JP3178018B2 - アルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム陰極板 - Google Patents

アルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム陰極板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は密閉型アルカリ蓄電池に
用いられるペースト式カドミウム陰極板の酸素ガス吸収
性能の改良と上記陰極板を用いた電池の高率放電特性の
向上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、アルカリ蓄電池用ペースト式カド
ミウム陰極板は、酸化カドミウム、水酸化カドミウム、
金属カドミウム等からなる活物質粉末に糊料、溶媒、補
強繊維等を加え、これらを混練してペースト状となし、
このペーストをニッケルメッキした鉄穿孔板のような導
電性芯材の両面に塗着し、乾燥することによって作製さ
れている。従って、焼結式カドミウム陰極板に比べ製造
工程を簡略化出来、活物質充填量が増やせるので高エネ
ルギー密度化出来る等の利点を有している。
【0003】しかし、ペースト式カドミウム陰極板は上
記のような構成であるため、活物質層中に焼結式のよう
なニッケル焼結体の導電ネットワークを持たず、また、
放電生成物である水酸化カドミウムは導電性が低いの
で、充電時に生成する金属カドミウムは導電性の高い部
分、特に芯材近傍に偏在する傾向がある。電池を過充電
した場合には陽極板から酸素ガスが発生し、陰極板で次
の(1)式で示す反応によって吸収されるが、この反応
は陰極板の表面部で起こり易いので、上記のように極板
表面部に金属カドミウムが生成し難いペースト式カドミ
ウム陰極板では酸素ガス吸収性能が低いという欠点があ
った。
【0004】
【化1】Cd+1/2O2+H2O → Cd(OH)2 この欠点を解消するため、特開昭60−63875号公
報や特開昭60−202666号公報にはペースト式カ
ドミウム陰極板表面にアセチレンブラック含有層を形成
し、極板表面の導電性を高めることによって、充電時に
金属カドミウムを極板表面にも生成させ、酸素ガス吸収
性能を向上させんとする提案がなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ペース
ト式カドミウム陰極板の表面にアセチレンブラック含有
層を形成する場合、溶媒中にアセチレンブラックと脱落
防止のための糊料を均一に分散させた懸濁液を用い、陰
極板を懸濁液に浸漬するか陰極板表面に懸濁液を塗布す
る方法が取られている。上記懸濁液は塗布層の均質性を
確保するため、十分に撹拌し分散性を良くする必要があ
るが、撹拌によってアセチレンブラックの鎖状構造が崩
壊し、そのことによって導電性が低下して、充分な酸素
ガス吸収性能が得られないという問題点があった。導電
性を確保するため塗布層を厚くすると酸素ガスの透過性
が悪くなり、電解液の拡散も阻害されるので酸素ガス吸
収性能が低下するばかりでなく、高率放電時の電池電圧
特性も悪くなるという問題点があった。
【0006】本発明の目的は、上記問題点を除去し、酸
素ガス吸収性能を更に向上させ、高率放電特性にも優れ
たペースト式カドミウム陰極板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明のアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム陰
極板は、酸化カドミウム、水酸化カドミウム、金属カド
ミウムの1種以上を主活物質とする活物質層の表面に、
BET比表面積1000〜1500m2/g、フタル酸
ジブチル吸油量(以下「DBP吸油量」という)が3〜
5ml/gであるファーネスブラック粉末と熱ゲル化す
るセルロース誘電体糊料からなる導電層が設けられてい
ることを特徴とするものであって、熱ゲル化するセルロ
ース誘導体糊料として好敵にはメチルセルロース、ヒド
ロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル
セルロースの内のいずれか、あるいはそれらを混合して
用いるものである。
【0008】
【作用】本発明は、鋭意検討の結果、陰極板表面に設け
た導電層を高比表面積且つ高DBP吸油量のファーネス
ブラック粉末と熱ゲル化するセルロース誘導体糊料で構
成することによって、酸素ガス吸収性能がより一層向上
し、同時に高率放電特性も改善されることを見出したこ
とにもとづいている。高比表面積を有することは電解液
が浸透出来ないミクロ孔が多いことを示しており、酸素
ガスの導電層内での透過性が良いこと、高DBP吸油量
を有することは鎖状構造あるいは中空構造が発達してい
ることを示しており、導電層形成のための懸濁液作製時
の撹拌によっても導電性が低下せず、陰極板表面に金属
カドミウムを有効に生成させ得ること、また電解液の保
液性が良いため、高率放電時の電解液の拡散が良いこ
と、更に、熱ゲル化するセルロース誘導体糊料を用いる
ことによって、陰極板表面に上記懸濁液を塗布した後の
乾燥での塗布層の収縮、緻密化が抑制されるので、上記
のガス透過性と電解液保液性が保持されることが主な理
由と考えられる。
【0009】
【実施例】本発明の一実施例を説明する。 [実施例1]酸化カドミウム粉末、ナイロン補強繊維、
ポリビニルアルコール糊料、エチレングリコール溶媒を
混合してペースト状とし、これをニッケルメッキした鉄
穿孔板に塗着、乾燥する従来どおりの方法で作製したペ
ースト式カドミウム陰極板を、水酸化ナトリウム水溶液
中でニッケル板を対極として充放電することによって化
成し、次いで水洗、乾燥した。一方、水100重量部、
ファーネスブラック粉末a(比表面積1475m2
g、DBP吸油量3.3ml/g)5重量部、メチルセ
ルロース5重量部をスパイラルミキサーに投入し、15
0回転/分で1時間撹拌混合してカーボン粉末懸濁液を
作製した。化成したペースト式カドミウム陰極板の表面
にカーボン粉末懸濁液を6〜7mg/cm2の塗布量に
なるよう薄く塗布し、乾燥して完成陰極板を得た。この
陰極板をナイロン不織布セパレータを介して周知の方法
で作製された焼結式陽極板と組み合わせて捲回し、アル
カリ電解液と共に電池ケースに収容して公称容量120
0mAhの密閉型ニッケル・カドミウム電池Aを作製し
た。また、上記電池Aの陰極板表面のカーボン粉末塗布
層に用いたファーネスブラックaにかえて、ファーネス
ブラックb(比表面積1270m2/g、DBP吸油量
4.5ml/g)を用いた以外は同一構成の電池Bを作
製した。
【0010】[実施例2]実施例1の電池Aにおいて、
陰極板表面のカーボン塗布層に用いたメチルセルロース
糊料にかえて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及
びヒドロキシプロピルセルロースを用い、カーボン粉末
懸濁液の粘度が実施例1と同じになるよう調整した以外
は同一構成の電池C,Dを夫々作製した。
【0011】[比較例1]実施例1において、陰極板の
表面にカーボン粉末塗布層を設けないで、その他は同一
構成の電池Eを作製した。
【0012】[比較例2]実施例1において、陰極板表
面のカーボン塗布層に用いたファーネスブラックにかえ
て、アセチレンブラック(比表面積64m2/g、DB
P吸油量1.2ml/g)を用いた以外は同一構成の電
池Fを作製した。
【0013】[比較例3]実施例1の電池Aにおいて、
陰極板表面のカーボン塗布層を用いたメチルセルロース
糊料にかえて、熱ゲル化しないカルボキシメチルセルロ
ースを用い、カーボン粉末懸濁液の粘度が実施例1と同
じになるよう調整した以外は同一構成の電池Gを作製し
た。
【0014】このようにして作製された電池A〜Gに開
口部を設け、圧力ゲージを密閉状態にして取り付けた。
その後、1.2A(1C)の電流で充電し、その時の電
池の内部圧力変化を測定した。2.5時間目の電池内部
圧力を表1に示す。また、充電を夫々1Cの電流で1.
5時間行った後、放電を1.2A、3.6A、6Aで行
った際の電池電圧1Vまでの放電容量も合わせて表1に
示す。
【0015】
【表1】
【0016】表1からは次のようなことがわかる。
【0017】陰極板表面にカーボン塗布層を設けた電
池A〜D、F、Gはカーボン塗布層を設けていない電池
Eに比べ、明らかに電池内部圧力が低下しており、陰極
板の酸素ガス吸収性能が向上している。
【0018】陰極板表面のカーボン塗布層にBET比
表面積1000〜1500m2/g、DBP吸油量3〜
5ml/gのファーネスブラックを用いた本発明の電池
A〜Dはアセチレンブラックを用いた比較電池Fに比
べ、電池内部圧力が更に低くなっており、酸素ガス吸収
性能に優れている。また、高率放電における容量低下が
少なく優れている。
【0019】陰極板表面のカーボン塗布層に熱ゲル化
するセルロース誘導体糊料を用いた本発明の電池A〜D
は熱ゲル化しないカルボキシメチルセルロース糊料を用
いた比較電池Gに比べ、電池内部圧力が更に低くなって
おり、酸素ガス吸収性能に優れている。また、高率放電
における容量低下が少なく優れている。
【0020】以上のように、本発明の電池は比較例に比
べ、充電時の酸素ガス吸収性能に優れ、且つ高率放電性
能にも優れている。このことは、陰極板表面の導電層の
導電性が高いため、表面に金属カドミウムが生成し易
く、また、導電層のガス透過性と電解液の保液性が良い
という相反する性質を本発明の陰極板が兼ね備えている
ことを示すものである。
【0021】
【発明の効果】上述したように、本発明に係るアルカリ
蓄電池用ペースト式カドミウム陰極板は、活物質層の表
面に高比表面積、高DBP吸油量を有するファーネスブ
ラック粉末と熱ゲル化するセルロース誘導体糊料からな
る導電層が設けられているため、従来の上記導電層にア
セチレンブラックを用いたものに比べ、陰極板の酸素ガ
ス吸収性能が更に向上し、高率放電においても容量低下
の少ないものである。この優れた特性は、導電層に用い
るカーボン粉末の物性と糊料の性質を目的に合わせて組
合せることによって初めて可能となったものである。
フロントページの続き (72)発明者 辻 裕貴 東京都新宿区西新宿2丁目1番1号 新 神戸電機株式会社内 審査官 青木 千歌子 (56)参考文献 特開 昭61−208755(JP,A) 特開 昭64−12461(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/62 H01M 4/24 - 4/26 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化カドミウム、水酸化カドミウム、金属
    カドミウムの少なくとも1種を主活物質とする活物質層
    の表面に、カーボン粉末からなる導電層が設けられてい
    アルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム陰極板におい
    て、該導電層がBET比表面積1000〜1500m2
    /g、DBP吸油量3〜5ml/gであるファーネスブ
    ラック粉末と熱ゲル化するセルロース誘電体糊料からな
    ることを特徴とするアルカリ蓄電池用ペースト式カドミ
    ウム陰極板。
  2. 【請求項2】前記熱ゲル化するセルロース誘電体糊料が
    メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロー
    ス、ヒドロキシプロピルセルロースの内のいずれか、あ
    るいはそれらを混合したものであることを特徴とする請
    求項1記載のアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム陰
    極板。
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JP5368685B2 (ja) * 2007-07-31 2013-12-18 電気化学工業株式会社 アセチレンブラック、その製造方法及び用途
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