
【0017】そして,ガスプラズマ形成時には不活性ガ
スとエッチングガスとの混合ガスを用い,これをプラズ
マ噴出口より噴出させる際にプラズマ噴出口へ炭素源ガ
スを導入してプラズマジェットガスを形成することもで
きる。また,ガスプラズマ形成時に上記3種のガスを含
む原料ガスを用いることもできる。
【0018】
【作用及び効果】本発明においては,上記原料ガスをプ
ラズマ噴出口よりプラズマジェットガスとして基板上に
吹付けるが,この際上記混合比率(C/E)が基板上に
到達したプラズマジェットガスの中心部に比してその周
辺部が低い状態に形成している。そのため,高純度のダ
イヤモンドが広い面積に渡って析出形成される。その理
由は,以下のように考えられる。(詳細は実施例参
照)。
【0019】即ち,アーク放電を利用したダイヤモンド
膜の合成法は,アーク放電の熱エネルギーによりガスを
十分に分解してダイヤモンド膜を析出させる方法であ
る。そして,上記ガスは炭素源ガスとエッチングガスで
ある。炭素源ガスは,プラズマ分解により分解してダイ
ヤモンド,グラファイト,無定形炭素,iーカーボンを
生成する。一方,エッチングガス,例えば水素は,プラ
ズマ分解により分解して,水素ラジカル,水素イオン等
になると考えられる。この水素ラジカルは,還元力が大
きいため,例えば炭素を還元してメタン等に気化する働
きがある。
【0020】ここで,上記ダイヤモンド,グラファイト
等に対する水素ラジカルの還元能力,即ち除去能力はそ
れぞれに対して異なる。そして,ダイヤモンドに対する
水素ラジカルの還元,除去能力は,他のグラファイト等
に対するそれよりも格段に低い。それ故,水素ラジカル
により,ダイヤモンド以外のグラファイト等が見かけ上
選択的に除去され,ダイヤモンドのみが高純度で合成さ
れることになる。
【0021】一方,プラズマジェットガスの周辺部にお
いては,その温度が低いため(図7参照),基板上に形
成されるダイヤモンドは周辺部の純度が中心部に比して
低くなる。これに対して,本発明においては上記混合比
率(C/E)を変えて,上記周辺部における水素等のエ
ッチングガスのガス量を中心部に比して増加させてい
る。
【0022】そのため,水素ラジカルを基板の周辺部に
より多く到達させることができ,中心部に比してより多
く生成したグラファイト等のダイヤモンド以外の成分
を,エッチングして除去することができる。それ故,基
板全体に高純度のダイヤモンドを形成することができる
のである。
【0023】また,前記のごとく,プラズマジェットガ
スを用いる方法は,ダイヤモンドの合成速度が高い。し
たがって,本発明によれば,高い合成速度で,高純度の
ダイヤモンド膜を,広い面積に形成することができる,
ダイヤモンド膜の製造方法を提供することができる。
【0024】
【実施例】
実施例1 本発明の実施例にかかるダイヤモンド膜の製造方法につ
き,図1〜図4を用いて説明する。本例の製造方法は,
不活性ガスとエッチングガスと炭素源ガスとよりなる原
料ガスを,図1に示すごとく,プラズマ噴出口18より
プラズマジェットガスとして噴出し,該プラズマジェッ
トガスを基板4上に吹き付けてダイヤモンド膜を析出形
成させるものである。そして,上記エッチングガスのガ
ス量Eに対する上記炭素源ガスのガス量Cの混合比率
(C/E)は,図3に示すごとく,プラズマジェットガ
スPの中心部P1 に比較して,その周辺部P2 が低い状
態にある。
【0025】また,本例においては,プラズマ噴出口1
8と基板4との間に配設したリング状正電極3に外周部
ガス導入口13を併設している。そして,図2に示すご
とく,該外周部ガス導入口13の吹込口131より,少
なくともエッチングガスを含有する外周部用ガスTを,
上記プラズマジェットガスPの中に吹き込んでいる。こ
の外周部用ガスT中における前記混合比率(C/E)
は,上記プラズマジェットガス中における混合比率(C
/E)よりも小さい。
【0026】以下,本例につき詳説する。まず,本例の
製造装置は,図1に示すごとく,真空容器2の内部に配
設されたプラズマジェットガン1と,リング状正電極3
と,両者の間に設けたリング状絶縁体14と,これらの
下方に配置した基板支持台40とよりなる。基板支持台
40の上には,ダイヤモンド膜を形成するための基板4
を配置する。
【0027】真空容器2は,5Torr〜5気圧の所定
圧力に維持されている。リング状絶縁体14は窒化ボロ
ン製,リング状正電極3及び基板支持台40は銅製であ
る。プラズマジェットガン1は,一端が鋭角に形成され
た先端部72と他端がフランジ部71とに形成されたタ
ングステン製の棒状電極7を軸として,フランジ部71
側から銅製の電極冷却部15,テフロン製のガス導入部
110および銅製のシリンダ状電極10が設けられてい
る。
【0028】電極冷却部15およびシリンダ状電極10
には,冷却用の中空部150,100が設けられてい
る。そして,シリンダ状電極10に接続された冷却水パ
イプ161より供給される冷却水が,シリンダ状電極1
0の中空部100を経て,冷却水排出パイプ162に流
れ出る。同様に,電極冷却部15に接続された冷却水パ
イプ151より供給される冷却水が,上記中空部150
を経て冷却水排出パイプ152より排出される。
【0029】この冷却水によって,棒状電極7とシリン
ダ状電極10との間に生ずるアーク放電の熱による両電
極の損耗が防止される。ガス導入部110には,原料ガ
ス導入パイプ11が設けられている。ガス導入部110
の下部にはガス導入パイプ11より供給されたガスを棒
状電極7の先端部72に送るための,開口部113が設
けてある。
【0030】さらに,棒状電極7の鋭角状の先端部72
とシリンダ状電極10の間でアーク放電を起こすため
に,両者はアーク放電用電源25に接続されている。ア
ーク放電用電源25は,アーク放電を効果的に発生させ
るために,棒状電極7側を負電位にするように接続され
ている。
【0031】また,シリンダ状電極10の下部には,ガ
スプラズマを絞ることによりプラズマジェットガスとす
るプラズマ噴出口18が設けられている。そして,この
プラズマ噴出口18と連通して,プラズマ通過口を構成
する,上記のリング状絶縁体14及びリング状正電極3
が設けられている。またプラズマ噴出口18には,炭素
源ガス導入口12が設けられている。
【0032】このリング状正電極3はプラズマ噴出口1
8の下流においてプラズマジェットガスが最大径となる
位置,又はその近傍に配置されており,その配置設定は
リング状絶縁体14の長さによって与えられている。そ
して,リング状絶縁体14及びリング状正電極3のリン
グ内径は,各々プラズマ噴出口18より大きな径に設定
されている。特に,リング状正電極3のリング内径Rは
プラズマ噴出口18の内径Lに対してR≦5Lの関係に
なるように決められている。
【0033】棒状電極7とリング状正電極3との間には
プラズマ電流用電源26が電気接続してある。これは,
棒状電極7と該リング状正電極3の間に電界を印加し,
リング状正電極3から棒状電極7へプラズマ中を介して
所定値以上の電流を流すようにするためである。また,
リング状正電極3のプラズマ通過口30には外周部ガス
導入口13が設けられている。上記外周部ガス導入口1
3は,図2に示すごとく,リング状正電極3のプラズマ
通過口30に対して,4方向より配設され,外周部用ガ
スTの吹込口131を有する。
【0034】また,上記リング状正電極3には冷却用の
中空部320が設けられ,該中空部320には冷却水導
入パイプ321より冷却水が供給されて排水パイプ32
2へ排出される。これにより,リング状正電極3は冷却
され,棒状電極7とリング状正電極3との間に流れる電
流によるリング状正電極3の過熱が抑制される。そのた
め,上記加熱によるリング状正電極3の損耗は防がれ
る。
【0035】プラズマ噴出口18の下流には,上記リン
グ状絶縁体14及びリング状正電極3を介して基板支持
台40が設定されており,該基板支持台40には基板4
が配置されている。この基板支持台40は,基板4を所
定温度(本例では約800℃)に維持するために,冷却
水パイプ420より冷却水が供給され,排出パイプ42
1より排出できるよう中空となっている。
【0036】これは,プラズマ噴出口18より吹き出さ
れるプラズマジェットガスの気体温度が数千〜数万度に
達してしまうため,基板温度をダイヤモンドの合成域で
ある600〜1100℃にするために,基板4を冷却す
る必要があるからである。また,基板支持台40は接地
されており,基板4の電位を接地電位としている。
【0037】なお,リング状正電極3と基板4間の距離
が10〜100mmであり,かつガスプラズマが発生す
る領域側とリング状正電極3との間が5〜100mmで
あれば,ダイヤモンドの合成は可能である。本実施例に
おいては,プラズマ噴出口18と基板4との間の距離を
40mmとした。また,高純度のダイヤモンドの析出を
行うため,リング状正電極3は基板4上に20mmの距
離を置いて,プラズマ噴出口18と同心軸上に設置して
いる。
【0038】次に,本実施例におけるダイヤモンド膜の
製造方法を説明する。まず初めに,真空容器2内を排気
した後,不活性ガスとして電離度の高い第0族のガスで
あるアルゴンを,原料ガス導入パイプ11からプラズマ
ジェットガン1に導入し,かつ真空容器2内の圧力を4
0Torrに設定する。
【0039】その後,アーク放電用電源25により棒状
電極7(負極)とシリンダ状電極10(正極)との間に
アーク放電を発生させる。アーク放電を発生させるに
は,これら棒状電極7とシリンダ状電極10との間に高
周波を重畳させるか,又はイグナイタ等で火花放電を発
生させてその後アーク放電に移行させる。なお,本例で
は,アーク放電は電圧40Vで電流60Aの条件として
いる。
【0040】放電が安定したところで,このアーク放電
中に原料ガス導入パイプ11より,プラズマ源ガスとし
て,不活性ガスであるアルゴン50vol%とエッチン
グガスであるH2 50vol%の混合ガスを供給した。
この混合ガスは毎分12リットルの流量で流しガスプラ
ズマとし,このガスプラズマをプラズマ噴出口18の絞
りを通過させてプラズマジェットガスとする。
【0041】なお,炭素源ガス導入口12からは炭素源
ガスとしてのメタンガス120cc/分と,エッチング
ガスとしての水素ガス1000cc/分,の混合ガスが
導入される。ここで,メタンガスに代表される炭素源ガ
スとしての炭化水素ガスは,原料ガス導入パイプ11か
ら導入してもよいが,タングステン電極棒が炭化されて
長時間放電が安定しなくなることがある。そのため,該
炭化水素ガスは,本実施例のごとく放電部下流に炭素源
ガス導入口12を設けてそこから導入するようにするの
が望ましい。
【0042】そして,この炭素源ガス導入口12より導
入したメタンガスを上述のプラズマ源ガスのプラズマジ
ェットに吹きつけプラズマジェットガスとする。このと
き,本例装置ではプラズマジェットガスの最大径は略2
0mmであった。なお,ここで真空容器2内の圧力を4
0Torrに保つように適宜に排気が行われている。こ
こで,棒状電極7とリング状正電極3との間には,直流
電源であるプラズマ電流用電源26により電界が印加さ
れている。本実施例では電圧として60Vを印加してお
り,プラズマ中に20A以上の電流,例えば電流値40
Aを流している。
【0043】さらに外周部ガス導入口13より,エッチ
ングガスとしての水素ガス2500cc/分が導入され
る。そして,この水素ガスを上述のプラズマジェットガ
スの周辺部に吹きつけ,水素ガスに対するメタンガスの
比率(即ち混合比率(C/E))が周辺部ほど低いプラ
ズマジェットガスとする。
【0044】本例においては,上記条件によれば,基板
上でプラズマジェットガスの中心部の前記混合比率(C
/E)は約0.04であり,一方プラズマジェットガス
の周辺部の混合比率(C/E)は約0.004であり,
周辺部の混合比率(C/E)が低い。また,ここに上記
中心部は基板上におけるプラズマジェットガスの到達部
分の直径の約60%である。この状態で,赤紫色のプラ
ズマジェットガスを基板4に吹きつけることにより基板
4上にダイヤモンドが析出形成される。なお,本実施例
ではプラズマ中心部の温度は3000℃以上であり,ま
たガン内部の放電部はそれ以上に上昇している。
【0045】以上の条件で30分間の合成を行い,基板
4の表面付着物を測定した。以下に,その評価結果につ
いて図4,図5を用いて説明する。なお,基板4として
はタングステン金属板を用い,表面にはあらかじめ研磨
により微細な傷がつけられ,ダイヤモンド膜が合成し易
いようにしてある。そして,基板4上の付着物の観察に
は,ラマン分光装置と電子顕微鏡を用いた。
【0046】図4(a)には基板中心部におけるラマン
シフトとピーク高さの関係を,また図4(b)には,基
板中心より10mm離れた場所での同関係を示した。一
方,図5(a),(b)には,比較のために,上記と同
様ではあるが外周部用ガスは導入しなかった場合におい
て,基板中心部(図5(a))及び10mm離れた場所
(図5(b))におけるラマンシフトとピーク高さの関
係を示した。
【0047】上記の図4(a),(b),及び図5
(a)に示すラマンスペクトルからは,ラマンシフトが
1333cm-1付近に,ダイヤモンドの存在を示すラマ
ンピークが確認された。一方,図5(b)のラマンスペ
クトルからは,黒鉛無定形炭素,i−カーボン等を示す
1400〜1600cm-1のブロードなピークが明らか
に現れている。
【0048】上記図4,図5に示される結果から,外周
部ガス導入口13より外周部用ガスを導入することによ
り,高純度のダイヤモンド膜を,大きな面積で析出形成
できることがわかる。なお,電子顕微鏡の観察でも結晶
粒子像が確認されており,結晶形もマイクロ波プラズマ
CVD法で合成されたダイヤモンド粒子と同様の形態を
示していた。
【0049】次に,上記のごとく外周部用ガスを導入す
ることにより,高純度のダイヤモンドが広い面積にわた
って析出形成できる理由について,本発明者等の考察結
果をもとに,以下説明する。即ち,アーク放電を利用し
たダイヤモンド膜の合成法は,アーク放電の熱エネルギ
ーによりガスを十分に分解してダイヤモンド膜を合成す
る方法であり,使用ガスは一般には炭化水素と水素であ
る。ガスの役割を考えると,炭化水素はプラズマ分解に
より分解しダイヤモンド,グラファイト,無定形炭素,
i−カーボンを生成する。
【0050】一方,水素はプラズマ分解により分解し,
水素ラジカル,水素イオン等になると考えられる。この
水素ラジカルは還元力が大きいため,例えば炭素を還元
してメタン等に気化する働きがある。つまり,上記ダイ
ヤモンド,グラファイト等を水素ラジカルが還元するの
である。
【0051】ここで,上記ダイヤモンド,グラファイ
ト,無定形炭素,i−カーボンに対する水素ラジカルの
還元能力,即ち除去能力はそれぞれに対して異なる。そ
して,ダイヤモンドに対する水素ラジカルの還元除去能
力は,他のグラファイト,無定形炭素,i−カーボンに
対する除去能力に比べ格段に低い。したがって,プラズ
マ分解によるダイヤモンド合成では,水素ラジカルによ
りダイヤモンド以外のグラファイト,無定形炭素,i−
カーボン等が見かけ上選択的に除去され,ダイヤモンド
のみが合成されることになるのである。
【0052】また,ダイヤモンド合成における基板温度
は600〜1100℃であるが,この範囲内であっても
高温側ではグラファイト,低温側ではi−カーボン等の
生成速度が大きくなる。そのため,高純度のダイヤモン
ドを合成する場合,基板温度の範囲は100℃以下にな
ってしまう。その理由は,基板温度に適したC/E比が
あり,高温,低温側ではC/E比がより小さくなければ
ならないためである。
【0053】したがって,基板上において,プラズマジ
ェットガスの中心部に当たっている場所が,高純度のダ
イヤモンド合成に適した温度であるとすると,例えば後
述する図7に示すごとく,この場所より約7mm以上離
れている場所では,高純度ダイヤモンドが合成できる温
度域より低温度になってしまっている。このため,周辺
部では純度の低いダイヤモンドしか形成されないことに
なる。
【0054】以上のことから,高純度のダイヤモンドを
広い面積範囲において合成するには,例えば後述する図
8からも知られるように,プラズマジェットガスの周辺
部の水素ガス量を増加させ,より多くの水素ラジカルを
基板に到達させる。これにより,基板中心部よりも,多
く周辺部に生成したi−カーボン等を,水素ラジカルに
よりエッチングし,取り除く。ここで,炭素源ガスとし
てのメタンガス流量を減少させることによっても,ダイ
ヤモンド膜の外周部の純度は向上するが,この場合はダ
イヤモンドの成膜速度も減少してしまうので余り好まし
くない。
【0055】実施例2 本例は,図6に示すごとく,実施例1に示したダイヤモ
ンド膜製造装置において,リング状正電極3を設けるこ
となく,実施例1と同様にしてダイヤモンド膜を製造す
るものである。
【0056】本例においては,外周部ガス導入口13は
シリンダ電極10の下方に,直接に,併設してある。外
周部ガス導入口13は,前記図2と同様の構造を有す
る。外周部ガス導入口13の吹込口131は,プラズマ
噴出口18に開口している。本例においては,リング状
正電極3及びプラズマ電流用電源26を用いない点以外
は,実施例1と同様にしてダイヤモンド膜を製造する。
本例においても,実施例1と同様の効果を得ることがで
きる。
【0057】実施例3 本例においては,図7及び図8に示すごとく,実施例1
の方法によりダイヤモンド膜を形成した場合における,
基板の温度と,プラズマジェットガスのH(水素)スペ
クトル強度を測定した。図7は,ダイヤモンド膜を析出
させる基板上において,基板中心からの距離(mm)
と,基板上の温度との関係を示している。基板中心は,
プラズマジェットガスの噴射中心軸と一致している。
【0058】同図より知られるごとく,基板中心より7
mm位までは780℃以上の高温度を示しているが,そ
れより遠くなると急激に温度が低下している。そして,
実施例1で説明したごとく,上記7mm以内であれば,
従来と同様に高純度のダイヤモンドが合成され,それ以
上ではi−カーボン等が生成されてくる。そこで,本発
明においては,プラズマジェットガスの周辺部における
エッチングガス量を多くして,上記i−カーボン等をエ
ッチング除去するのである。
【0059】図8は,周辺部に対してより多くのエッチ
ングガスを供給して,水素ラジカルを多量にした状態を
示している。即ち,同図は,プラズマジェットガス中心
からの距離が5mmを越えた領域について,上記中心よ
り遠くなるに従ってより多くの水素ラジカルを供給して
いる状態を示す。これにより,上記のごとく,i−カー
ボン等をエッチング除去し,中心部のみならず周辺部に
ついても広い面積に渡って高純度のダイヤモンドを形成
することができる。
【0060】実施例4 本例は,実施例1の方法を用いた,他の具体例を示す。
本例においては,図1において原料ガス導入パイプ11
よりArガス60%(容量比,以下同様)と,水素ガス
40%とからなる混合ガスを15リットル/分で導入
し,ガスプラズマとした。次に,このガスプラズマ中に
炭素源ガス導入口12より,炭素源ガスとしてのメタン
ガスを240cc/分で供給し,プラズマジェットガス
とした。
【0061】そして,該プラズマジェットガスの周辺部
に,外周部ガス導入口13よりエッチングガスとしての
水素ガス99.5%と,炭素源ガスとしてのメタンガス
0.5%とを含有する外周部用ガスを2.5リットル/
分で吹き付けた。ここに,上記外周部用ガスにおける上
記混合比率(C/E)は0.005である。
【0062】一方,該外周部用ガスを吹き込む前のプラ
ズマジェットガス中の混合比率(C/E)は0.04で
ある。このように外周部用ガスにおける混合比率(C/
E)は,プラズマジェットガスの混合比率(C/E)よ
りも低い。そのため,プラズマジェットガスの中心部の
混合比率(C/E)は高く,その周辺部の混合比率(C
/E)は低い。また,基板上では外周部はC/E=0.
01程度である。これにより,広い面積で高純度のダイ
ヤモンド膜が得られた。
【0063】実施例5 次に,実施例1において,プラズマジェットガスの周辺
部に導入する外周部用ガスAとプラズマ源ガス量Bとに
関して,高純度ダイヤモンド膜を広い面積で形成させる
に必要な関係を実験した。その結果,上記A,Bの関係
は,(B/15)<A<Bとすることが好ましいことが
分かった。上記Aは,エッチングガスのみ又はエッチン
グガスと炭素源ガスとの混合ガス量(cc/分),Bは
エッチングガスと不活性ガスとの混合ガス量(cc/
分)をいう。
【0064】実施例6 本例においては,実施例1において,基板4をプラズマ
ジェットガスの噴射軸に対して,その垂直方向に平行に
移動させながら,ダイヤモンド膜を析出形成させるもの
である。基板4は,1分間当たり0.1〜200cm/
分の割合で左右に移動させる。この移動は,基板4を上
記垂直面方向に回転させることによって,行うこともで
きる。このように,基板4に対してプラズマジェットガ
スを相対的に走査,移動させることにより,高純度のダ
イヤモンド膜を更に広範囲の面積に形成することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるダイヤモンド膜製造装置の断
面図。
【図2】実施例1における外周部ガス導入口の平面断面
図。
【図3】実施例1におけるプラズマジェットガスの中心
部と周辺部の説明図。
【図4】実施例1で製造したダイヤモンド膜におけるラ
マンシフトとピーク高さとの関係を示す特性図。
【図5】実施例1で示した比較例方法により製造したダ
イヤモンド膜における,ラマンシフトとピーク高さとの
関係を示す特性図。
【図6】実施例2におけるダイヤモンド膜製造装置の断
面図。
【図7】基板上の位置に対する基板温度を示すグラフ。
【図8】プラズマジェットガスに於ける,プラズマ中心
からの位置に対する解離水素の量の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1・・・プラズマジェトガン, 10・・・シリンダ状電極, 11・・・原料ガス導入パイプ, 12・・・炭素源ガス導入口, 13・・・外周部ガス導入口, 18・・・プラズマ噴出口, 2・・・真空容器, 25・・・アーク放電用電源, 3・・・リング状正電極, 30・・・プラズマ通過口, 4・・・基板, 40・・・基板支持台, 7・・・棒状電極,
フロントページの続き (72)発明者 服部 正 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−238886(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不活性ガスとエッチングガスと炭素源ガ
    スとよりなる原料ガスをプラズマ噴出口よりプラズマジ
    ェットガスとして噴出し,該プラズマジェットガスを基
    板上に吹き付けてダイヤモンド膜を析出形成させる方法
    において,上記エッチングガスのガス量Eに対する上記
    炭素源ガスのガス量Cの混合比率(C/E)は,上記基
    板上に到達したプラズマジェットガスの中心部に比較し
    てその周辺部が低い状態にあることを特徴とするダイヤ
    モンド膜の製造方法。
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